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Separating multiple processes in implicit social cognition: The quad model of implicit task performance. Conrey, F. R., Sherman, J. W., Gawronski, B.,

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Separating multiple processes in implicit social cognition:

The quad model of implicit task performance.

Conrey, F. R., Sherman, J. W., Gawronski, B., Hugenberg, K., & Groom, C. J. (2005).

Journal of Personality and Social Psychology, 89, 469-487.

問題と目的

Schneiderと Shiffrin が自動処理 (automatic process) と統制処理 (controlled process) を区別してか ら,この区分は社会心理学において重要な役割を示すようになった.この 2 つの処理を区別する ために最も一般的な方法は,自動処理と統制処理をそれぞれ別の測度で測定することである.例え ば偏見に関する研究では自動処理を IAT (implicit association test; Greenwald, McGhee, & Schwartz, 1998)で,統制処理を MRS (modern racism scale; McConahay, 1986) で測定しようとすることが多い.

しかし,このようなアプローチには限界がある.1 つは,これらの測度が “process pure” ではな い点である.すなわち,IAT のように自動処理を測定する測度であっても,そこには統制処理の影 響が混入してくる可能性を否定することができない (Brendl et al., 2001; Mierke & Klauer, 2003).

Multiple Automatic and Controlled Processes

もう 1 つの限界は,一口に “自動処理”,“統制処理” といっても,研究によってその定義が異な ることである.自動処理,統制処理ともに 2 つの異なる定式化があるように思われる.

Conceptualizations of Control

統制処理では discriminability (D) と overcoming bias (OB) との区別ができる.D とは,正確な情 報や解答を抽出するための処理である (accuracy assessment).例えば説得の研究では,統制処理は メッセージにおける説得力のある点やない点を的確に抽出・考慮するプロセスであるが (e.g., Petty & Wegener, 1999),これは D だと考えられる.他者の印象形成も D を統制処理として想定してい る (e.g., Brewer, 1988; Fiske & Neuberg, 1990).知識に基づいた処理だということもできる.

一方,OB は近年出てきた考え方である.ここでは,統制処理が自動処理を抑制・乗り越えるも のとして捉えられている (self-regulation).例えば Wegner (1994) の思考抑制のモデルでは,統制処 理において自動処理の作用を抑制することが想定されている.ステレオタイプ研究などでも統制処 理を OB と捉えている. この両者は,ともに認知的リソースを消費する点では同じである.しかし場合によっては並行し て違う役割を果たす.例えば,警察官が銃を持っている人だけに対して銃撃をするという状況を考

(2)

えよう.このとき,まず相手が銃を持っているかどうかをしっかりと識別し (D),さらに銃を持っ ていないと判断したときには,“黒人は銃を持っているから撃つべし” という自動的な連合を抑制 して銃を撃つのをやめないといけない (OB; cf. Correll et al., 2002; Payne, 2001).

Conceptualizations of Automaticity

自動処理では association activation (AC) と guessing (G) との区別ができる.AC は,自動的な活 性化によって統制処理に干渉する処理である (interference).例えば,Schneider & Shiffrin (1977) が 定式化した自動処理も,自動的に注意を惹きつけて統制的な注意を阻害するものとして考えられて いる.IAT で想定されている自動処理も,基本的にこの成分である. 一方,G は記憶研究で考えられているような自動処理である1.具体的には,統制処理がうまく いかなかった場合に反応を促進するバイアスのことを指す (response bias).AC は統制処理に干渉 するのに対し,G は統制処理がうまくいかなかった場合にのみ影響力を持つという点で,異なる自 動処理だと考えることができる2 この両者の区別をまた上の警察官の例で考えてみよう.黒人を見たとき思わず銃を撃ってしまう のは,黒人と攻撃性という連合が,他の認知的処理に干渉した結果だと言えるだろう (AC).一方, 黒人がステレオタイプを活性化させなかったとしても,その黒人が銃を持っていないという確たる 証拠がなければ,警察官がもともと持っているような攻撃性によって,銃を撃ってしまうことがあ るかもしれない (G).

Multiple Processes in Implicit Measures

こうした 4 つの処理は,例えば IAT で同時に働いていると考えられる3.黒人を見たときにはネ ガティブな評価が自動的に生じやすい (AC).もし課題が適合ブロック(compatible block; 黒人と ネガティブ語に同じキーを割り当てるブロック)であるならば正しいキー押しを導く.しかし,不 適合ブロック(incompatible block; 黒人とポジティブ語に同じキーを割り当てるブロック)である ならば,黒人であるということをしっかり識別した上 (D) で,自動的な連合による活性化を押さえ て反応しなければならない (OB).一方,ネガティブな評価が自動的に活性化しなければ,しっか りと対象を識別さえできれば正しい反応ができる.しかし識別ができなければ,被験者がもともと 持っている反応バイアス(この場合,“右キーを好むか,左キーを好むか” といったバイアス)に よって,どのキーが押されるかが決定されるだろう (G).今のは IAT を例として述べたが,こうし た 4 つの処理を分けて考えることは,他の課題も可能である. 以上の議論を踏まえ,本稿では,ある課題の成績を用いてここに述べた 4 つの処理の成分を分離 するためのモデルを提唱する.これを quadruple process model (quad model) と呼ぶ.

1記憶研究ではいわゆる親近性 (familiarity) と呼ばれるものである (e.g., Jacoby, 1991; Yonelinas, 2002 など).

2この 2 つの自動処理は,背後にあるメカニズムは同じかもしれない.なお,G は統制処理がうまくいかなかったとき

に作用する処理であるが,統制処理のあとに自動処理が生じるという順序関係を想定していない.正確には,“自動処理と 統制処理が同時に生じたときには統制処理が優先される” ということであり,記憶の研究でも親近性 (G) の作用は統制的な 処理よりも早いことが想定されている (e.g., Yonelinas & Jacoby, 1994).記憶の研究では,“この単語を見たかどうか” とい うことをある程度余裕のある状態で問われる.このとき,“しっかりと覚えている” という感覚(想起, 統制処理)と “何か 知っている”(親近性,自動処理)という感覚が同時に生じたとき,前者に頼るのは自然なことである. 3IATの詳しい手続きは本稿でも出てくるので省略する.これから先は Figure 3 を先取りして読むと分りやすい.なお, 一般的に IAT は反応潜時を従属変数として扱う.しかし本稿で提出するモデルでは,後で分るように,エラー率を従属変 数として扱う.従って,ここの例も反応潜時ではなく,エラーするかどうかということを想定していると思って読むと読み やすくなる.

(3)

Measuring Multiple Processes: Process Dissociation

quad modelは Jacoby (1991) による過程分離手続き (process dissociation procedure) による影響を 大きく受けている.そこで,quad model を述べる前に,この過程分離手続きの枠組みを説明する ことにしよう.

The “C-First” Model of Process Dissociation

Jacobyのオリジナルのモデルは,“C-First” モデルと呼ぶことができる.この記憶課題では,ま

ず最初に 2 つのリスト(リスト A,リスト B)を被験者に学習させ,2 種類のテストを実施する. そして,適合テスト (compatible trials) では,通常の再認テストをする.すなわち,どちらのリス トであれ,先ほど学習した単語に対して “old” と答える.不適合テスト (incompatible trials) では, リスト B で学習した単語にのみ “old” と答える(リスト A で学習した単語だと分かったときには

“new”と答える).

このとき,統制処理 (C; 本稿の枠組みでは D と類似) と自動処理 (A; 本稿の枠組みでは G4)がそ

れぞれのテストにどのように関与するかをツリーの形で Figure 1 に示す.+, − はリスト A の単語

に対する正答,誤答を示す.あとはこの誤答率(正答率)を用いて方程式を解けばよい5

このモデルは多くの成功をおさめている (e.g., Toth et al., 1994).しかし,このモデルでは “正答 が分かっていても自動的な処理 (AC) がその正答を阻害する” ような課題をうまくモデル化できな い.その代表例がストループ課題である.

The “A-First” Model of Process Dissociation

Lindsay & Jacoby (1994)はストループ課題で過程分離手続きを適用するため,少しモデルを改訂

した (Figure 2).このモデルでは,まず自動処理 (A) が生じ,注意を惹きつける.この処理が生じ たとき,適合試行(インクの色と文字が同じ試行)では正答になるが,不適合試行(インクの色と 文字が違う試行)では誤答になる.自動処理が生じなかったときに,統制処理 (C) が生じると不適 合試行で正答することができるが,そうでないときにはどちらの試行も誤答になると考える. このモデルにも限界がある.特に,A のなかにそれを克服できた場合 (OB) と,克服できなかっ た場合が混ざってしまっている.従って,色と文字との間にまったく連合がないような子ども(AC は 0)と,自動的に注意は惹きつけられてしまっている (AC は高い) けれどもそれをしっかりと抑 制して正答率が高い大人を区別できなくなっている.また,自動処理も統制処理もうまくいかな かった人は誤答することになっているが,これも不自然な仮定である.

4過程分離手続きにおいて,実は G は異なった形で定式化されている (Buchner et al., 1995; JEP-G).具体的には,C も

Aもうまくいかなかったときに生じる反応バイアスが,Buchner たちが定義する G である.つまり Figure 1 の “1 − A” の

あとにさらに G と 1 − G のツリーがあると考えるとよい.さらに Yonelinas は過程分離手続きの枠組みに反応バイアスを 組み込むモデルを提出している (Yonelinas et al., 1995; M & C).従って,本稿では記憶研究における親近性を G (guessing) と考えているが,記憶研究では guessing は,親近性とは違う形で定式化されているので注意.

5リスト A の単語に対して,

p(old|compatible trials) = C + A(1 − C) (1) p(old|incompatible trials) = A(1 − C) (2)

と定式化できる.左辺をデータから代入(推定)すると,方程式 2 つで未知数 2 つなので,A と C が求められる.以上から 分かるように,この推定は自由度 0 の飽和モデルであり,過程分離手続きの 1 つの問題とされている (Batchelder & Riefer,

(4)

The Quad Model

以上の議論を踏まえ,本稿では quad model を提出する.これは multinominal model (Batchelder & Riefer, 1999; Klauer & Wegener, 1998)に基づいたモデル化であり6,ある課題に対する反応を AC,

D, OB, Gの 4 つの処理でモデル化している. IATに対するモデル化の例を Figure 3 に記す.まず AC による自動的な活性化があり,そのあと 対象をしっかりと同定 (D) できないと活性化に基づいた判断が下される.しっかりと対象を同定が でき,OB が作用すると適切なルールに基づいた判断がなされる.OB が作用しないと AC に基づ いた判断がなされる.一方,AC による自動的な活性化が生じなかった場合,うまく対象を同定で きれば適切なルールに基づいた判断ができる.しかし対象を同定できなかった場合には,反応バイ アスによる反応 (G) が生じる.

Analyzing Data With the Quad Model

通常の潜在的態度指標と違い,quad model では反応潜時ではなく誤答率 (error rate) を分析に用

いる.IAT を具体例とした上で,その定式化を下に述べる7

IATの quad model で立てられる方程式の数をまず考える.IAT ではポジティブ語 (P),ネガティ

ブ語 (N),白人 (W),黒人 (B) という 4 つの刺激に対する反応が,適合ブロック,不適合ブロック でそれぞれある.従って 2 × 4 = 8 の方程式がある.それぞれの刺激に対して正答する確率を方程 式で考えてみると(右キーが正答であり,G は右を押す傾向だとする), p(correct|P, compatible) = ACW−P+ (1 − ACW−P) × DP−N+ (1 − ACW−P) × (1 − DP−N) × G (3) p(correct|W, compatible) = ACW−P+ (1 − ACW−P) × DW−B+ (1 − ACW−P) × (1 − DW−B) × G (4) p(correct|N, compatible) = ACB−N+ (1 − ACB−N) × DP−N+ (1 − ACB−N) × (1 − DP−N) × G (5) p(correct|B, compatible) = ACB−N+ (1 − ACB−N) × DW−B+ (1 − ACB−N) × (1 − DW−B) × G (6)

p(correct|P, incompatible) = ACW−P× DP−N× OBattribute

+ (1 − ACW−N) × DP−N+ (1 − ACW−P) × (1 − DP−N) × G (7)

p(correct|W, incompatible) = ACW−P× DW−B× OBcategory

+ (1 − ACW−N) × DW−B+ (1 − ACW−P) × (1 − DW−B) × G (8)

p(correct|N, incompatible) = ACB−N× DP−N× OBattribute

+ (1 − ACB−N) × DP−N+ (1 − ACB−N) × (1 − DP−N) × G (9)

p(correct|B, incompatible) = ACB−N× DW−B× OBcategory

+ (1 − ACB−N) × DW−B+ (1 − ACB−N) × (1 − DW−B) × G (10)

6基本的に Jacoby らは,過程分離手続きを multinominal model でモデル化することに反対である (Yonelinas & Jacoby,

1996).multinominal model では,自動処理の過程が high-threshold であることが仮定されている(つまり “見たことがない ものがたまたま閾値を越えて yes 反応を生じさせる” ということがありえない)が,正規分布に従う信号検出モデルと考え たほうが妥当だと思われるからである.しかし本稿のモデルでは(IAT などに適用する限りにおいて)multinominal model でモデル化することは妥当なように見える.

7この定式化は論文の appendix でも十分に記されていなかったので,村山の方で補充しながら書いてある.Appendix で

(5)

ACW−P,ACB−N はそれぞれ,白人とポジティブ語の連合,黒人とネガティブ語の連合であり,

DP−N,DW−Bはそれぞれ,ポジティブ語かネガティブ語かの識別,白人か黒人かの識別である.こ

こで OBcategoryと OBattributeに関しては補足説明が必要だろう.OBcategoryとはあるカテゴリーが刺

激として登場したときの OB であり,OBattributeはある属性語が刺激とした登場したときの OB であ る.あるカテゴリーとして黒人の写真が出てきたときを考えてみる.このとき ACB−Nによってネ ガティブな評価が活性化される.また,DB−Wによって,この写真は黒人だと同定される.つまり ACと D が異なった対象を活性化させるのである.一方で “嫌悪” というネガティブ語が出てきた ときには,ACB−Wによって活性化されるのも DP−Nによって同定されるのも,“これは不快である” というネガティブな評価判断である.このように,カテゴリーが刺激の場合と,属性語が刺激の場 合で,AC と D の過程が引き起こすものが同じ場合もあれば違った場合もある.そのため,これら の過程を克服・抑圧するための努力量が異なると考えられる.具体的にはカテゴリー語の方が,異 なったものを活性化させてしまうため,努力量はよりかかるだろう(つまり OBcategory> OBattribute. そのため,この 2 つは別のパラメータとする. 一方,上に書いたように,DB−Wと DP−Nは一見異なるパラメータなっているが,“ポジティブ語 かネガティブ語か” を識別することと “黒人か白人か” を識別することに必要となる能力には違い がないと考えられる.そこでこのモデルでは同一の D パラメータとして扱うことにする.ただし これらの制約はこの論文における制約であり,実際にどのような制約をかけるかはモデル構築者の 自由である.例えばポジティブな評価のときと,ネガティブな評価のときで,OB が違うと考える ことも自然であろう.この論文では事後的にある程度フィットのよかった制約を,あたかも事前に 入れていたかのように記述している可能性が高い. DB−Wと DP−Nが同じだという制約をかけることによって,式 3 と式 4,式 5 と式 6 が同じ式になっ てしまう.つまり方程式の数は 6 になる.一方,推定すべきパラメータの数は,ACW−P,ACB−N

D,OBattribute,OBcategory,そして G の 6 つである.このままだとこのモデルは飽和モデルである

が,さらにこのモデルでは練習試行(白人なら右,黒人なら左,という練習と,ポジティブ語なら 右,ネガティブ語なら左という練習)の結果を用いて 2 つの方程式を立てる8.その結果,8 つの 方程式で 6 つのパラメータを推定することになる(自由度は 2). パラメータの推定は最尤法を用いる.適合度は χ2検定で評価する.これらの推定に関しては, Shermanの HP (http://psychology.ucdavis.edu/labs/sherman/site/) にエクセルのワークシートがある. なお,パラメータが群間で違うのかという検定や,0 より大きいのかという検定は,尤度比検定で 検討する.これは “パラメータ A が 0 である” と制約を入れた場合と,“パラメータ A が 0 ではな い” という制約を入れた場合で得られる χ2値の差を用いた検定である.

Testing the Quad Model

本稿の目的は,IAT(研究 1 −研究 4)と sequential priming paradigm(研究 5)を用いて,この モデルの統計的妥当性 (stochastic validity) と構成概念妥当性を検討することである.

Study1

まず,手始めに,“flower-insects” を用いた IAT でパラメータの推定をしてみる. 8この式は本文中に記されていないが,おそらく (1 − AC) × D + (1 − AC) × (1 − D) × G となるように思われる(多分). しかし,なぜ練習試行(黒人とネガティブ語という連合が何も役割を果たしていない試行)で 1 − AC という条件づけをす るのかが,いまいち納得いかない.

(6)

Method

被験者 29人の大学生.

刺激と手続き 刺激は,花写真,昆虫写真が 5 枚ずつ,ポジティブ語,ネガティブ語が 5 つずつで

あった.そして,練習が各 20 試行,適合ブロック,不適合ブロックが各 40 試行であった.

Results & Discussion

パラメータの推定値は表 1 に記す.モデルの適合度は χ2= 1.74, p = 0.42 と良好であった9.

表 1: Parameter Estimates for Flowers-Insects IAT, Study1

Parameter Type Estimate

AC insect-unplesant 0.13 flower-pleasant 0.38 OB attribute judgment 0.77 category judgment 0.87 D 0.88 G 0.50 AC,D,OBcategoryがすべて有意に 0 より大きかった.G はチャンスレベルが 0.5 であったが,チャ ンスレベルとは有意な差がなかった.また,OBattributeは(値は大きく見えるが),有意に 0 よりは 大きくなかった (χ2(1) = 2.39, p = 0.12).AC と D や OB が有意であったということは,IAT には 複数の異なる処理が混ざっていることを示す結果である.

Study 2

研究 2 では,これらのパラメータの統計的妥当性,構成概念妥当性を確かめる.統計的妥当性 を明らかにするため,これらのパラメータが独立に変動する(他のパラメータが変動することなし に,あるパラメータだけが変動する)ことを示す必要がある10.また,構成概念妥当性を明らかに するためには,その変動がその概念から考えて意味のある変動である必要がある. そこで研究 2 では,反応時間の枠を短くした条件を設ける.反応時間の枠を小さくすることに よって,統制処理の成分 (OB, D) が小さくなるだろう.一方,自動処理の成分 (AC, G) は変わらな いままだろう.

Method

被験者 47人の大学生.17 人が時間制限なし条件,30 人が時間制限あり条件. 9誤答率は本文には記していない.Sherman の HP に記載がある.適合ブロックで 4%前後,不適合ブロックで 10%くら い. 10これは一般的に機能的な独立 (functional independence) と言われているように思うが….

(7)

刺激と手続き 今度は黒人と白人の写真を刺激として用いる(通常の IAT).黒人の写真,白人の 写真,ポジティブ語,ネガティブ語ともに 10 ずつであった.

手続きはほぼ研究 1

と同じである.ただし時間枠のある条件では刺激がオンセットした後,225ms-670msの間で反応することが求められる.うまく反応できた場合には刺激が赤になるが,時間制限

を越えると,刺激は消失する.

Results & Discussion

誤答率は時間枠がない条件で 6%,ある条件で 14%であった.2 つの条件間で AC の値は同一で あるという制約をおき,G は両方の条件を比較可能にするため,練習試行においてのみ等値制約

をおいた.この制約のもとでモデルの適合を求めたところ,適合度は χ5= 3.19, p = 0.67 と良好で

あった.推定結果を表 2 に示す.

表 2: Parameter Estimates for Black-White IATs, Study2 Parameter Comparison Estimate

AC Black-unplesant 0.11 White-pleasant 0.18 G practice 0.52 IAT RW-IAT OB attributes 0.82 0.00 names 0.85 0.22 D 0.89 0.78 G test blocks 0.56 0.64 予測どおり,D も OB も時間枠がない条件よりある条件で値が有意に低かった.また,AC の等 値制約を外してもモデルは有意に改善しなかった(つまり AC は両条件で等しいと考えるのが妥当 であった).なお,G はテスト試行において両方ともチャンスレベルより高かった(右を好む嗜好 が見られた).以上より,それぞれのパラメータの統計的妥当性と構成概念妥当性が示されたと言 えるだろう.

Study 3

研究 3 では,G の過程に焦点を当てる.具体的には,ポジティブ語とネガティブ語の比率を操作 し,右キーでより多く反応させる条件と,左キーでより多く反応させる条件を設ける.これによっ て,G パラメータは変動するだろう.

Method

被験者 37人の大学生.17 人はポジティブ語がネガティブ語より 3 倍多く呈示される条件に,20 人はネガティブ語がポジティブ語より 3 倍多く呈示される条件に割り当てられた.

(8)

刺激と手続き 刺激は花と昆虫を用いた.手続きは研究 2 とほぼ同じである.刺激の呈示比率のみ を変えた.

Results & Discussion

全体の誤答率は 5%であった.AC, D, OB には群間で等値制約を置いた.この制約のもとでモデ

ルの適合を求めたところ,適合度は χ9= 12.21, p = 0.20 と良好であった.推定結果を表 3 に示す.

表 3: Parameter Estimates for Flowers-Insects IAT, Study3

Parameter Comparison Estimate

AC insect-unplesant 0.11

flower-pleasant 0.11

OB attributes 0.00

names 0.53

D 0.95

more right-handitems more left-hand items

G 0.81 0.42 Gは予測どおりの傾向がみられた.ただし左キー項目を多くした場合の G の値は,チャンスレ ベルとは有意な差がなかった (χ2(1) = 0.84, p = 0.36).なお,AC はともに有意であり,OB category と OBattributeの間に有意な差が見られた.これらの結果は,パラメータの統計的妥当性と構成概念 妥当性を示すものである.

Study 4

研究 4 では,通常の IAT 測度(反応潜時を用いた測度)と,この 4 つの指標との関係を検討す る.すなわち,4 つの指標で IAT の測度を予測する.AC は IAT 測度と正の関係が,OB は IAT 測

度と負の関係が予想される11.D と G に関しては,私たちは特定の予測をしない.

Method

24名の大学生に黒人と白人の写真を用いた IAT を実施した.手続きは研究 2(時間制約のない

条件)と同じである.

Results & Discussion

全体的な誤答率は 6%であり,モデルの適合もよかった (χ2(2) = 3.26, p = 0.20).推定結果を表

4に示す.研究 2 とほぼ同じパターンの結果が得られた.

11OBは時間がかかる過程だとも考えられるため,この予測はなかなか難しい.時間と正確さのトレードオフを考えると,

反応潜時に基づいている IAT 測度と,正確さに基づいている OB の間に,特定の関係を予測することは難しいし,結果が 得られたとしてもその解釈はかなり難しいように感じる.

(9)

表 4: Parameter Estimates for the Black-White IAT, Study4 Parameter Comparison Estimate

AC Black-unplesant 0.04 White-pleasant 0.09 OB attributes 0.00 names 0.52 D 0.93 G 0.54

IAT測度の算出は,オリジナルの方法を用いた (Greenwald et al., 1998).3000ms を超えた試行 (0.7%)は 3000ms,300ms 以内だった試行 (0.1%) は 300ms とコーディングされた.誤答だった試 行は除外された.さらに加えて,新しい算出方法でも測度を算出した (Greenwald et al., 2003).こ の値が高いと,黒人よりも白人をポジティブと考えていることになる. 重回帰分析をするために,個々の人に関して quad model を適用して,それぞれの成分を推定し た.平均と標準偏差を表 5 に示す.その上で,IAT 測度を従属変数,6 つのパラメータを独立変数 とした重回帰分析を実施した.結果を表 6 に示す.

表 5: Parameter Estimates for the Black-White IAT, Study4 Parameter Comparison Estimate

M S D AC Black-unplesant 0.21 0.30 White-pleasant 0.38 0.39 OB attributes 0.59 0.38 names 0.75 0.35 D 0.92 0.05 G 0.51 0.33

表 6: Multiple Regression IAT Score, Study4

IAT old algorithm IAT new algorithm

Term Comparison β p β p AC Black-unpleasant .37 .023 .42 .008 White-pleasant .40 .031 .48 .008 OB attributes −.16 .357 −.44 .014 names −.38 .022 −.34 .031 D .27 .073 .24 .097 G .07 .629 .13 .344 ほぼ予測どおりの結果が得られた.D が IAT を少し予測していた(有意傾向)点は興味深い.こ の結果は,各パラメータの構成概念妥当性をさらに確かめるものである.

(10)

Study 5

研究 5 では,他の課題に quad model を適用する.具体的には,Payne (2001) の sequential priming パラダイムである.このパラダイムでは,白人もしくは黒人の写真がプライムされ,その直後に出 てきた刺激が銃なのか,それとも道具であるのかを素早く判断する.

この適用に関し,2 つの目的が付随する.1 つはより単純な C-first model や A-first model と,quad

modelの比較を行うことである.もう 1 つは,このモデルを用いて,この領域の議論に示唆を与 えることである.それは,社会的責任 (social accountability) の効果である.被験者に “後にあなた のこの実験の結果に基づいた議論をする” と教示すると,社会的責任が生じ,偏見がなくなると考 えられる.しかし実験結果はむしろ逆で,偏見が強まることが明らかになっている (Lambert et al., 1996). この結果に関して,Lambert et al.(2003) は 2 つの解釈が可能であることを指摘している.1 つは, 社会的責任の伴う状況(公的な状況)では,被験者の覚醒が高まり,もともと優勢だった反応(偏 見)が強まるという解釈である.もう 1 つは,公的状況だと自己制御のためのリソースがなくなっ てしまい,その結果偏見が表出してしまうという解釈である.Lambert et al. (2003) は C-first model を用いて,この両方の仮説のうちどちらが正しいかを検討した.その結果,A パラメータには公的 状況と私的状況の間に違いがなかったが,C パラメータには公的状況で有意な低下が見られた.こ の結果から Lambert らはリソース仮説の方が妥当だと結論づけた.

しかし冒頭で述べたように,C-first model にはいくつかの限界点がある.そこで本研究では,

Lambertらのデータを quad model で再分析し,改めてどちらの仮説が正しいかを検討することに

する.

Method

被験者 127人の大学生.公的条件と私的条件に割り当てた. 刺激と手続き 刺激はすべて写真を用いた.500ms のマスクの後,200ms のプライムが呈示され, その直後に 100ms のターゲット(銃 or 道具)が呈示された.最後に 450ms のマスクがかかった. 被験者はマスクが消失するまでに,ターゲットが銃か道具かを判断するように求められた.練習試 行は 48 試行,本試行は 384 試行であった. 本試行の前に,公的−私的の操作を行った.具体的には,公的条件では,“実験の終了後に他の 被験者とあなたの結果について議論する” という教示を与え,私的条件では,“この結果は秘密に する” という教示を与えた.

Results & Discussion

ここで推定するパラメータは ACWhitemale−tool,ACWhite f emale−tool, ACBlackmale−gun, ACBlack f emale−gun, OB,

D, Gの 7 つである.自由度は 3 であった.結果を表 7 に記す.全体的な誤答率は 21%であり,適

合度もまあまあよかった (χ2(3) = 5.17, p = 0.16).一方,C-first model,A-first model の適合度とも

に quad model よりもやや悪かった (χ2(6) = 6.71, p = 0.35; χ2(6) = 13.25, p = 0.0212).

12自由度の大きさなどを考えると,A-first model はともかく,C-first model の適合度はむしろ quad model よりよいよう

(11)

表 7: Parameter Estimates for Sequential Priming Task Used by Lambert et al. (2003), Study5

Parameter Prime Estimate

public context private context

AC White male-tool 0.11 0.01 White female-tool 0.05 0.00 Black male-gun 0.09 0.03 Black female-gun 0.00 0.01 OB 1.00 0.00 D 0.55 0.63 G 0.46 推定値を見ると,Lambert らの分析と同じく,統制処理 D の値が公的条件では有意に低下して いる (χ2(1) = 51.47, p < 0.001).さらに表を見ると,公的条件において男性が銃を持っているとい う連合が強くなっているのが分かるだろう.この違いは有意であった (χ2(2) = 8.24, p = 0.01).こ の結果は,偏見は男性の成員によって形成されやすいという先行研究の知見から解釈可能である (Eagly & Kite, 1987).逆に OB の値は私的条件より公的条件で高くなっている.この違いは有意で はなかったが,検出力が不足したためであろう(絶対値自体は非常に差が大きい).この結果は, 公的条件で人はよりバイアスを抑圧しようとするという先行研究に合致している.なお,G はチャ ンスレベルより有意に高かった(銃があると思いやすかった). 以上の結果をまとめると,Lambert らの自己制御による解釈だけでなく,覚醒による自動処理の 増大もみてとることができる.さらに,同じ統制処理でも OB は公的条件で増大しており,2 つの 統制処理が逆の方向に作用していると考えることができよう.

General Discussion

以上の結果から,quad model の妥当性が,統計的妥当性(それぞれのパラメータが独立に変動 する)と構成概念妥当性の観点から確かめられた.先行研究では自動処理も統制処理もそれぞれ単 一のものとして概念化されていたが,そこにはさらに異なる区分があり,それを区別することの有 用性も示された. ステレオタイプに関する潜在指標には,その解釈に論争がある.“低得点が偏見のない態度を示し ている” という一派 (e.g., Blair et al., 2001; Dasgupta & Greenwald, 2001) もあれば,“低得点は自己 制御のうまさを示している” とする一派 (e.g., Devine & Monteith, 1999; Moskowitz et al., 1999) もあ る.本研究で示した quad model は,IAT のような潜在指標を,“自動的な連合強度だけを測定して いる” と考えることの危険性を示している.これらの指標には連合強度と自己制御が混ざっており, 両者を分離しようとすることこそが大切だと思われる.近年では潜在指標と顕在指標との相関が, どのような指標を用いるかによってばらばらであるという問題が浮上している (e.g., Cunningham et al., 2001).これは潜在指標ごとによって,どの処理に重点を置いているかが違うからであろう. やはり本モデルのようなアプローチで,こうした知見の非一貫性も捉えなおしていく必要があるだ ろう.

表 1: Parameter Estimates for Flowers-Insects IAT, Study1
表 2: Parameter Estimates for Black-White IATs, Study2 Parameter Comparison Estimate
表 3: Parameter Estimates for Flowers-Insects IAT, Study3
表 4: Parameter Estimates for the Black-White IAT, Study4 Parameter Comparison Estimate
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参照

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