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中央大学社会科学研究所年報第 21 号 (2016) The Rise and Its Context of Radical Right-Wing Populist Parties in West European Countries Hoshino Satoshi Since late s whe

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西欧諸国の極右ポピュリズム政党の台頭とその背景

星  野   智

The Rise and Its Context of Radical Right-Wing Populist Parties

in West European Countries

H

oshino

Satoshi

 Since late 1980s when the deepening and widening of globalization and EU proceeded, many radical right-wing populist parties such as Wilders Freedom Party in Netherlands and Marine Le Pen s National Front in France have been becoming increasingly influential in West European politics. Some radical right-wing populist parties which place their emphasis on nationalism, racism and anti-immigration participated in government as a result of their electoral success. This article aims at searching for the present rise and its context of radical right-wing populist parties in Western Europe.

キーワード: Populism, Nationalism, Nativism, Immigration, Racism, Xenophobia, radical right-wing populist parties, National Front, Freedom Party, Neo-Nazi, Progress party

は じ め に

 イタリアの政治学者であるピエロ・イグナジは,ヨーロッパにおける極右ポピュリズム政党 の出現を,イングルハートの『静かなる革命』をもじって「静かなる反革命」という言葉で表 現した1).グローバル化とEUの拡大および深化が進んだ1980年代後半以降,西欧諸国には多く の極右ポピュリズム政党が設立されただけでなく,それらの政党のなかには実際問題として政 権に参加してその影響力を行使してきたものもある.そして,極右ポピュリズム政党の主張す る政策はこれまでの西欧諸国の政治の方向性を徐々に変えつつあるといってよいだろう.その 政策的な影響は,移民・難民の受け入れ問題,多文化主義のあり方,そしてEUの将来的なあ り方にまで及んでいる.  イギリスでは2016年の国民投票でEU離脱賛成派が多数を占めたが,それに大きな影響を与 えた独立党(UKIP)は,2000年代初頭以降に移民制限の政策を打ち出したという点で極右ポピュ

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リズム政党のカテゴリーに入れられている.またフランスの国民戦線のマリーヌ・ル・ペンは 2017年の大統領選挙で,フランスのEU離脱を表明し,ドイツのAfDと並んでEU懐疑論の立場 に立っており,EUの将来的なあり方に大きな影響を与える可能性をもっている.本稿では, 西欧諸国における極右ポピュリズム政党についてその登場の背景や基本的な考え方について検 討してみたい.

Ⅰ 極右ポピュリズム政党の台頭の背景とそのイデオロギー的特徴

 極右ポピュリズム政党と一口にいっても,国によってその特徴は異なっているだけでなく, そのイデオロギー的な基盤や政策においても異なっていることはいうまでもない.たとえば, P・タガートは,極右ポピュリズム政党をニューポピュリズム政党とネオ・ファシズム政党と いう 2 つの類型に分けている2).それによれば,ネオ・ファシズム政党は過去の時代のナチズ ムやファシズムとの直接的な結びつきをもっている傾向がある一方,ニューポピュリズム政党 はこうした歴史的なつながりをもっていない.1946年にファシストによって設立され,その後 国民同盟(AN)を結成してからフォルツァ・イタリア党と合併して新党「自由の人民」(PdL) へとつながっていったかつてのイタリアの社会運動(MSI)や,戦後ナチズムの系譜を継承し たドイツ帝国党の幹部が結成にかかわったドイツの国家民主党(NPD)などは,ネオ・ファシ ズム政党の系譜に属する一方,ニューポピュリズム政党は,それ以外のナチズムやファシズム の伝統との結びつきをもたない政党である.  また,西欧諸国の極右ポピュリズム政党をそのイデオロギーの面から類型化したE・カーター は,以下の 5 つの類型に分けている3).第 1 の類型は,ネオ・ナチ政党で,その特徴は急進的 な外国人排斥,古典的な人種主義への固執,既存の民主主義システムの拒絶にある.この代表 例は,イギリスの国民党や国民戦線,ドイツのNPDなどである.第 2 の類型は,ネオ・ファシ スト政党で,非外国人排斥,非人種主義,既存の民主主義体制の拒絶を特徴としている.イタ リアの国民同盟(AN)や社会運動・三色の炎(Ms-Ft),スペインの真正ファランヘ党(FEA) がこの代表例である.第 3 の類型は,権威主義的・外国人排斥的政党で,極度に外国人排斥的, 文化主義的で,既存システムの改革を要求し,民主主義と多元主義に消極的で,国家の拡大を 主張していることを特徴としている.オーストリア自由党(FPÖ),オランダの自由党(PVV), ベルギーの「フランドルの利益」(VB),フランスの国民戦線(FN),ドイツの共和党(REP), スイスの民主党(SD)がその代表例である.  第 4 の類型は,ネオリベラルな外国人排斥的政党で,その特徴は極度に外国人排斥的,文化 主義的で,既存システムの改革,民主主義の拡大,国家の縮小を主張していることである.こ の代表例は,デンマーク民族党(DF),1990年代中葉以降の北部同盟(LN),ノルウェーの連 邦党(FLP),スウェーデンの新民主党(ND),スイスの自由党(FPS)などである.そして最

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後の第 5 の類型は,ネオリベラル・ポピュリズム政党で,非外国人排斥,非人種主義,既存シ ステムの改革要求,民主主義の拡大,国家の縮小を特徴としている.その代表例は,1980年代 以前のデンマークの進歩党(FRP),ギリシアの国民党(EK),1990年代中葉以前のイタリア の北部同盟(LN),1980年代以前のノルウェーの進歩党(FRP),スイスのティチーノ同盟(LdT) などである.  このようなカーターの類型化は,第 1 に移民問題,第 2 にレイシズムの問題,そして第 3 に 民主主義,議会主義,多元主義という 3 つの側面から行われたものである.しかしながら,極 右ポピュリズム政党の特徴はこれら以外にも存在するので,以下では,それらについて検討し てみたい.  極右ポピュリズム政党のイデオロギー的な特徴としてまず第 1 に指摘できるのは,ナショナ リズムである.すべての極右ポピュリズム政党がナショナリズムを政策的な中核に置いている わけではないにしても,フランスの国民戦線(FN),ベルギーの「フランドルの利益」(VB), ドイツの共和党(REP)とドイツ民族同盟(DVU),スウェーデンの民主党(SD),そしてす でに解党しているオランダの中央民主党(CD)と中央党86(CP 86)などは,国内的な同質化, 対外的な排除,エスニック・ナショナリズム,国家ナショナリズムという点からみて,ナショ ナリズム的な志向が強い4).ドイツの共和党は現在では穏健化しているにしても,1989年まで 当時の指導者シェーンフーバーは共和党をドイツ的な「国民戦線」にしようとしていたし,ド イツ民族同盟の綱領には「ドイツはドイツ的でなければならない」とか「民族的なアイデンティ ティ」というナショナリズム的な言説がみられる.  またフランスは,フランス国籍を獲得した人びとはフランス人として認められるという市民 的ナショナリズムの国であるといわれているが,国民戦線(FN)の党首であったジャン・マ リー・ル・ペンは,移民がフランス国籍を獲得することに反対するエスニック・ナショナリズ ムの立場を強く打ち出していた.また国民戦線を継承した娘のマリーヌ・ル・ペンは,父親よ りも穏健化したといわれているとはいえ,第二次世界大戦中のナチスによる占領を引き合いに 出して現在ムスリムがフランスを占領しつつあると述べ,2015年の中東からの移民の波を 4 世 紀のローマへの異教徒の侵入にたとえた5).  歴史的にさまざまな形態をとって出現してきたナショナリズムは,基本的には国民国家を前 提にするものであり,国内の民族的に多様な住民をネイション(国民)というメタカテゴリー の枠組のなかに包摂しようとする運動や政策を意味しているといってよい.しかし,西欧の極 右ポピュリズム政党が主張するナショナリズムは,人種主義的で外国人排斥的な性格を帯びた ものであり,かつ宗教的にイスラムをターゲットにしたものである.このナショナリズムに関 してみると,もともとヨーロッパ諸国の国民国家を構成していた「土着の」ヨーロッパ人が移 民を排除するという構図はしばしば,ネイティビズムという概念で捉えられている6).

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 ネイティビズムという概念はもともと,人類学においては,植民地時代の権力の原住民への 奪還と土着文化の復活を主張する社会運動に適用され,また外国人や外国の文化の拒否という 社会のなかで広く浸透した態度に言及するために使われてきた.ところが,その概念は,極右 ポピュリズム政党との関連で,ヨーロッパ諸国に移民や外国の文化が流入してきたことによる それらの文化の拒否という文脈のなかで使われるようになってきた.ナショナリズムが前提と しているネイション(国民)は,多様なエスニック・グループを構成している住民の差異性を 捨象した「想像された」概念であり,したがって「ネイティブな住民」と移民・難民を差異化 するものではない.その意味で,ネイティビズムという概念は,ナショナリズムという概念よ りも極右ポピュリズム政党のイデオロギーを説明する概念として適しているように思える.と はいえ,この場合のネイティビズムという概念には,外国人排斥(ゼノフォビア)と人種主義 (レイシズム)というネガティブな含意の双方を含むものという限定がつき,本来の意味合い とは区別する必要があるだろう.  ゼノフォビアという外国人にたいする排外主義的な意識は,歴史上のあらゆるシステムにお いてみられたものであり,ある社会のアイデンティティの意識を強く有する集団が外部の他者 を排除することによってその意識を高めようとするように作用した.ゼノフォビアの意識は, 戦前のドイツのナチスの時代の人種主義的なイデオロギーと結びついて,ユダヤ人をスケープ ゴートにすることによって国民統合を達成しようとした.現代のゼノフォビアの特徴は,西欧 諸国に移民や難民として流入してきたイスラム教徒やアフリカ難民,その他の外国人にたいす る排外的な意識であり,日常生活に根ざした文化や生活習慣の違いという文化システム間の差 異にもとづくものでもある.経済発展が順調で豊かな社会を実現できた時代には,外国人にた いする敵対意識は多文化主義という価値観の優位性と寛容さのもとで潜在化していたものの, 景気後退,失業,経済的な豊かさの喪失によってこれまでの精神構造に徐々にひずみが加わっ てきた.現代の極右ポピュリズム政党は,こうした国民の潜在的な意識の動員をめざしている といってよい.  実際問題として,西欧諸国の極右ポピュリズム政党のイデオロギーにおいて移民問題の占め る部分は大きい(表 1 参照).  冷戦終結後のドイツでは,移民・難民が急増した結果,国内の外国人人口が増え(表 2 参照), 1990年代初頭に外国人にたいする暴力行為が頻発し,1991年のホイヤースヴェルダの暴力行為, 1992年のロストックの難民収容施設の襲撃など,極右勢力による暴力事件が多発した.1987年 から1990年までのあいだに年間平均して250件の外国人にたいする犯罪が記録されており, 1991年にはこの数が2,427件と10倍に達し,その後1992年には6,336件に跳ね上がり,1990年の 実に25倍に達したのである7).  1993年の基本法改正によって庇護希望者の受け入れを制限する措置をとった後,極右勢力に

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表-1 西欧のさまざまな極右政党のイデオロギーにおける移民問題の重要性 政党イデオロギーの中心 1980年代中葉以前の進歩党(FRP) オーストリア自由党(FPÖ)オーストリア フラームス・ベランフ(VB)ベルギー  国民戦線(FN)ベルギー(ワロン) 新戦線(FNB)ベルギー(ワロン) イギリス国民党(BNP)イギリス 国民戦線(NF)イギリス  国民党(DF)デンマーク  1980年代以前の進歩党(FRP)デンマーク    国民戦線(FN)フランス   共和国運動(MNR)フランス    ドイツ国家民主党(NPD)ドイツ   ドイツ民族同盟(DVU)ドイツ  共和党 ドイツ 1990年代中葉以降の LN イタリア 祖国党(FLP)ノルウェー 1980年代以降の進歩党(FRP)ノルウェー 新民主党(ND)スウェーデン 民主党(SD)スウェーデン 自由党(FPS)スイス スイス民主党(SD)スイス 1980年代中葉以前の進歩党(FRP)デンマーク 国民党(EK)ギリシア 国民同盟(AN)イタリア 1990年代以前の北部同盟(LN)イタリア 社会運動・三色の炎(Ms-Ft)イタリア 真正スペインファランヘ党(FEA)スペイン 真正スペインファランヘ党(FEA)スペイン ティチーノ同盟(LdT)スイス

出所:Elisabeth Carter, Party Ideology, in: Mudde(2017), p. 41.

表-2 2014年のドイツにおける出身国別外国人人口と前年比率 出身国 人 口 前年比(%) トルコ 1,527,118 −1.5 ポーランド 674,152 +10.5 イタリア 574,530 +3.9 ルーマニア 355,343 +32.9 ギリシア  328,564 +3.9 クロアチア 263,347 +9.5 ロシア 221,413 +2.4 セルビア 220,908 +7.7 コソボ 184,662 +8.1 ブルガリア 183,263 +24.8

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よる襲撃事件は減少したとはいえ,近年,極右勢力による暴力事件は増え続けている.ドイツ がシリアからの難民を大量に受け入れた2015年以降,極右政党のAfDやドレスデンを中心に活 動している極右の政治団体であるPEGID(西洋のイスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人) などの活動を背景にして,毎日のように極右集団による襲撃事件が発生している8).極右勢力 による犯罪事件は,ブランデンブルク州だけをみても,2015年が129件であったのにたいして 2016年には167件と増加している9).   ところで,レイシズムの歴史的根源は,近代世界システムの形成に伴うヨーロッパ世界の中 心と非ヨーロッパ世界の周辺との関係にさかのぼり,レイシズムはこの不平等な中心─周辺関 係の構造を是認するイデオロギーとして作用してきた10).人種的な「優劣」の差異性は,この ような歴史的な関係のなかで社会的に構成されてきたものであり,この関係が物象化されるこ とによってレイシズムというイデオロギーが成立した.ヨーロッパ諸国の極右ポピュリズム政 党は,こうした物象化されたレイシズムのイデオロギーに囚われているのである.  こうしてエスニック集団間のなかに自然的で遺伝的な差異が存在するという信念として定義 されるレイシズムは,極右ポピュリズム政党主義のもう 1 つの特徴である.すなわち,レイシ ズムは必ずしも極右主義イデオロギーの決定的な要素ではなく,現代の極右主義政党がさまざ まなレイシズム的な姿勢を示しているということである.  E・カーターの分類によれば11),人種に関する極右ポピュリズム政党の見解は,人種への姿 勢に応じて 3 つのカテゴリーに分類されうる.第 1 のグループは,古典的なレイシズムを保持 している政党であり,第 2 のグループは新しいレイシズムあるいは文化主義を保持している政 党,そして第 3 のグループは人種主義が役割を演じていないイデオロギーを保持している政党 である(表 3 参照).  古典的なレイシズムのイデオロギーを保持している政党は,イギリスの国民党(BNP)およ 表-3 西欧における極右ポピュリズム政党のレイシズムへの姿勢  古典的レイシズム  文化主義への固執  非レイシズム イギリスの国民党(BNP) オーストリアの FPÖ デンマークの FRP イギリスの国民戦線(NF) ベルギーの VB ギリシアの EK ドイツの DVU ベルギーの FN イタリアの AN ドイツの NPD デンマークの DF イタリアの LN ベルギーの PFN デンマークの FRP (1990年中葉以前) [オランダの CP 86] (1980年中葉以降) ノルウェーの FRP [オランダの NVU] フランスの NF スペインの FEA フランスの MNR スイスの LdT ドイツの共和党 イタリアの LN  (1990年中葉以後)   出所:E.Carter(2017), p. 46.

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び国民戦線(NF)である.国民戦線は1967年に設立されたファシスト・グループで,1982年 に党員のほとんどが離党してBNPに入党し,NFの残った党員は1995年に国民民主党(ND)を 設立した.BNPに関しては,2009年にイギリスの「平等人権の委員会」(Equality and Human Rights Commission)は,BNPが「白人オンリー」を主張しているという理由で「人種関係法」 に違反しているという訴訟を起こした.これにたいしてBNPは訴訟を維持できないということ でその規定を削除したが,「平等人権委員会」は実際的にその政策は継続されているという声 明を出した12).  ドイツの国家民主党(NPD)はまた伝統的に古典的なレイシズムの概念を支持してきた. NPDが「白人」と結びついているという点は,ドイツ民族の重要性を大いに強調する公的綱領 から生物学的な人種主義を排除した影響で近年トーンダウンしていきたとはいえ,NPDに関す る文献を検討してみると,ナチズムを導き,白人優越主義と反ユダヤ主義を主張するドイツの 戦前の極右主義の伝統との明確な連続性が示されている13).ドイツ民族同盟(DVU)の人種主 義的な感情もそれほど極端ではないにしても,NPDと同様である.DVUはまた強いナショナリ ズムと愛国主義を有しているうえ,過去のナチズムを称賛し,ホロコーストに関するナチスの 責任に異議を唱えている14).  1998年に非合法化されたオランダのCP 86もまた古典的なレイシズムを支持していた.政党 のマニフェストと綱領には白人人種の優越性を含んでいないにもかかわらず,「ある人種は他 の人種よりもより平等」である点が示唆されている.「白人」人種の優越性については多くの 政党のスローガンに含まれているが,他の人種の劣等性についてはこの政党の文書のなかで示 されている.さらにCP 86は,反ユダヤ主義的な傾向を示していた15).  表 2 に示されているように,古典的なレイシズムの立場を維持している現代の極右政党は 少数である.それに代わって登場しているのは,文化主義と呼ばれる政党,あるいは新レイシ ズムを支持する政党である16).それらの政党によれば,民族間には差異が存在し,これらの差 異を形成しているのは人種よりも文化である.こうして,それらの政党は,西欧文明が優越し ているのは白人種というよりもその文化のためであると主張する.かれらが強調している点は, 一定のグループが対立するのは人種的な差異よりも文化的な差異のためであるということであ る.したがって,文化主義者あるいは新レイシズムは,文化の混合がさまざまなグループの個々 別々のアイデンティティを脅かすという理由で,多文化主義を拒絶している.これは多文化主 義が白人種の「劣化」と「汚染」に導くという古典的な人種主義を支持する政党と対象をなし ている17).  マリー・ル・ペンの指導下にあったフランスの国民戦線(NF)は,この第 2 のカテゴリー に位置している.かれはフランス国民の生存とそのアイデンティティに取りつかれており,多 文化主義の高まりによって脅かされていると主張していた.かれはまた,文化と民族の多元性

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は維持されなければならないが,フランスでは明らかにそうではなく,アングロサクソン的で アメリカ的な統合様式を拒絶し,「多文化主義」と「メルティング・スポット」を非現実的で 危険な選択であると拒否していた.またオーストリアの自由党(FPÖ)もまた文化主義的であ るとみなされうる.FPÖは故郷(Heimat)といったより田園的で土着的な概念を称揚するよう な規定に置き換え,現在の政党綱領は「ハイマート」への執着を反映し続け,文化的なアイデ ンティティにたいするオーストリアの権利を強調し,社会的な対立と関連する「多文化主義」 を拒絶している18).  それにたいして,スペイン,ポルトガル,ギリシアの極右ポピュリズム政党は,移民問題に たいする姿勢に関しては,レイシズム的な信条に固執しないという点で,北ヨーロッパの極右 政党とは異なっている.それらの政党は,人種主義的な優越主義も文化主義も有していない. スペインの極右政党には人種主義という伝統は存在せず,白人優越主義も存在しない.レイシ ズムは,ポルトガル極右政党の特徴にはならなかった.レイシズムはまたイタリアの極右ポピュ リズム政党の国民同盟(AN)19)や北部同盟(LN)にも存在しない.イデオロギーにおけるレ イシズムの不在ということを前提にすれば,スペイン,ポルトガル,ギリシア,イタリアの極 右ポピュリズム政党,そしてスイスのティチーノ同盟(LdT)20)は,第 3 グループに属する.  最後に,現在のEUの統合の拡大と深化という方向性に疑問をもつEU懐疑論が極右ポピュリ ズム政党の特徴の 1 つとなってきている21).極右ポピュリズム政党の多くは,従来,EU統合 には両義的な立場をとっていたとはいえ,近年ではEU懐疑論を主張する政党が増えてきた. たとえば,ドイツのAfDは,ギリシアの多額の債務にたいするドイツの財政的負担への不満を 背景にしてEU懐疑論を展開して支持を拡大してきたし,フランスの国民戦線のマリーヌ・ル・ ペンは,イギリスのEU離脱に呼応して,2017年の大統領選挙戦で勝利した後に,EU離脱をめ ぐる国民投票を実施すると表明している.

Ⅱ 西欧諸国の主な極右ポピュリズム政党のプロファイル

 西欧諸国には多くの極右ポピュリズム政党が存在しており,第二次世界戦後まもなく成立し た伝統的な極右ポピュリズム政党も存在すれば,1980年代以降に新たに設立された極右ポピュ リズム政党も存在し,また設立されたがすでに解党した極右ポピュリズム政党もある.以下で は,西欧諸国の主要な極右ポピュリズム政党について取り上げ,その特徴について検討してみ たい. オーストリアの自由党(FPÖ)  オーストリアの自由党は,1956年に旧ナチスの支持を受けていた独立者連盟を継承して設立 されたが,1970年代初頭にリベラルな姿勢を支持して極右主義的な傾向から穏健化した22).

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1983年の選挙後,自由党は12議席獲得してオーストリア社会民主党と最初の連立を組んだ. 1992年11月に自由党はオーストリアで初めて移民問題に関する国民投票キャンペーンを開始し たものの,国民投票案は1993年 9 月に議会での多数派によって否決された.党内の路線をめぐ る対立のため,同年12月に自由主義的な穏健派が離党し,自由主義フォーラムを結成した. 1994年10月の国民議会選挙では,自由党は22.5%の得票率を得た.1999年10月の国民議会選挙 では,オーストリア国民党(ÖVP)と 2 度目の連立を組み,議席も52議席に増やした.しかし, この大連合政権は合意後まもなく,自由党がEU加盟とEU拡大に反対したことで解消された. 自由党が極右政党であるという海外からの自由党にたいする批判をかわすことができず,ハイ ダー党首は2000年 5 月に党首を辞任した.2005年 4 月にハイダーが離党して新党オーストリア 未来同盟(BZÖ)を結成すると,自由党の党首をハインツ・クリスチャン・シュトラッヘが引 き継ぎ,2005年10月の地方選挙では反移民と反EUを掲げた.2006年の国民議会選挙では,反 移民と反イスラムの政策を選挙キャンペーンで掲げ,トルコのEU加盟にも反対の立場をとっ た.自由党はこの選挙で21議席を獲得した.さらに2013年の国民議会選挙では,20.55%の得 票率を得て40議席を獲得した.自由党への高い支持率は翌年の欧州議会選挙まで続き,オース トリアの 4 議席中 2 議席獲得することになった. ドイツの国家民主党(NPD)  ドイツの国家民主党(NPD)は1964年に設立された極右政党であり,設立当初よりネオ・ナ チ的な志向をもっていた.NPDは党綱領で,「 2 度の大戦でドイツのみが単独責任,主要責任 をとるべきだとの主張をわれわれは断固として拒否する」とし,ドイツの民族の土地の奪取や ドイツ分割に反対し,領土の復帰を旗印に掲げた.また外国人労働者の導入には反対の立場を とった23).2000年12月に連邦議会は,NPDが「反ユダヤ的・人種主義的・外国人排斥的で,暴 力を認めている」ということで,政府の禁止措置を承認した.ところが2003年 3 月,憲法裁判 所は,政党の党員のなかに警察の情報提供者がいたという理由で,禁止措置を却下した.2004 年に,NPDはザクセン州で9.4%の得票率を得て,8 議席獲得した.2005年の連邦議会選挙では, 極右政党のドイツ民族同盟(DVU)と選挙協力して,1.6%の得票率を得た.2006年のメクレ ンブルク = フォアポンメルン州の州議会選挙では,7.3%の得票率を得て, 6 議席獲得し, 2007年のブレーメン州議会選挙では 1 議席獲得した.そして2009年の連邦議会選挙では,1.5% の得票率を得ている24). スイスのスイス国民党(SVP)  1971年に設立されたスイス国民党は,きわめて農民的で社会的に保守的な立場をとっている ポピュリズム的な右翼政党である.伝統的にドイツ語圏の州に基盤を置き,農業と中小企業を

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保護するだけなく,強い国防を支持している25).SVPは,1992年にスイスが欧州経済領域(EEA) 協定へ参加することに反対した唯一の政権党であった.1995年の総選挙では,支持率を14.9% に増やし,下院で29議席獲得した.1999年の選挙では44議席獲得し,社会民主党の51議席に迫 る勢いをみせた.2003年の選挙では26.6%の得票率を得て55議席獲得し,第 1 党に躍進した. そして2007年の選挙では29%の得票率を得て,1919年以来国民議会(下院)で初めて最大議席 数である62議席を獲得した.しかし2011年の選挙では,得票率は26.6%とやや低下したものの, 依然として第 1 党を維持した.SVPは選挙では再び,強力な反移民の綱領にもとづいたキャン ペーンを展開し,党指導者は国内のイスラム化を非難した. フランス国民戦線(FN)  1972年に反移民問題を主軸にした綱領にもとづいて設立された国民戦線は,1984年の欧州議 会選挙でフランスの81議席のうち10議席を獲得した26).党首のジャン・マリー・ル・ペンは 1988年の大統領選挙の第 1 回投票で14.4%獲得し,1995年の大統領選挙では第 1 回投票で15% 獲得した.1997年12月,ル・ペンはナチスのガス室を「歴史の粉飾」とみなしたということで 反人種法にもとづいて有罪判決を受け,約 5 万ドルの罰金を科せられた.ル・ペンは1997年の 選挙運動で社会党の女性候補を暴行したということで有罪判決を受けた.副党首のブルーノ・ メグレ(Megret)とかれの支持者が穏健な右翼政党との連立を支持したということで除名され た1998年に,党内対立が頂点に達した.その結果 2 つの政党に分裂し,両政党ともに国民戦線 を名乗ったが,2000年 5 月の裁判所の判決の結果,メグレのグループがNFの名称を奪ったと して,メグレは新政党である国民共和運動(MNR)を結成した.  両政党への分裂は極右政党の支持票を分断するように思われたにもかかわらず,ル・ペンは 結果的に反移民,反犯罪,フランス第一の感情の高まりを利用し,2002年の大統領選挙では 16.9%の得票を獲得し,第 2 回投票でのシラクとの決戦投票では,17.8%を獲得した.  2011年の党大会で,ル・ペンの娘のマリーヌが党首に選出された.マリーヌ・ル・ペンは, 2012年の大統領選挙では強力な選挙キャンペーンを展開し,第 1 回投票で18%の得票を獲得し た.こうした結果にもとづいて,マリーヌ・ル・ペンは2014年の欧州議会選挙では大勝し,フ ランスの74議席中23議席を獲得した.そして2017年の大統領選挙で,マリーヌ・ル・ペンは, 第 1 回投票で21.3%,第 2 回投票で33.9%を獲得した。 ノルウェーの進歩党(FRP:Fremskittpartiet)  ノルウェーのFRPは,1974年にリバータリアンのグループによって設立され,1977年まで反 EUの立場を掲げており,指導者のA・ランゲは,税金と金利の削減,公的な干渉の縮小を求め た.1989年の議会選挙では,22議席獲得して第 3 政党となったが,1993年の選挙では10議席に

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とどまった.1997年の選挙では,15.3%の得票率を得て25議席獲得した.2005年の選挙では, 強い福祉国家の維持と大幅な税金の削減を選挙戦で掲げて22%の得票率を得て38議席獲得し た.2006年には,S・イェンセン(Siv Jensen)が初めて女性党首として選出され,彼女の指 導の下で,FRPは反移民,とりわけ反イスラムの路線をとった. ベルギーの「フランドルの利益」(VB:Vlaams Belang)  VBの前身はフランドル・ブロック(Vlaams Blok)で,1978年12月の選挙で国民フランドル 党とフランドル民族党と選挙協力したが,翌年の1979年 5 月に右派政党のフランドル・ブロッ ク(VB)が公式に設立された27).1995年の議会選挙では7.8%の得票率を得て,11議席獲得し, 1999年には9.9%の得票率を得て,15議席獲得した.2003年の選挙では,VBはナショナリズム 的な志向を強めて「ヨーロッパのイスラム化」を大声で叫び,フランドルの独立を要求し,こ の選挙で18議席獲得した.しかし,最高裁判所はVBの政策が反人種主義法に違反するという 下級審の判決を支持し,その結果VBは解党した.その後「フランドルの利益」(Vlaams Belang)という党名に変更した.2010年の選挙では,7.8%の得票率を得て12議席獲得するも, 2014年の選挙では 3 . 6 %の得票率で 3 議席を獲得したにすぎなかった. スウェーデンの民主党(SD:Sverigedemokraterna)  スウェーデンの民主党(SD)は,1988年に設立された極右ナショナリズム政党である28). SDは2006年の議会選挙以前にはほとんど注目されていなかったが,その選挙で議席こそ獲得 できなかったものの2.9%の得票率を得て,極右政党の台頭がスウェーデンでも例外ではない ことが明確になった.SDは,合法的な移民を90%削減するという過激な反移民的な立場のた めに注目され,その政党のもっとも厳しいレトリックはイスラムを対象とし,党首のJ・オー ケソンは,イスラム人口の増加が「第二次世界大戦後の最大の外国の脅威」であると述べた. SDは2011年11月の党大会で,そのイデオロギーを「社会的保守主義」とナショナリズムにも とづくものとして明確に定めた新しい綱領を採択した29).2013年にストックホルム郊外で発生 した暴動に関して,SDは政府の「無責任な」自由主義的な移民政策を非難した.SDは2014年 の欧州議会選挙で初めて 2 議席を獲得した. イタリアの北部同盟(LN)  イタリアの北部同盟は1991年に,ロンバルディア同盟とその姉妹政党の連合として結成され た.北部同盟は,1992年の総選挙で8.7%獲得したのに次いで,1994年には8.4%獲得してベル ルスコーニ政権に参加したが,12月には多くの批判にさらされて政権から離脱した.北部同盟 は1996年に独自に選挙戦を展開し,10.1%の得票を得て下院で59議席,上院で27議席獲得し,

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北部では第 1 党となった.北部同盟は,反移民的な言動のために,2002年に欧州評議会は北部 同盟を「人種主義的で外国人排斥的」であるという報告書を出した.北部同盟は,反移民的な 感情と中道左派政権への不満の波に乗る形で,2008年の総選挙では上院で28議席,下院で60議 席獲得した.しかし,2013年の総選挙では,下院で18議席,上院で17議席獲得するにとどまっ た.そして2014年の欧州議会選挙でも,前回の選挙よりも 4 議席減らして 5 議席獲得した. イギリスの独立党(UKIP)  イギリス独立党は1993年に,EUのマーストリヒト条約加盟がイギリスの主権の放棄になる ことに反対していたアラン・スケッドと反連邦連盟(Anti-Federalist League)のメンバーによっ て結成された30).独立党はEUからの離脱を掲げるEU懐疑論の立場に立ち,無制限な移民受け 入れによってもたらされる危険性を警告した.1997年の下院議員選挙で議席を獲得できなかっ たが,1999年の欧州議会選挙では 7 %の得票率を得て 3 議席獲得した.2004年の欧州議会選挙 では75議席中12議席獲得し,2009年の欧州議会選挙では16.5%の得票率を得て13議席獲得した. 独立党は2010年の総選挙では,下院議員候補として572名を出したが,3.1%の得票率で議席の 獲得はならなかった.そして2015年の総選挙では,12.6%の得票率を得て 1 議席獲得した. フィンランドのフィンランド党(PS)  フィンランド党(PS)の前身は,フィンランド田園党(SMP)と真のフィンランド人で, SMPの解党後の1995年に設立された31).新党となったPSは,1999年の選挙で 1 議席獲得した. 2003年の選挙では,PSは社会主義と右翼ポピュリズム的なスタンスを混合した綱領を採択し, そのなかで税金の引き下げを強調し,中小企業を活性化し,個人的な負債の免除を支持した. PSは,2011年の議会選挙で得票率19%を得て39議席獲得し,第 3 党となった.2014年の欧州 議会選挙では,PSは12.9%の得票率を得て, 2 議席獲得した.PSは,一方では,漸進的な課 税と福祉国家の維持という社会民主主義的な政策を掲げているとともに,他方では,移民政策 に関して移民と難民を制限することを主張している. デンマークの国民党(DF)  デンマーク国民党(DF)は,1995年に右翼進歩党(FP)の副党首によって設立された. 1972年に設立された右派政党のFPは,1995年に内部分裂し,その反主流の右派が脱党してDF を設立して活動を開始した32).このことから,DFはFPと同様の政策を掲げており,FPの右派 とみられている.ナショナリズムを主張するDFは,公然と反移民政策を打ち出し,1998年の 総選挙では大きな勝利を収め,FPが 4 議席獲得したのにたいして,13議席獲得した.2001年 の総選挙では,12%の得票率を得て,22議席獲得し,デンマークで第 3 党になった.そして

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2005年の総選挙では,24議席,2007年の選挙では13.9%の得票率で25議席,そして2011年の総 選挙では12.3%の得票率で22議席獲得し,第 3 党を維持した.さらに2014年の欧州議会選挙で は,26.6.の得票率で 4 議席獲得した. オランダの自由党(PVV)  オランダの自由党は,2004年に反移民政策と主張したヘルト・ウィルダースによって設立さ れた33).自由党はEU懐疑論の立場をとり,自由市場と税金引き下げを主張し,ユダヤ教とキ リスト教の文化的な一致を擁護し,反イスラムを掲げた.2009年の欧州議会選挙に候補者を立 て,その結果,17%の得票を得て25議席中 4 議席を獲得した.ウィルダースは,2008年に短編 映画Fitnaを作成し,そこでコーランを暴力とテロの根源であると描いた.オランダのテレビ はこの短編映画の放映を拒否したために,かれはインターネット上で公開した.このイスラム にたいする差別と敵対行為でウィルダースは裁判にかけられ,この審理が2010年 1 月に始まり, 2011年に有罪判決を受けたが,その後,再審で「言論の自由」法によって無罪判決を受けた.  国民の移民問題への関心の高まりとともに,2010年の選挙で24議席獲得していたウィルダー ス率いる自由党は2012年の総選挙で15議席に減らすものの,2013年には支持を拡大した.2013 年11月ウィルダースは2014年の欧州議会選挙に向けてフランスの国民戦線との同盟を形成し た.そして2017年 3 月の総選挙では,EU離脱を掲げる自由党は議席を増やして躍進するとみ られていたものの,20議席獲得するにとどまった.

Ⅲ 西欧各国の極右ポピュリズム政党と選挙での支持率

 西欧諸国の極右ポピュリズム政党は過去30年間にさまざまな転換を遂げてきた.1960年代か ら1970年代にかけて成立した極右ポピュリズム政党は,その間に西欧諸国に移民や労働力とし て入国してきた外国人にたいする警戒と反発の意識を基礎に,しかも伝統的なナチズムやファ シズムのレイシズムやゼノフォビアというイデオロギーを支柱に活動してきた.ドイツの国家 民主党(NPD)やドイツ民族同盟(DVU),フランスの国民戦線(NF)はこうした性格を有し ている.しかし,これらの政党は,そうした過去の忌まわしいナチズムやファシズムの伝統的 なイデオロギーを継承しているというイメージのために,選挙において大きな支持を獲得する ことができなかった.  しかし,1980年に入ると,西欧諸国における外国人の割合は少しずつ高まり,その傾向はド イツ,オランダ,スイス,オーストリア,ノルウェー,スウェーデンでみられた.1980年代初 頭の西欧諸国の外国人数についてみると,約470万人とドイツでもっとも多く,以下,フラン スの370万人,イギリスの160万人,スイスの92万人,ベルギーの89万人,オランダの54万人, スウェーデンの40万人,ノルウェーの 9 万人となっている34).

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 そして1980年代後半から1990年代にかけて,西欧諸国の外国人数と国内経済の停滞と失業な どから,ドイツやフランス以外の諸国でも,極右ポピュリズム政党が台頭し始め,あるいは既 成政党が極右ポピュリズム的な志向に転換し始めた.スウェーデンの民主党(SD)は1988年, イギリスの独立党(UKIP)は1993年,デンマークの国民党(DF)は1995年,フィンランドのフィ ンランド党(PS)は1995年に設立され,ノルウェーの進歩党(FRP)は1980年代中葉以降,イ タリアの北部同盟(LN)は1990年中葉以降に極右ポピュリズム政党に転換した.その結果, それらの政党は,フランスの国民戦線,オーストリアの自由党,そしてスイスの人民党(SVP) のように有権者の支持を獲得した(表 4 参照).2000-2009年での平均得票率が10%を超えた 政党がオーストリアのFPÖ,ベルギーのVB,デンマークのDF,オランダのLPF,ノルウェー のFRP,スイスのSVPの 6 党であったのにたいして,2010-2015年での平均得票率が10%を超え た政党は,オーストリアのFPÖ,デンマークのDF,フィンランドのPS,フランスのFN,オラ ンダのPVV,ノルウェーのFRP,スウェーデンSD,スイスのSVPの 8 党と, 2 政党増えている.  2000年に入って,オランダの自由党(PVV)が設立されて急速に支持率を伸ばす一方で,他 の極右ポピュリズム政党も支持率の上昇傾向が続いた.デンマークの国民党(DF),ベルギー 表 4 西欧諸国の国政選挙における極右ポピュリズム政党の平均的得票率 国 政 党 1990-1999 2000-2009 20010-2015 オーストリア BZÖ 7.4 3.5 FPÖ 22.0 12.8 20.5 ベルギー FN 1.6 2.0 VB 8.1 11.8 5.8 デンマーク DF 7.4 13.2 16.7 FRP 5.1 0.6 フィンランド PS 2.4 2.9 18.3 フランス FN 13.7 7.8 13.6 MNR* 1.1 ドイツ REP 1.9 0.6 AfD** 4.7 ギリシア LAOS 3.9 1.8 イタリア LN 9.1 5.6 4.1 オランダ CD 1.6 LPF 11.4 PVV 5.9 12.8 ノルウェー FRP 10.8 19.9 16.3 スウェーデン NyD 4.0 SD 3.3 12.9 スイス SVP 16.4 27.8 28.9 イギリス BNP 1.9 UKIP 1.9 7.9 平 均 8.0 7.5 12.5

 注:*は欧州議会でのみ得票.MNR(NFから分かれた国民共和主義運動National Republican Movement)    **ドイツのAfDについては筆者が追加.

 出所: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(eds.), Radical Right-Wing Populist Parties in Western Europe, Routledge, 2016, p. 2.

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のVBは10%を超える支持を得た.さらに多くの急進的右翼ポピュリズム政党が舞台に登場し た.それらはオーストリアのBZÖ,オランダのLPF,スウェーデンの民主党(SD),フィンラ ンドのPSなどである.  極右ポピュリズム政党への支持が高まった結果,各国のさまざまな極右ポピュリズム政党は, 内閣の構成員として,あるいは少数政府の支持政党として政権入りした.オーストリア,フィ ンランド,イタリア,オランダ,ノルウェー,スイスでは,極右ポピュリズム政党は公職を伴っ た責任ある地位を獲得した一方,デンマークとオランダにおいては,国民党(DF)と自由党 (PVV)が公式に政権入りすることなく少数政府を支持した.これらの政党の多くは,連立政 権に参加し,1990年から2015年にかけて極右ポピュリズム政党によって支持された17の政権の 形成を導いた35).またイタリアでは,北部同盟(LN)が2001年に第 2 次ベルルスコーニ政権 に参加した.さらに2002年に設立されたオランダのLPF(Pim Fortuyn List)は,2002年の選 挙後の翌年にキリスト教民主党政権に参加したものの,党内対立ですぐに離脱した36).  極右ポピュリズム政党の政権参加後の選挙結果に関しては,オーストリアの2000 2003年の 第 1 次シュッセル政権と第 2 次シュッセル政権への自由党(FPÖ)の参加の事例では,政権参 加後の選挙でいずれも得票率を下げている37).その割合は,第 1 次シュッセル政権後の選挙で はマイナス62%,第 2 次シュッセル政権後の選挙ではマイナス59%であった.またオランダの 2002 2003年の第 1 次バルケネンデ政権に参加したLPFと自由党(PVV)の政権参加の事例では, 選挙後の得票率を66.5%下げている.他方,政権参加後に得票率を伸ばした事例は,デンマー クの2001 2007年の第 1 次ラスムセン政権と第 2 次ラスムセン政権に閣外協力した国民党(DF) と,イタリアの2001 2006年のベルルスコーニ政権に参加した北部同盟(LN),スイスの2003 2007年の政権に参加したスイス国民党(SVP)である38).  しかしながら,西欧の極右ポピュリズム政党は,たとえばベルギーのVBのように,過去10 年間に選挙での敗北を経験し,またそれらの政党のなかにはオランダのLPFやスウェーデンの 新民主主義=NyDのように政治的舞台から姿を消したものもある.すべての西欧諸国で極右ポ ピュリズム政党が選挙で成功を収めたわけではない.ベルギー,フランス,スウェーデン,イ ギリス,ドイツでは,極右ポピュリズム政党は政権に参加する機会をもっていない39).にもか かわらず,ほとんどの極右ポピュリズム政党にとって,トレンドは上向きに傾いている40).

お わ り に

 2017年 3 月23日に実施されたオランダの総選挙において極右ポピュリズム政党の自由党 (PVV)は予想されたほどに議席数を伸ばすことができず,極右ポピュリズムの政治的な流れ に竿さすことができなかった.自由党のウィルダース党首は,EU離脱やイスラムへの排外主 義を提唱しているということで知られているが,極右ポピュリズム政党,とりわけタガートが

(16)

いうところのニューポピュリズム政党の特徴は,カリスマ的な指導者が存在するという点にあ る.伝統的な政党は概してヒエラルヒー的な構造をもち意思決定が組織的に行われるのにたい して,ニューポピュリズム政党は構造的にカリスマ的指導者の直接的な意思を党の政策に反映 することができる.オーストリアの自由党はかつてハイダーのカリスマ的な指導力によって支 持を拡大し,ドイツの共和党は以前シェーンフーバーの指導下にあり,そして現在のフランス の国民戦線はマリーヌ・ル・ペンのカリスマ的な指導力の影響が強い.  ポピュリズムの基本的な構造的特徴は,M・カノヴァンが指摘しているように41),政治的エ リートに対抗して大衆に直接的に訴えるという政治的スタイルにあるだけでなく,独特の「ムー ド」にもある.ポピュリズム政治は,普通の日常化された政治という性格ではなく,非政治的 な人々を時代的なムードやカリスマ的指導者の情熱によって政治的な領域に引き込むという性 格をもっている.したがって,極右ポピュリズム政党が支持を拡大するためには,こうしたカ リスマ的な指導力に加えて,民衆を突き動かす時代的な「ムード」が必要である.それが醸成 されるのは,移民・難民の急増であり,テロ行為の頻発であり,そして経済的な困難である.  極右ポピュリズム政党のなかで,既存の民主主義体制や立憲主義体制に批判的なのは,カー ターの類型化からみると,ネオ・ナチ政党とネオ・ファシスト政党であり,その他の政党類型 は基本的に民主主義的な制度的枠組を維持するという立場にある.しかし,極右ポピュリズム 政党が民主主義や立憲主義の制度的枠組を尊重するとはいっても,その背後にある基本的な政 策はゼノフォビアであり,レイシズムの変種としての文化主義であり,既存システムの改革要 求であることから,潜在的に人権や自由・平等といった民主主義的な価値を脅かす可能性を秘 めているといってよいだろう.

1)  Piero Ignazi, The Silent Counter-Revolution Hypotheses on the Emergence of Extreme Right-Wing Parties in Europe , in: European Journal of Political Research, Vol. 22(1), 1992, pp. 3 33.

2)  Paul Taggart, New populist parties in Western Europe , in: Cas Mudde(ed.), The Populist Radical

Right, Routledge, 2017, p. 162.

3)  E. Carter, Party Ideology , in: Mudde(2017), pp. 56 60.

4)  Cas Mudde, Populist Radical Right Parties, Cambridge, 2007, pp. 20 1. 5)  Eliot Dickinson, Globalization and Migration, Rowman & Littlefield, 2017, p. 93. 6)  Mudde(2007), p. 18.

7)  R. Merten and H. U. Otto(Hrsg.), Rechtsradikale Gewalt im vereinigten Deutschland, Opladen, 1993, S. 15. 尚,この点については,星野智『現代ドイツ政治の焦点』中央大学出版部,1998年,38 頁を参照されたい.

8)  A. Röpke, 2017 Jahrbuch Rechte Gewalt, Knaur, 2017. Röpkeによれば,2016年 9 月だけでも64件 の極右勢力による事件が発生している(SS. 266 274).尚,ドイツのAfDに関しては,星野智「ドイ ツにおける極右ポピュリスト政党の台頭」(『中央大学社会科学研究所年報』第20号,2016年)を参

(17)

照されたい.

9)  Neues Deutschland, 23. 03. 2017.

10)  世界システムにおけるレイシズムの問題については,星野智『現代国家と世界システム』同文館, 1992年を参照されたい.

11)  Carter(2017), p. 45.

12)  T. Lansford(ed.), Political Handbook of the World 2015, Sage, 2015, p. 549. 13)  Carter (2017), p. 45.

14)  Backes and Mudde, Germany: extreme without successful parties, in: Parliamentary Affairs, 53(3), 2000, p. 462.

15)  Carter (2017), p. 46. 中東欧のレイシズムを主張する極右主義については,C. Mudde, Racist extremism

in Central and Eastern Europe, Routedge, 2005を参照されたい. 16)  Carter (2017), p. 47.

17)  Carter (2017), p. 47.

18)  Carter (2017), p. 48. 極右ポピュリズム政党と多文化主義の制限,また既成政党への影響に関して は,Kyung Joon Han, The Impact of Radical Right-Wing Parties on the Positions of Mainstream Parties Regarding Multiculturalism , in: West European Politics, Vol. 38(3), pp. 557 576を参照.

19)  イタリアの国民同盟(AN)は2009年に解党,現在は存在しない.

20)  LdTは,スイス南部のティチーノ州の大幅な自治をめざし1991年に設立された極右政党で,1991 年の選挙で下院に 2 議席保有している.この政党については,Lansford(2015), p. 1419を参照. 21)  極右ポピュリズム政党とEU懐疑論については,Mudde(2007), p. 164参照.

22)  オーストリアの自由党に関しては,Lansford(2015), Reinhard Heinisch and Kristina Hauser, The mainstreaming of the Ausitrian Freedom Party , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(eds.), Radical

Right-Wing Populist Parties in Western Europe, Routledge, 2016, pp. 73 93, お よ びBarbara Toth, Am mächtigsten in der Opposition: Die FPÖ in Östrreich , in: Hillebrand(2015)を参照.

23)  この点については,星野(1998),66頁を参照されたい. 24)  Lansford(2015), p. 544.

25)   ス イ ス の 国 民 党 に 関 し て は,Lansford(2015)お よ び Oscar Mazzoleni, Staying away from the mainstream , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 193 207を参照.

26)  フランスの国民戦線に関しては,Lansford(2015)および Gilles Ivaldi, A new course for the French radical right , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 225 246を参照.

27)  ベルギーの「フランドルの利益」党(VB)に関しては,Lansford(2015)および Paul Lucardie, Tjitske Akkerman and Teun Pauwels, It is still a long way from Madou Square to Law Sweet , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 208 224を参照.

28)  Lansford(2015), p. 1413.

29)  A. Hellström, T. Nilsson and P. Stolz, Nationalism vs. Nationalism: The Challenge of the Sweden Democrats in the Swedish Public Debate , in: Government and Opposition, Vol. 47, NO. 2, p. 190. 30)  イギリスの独立党に関しては,Lansford(2015),Simon Usherwood, The UK Independence Party ,

in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 247 267,およびMatthew Goodwin, Der Aufstieg der UK Independence Party(UKIP) , in: Hillebrand(2015)を参照.

31)  フィンランドのフィンランド党(PS)に関しては,Lansford(2015)および Ann-Cathrine Junger, From the mainstream to margin? , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 113 143を参照. 32)  デンマークのDFに関しては,Lansford(2015)および Flemming Juul Christiansen, The Danish

(18)

33)  オランダの自由党に関しては,Lansford(2015), p. 1044,Tjitske Akkerman, The Party for Freedom , in: T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), pp. 144 168, および Koen Vossen Das Ein-Mann-Orche, in: Ernst Hillebrand(Hrsg.), Rechtspopulismus in Europa, Dietz, 2015, SS. 31 39を参照.

34)  J. Salt, Migration and Population Change in Europe, United Nations, 1993, p. 64. 各国の外国人数 は1982年の数値で,イギリスだけは1984年の数値である.

35)  T. Akkerman, S. Lange, M. Rooduijn(2016), p. 1.

36)  T. Akkerman and S. L. Lange, Radical Right Parties in Office: Incumbency Records and theElectoral Cost of Govering , in: Government and Oppostion, Vol. 47(3), 2012, p. 575. T. Akkerman, Comparing Radical Right Parties in Government: Immigration and Integration Policies in Nine Countries(1996-2010) , in: West European Politics, Vol. 35(3), 2012, p. 515.

37)  オーストリアの自由党は,しかし,2010 2015年の期間には再び支持率を伸ばしている. 38)  Akkerman and Lange (2012), p. 576.

39)  C. Mudde, Three Decades of populist radical right parties in Western Europe: So what? , in:

European Political Science research, 52(1), 2013, pp. 1 19. 40)  Akkerman, Lange, Roodijin(2016), pp. 2 3.

41)  Margaret Canovan, Trust the People! Populism and the Two Faces of Democracy , in: Political

参照

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