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森林98-214

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I.は じ め に 近年,林業の競争力を高めるため,木材生産の低コスト 化が求められており,その一手段として一貫作業システム が注目されている。一貫作業システムでは,伐採・搬出か ら地拵え・植栽まで林業機械を活用し,さらに作業を通年 平準化することで機械の高稼働率化や作業期間の短縮によ る低コスト化・省力化が見込まれる(森林総合研究所九州 支所 2012)。それに応じて,造林工程においても植栽時期 の通年平準化が必要となる。しかしながら現在植栽に用い られる樹木苗(以下裸苗)は,通常育苗圃場で露地栽培さ れ,成長停止後の秋あるいは成長開始前の春に根切り・床 替えを行う(林野庁1998;戸田 2007)。また苗木の生理 的条件に基づく針葉樹の植え付け時期は,春または秋が推 奨されており(林野庁1998),裸苗では造林工程の通年平 準化には向かない。 そこで裸苗に替わる苗として期待されるのがコンテナ苗 である。コンテナトレーを用いた育苗技術は,北欧・北米 では1970年代に技術開発が進み,現在でも数多くのタイ プのコンテナが販売・利用されている(Landis et al. 1990;

連絡先著者(Corresponding author)E-mail: kabeta@ffpri.affrc.go.jp

国立研究開発法人森林総合研究所 〒305―8687 茨城県つくば市松の里1(Forestry and Forest Product Research Institute, 1 Matsunosato, Tsukuba, Ibaraki 305―8687, Japan)

地方独立行政法人北海道立総合研究機構林業試験場 〒079―0198 北海道美唄市光珠内町東山(Hokkaido Research Organization, Forest Re-search Department, Koshunai, Bibai, Hokkaido 079―0198, Japan)

石川県中能登農林総合事務所 〒926―0852 石川県七尾市小島町ニ部33(Nakanoto General Agriculture Forestry office, Ishikawa Prefecture, 33 Ni-bu, Kojima-machi, Nanao, Ishikawa 926―0852, Japan)

高知県立森林技術センター 〒782―0078 高知県香美市土佐山田町大平80(Kochi Prefectural Forestry Technology Research Center, 80 Ohdaira, Tosayamada, Kami, Kochi 782―0078, Japan)

関東森林管理局森林技術・支援センター 〒309―1625 茨城県笠間市来栖87―1(Forestry Technology Development and Support Center, Kanto Regional Forest Office, 87―1 Kurusu, Kasama, Ibaraki 309―1625, Japan)

(2015年11月5日受付,2016年7月19日受理) 特集「低コスト再造林に向けたコンテナ苗の活用」

複数試験地データからみたコンテナ苗の植栽後の活着および成長特性

壁 谷 大 介

*,1

・宇都木 玄

・来 田 和 人

・小 倉

・渡 辺 直 史

藤 本 浩 平

・山 崎

・屋 代 忠 幸

・梶 本 卓 也

・田 中

コンテナ苗は植栽後の活着・成長が良いことが期待されている。しかし国内においては,コンテナ苗の成長・活着能力につ いて統一的な見解が未だ得られていない。そこで本研究では,コンテナ苗の成長・活着能力の普遍的な傾向を把握することを 目的として,1道7県・5樹種からなる39カ所の植栽試験の情報に基づき,コンテナ苗と裸苗の植栽後の生存率および樹高・ 直径成長速度を推定し両者の間で比較した。階層ベイズ法を用いたパラメータ推定の結果,全種を通してのコンテナ苗の生存 率の中央値は0.96であり,裸苗の生存率(中央値0.97)とほぼ同じであった。また樹高成長速度および直径成長速度も,全 体推定値・樹種別推定値ともコンテナ苗と裸苗との間で分布範囲に大きな違いはみられなかった。形状比(樹高/基部直径)は, いずれの種でも植栽直後にはコンテナ苗の方が高いものの,植栽1年以降には,全ての種においてコンテナ苗と裸苗との間の 差はみられなくなった。以上の結果から,一般的な傾向としてコンテナ苗の植栽後の活着・成長は裸苗と同程度であり,育苗 の利便性や植栽の効率性がコンテナ苗の優位性を示すのに有効な特徴となることが示唆された。 キーワード:コンテナ苗,複数試験地データ,生存率,成長,階層ベイズ法

Daisuke Kabeya,*,1Hajime Utsugi,Kazuto Kita,Akira Ogura,Naofumi Watanabe,Kohei Fujimoto,Makoto Yamazaki,

Tadayuki Yashiro,5Takuya Kajimoto,Hiroshi Tanaka

(2016)The Performance of Containerized Tree Seedlings after Outplant-ings Evaluated from Multi-site Data Set. J Jpn For Soc 98: 214―222 Containerized tree seedlOutplant-ings are expected to exhibit high

sur-vivorship and good growth after outplanting; however, a unified consensus on the performance of containerized seedlings in Japan re-mains undetermined. To understand the universal properties of the performances of containerized seedlings after outplanting, the survival ratio and height and diameter growth rate of two stock types(containerized seedlings and bare-root seedlings)were estimated from 39 experiment sites covering five prefectures and five species and compared between stock types. The result of parameter estimation using hierarchal Bayesian models revealed that the median survival ratio of containerized seedlings across all species was 0.96, which was not different from that of bare-root seedlings(0.97). The estimated height and diameter growth rates were also similar between stock types. The sturdiness quotient(SQ, the ratio of height and diameter)was higher in containerized seedlings than in bare-root seedlings of all species immediately after outplanting. However, the difference in SQ between stock types diminished 1 year after outplanting. These re-sults suggest that containerized tree seedlings generally show performances equivalent to those of bare-root seedlings after outplanting. Therefore, other properties of containerized seedlings, such as ease of cultivation and low-labor planting present more attractive advan-tages than those of good performance after outplanting.

Key words: containerized seedling, mass data-set, survival ratio, growth rate, hierarchal Bayesian model

(2)

Rasanen 1982)。翻って日本国内においては,2007年に初 めて国産コンテナの供給が開始され(山田・三樹 2015), 実用的な知見の収集は始まったばかりである。露地栽培が 普通の裸苗と異なり,コンテナ苗は高密度栽培が可能であ り可搬性にも富むため,温室を利用した生産の柔軟性によ り出荷時期の調節が可能であると考えられる(例えば, Brissette et al. 1991参照)。また,栽培時にコンテナ内で 圧着した土壌・根系塊(根鉢)が形成されるため,運搬・ 仮置き時のストレス耐性が高く,植栽ショックも小さいと いわれている(例えば,遠藤 2007)。さらに根切りを行わ ず植栽初期から発達可能な根系をもつ分,初期成長が早い (Wilson et al. 2007),根巻対策がされており根巻きが生じ にくい(山田・三樹 2015)など多くの期待が寄せられて いる。 国内では九州地方を皮切りにコンテナ育苗の技術開発が 行われ,数々の植栽試験がなされている(例えば,平田ら 2014;山川ら 2013)。しかしながらコンテナ苗の植栽後の 活着・成長速度の成績は試験によって様々であり,コンテ ナ苗の裸苗に対する植栽後の成績の優位性に関して確固た る証拠が得られていないのが現状である。植栽試験ごとに コンテナ苗の優位性がばらつく原因として,植栽環境の違 いや試験対象とする樹種・品種の違いが想定される。さら に多くの地域においてコンテナ苗の育苗技術は試験段階で あり,技術が確立していないことに起因する出荷時の生産 ロットごとの苗木品質や苗長/幹直径比(以下,形状比) のばらつきの影響も無視できない。特に形状比は,活着後 の成長に大きな影響を与えるとされている(例えば,Land-haeusser et al. 2012)。コンテナ苗の植栽後の活着・成長に関 するより普遍的な特徴を把握するためには,諸条件の異な る植栽試験の成果を数多く収集した上で,植栽試験ごとに 異なる影響を考慮しながら包括的に解析する必要がある。 そこで本研究では,コンテナ苗の植栽後の活着・成長に ついて,その一般的な特徴を把握し,1)コンテナ苗と裸 苗の植栽後の生存率および成長速度の違い,2)コンテナ 苗の植栽後の活着・成長に及ぼす樹種,試験地および苗木 供給元の影響を明らかにするために,1道7県,39カ所に おける個体ベースの植栽試験情報を利用して,コンテナ苗 および裸苗の植栽後の生存率・成長速度を推定する統計モ デルを構築し解析を行った。用いた統計モデルには,活 着・成長を左右すると考えられる樹種および植栽地,さら に苗木の栽培・保存方法の違いなどによる影響を階層変量 効果として組み込み,生存率・成長速度に影響を与える各 階層の効果についても評価した。 II.材 料 と 方 法 1.データ 本研究で解析に用いたコンテナ苗植栽試験情報の概要を 表―1に示す。これらは主に裸苗とコンテナ苗を同時に植 栽した試験を対象に収集しており,現時点で利用可能な情 報は北海道,福島県,栃木県,群馬県,茨城県,埼玉県, 石 川 県,高 知 県 に 存 在 す る39林 分 で,7,923個 体 分 の データを含む。対象樹種はトドマツ,ヒノキ,スギ,カラ マツ,グイマツの5樹種(カラマツにはカラマツ・グイマ ツの雑種,クリンラーチを含む),調査期間は植栽当年か ら4成長期後(0∼4年)であり,調査期間0年のデータ は,植栽年の測定値のみが存在していることを意味する。 本研究では,各試験における,苗タイプ(コンテナ苗/裸 苗)および樹種以外のカテゴリ−苗木生産者・コンテナ形 状・栽培方法・苗サイズ・仮置き期間−を,まとめて「苗 木供給元」という効果として扱う。苗木供給元は,データ 全体で112カテゴリ存在した。また HKD009(北海道)の クリンラーチ,ISK002(石川県)を除いて,全て実生苗 であった。 2.解析方法 本研究では,樹種や植栽試験の違いを超えた一般的なコ ンテナ苗の活着・成長の特性を明らかにすることを念頭に 置いた。そのために植栽後の苗の生存率・成長速度を推定 する統計モデルとして,苗タイプ(コンテナ苗/裸苗)を 固定効果として設定し,樹種,植栽地,苗木供給元,およ び樹高・直径成長については反復測定に伴う個体の影響を 変量効果として扱う一般化線形混合モデルを用いた。ま た,生存率・成長速度の苗タイプごとの平均値,およびこ れらのパラメータに対する樹種・植栽地・供給元ごとの影 響評価を行うために,階層ベイズ法を利用して各パラメー タの区間推定を行った。また植栽後の苗の成長・活着に影 響を与えると考えられている形状比については,一般化加 法混合モデルを用いて評価した。 1)生存率 植栽後の生存率がコンテナ苗/裸苗(苗タイプ)で異な るかどうか検証するために,それぞれの植栽試験において 測定時に記録された苗木供給元ごとの生存個体数 N を, 個体数変化をあらわす統計モデルに当てはめた。本研究で は,個体数変化をあらわすモデルとして時間 t(年)当た りの死亡率 d (0<d <1)が一定となる指数関数を仮定し た(Clark 2007,式(1))。 N ^=exp(−d *t+b) (1) ここで, N^は,モデルによる植栽 t 年後における個体数 の推定値,b は,それぞれの植栽試験における苗木供給元 ごとの初期個体数をあらわす。苗木供給元ごとの時間当た りの生存率 a は a=1−d であらわされ,苗タイプ(コン テナ苗/裸苗)および樹種の効果をあらわす階層事前分布 に基づくパラメータ aspに,調査地の効果および苗木供給 元をあらわす階層事前分布に基づく効果 esaplingが加算され るとした。

a=asp+esapling (2)

ここで苗タイプ別・樹種別に推定される aspは,苗タイ

プごとに推定されるパラメータ atype(平均0,標準偏差

100の正規分布に従う)を平均値とし,spを標準偏差と

(3)

する正規分布に従う。また,各調査地の中での苗木供給元 の効果をあらわす esaplingは,平均 esite,標準偏差 saplingの正

規分布に従い,調査地の効果をあらわす事前分布である esiteは,平均0,標準偏差 siteの正規分布に従うとした。

asp∼N(atype,2sp),atype∼N(0,100),

esapling∼N(esite,2site),esite∼N(0,2site) (3)

sp,site,saplingは,それぞれの逆数がパラメータ0.001, 0.001のガンマ分布に従うとした。そのうえで,t 年にお ける生存個体数の観測値 N は,パラメータとして r/( N+r),r をもつ負の二項分布に従うとした。 N(t)∼negativebinominal

N^+rr , r

(4) ここで r は,パラメータ0.001,0.001のガンマ分布に 従うとした。なお,コンテナ苗・裸苗のみが栽培された試 験であっても試験地の影響の変動幅を推定するための情報 を含んでいるため,これらの試験地のデータも解析に利用 した。ただし観測回数が1回のみの KUC020(高知県), QHQ026(茨城県),QHQ0027(茨城県)のデータは除外 した。 2)成長速度 植栽後の苗の樹高成長・直径成長を苗タイプ間で比較す るために,各試験における植栽苗の樹高 H および基部直 径 D の測定値について,個体成長をあらわす統計モデル に当てはめた。解析に使用したデータについて樹高・直径 の対数値と観測時間との関係を図示してみると,全観測期 間を通して直線的な関係を示しており,またデータの分布 も全観測期間を通して一様であった(J-STAGE 電子付録 付図―1)。そこで本研究では,個体の樹高・基部直径成長 のモデル化については指数関数式を採用した(式(5))。 ^St=exp(*t+) (5) 表―1.解析に用いた植栽試験の概要 試験地 ID 試験地所在地 樹 種 コンテナ・タイプ 苗齢(年)* 植栽時期 調査期間(年)**(測定回数) HKD001 北海道 中川郡 グイマツ リブ c:3,b:2 秋 2 (3) HKD002 北海道 常呂郡 トドマツ リブ c:3,b:4 秋 2 (3) HKD003 北海道 中川郡 トドマツ リブ c:4∼5,b:4∼5 春 1 (3) HKD004 北海道 中川郡 トドマツ リブ c:4 夏 1 (3) HKD005 北海道 中川郡 トドマツ リブ c:4,b:4∼5 秋 1 (2) HKD007 北海道 士別市 カラマツ スリット,リブ c:1∼2,b:1∼2 春 1 (3) HKD008 北海道 士別市 カラマツ スリット c:1 夏 1 (3) HKD009 北海道 士別市 カラマツ† スリット c:1∼2,b:1∼2 (2) HKD011 北海道 常呂郡 トドマツ,カラマツ スリット,リブ c:1∼4,b:1∼5 春 1 (3) HKD012 北海道 常呂郡 トドマツ,カラマツ スリット,リブ c:1∼4 夏 1 (3) ISK001 石川県 鹿島郡 スギ リブ 不明 秋 3 (3) ISK002 石川県 小松市 スギ M スター 不明 冬 1 (2) KUC019 高知県 香美市 スギ リブ c:2 春 4 (5) KUC020 高知県 土佐郡 スギ リブ c:3 秋 0 (1) QHQ001 茨城県 東茨城郡 スギ スリット,リブ c:3,b:4 秋 1 (2) QHQ002 茨城県 東茨城郡 スギ スリット,リブ c:2,b:3 春 1 (2) QHQ003 茨城県 東茨城郡 スギ スリット,リブ c:2,b:3 夏 0 (2) QHQ007 福島県 東白川郡 スギ リブ c:3,b:4 秋 4 (5) QHQ008 福島県 東白川郡 スギ リブ c:2,b:3 春 1 (3) QHQ009 福島県 東白川郡 スギ ― b:3 春 3 (5) QHQ010 福島県 西白河郡 スギ リブ c:3,b:4 秋 4 (5) QHQ011 福島県 須賀川市 スギ リブ c:2,b:3 春 4 (6) QHQ012 福島県 田村市 スギ リブ c:3,b:4 秋 4 (5) QHQ013 福島県 福島市 スギ リブ c:2,b:3 春 2 (4) QHQ014 茨城県 東茨城郡 スギ スリット c:2,b:3 夏 0 (2) QHQ015 福島県 安達郡 スギ リブ 不明 春 4 (6) QHQ016 栃木県 大田原市 スギ リブ c:2,b:3 夏 3 (5†† QHQ017 群馬県 渋川市 スギ リブ c:2,b:3 夏 3 (5†† QHQ018 福島県 東白川郡 スギ リブ c:2,b:3 春 2 (4) QHQ019 群馬県 高崎市 ヒノキ リブ 不明 春 2 (2) QHQ020 群馬県 高崎市 スギ リブ c:2,b:3 春 3 (2‡ QHQ021 群馬県 利根郡 スギ リブ c:2,b:3 春 1 (3) QHQ022 福島県 郡山市 スギ リブ c:2,b:3 夏 1 (3) QHQ023 群馬県 渋川市 スギ リブ c:2,b:3 夏 1 (3) QHQ024 群馬県 吾妻郡 ヒノキ リブ 不明 夏 1 (3) QHQ025 埼玉県 秩父市 スギ リブ c:2,b:3 夏 2 (2) QHQ026 茨城県 東茨城郡 スギ スリット,リブ c:3,b:4 秋 0 (1) QHQ027 茨城県 常陸太田市 スギ リブ c:3,b:4 秋 0 (1) QHQ030 福島県 福島市 スギ リブ c:2,b:3 春 0 (2) *c,コンテナ苗;b,裸苗。**調査期間0年の調査地は,植栽時の調査のみを実施。クリンラーチを含む。††裸苗の測定回数は3回。 年度測定データ無し。 壁谷・宇都木・来田・小倉・渡辺・藤本・山崎・屋代・梶本・田中 216

(4)

ここで,^Stは,植栽 t 年後における個体サイズ(樹高・ 基部直径)の推定値, は成長速度, は初期サイズをあ らわす。個体ごとに推定される成長速度  および初期サ イズ  は,それぞれ正かつ独立であり,苗タイプおよび 樹種の違いをあらわす階層事前分布に基づくパラメータ sp, spに,調査地,苗木供給元,および反復測定によって もたらされる個体差からなる階層事前分布に基づく効果 id.,id.が加算されるとした。

=exp(sp+id.),=(sp+id.) (6)

ここで苗タイプごと・樹種ごとに推定されるパラメータ sp, spは,それぞれ苗タイプごとに推定されるパラメータ

type, type(それぞれ平均0,標準偏差100の正規分布に従

う)を平均値とし,sp., sp.を標準偏差とする正規分布に

従う。また id., id.は,平均 sapling., sapling.,標準偏差 id.,

id.bの正規分布に従い,sapling., sapling.は,平均 site., site.,

標準偏差 sapling., sapling.の正規分布に従う。さらに site.,

site.は,平均0,標準偏差 site., site.の正規分布に従うと

した。

sp∼N(type,2sp.),sp∼N(type, 2sp.),

type∼N(0,100),type∼N(0,100),

id.∼N(sapling.,2id.),id.∼N(sapling.,2id.),

sapling.∼N(site.,2sapling.),sapling.∼N(site.,2sapling.),

site.∼N(0,2site.),site.∼N(0,2site.) (7)

sp,site,sapling,idは,そ れ ぞ れ の 逆 数 が パ ラ メ ー タ 0.001,0.001のガンマ分布に従うとした。そのうえで, 実際の時間 t における個体サイズの観測値 Stは,平均 log (^St),標準偏差 rの対数正規分布に従うとした。 St∼LogNormal(log(^St),2r) (8) なお解析においては,コンテナ苗・裸苗のみが栽培され た試験であっても,試験地・苗木供給元および個体の影響 の変動幅を推定するための情報を含んでいること,また測 定回数が1回のみの試験についても,初期サイズに関する 情報を含んでいることから,0年を含む全ての期間の測定 値を利用してパラメータ推定を行った。ただし植栽個体の 全ての樹高成長がマイナスであった QHQ019(群馬県), および,基部直径ではなく胸高直径が記録されている KUC019(高知県)は,それぞれ樹高成長,直径成長の解 析からは除外した。 生存率および成長速度の解析におけるマルコフ連鎖モン テカルロ法の計算には,JAGS2.3および R 3.1の RJAGS ライブラリを用いた。実際の計算には4本のマルコフ連鎖 を 用 い て,各 連 鎖500,000回 の 試 行 を 行 っ た。最 初 の 100,000回分の試行については推定値としては使用せず, 各連鎖内の自己相関の影響を避けるため,残り400,000回 の試行についても80回ごとにデータを採取した(=連鎖 内の各パラメータにつき5,000個の推定値を採取)。なお, 各連鎖の収束状況については,Gelman-Rubin 統計量(^R <1.04)と各鎖の軌跡を目視により確認することで判断 した。 3)形状比 樹高と直径の商である形状比は,植栽時の値がコンテナ 苗・裸苗で異なることが多く,個体成長に伴い一定の値に 収束する非線形的な振る舞いを示す。このため,形状比の 時間変化をノンパラメトリックな平滑化関数で表現可能な 一般化加法混合モデルを用いて解析を行った。形状比の苗 タイプ間比較のためのモデルは以下の通りである。 DHr(t)∼type+s(t)+random_effect+residual_error ここで DHr(t)は,植栽後 t 年における形状比であり, s(t)は,形状比のノンパラメトリックな時間変化をあら わす平滑化関数である。本研究では,苗タイプで同一の平 滑化関数を推定した場合と,苗タイプごとに異なった平滑 化関数を推定した場合との間で AIC を比較することで, 苗タイプ間の形状比の時間変化の違いを評価した。またモ デルには,変量効果(random_effect)として,調査地・苗 木供給元・個体の順で入れ子になった切片項を想定し,残 差誤差(residual_error)は対数正規分布に従うとした。な お植栽個体の全ての樹高成長がマイナスであった QHQ019 (群馬県),および,基部直径ではなく胸高直径が記録され ている KUC019(高知県),および,食害・先枯れによる 樹高減少が明記されている個体については,解析からは除 外した。形状比の解析には,R 3.1の gamm4ライブラリ を用いた。 III.結 1.活着 モデルから推定されたデータ全体での植栽苗の生存率 は,コンテナ苗で0.96年−1 (0.88∼0.99年−1 )(中央値, カ ッ コ 内 は95% ベ イ ズ 信 用 範 囲),裸 苗 で0.97年−1 (0.90∼1.00年−1 )であり,苗タイプ間で生存率の推定区 間はほぼ重なっていた。図―1に樹種別に推定したコンテ ナ苗と裸苗の生存率を示す。生存率の推定区間はいずれの 種においてもコンテナ苗と裸苗の間でほぼ同じ範囲に分布 しており,樹種間でも生存率の分布範囲はほぼ重なってい た。植栽苗の生存率は,試験地の影響を受ける例がみら れ,トドマツ・カラマツでは HKD011,HKD012,スギで は QHQ001 QHQ017, カラマツではHKD007, HKD009, において生存率が負の影響を受けていた(図―2)。一方で スギの QHQ012では,生存率は正の影響を受けていた。 同一試験地内にコンテナ苗と裸苗の両方が植栽された試験 地のうち,苗タイプの間で生存率を比較可能な31試験地 において,コンテナ苗の生存率と裸苗の生存率の分布範囲 を推定した結果(注:各苗タイプが複数の苗木供給元を含 む場合,苗タイプ全体での分布範囲を算出した),1試験 地(HKD011,トドマツ)ではコンテナ苗の推定生存率の 50% 範囲が裸苗の推定生存率の50% 範囲を上回ってい た。また,3試験地(QHQ001,QHQ013,QHQ017,いず 多点データからみたコンテナ苗の植栽後の特性 217

(5)

苗タイプごと・種ごとの生存率に 対する調査地の影響度 れもスギ)では,裸苗の推定生存率の50% 範囲がコンテ ナ苗の推定生存率の50% 範囲を上回っており,27試験地 ではコンテナ苗と裸苗の推定生存率の分布範囲がほぼ等し かった。生存率に対する苗木供給元の違いによる影響は小 さく,100苗木供給元中4例でのみ苗木供給元の効果の 95% 信用区間全域が負とな っ た(J-STAGE 電 子 付 録 付 表―2)。 2.成長 全データセットから推定した植栽苗の植栽時の樹高は, コンテナ苗で35.4cm(28.2∼43.0cm)(中央値,カッコ 内は95% ベイズ信用範囲),裸苗で40.7cm(31.5∼51.5 cm)であった。植栽時の基部直径の推定値は,コンテナ 苗 で5.2mm(4.6∼5.9mm),裸 苗 で7.4mm(6.2∼8.7 mm)であり,裸苗の方が大きかった。モデルから推定さ れたデータ全体での平均樹高成長速度は,コンテナ苗で 1.4 倍*年−1 (1.2∼1.7 倍*年−1 ),裸苗で 1.4 倍*年−1 (1.2∼1.6倍*年−1 ),平均直径成長速度は,コンテナ苗で 1.6 倍*年−1 (1.3∼1.9 倍*年−1 ),裸苗で 1.4 倍*年−1 (1.2∼1.7倍*年−1 )と,樹高成長,直径成長のいずれも 苗タイプ間で信用区間の分布範囲はほぼ重なっていた。 図―3に樹種ごとに推定した樹高および基部直径の成長曲 図―1.樹種別でみたコンテナ苗(c)および裸苗(b)の生存率のベイズ推定値(中 央値および95% ベイズ信用範囲) 図―2.植栽後の生存率に対する植栽試験地の 影響度のベイズ推定値(中央値および 95% ベイズ信用範囲) 影響度の分布範囲が0(図中縦線)を含まない場合, 生存率が苗タイプごと・種ごとの平均より高い(低 い)試験地であることを示す。シンボル樹種の違い をあらわし, ○はスギ, ●はヒノキ, △はトドマツ, ▽はカラマツ(ク リ ン ラ ー チ を 含 む),△▽は ト ド マ ツ・カラマツ,▲はグイマツをあらわす。 図―3.樹種別でみたコンテナ苗(c)および裸苗(b)の樹高・基部直径の初期サ イズおよび成長速度のベイズ推定値(中央値および95% ベイズ信用範囲) 壁谷・宇都木・来田・小倉・渡辺・藤本・山崎・屋代・梶本・田中 218

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線のパラメータ推定値を示す。樹種間で成長速度,とりわ け直径成長速度の違いはみられるものの,いずれの種にお いても樹高成長速度および直径成長速度の推定値の分布範 囲は,コンテナ苗と裸苗の間で大きく異ならなかった。 同一試験地内にコンテナ苗・裸苗の両方が植栽されてお り,樹高成長速度が比較可能な30試験地のうち,10試験 地ではコンテナ苗の推定樹高成長速度の50% 範囲が裸苗 の推定樹高成長速度の50% 範囲を上回っていた。また9 試験地では,裸苗の推定樹高速度の50% 範囲がコンテナ 苗の推定樹高速度の50% 範囲を上回っており,11試験地 ではコンテナ苗と裸苗の推定樹高成長速度の分布範囲がほ ぼ等しかった。同様に直径成長速度が比較可能な31試験 地のうち,19試験地ではコンテナ苗の推定直径成長速度 の50% 範囲が裸苗の推定直径成長速度の50% 範囲を上 回っていた。また2試験地では,裸苗の推定直径成長速度 の50% 範囲がコンテナ苗の推定直径成長速度の50% 範囲 を上回っており,10試験地ではコンテナ苗と裸苗の推定 直径成長速度の分布範囲がほぼ等しかった。 樹高成長速度,直径成長速度は,いずれも植栽地および 苗木供給元の違いによってばらつきが生じていた(図―4)。 図―4.苗木供給元別でみた,樹高・基部直径の成長 速度のベイズ推定値(中央値および95% ベ イズ信用範囲) 推定値の信用範囲が樹種ごとの成長速度の平均値(実線)お よびその95% ベイズ信用範囲(破線)を含まない場合,成長 速度が平均より大きい(小さい)苗木であることを示す。シ ンボルは○がコンテナ苗,▲が裸苗をあらわす。異なる背景 の塗り分けは,植栽試験の違いをあらわす。 多点データからみたコンテナ苗の植栽後の特性 219

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(a) (b) さらに一部の植栽試験では,苗タイプ別・樹種別の平均成 長速度およびその95% 信用範囲を大きく上回る(下回る) ものもみられた。また,測定回数が一度のみで成長速度が 不定となる KUC020,QHQ026,QHQ027は,成長速度の 信用区間の幅が非常に広くなっていた。苗木供給元の影響 のみに注目した場合,その95% 範囲全体が正(または負) であったのは樹高成長速度では110苗木供給元中12例(う ち,コンテナ苗3例),直径成長では,109苗木供給元中 12例(うちコンテナ苗5例)であった(J-STAGE 電子付 録付表―3)。 3.形状比 形状比に対する一般化加法混合モデルにおいては,平滑 化関数を苗タイプ別に推定し,かつ固定効果として苗タイ プ,樹種および両者の交互作用を加えたモデルが最良モデ ルとして採択された(表―2)。しかしながら植栽1年後に は裸苗とコンテナ苗の形状比は同程度となった(図―5)。 植栽後1年以降のデータのみを用いて解析した場合,平滑 化関数は苗タイプを分けずに推定した方が AIC が小さ かった(苗タイプを分けた場合,AIC=−1,682;分けな い場合,AIC=−1,712)。 IV.考 本研究においては,全樹種の平均値として推定した植栽 後の生存率および樹高・直径成長速度は,いずれについて もコンテナ苗と裸苗の間でほぼ等しい値を示した。この傾 向は樹種別にみた場合でも同じであり,コンテナ苗と裸苗 の植栽後の生存率および樹高成長・直径成長の明確な違い は,いずれの樹種においても認められなかった。 本研究で用いた試験結果においては,苗木の樹種別・苗 タイプ別の推定生存率の中央値はいずれも0.96∼0.98で あり(図―1),活着が比較的良好な試験の結果が多かった ことが窺える。城田(2014)は,県林試等でこれまでに各 地で行われたコンテナ植栽試験の活着率の40データを収 集して解析した結果,コンテナ苗植栽試験の活着率は二山 形の分布を取ることを示している。ただしそれぞれのモー ドは,100% と80% であり(城田私信),この結果におい ても公表されているコンテナ苗植栽試験の活着率は基本的 に高いことが示唆される。山川ら(2013)においても,ス ギ挿し木苗において,裸苗よりもコンテナ苗の方が活着率 が良いことが示されるものの,裸苗であっても95% の活 着率を示している。Rasanen(1982)はスウェーデン・フィ ンランドにおいて,植栽後2∼3年のコンテナ苗の生存率 は,多くの場合85∼90% であり,裸苗と同程度の活着能 力をもつため補植の必要がないと述べている。この水準で 考えた場合,1年当たりの生存率は0.95程度であり,本 研究で用いた多くの植栽試験はこの水準をみたしていると いえる。その一方で今回データを利用した植栽試験の中に は,活着成績が悪い試験地も散見される(図―2)。このな かで,QHQ001(茨城県,2013年秋植栽)は,寒風害によっ て致命的なダメージを受けた植栽試験である。また解析か らは除外しているが,QHQ027(茨城県,2013年秋植栽) も,寒風害により追跡調査が不可能となった試験地であ る。他の関東・東北地方太平洋沿岸地域の秋植え試験−た とえば,QHQ007(福島県,2010年秋植栽),QHQ010(福 島県,2010年秋植栽),QHQ012(福島県,2009年秋植栽) −はおおむね良好な生存率を示している。とはいえ裸苗で は,関東・東北地方太平洋側においては,霜害・凍結害・ 寒風害などの低温障害の危険性があり(大橋 1963;酒井・ 斎藤 1967),特に移植直後の苗は乾燥ストレスを受けやす い(酒井・斎藤 1967)ことから,冬期の降雪量が少なく 乾燥するこれらの地域における秋植栽の危険性は,以前か ら現場では指摘されている。さらに枯損にこそ至らなかっ たものの,ISK001(石川県,2011年冬植栽)においては, 霜害による植栽後の成長阻害が報告されている(図―4)。 表―2.一般化混合加法モデルを用いた形状比への植栽後年数・ 苗タイプ(コンテナ苗/裸苗)・樹種の影響解析の結果 モデル選択対象 モデルタイプ df AIC 平滑化関数 苗タイプ別 18 −3913.5 苗タイプ統合 16 −2989.4 なし 14 −1179.6 固定効果 (平滑化関数: 苗タイプ別) 苗タイプ,樹種, 苗タイプ×樹種 18 −3959.3 苗タイプ,樹種 14 −3957.4 苗タイプ 13 −3930.7 樹種 10 −3874.9 なし 9 −3760.5 太字の AIC は,平滑化関数・固定効果選択で最小の値を示す。 図―5.樹種別でみた,コンテナ苗(a)と裸苗(b)の形状比の 時間変化 シンボルは植栽からの経過年ごとにまとめた場合の各樹種の形状比の中央 値を示し,○がスギ,●がヒノキ,△がトドマツ,▽がカラマツ(クリン ラーチを含む), ▲がグイマツ。エラーバーは分布の95% 範囲をあらわす。 視認性を高めるため,x 軸方向にデータをぶれさせている点に注意。図中 の破線は,一般化加法混合モデルを用いた形状比の時間変化の推定値(一 般化加法混合モデルの結果は表―2参照)。 壁谷・宇都木・来田・小倉・渡辺・藤本・山崎・屋代・梶本・田中 220

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また HKD012(北海道,2013年夏植栽)においては,植 栽前後の降雨が極端に少なく,多くの苗が植栽直後に枯死 したと報告されている(来田私信)。一方で同様に活着率 が低かった QHQ017(群馬県,2011年夏植栽)において は,植栽前後に十分な降雨があり植栽直後の枯死は生じな かったものの断続的に食害を受け個体数が減少していた (データ未掲載)。このようにコンテナ苗であっても,地域 によっては,生じる気象現象・気象害のリスクを考慮した うえで植栽時期や植栽場所の検討する必要があるだろう。 本研究に限らず,コンテナ苗と裸苗の植栽後の成長に違 いがないという報告は幾つかなされている(例えば,平田 ら2014;岩井ら 2012;Rasanen 1982;山田・三樹 2015)。 本研究では解析に複数試験地データを用いたことで,より 一般的な傾向として,コンテナ苗と裸苗の成長速度の同等 性を示すことができたといえる。 その一方で,コンテナ苗の方が裸苗よりも成長が優れて いる例も存在するのは何故だろう(例えば,壁谷ら 2016; 宇都木ら 2015;横山・佐々木 2013)。一般にコンテナ苗 と裸苗とでは育苗条件が異なることに加え,出荷直前の施 肥・潅水条件や堀取り・仮置き等の出荷作業もさまざまで ある。露地植えの裸苗に比べてコンテナ苗の方が出荷直前 の管理が行いやすいだろう。そして植栽直後の個体では育 苗方法の違いの影響が強く残されており,その結果植栽直 後に限れば,コンテナ苗と裸苗のとの間に光合成能力・成 長速度に差が生じる場合もあるのだと考えられる(例えば, 原山ら 2016)。しかしながら植栽前にコンテナ苗がもって いた特性が植栽後の成長に影響を与える期間は限られてい る。たとえば Pinto ら(2011)は,ポンデローサマツのコ ンテナ苗において植栽1年目の成長は植栽時サイズでよく 説明できるが,2年目には説明力が大幅に落ちることを示 している。アカシア・マンギウムにおいてもコンテナ苗が 通常苗裸苗の成長速度を上回るのは植栽1年後のみであ り,植栽4年後には,樹高個体成長速度および幹重成長速 度は初期サイズとはほぼ無関係になる(Kamo et al. 2005)。 テーダマツでは,育苗時のコンテナサイズの違いがもたら す成長への影響は,植栽4年後にはみられなくなる(Dob-ner Junior et al. 2013)。また密植栽培されるコンテナ苗は 一般に形状比が高く(Thompson 1984),形状比の高い個 体は植栽直後の樹高成長が抑制される(Landhaeusser and Lieffers 2012)。本研究で用いた植栽試験においては,全樹 種を通じて,植栽時点では形状比の平均値が裸苗に比べて コンテナ苗で大きいが,植栽1年後にはこの差が解消され ていた。すなわち形状の観点からみても,コンテナ苗と裸 苗との差異は植栽後数年でなくなることが示唆される。こ のように,野外の同一環境で数年間生育することで,コン テナ苗と裸苗の量的・生理的・形態的な差はほぼ無視でき るようになるのかもしれない。その結果,本研究のような 複数年の成長過程を通して評価する解析方法では,コンテ ナ苗と裸苗との成長速度に違いはみられない,ということ になるのだろう。 本研究で解析に用いたコンテナ苗データは,同一樹種内 においても,育苗期間,コンテナ形状(リブ/スリット), 植栽時期等の違いを含んでいる。しかしながら,苗木供給 元の違いがもたらす樹高および直径成長の違いは予想以上 に小さかった。例えばスギ・コンテナ苗では QHQ001.N 01, QHQ002.N01, QHQ003.N01, QHQ014.N01, QHQ 014.N02,QHQ026.N01がスリット・コンテナ苗,それ以 外がリブ苗であるが(J-STAGE 電子付録付表―1),これら の間に明確な樹高成長の分布範囲の違いはみられない(図― 4,結果の詳細は,壁谷ら 2016)。ま た カ ラ マ ツ で は, QHQ015.N01,QHQ015.N02がリブ・コンテナ苗でそれ以 外がスリット・コンテナ苗であるが,樹高成長速度の分布 範囲は両者の間で違いがなかった。成長速度が樹種ごとの 平均値よりも大きくかつ同時に植栽された裸苗よりも大き かったコンテナ苗は,樹高成長では QHQ017.N02(群馬県, スギ,リブ,2年生小苗,形状比85.7),QHQ021.N02(群 馬県,スギ,リブ,2年生小苗,形状比74.9),HKD007. N03(北海道,カラマツ,スリット,2年生小苗,形状比 58.7),直径成長では ISK002.N01(石川県,スギ挿し木, M スター,形状比62.4),QHQ021.N02,HKD007.N01(北 海道,カラマツ,スリット,1年生苗,形状比124.2), HKD011.N04(北海道,カラマツ,スリット,1年生苗, 形状比113.2)であった。これらの個体を俯瞰すると,ス ギ挿し木苗の ISK002.N01を除いて通常より小サイズの苗 としてカテゴライズされたものであることが見受けられる (平均樹高40.0cm,平均直径4.5mm,J-STAGE 電子付録 付表―1参照)。また,樹高成長の良いコンテナ苗において は,カラマツでは植栽時の形状比が比較的小さいものの, スギでは他のコンテナ苗と同程度かわずかに大きかった。 現時点では事例が限られる点,および本研究で推定した成 長速度が相対成長速度(成長率)である点には注意する必 要はあるものの,雑草木との競争が激しくない環境におい ては,栽培期間の短縮がみこまれ植栽後の比較的大きい成 長速度によって初期サイズの不利益の補償が期待できる可 能性のある小苗の利用は,検討の余地があるかもしれな い。 本研究で解析に用いた個体数変動モデル・成長モデル は,比較的単純な線形モデルである。とはいえ,個体数・ サイズの時間変化量(直線の傾き)を評価することで,植 栽試験ごとの初期個体数や初期サイズ(直線の切片),お よび試験期間の違いを超越して生存率・成長速度の比較が 可能である。また樹種・苗タイプ(コンテナ苗/裸苗)・調 査林分以外の要素は,全て一つの変量効果(=苗木供給元) として同列に扱っているものの,モデルに明示的に組み込 むことで,植栽試験によってことなる諸条件の影響度も評 価できた。そしてその結果,苗木供給元の違いが苗木の生 存率・成長速度に大きな影響を与えた試験例は限られてい た(J-STAGE 電子付録付表―1,図―4)。将来的にデータの 蓄積が進めば,苗木供給元の内容をさらに細分化すること で,コンテナ形状・植栽時期・植栽方法などのより詳細な 多点データからみたコンテナ苗の植栽後の特性 221

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影響評価が可能となるだろう。 V.ま 複数調査地データを用いてコンテナ苗と裸苗を比較した 場合,植栽後の活着・成長の一般的な特徴は,樹種によら ずコンテナ苗と裸苗で同程度であった。したがって,本研 究で利用した試験では,裸苗の活着が悪い試験地ではコン テナ苗の活着も悪く,気象害のリスクがある地域では植栽 時期の検討が必要であることが示唆された。また,成長に ついては種ごとの平均成長速度から外れるコンテナ苗が幾 つかみられたものの,その数は限定的で変動幅は小さかっ た。したがって,コンテナ苗の植栽後の活着・成長の優位 性については過度の期待はせず,育苗のしやすさ,出荷時 期の柔軟性や植栽しやすさ等,育苗から植栽までの優位性 をいかに生かして行けるかが今後の重要な課題となろう。 本研究をまとめるにあたって,齊藤哲氏・荒木眞岳氏・櫃間岳 氏・田中憲蔵氏・右田千春氏には有用な意見を頂いた。関東森林管 理局・北海道立総合研究機構林業試験場・石川県中能登農林総合事 務所・高知県立森林技術センターには解析に用いたコンテナ苗植栽 試験情報をご提供頂いた。本研究は,農林水産省プロジェクト「革 新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体 系の確立) ―コンテナ苗を利用した低コスト再造林技術の実証研究」 で得られた成果の一部である。 引 用 文 献

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参照

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