物理学演習 第7回 等加速度運動・円運動(1) 解答例
ウォーミングアップ
分母が1次式の積分はlogが現れる(重要な公式).分母が2次以上で,それらが1次式の積に因数分解できるときは,部分分 数分解を行って,分母が1次式の積分に変形する.以下では積分定数を省略する.
(1)
∫ dx
x−1 = log|x−1| (公式通り)
(2)
∫ dx x2−1 =
∫ dx
(x−1)(x+ 1) = 1 2
∫ ( 1
x−1 − 1 x+ 1
) dx= 1
2 (log|x−1| −log|x+ 1|) = 1
2 logx−1 x+ 1 (3)
∫ dx
(x−1)(x−2)(x+ 3) =
∫ (−1 4
1 x−1 + 1
5 1
x−2 + 1 20
1 x+ 3
) dx
= 1
20 (−5 log|x−1|+ 4 log|x−2|+ log|x+ 3|) = 1 20 log
(x−2)4(x+ 3) (x−1)5
《問A》(1) F=−mgj (2) 運動方程式は
mdv
dt =−mgj. vを成分 vx,vy を用いて表すと(v=vxi+vyj)
m (dvx
dt i+ dvy
dt j )
=−mgj
これより,方程式のx,y 成分は
mdvx
dt = 0 mdvy
dt =−mg あるいは,成分を横に並べて
m (dvx
dt , dvy
dt )
=m(0,−g).
(テキストの解答例は,この両辺をmで割ったものです)
(3) 運動方程式の両辺をt で積分して
(vx, vy) = (Cx,−gt+Cy)
初期速度(vx(0), vy(0)) = (v0cosθ, v0sinθ)より,積分定数(Cx, Cy)を求めると,
(vx, vy) = (v0cosθ,−gt+v0sinθ) (4) (3)の結果をtで積分して
(x, y) = ((v0cosθ)t+Dx,−1
2gt2+ (v0sinθ)t+Dy) 初期位置(x(0), y(0)) = (0,0)より,積分定数(Dx, Dy)を求めると,
(x, y) = ((v0cosθ)t,−1
2gt2+ (v0sinθ)t) (5) t= x
v0cosθ をyの式に代入するとy=−1 2
g
v02cos2θx2+ (tanθ)x.これよりy はxの二次関数となることから分かる.
(6) y= 0となるx(ただしx̸= 0)はx= 2v20
g sinθcosθ= v20 g sin 2θ.
(7) 最大になるのはsin 2θが最大,つまり2θ= π
2 のときで,θ= π 4.
《問B》t秒後の速度をv(t)とすれば,運動方程式は mdv
dt =qV
d i−mgj この両辺をtで積分するとv(t) =
(qV mdi−gj
)
t+C(Cは積分定数). 初期速度が0であることからC=0. よって
v(t) = (qV
mdi−gj )
t.
《問C》(質量mの物体が,角速度ω,半径rの等速円運動を保つならば,運動方程式より,糸の張力が大きさmrω2の向心力(円 の中心に向かう力) として働いていることになる.これが100 Nに等しいとしてωを求めればよい.)
(等速円運動をする物体が従う)運動方程式
0.5×0.5×ω2= 100 よりω=
√ 100
0.5·0.5 = 20[rad/s].2π[rad] = 1[回転]なので回転数はn= ω 2π = 10
π = 3.2Hz(= 3.2「回転」/s]).
《問D》指輪に対する運動方程式を考える:鉛直方向と,水平面内の等速円運動に分けて立
mg
N Ncosθ
Nsinθ てる.
指輪に働く力は,鉛直下向きの重力mg と 円環から受ける抗力N の合力である.
鉛直方向では指輪は静止している(加速度ゼロ)ので,運動方程式は
0 =Ncosθ−mg.
水平方向では,半径 rsinθ,角速度 2πn の等速円運動をしていて,その向心加速度
= (rsinθ)(2πn)2,この方向に作用する力=垂直抗力の水平成分=Nsinθなので,運動方 程式は
m(rsinθ)(2πn)2=Nsinθ.
これらよりcosθ= g
r(2πn)2 を満たす θ.
《問E》(1) おもりに作用する力は,糸による張力 T と鉛直下向きの重力mg との合力であり,これによって,半径lsinθ,角速
度ω= 2πnの等速円運動をしている.
前問と同じように,おもりに対する運動方程式を立てる.鉛直方向は加速度ゼロ(=つり合っている)
0 =Tcosθ−mg.
水平面内の等速円運動についての運動方程式は
m(lsinθ)(2πn)2=Tsinθ.
これらより,
n= 1 2π
√ g lcosθ.
(2) 机から受ける垂直抗力を N とすると,おもりには鉛直上向きにN の力が作用する.よって(1)の,鉛直方向の運動方程 式は
0 =Tcosθ−mg+N.
これと水平方向の運動方程式
m(lsinθ)(2πn)2=Tsinθ より,
N=mg−mlcosθ(2πn)2.
《問F》「遠心力とひもの張力がつりあう」が運動の法則に厳密に照らし合わせたとき,間違った記述である.
正しい言い方は,「物体に作用する力は,円の中心方向に作用する張力T だけで,角速度ωで等速円運動をしている物体の向心 加速度はrω2 だから,運動方程式の法線方向成分を書くと
T =mrω2 となる.これよりT が求められる.」
この等式の右辺は,「質量×加速度」であって、力ではない.この力でないものに「遠心力」という「見かけの力」の名前を与 えることで,運動方程式を、つり合いの式であるかの様に記述しているのが,「慣性力」を用いた解法であるが,厳密には間違い の始まりでもある.
慣性力を用いて問題を考える際には、「力」や「つりあう」などの言葉の意味が、本来のそれとは異なる使い方であることに注 意せよ.
《問G》頂上におけるトロッコの速さをvとする.
頂上において,乗客に対する運動方程式を立てる.質量mの乗客に作用する力は,鉛直下向きの重力mgと,トロッコから受け る鉛直上向きの垂直抗力N である.また,トロッコは半径rの円運動を行っていると近似して,向心加速度は鉛直下向きに v2
r である.よって運動方程式を立てれば,
mv2
r =mg−N.
乗客が浮き上がらないということは,垂直抗力N >0ということなので,N =mg−mv2
r >0. すなわち v <√rg.
(別解:乗客が静止しているとみなした系で考える・慣性力を用いる)乗客に加えられる力は,鉛直下向きの重力のmgと,ト ロッコの運動による慣性力、および垂直抗力Nの和である.丘の頂上付近では,半径rの円運動をしていると近似して,乗客が うける慣性力(遠心力)は鉛直上向きmv2
r であるから,mv2
r +N−mg= 0、および N >0 よりv <√ rg.