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雑誌名 同志社法學

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(1)

アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産 時の劣後化 : 連邦倒産法五一〇条(b)項の意義・再

著者 藤林 大地

雑誌名 同志社法學

巻 66

号 2

ページ 255‑416

発行年 2014‑07‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014658

(2)

   同志社法学 六六巻二号五三二五五

――連邦倒産法五一〇条(b)項の意義・再論――

           

 

         Slain & Kripke

     

    Slain & Kripke      Slain & Kripke

    

     H.R. 8200

    

(3)

   同志社法学 六六巻二号五四二五六

    

     Slain & Kripke

  

    

     

     

   

  ﹁

     

    

     

     

     

     

    

     

     

     

  

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(4)

   同志社法学 六六巻二号五五二五七    

    

     

    

     

     

     

    

    

     

     

    

    

 

はじめに

一  序論   上場会社の不実開示によって高騰した価格で株式を取得した投資者の対会社損害賠償債権は、当該会社が倒産した場合にはどのように処遇されるべきであろうか。

(5)

   同志社法学 六六巻二号五六二五八

  不実開示による損失の負担という事後的な観点からは、次のような選択となる。当該損害賠償債権を一般債権とする場合、当該会社に対する一般債権の総額がその分だけ増加するため、通例的な意味における一般債権者の利益は希釈化されることになる。すなわち、この場合、不実開示による投資者の損失は、当該投資者に加えて一般債権者によっても負担されることになる。これに対して、当該債権を一般債権に劣後する債権とする場合、損失は、一般債権者によっては負担されず、当該投資者および同じ劣後的地位にあるその他の権利者によって負担されることになる。

  この問題は、アメリカでは、連邦倒産法の一九七八年の大改正時に制定された五一〇条(b)項 1

によって規律されている。すなわち、五一〇条(b)項は、①債務者またはその関係者の証券の取得または売却の取消しから生じた債権、および、②債務者またはその関係者の証券の取得または売却から生じた損害賠償債権は、当該証券が普通株式である場合は普通株式と同順位へと劣後化され、また、当該証券が普通株式以外の場合は当該証券が表章する債権(

cla im

)または持分(

in te re st

)の順位よりも一順位下位へと劣後化されると規定している 2

(なお、以下では①や②の債権について単に﹁証券に係る債権﹂と言及することがある)。したがって、損害賠償債権はその性質上一般債権であるが、冒頭の例の株式が普通株式であれば、五一〇条(b)項によって普通株式と同順位になるように劣後化されることとなる。そして、倒産手続きにある会社が当該損害賠償債権が存在しなくても債務超過である場合、冒頭の例の投資者に対する分配は絶対優先原則によってゼロということになる。

  五一〇条(b)項の合理性あるいは同規定の拡張的な解釈については従来から批判があるが、二〇〇五年の連邦倒産法改正においてもその対象とはならなかった 3

(6)

   同志社法学 六六巻二号五七二五九 二  本稿の目的   この連邦倒産法五一〇条(b)項について筆者は既に検討したことがあり 4

、同規定は、直接的には債権の順位を規律しているが、間接的には株主等 5

の債権の存在が企業金融に与える悪影響を解消する機能を有している可能性を示せたのではないかと考えている。

  これに対して本稿では、次の理由から同規定の意義を改めて論じることにしたい。   第一に、前稿では五一〇条(b)項の立法史や解釈を検討したが、理解や調査が不十分な記述 6

が振り返れば散見される。また、五一〇条(b)項の機能についても、部分的にしか検討出来ておらず、また、債務者の関係者の証券に係る債権の劣後化の意義を検討出来ていなかった。そこで、本稿では、五一〇条(b)項の立法史や機能について包括的に再論することとしたい。

  第二に、株主等が有する債権が会社倒産時にどのように処遇されるべきかという問題は、我が国では、冒頭に挙げた上場会社の不実開示による損害賠償債権 7

や株主総会決議等によって適法に確定した具体的剰余金配当請求権 8

に関して指摘されてきた。これに対してアメリカでは、そのような債権だけでなく 9

、例えば、株式買取請求権の行使等によって生じた自己株式取得対価債権の処遇や、株式の不発行による損害賠償債権の処遇、株式の有利発行による損害賠償債権の処遇、証券取引に関連して締結された種々の契約に係る債権の処遇、社債の取引によって生じた損害賠償債権なども、五一〇条(b)項の適用対象として処理されている。

  これに対して前稿では、五一〇条(b)項の関する判例の一部しか検討していなかった ((

。また、同規定に関しては、前稿執筆後に幾つかの重要な判例が現れている ((

。そこで、本稿では、五一〇条(b)項に関する種々の判例を検討することで、同規定が規律する領域の広がり、ひいては、株主等が有する債権の会社倒産時の処遇という問題の広がりを示

(7)

   同志社法学 六六巻二号五八二六〇

すことにしたい。

  第三に、五一〇条(b)項の適用を検討した判例の多くは債権の劣後化を命じるものであるが、劣後化を否定した判例も一定数存在することとなっている。それらは何れも、株主と債権者のリスク・リターンの期待の相違という五一〇条(b)項の主たる根拠、および、株主の出資によるエクイティ・クッションに対する債権者の信頼という付随的根拠に照らして判断されたものである。したがって、それらの判例を検討することにより、五一〇条(b)項に基づく劣後化の外延を明らかにすることができる。とりわけ前者の根拠との関係では、どのような場合にある者は﹁株主﹂と評価されるのか、あるいは、株主としての﹁リスク﹂や﹁リターン﹂とは如何なるものか、といった基礎的な問題について示唆を得ることが出来ると考えられる。

  以上の作業は、株主等の債権は劣後化されるべきか、という我が国における問題に直接回答するものではない。もっとも、五一〇条(b)項の立法根拠や機能を明らかにし、また同規定に関する判例を総合的に検討することによって、五一〇条(b)項に関する言わば地図 (₂

を作成しておくことは、株主等の債権の劣後化の是非の検討や、債権の劣後化の肯定という結論を採用した場合に現出する問題の把握において、基礎的作業としての意義があると思われる。

  株主等の債権の劣後化の是非や具体的な制度内容について、違法行為の抑止といった事前的な観点等を含めて論じるのは別稿となる。本稿は、そのような点を論じる先行研究 (₃

とは内容が異なることとなる。

三  本稿の内容・構成   本稿の内容・構成は、次のとおりである。   第一章では、五一〇条(b)項の制定の基礎となった

Sla in & K rip ke

の議論を検討し、株主等の債権は劣後化される

(8)

   同志社法学 六六巻二号五九二六一 べきという彼らの主張は、﹁株主は大きなリターンを把握し得るのであるから、一般債権者よりも大きなリスクを負担すべきである﹂という規範的価値判断を背景としていることを明らかにする。次に、立法資料を検討し、五一〇条(b)項は基本的には同様の規範的価値判断に基づいて制定されていることを指摘する。その一方で、五一〇条(b)項の具体的規律については、①

Sla in & K rip ke

の議論とは異なる内容(劣後的証券に係る債権のみならず、一般債権等の上位の権利を表章する証券に係る債権も劣後化されること、および、劣後化後の債権の順位について、普通株式に係る債権は普通株式の順位へと劣後化・それ以外の証券に係る債権は当該証券に対して劣後化されること)、および、②彼らの議論を超えた内容(﹁債務者の関係者の証券﹂の取得または売却に係る債務者に対する取消し債権・損害賠償債権の劣後化)が組み込まれていること、そして、その趣旨について立法資料は沈黙していることを明らかにする。

  第二章では、まず、五一〇条(b)項の構造について、証券の取得または売却に係る取消し債権および損害賠償債権の劣後化を定めていること、﹁証券﹂概念は広範なものとして定義されていること、劣後化される債権は普通株式の場合を除き当該証券が表章する債権または持分に対して劣後すること、そして、劣後化は強制的なものであることを明らかにする。その上で、株主等の債権の劣後化は、一般債権者等へのリスク移転の阻止のみならず、倒産手続きの円滑性・迅速性の確保や与信の収縮の抑止という間接的な機能を有していることを論じる。さらに、前述の①

Sla in & K rip ke

の議論とは異なる内容は、特に一般債権を表章するデット証券に係る債権との関係で、財務諸表の信頼性の確保による取引債権者等の信頼の保護という機能を発揮するものであること、また、②彼らの議論を超えた内容は、それらの機能が発揮される場面を拡張するものであることを指摘する。

  第三章では、まず、証券の取得または売却﹁から生じた﹂債権という文言の意義について、

Sla in & K rip ke

の議論に照らして解釈がなされることによって、判例法上、債権の劣後化の当否について、証券の取得または売却と債権との間

(9)

   同志社法学 六六巻二号六〇二六二

に因果関係が存在し、かつ、五一〇条(b)項の二つの劣後化根拠の少なくとも一方が妥当するかという基準が定立されていることを指摘する。そして、株主と債権者のリスク・リターンの期待の相違という根拠の帰結として、投資判断時点で株主としてのリターンの期待が肯定され、株主という地位ゆえに被ることになり得るあらゆる損失のリスクを負担することが求められていることを明らかにする。その上で、債権の劣後化を否定した判例を素材として、﹁株主としてのリターン﹂の意義を検討する。

  このように、本稿の目的における第一の点は、第一章および第二章において検討し、第二および第三の点は、第三章において検討する。

  なお、本稿では、持分(

in te re st ; in te re st ri gh t; eq uit y i nt er es t

)や株式、エクイティといった言葉は、五一〇条(b)項による劣後化後の順位との関係で証券が普通株式であるか否かが問題となる場合を除き、互換的なものとして用いている。また、ノートや約束手形、債務証書といった言葉も、その表章する権利が劣後債 (₄

である場合を除き、互換的なものとして用いている。

The Bankruptcy Code 1) 

§510b, 11 U.S.C.

§510b. 2) 

稿 12))

2506, 461 F.3d 1In, 257 n.1202c.d, ir. e Rombro v. Dufrayn.ieIn re Med Diversifd C3) 

)。 4稿)  5) 

(10)

   同志社法学 六六巻二号六一二六三

・Slakerip K &in6、こ稿) 

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︺﹂)、﹁︿︺﹂)、)、 -八)、 8寿) 

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稿 12)  )、 13) 

(11)

   同志社法学 六六巻二号六二二六四

59)( 14) 

-九

第一章  連邦倒産法五一〇条(b)項の立法史

序論

  本章では、まず、五一〇条(b)項の制定の基礎となった

Sla in & K rip ke

の議論を検討し、株式等に係る債権は劣後化されるべきという彼らの主張は、リスクとリターンは均衡すべきという規範的価値判断に基づくものであることを明らかにする。次に、五一〇条(b)項の立法資料を検討し、同規定も同様の規範的価値判断に基づいていることを指摘する。その一方で、五一〇条(b)項の具体的内容については、

Sla in & K rip ke

の議論とは異なる点等があるが、立法資料は特に説明を行っていないことを明らかにする。

  すなわち、①

Sla in & K rip ke

の議論とは異なる内容(劣後的証券に係る債権のみならず、一般債権等の上位の権利を表章する証券に係る債権も劣後化されること、および、劣後化後の債権の順位について、普通株式に係る債権は普通株式の順位へと劣後化・それ以外の証券に係る債権は当該証券に対して劣後化されること)、および、②彼らの議論を超えた内容(﹁債務者の関係者の証券﹂の取得または売却に係る債務者に対する取消し債権・損害賠償債権の劣後化)が組み込まれていること、そして、その趣旨について立法資料は沈黙していることを指摘する。

  このような五一〇条(b)項の規律の意義については、第二章の第二節から第四節で検討する。

(12)

   同志社法学 六六巻二号六三二六五 第一節 

Slain & Kripke

の議論第一款  議論の背景   第二巡回区控訴裁判所の一九七八年の

St irl in g H om ex C or p.

判決 1

まで、不実開示によって株式を取得した者の取消し債権や損害賠償債権は、一八九八年連邦倒産法 2

の会社更生手続き(

C or po ra te R eo rg an iz at io n

)において、その額の一部について一般債権として分配を行うという形で実務上処理されており 3

、裁判所も総合考慮の結果として、そのような更生計画を﹁公正・衡平﹂なものとして認可していた 4

  このような実務的処理には、次のような背景が存在した。すなわち、そのような債権の処遇について明確な司法判断は示されていなかったところ 5

、会社更生手続きについて助言する権限を有していたSEC 6

は、かかる債権は一般債権であるという立場を採っていた 7

。そして、更生管財人は、倒産手続きの迅速性 8

、さらに、おそらくSECの立場を考慮して 9

、かかる債権の一部について分配を行う更生計画を立案していた。

第二款 

Slain & Kripke

のリスク配分に関する規範的議論 ((

  このような状況に対して、一九七三年に

Sla in & K rip ke

は、﹁倒産時、投資の回収を求める株主は、債権者の債権が完全に満足を得るまでは分配を受けることができない﹂という絶対優先原則(

ab so lu te p rio rit y ru le

)が多くの議論を経て確立されており、また、証券規制法等は訴権の存在を定めているだけであり、株主や劣後債投資者といった下位の権利者 ((

について、訴権を有する場合に絶対優先原則を無視する根拠は明らかではないと批判した (₂

  すなわち、彼らは、株主等の債権の優先順位は株主・債権者間のリスク配分の問題であると指摘し、株式の発行の場面を取り上げて、配分が問題となるリスクを①何らかの原因による事業の倒産リスクと②証券の違法な発行のリスクに

参照

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