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Tokyo Medical and Dental University 東京医科歯科大学教養部研究紀要第 41 号 :33 50(2011) 東京医科歯科大学学生のフィットネスに関する研究 フィットネスキャンプの試行的導入 水野哲也 * 中村千賀子 ** 田井健太郎 * 井田博史 * 谷木龍男 **

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東京医科歯科大学学生のフィットネスに関する研究

―フィットネスキャンプの試行的導入―

水野哲也* 中村千賀子** 田井健太郎* 井田博史* 谷木龍男*** 木村真奈美****

A Study on Fitness in

Varsity Students at Tokyo Medical and Dental University:

A Trial Use of “Fitness Camp”

Tetsuya Mizuno*, Chikako Nakamura**, Kentaro Tai*, Hirofumi Ida*, Tatsuo Yagi***, Manami Kimura****

ABSTRACT

This study examines the effects of “Fitness Camp” (including Micro Laboratory Training), a liberal arts educational program designed to improve student "self-care" and communicative competence.

The results can be summarized as follows:

1) POMS scores for Tension-Anxiety and Depression-Dejection decreased significantly after“Fitness Camp” (Tension-Anxiety (t(14) =-2.30,p<.05), Depression-Dejection (t(14) =-3.82,p<.01)). The Vigor Score increased significantly (Vigor (t(14) =2.74,p<.05).

2) STAI-JYZ State and Trait Anxiety scores decreased significantly (State Anxiety (t(14) =-5.28, p<.01), Trait Anxiety (t(14) =-2.84,p<.05)).

3) The score concerning "negative feelings and an unsettled state of mind" on the mental fitness scale significantly decreased (t(14) =-2.42,p<.05).

4) The communicative competence score on the human relationship checklist increased significantly (t(14)=3.48,p<.01).

5) The responses of the students participating in the communication program suggest the following:

① Students learned what it is to "understand people as they are". ② Students were able to reflect on how they related to others. ③ Students were able to learn about “medical care communication”.

④ Students experienced the enjoyment and security of being understood by others.

⑤ Students noticed the existence of particular feelings and learned the difficulty of

* Laboratory of Health Sciences and Physical Education, The College of Liberal Arts and Sciences, Tokyo Medical and Dental University

** Laboratory of Behavioral Sciences, The College of Liberal Arts and Sciences, Tokyo Medical and Dental University *** Faculty of Law, Seiwa University

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understanding feelings.

⑥ Students were able to reflect on how they built relationships of mutual trust.

⑦ Students noticed that relationships of mutual trust are fundamental for understanding other people.

The results of this study therefore suggest that participation in “Fitness Camp” improved the communicative competence and mental well-being of the student participants. And student evaluations of the fitness camp were extremely positive. In conclusion, the educational goals of the fitness camp were achieved.

Keywords / Fitness Camp; self-care; communication; Micro Laboratory Training; mental well-being

はじめに  平成3年に大学設置基準が大綱化されて早20年が経とうとしている。その間、平成7年3月 に世界を震撼させる「地下鉄サリン事件」が起きたことから、我が国では高等教育をはじめと したあらゆるレベルでの教育内容、特にその根本ともいうべき“現代社会における「教養」と は何か?”が問い直されることとなり、平成14年には中央教育審議会から「新しい時代におけ る教養教育の在り方について」という答申が発表され1)、全国の大学においても教養教育組織 の在り方やその教育方法の見直し(「くさび型」カリキュラムやセメスター制の導入など)が 進み、平成11年から義務付けされた各大学の自己点検・評価と併せ、教養教育を含む大学教育 全体の改革が進められている。また、日本学術会議は平成20年、グローバルな知識基盤並びに 学習社会化の進展に伴いその質が問題となっている大学教育に関して、文部科学省からその「分 野別質保証の在り方」について審議を求められ、本年(平成22年)7月にその回答を公表した。 その中で、日本学術会議(大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会)は、その内容を、Ⅰ. 分野別の質保証の枠組みについて、Ⅱ.学士課程の教養教育の在り方について、Ⅲ.大学と職 業との接続の在り方について、の三分野に分けてまとめ、教養教育についての提言においては、 その多様性を認めつつ、その原点は民主主義社会を支える市民の育成にあることを再認識する 必要性を述べ、さらにその市民性を社会の公共的課題に対して立場や背景の異なる他者と連帯 して取り組む姿勢と行動として再定義した上で、現状の課題や困難を、未来において作り変え、 改善されるべき対象と考えるような想像力、構想力を培うことが教養教育の重要な内容となる と述べている2)。  またここで、さらにこの回答について付記するとすれば、「市民としての連帯の背骨となる 新たな知の共通基盤を形成する上で、例えば、現代社会の諸問題を、一義的な正解の存在しな い問題として徹底的に思考させることや、新たな科学技術リテラシー教育を含む、分断されて いる文系と理系の橋渡しに寄与する取組みは重要な意義を持つであろう」と述べ、「コミュニ ケーション能力の育成に関しては、一方的な情報伝達ではない「対話」という視点を重視すべ きである。そこでは、自らとは異なる意見、感覚を持つ人々と出会い、「聴く」能力の育成が 課題となる。同時に、合意できないものは合意できないままに協働の可能性を探る、あるいは 意見の対立を残しつつ決定する、といった「賢慮」を培うことも忘れてはならない。また、特 に言語能力ということで言えば、日本語のしっかりした運用能力を鍛えることがすべての基本

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となることを認識し、教育方法の開発を含めて、そのための取り組みを充実すべきである。こ の他、英語教育・外国語教育の在り方や、インターネットの可能性と問題点、芸術や体育の持 つ意義等について述べるとともに、教養教育を担う教員の資質自体が危機的な状況にあること に警鐘を鳴らし、最後に、社交空間でもある大学の存在自体が、「隠れたカリキュラム」とし て学生の人間的な成長に重要な役割を果たすものであることを指摘する」としている2)。  こうした背景の中、本学教養部では平成20年より教育再生のための政策対応経費を受け、“医 療系大学におけるリベラルアーツ教育の再構築とその高度化”事業を進めている。その中で我々 は教養教育の一つの柱としてコミュニケーション能力を含むフィットネスマネージメント系教 育を立ち上げ、その充実を図っている。今回はこのフィットネスマネージメント教育系プログ ラムのひとつとして実施した転地合宿プログラム(以下フィットネスキャンプ2009)について その教育効果を検証したのでここに報告する。 方法  今回我々は、教養教育のひと つとして“学生の心身のフィッ トネスを高めること”を目的と し、そのセルフケア並びにコミ ュニケーション能力の向上を目 標とした教育プログラム「フィ ットネス&コミュニケーショ ン」を立案し、2009年度授業に おける選択必修科目として実施 した。このプログラムは、表1 に示したようにガイダンス、セルフケア1~4、コミュニケーション1~3そして3泊4日の 転地合宿研修によって構成され、前半では通常の授業同様、国府台地区においてbiologicalな視 点から運動生理の基礎と体力管理を、psycho-socialな視点からコミュニケーションの基礎理論 と実習を行い、後半では千葉県館山市にある本学の研修施設・大賀寮に宿泊し、マイクロラボ ラトリートレーニング(Micro Laboratory Training以下MLT)を含むグループ体験学習を中 心とした合宿プログラムをとおしてトータルなフィットネスマネージメントの基礎実践力を養 うものである。 Ⅰ.フィットネスキャンプ2009の検討 [研究対象・実施時期]  対象は本学教養部に在籍する大学生15名(男子12名、女子3名)、平均年齢は20.6(SD=2.89) 歳であった。また、調査並びに転地合宿プログラムは、2010年2月21日から24日の間に行われた。 [倫理的配慮]  倫理的配慮として、本研究は東京医科歯科大学教養部倫理審査委員会において承認を得て実 施するものであり、調査等の実施前に書面等でセルフケアについては保健体育学を専門とする 教員がその実施内容を説明するとともに行動科学を専門とする教員がコミュニケーション能力 表1 フィットネス&コミュニケーションプログラム 1回目 10月2日 ガイダンス・セルフケア1 2回目 2月8日⑴ セルフケア2、 フィットネス理論 3回目 2月8日⑵ セルフケア3、 運動の基礎生理 4回目 2月8日⑶ セルフケア4、 疲労の評価 5回目 2月18日⑴ コミュニケーション1、 自己理解 6回目 2月18日⑵ コミュニケーション2、 他者理解 7回目 2月18日⑶ コミュニケーション3、 相互理解 合宿形式 2/21~2/24 フィットネスキャンプ 2009

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を高めるための演習としてのMLTを転地での合宿研修形式で行う旨の説明を行い、上記学生 15名に説明会後本プログラムへの参加を求め、全員から承諾の確認を求めた。 [手続き]  対象が参加したフィットネスキャンプ2009のプログラムは別表-フィットネスキャンプ日程に あるように一日目の朝、大学に集合し、その後バスで千葉県館山市にある本学合宿研修施設(大 賀寮)に転地し、3泊4日のうちの約16時間をMLTなどのコミュニケーション能力改善のため の人間関係トレーニングに費やすとともに、そのスケジュール中にヘルスツーリズムで実施さ れる運動、栄養、休養の実践的基礎を学ぶプログラムが組み合わされたもので、プログラム実 施後再びバスで大学に戻り、まとめの講義とレポートを作成するというものであった。  なお、事前、事後の調査並びに測定は、フィットネスキャンプ2009における転地直後と転地 施設でのプログラム終了直後に実施した(フィットネスキャンプ日程表参照)。 2月21日 集合 出発 バス(車中) 到着 昼食 全体説明と事前チェック Session 1 話された内容の理解 休憩 Session 2 話す人の感情の流れ 夕食 入浴 EX リラクゼーション フリータイム 就寝 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 フィットネスキャンプ 日程 2月22日 起床 海岸散策 朝食 Session 3 話し手と聴き手 Session 4 スモールグループディスカッション 1 昼食 休憩 Session 5 スモールグループディスカッション 2 Session 6 MLT 1 夕食 入浴 EX リラクゼーション フリータイム 就寝 2月23日 起床 海岸散策 朝食 Session 7 MLT 2 Session 8 MLT 3 昼食 フリープログラム (温泉入浴、散策、運動プログラムほか) 休憩 講義(まとめ) 人間関係とコミュニケーション 夕食 入浴、ほか EX リラクゼーション フリータイム 就寝 2月24日 起床 海岸散策 朝食 講義 トータルフィットネス  事後チェック 休憩 昼食 出発 バス(車中) 到着 レポート作成 (TFAS使用) 解散 2月21日 集合 8:40 東京医科歯科大学・教養部(市川市国府台) 出発 9:00 2月22日、23日 終日、館山市大賀 滞在 2月24日 出発 13:00 本学合宿研修施設「大賀寮」(館山市大賀) 到着 15:30 東京医科歯科大学・教養部(市川市国府台) 解散 17:00 計   画

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[尺度ほか] (1)日本版POMS(感情プロフィール検査)  日本版POMS(感情プロフィール検査)によって気分・感情を測定した。この検査は、 McNairらが開発し、横山らによって日本版として作成されたもので、気分・感情の評価法と して高い信頼性・妥当性が報告されている3)。 (2)日本版STAI-JYZ(新版STAI:状態-不安検査)  日本版STAI-JYZ(新版STAI)によって、現在の不安(状態不安)の程度、及び不安になり やすい傾向(不安特性)を測定した.STAIは特性不安を測定する尺度として多くの研究に使 用されている4)。 (3)メンタルフィットネス評価尺度(以下MF)  メンタルフィットネス評価尺度によって、包括的なメンタルフィットネス能力を測定した。 この尺度は,我々が開発したもので、“人間性の豊かさ”、“否定的感情と情緒的安定のなさ” 及び“行動力”を測定した5)。 (4)人間関係チェックリスト  人間関係能力を評価するために我々が継続的に本学学生を対象に使用している人間関係チェ ックリストを使用した。これは、コミュニケーションにとって重要な自己理解と他者理解並び に自他の関係性を高める上で必要な態度や考え方を4件法で評定するものである6)。 (5)MLT  MLTは、小林純一によって開発された、対人関係を適切に構築する能力を開発する手法で ある。この手法では、グループによる体験を通して訓練が行われ、カウンセラーを志す社会人 や大学院学生をはじめとして、各種団体、諸官庁、病院、学校などの管理者や指導者が、数日 ないし数週間、合宿して集中的に体験学習をするのが普通であるが、毎週一度、2から3時間の 訓練を数ヶ月、継続する場合もある。また、このような体験学習が目指す究極の目標は、参加 者が人間として成長することである。すなわち訓練を終わって元の職場、学校また家庭等に戻 ったときに、参加前とは違った自分になったことを自覚し、以前よりもいっそう「人間らしく」 他者とともに生き、より開かれた人間として行動できるようになることである。別な言い方を すれば、参加者間の人間的な相互作用によって、お互いの信頼関係を構築することができるよ うになることであり、参加者の人格的な直接の相互作用によって、相互の信頼関係を確立する 人間性の回復のためのプログラムともいえる。また、これまでに多く行われてきた人間関係を 通して人間として成長を目標とするトレーニング法は、そのほとんどは欧米人を対象とした研 究を基本に開発されたものであったが、今回我々が実施したMLTは、国民性や文化を考慮し て日本人向けに開発されたものである7)。 [データ分析]  時期(事前と事後)を要因とした対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。しか し、データ数の少なさによる第二種の過誤を防ぐため、有意傾向水準(p<.10)の結果も考察 の対象とした。

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結 果 (1)各種フィットネス指標の分析結果  フィットネスキャンプ前後にお ける各種フィットネス指標の変化 を表2に示した。  表からもわかるように、POMS における「緊張」と「抑うつ」得 点 が 有 意 に 低 下 し( そ れ ぞ れ p<.05、p<.01)、「活気」得点が上 昇(p<.05)した。  また、STAIにおける状態不安 尺度得点及び特性不安尺度得点が ともに有意に低下した(それぞれ p<.01、p<.05)。  また、MFにおける「否定的な 感情と情緒的安定性のなさ」得点 も有意に低下した(p<.05)。  また、さらに人間関係能力の評 価である人間関係チェックリスト 得点が事前と比較して合宿終了後 に有意に上昇した(p<.01)。  以上のことから、MLTを含む フィットネスキャンプへの参加が コミュニケーション能力を向上さ せるとともに、気分を改善し、不 安を軽減することが示唆された。 (2)コミュニケーションプログ    ラムの分析結果  次にコミュニケーションプログ ラムにおける「最終感想文―コミ ュニケーションについて」「演習 中の感想カード」を資料として人間関係を巡る体験的な学習成果を検討し、以下のことが示唆 された。学生は、 1)「人をそのままわかる」意味を体験的に学んだ。 2)自分自身の人への関わり方を振り返ることができた。 3)医療におけるコミュニケーションの意味を体験的に学ぶことができた。 4)他者に理解して貰ったときの、喜びや安心感を体験した。 5)人間にとっての感情の存在に気づき、感情の理解の難しさを体験的に学んだ。 6)信頼関係を作り上げるときの自分自身の行動を振り返ることができた。 7)信頼関係が他者理解の基本であることに気づいた。 収縮期血圧 拡張期血圧 心拍数 体重 握力 長座体前屈 緊張 抑うつ 怒り 活気 疲労 混乱 状態不安 特性不安 積極性 否定的感情と 情緒的安定性のなさ 人間性の豊かさ 人間関係得点 mean 115.77 117.46 se 3.48 3.14 mean 71.00 72.38 se 2.55 2.00 mean 73.00 72.31 se 2.50 2.74 mean 59.92 60.08 se 2.78 2.64 mean 34.77 33.08 * se 3.28 3.49 mean 44.46 47.92 † se 2.61 2.76 mean 10.77 8.15 * se 1.54 1.23 mean 10.92 4.69 ** se 2.04 1.33 mean 7.38 6.31 se 1.47 1.71 mean 16.62 19.46 * se 1.86 1.40 mean 10.00 10.38 se 1.94 1.55 mean 10.15 8.92 se 1.07 0.61 mean 42.15 32.23 ** se 2.42 1.50 mean 39.46 34.15 * se 2.53 1.40 mean 69.85 72.08 se 2.69 2.38 mean 29.85 24.92 * se 3.47 2.52 mean 44.15 45.23 se 1.56 1.69 mean 43.92 48.00 ** se 1.02 1.26 > < > > < > > > < フィジカル フィットネス POMS STAI MF pre post **:p<.01; :p<.05; †:p<.10 表2 フィットネスキャンプ前後の各種指標の変化

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以下に根拠資料となる記述を記載した。 学生A  コミュニケーションの授業で一番感じたことは、「感情は意外なほど相手に伝わり、 しかもそれは言葉の内容からではなく、口調や態度や表情から伝わる」ということだ。 これはある意味恐ろしい事だ。自分の内心が伝わるのだから。しかし態度や表情で感 情が伝わることを意識するのは、より良いコミュニケーションをするのに役立つのも 確かだ。伝えたいと思う内容と気持ちはわかろうとしてくれる人にはちゃんと伝わる、 これはとても喜ばしいことだ。「分かり合える」ということは、素直にうれしい。「分 かる」「分かってもらう」を繰り返しできたのはとても良い経験になった。    また、以下の3名の学生の感想カードの記述内容から、はじめは不自由さの中で他者と関わ り、話し方とか環境に目が向いていたが、徐々に心理的に自由になり、自己の変化に目を向け、 他者に関心を持ち始め、さらに他者に関心が向き、決意を新たにするようになったことが表現 され、自己、他者への関わりが深まってきたことが示唆された。 学生B 2010/2/18  私は「人間関係とコミュニケーション」を履修していたので、その延長線上 となるこの合宿に参加しようと思ったのですが、コミュニケーションの授業で 習ったことを実践していくのは難しい事だと感じました。特に知らない人、初 見の人相手だと「確かめ」をしたりverbal以外の部分を感じ取ったりすること に苦しみました。合宿ではその点も含め、対人関係の活性化に繋がるような技 術を身に付けたいです。 2010/2/21-1  僕はコミュニケーションの授業を履修していたので、こういったグループワ ークは初めてではなかったのですが、何回やってもなかなか自分の思っている ことを相手に伝えるというのは難しいことだと実感しました。(というよりあ まり話せなかったというのが正直なところですが・・・)この合宿を通じて正 しい(というか実生活に応用できる)コミュニケーションの仕方を学べればと 思います。 2010/2/21-2  話し手と聞き手で1対1に分かれるというのはコミュニケーションの基本だ と思うので、将来医療者になる身としては身につけておくべき教養だと思う。 自分の中ではそれなりに話し手の側はできた気がするのだが、問題となるのは 聞き手側の技術でただ肯定したり否定したりするだけでなく、相手の意志の確 認や話の流れを読みとることが大切だと知った。実りの多い授業になって良か ったと思う。 2010/2/22-3  今回はMLTという初めての試みをしました。私はObs(観察)という役割で、 全体を見ての会話・感情の流れを理解するというものでした。やってみて他の Obsのグループの人との感想がかなり違っていて驚きました。やはり15人いれば 15の違った感想・解釈の仕方が存在し、大事なのはそれを盲目的に受け入れる ことも否定することでもなく個人を理解しようとする気持ちだと思いました。 2010/2/22-4  前回の授業に引き続きMLTの演習でしたが、内容は前回とは多少異なるも のでした。今度は私がBパートのObsを担当したのですが、一人に着目して話 し合いを見るのと全体を見ながら話し合いを聞くのとでは、会話の方向性、誰 の誰に対する意見かを前より考えることがなくなった分、集中して一人の人間

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を理解しようと努めることができました。でもやはり「理解しようとする気持 ち」はそんなに変わらない重要性をもっていたと思います。 2010/2/22-5  何回も同じグループ内で話し合う事を通じて分かったのは、やはり同じ人と 何回も話すことによって相手に対する信頼・信頼のされ方が変わってくるとい うことである。例えば必ず相手は心を開いてくれるということもわかった、以 後の授業では臆せずに人と積極的に関わっていきたいと思う。 2010/2/23-6  3回目のMLTということで今回は初めて真ん中で話す立場になりました。思 ったのは“言うは易しく行うは難し”という言葉通り、外から見ている分には 出来そうだと思っていたことがいざ中に入ってみると存外難しく感じられまし た。ただ、比較的話しはスムーズに進み(進んだように感じられ)すぐに時間 がきたという印象でした。3日間を通じて少しはコミュニケーションの仕方に 慣れてきたのかなと思える時間でした。 学生C 2010/2/22  今回は観察者のいる中での会話ということで、はじめ観察者がいることに抵 抗を感じましたが、会話している最中は全く気になりませんでした。きっと観 察者の聴く姿勢が誠実だったからだと思います。その後フィードバックするこ とで、自分の話しをしっかり聴いてくれていたことをうれしく思いましたし、 同じ話しを共有できたようで、とても良い気分になりました。少し話しはちが いますが、学校の授業での発言では多くの観察者がいますが、あまり意識せず に発言できるようにしたいと思います。 2010/2/22  今回は全体を観察するという立場でMLTを行いましたが、全体の雰囲気を、 前の授業で自分が話していたときよりも落ち着いて、客観的に観察ができたの ではないかと思います。話の全体の流れをつかむことにも集中できて、自分が 話していた時よりもあっという間に時間が過ぎました。この理由については他 にも、話がスムーズであったことがあげられると思います。次回のMLTでも 観察者の立場でしっかり話しを聞きたいです。 2010/2/22  今回は初のMLTでした。自分が話しをしているのを多くの人に囲まれてき かれるのはやはり緊張せずにはいられなかったと思います。話しがなかなかス ムーズに進まず気まずい雰囲気の場面も多かったですが、時々みんなで共感し あえることにやすらぎとうれしさを感じました。観察者のことは自分のことを 良くみていてくれて「わかる」ということができていたと思います。MLTの 話し合いの中ではグループの人と本当の意味で分かり合えませんでしたが、フ ィードバック後は少し分かり合えたと思います。この経験を次に生かしていき たいです。 2010/2/23  今回は観察者(パートナー)の立場でMLTに参加しました。パートナーの 人と話した内容を1つ1つ確認していくこと。そして感情の流れを確認するこ とでお互いに考えを共有することができたし、わかりあうことが少しでもでき たのではないかと思います。自分としてはパートナーのボディーランゲージか ら読み取った事を確かめた時、少しずれがあったので、そこを確認できてよか ったと感じています。3つの立場を通じてより良いコミュニケーションの仕組 みというものが、わかったような気がします。

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最終感想  コミュニケーションの授業は精神的なストレスを感じたことは事実である。 しかし「相手と分かり合う」ということを、身を持って体験できたことに喜び を感じたことも確かだ。私たちが将来医療者として患者さんと向き合う場面に なったときその患者さんが本当に伝えたいこと、苦しみや願いを分かり合うこ とは患者さんに大きな安心感を与えると思う。そのためにより良いコミュニケ ーションの方法を学ぶことの出来た今回の合宿は非常に有益なものであったと 思われる。 学生D 2010/2/18  後期の授業でコミュニケーションをとっていたので、その延長、あるいは実 践の場とした認識の下今回の合宿に参加しようと思いました。将来的にもおそ らく様々な人間とコミュニケーションをとっていく必要が多数生じてくるであ ろう事を考えると、学生のうちにこうした実践的な機会を経験できるのはとて も貴重だと感じます。今回の合宿で、出来る限り多くの事を経験し、自分の糧 となるようにしていきたいと思います。 2010/2/21  話し手、聞き手という当事者になって、改めて“わかりあう”とはどういう ことか、またそれがいかに難しいことかを再確認できたと思います。“わかり あう”上では自分を分かってもらうことと相手を分かることが必要で、どちら か一方だけに気をとられていては“わかりあう”のは尚更容易ならざるものに なるのでしょう。単に自分の考えや意見を理解してもらうだけでは不十分でそ の時の感情の流れなども意識していかなければと感じます。 2010/2/21  今回の形式の授業は、人数も多いこともあり、これまでの3,4人グループ に比べvisualの要素がより作用していたように感じました。話し手の目線や身 振り手振り声のトーンなどから、これまで以上に情報を得られたように思いま す。“わかりあう”ということに関しては、たとえ1対1対応で観察していても、 それが話し手の知・情・意とは必ずしも一致しないことも実感できました。単 に“わかりあう”といっても複雑なのだと感じました。 2010/2/21  今までの授業でも、今回のものと似たような形式のコミュニケーションをや ったので、あまり緊張やとまどいといった不安要素は発露されなかったように 思います。かといって上手く相手に自分の本当に伝えたいことを伝えるのはそ う容易ではありませんでした。逆に言えば、自分が相手をより理解するのも困 難なのでしょう。当然かもしれませんが、コミュニケーションとはそう簡単に 上手くいくものではないと改めて認識させられたように思います。 2010/2/21  7分間相手の話をきき、時に「確かめ」を行うという作業は、僕は今までの 日常生活においてあまり経験したことがなかったので最初は勝手がわからず少 し困惑がありました。しかし、「確かめ」を行うことで、今まであまり相手の 話す言葉や語調を意識していなかったのだなと感じました。普段自分がいかに あいまいな姿勢で話を聞いているのかが露呈されました。今後にこの経験を活 かして行きたいと思います。 2010/2/22  最初は人に観察される中で話をするのには多少違和感があり、観察者の目を 気にすることがあったけれど、何回かくり返すことで抵抗はなくなり、リラッ クスした状態で話せました。また、自分が観察者の時は相手の言葉だけでなく、

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その時その時の身振りなどにも注目して、いつもとは少し違った視点から人の 話を聞けたように思います。こうして新たな視座をもつことで、また何か新し い発見があればと感じました。 2010/2/23  今回の授業で初めて全体を俯観する立場になって、全体の雰囲気や各人の聞 く姿勢など、今まであまり気づけなかった所に気付けました。客観的にみてみ ることで、皆が互いを“わかりあう”ためにどういった姿勢で臨んでいるかな どいろいろな発見がありました。おそらく自分が当事者であったときも、無意 識のうちにこうしていたのだなとも感じとれ、参考になったように思います。 注:2/18の感想は国府台のプレ合宿クラス、2/21以降は、館山合宿のセッション中の学生の感 想カードを転載した。ゴシック文字部分は中村による強調部分。 (3)学生によるフィットネスキャンプの評価と感想  学生は、転地先から大学に戻った直後にフィットネスチェックシステム-TFASを用いて、自 らの心身の状態のチェックを行い、事前との比較また合宿期間中の食事内容分析等を行うとと もにキャンプ全体を振り返り、その意義と学んだ内容等をレポートとしてまとめた。それらの 分析から、学生は今回のキャンプを極めて肯定的に評価するとともに、キャンプ全体を通して、 以下に挙げたような、まさにその教育目標である ① セルフケアプログラムに関して、   ・セルフチェックの重要性   ・運動プログラム実践の意義とその内容   ・リラクゼーションプログラムの意義とその内容   ・生活リズムの重要性   ・自然その他の環境の整った転地合宿形式で実施されたことの意味 ② コミュニケーションプログラムに関して、   ・「分かり合う」また「分かり合おうとすること」の重要性   ・コミュニケーションの質を高める「確かめ」の意義   ・コミュニケーションの質を高める適切な「問いかけ」の意義 などを、体験的に学んでいたことが示唆された。以下に根拠資料となる記述を記載した。 学生E  参加前は友達と旅行を楽しむような気持ちでいて、生活時間を正したいという思 いくらいはあったものの、それほど健康に強い関心があったわけではなかった。し かし、Pretestで自分の状態を確認することで、あらためて改善の必要性を感じ、 関心をもつようになった。コミュニケーションについても、はじめはやっているこ との意味が分らなかったが、通じあっているようで、意外に相手は自分の言ってい る意味や意図を理解していなかったり、また自分も相手を理解していなかったり、 また意外と話している内容、きいた内容がぬけおちていることをお互いに感じるう ちに「わかりあう」ためには「わかろうとする意志」と「確認をする行為」、「質問 する行為」が非常に重要であることを痛感し、やっていることの意味を実感した。 それは医療者に切に求められる能力だろう。朝の散歩はしたことがなかったが、「早 起きがきもちよい」という人の気持ちがわかった。またテニスを自由時間にしたの だが、自分からスポーツをやりたいと思うのは初めてのことだった。体が次第に健

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康になっていると感じた。3日目、4日目には格段に顔色がよくなっており、体重 も減っていた。 学生F  フィットネスに関しては参加する前は、授業で行われるような一般的な運動を合 宿内で行うものだと思っていたが、実際に行ってみると、日常に取り込み易いこう いった散策やウオーキングといったフィットネスの方がより重要で、また気付きに くいものであることに気がつかされた。赤山防空壕へのウオーキングでは15分毎に 血圧、心拍を測定する新鮮な経験ができてよかった。体がかたいのが悩みなのだが、 今回の合宿でいくらか軟らかなった気がした。おそらく3日目のヨガが原因だと思 うので、これから少し始めようかと思います。コミュニケーションについて、特に MLTでは人との会話の中でお互いに確認しあうことが互いの理解につながるという 今後の対人生活の中で非常に重要な経験を積むことができました。全体を通してと ても有意義なものになったと思います。ありがとうございました。 学生A  合宿という形式自体がすばらしかった。規則正しい生活リズムや良い食事バラン スを得られるというフィットネス的意味だけなく、他人と共にくらすのが楽しい勉 強になる。一人暮らしで勝手にくらしていると、見えないもの、細やかな気配りや 思いやりといったものを見つめなおせた気がする。運動する時間が通常より少なく もの足りなさはあったが、それを補うだけの貴重な体験ができた。ありがとうござ いました。 学生G  フィットネスとは言っても、ただ体を動かし運動するのではなく、他者とのコミ ュニケーションなども含めた全体としてのフィットネス、フィットネスマネージメ ントの意味がなんとなくではあるけれどもわかったような気がします。コミュニケ ーションにおいても、単に他者の話す内容を理解するだけでは本当の意味で相手を “わかりあう”ものではなく、知・情・意を汲み取り、確かめを行いながら進め、 互いを信頼し合うことが初めて“わかりあう”ことができるのだと実感できました。 身体、メンタル的なことで言えば、正直今まで自分のメンタルなどにあまり関心は なかったけれど、今回の合宿で今までに比べて少しは自分に関心をもつようになっ たと思います。 学生H  一言でいえば、「楽しかった」が率直な感想です。参加して良かったと心から思っ ています。普段自分ひとりでは出来ないことが沢山ありました。「健康的な生活」と いうのはいくら授業で習っても、実際の生活の中に実行するのはなかなか難しいで す。朝はやく起き、外で散歩して新鮮な空気を吸う。とても気持ちが良く、1日を 気分良くすごすきっかけになりました。栄養を考えた食事も、記録をすることの意 義を感じました。リラクゼーションも今まで知らなかった方法を知ることができ、興 味深かっと同時に安眠を楽しめました。帰宅してからもしようと思います。そして、 実はテニスコートでテニスを教わり(I君に)、テニスの楽しさも味わえました(し たことがなかったのです!)。体を動かすのがすごく楽しいと改めて感じました。心 拍数を常に右手(HRモニター)で確認することで、自分の状態(緊張している、な ど)を客観的に知ることもできました。血圧をはかることで、自分の血圧の流れが わかりました。今までせいぜい1日に1回ほどしかはかっていなかったので、自分 の体の調子をはかることができ興味深かったです。コミュニケーションの方もとて も面白かったです。普段何げなくしている「話す」という作業の難しさを感じまし

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た。やはり1番印象的だったのはMLTで、中央で話しあうグループ、個人を観察す るグループ、全体を見るグループ全てを体験することで、どの立場からものを見る かによって全然見え方が違うのだということを実感しました。特に私が1番難しい と感じたのは「全体から見る」で、それは日常の会話にも言えることなので、全体 をとらえる視野というものをこれからも身につけていくようにつとめたいです。 学生I  また、合宿の間とても健康的な生活を過ごすことができたことも大きかったので はないかと思います。朝5:45という早い時間に起きて、海岸を散策したり、ヨガ などで少し運動したり、栄養バランスの良い食事をしたり、普段の生活習慣を改善 することができたと思います。  今後も、興味がわいたヨガを自分でやってみたり、ウオーキング、ジョギングを して少し運動したり、栄養を考えて食事をとるということを実践していきたいと思 います。4日間という短い間でしたが、先生方、寮の方々ともとても良い人達ばか りで、本当にありがとうございました。 学生J  規則正しい生活を送ることの大切さを実感した。普段夜更かししたり、食事も1 日3食はとらないことが多いので体がどこかスッキリした気がした。今後も出来る だけこのような生活を送っていければと思う。またコミュニケーションの講義、実 習では今までにやったことのない形でのものだったので、最初は戸惑ったけれど進 んでいくうちに、積極的にもなれて、自分が少しずつだが変わっていけている気が した。「確かめる」ことの重要性を実感した。円滑なコミュニケーションは人との 関わりを豊かにすると思うので、今回の体験を日常生活にも生かせればと思う。多 少きつかった部分ももちろんあるけれど、参加してよかったと思えるプログラムだ ったと思う。 学生K  コミュニケーションの授業に精神的なストレスを感じたことは事実である。しか し「相手と分かり合う」ということを身をもって体験できたことに喜びを感じたこ とも確かだ。私たちは将来医療者として患者さんに向き合う場面になった時、その 患者さんが本当に伝えたいこと、苦しみや願いを分かり合うことは、患者さんに大 きな安心感を与えると思う。そのためにもより良いコミュニケーションの方法を学 ぶことができた今回の合宿は非常に有益なものであったと思われる。また自分の体 と心の状態を知ることで“リラックス”するとはどういうことか分かったし、これ からの生活で自分の健康について常に考えていくきっかけになったのではないだろ うか。個人的にはこの合宿に非常に満足しているし、今後もこのようなプログラム が続けられていくことは医歯学生にとって重要なことだと思う。 学生L  このフィットネスキャンプに参加して、まずコミュニケーションの授業の多さに 驚きました。でも、コミュニケーションの授業を重ねるにつれて、最初は面倒だと 感じたことが段々と人とわかりあうということの意味や楽しさも感じられるように なっていきました。今はこのコミュニケーションの授業はとても意味のあるものだ ったと実感しています。また、生活の面では、バランスの取れた食事をバイキング で選び、規則正しい生活を送ることによって体調が良くなったことを実感し、その 重要性を痛感しました。夜に行うリラクゼーションプログラムも一人でできるもの で、時間もかからないものだったので日々の生活に組み込めるもので良かったです。 けれど、全体としてフィットネスの部分が少なかったように思います。せっかく館

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山まで来ているのだから散策的な要素をもっと増やしてほしいと思います。 学生M  コミュニケーションの面では、参加者どうしで表面的に仲良くするということが なく、MLTなどのセッションを通して周囲と良い関係を築き、他者への信頼をも とにお互いにわかりあうとはどういうことかに目を向けることを意識した。自分が そのように真剣に向き合うと相手からも信頼してもらえるかもしれないということ を実感することができたと思う。フィットネスの面では、心拍数を意識する生活が とても楽しいと思った。自分は普段から運動習慣がついているので、心拍数50-80 と安定していた。今後はこのキャンプで摂ったようなバランスの良い食生活をとり 入れて、より良い身体づくりをめざしたい。 注:以上は学生が転地合宿から大学に戻った直後に行ったまとめの講義後に提出されたレポー トへの記載事項である。ゴシック文字部分は水野による強調部分。 論 議  結果に示したように、今回実施したMLTを含む転地合宿研修形式のフィットネスキャンプ への参加は、学生のコミュニケーション能力を向上させるとともに気分を改善し、不安を軽減 するのに有効であることが確認された。また、コミュニケーションプログラムの効果として自 己並びに他者理解における「聴く」態度や「わかろう」とする姿勢、「確認」の重要性等への 気づきが多く、このことは教養教育の重要な内容とされるコミュニケーション能力において、 特に日本学術会議の指摘する「一方的な情報伝達ではない「対話」という視点を重視すべきで ある」という点と合致するものであった。  また、今回実施したフィットネスキャンプではコミュニケーションプログラムと併行してセ ルフケアプログラムを組み込んだ。今回実施したセルフケアの内容は、対象の年齢や体力に合 わせて、日常の中で比較的実践し易い科学的根拠に基づいた運動、栄養、休養の実践プログラ ムを提示し、健康づくりとその教育(健康教育)を目的として実施されるヘルスツーリズムツ アーのもつHealth Resort Medicine(健康保養地医学)の理論に基づいてバランス良く配置す

るとともにそれらを無理なく実践するというものであり8)、具体的な中身は早朝の散策、バイ キング形式での食事、ウオーキング並びに自由運動プログラム、温泉入浴、リラクゼーション プログラムなど(別表、フィットネスキャンプ日程表参照)であった。結果からもわかるよう に今回実施した3泊4日のプログラムは学生の気分を改善し不安等を軽減するものであり、そ の目的に合致したものであった。  ここで、今回のキャンプ全体を振り返ってみると、血圧、心拍、体重ともに有意な変化はな いが、握力が有意に低下し、長座体前屈はやや上昇する結果となった。これは別表や学生の感 想からもわかるように今回の合宿が比較的過密なスケジュールであり、特にコミュニケーショ ン能力の改善プログラムは学生への精神的負担がかなり大きいものであることから(POMSに おける疲労が他のネガティブな因子がそれぞれ下がる傾向にあるのに下がっていない)、中枢 性の疲労はあるものの、生活全体が秩序立てされた(ヘルスツーリズムで用いられる運動、栄 養、休養プログラムが適切に配置、実践された)ことによって、そうした負担の解消がより効 果的に行われ、トレーニングによる負担が過度なものにならず、気分・感情並びに不安等の心 理的コンディションが有意に改善される結果となったものと推察された。  前述したように近年、大学教育で問題となっているのは大学生もしくは卒業生の質の保証で

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ある。平成20年に出された中央教育審議会大学分科会制度・教育部会の答申でも、「学士力の 保証」の観点から幅広い学びの保証と未来の社会を支え、より良いものとする「21世紀型市民」 に相応しい「学習成果」の達成が求められ、その中では、1.知識・理解(①多文化・異文化 に関する知識の理解、②人類の文化、社会と自然に関する知識の理解)2.汎用的技術(①コ ミュニケーション・スキル、②数量的スキル、③情報リテラシー、④論理的思考力、⑤問題解 決力)、3.態度・志向性(①自己管理力、②チームワーク・リーダーシップ、③倫理観、④ 市民としての社会的責任、⑤生涯学習力)、4.総合的な学習経験と創造的思考力 などの育 成が強く望まれている9)。今回実施したプログラムはこの学士力の基本的課題の中心をなす自 らの健康をコントロールする能力並びにコミュニケーション・スキルを開発するものであり、 市民としての自覚と責任に基づく自己管理能力育成の基盤と言えるものとなった。また、こう した能力は学生の授業評価の感想に「『健康的な生活』というのはいくら授業で習っても、実 際の生活の中に実行するのはなかなか難しいものである。朝はやく起き、外で散歩して新鮮な 空気を吸う。とても気持ちが良く、1日を気分良くすごすきっかけになりました」とあったよ うに、理論や知識だけではない実践的能力であり、現在問題になっているのはこうした実践的 能力育成が進んでいないという点である。本年日本学術会議、健康・生活科学委員会、生活科 学分科会が、「大学の教養教育に、授業科目『生活する力を育てる』を!」と題して2回の公 開講演会を催しているが、その開催趣旨の中に価値観が多様化し、成熟期に入った現在の日本 社会における大学教育の中には最も基礎となる人間の生活を考えることのできる総合的視点が 必要であると述べられており、「その授業内容としては体と心の変化(生まれてから老年に至 る体の変化、心と体の関係、生活の管理と健康など)、人と人との関係(家族関係、社会人と しての人と関係など)、社会の仕組みと生活(経済活動、社会保障、家庭経済など)、自然環境 と人のくらし(衣、食、住)などが取り上げることが考えられる」としている10)。こうした急 務な課題の解決を考える時、今回のようなヘルスツーリズムツアーで用いられるような体験的 かつ実践的なプログラムへの参加は理論と実践の融合を可能にし、説得力と批判的気づきを高 める極めて効果的な手法と考えられた。  またさらに言うなら、我々の本質的課題は教育再生を急務とする現代社会の中における“医 療系大学生のためのリベラルアーツ教育の再構築”であり、医療に特化したプロフェッショナ ルを養成する大学における効果的な教養教育プログラムのモデルを作成することにある。この 視点に立って今回のプログラムを評価すると、まずコミュニケーションについては、その重要 性を確認することはさして難しいことではなく、学生の授業評価の感想にもあったように「医 療者」と「患者」との関係における信頼関係の構築は医療活動そのものの基盤であるとともに そのためのコミュニケーション能力の開発は絶対不可欠な内容であり、その検証結果からも今 回実施したプログラムは効果的なモデルプログラムとなりうるものであったと考えられた。ま た一方、セルフケアプログラムについても、今回実施したプログラムがHealth Resort Medicineの理論に基づいたもので、実際のヘルスツーリズムツアーで実施されている事前、事 後の調査・測定から始まり血圧、心拍数、VAS(Visual Analog Scale)の経時的な計測、各種 の運動、栄養、休養などの各種プログラムに準じた内容であったことから、受講学生の興味と も相まってその内容は多義にわたるととともに充実したものとなった。特に現在の我が国の医 療は慢性期医療、疾病予防の領域への対応が諸外国に比べ弱く、急性期医療(病気、怪我をし てから対応する医療)とともに、病気にならない、怪我をしないための医療=予防医学の環境 づくりが求められており、自分で病気と怪我を回避する活動=健康行動(フィットネスマネー

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ジメント)を実践できるノウハウを習得し、それを各人が実践すること(未病を含む)が求め られていることを考えると、今回実施したキャンププログラムは優れた健康教育を含めた医学 的基礎教育プログラムになり得たと考えられた。  また、ここで少し今回のキャンププログラム内でも使用した現在開発中のフィットネス教育 用システム(TFAS)についてふれておくと、現在TFASは2010年版が完成し、授業への導入 を進めている。以前にも報告したようにこのシステムは医療系大学生の教養教育に不可欠な健 康づくりのための運動・栄養・休養その他のライフスタイルの評価尺度と併せ、本年度より血 液検査結果を合わせてフィードバックできる総合的な人の健康像評価とその効果的な改善策の 提示を可能にするシステムとなっている11,12)。今回のフィットネスキャンプでは、TFASを用い てキャンプ前に事前のフィットネスチェックを実施するとともにキャンプ終了直後に心(MF) のチェックと併せてキャンプ中での栄養摂取状況と生活時間の分析を実施し、その比較を行う ことでキャンププログラムの効果を分析するよう指導した。その結果、学生はキャンプ内で実 施されたコミュニケーションやセルフケアプログラムがどのように自分自身の心身に作用した かをより客観的に分析することが可能になり、プログラムの意義をより深く認識できるように なった。もともとこのシステムは、健康・フィットネス教育の基礎となるライフスタイルに関 する基礎理論の学習並びに学生自身のフィットネスの自己評価をサポートするために開発され たシステムである。つまり学生が定期的にシステムを利用することによって、自らの健康(フ ィットネス)関連因子の状態を主観的な評価だけでなくより客観的に評価しながら、それに基 づく自己管理能力を科学的なエビデンスを基にして育成・開発していこうというものである。 また、このシステム内で使用されているガイドライン並びにツールは現在の医療現場ですでに 活用されているものであり、システムそのものも3年前の医療制度改革でクローズアップされ た我が国の生活習慣病並びに心の健康問題対策における重要施策である「保健指導の徹底」に おける実用的ツールへの応用が十分期待されるもので、医療系大学生の基礎教育システムとし ての価値も大きいと考えられた13,14,15)。 ま と め  今回、我々は教養教育プログラムのひとつとして学生のセルフケア並びにMLTを組み込ん だコミュニケーション能力の向上を目標とした「フィットネスキャンプ2009」を実施し、その 教育効果等を検討した。  以下にその結果を要約すると、 (1) POMSにおいてキャンプ終了後の緊張(p<.05)、抑うつ(p<.01)がキャンプ前と比較 して有意に低下し、活気が有意に上昇した(p<.05)。 (2) STAIにおいてキャンプ終了後の状態不安(p<.01)並びに特性不安(p<.05)がともに キャンプ前と比較して有意に低下した。 (3) MFにおいてキャンプ終了後の「否定的な感情と情緒的安定性のなさ」がキャンプ前と 比較して有意に低下した(p<.05)。 (4) 人間関係チェックリスト得点がキャンプ終了後において事前と比較して有意に上昇した (p<.01)。 (5) コミュニケーションプログラムの分析から以下のことが示唆された。  学生は、

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1)「人をそのままわかる」意味を体験的に学んだ。 2)自分自身の人への関わり方を振り返ることができた。 3)医療におけるコミュニケーションの意味を体験的に学ぶことができた。 4)他者に理解して貰ったときの、喜びや安心感を体験した。 5) 人間にとっての感情の存在に気づき、感情の理解の難しさを体験的に学んだ。 6)信頼関係を作り上げるときの自分自身の行動を振り返ることができた。 7)信頼関係が他者理解の基本であることに気づいた。  以上のことから、フィットネスキャンプへの参加が学生のコミュニケーション能力を向上さ せるとともに心理的健康度を改善することが示唆された。また、学生のフィットネスキャンプ に対する評価は極めて肯定的であった。よって、本プログラムの実施はその教育目標を達成で きたものと考えられた。 参考文献 1) 中央教育審議会;新時代における教養教育の在り方について(答申)、http://www.mext. go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/020203/020203a.htm、2003 2) 日本学術会議;回答 大学教育の分野別質保証の在り方について、2010 3) 横山和仁・荒記俊一、日本版 POMS 手引き、金子書房、1994 4) 肥田野・福原・岩脇・曽我・Spielberger、新版 STAI マニュアル、株式会社 実務教育出版、 2000 5) 水野哲也・田井健太郎ほか、東京医科歯科大学学生の体力・運動能力に関する研究―メン タルフィットネス評価尺度の試行的導入―、東京医科歯科大学教養部研究紀要第40号、 39-52、2010 6) 東京医科歯科大学教養部、「行動科学基礎」活動記録 2009年度版、2009 7) 小林純一、カウンセリング序説―人間学的・実存的アプローチの一試み―、金子書房、 1979 8) 大塚邦明、病気にならないための時間医学 <生体時計の神秘>を科学する、ミシマ社、 2007 9) 中央教育審議会、「学士課程教育の構築に向けて」中央教育審議会答申の概要、文部科学省、 2008 10) 日本学術会議、健康・生活科学委員会、生活科学分科会、公開講演会「大学の教養教育に、 授業科目『生活する力を育てる』を!」講演要旨集、日本学術会議、2010

11) Charles B. Corbin・Ruth Lindsey、Updated Fifth Edition “Fitness for Life”、Human Kinetics、2007

12) 東京医科歯科大学、教養部、保健体育学研究室、フィットネスマネージメント(Fitness Management) TFAS(Total Fitness Analysis System)ガイドブック(Guide)、http:// www.tmd.ac.jp/artsci/taiiku/Tfas-Guide.pdf、2010

13) 畑 栄一・土井由利子、行動科学-健康づくりのための理論と応用(改訂第2版)、南江堂、 2009

14) 島井哲志・長田久雄・小玉正博[編]、健康心理学・入門―健康なこころ・身体・社会づく り―、有斐閣アルマ、2009

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15) 津下一代、図解 相手の心に届く保健指導のコツ ― 行動変容につながる生活習慣改善支 援 10のポイント、東京法規出版、2007

謝辞

 最後に、今回の検討は平成21年度東京医科歯科大学教養部長裁量経費の受給を受けて実施し たものであり、この紙面をお借りして心より感謝致します。誠にありがとうございました。

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参照

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