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森吉山ダムにおける堤体盛土の情報化施工

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Academic year: 2021

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(1)

論 文

森吉山ダムにおける堤体盛土の情報化施工

―リアルタイム施工管理システムの試行―

小倉 公一

1

古屋 弘

2

疋田 喜彦

3

肥後 桂介

4

Intelligent Construction Work in Moriyoshizan Dam Projects:

Trial in-situ of Real Time Construction Management System

Kouichi O

GURA

Hiroshi F

URUYA

Yoshihiko H

IKITA

Keisuke H

IGO

従来のロックフィルダムの品質管理は,盛土材料別に試験施工を行い,工法規定による整然とした施工を 行うことが基本となる。施工中の品質管理には現場密度試験が採用されるが,品質管理試験に多くの時間 を要することから,新しい品質管理手法を確立することが施工の効率化および品質管理の省力化を図るう えで求められてきている。本報文は 3D-CAD・GPS・αシステムを用いた情報化施工管理システムを構築 し,施工の効率化・リアルタイム施工管理による品質管理の高度化に関して,新技術情報提供システムの 評価試験を兼ねながら,試行した事例について報告する。 キーワード:3D-CAD,GPS,加速度解析,情報化施工,現場計測 1.はじめに 国土交通省東北地方整備局発注の森吉山ダムは,米 代川水系小又川に建設されている堤高 89.9m,堤頂長 786m,堤体積 5,850,000m3という規模を有する中央コ ア型ロックフィルダムである。一般にフィルダムの堤 体盛土工事における施工管理は,設計に基づき本工事 着手前に試験施工にて決定した工法規定による施工管 理を行うとともに,日常管理としては現場密度試験に よるサンプリング試験が行われている。 今回,性能規定化に対する国土交通省の取り組みを 背景に新技術情報提供システム(NETIS)の評価試験 を兼ね,当ダム堤体盛土の品質管理において,大林 組・前田建設工業の開発技術である振動ローラに搭載 した加速度解析装置(αシステム)を用いて締固め施 工を行いながら地盤剛性や密度評価を行い,転圧回数 とともにリアルタイムで施工管理するシステムを試験 的に導入した。本報では施工面で信頼性確保を目的と して,発注者の了承の下,2 年にわたり実施した結果を 報告するものである。 2.システム概要 図-1 に導入したシステムの全体概要を示す。システ ムの要素技術は,GPS・αシステム・無線 LAN・3D-CAD・データベース(以下 DB と称す)サーバー・デ ータ配信用(以下 Web と称す)サーバーで構成され, これらを筆者らの情報化施工技術のノウハウでフィル ダム用に再構築したものである。 システムを構成する主要な技術を以下に示す。 2.1 αシステム 図-2 に示すように,振動ローラに加速度センサーと 解析装置を設置し,締固め施工を行いながら地盤の変 形係数・密度を算出し,面的な管理を行うシステムで ある。さらに GPS と組み合わせることで取得データ (転圧回数,地盤変形係数,密度等)は,位置・高さ情 報とセットとなり,平面図上で取得データ種別ごとの 表示ができるとともに統計的な処理も可能である。取 得したデータはシステム内のメモリに保存されるとと もに無線LAN を介して DB サーバーに格納される。 1株式会社大林組 生産技術本部ダム技術部 専門士 2株式会社大林組 生産技術本部基盤技術部 上席技師,工博 3株式会社大林組 生産技術本部基盤技術部 課長 4株式会社大林組 森吉山ダム JV 工事事務所 工事長

(2)

2.2 無線 LAN システム リアルタイム施工管理を行ううえで不可欠なシステ ムであり,今回は国土交通省の協力により,図-1 に示 すように国土交通省森吉山ダム工事事務所・JV 工事事 務所およびダムサイトまで光ケーブルを利用し,ダム サイトより重機間を無線にてネットワーク化している (図-3)。 2.3 3 次元情報(3D プロダクトモデル) 当技術は現場で取得した施工管理データを 3 次元 CAD と DB サーバーを利用し管理するシステムであ る。プロダクトモデルとは,従来は製品の設計から製 造・使用・保守・廃棄に至るまでのライフサイクルの 中で生じる様々な情報を統合的に記述したデータを意 味する。従来は製造業での利用が中心であったが,建 設分野でもその必要性と有用性が認識されつつあり, 本システムは重機土工による施工時の品質・施工管理 データを空間情報とセットにして,プロセス管理を行 うシステムである。したがって,品質管理,出来形管 理を行い,任意の帳票出力を行うことも可能である。 今回は実務的には職員の作業負担を減らすため,予め テンプレートを作成し,Web ブラウザのメニュー上か ら簡単な選択で作業指示書や日報等の管理帳票が出力 可能なシステム運用とした。図-4 に Web サーバーを介 してブラウザ上から作成・出力される日報出力例を示 す。 3.堤体盛土工事へのメリット 3.1 リアルタイム施工管理 地盤の変形係数・密度を振動ローラの転圧時に自動 判定することで,締固め施工を行いながら地盤の品質 評価を行うことができるため,均質な盛土体が造成で きる。また,その施工データおよび自動判定結果は, 無線LAN 等の通信回線を用いることで事務所の DB サ ーバーに順次転送される。したがって,職員は事務所 にいる場合にも,管理用PC にて現地の施工状況を随時 把握することができる(図-5)。 トリオン 森吉山現場事務所 インターネット型 VPN または、Software VPN 無線LAN 無線 LAN CAD PC Oracle DB Server インターネット VPN ルータ SonicWall VPN ルータ SonicWall 国土交通省 または 森吉山ダム工事事務所 出来形 進捗配信 加速度計 GPS 施工現場 大林組 (東京) 施工支援 システム 国土交通省東北地方整備局 管理用PC DBサーバー データ配信サーバー GPS 3D-CAD 施工現場 (ダム堤体) αシステム 重 機 加速度計 GPS トリオン 森吉山現場事務所 インターネット型 VPN または、Software VPN 無線LAN 無線 LAN CAD PC Oracle DB Server インターネット VPN ルータ SonicWall VPN ルータ SonicWall 国土交通省 または 森吉山ダム工事事務所 出来形 進捗配信 加速度計 GPS 施工現場 大林組 (東京) 施工支援 システム 国土交通省東北地方整備局 管理用PC DBサーバー データ配信サーバー GPS 3D-CAD 施工現場 (ダム堤体) αシステム 重 機 加速度計 GPS 無線 LAN システム 図-1 システムの全体概要 図-3 無線LAN システム (1)試験室側アンテナ施設 (2)中継局アンテナ施設 加速度解析装置, 無線LANユニット GPS 表示システム 加速度センサー GPS,無線LAN, 補正情報無線アンテナ αシステム 加速度解析装置, 無線LANユニット GPS 表示システム 加速度センサー GPS,無線LAN, 補正情報無線アンテナ αシステム 図-2 重機側システムの搭載状況 データサーバ (現場) 帳票作成サーバ (東京) Web:ブラウザから選択 (現場) Excel形式帳票 データサーバ (現場) 帳票作成サーバ (東京) Web:ブラウザから選択 (現場) Excel形式帳票 密 度 転圧回数密度平均密度 標準 偏差合格率 回 tm3t/m3t/m3 % 61.601.7790.005100.0 41.852.0600.008100.0 61.70 61.75 62.00 転 圧回 数 転圧 回数 凡例 施工 位置図 (平 面図) 施工 位置図 (断 面図) 森吉山ダム提体盛立日報 密 度 フィルタ 下流内部ロック 上流内部ロック 工事名 森 吉山ダム本体 建設第1工事 (第 2期) 計測結 果 請負者 施工日 2006年08月23日 大林・間・五洋特定建 設工事 共同 企業 体 エリア名称 エリア 29-35C170.8(2000007741) 29-35下流F170.8(2000007705) 29-35上流F170.8(2000007704) 施工部位 管理基 準値 計測値(終了時) コア 外部ロック 縦 断 図 勾配 計画高 地盤高179.495175.029170.563166.098161.764157.594153.616149.616145.663142.996141.700141.701141.701141.699135.468127.469119.469115.702115.673113.451111.229108.879107.715105.665103.13898.29493.93393.85494.28296.67699.296101.912101.917104.647107.742111.455115.171117.207120.320127.099138.960152.670172.642178.900 切土高 盛土高 累加 距離0.00020.00040.00060.00080.000100.000120.000140.000160.000180.000200.000220.000240.000260.000280.000300.000320.000340.000360.000380.000400.000420.000427.246440.000460.000480.000500.000506.070520.000540.000560.000579.962580.000600.000620.000640.000660.000680.000700.000720.000740.000760.000780.000786.712 単距離0.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.0007.24612.75420.00020.00020.0006.07013.93020.00020.00019.9620.03820.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.00020.0006.712

測点NO.0NO.1NO.2NO.3NO.4NO.5NO.6NO.7NO.8NO.9NO.10NO.11NO.12NO.13NO.14NO.15NO.16NO.17NO.18NO.19NO.20NO.21+7.246NO.22NO.23NO.24NO.25+6.070NO.26NO.27NO.28+19.962NO.29NO.30NO.31NO.32NO.33NO.34NO.35NO.36NO.37NO.38NO.39+6.712

平 面線形 曲 率 図 R= ∞L =427. 2 46 R= ∞L= 20 6.75 0 R= 250. 0 00L= 152.71 6 片 勾配 すり 付図01020304010203040 D L= 90 .0 1:1 00 0 1:200 100 .0 110 .0 120 .0 130 .0 140 .0 150 .0 160 .0 170 .0 180 .0 190 .0 計測結果の統計 施工箇所位置 密度管理結果 転圧回数管理結果 図-4 帳票出力(日報)

(3)

3.2 3 次元の面的管理 振動ローラの走行時,2m 区間の平均値として地盤変 形係数と密度をリアルタイムに判定し,これを50cm メ ッシュの位置情報およびその他転圧回数等とともに記 録・管理している。したがって,各メッシュには標 高・品質管理データが数値データとして格納されてお り,表示切替えにて,図-6 の施工管理データ概念図の ように,転圧回数・地盤変形係数・密度・標高といっ た各種の表示が可能である。 なお,αシステムは,コア・フィルター用の 10t 級 振動ローラ2 台,ロック材用の 20t 級振動ローラ 2 台 の計 4 台に対して導入した。各振動ローラは基本的に それぞれ上下流に分かれ,予め計画された施工エリア の施工を行うため,4 台の同時施工も問題なく行われ た。 4.試験計測 4.1 αシステムの振動ローラ加速度解析手法の概要 筆者らが提案する,αシステム(ローラ加速度応答 法)による地盤剛性の評価手法 1)の概念を以下に示す。 転圧の進行による地盤剛性の増加にともない,一般に 図-7 のように振動ローラの加速度波形が乱れ,その周 波数分析においては振動ローラの振動数以外の成分(高 調波スペクトルS1, S2, S3,…,ならびに 1/2 分数調波ス ペクトルS1’, S2’, S3’,…)が卓越してくることが認めら れる。この性質を利用し,式(1)に示す「乱れ率」 を定義する。乱れ率が大きいほど,地盤が締固まって いることを表す。 管理用PCにて リアルタイム確認 事務所側 管理用PC 施工状況 【職 員】 位置情報とともに品質管理情報を取得 加速度法による地盤剛性値 転圧回数 層厚 地盤変形係数 密度 管理用PCにて リアルタイム確認 事務所側 管理用PC 施工状況 【職 員】 位置情報とともに品質管理情報を取得 加速度法による地盤剛性値 転圧回数 層厚 地盤変形係数 密度 加速度法による地盤剛性値 転圧回数 層厚 地盤変形係数 密度 図-5 リアルタイム施工管理 転圧回数 地盤変形係数 転圧回数表示 地盤変形係数値表示 施工エリア 転圧回数等 の施工結果 データベース サーバー 各重機 【施工結果データの利用/機能】 •標高 •密度 •地盤変形係数 •乱れ率 •転圧回数 •締固め度 •層厚 各々メッシュ表示 【凡例色変更】機能 【メッシュデータ書出し】機能 GPS 加速度計 転圧回数 地盤変形係数 転圧回数表示 地盤変形係数値表示 施工エリア 転圧回数等 の施工結果 データベース サーバー 各重機 【施工結果データの利用/機能】 •標高 •密度 •地盤変形係数 •乱れ率 •転圧回数 •締固め度 •層厚 各々メッシュ表示 【凡例色変更】機能 【メッシュデータ書出し】機能 転圧回数 地盤変形係数 転圧回数表示 地盤変形係数値表示 転圧回数 地盤変形係数 転圧回数表示 地盤変形係数値表示 施工エリア 施工エリア 転圧回数等 の施工結果 転圧回数等 の施工結果 データベース サーバー 各重機 【施工結果データの利用/機能】 •標高 •密度 •地盤変形係数 •乱れ率 •転圧回数 •締固め度 •層厚 各々メッシュ表示 【凡例色変更】機能 【メッシュデータ書出し】機能 GPS 加速度計 図-6 施工管理データ概念図 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数1回 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数16回 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度振幅 スヘ ゚ク トル (G ) 転圧回数1回 S0 S1 S 2 S3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度 振幅 スヘ ゚ク トル (G ) S0' S3' S2 S2' S1 S1' S0 転圧回数16回 S3 加速度時刻歴 周波数分析結果 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数1回 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数16回 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度振幅 スヘ ゚ク トル (G ) 転圧回数1回 S0 S1 S 2 S3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度 振幅 スヘ ゚ク トル (G ) S0' S3' S2 S2' S1 S1' S0 転圧回数16回 S3 加速度時刻歴 周波数分析結果 地盤 硬 加速度センサー 地盤 軟 加速度センサー -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数1回 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数16回 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度振幅 スヘ ゚ク トル (G ) 転圧回数1回 S0 S1 S 2 S3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度 振幅 スヘ ゚ク トル (G ) S0' S3' S2 S2' S1 S1' S0 転圧回数16回 S3 加速度時刻歴 周波数分析結果 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数1回 -15 -10 -5 0 5 10 15 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(sec) ロ ー ラ 加速度 (G ) 転圧回数16回 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度振幅 スヘ ゚ク トル (G ) 転圧回数1回 S0 S1 S 2 S3 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0 30 60 90 120 150 振動数(Hz) 加速度 振幅 スヘ ゚ク トル (G ) S0' S3' S2 S2' S1 S1' S0 転圧回数16回 S3 加速度時刻歴 周波数分析結果 地盤 硬 加速度センサー 地盤 硬 加速度センサー 加速度センサー 加速度センサー 加速度センサー 地盤 軟 加速度センサー 地盤 軟 加速度センサー 加速度センサー 加速度センサー 図-7 振動ローラの加速度計測例と乱れ率の定義 フレーム 振動輪 防振ゴム 地盤 x y

k

2

m

1

m

2

k

1

c

1

c

2 F sin(2πft) (a) 振動ローラ (b) 数値計算モデル 図-8 振動ローラ~地盤系 数値計算モデル

(4)

    

+ 乱れ率 g m m F

S

S

S

S

i i i i ) ( 1 2 0 0 3 1 3 1

'

'

+

+

= = (1) さらに,藤山・建山 2)は,振動ローラの挙動を図-8 に示す振動ローラ~地盤系の 2 自由度振動モデルに置 き換えた数値計算による検討を行い,乱れ率と振動ロ ーラ機械諸元(フレーム質量m1,振動輪質量m2,振動 数 ƒ0,起振力 F,振動輪幅 B)ならびに地盤の変形係 数 E の関係を式(2)のように定式化し(νはポアソン 比),振動ローラの加速度応答値(乱れ率)から直ちに 地盤剛性を評価できる手法を提案している。通常,振 動ローラの加速度応答は,地盤条件のみならず振動 ローラの機種によっても異なるが,本システムでは機 械条件の影響を正規化した式(2)を用いることで任意の 機種に対しても適用可能である。 (2) 密度については,予め試験転圧時にキャリブレーシ ョンを行い,材料ごとに現場密度試験値とその付近で の加速度解析値から得られる乱れ率との関係を整理 し,較正式を求め,管理システムに登録しておく。 なお,αシステムでは振動ローラに機器設置後,予 め,起振走行時に取得した振動データの周波数分析を 行うことで,その振動ローラの振動数を確認すること ができる。図-9 は今回使用した 10t 級振動ローラ(基 本振動数30Hz)の例であるが、使用した 4 台の振動ロ ーラとも各機種の基本仕様どおりの振動数を確認して から計測を開始した。 4.2 従来手法とαシステムを用いた管理手法の概要 従来手法(日常管理手法)とαシステム(新技術) を用いた管理手法の概要を表-1 に示す。従来手法によ るフィルダムの施工管理は設計に基づき,本工事着手 前に試験施工にて決定した工法規定による管理を行う とともに,粒度・含水比を管理しながら,表-1 に示す 密度管理にて品質管理を行う。試験頻度は表-1 のよう に規定されている。 4.3 試験計測結果 (1)従来手法とαシステムの試験計測数の比較 試験計測期間は,平成18 年 7 月 1 日~10 月 31 日の 4 カ月間行った。表-2 に計測期間中の従来手法とαシ ステムによる試験個数および計測データ数を示す。単 純に数量で比較すべきものではないが,αシステムに よる計測データ数は,最も比率の少ないコアにおいて も従来手法による試験個数の実に1.9 万倍のデータ量と なる。また,参考として,表-2 に今回の試験計測期間 中の盛立施工数量を示すが,全堤体積(568 万 m3)の 16%に相当するものである。 次に,αシステムによる面的なデータ取得状況につ いて,管理標高(ここでは,各盛土材料の仕上り面が

(

)

(

)

(

)

2 2 1 2 2 2 0 2 2 1 1 64 . 1 1024 . 0 32 . 0 1 2 1 3 4 1 2 ⎟⎟ ⎠ ⎞ ⎜⎜ ⎝ ⎛ + − = + − + − ⋅ ⋅ ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ + ⋅ ⋅ − ⋅ g m m F m f B E α α α α π π ν           乱れ率 = 図-9 振動ローラの振動数確認例(10t 級振動ローラ) 加速度時刻歴 周波数解析結果 30 時間(sec) 振動数(Hz) 加速度時刻歴 周波数解析結果 30 時間(sec) 振動数(Hz) ② αシステム(新技術) コア フィルター 内部ロック 外部ロック 砂置換法 水置換法 試験孔サイズ φ30㎝×h30㎝ φ60㎝×h60㎝ 試験頻度 1回/2,000m3 1回/10,000m3 振動ローラでの振動締固め時(転圧面のほぼ全面) 乾燥密度ρd 1.60t/m3 1.85t/m3 1.70t/m3 2.00t/m3 従来手法と同様 試験方法 ① 従来手法(盛立施工管理基準) 振動ローラに取付けた加速度センサーと解析装置 により締固め地盤の乱れ率を求め、乾燥密度や地 盤変形係数に変換する。50㎝×50㎝を1メッシュと してデータを取得する。 水置換法 φ150㎝×h100㎝ 現場密度試験 1回/50,000m3 表-1 従来手法とαシステムの管理手法の概要

(5)

同一となる標高を管理標高と称す)でのデータ取得結 果の1 例を示す。αシステムでは 50cm メッシュ単位 で施工データが取得されることから,取得されたメッ シュ数からデータが取得できた面積が求められる。 表-3 に,管理標高面での設計面積に対するデータが 取得された面積割合(取得率)を示す。3 標高平均での 取得率は,コア・フィルターで 95%,外部ロックで 90%であった。参考として,3 標高面の平面上での取得 状況を図-10に示す。併せて,図-10には,各標高での 従来手法による試験位置もプロットした。 なお,100%のデータ取得とならなかったのは,以下 の理由によるものである。 ①障害物(観測計器設置箇所付近)のある箇所 ②GPS の電波障害や無線通信が障害物(盛土場の高 低差等)により不安定となった場合 ②については,本工事自体は工法規定による施工管 理を行うとともに,日常管理としては現場密度試験に よる管理が規定されており,工程面の制約から②の原 因によって転圧施工を中断することはできなかったた めである。したがって,システムのデータベース上, データが取得されなかった箇所についても,現場の施 工自体は,規定転圧回数での施工がなされ,現場密度 試験による確認が行われている。 今回のシステム試行から,現行の品質管理手法はサ ンプリング試験となるが,αシステムではこのように 面として品質に関するデータ管理が可能となる。 (2)αシステムによる密度評価時の適用材料に関する 検討 αシステムを試験適用した4 材料(コア,フィルター, 内部ロック,外部ロック)について,乱れ率と乾燥密 度(現場密度試験)の対応を整理した。用いたデータ は,αシステムの現場転圧試験(コア,フィルター) に加え,過年度(平成17 年度,18 年度)の盛立品質管 理試験データとαシステムによる対応する位置での施 工データも使い整理を試みた。図-11 に,各材料の対 応関係図を,表-4 に各材料のプロットデータの統計量 を示す。また,表-5 に一般的な相関係数の解釈の目安 を示す。これらより,コアは相関関係が低く,コア以 外の材料については,標本サイズが小さいという基本 的な課題はあるものの,比較的相関関係があると評価 される。コアはブレンド材ではあるが,主体は高含水 比粘性土である。よって,地盤が高飽和な状態にあ り,締固めを行っても地盤からの反力が増加せず,こ のため乱れ率が,図-11(a)のように密度の増加に伴っ て上昇せずに団子状態になっているものと推察され る。したがって,このような材料に対して,αシステ ムにて密度(締固め度)評価を適用する場合には,較 正式の設定の際に慎重な対応が必要となる。 なお,今回は乱れ率から乾燥密度への較正式の設定 に際しては,図-11 の青線の対数近似線(平均値近似) 施工部位 盛立施工数量 V(m3) 従来手法に よる現場密度 試験個数 αシステムに よる計測 データ数 コア 116,639 85 1,637,810 フィルター 90,569 10 570,513 内部ロック 10,826 1 47250 外部ロック 679,989 10 2,322,154 合 計 898,023 4,577,727 表-2 試験計測期間中の従来手法およびαシステム による試験・計測データ数 管理標高 EL 施工部位 設計面積 (㎡) 取得データ 面積(㎡) 取得データ 面積率 コア 8,250 8,234 99.8% フィルター 5,918 5,325 90.0% 外部ロック 47,842 43,770 91.5% コア 7,591 7,153 94.2% フィルター 5,593 5,527 98.8% 外部ロック 41,232 35,667 86.5% コア 7,004 6,753 96.4% フィルター 5,334 5,158 96.7% 外部ロック 34,648 31,949 92.2% コア 96.8% フィルター 95.2% 外部ロック 90.1% 166m 169m 172m 材料別取得データ面積率平均 ※設計面積は、3次元CADデータから当該標高での面積を求 めたものである。 表-3 αシステムによる試験データ取得率

EL166m 盤 EL169m 盤 EL172m 盤

従来技術よる試験位置 凡 例 ● : コア ● : フィルター ● : 外部ロック 図-10 管理標高でのデータ取得状況(転圧回数表示: 色塗り部がデータ取得部分)

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に対して,そのままではややばらつきがあることか ら,私案として安全側に 1.28σ下方にシフトした対数 近似線(赤一点鎖線,下方側 10%を許容)を採用し,こ れを管理システムに登録し,密度への換算を行った。 (3)試験計測結果 ここでは外部ロックを例に,各管理結果について示 す。まず,従来手法について,表-6 に試験結果一覧表 を,図-12 に乾燥密度の経時変化図を示す。なお,こ こで,従来手法の試験結果とは,計測期間中の森吉山 ダム品質管理試験値を示すものである。 従来手法については,試験値はすべて管理基準値を 満足しており,合格率は100%である。また,標準偏差 記号 コア フィルター 内部ロック 外部ロック 標本平均 1.803 2.095 1.967 2.046 標本標準偏差 σ 0.0246 0.0320 0.0355 0.0200 標本サイズ n 100 14 8 13 決定係数 R2 0.1119 0.2202 0.2591 0.4118 相関係数 r 0.335 0.469 0.509 0.642 X 表-4 乾燥密度の統計量と乱れ率-乾燥密度の相関係数 表-6 従来手法による試験結果 従来手法 上下流 管理基準値 t/m3 2.00 平均値 t/m3 2.046 最大値 t/m3 2.082 最小値 t/m3 2.019 範 囲 0.063 標準偏差 0.021 分 散 0.0004 変動係数 % 1.00 合格率 % 100 乾 燥 密 度 単位 個 10 試験個数 図-11 盛土材料別の乱れ率と乾燥密度の対応関係 y = 0.023Ln(x) + 1.8246 1.60 1.65 1.70 1.75 1.80 1.85 1.90 0.1 1.0 10.0 乱れ率 乾燥密度( 現場密度試 験)  (t / m 3) H17年度データ H18年度データ 盛立試験ρdmax 対数近似式-1.28σ α転圧試験 対数 (対数近似) 採用較正式:y=0.023Ln(x)+1.7931 (a)コア y = 0.0338Ln(x) + 2.0991 1.95 2.00 2.05 2.10 2.15 2.20 2.25 0.1 1.0 10.0 乱れ率 乾燥密 度( 現場 密度 試 験 )  ( t/ m 3) H17年度データ H18年度データ 盛立試験ρdmax 対数近似式-1.28σ α転圧試験 対数 (対数近似) 採用較正式:y=0.0338Ln(x)+2.0581 (b)フィルター y = 0.0958Ln(x) + 1.9328 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 0.1 1.0 10.0 乱れ率 乾 燥密度 (現場密度試 験) (t /m 3) H17年度上流内部ロック H18年度上流内部ロック H17年度下流内部ロック H18年度下流内部ロック H18年度下流内部ロックⅡ 盛立試験ρdmax 対数近似式-1.28σ 対数 (対数近似) 採用較正式:y=0.0958Ln(x)+1.8874 (c)内部ロック y = 0.0476Ln(x) + 2.0305 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 0.1 1.0 10.0 乱れ率 乾燥密度(現場密度試験)  ( t/ m 3) H17年度データ H18年度データ 盛立試験ρdmax 対数近似式-1.28σ 対数 (対数近似) 採用較正式:y=0.0476Ln(x)+2.0049 (d)外部ロック 相関係数の絶対値 解  釈 0.0~0.2 ほとんど相関関係がない 0.2~0.4 やや相関関係がある 0.4~0.7 かなり相関関係がある 0.7~1.0 強い相関関係がある 表-5 相関係数の一般的な解釈 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乾燥密度ρ d (t / m 3) 外部ロック(上流側) 外部ロック(下流側) 管理基準値 ρd=2.0(t/m3) 図-12 従来手法による乾燥密度測定値の経時変化

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は0.021 と試験数が少ないにもかかわらず小さな値を示 している。標準偏差が小さいことを反映し,変動係数 も1.00%と小さな値を示す。 次にαシステムについて,表-7 に計測結果一覧表 を,図-13 にエリア毎の乾燥密度の平均値の経時変化 図を示す。αシステムでは,取得データ数(メッシュ 数)から推定する1 エリア当りの平均施工数量は 1,302 m3となり,1 施工エリア毎に統計量を採取する場合, 従来手法の試験頻度1 回/50,000m3と比較して,データ 取得量は非常に高いと考えられる。また,図-13(a)よ り,エリア毎の乾燥密度平均値は管理基準値を上回っ ている。表-7 より,エリア毎の乾燥密度平均値の変動 係数は,0.52~0.53%と従来手法の値よりもさらに小さ い値である。しかし,乾燥密度の合格率平均値は 96.5 ~96.7%となり,図-13(b)のエリア毎の合格率の経時 変化図でも,計測期間(4 カ月)を通じて変動してお り,従来手法による現場乾燥密度の試験値との相関は 認められない。 図-13(a)エリア毎の乾燥密度平均値の経時変化図に は,従来手法による試験値を併記しているが,従来手 法による試験値のほとんどはαシステムにより得られ た値よりも上方に位置する。これは加速度解析から得 られる乱れ率をもとに下方側 10%を許容する近似式 (対数近似-1.28σ)より求めていることに起因する。 5.αシステムによるフィルダム堤体盛土の管理手法に 関する考察 ここでは前章に示す方法にて計測し,加速度応答解 析にて得られた乱れ率から較正式にて算出された乾燥 密度をもとに,今回の面的な管理手法について考察を 行った。 5.1 αシステムの有用性 以下に,従来手法に対して,αシステムを導入した 場合の有用性について示す。 (1)品質評価指標のリアルタイムな確認 αシステムによる密度(締固め度)評価において は,材料により精度に課題はみられるものの,密度や 地盤変形係数といった品質評価指標が施工しながら, リアルタイムに多点にて得られることから,不良箇所 を早期に発見でき,施工の手戻りが少なくなるといっ たメリットが挙げられる。 (2)盛土材料の均一性の確認 αシステムを用いることで、面的に盛土材料の均一 性(ないしはばらつき具合)の確認が可能となる。こ れにより,材料管理へのフィードバックや盛土材の現 場密度試験による追加品質確認といった対応が速やか ※αシステムの場合にはエリア毎の合格率の平均を示す。 表-7 αシステムによる計測結果 上 流 下 流 個 1,493,857 828,297 個 286 160 平均メッシュ数 個 5,223 5,177 平均盛土量 m3 管理基準値 t/m3 2.00 2.00 平均値 t/m3 2.022 2.022 最大値 t/m3 2.038 2.048 最小値 t/m3 2.008 2.006 範 囲 0.030 0.042 標準偏差 0.011 0.010 分 散 0.0001 0.0001 変動係数 % 0.53 0.52 合格率 ※ % 96.5 96.7 αシステム 単位 1,302 1エリ ア当り エ リ ア 毎 の 乾 燥 密 度 平 均 値 合計メッシュ数 エリア数 外部ロック(上流) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乾燥 密度 変 動係 数 (% ) 外部ロック 上流 (c)エリア毎の乾燥密度の変動係数 0 20 40 60 80 100 120 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 合格 率 ( % ) 外部ロック 上流 (b)合格率 (a)エリア毎の乾燥密度平均値と標準偏差 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乾 燥密度平均 値ρd (a v e) (t / m 3) 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030 0.035 0.040 標準 偏差 平均値 (参考)現場密度試験結果 標準偏差(右軸) 管理基準値ρd=2.0t/m3 図-13 αシステムによる乾燥密度平均値の経時変化

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に行える。 (3)従来手法の補完性 従来手法では,例えばロック材の場合,日常管理の 現場密度試験は 1 回/50,000m3となっており,盛土量 50,000m3ごとに 1 箇所の水置換法による現場密度試験 が行われる。この 1 箇所の試験結果にて,50,000m3 盛土の品質を代表して評価している。そして,盛土材 料の粒度・含水比を管理することで同じ材料であると いう仮定条件のもと,次の 50,000 m3に達するまでの 間,工法規定による施工管理が行われる。当システム を導入することで,従来手法における 50,000m3ごとに 1 回実施される現場密度試験間を十分に補完可能なもの である。 (4)安全性の向上 αシステムによる評価の信頼性が向上し,品質管理 の日常管理手法が,従来手法から当システムに計測方 法が替わると,現場計測における人的作業が減少し, 安全性が向上する(図-14,表-8 参照)。 5.2 加速度応答解析を用いたデータの取り扱いに関す る考察 これまでの結果から,多数のデータが取得できるこ とで,精度の高い品質管理が行えることはわかった が,従来手法(現場密度試験)と加速度応答解析結果 を用いた密度換算の違いに注意しなければならない。 図-15 には,加速度応答解析結果から図-16 に示す密 従来手法 αシステム 度較正式を介して算出した現場乾燥密度の変動係数を 示す。変動係数は0.4~0.5%と非常に小さい。 しかし,加速度応答解析による乱れ率は図-17 に示 すように遷移し,変動係数の平均値は 22%程度であ る。とくに面的な管理である今回の加速度解析は材料 に鋭敏に反応することから,取得データのばらつきは 大きくなる傾向があり,今回のデータもこのようなば らつきが発生したものと考える。図-15 において変動 係数が小さくなった理由は,密度換算(対数近似)に よりデータのレンジが小さくなったことに起因する。 このような結果を踏まえ,加速度解析結果を密度換算 式を介して表記した結果に若干の考察を加える。 まず,取得データからの解析値(乱れ率)のばらつ きに関しては,地盤の空間的な強度分布は変動係数が 30%を超えることもあることから 3),よりリアルに現 場における土(この場合ロック材)の相対的な性状変 化を捉えており,厳格な材料・施工管理を行うフィル ダム現場においてもこの程度のばらつきは発生しうる ものと考える。密度換算式を利用して現地密度を評価 図-14 従来手法とαシステムによる試験計測状況 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乾燥密 度 変動係数 (% ) 外部ロック 下流 図-15 加速度応答解析から算出した乾燥密度の変動係数 材 料 計測作業 人員(人) 1孔当り作業 時間(h) 備  考 コア 2 0.75 砂置換;職員1名、土工1名 フィルター 3 2.0 水置換;職員1名、土工2名 ロック 5 3.5 水置換;職員1名、土工3名       バックホウオペ1名 表-8 従来手法(現場密度試験)に要する作業人員と現 場作業時間 y = 0.0476Ln(x) + 2.0305 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 0.1 1.0 10.0 乱れ率 乾燥密度( 現場密度試験)  (t /m 3) H17年度データ H18年度データ 盛立試験ρdmax 対数近似式-1.28σ 対数 (対数近似) y = 0.0476Ln(x) + 2.0049 (y = 対数近似式 - 1.28σ) 図-16 密度換算手法(外部ロック)

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しようとしたのが今回の事例であり,今回の方法で取 得・解析したデータは基のデータの統計的な信頼性 (この場合は基のデータの変動係数)も検討し,その 信頼性をチェックする必要がある。 しかし,図-16 に示すような密度と乱れ率の相関性 が高い場合,施工中にリアルタイムに地盤の物理量が 取得できることは大きな利点であり,適用土や運用に 注意を加えれば有効な管理手法であると考える。 6.当技術の新たな利用方法の可能性 今回の適用現場では従来手法によるフィルダムの施 工管理として,本工事着手前に試験施工にて決定した 工法規定による施工管理を行うとともに,粒度・含水 比を管理しながら密度管理にて品質管理が行われた。 これに対して,当技術を利用することで,振動ロー ラにて締固め施工を行いながら,地盤の密度評価が面 的に可能となる。1 例として,図-18 に,外部ロックの 1 施工エリアを例に,転圧回数の増加に伴う合格率の推 移を示す。ここで,合格率とは転圧した全メッシュ数 に対する管理基準密度以上となったメッシュ数の割合 を示すものである。図より,当初の試験施工にて設定 された転圧回数(6 回)が妥当であったことが示されて いる。また,全施工エリアで同様な傾向が見られれ ば,転圧施工を行いながら管理基準密度に達した範囲 は順次転圧を終了し,基準密度に達していない範囲の 施工へと移行していくことが可能となる。したがっ て,当技術の利用は,施工効率の向上に繋がる可能性 を秘めている。 次に,当技術を用いた施工管理プロセスのイメージ を図-19 に示す。当技術を用いると,予め 2 次元情報 の設計図書(平面図・断面図)から 3 次元データに変 換・作成しておくことで,施工指示はこれを使った電 子データとしてオペレータへ届く。したがって,従来 の施工指示が職員から職長へ,職長からオペレータへ と伝達される流れから簡略化されるとともに,電子デ ータにて確実にオペレータへ指示事項が届く。また, 施工・品質管理データが施工しながら自動的に 3 次元 データベースに登録されることで,いつでも任意の部 分を取り出して品質確認を行うことができることか ら,施工のプロセス管理が明確になるといったメリッ 0.0 1.0 2.0 3.0 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乱れ率 平均値 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 標準 偏差 平均乱れ率(左軸) 標準偏差(右軸) (a)平均値・標準偏差 0 10 20 30 40 50 2006/7/1 2006/8/1 2006/9/1 2006/10/2 2006/11/2 日付 乱れ率 変動係 数 (%) . 外部ロック下流 (b)変動係数 図-17 加速度応答解析の「乱れ率」の遷移状況 転圧回数の増加に伴う合格率の推移 密度表示 凡 例 (単位:t/m3 50 60 70 80 90 100 110 0 1 2 3 4 5 6 7 転圧回数 (回) 合格率  ( % ) 図-18 ある施工エリアの転圧回数の増加に伴う合格率の 推移 3次元データベース 設計 図 書 平面 図 ・ 断 面 図 3次元 デ ー タ 施工 エ リ ア 作 成 ( 職 員 ・ 職 長 ) 情報 化 施 工 ( オ ペ レ ー タ ) 施工 管 理 図 書 竣工 図 書 (2次元) 変換 電子 データ 電子 データ 電子 データ 電子 データ 3D-CAD αシステムによる 面的品質管理 電子 データ 任意 抽出 3次元データベース 設計 図 書 平面 図 ・ 断 面 図 3次元 デ ー タ 施工 エ リ ア 作 成 ( 職 員 ・ 職 長 ) 情報 化 施 工 ( オ ペ レ ー タ ) 施工 管 理 図 書 竣工 図 書 (2次元) 変換 電子 データ 電子 データ 電子 データ 電子 データ 3D-CAD αシステムによる 面的品質管理 電子 データ 任意 抽出 図-19 施工管理プロセス例

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トが挙げられる。 7.おわりに 今回のシステム試行にて,以下の点が確認できた。 ①システムとしての信頼性 ②リアルタイム施工管理が可能である点 ③3 次元の面的管理が可能である点 今後の課題としては,以下の点が挙げられる。 ①システム導入時にイニシャルコストがかかる点 ②αシステムによる密度評価の信頼性 ③αシステムによる密度評価が可能な材料範囲の吟 味 ②については,現状では加速度解析値から密度換算 への較正式の決定の際に安全代を見込んだ較正式を採 用している。今後,リアルタイム性や面的管理,トレ ーサビリティーといったメリットをご理解いただき, 多くの現場にてデータを蓄積していくことが重要と考 える。各種の盛土材料に対してデータを蓄積すること で,較正式の精度・信頼性を高め,適用可能材料範囲 を明らかにし,現在の点管理による密度調査を検証・ 補完する位置付けから,更なる展開へ可能性が広がる ものと考える。 今回のリアルタイム施工管理システムの試行は,NETIS 試行申請型の評価試験として実施させていただいたもので あり,国土交通省東北地方整備局森吉山ダム工事事務所の 方々には,計測機会の提供や通信環境の構築に当り,ご理 解とご協力を賜り,心より感謝する次第である。 参考文献 1) 古 屋 弘 , ほ か :振動ローラ加速度応答法による路 床プルーフローリング装置の開発,第39 回地盤工学研 究発表会,1309-1310,2004 2) 藤山哲雄,建山和由:振動ローラの加速度応答を利用 した転圧地盤の剛性評価手法,土木学会論文集,No. 652/III-51,115-123,2000

3) Phoon, K. K., Kolhawy, F. H. and Grigoriu, M. D.: Reliability Based Design of Foundations for Transmission Line Structures, Report TR-105000,

Electric Power Research Institute, Palo Alto, 1995

(2008 年 5 月 12 日 受理)

Field banking tests are ordinary carried out to specify the construction method to control the quality of the rock-fill dam bank. While constructing dam body, in-situ density tests are executed to judge the fill quality. But the tests need a lot of time and effort, so a new quality management system is demanded.

This paper reports about the trial case of the real time fill quality management system using the 3D-CAD, GPS, and “α-system”.

This trial case is also put into operation to be evaluated by the New Technology Information System (NETIS).

Key words: 3D-CAD, GPS, acceleration analysis, intelligent construction work, field monitoring

参照

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