地方都市システムにおける高齢化の時空間分析 川村真也・橋本雄一
Temporal and Spatial Analysis of Aging in Local Urban System Shin’ya KAWAMURA, Yuichi HASHIMOTO
Abstract: In the local urban system, this study has two scale views. One is a macro scale as the urban system.
Another is a micro scale as the intra-urban structure. This study tried to integrate the macro scale and micro scale of the aging study in Japanese local urban system. For the purpose in this study, we attempt to create the spatial model of the aging in this local urban system.
In the result of local urban system analysis, many young people migrated from small cities to the large cities. In this way, on the smaller cities, the aging phenomenon progresses previously than the large cities. In the result of the intra-urban structure analysis, we can see that the distribution of the elderly is expanding from the urban core to the suburb. There are shortages of facilities in Sapporo and Hakodate suburbs, but shortage process is different. This study researched the relationship between the elderly population and the facilities by the intra-urban scales.
Keywords: 高齢化(aging),都市システム(Urban System),都市内部構造(Intra-Urban Structure),北海道(Hokkaido)
1.はじめに
都市システムと高齢化を関連付けた研究としては,
大都市圏の事例が多く存在するが,地方の都市(群)
システムを対象とした研究事例は少ない.国家財政 が逼迫し,先進国の中でもトップクラスの人口の高 齢化が進む日本において,地方の社会構造を考察す るうえで,地方における都市(群)システムの解明は 重要である.
そこで本研究では,都市(群)システムというマ クロスケールの視点と,都市内部構造というミクロ スケールの視点を併用し,それらの視点で高齢化の 進展を分析することにより,都市を中心とする高齢
化の空間モデルを構築する.
2.北海道全域における高齢化の動向
川村:〒060-0810 札幌市北区北10条西7丁目 北海道大学大学院文学研究科 人間システム科学専攻 地域システム科学講座 大学院生 TEL011-706-4037 E-mail [email protected]
本研究では北海道を研究対象地域とする.そして,
主に 1980 年から 2000 年までの 20 年間を対象年次と する.まず地域概観として,図 1 の北海道における 人口の変化をみると,第 2 次大戦後に著しく増加を
図 1 北海道における人口変化:(1920−2000)
示すが,近年ではあまり大きな変化がない.そして,
日本の人口における占有率は,近年では低下してき ている.
この人口変化を図 2 で示すように自然増減率と社 会増減率にわけてみると,人口の自然増加率が年々 下がり,社会減少が継続している.これは幼年人口 が減り,生産年齢人口が東京等の大都市圏に流出し ており,それにより北海道では高齢化が進んでいる と考えられる.
次に人口増減率,高齢者増減率,高齢者比率に基づ き自治体を分類する(図 3).なお,高齢者増減率,
高齢者比率の差分は全市町村が増加したため,平均 が 0 になるよう標準化した値でプラスとマイナスを 示している.
上記の組み合わせによって,都市を類型化すると,
都市のほとんどは 1,2,6 の 3 つの類型に入る.次項 以降では,3 類型から 1 都市を事例として分析する (旭川市,札幌市,函館市).
分類 1 に属する旭川は人口も高齢者も増加し,高 齢者率は上がっている.分類 2 に属する札幌は人口 も高齢者も増加するが,高齢者率は上がっていない.
分類 3 に属する函館は人口も高齢者も減っている,
高齢者率は上がっている.これらの結果は生産年齢 人口が人口規模の大きい都市に集中した結果であり,
それが地方の都市システムにおける高齢化の特徴で
あると考えられる.
図 2 北海道における人口増減率の変化
3.事例都市における高齢化の空間分析
ここからは都市内部構造に着目し,高齢者の分布 と都市施設の関係をみる.そこで 1980 年と 2000 年 の国勢調査 1km メッシュデータを用いる.まず,GIS のポリゴントゥポイント機能を用いて点データに変 換する.
次に,各都市の最高地価点から 1km ごと 10km のバ ッファポリゴンとオーバーレイする事で,事例都市 における高齢者人口を示す.
そのように解析したものが図 4 である.それによ ると 1980 年には 3 都市ともに高齢者が中心部に集中 していることは共通している.そして 2000 年にはそ の分布が郊外へと進展している.特に札幌における 増加数が著しい.
次に人口変化をみると,札幌では都心から 5〜7km,
旭川,函館では都心から 3〜4km の距離にピークがあ る.1980 年と 2000 年を比較すると,いずれの都市 も幼年層の比率が下がり,高齢者の比率が上がって いる.さらに高齢者の配分比は,都心が高い状態から, 全域で高い状態に変化している.
図 3 北海道における人口 3 指標による自治体の類型化
4.事例都市における都市施設の空間分析
ここからは都市施設のデータを作成し,高齢者人 口のデータと併せて解析する.本研究では,1981 年 と 2001 年の事業所・企業統計の 1km メッシュデータ を用い,これを点データに変換する.
選択した事業所は,飲食料品小売業と医療施設で ある.それらのデータを,各都市の最高地価点から 1km ごと 10km のバッファポリゴンとオーバーレイす る.そして施設の存在するポイントから 1km のバッ ファを描く.この 1km のバッファは施設への徒歩圏 に値するものと考えている.
そのように作成した人口の点データと施設のバッ ファデータをオーバーレイする.それによって施設 のバッファ圏域に含まれる人口を求め,差分などを
算出できる(図 5).
図 4 3 都市(圏)における高齢者人口の分布
図 5 3 都市(圏)における都市内部の解析方法
上述したデータを解析した結果,飲食料品小売業 や医療施設の分布では,20 年間で都心から郊外への 分散がみられる.分布の比較をすると,医療施設に 比べて,飲食料品小売業のほうが分散の速度が速い という特徴がある(図 6,7).
図 8 は施設から 1km のバッファを描き,そのバッフ ァ圏域に含まれない人口を示している.両施設とも に,都心から離れるに従って,多くの高齢者が圏域 に含まれず,徒歩による施設への移動が困難になる と考えられる.
図 6 高齢者と飲食料品小売業(事業所)の分布
図 7 高齢者と医療施設(事業所)の分布
図 8 距離別にみた施設からの余剰人口
図 9 マクロスケールでみた 3 都市の人口変動
図 10 ミクロスケールでみた高齢者と都市施設の関 係性(札幌市・函館市)
最後に都市施設 1km 圏に含まれない人口の 80 年か ら 2000 年までの差分を解釈すると,特に札幌や函館 の郊外において,2000 年の高齢者人口が大きくなる という事が明らかになった.
5.まとめ
まず,都市(群)システムというマクロスケールで みると,多くの都市は 3 つのタイプに属する(図 9).
人口が北海道で最も多い札幌市(分類 2)は,人口 も高齢者も増加するが,高齢者率は上がっていない.
人口が北海道で 2 番目の旭川市(分類 1)は,人口も 高齢者も増加し,高齢者率は上がっている.札幌か ら離れていて,人口が北海道で 3 番目の函館市(分類 6)は人口も高齢者も減っており,高齢者率は上がっ ている.
上述の結果は生産年齢人口がより人口規模の大き い都市に集中した結果であると考えられ,それが地 方の都市システムにおける高齢化の特徴であると考 えられる.つまり,システム下部である都市ほど高 齢化が進むと考えられる.
次に都市の内部構造というミクロスケールでみる と, 高齢者の分布は, 都心から郊外へむけて進んで いる.
それに伴うアメニティの変化をみてみると,都市 によって差があり, 旭川市では,ほぼ人口増加が止 まっており,他の 2 市と比較すると,郊外において 人と都市施設がちょうどつりあう均衡状態が保たれ る.しかし,人口増加中の札幌市では,郊外におい て都市施設が不足し,函館市では,人口の停滞・減 少により,郊外において都市施設を維持できないた めに不足している(図 10).本研究では都市(群)シ ステムというマクロスケールの視点と,都市内部構 造というミクロスケールの視点をあわせて高齢化の 進展を分析することにより,図 3 で示した旭川市や 札幌市のようなシステム上部の都市と,函館市のよ うなシステム下部の都市の高齢者の分布と.都市施 設の関係性等が解明され,地方の都市を中心とする 高齢化の空間モデルを構築することが可能となった.