1. はじめに
教科「家庭」は生活に密着した内容を持ち、よりよい 生活改善にむけての知識と技能を習得することを学習 の目標としている。学習内容は社会生活や家庭生活と 密接な関わりを持ち、多岐にわたり、かつ、総合的な 性格を持っている。小学校の「家庭」で扱っている内 容は、親学問である家政学の専門領域でいえば食物学、
被服学、住居学、家族関係学、家庭経済学など自然科 学系から社会科学系にわたるもので、それらの内容が
「生活」を核として相互に関連して学習を深めるもので ある。したがって、教える立場にあるものは一つの専門 領域に特化した知識のみでは対応しきれない難しさが ある。
一方、教員養成課程で勉強する学生の家庭科に関す る基礎能力は、現在では男女ともに小学校から高校ま で必履修であるとはいえ、小学校 5 年生から開始される 学習であるために、6 年間継続して学習している他の教 科に比べて反復学習の機会は少なく、また、中・高等 学校での履修状況も、受験科目ではないことから重視 されることは少なく、知識・技能の定着は低いといわれ ている。
また、教職についてからも、履修学年が 5、6 年生の みという特性から、授業を担当しつつ教科専門の知識を 深めていく機会が、他教科に比べて極めて少ないとい う状況がある。小学校「家庭」の衣生活領域の内容は、
着方、手入れ、製作に大別される。衣服の着方、手入 れは日常的に行われている事象であるが、それゆえに学 習の意義が認識されがたい傾向がある。また、物づくり の習慣が失われている近年は、手指の巧緻性が低下し
ている上に、小学校から高校までの家庭科の学習で習 得した縫製技術は日常生活で生かされることが少なく、
大学生の年齢でも縫製の基礎的技術が充分に定着して いるものは多くない。
このような状況の中で、大学における教員養成の立 場からは、大学入学までに培われていなければならない 教科専門の基礎が十分に定着していない学生が「教科 に関する科目」の単位履修として「家庭」を受講してい ることを予想し、指導者としての十分な能力を養うよう にする必要がある。
そこで、本研究では、教職課程における衣生活領域 の教育の内容を問い直すことをめざし、まず、小学校教 員免許取得をめざす教職課程の学生を対象に、自分た ちが今まで学んできた家庭科をどのように捉え、その中 で衣生活領域の学習をどのように位置付けているのか、
衣生活領域の学習内容の興味・関心の所在、将来自分 はどのような授業を展開したいと考えているのかをたず ね、学生が抱く家庭科・衣生活領域に対する学習経験 からのイメージの分析を行った。
2. 方法
2. 1 調査対象者・調査期間・調査方法
調査対象者は、東京学芸大学で「家庭科研究」を履 修した小学校教員養成課程の大学 3 年生および専門科 目「被服学」を履修した家庭科専攻の大学 2 年生と、都 内私立A大学小学校教員養成課程で「家庭科研究」を 履修した大学 3 〜 4 年生である。
調査期間は2003 〜 2007 年である。表1に年度別・男 女別の内訳を示す。
* 熊本大学教育学部
** 東京学芸大学(184‑8501 小金井市貫井北町 4‑1‑1)
小学校教員免許取得希望者の衣生活領域の学習に対する意識
── 学習経験に基づくイメージ分析から ──
雙 田 珠 己
*・鳴 海 多恵子**生活科学
(2007 年 9 月 28 日受理)
調査方法は、年度ごとの初回の授業において調査用 紙を配布し、授業内に回収した。
2. 2 調査内容
調査は質問紙法を用いて行った。質問紙は以下の8 つの質問で構成し、講義の第1回目に全て文章完成法 の自由記述で回答させ回収した。
Q1家庭科でおもしろかったことは。Q2 家庭科でつ まらなかったことは。Q3 被服でおもしろかったことは。
Q4 被服でつまらなかったことは。Q5 女子生徒は被服を。
Q6 男子生徒は被服を。Q7 私がもし被服を教えるとした ら。Q8これからの被服はもっと。
なお、本調査で被服と表記するものは、学習指導要 領および教科書で衣生活領域として表記されるものと 等しい意味で用い、学生が衣生活領域の学習内容を一 般的に被服と呼称することを考慮しこれを用いた。また、
回答の対象となる家庭科および衣生活領域の学習内容 は、小・中・高等学校で学んだ全ての学習とした。
2. 3 分析方法
全ての質問が文章完成法で回答されているため、各 質問に対する回答の記述を網羅するように、回答内容の 傾向別に項目分けを行った。回答を数量で把握するた め、1文または1語句を1つの回答として集計することを 原則とし、回答された記述の中に複数の文、語句が記 載されている場合は複数回答として扱った。項目ごとに 全回答数を求め、それを母数として分析した。さらに、
男女によるイメージの特徴を明らかにするため、全ての 質問を性別でクロス集計しχ2検定を行った。また、性 別役割意識の特徴をみるためQ5とQ6のクロス集計を 行い、さらに今までの衣生活領域の学習に対する印象 が、将来この領域の内容を教えることを想定した際、ど のように関わるかを明らかにするため、Q3とQ7のクロ ス集計を行った。
3. 結果と考察
3. 1 「家庭科でおもしろかったこと」と「家庭科でつ まらなかったこと」
図1は「家庭科でおもしろかったこと」の記述内容を 13 項目に分類し男女別に結果を示したものである。「お もしろかったこと」として想起される学習内容の傾向は、
男子と女子で違いが認められたが(χ2=21.6, df = 12,p
< 0.05)、男女ともに調理実習の人気は高く全体の67.5%
が回答し、他の分野を大きく引き離して第1位であった。
これは永田(2003)が行った家庭科のイメージ調査と同 じ傾向であった。今回の調査では、男子の82.1%が「お
0 20 40 60 80 100 特になし
無回答 家庭経済領域 家族関係領域 衣生活領域(実習以外)
住生活領域 物づくり(全般)
食生活領域(実習以外)
その他 実習(全般)
保育領域 被服製作 調理実習
女子(n=344) 男子(n=78)
図 1 家庭科でおもしろかったこと
(%)
0 20 40 60 80 100 保育領域
物づくり(全般)
無回答 実習(全般)
被服領域(実習以外)
その他 家族関係領域 家庭経済領域 住生活領域 調理実習 被服製作 特になし 食生活領域(実習以外)
講義
女子(n=295) 男子(n=73)
図 2 家庭科でつまらなかったこと
(%)
表 1 対象者の内訳
男子 女子 合計(人)
2003 年 24 57 81 2004 年 39 60 99 2005 年 19 117 136 2006 年 11 70 81 2007 年 1 28 29 合計 94 332 426
もしろかったこと」として調理実習をあげており、男子 にとっては特に強く印象に残る学習内容といえた。女子 も64.2%が調理実習を回答したが、被服製作にも関心を もっている(13.7%)傾向がみられた。
次に、「家庭科でつまらなかったこと」の記述内容 を14 項目に分類し図 2に示した。記述された回答傾向 に男子と女子の違いは認められず(χ2=11.8, df = 13,
n.s.)、男女ともに「講義」を想起する人が最も多く、全
体の38.0%がこれに該当した。記述の詳細をみると「先 生が一方的に説明する授業」、「黒板を写すだけの授 業」、「教科書を読むだけの授業」といった講義方法に 対する内容や、「細かいことを暗記する」などの指導内 容が目立った。次いで多かったのは、男女とも栄養素 やカロリー計算についての食生活領域の講義であった
(16.6%)。また、「その他」と回答された記述内容には、
環境問題、リサイクル問題、消費者問題などがみられ た。
以上の結果から、家庭科の授業は、調理実習を中心 とする実習が「おもしろかった」学習のイメージとして 強くあり、反対に講義は約 4 割の人がつまらないという 印象をもっていることが明らかになった。実践的・体験 的教科としての特徴を生かし、指導法においても実験・
実習を生かすことが重要であることが考察された。
3. 2 「被服でおもしろかったこと」と「被服でつまら なかったこと」
次に、家庭科の中の衣生活領域に絞って、「おもしろ かったこと」と「つまらなかったこと」をたずねた。
「被服でおもしろかったこと」として記述された内容
を表 2の8 項目に分類し、男女別に集計した結果を図 3 に示す。想起された内容は男女で傾向に差が認められ たが(χ2=31.2, df = 7,p< 0.01)、第1位にはいずれも
「製作・実習」があげられ全体の65%がこれを回答した。
次いで、男子は「ミシン・道具」に関する経験を「お もしろかったこと」として想起する人が多く(20.2%)、 女子は製作過程でのさまざまな体験を想起する人が多 かった(14.8%)。表 2は、「被服でおもしろかったこと」
として記述された回答の詳細を示したものである。これ からも明らかなように、回答には、自分自身の手でいろ いろな作品を作る楽しさだけでなく、製作・実習を通し て味わった「作品を完成したときの達成感」や「アイ ディアを形にすること」の楽しさ、「完成した服を実際 に着用した」喜びを想起した記述が目立った。吉野等
(2007)が行った被服製作実習に関する調査でも、学生 は被服製作実習を「自分で工夫する力を養うのに役立 つ」「面倒で投げ出したくなるが完成してみると非常に 喜ばしい」と同様の評価をしていた。家庭科の製作や 実習は、布を使った物づくりの流れや作品の構成を理 解し基礎技術を習得することが目的であるが、それに伴 う苦労や楽しさの中から学生達が多くのことを学んでい ることが明らかになった。
次に、「被服でつまらなかったこと」として得られた 記述内容を表 2の8 項目に分類し、図 4に示す。回答傾 向に男女の差は認められず(χ2=3.8, df = 7, n.s. )、全 体の31.3%が「製作・実習」をあげていた。その詳細 をみると、手縫いを中心とした基礎縫いが多くあげられ ており、型紙や布を選ぶことができない教材に対して不 満を持っている人が多いことも明らかになった。「おも
0 20 40 60 80 100 無回答
その他 授業形態・指導方法 特になし 製作以外の授業内容 ミシン・道具 製作過程での体験 製作・実習
女子(n=385) 男子(n=104)
図 3 被服でおもしろかったこと
(%)
0 20 40 60 80 100 無回答
その他 製作以外の授業内容 製作過程での体験 授業形態・指導方法 ミシン・道具 特になし 製作・実習
(%) 女子(n=349) 男子(n=99)
図 4 被服でつまらなかったこと
(%)
しろかった」であげられた内容とは逆に、自分の技術に 対する不安や作業の遅れに関わる内容が多く、製作し ている物についても「非実用的な物」「いらない物」と 否定的な表現が目立った。さらに、繊維や洗濯につい ての講義に対する不満や、作業の失敗およびその原因 となるミシンの不足や故障に対する不満が、男女ともに 多くみられた。甲斐・小島(1993)は、繊維の分類、繊 維の性質、中性洗剤で洗濯する繊維などの基礎知識が、
大学生にあまり定着していないことを報告しているが、
今回の調査結果と併せて考察すると、学生の授業への 関心の低さと知識の定着率は関係が深いと考えられ、
授業方法の工夫が重要と思われた。
衣生活領域の学習では、個人の創造性を重視し、教 材の自由度を高めた製作・実習が、楽しかったこととし て学生達の記憶に残っており、実際に完成した物を使
用できることもよい印象となって残っていることが明ら かになった。一方で、実習を支えるはずのミシンに関 するトラブルは多く、学生の記憶の中に嫌な経験として 残っていたが、男子を中心にミシンに対する興味関心が 高いことも明らかになった。三輪等(2000)が行った調 査でも、衣生活領域に関する学習で興味のあった内容 として、男子学生の約 2 割が「ミシンの使用」と回答し ており、この傾向は男子学生の特徴と考えられた。一般 家庭におけるミシンの普及率は、平成16 年に69.3%ま で減少し(注1)、家庭の中でミシンが使われなくなった ことが推察される。しかし、このような時代であるから こそ、生活に役立つ物を自分の手で作り出す道具として 授業の中でミシンを取り上げ、子どもたちの関心をさら に高める必要があると考える。
表 2 「被服でおもしろかったこと」と「被服でつまらなかったこと」
被服でおもしろかったこと 被服でつまらなかったこと
1.製作・実習 ・製作・実習全般 ・基礎縫いの練習
・エプロン ・パジャマ
・バック ・玉留め練習
・ナップサック ・手縫い
・クッション ・針の糸通し
・パジャマ ・同じ型紙や布で製作し自由がない
・雑巾を縫う
・ハーフパンツ
・刺繍
2.製作過程での体験 ・作品を完成した時の達成感 ・時間がかかる
・アイディアを形にすること ・細かい作業
・完成した服を実際に着用したこと ・うまくいかないときのいらいら
・自分で計画・製作したこと ・作製中の失敗
・作る喜び ・少しでも遅れるとまったくわからなくなる
・1枚の布からいろいろ作れる ・納得できる作品を作れなかったとき
・ものづくりの面白さ ・一人だけ作業に取り残された
・完成品が好評だったこと ・面倒くさい
・作品展に出品 ・やり直し(リッパーで糸をほどく)
・もくもくと縫う
3.製作以外の授業内容 ・アイロンかけ ・繊維について
・染色 ・洗濯、手入れの学習
・洗濯の実験 ・洗濯表示の学習
・衣服の歴史 ・布地の構成
・型紙を使って服の構造を学ぶ ・布の種類
・気候による衣服の違い ・衣服の実用性
・繊維の実験(伸縮、特性、性質)
4.ミシン・道具 ・ミシン ・ミシン
・母親と同じようにミシンが使える ・ミシンの使い方がわからない
・裁縫箱の絵が選べた ・ミシンの下糸の調子が悪い
・ミシンが少なくて順番待ちをする
・ミシンの故障
5.授業形態・指導方法 ・放課後の居残り作業 ・講義
・友達と話していたこと ・暗記
・作品を着てファッションショー ・居残り
・針の糸通し競争 ・作業中の静かな雰囲気
・提出期限(早い人と遅い人が分かれる)
6.その他 ・作ったナップサックを下級生が使ってくれた ・非実用的な物の作製
・授業内容を通して母の話が聞けたこと ・いらない物の製作
・よい成績をとったこと ・興味のない題材を作製したこと
・作品の展示会 ・片付け
7.特になし 8.無回答
3. 3 被服ということばに対する性差
次に、「女子生徒は被服を…」「男子生徒は被服を…」
という質問を設定し、同性・異性の視点からイメージし たことを自由に記述させ、被服ということばと性差の関 係を明らかにすることにした。なお、ここで「被服を…」
というような範囲を設定しない表記を用いた理由は、対 象者と被服の関係を自由にイメージさせるためである。
しかし、ほとんどの人が被服を衣生活領域の学習として 捉え回答していた。
「女子生徒は被服を…」という質問に対する記述内容
は、表 3に示すような12 項目に分類し男女別に図 5に示 した。全体の28.2%が、女子生徒は被服が「好き」で あると回答しており、これは男女共通の女子生徒のイ メージであることがわかった。さらに、女子と男子の回 答傾向には差が認められたため(χ2=47.1, df = 11,p
< 0.01)男女別の特徴をみると、女子は同性である女子 生徒に対し、被服が「好き」である(29.8%)、「女性と して必要」(27.0%)、「できる」(14.5%)、「熱心に取り 組む」(7.0%)という順に回答し、一方、男子は異性で ある女子生徒に対し被服が「できる」(39.8%)、「好き」
である(22.4%)、「熱心に取り組む」(11.2%)と回答し ていた。そこで、被服に対する男女の意識の違いが顕 著であった「女性として必要」の項目について詳細をみ ると(表 3)、「学ぶべき」、「がんばるべき」、「できない といけない」、「知っておいた方がいい」、「日常生活で活 かすべき」、「将来役立つ」という記述がみられ、「女性 としてプラスのイメージ」の項目にも、「おしゃれな人 が好む」、「女らしい人が好む」、「できると一目置かれる」
などの記述がみられた。以上のことから被服は女性的 なものとして捉えられ、女子は衣生活領域の学習を「女 性として必要な内容」であると強く意識していることが わかった。
次に、反対の質問となる「男子生徒は被服を…」の 結果をみると(図 6)、女子と男子では記述内容の傾向 に差が認められ(χ2=27.7, df = 12,p< 0.01)、女子は 異性である男子生徒に対し、「男性として必要」なこ
項 目 具体的な記述例
1 できる 得意、うまい、軽くこなす、センスいい、丁寧、自分でできる、上手、器用、きれいにできる、実習で活 躍する、教えるのが上手、など
2 できない 不得意、下手、技術の差が大きい(できる人とできない人の差が大きい、二極分化)など
3 好き 好き、面白い(面白がる)、関心がある、興味がある、凝る、楽しむ、趣味に走る、細かい作業が好き(上 手)、など
4 嫌い 好まない、嫌い、関心がない、興味がない、など
5 熱心に取り組む 一生懸命がんばる、がんばる、きちんと取り組む、進んでする、積極的、計画的に取り組む、今後に役立 てようとする、高度なものに挑戦する、など
(態度や姿勢)
6 適当に取り組む めんどうくさがる、とりあえず作る、早めに終わらせる、私語が多い、など
(態度や姿勢)
7 女性としてプラスのイメージ おしゃれな人が好む、女らしい人が好む、できると一目置かれる、私生活で活かせる、将来役立つ、魅力、
など
8 女性として必要 学ぶべき、がんばるべき、できないといけない、知っておいたほうがいい、日常生活で活かすべき、将来 役立つ、必修とすべき、できてあたりまえ(と思われる)、義務付けられている、技術を身につけるべき、
受講すればいいことがある、男子よりできるべき 9 女性として特に必要ではない 男女に必要、困らない程度に必要、基礎だけ学ぶべき
10 その他 学ばなかった
11 特になし、12無回答
表 3 女子生徒は被服を
0 10 20 30 40 50 特になし
嫌い 無回答 女性として特に必要ではない 適当に取り組む その他 女性としてプラスのイメージ できない 熱心に取り組む できる 女性として必要 好き
女子(n=359) 男子(n=98)
図 5 女子生徒は被服を
(%)
と(19.2%)、「適当に取り組む」(16.3%)、「できない」
(14.9%)、「嫌い」(12.3%)という順に多く回答した。
それに対し、男子は同性である男子生徒に対し、「でき ない」(25.0%)、「適当に取り組む」(22.1%)、「嫌い」
(15.4%)という順に回答していた。男女ともに「男子 生徒は被服が苦手で嫌いであり、熱心に取り組まない」
という共通のイメージをもっていたが、ここでも「男性 として必要」という項目に男女の顕著な違いがみられた。
そこで、「男性として必要」の項目に記述した詳細をみ ると(表4)、「ある程度できたほうがいい」「身につけ た方がいい」「基礎は学ぶべき」などの内容が多くあげ られ、女子の方がより強く「男子も被服を学ぶべきであ る」と意識していることがわかった。また、「男性とし てプラスのイメージ」の「被服が好きだと尊敬される」、
「得意だと株があがる」の記述にみられるように、縫製 技能にたけていることは評価されていたが、同時に、男
性が衣生活領域の学習をすることを「生活に活かせな い」、「できなくてもかまわない」、「直接必要なし」と捉 えている人もみられた。
以上の結果より、衣生活領域に対する意識は男女で 大きく異なり、女子は衣生活領域を女子必須の内容と自 負し、男子に対しても「基本的なことは学ぶべき」と強 く思っていたが、女子と同じレベルである必要性は感じ ていなかった。一方、男子は衣生活領域を自分にはあま り関係のない学習として捉えていたが、かといって女子 には必要なものとも意識していない様子が伺えた。被服 ということばから受けるイメージには性差意識があり、
「被服=女子の領域」という認識は、男子が女子に対し てもつ以上に、女子が女子に対して強くもっていること が明らかになった。その原因としては、「被服=裁縫=
女子の仕事」といった固定観念の存在が考えられ、衣 生活領域の内容を学ぶ姿勢の男女差に影響していると
0 10 20 30 40 50 特になし
無回答 男女平等に必要 男性としてプラスのイメージ その他 熱心に取り組む 男性としてマイナスのイメージ 好き できる 嫌い できない 適当に取り組む 男性として必要
女子(n=375) 男子(n=104)
図 6 男子生徒は被服を
(%)
項 目 具体的な記述例
1 できる 意外にできる、意外と器用、意外と慣れている、丁寧、得意、
上手い、こなす、苦手とは限らない、女子よりうまい人もい る、創意工夫する、普通にできる、など
2 できない 大雑把、時間がかかる、雑、不得意、苦労する(していた)、 苦手(苦手そう)、大変(大変そう)、すぐ失敗、など 3 好き 好き、意外と好む、意外と楽しむ、楽しみ、デザインを楽し
む、ユニークな作品、など
4 嫌い あまり楽しまない、嫌がる、興味の差(好き嫌いの差)が大 きい、意味ない、つまらない、好む人は少ない、授業が嫌い、
など
5 熱心に取り組む 意外と熱心、意外と集中、自分なりに一生懸命、周囲に聞い て学習、雑だがきちんと縫っていた、など
6 適当に取り組む
(やる気がない)
遊びながらやる、あなどっている(あなどってはいけない)、 甘く取り組む、重視していない、いやいや取り組む、母親
(誰か)にやってもらう、軽く見る、簡単に済ませる、ふまじ め、女子に手伝ってもらう、ふざける、どうでもいい、やり たくない(ようにみえる)、など
7 男性としてプラス のイメージ
被服が好きだと尊敬される、得意だと株が上がる、上手だ と意外に思われる、すごい、作れるとこれからの男、できる と格好いい、上手くできなくても評価される、仕事は丁寧、
もっと活用できると思う、など 8 男性としてマイナス
のイメージ
生活に活かせない、できなくてもかまわない、直接必要なし、
しなくてもいいと思っている人もいる、領域外と思う、生活 で利用していない、作る機会はない、作る人は少ない、ほか の人にやらせる、抵抗ある、できないほうが男らしい、でき なくてもかわいいという特権、など
9 男性として必要 ある程度できたほうがいい、身につけたほうがいい、基礎は 学ぶべき、ある程度できるべき、きちんと学ぶべき、基本さ えできればいい、ボタンつけくらいできるべき、学んで損は ない、一通り学ぶべき、役立つ、など
10 男女平等に必要 女子と同様真剣にすべき、男女平等に必要である、男女とも やっていた、男子も楽しんでほしい、など
11 その他 学ばなかった、やらなかった、自分の好きなようにしたい、
など 11 特になし、12無回答
表 4 男子生徒は被服を
考えられた。
3. 4 将来衣生活領域を指導することへの抱負
将来教員となったときに衣生活領域を教えることを想 定し、自由記述させた回答を表 5の12 項目に分類し図 7 に示す。女子と男子では回答の傾向に違いが認められ
(χ2=22.6, df = 11,p< 0.05)、女子は生活に役立つよう な「実用的・実践的内容」を重視している人が最も多く
(24.4%)、男子は「製作・実習を重視」している人が最 も多かった(33.0%)。男女ともに「製作・実習を重視」
をあげる割合は高く、具体的な作品や技術名をあげた 人は(表 5)、この項目の回答数(n = 95)の21.1%を占 め、また「同じ物を2 度作らせない」という記述もみら れた。また「授業方法」「教材の自由度を重視」の項目 の詳細にもみられるように、「子どもを主体とする」「子 どもが楽しめる」「体験的な授業」や、「好きな物を作ら せる」「教材を自由に選択させる」「個性重視」の授業 をしたいという抱負が多くみられた。なお、回答の中に は、将来自分が衣生活領域の内容を教えることを想定 し、今の自分の気持ちやこれからの課題を記述したもの
も見られた。それらを「自分自身の課題」という項目に まとめたところ、男子は女子に比べ製作・実習を重視し たいと希望する人が多かったが、衣生活領域の内容を 教えることに自信のない人も多いことがわかった。
次に、本質問とQ3の「被服でおもしろかったこと」
とのクロス集計を行い、過去の経験が将来教師になると きの抱負に与える影響を分析した。その結果、男子は、
「製作・実習を重視」と記述した28 人中25 人がQ3にお いて「製作・実習」または「ミシン・道具」をおもしろ かったと回答していた。また、女子は、「実用的・実践 的内容」を重視していると記述した68 人中48 人、「製 作・実習を重視」と記述した61人中48 人が、Q3におい て「製作・実習」がおもしろかったと回答していた。以 上のことから、将来の授業者として衣生活領域の授業 を考える際に、過去におもしろいと感じた授業の経験が 強く影響をしていると考察された。
3. 5 これからの衣生活領域の学習への期待
表 6は「これからの被服はもっと」として考えること を自由に記述させたものである。記述内容を11項目に 項 目 具体的な記述例
1 製作・実習を重視 編み物、ウォールポケット、エプロン、パッチワーク、作務 衣、服、ミシン、針、しるしつけ、手縫い、洗たく方法、な ど
同じものを2 度作らせない、実習、実験、製作、作業中心と いった記述、など
2 授業方法 子どもを主体とする、子どもが楽しめる、体験的な授業、子 どもの気持ちにあった課題、子どもが興味をもてる授業、子 どもが自分で方法を考える、経験重視、など
応用を考える、工夫できる、興味をそそる、グループ学習、
作品を使える、作品を使って劇をする、性差なく教える、
個人差がつかない工夫、従来の授業を脱却(または遵守)、 ゆっくりした授業、など
3 実用的・実践的内容 すぐ使える内容、季節による服選び、現代風、最近のもの、
実用的な、実践的な、生活に役立つ、身近な内容、など
4 教材の自由度を重視 好きな物を作らせる、教材を自由に選択させる、個性重視、
自由に、アイデアを出す工夫、個人の作りたいものを作らせ る、流行、ファッションを重視する内容の記述、など 5 楽しさを重視 楽しい、おもしろく、楽しく伝える、楽しい教材、手作りの
あたたかさ、など
6 基礎知識を重視 同じ内容を繰り返さない、基礎から、基礎重視、基礎技術、
洋服選びの知識、服装の歴史、など
7 内容を簡潔に 細かいところにこだわらない、理論を簡単に、普段着中心、
など
8 安全・設備の充実 安全第一、大きな教室、古いミシンを使わない
9 イメージの改善 明るいイメージ、物づくりの面白さ、男女ともに必修、物づ くりの喜び、など
10 自分自身の課題 がんばらないとだめ、あせる、心配、厳しい、自信ない、技 術がない、生徒がかわいそう、ミシン技術の向上、力不足、
など 11 その他、12 特になし
表 5 私がもし被服を教えるとしたら
図 7 私がもし「被服」を教えるとしたら
㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇
․䈮䈭䈚 䉟䊜䊷䉳䈱ᡷༀ 䈠䈱ઁ
ో䊶⸳䈱లታ
ౝኈ䉕◲ẖ䈮 ၮ␆⍮⼂䉕㊀ⷞ
⥄ಽ⥄り䈱⺖㗴 ᭉ䈚䈘䉕㊀ⷞ ᢎ᧚䈱⥄↱ᐲ䉕㊀ⷞ
ᬺᣇᴺ
䊶ታ⠌䉕㊀ⷞ ታ↪⊛䊶ታ〣⊛ౝኈ
㩿㩼㪀 ᅚሶ㩿㫅㪔㪊㪈㪌㪀
↵ሶ㩿㫅㪔㪐㪈㪀
分類し図 8に示した。男子と女子の回答傾向に違いはな く(χ2=9.0, df = 10, n.s. )、全体の30.7%が「実用的・
実践的・生活に役立つ内容」を充実させる必要がある と考えていた。具体的には、「現代生活に役立つ知識・
技術」、「生活に密着した内容」などの記述が多く、新 しい情報も織り込まれ、より関心のもてる衣生活領域の 学習が望まれていた。次いで、「自由・個性豊かな内容 や教材」であることが望まれており、「創造性を重視」
し、「自由な発想」で教材選択も自由度の高いことが必 要と考えられていた。子ども達のファッションセンスを 磨くという意味の記述も多くみられ、コーディネイトの 学習が必要と考えられていた。「製作・実習を重視」は 男女ともここでは第 3 位で、男子の傾向を見る限り順位 を落としていると考えられた。製作・実習を常に重視す る男子においても、これからの衣生活領域の学習の方 向性が、「実用的・実践的・生活に役立つこと」と意識 されている点が興味深い。女子の第4位にあげられた
「イメージの改善」は、「すべての人に必要」、「男女とも に必要」という記述からも推察されるように、衣生活領 域の内容は女子に必要という強い意識があり、そのイ メージを改善したいという希望が込められていると思わ れる。それに対して男子は、イメージの改善よりも授業 方法を工夫し楽しい授業をめざすことを望んでおり、性
別役割意識の影響が感じられた。
4. まとめ
小学校教員免許取得をめざす学生を対象に、今まで 学んできた家庭科の授業のイメージを文章完成法の自 由記述で回答させ、衣生活領域における学生の興味と 関心の所在を調査した。その結果、次のようなことが明 らかになった。
家庭科の授業の中でおもしろかったこととして回答さ れたのは調理実習で、男子の8 割、女子の6 割がこれを あげた。反対に家庭科の授業でつまらなかったのは「講 義」で、約 4 割の人が回答していた。領域に関わらず実 習以外の授業の組み立てに工夫が必要であると考えら れた。家庭科の中で被服実習は調理実習に次いで人気 のある学習であった。また、衣生活領域の授業の中で も、被服実習をおもしろかった思い出として捉えている 人が多かった。縫製技術は男女差、個人差が大きいた め苦手意識をもつ人も多いと予想されたが、男女ともに 被服実習を楽しかった思い出と回答する人が多く、楽し かった経験をもつ人ほど、将来自分が授業をする場合 にも実習を重視したいという抱負をもつと考察された。
しかし、被服ということばから受けるイメージには性別 項 目 具体的な記述例
1 製作・実習を重視 実習、製作、いろいろな物を作る、作る技術、技 術の習得、製作の喜び、製作を通して被服を知る、
実習を増やす、手縫い重視、ミシン重視、など 2 授業方法 応用も教える、拡大化、学校と家庭の連携、授業
数を増やす、子どもが自分の問題として考える、
こどもが自分で生活に応用する、コンピューターを 使う、子ども中心の授業、他の授業との関連、少 人数授業、設備の充実、など
3 楽しい授業 楽しく、おもしろく、興味深く、達成感(を感じさ せる) など
4 実用的・実践的・生活に役立つ 内容
現代生活に役立つ知識・技術、生活に密着した内 容、実用的な題材、実践的な内容、実践的な知識、
現代生活と合わせる、など
5 自由・個性豊かな内容や教材 創造性を重視、自由な発想、自由に、活動的に、
ファッションを取り入れる、ファッショナブルに、
教材にバリエーション、子どもの個性を育てる教 材、個性重視、自由に教材選択できる、自分の作 りたいものを作る、など
6 基礎知識を重視した内容 基礎知識・技術の習得、家庭でやらなくなった技 術の伝承、など
7 内容を簡潔に 内容を簡単にする、誰でもできる、なじみやすく、
授業を減らす など
8 イメージの改善 すべての人に必要、男女ともに必要、注目される べき、マイナーではない、モダンに、など 9 その他、 10 特になし、 11無回答
表 6 これからの被服はもっと
0 10 20 30 40 50
特になし 無回答 内容を簡潔に 基礎知識を重視した内容 その他 楽しい授業 授業方法 イメージの改善 製作・実習を重視 自由・個性豊かな内容や…
実用的・実践的・生活に…
女子(n=310) 男子(n=87)
図 8 これからの被服はもっと
(%)
による違いがあり、女子は被服を女性として学ぶべきも の、女性にとって必須の領域と意識しており、男子には
「基本的なことは学ぶべき」と答えながらも多くを求め ていない様子が伺えた。「被服=女子の領域」という認 識は男子が女子に対してもつ以上に、女子が女子に対 して強くもっていることが明らかになった。
いずれにしても、手を動かし自分で作品を作る実習 は、講義に比べて有意義な体験ができる時間として学 生の中に位置付けられているようであった。しかし、こ れからの衣生活領域の学習の方向性をたずねると、学 生達の多くは「製作・実習を重視」するよりも「実用 的・実践的・生活に役立つ内容」の充実を記述する人 が多く、現代生活にふさわしい、または生活に密着した 内容の充実を求める人が多かった。また、製作教材に できるだけ選択肢を与え、個性や個人の創造性を重視 した自由な衣生活領域の授業を望む声も多かった。
以上の結果を踏まえ、今後、教科に関する科目の「家 庭」を検討する際に、2 つの問題に留意する必要がある と考えられた。一つは、学生が多用する「実用的・実 践的・生活に役立つ」ということばの意味を、はたして 学生は正しく理解しているかという問題である。本来、
家庭科は生活者として自立することを目標とする教科で あるため、その方法として理論だけでなく生活技術や知 識の習得を体験的に学ぶことに取り組んできた。確かに
「生活に役立つ」技術の習得は一つの目的であるが、こ
れはHow to的に学ぶこととは大きく異なる。この点を
授業において常に確認し、周知させる必要がある。
二つ目は、大学の衣生活領域に関する授業のあり方 である。小島・甲斐(1994)は、繊維や布の特徴、洗 濯の理論の講義に対する知識は、自分の衣服を洗濯し 収納する人ほど必要性を感じ、関心が高いと報告して いる。これを前提に考えれば、生活経験が少ない現代 の学生は、大学で学ぶ被服学に関する基礎的な理論や 技術と自分自身の生活との関わりが見つけられず、大学 の講義は日常生活から乖離したもののように感じている のではないだろうか。教員養成課程における衣生活領 域の授業では、被服学の基礎的な理論や技術を教える だけでなく、基礎的な理論や技術が自分自身の生活と 密接に関わっていることに気づかせ、「実践的・実用的」
教科として子ども達に魅力的に伝える能力を育成するこ とが重要であろう。
引用文献
甲斐今日子、小島郷子:家庭科被服領域における「被服材 料教育」の重要性(第1報)−大学生の衣生活の実態
と現行の被服領域の問題点−、佐賀大学教育学部紀要、
第 41巻、139−149、1993
小島郷子、甲斐今日子:家庭科被服領域における「被服材 料教育」の重要性(第 2 報)−被服材料に関する知識 の必要性を感じる背後にある要因−、山口大学教育学 部紀要、第 43 巻、127−136、1993
三輪聖子、辻泰子、夫馬佳代子、西村敬子:家庭科教育に おける被服領域の現状と動向−被服製作の実態と意識
−、岐阜女子大学紀要、第 30 号、153−159、2001 永田晴子:女子大学生の家庭科のイメージの変化−教職課
程履修者の場合−、お茶の水女子大学人文科学紀要、
第 56 巻、263−284、2003
吉野鈴子、木村恵子、中尾時枝:短期大学の被服製作実習 における学習指導要領改訂の影響−学生の技術と意識 の変化−、日本家庭科教育学会誌、49(4)、302−308、
2007
注1 内閣府経済社会総合研究所景気統計部「消費動向調 査」平成16 年 3月調査
* Faculty of Education, Kumamoto University
** Tokyo Gakugei University (4‑1‑1 Nukui-kita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184‑8501, Japan)
The purpose of this research is to analyze the images conceived through the studies in the fi eld of clothing by students who are aiming to obtain elementary school teacher’s license, and to clarify the interests and the concerns in the fi eld of clothing.
Research was conducted on 94 men and 332 women. As a result, it was found that a lot of students regardless of sex were more interested in the actual garment production, and were often tired of hearing explanations on the properties of the fi ber and the cloth. About 40 percent thought women were interested in the studies on clothing, and there were more women than men who thought, “Studies on clothing are especially necessary for women”. Many of the students stressed that they would value actual practice in clothes production more when it is their turn to teach on clothing in the future. They believed studies on clothing in the future should be composed of more useful and practical contents.
Key words: consciousness, actual practice in clothes production, fi eld of clothing, education contents
Attitudes of students who hope to obtain elementary school teacher’s license toward the studies in the fi eld of Clothing
── Analysis of images conceived through experience of studies ──
Tamami SODA*, Taeko NARUMI**
Department of Home Economics
Abstract