公文書館専門職員の 「 領域」
豊見山 和美 †
は じめに
1
公文書館業務基本体系ト1
公文書館業務基本体 系にお ける県文書収集 ・整理業務 の位置づけ2
総務私学課文書係への専門員の研修派遣2‑ 1
研修 の意義21 2
文書のフローの実際2‑ 3
沖縄県情報公開条例および文書管理規程等 の改正2‑ 4
文書概念 と文書管理 の変容むすびにかえて〜専門職員の領域
は じめに
筆者は以前 に発表 した論文 にお いて、沖縄県公文書館 (以下 「公文書館」 とい う)が行 って いる県 文書収集 ・整理事業 の概要 と今後 の課題 につ いて述べた 1。それか ら2年が経過 した現在、 自 ら抽 出
した課題 にどのよ うに向き合 ってきたか検 証す ることが本稿 の主た る目的 といってよい。
開館 当時の
1995
年 (平成7)
に比 して、行政機関の保有す る情報 の公 開 につ いての社会的関心は いっそ う高 ま りつつある。2001
年 (平成13)
に施行 された 「行政機関の保有す る情報の公 開に関す る法律」 (以下 「情報公開法」 という)は、地方 自治体 もこの趣 旨にのっ と り、情報公 開のために必要 な施策 を策定 し、実施す るよ う求めている2。 また民事訴訟法の改正 によ り、地方 自治体 は裁判所か ら の文書提出命令 に応える義務が生 じるが、 これ もまた行政機 関の保有す る情報 に対す る公 開要求 のひ とつのあ らわれだ ろう。ここまでは、文書のライ フサイ クル3のいわゆる現用 ・半現用段階 にお ける公開の要請である。 ここ か らよ うや く、次のよ うな問題 の設定が可能 になって くる。すなわち、非現用段階の文書 ‑行政情報 については、公開の要求は及ばないのか、それはそ もそ も誰が主体的 に管理す る領域なのか、 という ことである。それ に対す る答え として公文書館 の独 自の存在意義があるのであ り、公文書館法施行以 来
10
余年 に して、その ことは社会的な コンセ ンサス を得つつあるよ うに思 う。 た とえば、文書管理 シ ステムや文書 の電子化 を提案す る システム開発業者 のパ ンフ レッ トに以下 のよ うな記述 も散見 され るO「これ まで行政文書は、文書 を作成す る部署 が保存 までの責務 を負 うもの とされて い ま した。 しか
†財 団法人沖縄県 文化振興 会公文書管 理部 公文 書専 門員
l 豊見 山和 美 「沖縄県 にお け る公文 書 の管理 と公文書館
〜4
年 間 の実践 と今後 の展望〜
」沖 縄県 公文 書館研 究紀 要第2
号所収2000
年3
月2 沖縄県 で も、この求 め に応 じて情報 公 開条例 を改正 し、改正 条例 を
2002
年1
月1
日よ り施行 した。 この ことと公 文書館 の関連 につ いて は後 述す る。:3 前掲拙 稿 で も注 記 したが、 ライ フサ イ クル とい う語感 よ りは ライ フ フ ロ‑ とい う方 が好 ま しい とい う考 え は変 わ らな いO
‑1 3一
し、行政文書は組織全体 の所有物 (財産)であるとの考えか ら、最近では、文書の作成 と保存 とを切 り離す という考え方が一般的になっています。 このため永年保存の対象 となる重要な行政文書に対す る公文書館の役割はます ます高まってお り、公文書館の文書管理体制の見直 しが求め られています」 4
公文書館で専門職員 として勤務す る者 としては、 こういった問題提起への回答を用意 しておかねば な らないだろう。公文書館 自らもその業務の遂行 について説明責任 を負 っているか らである。
本稿では、 まず、公文書館が策定 した 「公文書館業務基本体系」 に示 された理念 と、その具体化 を 目的に諸事業 を展開 していることを述べたい。その一環 として、筆者は沖縄県総務部総務私学課へ半 年間の研修のため派遣 された。 この研修の成果は即座 に目に見えて現れるものではおそ らくないが、
将来への投資 として行 った ことを記録 しておきたい。 ます ます情報化する行政活動の記録 を後世へ残 す役割 を担 う公文書館専門職員、新 しい情報技術 と記録媒体 を扱 うことになるわれわれの独 自領域 に ついて考える一助 となれば幸 いである。
1
公文書館業務基本体系1 ‑ 1
公文書館業務基本体系における県文書収集 ・整理業務の位置づけ公文書館業務基本体系 (以下 「業務基本体系」 という) は、図
1
のような体系図で示 されている。これ を策定す るについては館内で 「理念検討委員会」 を組織 し討議を重ねた。 この業務基本体系で誼 われている運営基本方針は 「公文書館は、 これ ら一応の役割 を果た した公文書等の中か ら歴史資料 と して重要な ものを収集 し、整理 し、保存す るとともに公開す る責務 を負 う。資料 の収集 ・選別 にあたっ ては沖縄県公文書館が、沖縄 における行政の記録セ ンター として充分 に機能 し得 るよう、後世の評価 に堪える適正 さをもって行わなければな らない。 このよ うな視点か ら、資料の収集 ・整理は、当面琉 球政府文書
、USCAR
文書、県文書、琉球王国関係文書 を中心 に行 い、併せて可能なかぎ り地域資料、映像 ・音声資料等 をも対象 とす る」 としている。
この運営基本方針 において優先的な地位 を与え られた文書群 のうち、琉球政府文書 とは、米国の施 政権返還 に伴 って沖縄県へ移行 した琉球政府の組織文書で、沖縄の戦後史 を伝 える重要な資料 として 公文書館設立の契機 となった資料群である。公文書館では約
16
万簿冊 を収蔵 し、琉球政府文書の収 集はほぼ終了 した もの とされてお り、 これ らの整理 (詳細 目録の作成) を継続中である II'。また、 いわゆる
USCAR
文書は、琉球政府 の上位機関であった琉球列島米国民政府Uni t e dSt at e s Ci vi lAdmi ni s t r at i onoft heRyukyul s l ands
を出処 とす るもので、公文書館は国立国会図書館 との 共同プロジェク トとして、米国国立公文書館か らUSCAR
文書 をマイ クロフィルムで複製 し収集 して いる。USCAR
文書は、沖縄県やその前身である琉球政府 を出処 とす るものではないが、戦後の沖縄 を統治 した機関の文書群 として非常 に価値が高いもの といえるだろう。米国の厳 しい文書管理体制か らシステマテ ィックに残 された米国公文書は、その群 としてのまとま りか らして一級の資料である。このいわゆる
USCAR
プ ロジェク トも2001
年度末で終了の運び となっている。琉球王国時代の文書 につ いては、県内に残存す る原本が少ない。琉球国王 と中国皇帝 との間に交わ された明代 ・晴代の文書 (楢葉史料) は、中国第一歴史楢葉館 の協力で複製によ り収集 している。そ
/l富士フイルム株式会社 「デジタル ・レコードマネジメント・サポート〜万全ですか、情報公開対策」パンフレット
よ り
:‑' 琉球政府文書の整理 についての中間報告 としては、豊見山和美 「公文書 目録データベースにおける階層構造の表現 の試み〜琉球政府文書を例 に〜」沖縄県公文書館研究紀要第
3
号所収2001
年を参照 されたい。図1 公文書館業務基本体系 運営基本方針
公文書等は、行政の活動の過程 で 日々彪大に作成 され、 目的が達 成 され た後 は、一定期 間保 存 さ れ,やがて現用文書 としての役
割
を終える。
公文書館は、 これ ら一応の役割 を果た した公文書等の中か ら歴史 資料 として重要な ものを収集 し、
整理 し、保存するとともに公開す る責務を負 う。
資料の収集 ・選別 にあたっては 沖縄県公文書館が、沖縄 における 行政の記録セ ンター として充分 に 機能 し得 るよ う、後世の評価 に堪 える適正 さをもって行わなければ な らない。 このような視点か ら、
資料の収集 ・整理は、 当面、琉球 政府文書
、USCAR
文書、県文書、琉球王国関係文書 を中心 に行 い
、
併 せ て可能 な限 り地 域 資料、映 像 ・音声資料等 をも対象 とす る
。
また、収蔵資料の恒久的保存 を 前提 とした環境整備 を強化す るも のとする。
さらに県民が資料 を利用す る際 に効率よく検索できるようシステ ムの整備、資料のデ ジタル化及び 他類縁機関 との連絡調整並びに情 報のオンライ ン化 を図ると同時に 利用者に対す るサー ビスの向上に 努める。
これ ら公文書館業務の担 い手で ある専門員の養成及び資質の向上 を図るため、国内外の専門機関及 び行政機関における研修 に積極的 に参加 させる必要がある。
また、公文書館の利用 ・普及 を 図るため、各種 目録 を整備 し、企 画展、講演会及び講座を開催する とともに、各種学術団体や地域学 習サークル等 との連携 を強化 し、
公文書館 に対する県民の理解 を深 める事業 を積極的に展開す る。
施 策
歴史資料 として重要な 公文書等の 収集 ・整 理 を行 う
歴史資料 として重要 な 公文書等 を保存す る記 録セ ンター としての機 能を充実 させる
県民が利用 しやす い公 文書館 を目指す ととも に普及活動を積極的に 展開す る
公文書館業務 を適正 ・ 能率的に遂行 してい く ために,専門員等の養 成及 び 資質の向上を
図
る
公文書館 を効率よ く運 営す るために類縁機関
との連絡調整を行 う
‑ 15 ‑
事 業
■資料の調査研究
■資料の収集 ・整理
1資料 目録等の刊行
■資料の保存 ・修復
■資料のマイクロ化
■資料 のデ ジタル化
■資料の複製
■展示会、講演会、講座の開催
■電算 システムの向上
T閲覧 ・普及業務の充実
■国内外の専門機関での研修
■県 内行政機関等での研修
■調査 ・研究
■類縁機関 との連絡調整
図
2
公文書の流れ 〜所管課から公文書館まで〜県の公文喜哲は.沖縄脱文空ぎ管理規程や沖縄県文苔ii鋸保存規程によ り,管理者や管理の方法、管理の場所 が定め られています。
所管課で発生 した文吉は原則 として完結後1年間課内で保管 されます。その後は総務部捻麟私学裸に引き継 がれて文苔保存管理室で処や管理 され、必要な ときは閲覧 ・借覧の手続きをとります。保存期間が経過する と文番は廃棄 されます。
公文溜餅の関節によ り.従来の長期保存文潜は
、2 0
年保存文tSにな りま した。県の公文西は、戚長でも2 0
年 の保存期間が経過すれば.公文懇館へ送 られることになっています。節 1 段 階所 管 課
所管秋で収受 ・作成する文省 は.文背が完船 した後、 1年間 は雌内で保管 し.保管文邦 と呼 ばれ ます. この期問は文有が頻 繁に鯉川 さt'Lる 「現用段階」で.
管確者は.各所管排長です.
l仲‑文 り
E}E}所
管灘で庚兼
@
E‑ Eel‑第 2 段 階総 務 私 学 諜
公文番は、保存用rulが浦 7するまで.
文沓保存管理賓で保存 します。 このPl 間が利用頻度 が減少する r半現川段耶」
で、幣理 古は捻務私学殊の文沓保存珊 瑚主任です.所管殊は.所定の 下拭 き を鮭て公文TBを閲生 .倍JELます.
第
3
段階 公文TT館行政迷常上の役目を轍えた公文感は、所管蝕によっ て利用 されることはほとんどなくな ります. この段階 が r非現If7段階」です。保存仙rmが満7し.虎兼決定 された公文gFは.公文宰相へ引き渡され.職員だけで なく、県民にも冊弟なT‑.続きで自由にrRl覧できるよう になります (税用あるいは半舶用奴肘の虎兼決注され る前の公文劇 ま.f#報公開粂折に定めるT3拭きによっ て.県民のアクセス権が保障されています).
この非現用段階の公文書を管Jtするのか公文甘館です.
l⇒C>t⇒E>E>吟⇔E}ヰE+t⇒ Ee ⇒ E} E} Ee ⊂今 ESE}
lq・休作文丘は所管課で塊兼 しよすtJ(、歴史的併せが 補いと思われるt)のは、公文斉 蘇‑引き帯します
の他の古文書等の資料の収集は一般県民か らの寄贈や寄託 による。
以上の資料群は所在調査によ り収集の範囲が決定され る。 いっぽ うで沖縄県文書 (以下 「県文書」
という)は、現 に作成 ・収受 されている文書が保存期間を経過 した後、将来 にわたって継続的に公文 書館へ 引き渡 され る もので ある。保存期 間 を満 了す る文書 は、知事 部局 だ けで も一 列 に並 べて約
380m
の長さに及ぶ。 これは単年度の数字である。 これ らの県文書は中間書庫 に搬入 し評価 ・選別す ることになっているが、 まだ定期的な受入体制をとっていない各種行政委員会等 の文書 について も今 後取 り組みを強化すると、 中間書庫 の収蔵能力と受入量のバ ランスをとることは難 しくなる。平成 9年度か ら沖縄県県政文書収集基準 に基づいて第一次選別 を開始 した結果、受入文書量はほぼ 半分 となったが、第二次選別 (最終選別)はまだ実施 していない 6。 中間書庫で最終の評価 ・選別 を待 つ文書のバ ックログは
、3km
に及ぶ。業務基本体系で示 された ところの運営基本方針 を具体化するに は、公文書館の県文書マネジメン ト体制を再検討する必要がある。再検討については、文書の受入側である公文書館 と、文書 を送る側である県機関の双方向か ら考え ることができる。公文書館 におけるマネジメン トとしては、評価 ・選別体制をどのよ うに確立す るか ということである7。沖縄県の場合、公文書専門員 (以下 「専門員」 という)9名のうち、資料収集 ・ 整理に
4
人の専門員を配 している (ほか5
人は閲覧 ・利用普及 ・資料複製 ・電算等の業務 に従事)0 4
人の内訳は、USCAR文書 を中心 とす る米国所在資料 の収集 ・整理に2
人、 いわゆる地域資料 (沖縄 県 の機関を出処 としない資料) と映像音声資料 の収集 ・整理 に1
人、沖縄県文書 (文書 と刊行物 を含 む)の収集 ・整理 に 1人 となっている。県文書の評価 ・選別は、担 当す る資料の出処で分かれた専門 員が横断的に連携 して取 り組む業務 とは今のところ考 え られていない。評価 ・選別基準作 りも含めて、作業チ‑ム編成や手順の確定な どを喫緊の課題 とし,それによって運営基本方針 をさ らに推進 してい くことが必要 と思われ る。
以上時館内の体制作 りと関わ る側面であるが、平行 して文書 を公文書館へ送 る側 に着 目したアプ ローチは考え られないか というのが筆者の関心 となった。公文書館が公文書の評価 ・選別 を全面的に (排他的に、 といって もよい) 引き受けるのはあるいは理想的か もしれないが、一定の レベルで作成 者 と 「分業」するシステムを導入す ることが現実的のようだか らである。た とえば海外で用 い られて いるリテ ンシ ョン ・スケジュール を導入 して、文書が発生する段階か ら、それが公文書館での永久保 存 となる文書なのかわかるようにすれば、発生 ・収受か ら公文書館 までの一連の文書管理業務のコス ト節減 にもつながるのではないか。それが どの程度実現可能かは、発生現場の状況を正確 に把握 して か ら検討することになるだろう。
2
総務私学課文書係への専門員の研修派遣2‑ 1
研修の意義業務基本体系に示 された施策 には
5
本の柱がある。すなわち 1.歴史資料 として重要な公文書等 の 収集 ・整理を行 う、2.歴史資料 として重要な公文書等 を保存する記録セ ンター としての機能 を充実 さ
(' 第1種文書
( 20
年保存文書)は選別 された もの とみな して、簿冊単位の整理 を行 い、閲覧利用 に供 している。7 筆者は国立公文書館 (現在は独立行政法人)主催の公文書館専門職員養成課程 における実習で、神奈川県立公文書 館での評価 ・選別作業を実地 に見学する機会 を得た。神奈川県立公文書館 には行政委員会 も含めたあ らゆる県機関の 文書が送 られて くるが、受入年度内に県文書の選別作業 を終えることがポ リシー となってお り、 これ を達成するため
には,館の職員挙げての驚異的な労力が必要 となることを実感 した。
‑ 17‑
せ る
、3.
県民が利用 しやすい公文書館 を目指す とともに普及活動を積極的に展開す る、4.
公文書館 業務 を適正 ・能率的 に遂行 してい くために、専門員等の養成及び資質の向上 を図る、5.
公文書館 を 効率よ く運営す るために類縁機関 との連絡調整を行 うの5
つである。4
番めに掲げた専門員等の養成 及び資質の向上を図るための事業 として さらに 「県内行政機関等での研修」が示 されている。この一環 として、公文書館はその主務課である沖縄県総務部総務私学課へ専門員 (筆者) を派遣す ることを決めた。県文書の収集や、評価 ・選別 も含 めた整理作業 を遂行 していくためには、文書の発 生源 となる組織や業務、文書管理の実際を理解す ることが不可欠である。総務私学課の文書係は、各 課か ら引継ぎを受けた文書 について、保存期間が満 了 し廃棄 されるまでの間の管理者であ り、研修先 として最適 と判断された。財団職員であ り公文書館以外の行政現場での経験がない筆者にとっては、
その意味で も県 の中枢である総務部総務私学課で研錆 を積むのは有意義な ことである。 しか しそれ以 上に、県文書の担 当者 としては、文書係での研修は、親機関の組織文書 を扱 う専門職員養成制度が不 備な中で実践 しうる、現用 ・半現用段階の記録管理 を非現用段階の公文書館へつなげるためのフィー ル ドワークとして意味あるものだった80
2‑ 2
文書のフローの実際筆者の研修期間は平成
1 3
年5
月1
日か ら1 0
月30
日までの半年間 となった。年度の早いうちに期 間を設定 した理 由は、主に8
月に毎年本庁で展開され るク リー ン作戦 (各所管課が総務私学課文書係 の管理す る文書保存管理室へ文書の引継 を行 う) の準備 と実施 をカバーす るためである。知事部局の文書は、沖縄県文書編集保存規程 によ り文書の完結年度およびその翌年度は各所管課が 保管する。その後、文書 を類名ごとに編集 し文書保存箱 に詰め替 えて文書 引継 目録 を添付 し、総務私 学課が管理する文書保存管理室へ搬入する。文書はそれぞれの種別の保存期間
( 20/1 0/ 5 / 3 /1
年保存 の5
種。ただ し1
年保存文書は各所管課で保管 し処分する)が満了するまで文書保存管理室で保存 さ れ、保存期 間満 了後 は総務私学課長 と所管課長 による廃棄 の協議 を経て公文書館長へ 引き渡 される (図2
9参照)。文書 には永年や長期 といった保存種別がないので、すべての文書がいずれは廃棄 され て公文書館への引渡対象 となる. この圧倒的な物量 をよ りスムーズにマネジメン トするのが緊急の課 題であることは1 ‑ 1
で述べた通 りだ。公文書館の書庫 に限 らず、紙文書 を扱 う限 りスぺ‑ス管理の問題か ら逃れることはできない。文書 保存管理室 には、 ク リー ン作戦 に際 して県庁舎 に配置 されて いる全ての課室 の文書が保存 されてい る。 したがって文書係は、保存期間が満了 した文書は協議のうえ公文書館長へ引き渡 し、公文書館が 収集 しない文書は物理的な廃棄処分 に付 して、毎年新たに引き継がれる文書の収納スペースを確保 し なければな らない。
筆者は文書保存管理室内を調査 して現時点での書庫 の収蔵能力を算定 した。その結果, まず公文書 館への文書の引渡で書架 を空けてお く必要があるとわかったので、今年度の廃棄協議 に向けて文書廃 棄台帳の作成 を急 いだ。文書係は、毎年文書 とともに引き継がれ る引継 目録か ら保存期間満 了したも
H 今後の県文書収集 ・整理事業のために必要な 「投資」 として研修の実現 にお骨折 りいただいた方々、またご配慮い ただいた財団法人沖縄県文化振興会、半年の研修期間にわたって筆者 を温か く受入れ助言 して くださった総務私学課 の方々にこの場を借 りて感謝 したい。
臼 この図は、公文書館で行 っている県文書収集 ・整理業務の広報のために、職員向けに作成 したものであるO ここに 示 されているような文書のライフサイクルの概念を普及す ることも専門員の役割である。
のを手作業でピ ックア ップ し、文書廃棄台帳を取 りまとめる。各所管課長 と総務私学課長は この文書 廃棄台帳記載の文書 について協議を行 い、廃棄 を決定す る10。
ここか らは従来筆者が公文書館サイ ドか ら携わってきた部分だが、 このよ うにして協議の済んだ廃 棄文書か ら、収集基準 に照 らして公文書館受入文書 を リス トア ップ し、それ にしたがって文書保存管 理室内の該当す る文書 を特定する。約
15t
の文書が こうして文書保存管理室か ら運び出され、公文書 館の中間書庫へ送 られ る。文書係は公文書館の第一次選別 にもれた文書 を廃棄処分 に付 して、す っきりした文書保存管理室でクリー ン作戦を開始す るわけである。
いっぽ う公文書館の中間書庫で も、書架総延長 にして
200m
を越 える量の文書 をまとまった形で受 け入れ るスペースがすでになかったため、今年度分の引渡 に備 えて文書の廃棄処分 を行 った。 この処 分は第二次選別の結果ではな く、収集基準 を定める以前にすでに収集済みだった文書 にあ らためて収 集基準 を適用 し除外す るという、 いわば消極的選別 の結果である。廃棄処分 にあたって文書 について いる金具や紐 を除去するという作業 を突貫で実施 した。 いうまで もないが、廃棄処分 にもコス トがか かる。文書保存管理室 と公文書館 中間書庫での このような作業 を経て、 ク リー ン作戦は始 まったO ク リー ン作成実施要領の説明会 を経て、4週間にわたる実施期間中、各所管課が文書保存箱 に入れた引継文 書を文書保存管理室へ運び こむ台車の列が続 く。文書係は、文書保存箱 に正確 に引継 目録 (内容物 リ ス ト)が添付 されているか確認 し、引継 目録の写 し一式の提出を受ける。続 いて文書保存箱 を開いて、
実施要領通 りにホ ッチキスや金具の綴具が除去 されているかを点検 し、そ うでないものはその場で外 してもらう日。
検査の終わった文書箱は、保存年限別のブ ロックに所管課順 ・箱番号川副こ配架す る。次に、提出を 受けた引継 目録 に、その文書保存箱 を納めた書架の番号 を記入す る。文書箱 にも書架番号 を書き込ん で、一連の作業は終了する。所管課 も同 じ引継 目録 を控えで持 っているので、引継後の文書係への照 会にそれを用 いる。 シンプルな仕組みなが ら、現場での検索にはほとん ど困 らない。 コンピュータを あえて用いな くて も、固定 した 「在庫」 の位置確認は容易であるOだがそれは文書の移動、つま り物 流への対応 には小回 りがきかない。保存期間が満了 した文書 について文書廃棄台帳を作成す るときに は、引継 目録の 「廃棄予定年度」の項 目を目で確認 して、廃棄台帳 を手作業で作成す る。その作業 に は見落 としや誤記入の リスクが常にある。公文書館は こうして作成 され る廃棄台帳に基づいて受入文 書 を選別 し、受入台帳 を作成す る。最初 に作成 され る 目録である引継 目録 を何 らかのデー タベース ファイルで作成すれば、あ らか じめ入力項 目となっている廃棄予定年度でソー トす るだけで、少な く とも文書廃棄台帳の作成作業は効率化できる。
文書保存箱単位で作成 され る引継 目録は、箱 に納め られた文書の件名一覧 となっている。箱番号 さ えわかれば、文書保存箱 を開けな くて もその内容物が確認できるわけだが、 この件名 リス トも引継 目
10 先に述べた通 り、文書はすべて有期限文書 となっているが、保存期間の延長 も認め られている。ただ し規程 によ り
20
年保存文書については保存期間を延長 して も (現用あるいは非現用 のままであっても)その保存場所は公文書 館 とされている。 ライフサイクルの管理者 と保存場所 に食い違 いの生 じる一例である。 この研修 中に,20
年保存文 書の公文書館への引き渡 しの始 まった平成8年度 と 9年度の延長 申請分について、各所管課へ延長見直 しを要請することができた。 これ もひとつの成果に挙げてよいと思 う。
11 今回はその検査官 として筆者 も加わった。 これ らの文書の保存期間が満了 し文書係か公文書館で廃棄処分 に付 さ れるときには、ずいぶん処分作業が楽になるだろう。除去作業に音を上げて苦情 を言われることもあったが、所管課 の職員か らは 「こんな ことな ら文書 を作 った最初か らなるべ くホ ッチキスは使わないように考えないと」 という声 も しば しば聞かれた。エコロジーの観点か らも望 ましいか もしれない。
‑ 19‑
録作成者 によって記述 にば らつきがある。 この文書内容記述が標準化 されていれば、公文書館での選 別作業を合理化す る強力なツール にな りうると思われ る12。
文書保存管理室 には、筆者の概算で約
1
万7, 000
箱の引継文書が保存 されている。筆者は研修 中に その うち約1
万2, 000
箱 について、保存文書台帳データベースを作成 した (残念なが ら残る5, 000
箱 については時間切れ となった)。文書の所管課名や類名、廃棄予定年度、分類記号、所属年度な どと いった既 存 の引継 目録 で採用 され て いる基本的情報項 目に加 えて、文書 のステイ タス につ いての フィール ドを追加 した。 この文書が延長 申請 されているものか、保存期間経過後公文書館の第一次選 別 によって、公文書館へ送 られる ことになる文書であるか、改めて判断を要するものか、第一次選別 に残 らないもの として、文書係で廃棄処分することになるものかを識別 してある。文書のフローに関 する情報 を追加 した ことになるわけだが、 このデータを、今後 の受入計画の策定の基礎資料 として活 用 したい。研修期間に、 こういった文書の引継か ら公文書館への引渡 までの一連のフローについて、 目録や台 帳の作成 を実地 に行 うことも含めて、つぶ さに見 ることができた。 このような事務 にかける労力を軽 減 しかっよ り円滑な文書管理 につな ぐためには どうした らよいか、大きな示唆 を得たのはやは りこの
フィール ドワークあっての ことだった と思 う0
2‑3 沖縄県情報公開条例 と文書管理規程等の改正
研修 中に沖縄県情報公開条例 (以下情報公開条例 という)の改正 とそれ に伴 う文書管理規程等の改 正作業が行われ、それ を目の当た りにした ことも、貴重な経験のひ とつである。沖縄県は
1992
年 (平 成4)に情報公開条例 を施行 したが、国の情報公開法上の要請 に応えるべ く条例 を改正 し、改正条例 は2002
年 (平成1 4)1
月1
日よ り施行の運び となった。改正の概要は、条例の 目的に知る権利、説 明責任、県政への参加 ・監視 を明記す る ことや、請求権 を何人にも付与すること、請求及び決定手続 きの整備、審査会の権限、審査手続 きの明確化、不開示事項 の整備等、よ りリベ ラルな内容 を持つも の となっている。この改正 において、公文書館 にとっての大きな関心事は、公文書の定義が変化 した ことである。従 来開示対象の公文書 とは、決裁等 の手続 きを完了 し実施機関が管理 している文書 をいっていたが、条 例改正 によ り、決裁 ・供覧の手続 き要件が廃止 され、電磁的記録や組織共用文書 も開示請求の対象 と なった。 これ に伴って、文書管理規程等 の関連規程 も整備 され、新たに電磁的記録 に関する規程が盛 り込 まれた。公文書開示請求時の検索資料 として一般の利用 に供するため、電磁的記録の管理 につい ては新たに制定 された管理要領 によ り電磁的記録管理簿の作成が求め られてお り、保存期間経過後は これ らの電磁的記録文書 も公文書館長へ引渡 される。公文書館は これ ら電磁的記録の受入や保存、整 理、閲覧提供の方法 について、早急 に対応 を講 じなければな らない。
また、紙媒体 の文書 について も保管 ・保存文書 目録の作成 と提出が規定 され ることになった。 この ように現用 ・半現用段階での文書の管理体制の充実は、半現用段階の管理 を行 う公文書館 にとって望 ましい事であると同時 に、それ に見合 うだけの体制づ くりを公文書館 もまた進めていかねばな らない ことを意味す る。
12 文書管理 システムな どが導入 されれば、 ある程度 の記述 の標準化や、文書の所在 に関す るデータの管理が可能 に なるだろ うO この点 は電子化 の もた らす福音た りうる。
2‑ 4
文書概念 と文書管理の変容前節でみたように、われわれが扱 う文書の概念 自体が紙媒体か ら電子媒体 をも含む もの として大 き く変化 した。加えて文書概念だけでな く、文書管理 のあ り方そのものも、電子化 という変容の渦 中に ある。
沖縄県では沖縄県行政情報化推進計画 を策定 し、電子県庁の実現 を目的 として さまざまな施策 を講 じてお り、文書管理 システムの導入 もその施策体 系の一角 を占める。文書および文書管理 の電子化 は、それ 自体が 目的なのではな く、その実現 によって行政事務の効率化 ・高度化、行政情報の適切な 公開による民主化の推進 を果たすためにある。 ことに文書管理 という局面 に関 して言えば、公文書館 サイ ドか らも、 このような 目的の達成 に貢献することがで きるか もしれない。
先述 したように、文書管理 システム を導入 し、職員の訓練が うまくいけば、従来行 ってきた引継 目 録や廃棄台帳の作成 といった管理事務はオー トメー シ ョン化す るだろうし、 さ らにこのライ ンを公文 書館まで結べば、 ライ フサイクルを一貫する文書管理 システム となるであろう。 さらにこのライ ンを 利用 して評価 ・選別業務 を合理化できな いだ ろうか。た とえば、所管課が第
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種文書( 20
年保存) の保存期間を延長する傾向がある。沖縄県では公文書館開館 に伴 う関連規程の整備で、第1
種文書 を20
年保存の有期限文書 とした。 これは従来長期保存文書 として文書保存管理室内で保管 し滞留 して いた文書 を、非現用文書 として公文書館で一般の自由な閲覧に供す ることが可能なよ うに配慮 した も のである。それで も保存期間が延長 され続けると、長期保存文書 というカテゴ リーを廃止 した意味が な くなって しまう。しか し所管課が文書 を廃棄決定 しない理 由や事情 をみてみると、廃棄 した結果公開される ことの不 安ではな く、廃棄決定 した文書が文字通 り消滅 して しまうことを危倶 しているか らのようである。保 存期間の延長の理 由として挙がるものの中には、外部 に出 した くないというネガテ ィブな理 由は見 当 た らない。つま り 「廃棄」 とは文字通 りの滅失 として捉え られているわけで、廃棄 した文書が公文書 館であるいは歴史資料 として永久保存され るものであるとはイメージしにくいもの らしい
J ・ j
。業務遂 行の記録 として残すべき文書 を捨てず に残 しておきたいという動機はごく良心的な ものだ し、逆 にいうと公文書館で永年保存すべき文書 を,所管課が決定す ることがあって もよいのではないか。
つまり、全てを公文書館で受け入れて評価 ・選別す るという形でな く、た とえば アメリカ政府の例 のように、あ らか じめパーマネ ン ト指定 されたファイルがアーカイブズへ送 られ るという流れ を確立 することも考えてよい。それはアーキ ビス トが評価選別 の主体性 を放棄 し、記録文書の流れて くる川 下で待っていればいいということを意味す るわけではない (というよ りむ しろ現状のほうが 「待 ち」
の姿勢ではある)。 あ らか じめ文書 の保持期間 と公文書館で の永年保存 の可否 を組み込 んだ リテ ン シ ョン ・スケジュールやガイ ドライ ンを、所管課 と公文書館 の専門員の双方で作成できれば、現用段 階 と非現用段階の文書管理 に強固な橋 を架けることになる。実際、専門員が県 の機関の行 うあ らゆる 業務 に精通 した上で文書 を評価 し選別す ることは不可能であ り、作成者側の意見 を取 り入れ ることは 重要だろう。
13 第
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種文書保存期間延長の問題 の背景には、県文書の管理 における公文書館の位置づけについて正 しい認識 を促 すような普及活動が不足 している ことがあろ う.公文書館は県庁舎のエ ン トランスホール (県民ホール) を会場 に、主 として県職 員を対象 にした展示会 を行 い、県文書 の流れや保存期間を経過 した文書 を 「廃棄」す る ことの意味、各 課か ら公文書館へ送 られた文書 の実績な どを図示 した。県職 員向けの こういった普及活 動 の実績 は過去 ほ とん どな かったが、今後 はいっそ う力を入れ る必要があるだろう。
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これはすで に紙媒体 の文書 として蓄積 されている文書 については遡及することはできないが、将来 に向かって検討する意義は大 いにある。 このたびの改正でみるように電磁的記録が文書管理規程で管 理される文書 とな り、それ らの記録はいずれ文書編集保存規程 に基づいて公文書館へ送 られる。そ し て文書の発生 (収受 ・作成)そのものが電子文書管理 システムによって電子化 されると、公文書館が それ らの記録 をどのよ うに受け入れて永久保存す るか、つ ま り将来的に可読性 をどう保証するか とい う難問をわれわれに与えるわけだが、同時 に発生す る文書の確実な捕捉 を可能にする手段 をも提供 し うる。その前提あって こそ、公文書館は後世 に残すべき資料 をシステマテ ィックに残す ことができる のである。
むすび にかえて〜公文書館専門職員の領域
本稿の主たる目的は
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年前の論稿 を自己点検す ることだった。そ こで予見 した事柄は急速 に現実化 しているものの、 「課題」 の深化 を確認す る結果 になったようである。公文書館専門職員 (公文書館での職名は 「公文書専門員」である)とは、英語で言 うところの
ar c hi vi s t
‑デーキ ビス トにあたるもの とされている。 アーキ ビス トとは
ar c hi ve s
‑アーカイブズを管理する 者だか ら、アーカイブズ とい うものの内実が多様 な ものである限 り、 アーキ ビス トもさまざまなイ メージで現れ うる。 アーカイブズ とは、親機関の保有する文書のうち非現用のものをさす こともある し、近世の古文書群であった り、特定の個人が特定のテーマで収集 した資料や手稿であることも、希 教本の類のコレクシ ョンをさす こともあ りうるだろうOそれぞれでいうところのアーカイブズの性質 によってアーキ ビス トが必要 とす る技術やポ リシーは異なるか もしれない。 このようにさまざまな来 歴の 「歴史資料」がある中で、公文書館法 によ り 「自治体が保管する公文書等のうち現用のものを除 く」 と規定 され るような意味でのアーカイブズが、その他 のアーカイブズ と決定的に異なるのは、そ れが作成の段階か ら適切 に管理す ることによって大きな実 りをもた らす資料群であるということでは ないだろうか。そ こには、すでに歴史資料 になった ものに対す るとは別のアプローチ、別の倫理があ るように思 う。特 に本稿で何度 も言及 した基本理念 を持つわれわれの場合、 このような方法論やプロ フェッシ ョンをどうや って沖縄県 という組織 の中にシステム として確立 していくか、そのシステムを どのよ うに保守管理 していくか、 しか も新 しい情報テクノロジー と社会変容のさなかで どうそれに道 をつけていくのか、 まった く新 しい挑戦 となるといっていいだろう。 このチ ャレンジの裾野を、専門 職員の 「領域」 として、 これか らも考 え続 けていきたいし、公文書館が博物館 とも図書館 とも異なる 独 自の 「領域」、つま り県文書 を保全 し歴史資料 として後世に伝える使命 を帯びた機関であることについて、地域社会 にもさ らに理解 を得 られ るよう努めていきたいと考える。