論文種別 研究論文
タイトル 小児病棟看護師の全員参加型新人教育での困難の分析
Title Analysis of Perceived Barriers of Pediatric Staff Nurses to All-participating- type New Graduate Nurse Education
著者
篠原 峻介 児⽟ ゆう⼦
佐藤 智彦 Author(s)
Shunsuke Shinohara Yuko Kodama Tomohiko Sato 誌名 星槎大学大学院紀要
Citation Seisa University Research Studies in Education 巻 Vol.2
号 No.1 ページ pp.58-77 発行日 Dec-14-2020-
URL http://id.nii.ac.jp/1486/00000194/
研 究論 文
小児病棟看護師の全員参加型新人教育での困難の分析
篠 原 峻 介 1,a・ 児 玉 ゆ う 子 2,b・佐 藤 智 彦2,3,c
(1杏 林 大 学 保健 学 部 ・2星槎 大 学 大 学院 教 育 学 研 究科 ・3東 京慈 恵 会 医 科 大学 附 属 病 院)
要 旨
〈 目的 〉X 大 学 病院 小 児 病棟 に お い て、「 全員 参 加型 」 の 新 人看 護 師 教 育シ ス テ ム
(Apricot Nurse Support System: ANSS) の 下 で 新 人教 育 を 担 当す る 看 護 師が 感 じ る 困難 を 明 らか に し て 、そ の 克 服 に向 け た 支 援策 を 検 討 する 。〈方 法 〉 同 病棟 で エル ダ ー 、 メン タ ー 、リ ー ダ ー の各 役 割 を 持つ 看 護 師 12名 への イ ンタ ビ ュ ー の内 容 を 質 的に 分 析 し た。
〈 結果 〉ANSSで 新 人 教 育を 担 当 す る看 護 師 の 感じ る 困 難 は、【 新人 と の希 薄 な 関 係性 】
【 メン バ ー へ の支 援 活 動 の難 し さ】【 情 報 共有 の 難し さ 】【 指 導 範 囲の 不 明確 さ 】【 指 導 能 力 の不 足 】【 指 導 機 会の 欠 如】 で あ っ た。 多 く は 役割 遂 行 の 達成 感 が 低 く、 そ れ に は【 新 人 と関 わ る 機 会の 少 な さ 】が 影 響 し てい た 。〈 考 察〉ANSSの下 で 「 全 員参 加 型 」 の新 人 教 育を 担 当 す る看 護 師 の こう し た 多 岐に わ た る 困難 の 克 服 には 、 個 人 内レ ベ ル ( 役割 理 解 の 促進 )、個 人 間 レ ベル ( 新人 の 情 報 共有 の 強 化)、 全 体レ ベ ル ( 各役 割 に求 め ら れ る指 導 の 例示 ) で の 支援 が 必 要 であ る と 考 えら れ た 。
キ ーワ ー ド :アプ リ コ ッ トナ ー ス サ ポー ト シ ス テム 、 小 児 看護 、 全 員 参加 型 、 新 人看 護 師 教 育、 継 続 教 育
1 .序 論
1 )社 会 的 背 景
新 人看 護 師 教 育は 、 看 護 学生 に 対 す る基 礎 教 育 と並 び 、 看 護師 と し て の基 礎 を 作 る上 で 重 要な も の で ある 。 国 民 の医 療 へ の 意識 の 高 ま りか ら 看 護 職員 に 対 す る期 待 も 大 きく な っ て おり 、 国 内 全体 で 看 護 教育 の 充 実 を図 る 必 要 が指 摘 さ れ てい る ( 厚 生労 働 省 (2011))。
各 医療 施 設 で の新 人 看 護 職員 研 修 は、「 新 人看 護 職員 研 修 ガ イド ラ イ ン 改訂 版 」( 厚 生 労 働
2020 年 10 月 14 日 受 理 . 著 者 連 絡 先 : 佐 藤 智 彦 ,[email protected]
a 杏 林 大 学 保 健 学 部 看 護 学 科 看 護 学 専 攻 ・ 助 教
b 星 槎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 教 授
c 東 京 慈 恵 会 医 科 大 学 附 属 病 院 ・ 准 教 授 , 星 槎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 特 任 教 授
図 1 ANSS の チ ーム 構 成
省 (2014)) に 沿 っ て、 所 属部 署 の ス タッ フ 全 員 がそ の 指 導 に関 わ る こ とを 基 本 と して 行 わ れる 必 要 が ある 。
2 )学 術 的 背 景
( 1) 新 人 看 護師 教 育 シ ステ ム
新 人看 護 師 教 育体 制 の 代 表的 な シ ス テム は プ リ セプ タ ー シ ップ で あ り 、国 内 の 8割以 上 の 病院 が 導 入 して い る ( 社団 法 人 日 本看 護 協 会 (2004)) 。 こ こ では 、1名 の 新 人看 護 師
( プリ セ プ テ ィー ) に 1名 の 先 輩 看護 師 ( プ リ セプ タ ー : 「実 地 指 導 者」 と し て の要 件 を 満 たし た 者 、 入職 後 3~4年 目 で 担当 す る こ と が一 般 的 ) がマ ン ツ ー マン で 一 定 期間 の 指 導 を行 う 。 プ リセ プ タ ー シッ プ に は 、指 導 者 の 育成 が で き る、 指 導 の 継続 性 ・ 一 貫性 が 保 て る、On the Job Training(OJT) の ニー ズ が 把 握し や す い 、な ど の メ リッ ト が あ る。 そ の 反 面、 不 適 正 なペ ア リ ン グに よ り プ リセ プ タ ー とプ リ セ プ ティ ー の 期 待や 価 値 観 の相 違 が 生 じ、 お 互 い のス ト レ ス が大 き い 、 プリ セ プ タ ーが 自 己 の 指導 に 自 身 が持 て ず に 個人 的 葛 藤 をも た ら す 、通 常 業 務 に加 え て 指 導責 任 を 担 うこ と で オ ーバ ー ワ ー クに な る 、 など が そ の デメ リ ッ ト とし て 指 摘 され て い る (笹 田 (2005))。
こ のプ リ セ プ ター シ ッ プ の問 題 点 を 踏ま え て 考 案さ れ た 新 人看 護 師 教 育シ ス テ ム が Apricot Nurse Support System( 以 下 、ANSS) で あ る。ANSS は、 全 て の 看護 師 が そ れぞ れ 役 割を も ち 、 バッ ク ア ッ プチ ー ム を 作っ て 新 人 看護 師 ( ア プリ コ ッ ト ナー ス ) に 関わ る 、
「 全員 参 加 型 」の 教 育 シ ステ ム で あ る。 図 1に 示す よ う に 、ANSSで は、 教 育 担 当者 の 下 に 知識 ・ 技 術 を指 導 す る メン タ ー と 新人 看 護 師 の生 活 面 の 指導 や 精 神 面を 支 援 す るエ ル ダ ー を配 置 し て 、全 員 が そ れぞ れ の 役 割で 新 人 看 護師 の 教 育 を行 う ( 福 井(2008))。第 一 著 者 が所 属 す るX 大 学病 院 小児 病 棟 で も 2007年 か らANSS が 導 入さ れ て いる 。ANSSの 利 点 とし て 、 新 人看 護 師 の 早期 離 職 を 防止 で き る 可能 性 ( 木 下ら (2011))や 、 ス タ ッフ の 新 人教 育 に 関 する 関 心 度 を向 上 さ せ る可 能 性 ( 森(2009)) が 報 告さ れ てい る 。
( 2) 新 人 看 護師 教 育 で 生じ る 困 難
新 人看 護 師 指 導に お け る 教育 担 当 者 の抱 え る 困 難と し て 、 新人 指 導 に おけ る 中 心 的役 割 と して の 責 任 や教 育 体 制 の不 備 な ど がこ れ ま で に指 摘 さ れ てい る( 嶋 澤ら(2013)、グレ ッ
ク ら(2016))。ま た 、 新 人看 護 師 と 直接 関 わ る こと が 多 い プリ セ プ タ ーが 感 じ る 困難 と し て は、 指 導 の 時間 が う ま く取 れ な い こと 、 新 人 看護 師 と の 関係 性 、 自 身の プ リ セ プタ ー と し ての 役 割 の 責任 な ど が 挙げ ら れ て いる ( 神 開 ら(2006)、 池 西 ら(2010))。 そ の 一方 で 、 ANSS に よ る 新人 教 育 の 担当 看 護 師 が新 人 指 導 で抱 え る 困 難に 関 す る 報告 は ほ と んど な く、
指 導上 の 課 題 とし て 病 棟 看護 師 と 新 人看 護 師 の 勤務 調 整 が 挙げ ら れ て いる だ け で ある ( 木 下 ら(2011))。 実 際 に 、X 大 学病 院 小 児 病棟 で は、 新 人 教 育 を 担 当 す る看 護 師 か ら「 指 導 方 法に つ い て 困る 」、「( 新 人と の )関わ り 方 が わ から な い 」と い っ た 声 がこ れ ま で に寄 せ ら れ てき て お り、同 病 棟で はANSSに よ る新 人 看 護 師教 育 体 制 の改 善 が 必 要な 状 況 に あっ た 。
2 .研 究 目 的
本 研究 の 目 的 は、X大 学 病 院小 児 病 棟 での「 全員 参 加型 」の新 人 看 護 師教 育 シス テ ムANSS の 下で 新 人 教 育を 担 当 す る看 護 師 が 感じ る 困 難 を明 ら か に して 、 そ の 克服 に 向 け た支 援 策 を 検討 す る こ とで あ る 。
3 .研 究 方 法
1 )研 究 デ ザ イン 質 的記 述 的 研 究
2 )用 語 の 定 義
本 研究 に お け る各 用 語 の 定義 は 以 下 の通 り で あ る。
( 1) ア プ リ コッ ト ナ ー スサ ポ ー ト シス テ ム ( ANSS):全 て の 看 護師 が それ ぞ れ 役 割を も ち 、バ ッ ク ア ップ チ ー ム を作 っ て 新 人看 護 師 ( アプ リ コ ッ トナ ー ス ) に関 わ る 「 全 員 参加 型 」 の 教育 シ ス テ ム ( 福 井 (2008))を 指 す。
( 2) 新 人 看 護師 教 育: 基礎 教 育 を 終了 し 、 入 職し て 1年 未満 の 看 護 師に 対 し て 行わ れ る 、看 護 に 必 要な 知 識 や 技術 だ け で はな く 、 看 護師 と し て の倫 理 や 態 度な ど も 含 む 教育 を 指 す 。
( 3) 教 育 担 当者: 新 人 看護 師 の 直 接的 な 教 育 ・指 導 だ け では な く 、 受け 持 ち 患 者の 調 整 や全 体 研 修 等の 教 育 の 中心 を 担 う 看護 師 を 指 す。
( 4) 小 児 看 護:0歳 ~15歳ま で の 子 ども と そ の家 族 を 対 象と し た 看 護 を 指 す 。
( 5) 教 育 ス タッ フ:ANSSに よ る 新人 看 護 師 教育 の 中 で 、何 ら か の 役割 を 持 っ て新 人 看 護 師を 教 育 す る病 棟 所 属 の看 護 師 を 指す 。 こ の 中に は 、 エ ルダ ー 、 メ ンタ ー 、 リ ー ダー 、 教 育 担当 者 と い った 役 割 が ある ( 次 項 で各 役 割 を 説明 す る)。
( 6) 困 難:ANSSに よ る新 人 看 護 師教 育 を 担 当す る 看 護 師に と っ て 成し 遂 げ る こと が 難 し いこ と を 指 す。
3 )調 査 対 象 の選 出 と イ ンタ ビ ュ ー 調査 の 概 要
( 1) 研 究 協 力施 設
本 研究 の フ ィ ール ド で あ る X病院 で は 、 それ ま でプ リ セ プ ター シ ッ プ が導 入 さ れ てい た が、2006年 に 新人 看 護 師教 育 体 制 が見 直 さ れ 、2007 年 度 よ り全 員 参 加型 の 新 人 看護 師 教 育シ ス テ ムANSS が 導 入さ れ た 。 それ に 伴 い 、先 輩 看 護 師 7~8名 が チー ム を 組 み、 全 員 がそ れ ぞ れ の役 割 を 持 って 新 人 看 護師 を 支 援 する 体 制 と なっ た 。 こ の ANSSの 「 全員 が 参加 し て 全 員で 育 て る 」点 が 、 前 述の プ リ セ プタ ー シ ッ プに よ る 新 人看 護 師 教 育 の 特 徴 と 大き く 異 な る。ANSSで チ ー ムを 編 成 す る 目 的は 、 新 人 看護 師 の 精 神的 か つ 教 育的 支 援 を 行う こ と で あり 、 チ ー ムを 通 し て 、院 内 や 病 棟内 の 決 定 事項 な ど の 重要 事 項 の 周知 徹 底 を 図る こ と で ある 。 新 人 看護 師 を 支 える チ ー ム メン バ ー に は、 エ ル ダ ー( 新 人 と 一緒 に 技 術 等を 身 に 着 けて い く 身 近な 存 在 で 、新 人 の 生 活面 や 精 神 面で の 支 援 をす る 2〜4年 目 の 看 護師 が 担 う)、 メ ンタ ー (知 識 ・ 技 術的 指 導 と いっ た 中 心 的な 役 割 を 担い 、 か つ 精神 的 な 支援 も 行 う 5年 目 以 上 の看 護 師 が 担う ) が 3、4名ず つ 、 そ して メ ン ター か ら 選 出さ れ る チー ム リ ー ダー (1名 )が い る ( 図 1)。 こ の チー ム 構 成 のも と で 、 一部 の 看 護 師に 新 人 教 育の 責 任 が 集中 し な い よう に 、 か つ院 内 や 病 棟内 で の 重 要な 決 定 事 項を ス ム ー ズに 周 知 で きる よ う に して い る 。 また 、 人 員 が多 い 日 勤 帯だ け で な く、 少 な い 夜勤 帯 で も 1名 以 上 の チー ム メ ン バー が そ の 新人 看 護 師 と勤 務 す る 配置 を 取 っ てい る 。 新 人看 護 師 の 直接 的 指 導 を担 う の が エル ダ ー 、 メン タ ー 、 リー ダ ー で ある の に 対 して 、 新 人 看護 師 の 担 当患 者 の 調 整や 看 護 技 術等 の 到 達 目標 の 達 成 度評 価 、 新 人看 護 師 の 進捗 の 目 安 とな る ス ケ ジュ ー ル パ スの 作 成 と いっ た 業 務 は、 チ ー ム に属 さ な い 「教 育 担 当 者」 が 担 う (第 一 著 者 がこ れ に 該 当す る )。 こ の 教 育担 当 者に は 、 リ ーダ ー の 経 験は 問 わ ず 、エ ル ダ ー 、メ ン タ ー の各 役 割 を経 験 し た 者が 病 棟 師 長の 任 命 を 受け て 就 く 。な お 、 教 育担 当 者 か らの 相 談 を 受け る
「 教育 担 当 者 相談 役 」 と なる 看 護 師 が他 部 署 に 配置 さ れ て いる 。 ま た 、チ ー ム 編 成は 年 度 ご とに 組 み 替 えら れ る ( 福井 (2008))。
( 2) 研 究 協 力者 の 選 出
X 病 院小 児 病 棟 の看 護 師 長と 第 一 著 者 の 協 議 の もと で 、ANSSで の 新 人教 育 経 験 年数 を 考 慮し て 、 同 病棟 の 各 チ ーム か ら エ ルダ ー 、 メ ンタ ー 、 リ ーダ ー1名 ずつ 、4チー ム 合 計 12名 を選 出 し た 。
( 3) 調 査 の 事前 準 備
調 査の 実 施 に あた り 、 第 一著 者 が 所 属す る X 大 学病 院 小 児 病棟 の 管 理 者で あ る 病 棟看 護 師長 、 そ し て同 院 看 護 部長 に 本 研 究の 概 要 を 研究 計 画 書 に沿 っ て 説 明し 、 了 承 を得 た 。
( 4) デ ー タ 収集 方 法
イ ンタ ビ ュ ー 調査 は 、 以 下の 質 問 項 目 か ら な る イン タ ビ ュ ーガ イ ド ( 著者 ら が 独 自に 作 成 )を 用 い て 、第 一 著 者 が実 施 し た 。
① イ ン タ ビ ュー ガ イ ド
新 人看 護 師 教 育 で の プ リ セプ タ ー や 教育 担 当 者 の困 難 に 関 する 先 行 研 究( 柴 原
(2014)、渋 谷 ら (2008)、 平 野 ら(2018)) を も とに 、 イ ン タビ ュ ー ガ イド に は 以 下 の 質問 項 目 を 含め た 。
a) 看 護 師経 験 年 数
b)ANSSに 対 す る 認識 や 自身 の 役 割 理解 に つ い て c) 新 人 看護 師 と の 関わ り や困 難 に つ いて
d) 自 身 の役 割 遂 行 の認 識 につ い て
② イ ン タ ビ ュー 内 容 の 記録
各 協力 者 へ の イン タ ビ ュ ー内 容 は ICレ コ ーダ ー に録 音 し た 。
③ 真 実 性 の 確保
本 調査 に 先 立 ち、 イ ン タ ビュ ー の シ ミュ レ ー シ ョン ト レ ー ニン グ を 入 念に 行 っ た 。
( 5) デ ー タ 収集 期 間
2018年 10月~2019年 1月
4 )分 析 方 法
12名 のイ ン タ ビ ュー の 逐 語記 録 を 役 割ご と ( エ ルダ ー 、 メ ンタ ー 、 リ ーダ ー 各 4名)
に 分け 、 そ れ ぞれ の 記 録 の中 か ら 、 各協 力 者 が 「新 人 看 護 師教 育 で 困 難を 感 じ て いる 、 あ る いは 他 者 か らの 支 援 を 求め て い る 」と 読 み 取 れる 部 分 を 抜き 出 し 、 コー ド と し た。 さ ら に 類似 す る 意 味内 容 を 持 つコ ー ド か ら、 サ ブ カ テゴ リ ー を 生成 し た 。 さら に 、 共 通す る 内 容 のサ ブ カ テ ゴリ ー か ら カテ ゴ リ ー を生 成 し た 。そ の 後 、 逐語 記 録 の 内容 を 再 確 認し な が ら 、各 カ テ ゴ リー を ま と め直 す 過 程 を繰 り 返 し 、分 析 の 精 緻化 を 図 っ た。 ま た 、 著者 三 名 で 原資 料 に 基 づく 議 論 を 重ね 、 分 析 結果 の 信 頼 性と 妥 当 性 の確 保 に 努 めた 。
5 )倫 理 的 配 慮
本 研究 は 、 星 槎大 学 研 究 倫理 審 査 委 員会 の 承 認 を得 て 実 施 した ( 承 認 番号 :1813号)。
研 究協 力 候 補 者 12名に 、 本研 究 の 概 要、 目 的 、 方法 、 プ ラ イバ シ ー へ の配 慮 、 研 究参 加 が 自由 意 志 に 基づ く こ と 、参 加 拒 否 で不 利 益 を 被ら な い こ と、 参 加 同 意後 で も 同 意を 撤 回 で きる こ と を 、口 頭 お よ び書 面 で 説 明し 、 書 面 で同 意 を 得 た。 ま た 、 イン タ ビ ュ ー内 容 の 逐 語記 録 の 分 析に あ た り 、固 有 名 詞 は匿 名 化 し 、個 人 が 特 定で き る デ ータ は 抽 象 化も し く は 削除 し た 。
4 .結 果
12名 全員 が 本 調 査に 参 加 した 。ANSSに よ る 新 人看 護 師 教 育の 中 で 12名 が感 じ た 困 難 の 質的 分 析 結 果を 以 下 に 示 す (【カ テ ゴ リ ー】、〈 サブ カ テ ゴ リー 〉 と し て表 示 )。
1 )協 力 者 の 属性 ( 表 1 )
協 力 者 12名 の 看 護 師経 験 年数 は 、 平 均7.3 年 、 中央 値 6 年 であ っ た 。 エル ダ ー 、 メン タ ー、 リ ー ダ ー( 各 4名 )の 看 護 師 経験 年 数 は 、そ れ ぞ れ 平 均 3.0 年 、11.3 年 、7.5 年 で あ った 。12名 の 中で 、 過 去に プ リ セ プタ ー シ ッ プを 経 験 し た者 は 1名 のみ で あ っ た。3名 に は 3~4年 の 小 児 病棟 以 外で の 勤 務 経験 が あ り 、そ れ 以 外 の 9名 は 入 職時 よ り 現 在ま で 一 貫し て 小 児 病棟 で 勤 務 して い た 。12名の う ち 2名 が 男 性 、10名 が 女 性で あ っ た 。 リ ー ダ ー4名 の う ち 2名 は 初 めて リ ー ダ ーの 役 割 を 担当 す る 者 であ っ た 。12名の う ち 、 プリ セ プ ター シ ッ プ によ る 新 人 教育 を 経 験 した 者 は 1名 で あ っ た。2018年 度 に小 児 病 棟 へ入 職 し た新 人 看 護 師 は1 名 で 、4チ ー ム( ① ~ ④ ) のう ち 、 チ ーム ④ に 配 属さ れ た 。
2 )分 析 結 果
12名 のイ ン タ ビ ュー 時 間 の平 均 値 は 17分 、中 央 値 は15.5 分 (8~34分 )で あ っ た 。
( 1) ANSS の 仕 組み に 関 する 認 識
ANSSの 仕 組 みに つ い て 、16個 の コ ー ドか ら 、4つ の サ ブカ テ ゴ リ ー と 1つ の カ テゴ リ ー が抽 出 さ れ た。 協 力 者 の役 割 に 関 わら ず 、12名 と もANSS を 【 チ ー ムを 作 り 病 棟全 体 で 新人 看 護 師 を支 え る シ ステ ム 】 と 認識 し て い た。 こ の ANSSの さ ら なる 特 徴 と して 、
〈 チー ム に よ る新 人 看 護 師の フ ォ ロ ー〉〈 チー ム にお け る 役 割分 担 〉〈 チ ーム に よ る 新人 以 外 への フ ォ ロ ー〉〈 病棟 全 体で 関 わ る シス テ ム 〉 の 4つ を 認 識し て い る こと が 示 さ れた 。
表 1 協 力 者 12 名 の属 性
a IDは イ ン タ ビ ュ ー の 順 番 に よ り 付 与 し た 。b他 部 署 は 、 小 児 病 棟 以 外 の 病 棟 を 指 す 。 役割 IDa チーム
チームへの 新人看護師 の配属
他部署での 勤務b
プリセプター シップの経験
A ① ‐ ‐ ‐
B ② ‐ ‐ ‐
C ③ ‐ ‐ ‐
D ④ ○ ‐ ‐
E ② ‐ ‐ ‐
F ④ ○ ‐ ‐
G ① ‐ ○ 3年 ‐
H ③ ‐ ‐ ○
I ① ‐ ‐ ‐
J ③ ‐ ○ 4年 ‐
K ④ ○ ○ 4年 ‐
L ② ‐ ‐ ‐
エルダー
メンター
リーダー
( 2) 新 人 教 育を 担 当 す る看 護 師 が 新人 と の 関 わり で 感 じ る困 難 ( 表 2)
12名 が新 人 看 護 師と の 関 わり で 感 じ た困 難 の 詳 細を 役 割 ご とに 表 2に 示し た 。
① エ ル ダ ー
エ ルダ ー の 語 りか ら 、6 つ の サ ブ カテ ゴ リ ー と 5 つの カ テ ゴ リー が 抽 出さ れ た 。 複 数 名の エ ル ダ ーが 、 新 人 教育 で は 【 明ら か な 困 難な し 】 と 感じ て お り 、そ の 理 由 とし て、〈 困っ た こ と はな し 〉と 困 難 自 体を 感 じ て い ない 、あ るい は 新 人 教 育の〈 責 任が な い 〉た め と 回 答し た 。ま た、〈 先輩 を 頼 る〉こ と で【 困 難 への 対 処 】を して い る こ とも 語 られ た 。 そ の一 方 で 、 エル ダ ーC は 新 人 を 指 導す る 〈 実 際の 場 面 が ない 〉 な ど 、チ ー ム外 の 新 人 の〈 情 報 の 共有 が 困 難 〉で あ る と いう 、 新 人 の配 属 が な いチ ー ム の エル ダ ーと し て の【 指導 範 囲 の不 明 確 さ 】や【 情 報 共有 の 難 し さ 】に 困 難 を感 じ 、【指 導 機 会 の欠 如 】 を 指摘 し た 。
② メ ン タ ー
メ ンタ ー の 語 りか ら 、4つ の サ ブ カテ ゴ リ ー と3つ の カ テ ゴリ ー が 抽 出さ れ た。【 情 報 共有 の 難 し さ】で は 、新 人 に 関す る〈情 報 の 共有 が 困 難〉で あ る 、あ る い は新 人〈個
表 2 ANSS 教 育 スタ ッ フ が感 じ る 困 難
役割 【カテゴリー】 〈サブカテゴリー〉 代表的引用
チームへの 新人看護師 の配属
上の人に任せているので。(D) あり
自信がないことは先輩にお願いしていた。(A)
困ったことはなかった。(B)
困ったことはない。(D)
責任がない 直接フォローしないので。責任を負う必要もないので困らない。(D)
指導範囲の不明確さ 不明確な指導範囲 ケアのときにどこまで指導していいのかわからない。(C)
情報共有の難しさ 情報の共有が困難 進捗状況がわからない。(C)
指導機会の欠如 実際の場面がない 実際の場面にならないと仕事のフォローはできない。(C)
明らかな困難なし 困ったことはない 普段の関わりの中ではない。フォローにならないと(難しさは)ない。(E) 個人の特性の
把握が困難
課題とかも見なくなったのでその新人一人一人に合わせたフォローの仕方がわか らなくなった。どういう勉強をしているかもわからない。(H)
情報の共有と周知。(E)
進行状況の把握ができない。(G)
分散していることで進捗がわからない。チームリーダーから情報がおりてこな い。(H)
チームにいないと把握する機会がない。本人に聞くしかない。他チームの新人の 進捗を知るのは難しい。(F)
指導能力の不足 役割の変化があった メンターへの移り変わりの時。気持ちに余裕がない。自分もいっぱいいっぱい。
指導に自信がなかった。(F)
フォローについたときの新人との関わり方。(I)
相談しやすい関係性の作り方。(L)
距離感が難しい 新人との距離感。エルダーも含め。(L)
メンバーへの 支援活動
他の役割の
指導との重複 チームリーダーの時は、エルダーの面倒を見ること。(I)
進捗が分かりづらい。(J)
情報共有ができていない。他の役割からのフィードバックが無い。リーダーだけ
では全体を見られない。(K) あり
チームが違う チームの違いで進捗が把握できない。(L)
指導範囲の不明確さ 不明確な指導範囲 どこまでフォローすればいいのか。(L)
戸惑い 勤務リーダーになるようになって急にフォローが付いた時の戸惑い。(L)
知識や技術に自信がない 自分の知識や技術に自信がなかった。(L)
エルダー
困難への対処 先輩を頼る
なし 明らかな困難なし 困ったことはなし
あり
なし
なし 指導能力の不足
新人との 希薄な関係性
あり
リーダー
関係性の構築が困難
なし
情報共有の難しさ 情報共有が困難 メンター
なし 情報共有の難しさ
情報の共有が困難
人 の 特 性 の 把 握 が 困 難 〉 で あ る こ と が 挙 げ ら れ た 。 特 に 、 チ ー ム ① ~ ③ の メ ン タ ー は チ ー ム 外 の 新 人 の 情 報 が 入 っ て こ な い こ と を 、 チ ー ム ④ の メ ン タ ー は チ ー ム 外 に 新 人 の 情報 を 出 す 機会 が な い こと を 指 摘 して い た。【指 導 能 力 の不 足 】で は、メ ン タ ーFが 過 去 に エ ル ダ ー か ら メ ン タ ー へ と 〈 役 割 の 変 化 が あ っ た 〉 際 に 自 身 の 【 指 導 能 力 の 不 足 】を 感 じ た こと を 挙 げ てい た 。
③ リ ー ダ ー
リ ーダ ー の 語 りか ら 、7 つ の サ ブ カテ ゴ リ ー と 5 つの カ テ ゴ リー が 抽 出さ れ た 。 リ ー ダー が 指 摘 した 困 難 は 多岐 に 渡 り、 新 人 の 配 属が な か っ たチ ー ム の リー ダ ー か らは 、 日 常業 務 で 新 人の フ ォ ロ ーに 入 る 際( リ ー ダ ーI)や、新 人か ら 相 談 を 受け る 際( リ ー ダ ーL)な ど 、【 新 人 と の 希薄 な 関 係 性】が 指 摘 され 、そ の 理由 と し て〈関 係 性 の 構築 が 困難 〉で、〈 距 離 感 が 難 しい 〉こ と が語 ら れ た 。リ ー ダ ーI は 、新 人 だ けで な く エ ル ダ ーの フ ォ ロ ーも す る 必 要が あ る な ど、【他 の 役 割の 指 導 と の重 複 】に も困 難 が あ ると 語 った 。【情 報 共 有 の難 し さ】と し て 、新人 が 配 属さ れ た チ ーム ④ の リ ーダ ーKは 、チ ー ム内 の 他 の 役割 と の 〈 情報 共 有 が 困難 〉 が あ るこ と を 、 他チ ー ム の リー ダ ー は 〈チ ー ムが 違 う 〉 ため に 新 人 の〈 情 報 共 有が 困 難 〉 があ る こ と を指 摘 し て いた 。 ま た 、リ ー ダーL は 、 新 人 の 配 属 がな い チ ー ムの リ ー ダ ーと し て の 【指 導 範 囲 の不 明 確 さ 】だ け でな く 、 同 一勤 務 帯 で チー ム 外 の 新人 を フ ォ ロー す る 場 面で の 〈 戸 惑い 〉 や 〈 知識 や 技術 に 自 信 がな い 〉 こ とな ど 、 自 身の 【 指 導 能力 の 不 足 】も 挙 げ て いた 。
以 上の 結 果 か ら、新 人 看 護師 と の 関 わり で の 困 難と し て、【 情 報 共有 の 難し さ 】は 3つ の 役 割に 共 通 し てい た こ と が示 さ れ た。ま た、【 指 導能 力 の 不 足】は メ ン ター と リ ー ダー に 共 通 して い た 一 方で 、【新 人 との 希 薄 な 関係 性 】【 メ ンバ ー へ の 支援 活 動 】 はリ ー ダ ー だけ が 感 じて い た こ とが 明 ら か にな っ た 。
( 3) 自 身 の 役割 理 解 ( 表3 )
エ ルダ ー の 役 割理 解 に つ いて 、4つの コ ー ド か ら、3つ のサ ブ カ テ ゴ リー 、1つの カ テ ゴ リ ーが 抽 出 さ れた 。 新 人 の〈 精 神 的 なフ ォ ロ ー をす る こ と〉〈( 看 護 ) 技術 以 外 の フォ ロ ー
表 3 自 身 の 役割 理 解
役割 【カテゴリー】 〈サブカテゴリー〉 コード数 精神的なフォローをすること 2 技術以外のフォローをすること 1 気軽に相談できる存在 1 技術面の指導 指導的な役割をすること 2 エルダーのフォロー 新人以外もフォローすること 2 看護師としてのロールモデル 新人のモデル 2
新人の支援 業務でのフォロー 2
新人の有無で変化する役割 新人がいないと役割がないこと 1 代わりのいない役割 他の人に任せられないこと 1 新人以外もフォローすること 1 他に任せられることもあること 1 エルダー 新人看護師の精神面のフォロー
メンター
リーダー
チームメンバーのフォロー
を する こ と 〉そし て〈 気 軽に 相 談 で きる 存 在 〉であ る こ とな ど 、【 新 人 看護 師 の 精 神面 の フ ォ ロー 】 が 自 身の 役 割 だ と認 識 し て いた 。
メ ンタ ー の 語 りに は 、6つ の コ ー ドが あ り 、そ こか ら 3つ のサ ブ カ テ ゴリ ー 、3つ の カ テ ゴ リー が 抽 出 され た 。 新 人の 【 技 術 面の 指 導 】 をし な が ら 【新 人 の モ デル 】 と し て振 る 舞 い 、そ し て 【 エル ダ ー の フォ ロ ー 】 をす る こ と も自 身 の 役 割だ と 認 識 して い た 。
リ ーダ ー の 語 りに は 、6つ の コ ー ドが あ り 、そ こか ら 5つ のサ ブ カ テ ゴリ ー 、4つ の カ テ ゴ リー が 抽 出 され た 。【 新 人の 支 援 】か つ【 チ ー ムメ ン バ ー のフ ォ ロ ー 】を する【 代 わ り の い ない 役 割 】だ と 指 摘 し た者 が い た 一方 で 、〈 新 人が い な い と役 割 が な いこ と 〉など チ ー ム に おけ る 【 新 人の 有 無 で 変化 す る 役 割】 を 指 摘 する 者 も い た。
( 4) 自 身 の 役割 遂 行 の 認識 と 新 人 看護 師 と の 関わ り の 有 無( 表 4 )
協 力者 の 多 く が、教 育 ス タッ フ と し ての 自 身 の 役割 が「 遂 行で き て い ない 」、ま た は「遂 行 でき て い る かわ か ら な い 」 と 回 答 した 。 特 に 、エ ル ダ ー 全員 が 否 定 的な 回 答 を 示し た 。 新 人の 配 属 が なか っ た チ ーム の リ ー ダー1 名 は 自身 の 役 割 が遂 行 で き てい る と 回 答し た 。 ま た、 協 力 者 9 名は 日 常 業務 の 中 で 新人 と 関 わ るこ と が 「 少し あ る 」 と、1 名 が「 ほ ぼ な い」と 回 答し た 。新 人 が 配属 さ れ た チー ム ④ の メン タ ー、リ ー ダ ー は「 あ る」と 回 答し た 。
( 5) 役 割 遂 行の 認 識 に 関わ る 要 因 (表 5 )
12 名 が 自身 の 役 割 を遂 行 でき て い る /い な い と 考え る 理 由 を役 割 ご と に 表 5 に 示 し た。
① エ ル ダ ー
エ ルダ ー の 語 りか ら は 、5 つ の サ ブカ テ ゴ リ ー と 1 つ の カ テ ゴリ ー が 抽出 さ れ た 。 全 員が 役 割 を 「遂 行 で き てい な い 」 と回 答 し て いた 。 そ の 主な 要 因 で ある カ テ ゴ リー
【 新人 看 護 師 と関 わ る 機 会の 少 な さ】に は、〈 自 分に 余 裕 が ない 〉〈 チ ー ムが 違 う〉〈 勤 務 が違 う 〉〈 年 齢 に差 が あ る〉と い った こ と が 含 まれ て い た。新 人 が 配 属さ れ た チ ーム の エル ダ ーD は 、 新 人 と の関 わ り が 多い の は エ ルダ ー で は なく メ ン タ ーや リ ー ダ ーで あ ると 指 摘 し てい た 。 新 人の 配 属 が なか っ た チ ーム の エ ル ダーB は 、 自身 の 経 験 年数 が 浅い た め 他 チー ム の 新 人と 〈 勤 務 シフ ト が 違 う〉 こ と が 多い と 指 摘 して い た 。
② メ ン タ ー
メ ンタ ー の 語 りか ら は 、5 つ の サ ブカ テ ゴ リ ー と 4 つ の カ テ ゴリ ー が 抽出 さ れ た 。 自 身の 役 割 を「 遂 行 で き てい な い 」と 回 答 し た 要因 と し て、【 新人 看 護 師と 関 わ る 機会
表 4 自 身 の 役割 遂 行 の 認識 と 新 人 看護 師 と の 関わ り の 有 無
はい いいえ わからない ある 少しある ほぼない ない
エルダー 0 4 0 0 4 0 0
メンター 0 1 3 1 2 1 0
リーダー 1 1 2 1 3 0 0
自身の役割を遂行できているか 新人看護師との関わりはあるか 役割
の 少な さ 】、【 把 握 不 足 】が 挙 げ られ た 。ま た 、そ の 他 の 3名 の メ ン タ ーは 、「 わ か らな い 」と 回 答 し てお り 、 そ の要 因 の 否 定的 要 素 と して 【 新 人 看護 師 と 関 わる 機 会 の 少な
さ 】を 、 肯 定 的要 素 と し て【 チ ー ム 外で の 支 援 活動 】 を 挙 げた 。 特 に 前者 と し て 、新 人 と〈 勤 務 シ フト が 違 う 〉こ と が 多 くメ ン タ ー の役 割 を 果 たす 場 面 が ない こ と を 指摘 し た。 後 者 と して 、 チ ー ム ④ の メ ン ターF は 、 研修 会 や 勉 強会 で 自 身 が学 ん だ こ とを チ ーム に 還 元 して い る こ とを 語 っ て いた 。ま た 、新人 の 配 属 がな か っ た メ ンタ ーH は 、 所 属チ ー ム 以 外で の 業 務 の中 で 新 人 のフ ォ ロ ー をし た こ と を語 っ て い た。
③ リ ー ダ ー
リ ーダ ー の 語 りか ら は 、4 つ の サ ブカ テ ゴ リ ー と 4 つ の カ テ ゴリ ー が 抽出 さ れ た 。 役 割を「 遂 行 で きて い る 」と回 答 し た リー ダ ーJは 、〈 チー ム 外 の 新 人 の同 一 勤 務 帯で の フォ ロ ー 〉と い っ た【チ ー ム 外 での 支 援 活 動】を そ の 要因 に 挙 げ た。「 遂行 で き て い な い」 と 回 答 した チ ー ム ④の リ ー ダ ーK は 、 新 人の 様 子 の 【把 握 不 足 】を そ の 要 因 に 挙 げた 。新人 の 配 属 がな か った リ ー ダ ーIやLは 、【 新人 看 護 師 と関 わ る 機 会の 少 な さ 】 か ら 、 役 割 を 「 遂 行 で き て い る か わ か ら な い 」 ま た は 「 で き て い な い 」 と 回 答 し た 。 以 上の 結 果 か ら、 自 身 の 役割 が 遂 行 でき て い な い、 ま た は でき て い る かわ か ら な いと 回 答 した 主 要 因 は【 新 人 看 護師 と 関 わ る機 会 の 少 なさ 】 で あ った こ と が 明ら か に な った 。
表 5 役 割 遂 行の 認 識 に 関わ る 要 因
※代 表 的 引 用 内 A~Lは 表 1の 協 力 者 IDを 指 す 。
役割 遂行 【カテゴリー】 〈サブカテゴリー〉 代表的引用
チームへの 新人看護師の
配属 自分に余裕がない 自分がいっぱいいっぱいであった。(A)
チームが違うと関わりがない。(A)
(自分が新人では)チームが一緒だと頼りやすかった。(B)
勤務がかぶらなかった。(A)
経験年数が近いと勤務が合わない。(B)
年齢に差がある 年齢の差も気になる。(C)
関わる機会がない。(C)
関わりが少ないから(D) あり
新人看護師と
関わる機会の少なさ フォローの機会が少ない 関わりがない。フォローするときしか関わらない。(G)
把握不足 状況把握ができていない 状況を把握していない。(G)
新人看護師と
関わる機会の少なさ 勤務シフトが違う チームが一緒でも勤務が違うと果たせない(E)
業務としては果たせた 業務リーダー時のフォローはしていたが、チームにいなかった。(H)
スタッフに還元している 自己研鑽してスタッフに還元。部署で活かせるようにしている。(F) あり できて
いない
新人看護師と
関わる機会の少なさ チームが違う 仲良くなれていない。2年目とはチームが同じになって話すようになった が、チームが違うと話す機会がない。(I)
できて いる
チーム外での 支援活動
チーム外の新人の 同一勤務帯でのフォロー
チームにいないと関わりがない。勤務内でできるフォローは対応できた と思うから。(J)
新人看護師と
関わる機会の少なさ チームが違う 新人がいないから。2年目の子がチームにいるが、相談できる存在にはな れていない気がする。(L)
把握不足 状況把握ができていない 新人のことを把握できていないことがある。(K) あり なし 勤務シフトが違う なし
関わりが少ない
メンター できて いない
なし わから
ない エルダー できて
いない
新人看護師と 関わる機会の
少なさ
チーム外での 支援活動
わから ない
チームが違う
リーダー
5 .考 察
本 研究 で は 、ANSS 教 育 スタ ッ フ が 新人 看 護 師 教育 で 感 じ る困 難 を 明 らか に す る ため に イ ンタ ビ ュ ー 調査 を 実 施 した 。そ の分 析 よ り、【指 導 範 囲 の不 明 確 さ】【情 報 共 有 の難 し さ 】
【 指導 能 力 の 不足 】【 新 人 との 希 薄 な 関係 性 】【 メ ンバ ー へ の 支援 活 動 の 難し さ 】【 指 導 機会 の 欠如 】 が 主 な困 難 で あ り、 自 身 の 役割 遂 行 の 達成 感 が 低 い者 が 多 く 、そ の 背 景 には 【 新 人 看護 師 と 関 わる 機 会 の 少な さ 】 が あっ た こ と が明 ら か に なっ た 。 今 回の 結 果 と とも に 、
「 全員 参 加 型 」の 新 人 看 護師 教 育 体 制の 改 善 の 必要 性 に つ いて 考 察 し てい く 。
1 )12 名 の 協 力 者の 役 割 と看 護 師 経 験年 数
今 回の 調 査 協 力 者 12名 全 員が 比 較 的 若い 年 代(20~30歳 代 )の 看 護 師 であ っ た 。特 に 、 リ ーダ ー を 務 め た4 名 の ほと ん ど は、他 の メン タ ーよ り も 看 護師 経 験 年 数が 少 な か った( 表 1)。こ れ は 、 看護 師 経 験 年数 で は な く、 そ れ ま での メ ン タ ーと し て の 新人 指 導 経 験を 考 慮 し てリ ー ダ ー の人 選 が 行 われ る こ と が影 響 し て いる 。 そ の ため 、 特 に 初め て リ ー ダー を 担 う 者に と っ て は、 そ の 役 割を 果 た す 上で 、 自 身 より 経 験 豊 富な メ ン タ ーか ら の 支 援が 必 要 な 状況 に あ っ たと 推 測 さ れた 。また 、X大学 病 院小 児 病 棟 には 、2015年 度 に 9名の 新 人 看 護 師が 入 職 し たが 、2016年 度 で は 0名 、2017年 度で は 2名 と、い ず れ の年 度 で も 入職 者 が 少 なく 、今 回の 調 査 を 行 っ た 2018年 度 で も 1名 であ っ た 。そ の た め 、同 病 棟 で 4チ ー ム の う ち 1チ ー ム (チ ー ム ④ )に だ け 新 人が 配 属 さ れ、 他 チ ー ムの ス タ ッ フは い ず れ も直 接 的 に 新人 を 指 導 ・教 育 す る 機会 が 少 な くな っ て し まっ た 。 こ うし た 背 景 も今 回 の 結 果に 影 響 し た可 能 性 が ある 。
2 )ANSS 教 育 ス タッ フ が 新人 看 護 師 との 関 わ り で感 じ た 困 難の 内 容 分 析
ANSS チ ー ム で のエ ル ダ ーと メ ン タ ーの 役 割 を あら た め て 考え る と 、 新人 の 精 神 面で の フ ォロ ー を 担 うの が エ ル ダー で あ り 、新 人 を 直 接的 に 指 導 する の は メ ンタ ー で あ る。 こ の 構 図は 、 技 術 等の 指 導 に おい て 経 験 豊富 な 〈 先 輩を 頼 る 〉 こと で 【 困 難の 対 処 】 がで き る と いう 、 新 人 教育 体 制 と し て ANSSチ ーム の 持 つ強 み と 言 える 。 こ の よう に 、 チ ーム で ス ム ーズ な 役 割 分担 が 可 能 にな る 反 面 、新 人 を 直 接指 導 す る 〈責 任 が な い〉 と い う エル ダ ー の 認識 が 生 じ うる こ と に 注意 が 必 要 であ る 。 今 回の 調 査 で も、 新 人 が 配属 さ れ た チー ム ④ の エル ダ ー の 語り に 代 表 され る 、 新 人指 導 の 〈 責任 が な い 〉と い う 認 識が エ ル ダ ーに あ る こ とは 今 後 是 正す べ き 課 題と 言 え る 。
そ して 、 エ ル ダー か ら 指 摘さ れ た 困 難は 【 指 導 範囲 の 不 明 確さ 】 や 【 指導 機 会 の 欠如 】 に 伴う も の で あっ た( 表2)。チ ー ム内 で の エ ル ダー の 役 割 はあ く ま で「 新 人 の精 神 的 支 援 」 で あり 、 知 識 や技 術 な ど の直 接 的 な 指導 に 比 べ て教 育 ス タ ッフ と し て の達 成 感 は 得に く い
と 推測 さ れ る が、 そ の 一 方で 、 夜 勤 や患 者 急 変 時な ど で は 、新 人 指 導 に対 応 で き る看 護 師 が 少な い た め 、エ ル ダ ー が新 人 を 直 接的 に 指 導 する こ と も めず ら し く ない 。 実 際 に、 日 勤 帯 で新 人 を 直 接指 導 す る こと の な い エル ダ ー か らも 【 情 報 共有 の 難 し さ】 が 指 摘 され た こ と を考 え る と 、こ う し た 場面 を 想 定 して 、 エ ル ダー へ の 新 人に 関 す る 情報 の 共 有 が必 要 で あ ろう 。 こ の 情報 共 有 に より 、 エ ル ダー の 役 割 理解 を 深 め 、エ ル ダ ー とし て の 自 覚を 高 め ら れる 可 能 性 が考 え ら れ た。 ま た、「【新 卒 看 護 師が で き て いる こ と は 、認 め る ・ 褒め る ・ 任 せる 】こと が 新 卒 看護 師 にと っ て、心 理 的 なエ ネ ルギ ー を 高 める こ と に つな が っ て いる 。」
( 大川(2004))と い う 指 摘は 、ANSS教 育 ス タ ッフ と し て のエ ル ダ ー の支 援 に も 応用 で き る であ ろ う 。 実際 の 業 務 の中 で エ ル ダー が 新 人 指導 も 行 っ た場 合 に 、 教育 担 当 者 が中 心 と な って そ の 関 わり を 認 め 、エ ル ダ ー を褒 め て 、 新人 指 導 を 任せ る こ と によ っ て 、 教育 ス タ ッ フと し て の モチ ベ ー シ ョン を 高 め 、そ の 後 の 高い 達 成 感 につ な が る と考 え ら れ た。
4名 の メ ン ター か ら は、チ ーム へ の 新 人の 配 属 の 有無 に か か わら ず 、【 情 報共 有 の 難 しさ 】 が 主な 困 難 と して 指 摘 さ れた ( 表 2)。ANSSと は異 な る が 、手 術 室 で の新 人 教 育 にチ ー ム プ リセ プ タ ー 制を 導 入 し た結 果 、 チ ーム に お け るプ リ セ プ ター 同 士 や 他の チ ー ム メン バ ー と の間 で の 情 報共 有 が 問 題点 に 上 が った こ と も 指摘 さ れ て いる ( 前 田 ら(2012))。こ の 報 告 は、 チ ー ム によ る 新 人 看護 師 教 育 での 大 き な 課題 が 「 新 人に 関 す る 情報 共 有 」 であ る 点 で 、本 研 究 結 果と 共 通 す るも の が あ る。ま た 、メン タ ー から の〈 個 人 の特 性 の 把 握が 困 難〉
だ とい う 指 摘 から も 、 実 際の 現 場 で の教 育 ス タ ッフ と 新 人 の希 薄 な 関 係性 が 推 測 され た 。 ANSS の メ ン ター は 、 知 識や 技 術 に 関す る 新 人 の指 導 の 中 心を 担 う 点 でプ リ セ プ ター と 重 な る点 が 多 い 。プ リ セ プ ター 同 士 が 交流 す る 「 プリ セ プ タ ー会 」 を 導 入・ 検 討 し た報 告 で は、「新 人 や プ リセ プ タ ー への 理 解 や 関心 が 深 ま り、チ ーム で 新 人 を育 て る意 識 が 高 まっ た 。 会 の導 入 は 、 スタ ッ フ が 新人 の 教 育 的支 援 へ の 理解 を 深 め 支援 者 の 必 要性 を 認 識 する 上 で 有 効で あ る」( 大 谷 ら(2007)) と、 プ リ セ プタ ー 支援 策 の 重 要性 が 指 摘 され て い る 。X 大 学 病院 小 児 病 棟で は 、 教 育ス タ ッ フ がそ れ ぞ れ の役 割 ご と にチ ー ム を 超え て 情 報 交換 を す る 機会 が な い 。今 後 は 、 メン タ ー が 新人 看 護 師 の進 行 状 況 を他 の メ ン ター に 報 告 でき る よ う な「 メ ン タ ー会 」 の 導 入も 検 討 す べき 課 題 で ある 。 こ の メン タ ー 会 は、 新 人 が 配属 さ れ な いチ ー ム の メン タ ー の 役割 意 識 を 高め る 上 で も有 用 で あ ろう 。
リ ーダ ー か ら も、チ ー ム への 新 人 の 配属 の 有 無 にか か わ ら ず、【 情報 共 有の 難 し さ 】が 主 な 困難 と し て 指摘 さ れ た( 表 2)。同 病 棟 で は 、月 1回 の「 リ ー ダー 会 」を開 催 し て リー ダ ー 間の 情 報 交 換の 機 会 と して き た が 、 本 調 査 の 中で 、 複 数 のリ ー ダ ー から 情 報 共 有の 不 足 が 指摘 さ れ た こと は 著 者 らの 予 想 を 超え て い た 。こ こ か ら は、 各 チ ー ムが 新 人 教 育以 外 に も 退院 支 援 、 感染 予 防 、 小児 救 急 と いっ た 複 数 の役 割 を 持 って お り 、 リー ダ ー 会 の活 動 の 中 心が 新 人 教 育に な い こ とが 推 測 さ れた 。 そ こ で今 後 は 、 教育 担 当 者 を中 心 に 、 リー ダ ー 会 の中 で 新 人 看護 師 に 関 する 情 報 の 共有 の 重 要 性を 説 明 し てい く 必 要 があ る と 考 えら れ た。
今 回の 調 査 対 象で あ っ た エル ダ ー と リー ダ ー か ら指 摘 さ れ た【 指 導 範 囲の 不 明 確 さ】 を 考 察す る 上 で 、あ ら た め て ANSSチ ー ムで の 各 役割 を 整 理 する 。 エ ル ダー に は 、 一緒 に 技 術 の練 習 を す るこ と や 、 新人 看 護 師 と教 育 担 当 者と の 橋 渡 しを す る こ と、 メ ン タ ーに は 、 教 育担 当 者 へ の情 報 の 提 供や エ ル ダ ーの 相 談 に のる な ど 今 回の 結 果 以 外に も さ ま ざま な 役 割 が与 え ら れ てい る ( 福 井(2008))。そ の 一 方 で、 各 チ ー ムの メ ン タ ーか ら 選 出 され る リ ー ダー の 役 割 は明 文 化 さ れて い な い 。果 た す べ き役 割 の 方 向性 を 導 き 出す た め に は、 役 割 の 目標 設 定 や その 目 標 を 到達 で き る よう に 、 困 った と き の 相談 体 制 の 構築 な ど の 支援 体 制 を 整え る 必 要 性が あ る こ とが 指 摘 さ れて い る( 板垣(2009))。今 回 の 調査 で も、〈 新 人が い な いと 役 割 が ない こ と 〉 を指 摘 し た リー ダ ー も いた こ と か ら、 今 後 は リー ダ ー の 具体 的 な 行 動例 を 示 し てい く 必 要 もあ る と 考 えら れ た 。
そ して 注 目 す べき は 、 メ ンタ ー か ら もリ ー ダ ー から も 指 摘 され た 【 指 導能 力 の 不 足】 で あ る。 新 任 プ リセ プ タ ー の困 難 に は 、自 分 の 知 識や 指 導 へ の自 信 の な さが あ る こ とが 知 ら れ てい る( 平 野ら(2018))。そ して 、「 経 験 を 積 むこ と で 専 門職 と し て のキ ャ リ ア が蓄 積 さ れ 、看 護 実 践 能力 が 高 ま る。 な か で もリ ー ダ ー シッ プ に つ いて 、 臨 床 にお い て 勤 務を 続 け て いく と 看 護 チー ム の リ ーダ ー を 果 たす 機 会 が 増え 、 ス タ ッフ を 教 育 し、 組 織 を けん 引 す る 存在 と し て の役 割 が 多 くな る の は 自明 の こ と であ る 。」( 田中 ら(2012))と 、看護 師 と し て のリ ー ダ ー シッ プ と 経 験の 豊 富 さ の関 係 も 指 摘さ れ て い る。 今 回 の 調査 で 、 自 身の 役 割 が エル ダ ー か らメ ン タ ー に変 わ っ た 時、 あ る い は初 め て リ ーダ ー の 役 割を 任 さ れ た時 に 、 自 身の 【 指 導 能力 の 不 足 】を 感 じ て いた 者 が い たこ と を 考 える と 、ANSS 教 育 ス タッ フ と し ての 経 験 の 少な さ か ら くる 自 信 の なさ が そ の 背景 に あ っ たと 言 え る。ま た 、今 回 の 12名 の 語り の 中 に 、新 人 看 護 師の 進 捗 を 把握 す る た めの ス ケ ジ ュー ル パ ス を現 場 で 活 用し て い る とい う 指 摘 がな か っ た こと を 考 え ると 、 新 人 の情 報 を 共 有す る ツ ー ルと し て の スケ ジ ュ ー ルパ ス を 早 急に 見 直 す 必要 が あ る 。
3 )ANSS 教 育 ス タッ フ と して の 役 割 認識 と 達 成 感の ギ ャ ッ プ
グ ル ー プ に よ る 新 人 教 育 体 制 に 必 要 な 支 援 に つ い て は 、「 ス タ ッ フ 個 々 が 新 人 教 育 支 援 に おけ る 自 己 の役 割 を 理 解し て 実 践 でき る よ う に、 各 役 割 に応 じ た 教 育を 行 う こ と、 会 議 へ の参 加 率 を 上げ て 情 報 共有 を 充 実 させ る こ と 、そ し て 病 棟全 体 で 新 人を 教 育 し てい く 職 場 風 土 を 作 り 上 げ て 行 く こ と が 、 グ ル ー ピ ン グ フ ォ ロ ー 体 制 に は 欠 か せ な い 。」( 山 中 ら
(2014))と 指 摘 さ れて い る。 今 回 の 12名 の役 割 理解 の 詳 細 を見 る と 、 エル ダ ー 、 メン タ ー 、リ ー ダ ー の各 役 割 に 関す る 知 識 的理 解 は あ る程 度 の レ ベル に あ る と言 え た( 表 3)。し か し、「 チ ー ム を通 し て 重 要事 項 の 周 知徹 底 を 図 る」と い う ANSSチ ー ムと し て の 目的 に 言 及 した 者 が い なか っ た こ とは 、今 回 の 12名 の「チ ー ム メ ンバ ー と し て の認 識 不 足」が あ っ た こと を 示 し てい る と 考 えら れ た 。そ し て 、 協 力者 の ほ と んど が ANSSチ ー ム で の自 身 の
役 割が 遂 行 で きて い な い、も し く はわ か ら な い と回 答 し て いた こ と( 表 4)を 合 わ せ ると 、 協 力者 の 役 割 の認 識 と 達 成感 に 大 き なギ ャ ッ プ があ る と 言 える 。 そ の ため 、ANSS チ ー ム メ ンバ ー と し て新 人 教 育 への エ ン ゲ ージ メ ン ト を高 め る こ とこ そ が 、 同病 棟 の 新 人教 育 体 制 の大 き な 課 題で あ る と 考え ら れ た 。そ こ で 、 全員 が そ れ ぞれ 役 割 を 持っ て 新 人 看護 師 を 支 援し 、全 員で 新 人 を 育 てて い く と いう 、「 全 員 参加 型 」の新 人 看 護 師 教育 シ ス テ ムで あ る こ とを あ ら た めて 周 知 し 、各 役 割 に 求め ら れ る 指導 を 例 示 し、 ス タ ッ フ間 で の 新 人看 護 師 の 情報 共 有 の 機会 を 増 や すこ と が 重 要に な る と 推測 さ れ た 。
4 )ANSS 教 育 ス タッ フ と して の 達 成 感の 低 さ
12名 の役 割 遂 行 の認 識( 遂行 で き て いる / で き てい な い )を掘 り 下 げ てい く と 、それ ぞ れ が【 新 人 看 護師 と 関 わ る機 会 の 少 なさ 】 を 感 じて い た 。 教育 ス タ ッ フ の ANSSの シス テ ム の理 解 は、【 チ ーム を 作 り病 棟 全 体 で新 人 看 護 師を 支 え る シス テ ム 】で あ り 、シス テ ム の 理 解と 実 際 の 関わ る 機 会 の少 な さ の ギャ ッ プ が 、教 育 ス タ ッフ と し て の達 成 感 の 低さ に 影 響 して い た と 考え ら れ た( 表 4、5)。特に 、新 人 の配 属 が な いチ ー ム メ ンバ ー( チ ー ム ①~
③ )か ら の 、 チー ム 外 の 新人 と の 関 わり が 少 な いと い う 指 摘と 、 新 人 が配 属 さ れ たチ ー ム メ ンバ ー か ら の、チ ー ム 内で の 新 人 の情 報 の 共 有が 不 十 分 だと い う 指 摘か ら は( 表 2)、チ ー ム内 で の ( メン バ ー 同 士の ) 交 流 とチ ー ム 間 での 交 流 が それ ぞ れ 十 分で は な い こと が 推 測 され た 。 こ うい っ た 状 況下 で は 、 第一 著 者 を 含む 教 育 担 当者 が 教 育 スタ ッ フ と 新人 看 護 師 の交 流 を 促 して 【 新 人 看護 師 と 関 わる 機 会 の 少な さ 】 を 改善 し て い くよ う に 働 きか け る 必 要が あ ろ う 。
ま た、 今 回 の 協力 者 の 達 成感 の 低 さ には 、 教 育 スタ ッ フ と して の 役 割 の理 解 不 足 も関 係 し てい る と 考 えら れ た 。多 く の 施 設で 採 用 さ れ てい る プ リ セプ タ ー シ ップ で は、「 プ リセ プ タ ーは 周 り の 支援 者 か ら フィ ー ド バ ック を 与 え られ る 事 に より 、 プ リ セプ タ ー と して の 満 足 感 、達成 感 を 得 るこ と がで き る 。」( 畳 家(2000))と 、新 人 を 支 え る プリ セ プ タ ーへ の 支 援 の重 要 性 が 指摘 さ れ て いる 。ま た、「 新卒 者 に とっ て 先 輩 の経 験 が 頼 りで あ る 。一 方 先 輩 は 頼ら れ る こ とで 自 ら の 経験 に 自 信 を深 め 、 そ れが 新 た な モチ ベ ー シ ョン と な っ て後 輩 を 育 てる 力 に な る。」( 大 澤(2005))と 、指導 者 側 とし て の 先 輩看 護 師 の モチ ベ ー シ ョン に 新 人 看護 師 と の よい 関 係 性 が影 響 す る こと も 示 さ れて い る 。 そし て 、 看 護師 ( 主 任 以上 の 管 理 職)の 能力 向 上 に 役割 理 解や 自 己 啓 発が 重 要 で ある こ と も 指 摘 さ れ て いる( 阿部(2017))。
こ れら の 報 告 から は 、ANSS教 育 ス タ ッフ が そ れ ぞれ の 役 割 に求 め ら れ る能 力 を 向 上さ せ 、 そ れぞ れ の モ チベ ー シ ョ ンを 維 持 し、達 成 感 を 高め て い く ため に は、「教 育 ス タ ッフ と し て の 役割 理 解 を 促す こ と」「周 囲 の 教 育ス タ ッ フ か らの 支 援(フ ィ ー ド バ ック )」「 新人 看 護 師 か ら頼 ら れ る こと 」 を 意 識し た 環 境 づく り が 必 要で あ る と 言え る 。
2016 年 か ら 2018 年の X 大学 病 院 小児 病 棟 へ の 新人 看 護 師 の入 職 数 が 0~2 名 と非 常 に
少 なか っ た こ とは 前 述 し たが 、 今 回 の調 査 か ら 、ANSS の デメ リ ッ ト とし て 、 少 人数 の 新 人 看護 師 に 対 して 大 人 数 の病 棟 看 護 師全 員 に 役 割を 与 え て 教育 を 行 う 非効 率 さ も うか が え た。各 チ ー ム に 1~2名 の 新人 看 護 師 が配 属 さ れ る状 況 で あ れば 、教 育 スタ ッ フ の 達成 感 も 今 回と は 異 な る結 果 に な った と 予 測 され る 。病 棟 への 新 人 看 護師 配 属 数 が少 な い 場 合に は 、 ANSSか ら プ リセ プ タ ー シッ プ へ の 新人 教 育 体 制の 切 り 替 えも 検 討 す べき 課 題 と 言え る 。
12名 から 役 割 遂 行に お け る達 成 感 を 聞き 取 る 中 で、唯 一 の 肯定 的 要 素 は【 チ ー ム 外で の 支 援活 動 】 で あっ た 。 チ ーム 外 で も 新人 に 配 慮 して い る 教 育ス タ ッ フ がい る こ と は、 筆 者 を 含む 教 育 担 当者 と し て は 注 目 す べ きこ と で あ る。 メ ン タ ーに は 看 護 実践 モ デ ル とし て の 役 割も あ る ( 福井 (2008))。 そ のた め 、 新 人看 護 師へ の 支 援 だけ で な く 他の 教 育 ス タッ フ へ の還 元 も 意 識し て い る スタ ッ フ の 活動 を 称 賛 した り 全 体 に紹 介 し た りす る こ と も、 教 育 担 当者 と し て 重要 な 役 割 だと 考 え ら れた 。
な お、今 回指 摘 さ れ た【新 人 看 護師 と 関 わ る 機 会の 少 な さ】の 要 因 の 中に は 、新 人 と〈チ ー ムが 違 う 〉こ と だ け で なく 、新 人と の〈 勤務 シ フト が 違 う〉こ と も 含 まれ て い た( 表 4)。
X 大学 病 院 での ANSSに 関す る 過 去 の評 価 で は、「 教 育ス タ ッ フ と新 人 看護 師 の 勤 務調 整 」 が 管理・監 督 職 の 今 後 の 課題 と し て 指摘 さ れ て いた( 木下 ら(2011))。こ の 報 告と 同 様 に 、
【 新人 看 護 師 と関 わ る 機 会の 少 な さ 】が 目 立 つ 現体 制 に お いて も 、 教 育ス タ ッ フ が新 人 看 護 師と よ り 多 く関 わ る こ とが で き る よう な 勤 務 シフ ト の 調 整が 必 要 で ある こ と が あら た め て 確認 さ れ た 。教 育 担 当 者か ら 管 理 ・監 督 職 に この 結 果 を フィ ー ド バ ック し て 、 より 適 切 な 新人 教 育 体 制に つ な げ て い く こ と も重 要 で あ る。
5 )ANSS の デ メ リッ ト を メリ ッ ト に 変え る た め には
X 病 院小 児 病 棟 のエ ル ダ ー、 メ ン タ ー、 リ ー ダ ーの 感 じ た 困難 の 主 体 は【 情 報 共 有の 難 し さ】 と 【 新 人と の 希 薄 な関 係 性 】 であ り 、 い ずれ も 1対 1で 新 人 を 指導 す る プ リセ プ タ ー シッ プ で は 生じ に く い もの で あ る と考 え ら れ た。 そ の 同 病棟 の こ う した 状 況 は 、新 人 看 護 師 と 指 導 側 の 看 護 師 が 共 に 成 長 す る こ と を 目 的 と し た 教 育 体 制 で は 、「 ス タ ッ フ と の コ ミ ュニ ケ ー シ ョン 不 足 が 生じ る 、 教 育状 況 の 周 知が で き な い、 役 割 意 識が で き て いな か っ た 」な ど 、 指 導側 か ら の 否定 的 な 意 見が 出 る と いう 指 摘 ( 川原 ら (2015)) と 合 致 する 。
そ こで 、 こ う した 困 難 の 克服 に は 、 個人 内 レ ベ ル、 個 人 間 レベ ル 、 そ して 全 体 レ ベル で の 支援 が 必 要 であ る と 考 えら れ る 。 個人 内 レ ベ ルの 支 援 と して は 、 各 スタ ッ フ の 役割 理 解 を 促す 機 会 を 作る こ と な どが 、 個 人 間レ ベ ル の 支援 と し て は、 新 人 看 護師 の 情 報 共有 の 機 会 を増 や す こ とな ど が 、 そし て 全 体 レベ ル で の 支援 と し て は、 各 役 割 に求 め ら れ る指 導 を 例 示す る 機 会 を作 る こ と など が 挙 げ られ る 。
新 人看 護 師 の 指導 者 ( プ リセ プ タ ー やメ ン タ ー )が 抱 え る 困難 に 関 す る欧 米 の 文 献レ ビ ュ ーで は 、 仕 事の 過 負 荷 で指 導 者 が 辞め て し ま うこ と 、 プ リセ プ タ ー やメ ン タ ー とい っ た
役 割を 組 織 と して あ ま り 認 知 し な い (新 人 指 導 があ っ て も 日常 業 務 を 減ら し て く れな い 、 新 人指 導 を 業 務と し て 認 めて く れ な いな ど ) こ と、 指 導 範 囲に 関 す る ガイ ド ラ イ ンも 研 修 も な い こ と が 指 摘 さ れ て い る (Omansky(2010))。 今 回 の 調 査 で は 、 過 剰 な 仕 事 量 を 指 摘 す る声 が な か った こ と か ら、 今 後 の ANSSの 改 善に 向 け て、 業 務 量 の 調整 よ り も 新人 教 育 の 方向 性 の 決 定や チ ー ム メン バ ー の 役割 認 識 の 向上 を 優 先 して い く 必 要が あ る と 言え る 。 チ ー ム 支 援 型 の 新 人 看 護 師 教 育 の 充 実 に 向 け て 、「 メ ン バ ー 看 護 師 全 員 が 新 人 看 護 師 の 教 育 指導 を せ ざ る得 な い 状 況で は 、 責 任の 分 散 化 によ っ て 精 神的 な 余 裕 が生 じ 、 感 情的 側 面 が 顕在 化 す る 。感 情 的 側 面が 顕 在 化 する こ と に よっ て 新 人 看護 師 と の 関係 性 は 《 寄り 添 う 関 係》 に な る 。ま た 、 指 導す る も の が特 定 し て いな い 事 に より 、 メ ン バー 間 に お ける 《 補 完 の関 係 》が 形成 さ れ る 。こ の 2つの 関 係 が チ ーム の 成 長 に深 く 関 係 して い る。」と 、メ ン バ ー全 員 で 新 人に 関 わ る こと の 肯 定 的側 面 が 指 摘さ れ て い る( 西 田 (2014))。 チ ーム で 新 人 を教 育 す る こと で 各 メ ンバ ー の 責 任が 分 散 す るこ と は デ メリ ッ ト と 捉え ら れ が ちで あ る が 、責 任 の 分 散に よ る メ リッ ト も あ るこ と を 教 育担 当 者 が 他の チ ー ム メン バ ー に 積極 的 に 伝 えて い く こ とも 重 要 で ある と 考 え られ た 。
6 )研 究 の 限 界
ま ず、 本 研 究 のイ ン タ ビ ュー 調 査 対 象が 、 単 施 設の 小 児 病 棟に 属 す る 教育 ス タ ッ フの 一 部 に限 ら れ た 点で あ る 。 その た め 、ANSS を 採 用す る 医 療 施設 の 小 児 病棟 全 体 へ の一 般 化 に は注 意 が 必 要で あ る 。ま た 、 小 児病 棟 の ANSS教 育 ス タ ッフ が 教 育 担当 者 に 求 める 支 援 を より 正 確 に 把握 す る た めに は 、 小 児病 棟 の 全 教育 ス タ ッ フを 対 象 と した ア ン ケ ート 調 査 な ども こ れ か ら行 っ て い く必 要 が あ る。 そ し て 、教 育 ス タ ッフ の 指 導 を受 け て い る新 人 看 護 師が 求 め る 指導 内 容 に つい て も 今 後検 証 し て いく 必 要 も ある 。
次 に、 小 児 病 棟以 外 の 診 療科 と の 比 較を し て い ない 点 が 挙 げら れ る 。 小児 病 棟 で の新 人 教 育の 困 難 を より 正 確 に 分析 し て い くた め に は 、小 児 病 棟 でも そ れ 以 外の 病 棟 で も ANSS 教 育ス タ ッ フ とし て の 新 人教 育 経 験 を持 つ 看 護 師へ の ア プ ロー チ が 必 要で あ る 。
ま た、 今 回 (2018年 度 ) の ANSSに よ る指 導 を 受け た 1名 の新 人 看 護 師の 、 技 術 面・
精 神面 で の 成 長の 評 価 は 看護 部 で 行 われ た が 、 その 結 果 は 非公 表 で あ る。 今 後 は 、教 育 ス タ ッフ の 指 導 の成 果 と も 言え る 、 被 指導 者 で あ る新 人 看 護 師の 成 長 も 、小 児 病 棟 で確 認 ・ 評 価し て い く こと が 重 要 だと 考 え ら れる 。
6 .結 論
「 全員 参 加 型 」の 新 人 看 護師 教 育 シ ステ ム ANSS を 採 用 す るX 病院 小 児病 棟 の 教 育ス タ ッフ が 新 人 看護 師 と の 関わ り で 感 じる 困 難 の 調査 か ら 、 以下 の こ と が明 ら か に なっ た 。
( 1)エ ル ダ ーは 【 指 導 範囲 の 不 明 確さ 】 と 【 指導 機 会 の 欠如 】 に 、 メン タ ー は 【情 報 共 有 の難 し さ 】 と【 指 導 能 力の 不 足 】 に、 リ ー ダ ーは 【 新 人 との 希 薄 な 関係 性 】【 メ ン バー へ の 支 援活 動 の 難 しさ 】【情 報 共 有 の難 し さ】【 指導 範 囲 の 不明 確 さ】【 指導 能 力の 不 足 】 に困 難 を 感 じて い た 。
( 2)多 く の 教育 ス タ ッ フの チ ー ム での 役 割 遂 行の 達 成 感 が低 く 、 そ の背 景 に は 入職 し た 新 人看 護 師 が 少な い こ と によ る 【 新 人看 護 師 と 関わ る 機 会 の少 な さ 】 と、 チ ー ム 内 で の指 導 の 責 任の 所 在 が 不明 確 な ま まで の 新 人 指導 の 責 任 の分 散 が あ った 。
( 3)ANSS教育 ス タ ッ フの 感 じ る 困難 の 克 服 には 、個 人内 レ ベ ル(役 割 理 解 の促 進 )、個 人 間レ ベ ル( 新 人 の 情報 共 有の 強 化)、全体 レ ベ ル( 各 役 割に 求 め ら れる 指 導の 例 示 ) で の支 援 の 必 要性 が 示 唆 され た 。
謝 辞
本 研究 に 協 力 いた だ い た X病 院小 児 病 棟 の皆 様 に 謝 意 を 表 する 。
引 用・ 参 考 文 献
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福 井ト シ 子 ( 監)(2008).『ア プ リ コ ット ナ ー ス サポ ー ト シ ステ ム 』. メ ディ カ 出 版 . グ レッ ク 美 鈴 ,八 木 哉 子 ,玉 田 雅 美 ,前 田 千 晶 ,川 戸 美 智 子, 林 千 冬 ,鶴 嶋 弘 子 ,小 林 由
香 ,河 村 圭 美 ,岡 山 智 子 ,田 中 朋 子 (2016).「 新人 看 護 師 教育 に お け る教 育 担 当 者の 役 割 遂行 の た め の支 援 」『 神 戸市 看 護 大 学紀 要 』20,5-13.
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