アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産 時の劣後化 : 連邦倒産法五一〇条(b)項の意義・再 論
著者 藤林 大地
雑誌名 同志社法學
巻 66
号 2
ページ 255‑416
発行年 2014‑07‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014658
( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号五三二五五
ア メ リ カ に お け る 株 主 等 の 損 害 賠 償 債 権 の 会 社 倒 産 時 の 劣 後 化
――連邦倒産法五一〇条(b)項の意義・再論――
藤 林 大 地
目次
はじめに
第一章 連邦倒産法五一〇条(b)項の立法史 第一節 Slain & Kripkeの議論
第一款 議論の背景
第二款 Slain & Kripkeのリスク配分に関する規範的議論 第三款 Slain & Kripkeの議論の構造
第二節 一九七八年連邦倒産法改正における五一〇条(b)項の制定
第一款 H.R. 8200の劣後化規定および下院司法委員会報告
第二款 五一〇条(b)項の内容と下院司法委員会報告の逐条解説の齟齬
( )同志社法学 六六巻二号五四アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化二五六
第三節 一九八四年連邦倒産法改正
第四節 小括︱︱Slain & Kripkeの議論と五一〇条(b)項の同異
第二章 連邦倒産法五一〇条(b)項の構造と機能
第一節 五一〇条(b)項の構造
第一款 証券の取得または売却に係る取消し債権および損害賠償債権の強制的な劣後化
第二款 劣後化後の債権の順位
第三款
﹁証券﹂の意義
第四款 倒産法におけるデットとエクイティの峻別
第二節 債権の劣後化の間接的機能
第一款 債権の認容の判断の省略
第二款 第一一章手続きにおける絶対優先原則・クラムダウン制度と五一〇条(b)項
第三款 証券訴訟に対する影響
第四款 倒産手続きの円滑化・与信収縮の抑止
第三節 デット証券の取得または売却に係る債権の劣後化
第一款 問題の所在︱︱原権利に対する劣後化の帰結
第二款 デット証券に係る債権の劣後化に関する判例
第三款 原権利に対する劣後化の機能
第四節
﹁ま後劣の権債る係に却売はた得債取の﹂券証の者係関の者務化
第一款
﹁劣順の権債の後化後び関よお義意の﹂者係位
第二款
﹁係意の化後劣の権債るに債﹂券証の者係関の者務義
第五節 小括︱︱五一〇条(b)項の機能
( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号五五二五七 第三章 五一〇条(b)項の適用対象債権に関する判例法︱︱株主としてのリスク・リターンの意義
第一節 証券の取得または売却﹁から生じた﹂債権の意義︱︱因果関係+劣後化根拠適合性基準
第一款 初期の判例
第二款 連邦控訴裁判所の判例
第三款 連邦控訴裁判所の判例法の総括
第四款 五一〇条(b)項の適用例︱︱株主が負担すべきリスクの具体例
第五款 自己株式取得による対価支払いに係る債権の劣後化︱︱﹁損害賠償﹂債権の意義
第六款 判決債権・和解債権の劣後化
第二節 五一〇条(b)項による劣後化が否定された事案
第一款 株主としてのリターンの期待が否定された事例︱︱株主としてのリターンの意義
第二款 自己株式の取得対価として発行されたノート上の債権
第三款 先例的価値の疑わしい判断
第三節 小括︱︱五一〇条(b)項における株主としてのリスク・リターンの意義
結びに代えて
はじめに
一 序論 上場会社の不実開示によって高騰した価格で株式を取得した投資者の対会社損害賠償債権は、当該会社が倒産した場合にはどのように処遇されるべきであろうか。
( )同志社法学 六六巻二号五六アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化二五八
不実開示による損失の負担という事後的な観点からは、次のような選択となる。当該損害賠償債権を一般債権とする場合、当該会社に対する一般債権の総額がその分だけ増加するため、通例的な意味における一般債権者の利益は希釈化されることになる。すなわち、この場合、不実開示による投資者の損失は、当該投資者に加えて一般債権者によっても負担されることになる。これに対して、当該債権を一般債権に劣後する債権とする場合、損失は、一般債権者によっては負担されず、当該投資者および同じ劣後的地位にあるその他の権利者によって負担されることになる。
この問題は、アメリカでは、連邦倒産法の一九七八年の大改正時に制定された五一〇条(b)項 )1
(によって規律されている。すなわち、五一〇条(b)項は、①債務者またはその関係者の証券の取得または売却の取消しから生じた債権、および、②債務者またはその関係者の証券の取得または売却から生じた損害賠償債権は、当該証券が普通株式である場合は普通株式と同順位へと劣後化され、また、当該証券が普通株式以外の場合は当該証券が表章する債権(
cla im
)または持分(in te re st
)の順位よりも一順位下位へと劣後化されると規定している )2((なお、以下では①や②の債権について単に﹁証券に係る債権﹂と言及することがある)。したがって、損害賠償債権はその性質上一般債権であるが、冒頭の例の株式が普通株式であれば、五一〇条(b)項によって普通株式と同順位になるように劣後化されることとなる。そして、倒産手続きにある会社が当該損害賠償債権が存在しなくても債務超過である場合、冒頭の例の投資者に対する分配は絶対優先原則によってゼロということになる。
五一〇条(b)項の合理性あるいは同規定の拡張的な解釈については従来から批判があるが、二〇〇五年の連邦倒産法改正においてもその対象とはならなかった )3
(。
( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号五七二五九 二 本稿の目的 この連邦倒産法五一〇条(b)項について筆者は既に検討したことがあり )4
(、同規定は、直接的には債権の順位を規律しているが、間接的には株主等 )5
(の債権の存在が企業金融に与える悪影響を解消する機能を有している可能性を示せたのではないかと考えている。
これに対して本稿では、次の理由から同規定の意義を改めて論じることにしたい。 第一に、前稿では五一〇条(b)項の立法史や解釈を検討したが、理解や調査が不十分な記述 )6
(が振り返れば散見される。また、五一〇条(b)項の機能についても、部分的にしか検討出来ておらず、また、債務者の関係者の証券に係る債権の劣後化の意義を検討出来ていなかった。そこで、本稿では、五一〇条(b)項の立法史や機能について包括的に再論することとしたい。
第二に、株主等が有する債権が会社倒産時にどのように処遇されるべきかという問題は、我が国では、冒頭に挙げた上場会社の不実開示による損害賠償債権 )7
(や株主総会決議等によって適法に確定した具体的剰余金配当請求権 )8
(に関して指摘されてきた。これに対してアメリカでは、そのような債権だけでなく )9
(、例えば、株式買取請求権の行使等によって生じた自己株式取得対価債権の処遇や、株式の不発行による損害賠償債権の処遇、株式の有利発行による損害賠償債権の処遇、証券取引に関連して締結された種々の契約に係る債権の処遇、社債の取引によって生じた損害賠償債権なども、五一〇条(b)項の適用対象として処理されている。
これに対して前稿では、五一〇条(b)項の関する判例の一部しか検討していなかった )((
(。また、同規定に関しては、前稿執筆後に幾つかの重要な判例が現れている )((
(。そこで、本稿では、五一〇条(b)項に関する種々の判例を検討することで、同規定が規律する領域の広がり、ひいては、株主等が有する債権の会社倒産時の処遇という問題の広がりを示
( )同志社法学 六六巻二号五八アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化二六〇
すことにしたい。
第三に、五一〇条(b)項の適用を検討した判例の多くは債権の劣後化を命じるものであるが、劣後化を否定した判例も一定数存在することとなっている。それらは何れも、株主と債権者のリスク・リターンの期待の相違という五一〇条(b)項の主たる根拠、および、株主の出資によるエクイティ・クッションに対する債権者の信頼という付随的根拠に照らして判断されたものである。したがって、それらの判例を検討することにより、五一〇条(b)項に基づく劣後化の外延を明らかにすることができる。とりわけ前者の根拠との関係では、どのような場合にある者は﹁株主﹂と評価されるのか、あるいは、株主としての﹁リスク﹂や﹁リターン﹂とは如何なるものか、といった基礎的な問題について示唆を得ることが出来ると考えられる。
以上の作業は、株主等の債権は劣後化されるべきか、という我が国における問題に直接回答するものではない。もっとも、五一〇条(b)項の立法根拠や機能を明らかにし、また同規定に関する判例を総合的に検討することによって、五一〇条(b)項に関する言わば地図 )(₂
(を作成しておくことは、株主等の債権の劣後化の是非の検討や、債権の劣後化の肯定という結論を採用した場合に現出する問題の把握において、基礎的作業としての意義があると思われる。
株主等の債権の劣後化の是非や具体的な制度内容について、違法行為の抑止といった事前的な観点等を含めて論じるのは別稿となる。本稿は、そのような点を論じる先行研究 )(₃
(とは内容が異なることとなる。
三 本稿の内容・構成 本稿の内容・構成は、次のとおりである。 第一章では、五一〇条(b)項の制定の基礎となった
Sla in & K rip ke
の議論を検討し、株主等の債権は劣後化される( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号五九二六一 べきという彼らの主張は、﹁株主は大きなリターンを把握し得るのであるから、一般債権者よりも大きなリスクを負担すべきである﹂という規範的価値判断を背景としていることを明らかにする。次に、立法資料を検討し、五一〇条(b)項は基本的には同様の規範的価値判断に基づいて制定されていることを指摘する。その一方で、五一〇条(b)項の具体的規律については、①
Sla in & K rip ke
の議論とは異なる内容(劣後的証券に係る債権のみならず、一般債権等の上位の権利を表章する証券に係る債権も劣後化されること、および、劣後化後の債権の順位について、普通株式に係る債権は普通株式の順位へと劣後化・それ以外の証券に係る債権は当該証券に対して劣後化されること)、および、②彼らの議論を超えた内容(﹁債務者の関係者の証券﹂の取得または売却に係る債務者に対する取消し債権・損害賠償債権の劣後化)が組み込まれていること、そして、その趣旨について立法資料は沈黙していることを明らかにする。第二章では、まず、五一〇条(b)項の構造について、証券の取得または売却に係る取消し債権および損害賠償債権の劣後化を定めていること、﹁証券﹂概念は広範なものとして定義されていること、劣後化される債権は普通株式の場合を除き当該証券が表章する債権または持分に対して劣後すること、そして、劣後化は強制的なものであることを明らかにする。その上で、株主等の債権の劣後化は、一般債権者等へのリスク移転の阻止のみならず、倒産手続きの円滑性・迅速性の確保や与信の収縮の抑止という間接的な機能を有していることを論じる。さらに、前述の①
Sla in & K rip ke
の議論とは異なる内容は、特に一般債権を表章するデット証券に係る債権との関係で、財務諸表の信頼性の確保による取引債権者等の信頼の保護という機能を発揮するものであること、また、②彼らの議論を超えた内容は、それらの機能が発揮される場面を拡張するものであることを指摘する。第三章では、まず、証券の取得または売却﹁から生じた﹂債権という文言の意義について、
Sla in & K rip ke
の議論に照らして解釈がなされることによって、判例法上、債権の劣後化の当否について、証券の取得または売却と債権との間( )同志社法学 六六巻二号六〇アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化二六二
に因果関係が存在し、かつ、五一〇条(b)項の二つの劣後化根拠の少なくとも一方が妥当するかという基準が定立されていることを指摘する。そして、株主と債権者のリスク・リターンの期待の相違という根拠の帰結として、投資判断時点で株主としてのリターンの期待が肯定され、株主という地位ゆえに被ることになり得るあらゆる損失のリスクを負担することが求められていることを明らかにする。その上で、債権の劣後化を否定した判例を素材として、﹁株主としてのリターン﹂の意義を検討する。
このように、本稿の目的における第一の点は、第一章および第二章において検討し、第二および第三の点は、第三章において検討する。
なお、本稿では、持分(
in te re st ; in te re st ri gh t; eq uit y i nt er es t
)や株式、エクイティといった言葉は、五一〇条(b)項による劣後化後の順位との関係で証券が普通株式であるか否かが問題となる場合を除き、互換的なものとして用いている。また、ノートや約束手形、債務証書といった言葉も、その表章する権利が劣後債 )(₄(である場合を除き、互換的なものとして用いている。
(
The Bankruptcy Code 1)
§510b, 11 U.S.C. ()
( §510b.() 2を求償債権についても劣後化規よ定しているが、後述(脚注びお) の五一〇条(b)項は、本文①権または②の債権に係る補償債(
( は。いなげ上り取で稿本ら 12))か由理の
( 2506, 461 F.3d 1In, 257 n.1202c.d, ir. e Rombro v. Dufrayn.ieIn re Med Diversifd C3() )()
( 五三巻七号一二頁学(二〇一二年)。六 4社対法史と解釈︱︱﹂同志社法会のの者資投る係に等示開実不﹁稿拙立項損遇害賠償請求債権の倒産法上の処︱)︱米国連邦) 産法五一〇条(b倒 5者く、デット証券の取引もで含む趣旨で用いているなけ) は﹁株主等﹂という言葉、だエクイティ証券の取引者。
( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号六一二六三 (
・Slakerip K &in6め(改をれ、こている掲拙稿前た注(4)一四めでた構とりわけ、の議論の造っの把握は不正確) あ二
・一めだため、関連する記述を改いて進る(拙稿前掲注(4)一五んが参立節査照)。また、法第史についても調一 -一・章一第稿本びよお頁四四
-一五六頁・一六一
( ・)。節三第・節二第章一第稿本びよお -一六頁三 7の議事録:開示制度問回題(2)ほか﹂八)五) ﹁証券取引法研究会証第券取引法研究会(四
( 事七四一一例判商三・融金日〇月二号二四券頁。参)件事照證、山(頁九四一 と損害賠償責︺﹂任︹上商事下法落開の価株るぐめを示切適不﹀会談一務頁九照一年三〇成平判地京東、たま。一参六年〇一〇二(頁〇一、)六号 ・座井注(4)、黒沼悦郎=永智﹁︿亮=中村慎二=掲塚洋之石前いス五二トンメトベ一ンイ︺﹂六︹て藤巻号に一後)、年二七九(一頁一一、頁二〇つ ―法﹂、頁〇三号三二四五務法事商ム学ウジポンシ正改法引取券証﹁会〇引三経正改の法引取券証﹁会究研法取三券証)、年〇七九一(頁四、頁七済 -八)、四頁(昭和四五年七月日所、日本証券経済研究六 8遷念﹃企業法の変﹄寿一二五頁、一三記喜) の神田秀樹﹁株式不生思議﹂前田庸先〇
( -一三二頁(有斐閣、二〇〇九年)。
( て定法も存する。カナダ法につい在はこ、。るととする別討検で稿す お、カナはダで、。こないるあが性能可るてれさ問の例題た制たま、し在存が処判っを扱てしと題問の化後劣理てのしと題問の上法社会州、は係関 9b(条〇一金五のへ権求請当配限余知なお、筆者のる剰項り、具体的)) の手権求請当配金余剰的体具とき続産適倒。いなし在存は例るす関に用判
・八そ、い伴にとこた評っなとから明がの価関掲〇二)4(注前を稿拙(たし正修係 10evGeeSta enlに例料資た得に後のそはに中の判おたしになお、討前稿検てい等たよ決のがある。すなわち、) 判にっついては、事実め改を価もて評
( ―三五二〇六頁および本第稿章一)。照参・款第・節二第 an・ginerag WericmA更、同判決の位置付けを変たし伴(拙稿〇前掲注(4二)い改に実とた、判決についても、事ま関こに対する評価を係めた -二)。・九頁および本稿第二章第照三節・第二款〇第三目参・ 111720KIT digital497 B.R. 0CBankr. S.D. N.Y. 2013Lehmir. 12d FCIT Group2479anedx. .A393ppて重要な、))ものとしは(、(判) ())、決決(判 Brothers判決(503 B.R. 778(Bankr. S.D. N.Y. 2014))などが現れている。(
( ゲ権債のーパーキーの扱等人受引や者部内をトうでもいなげ上り取は。稿る本であのため、 い規を化後劣定もて償つに権債求びよお権てし社いは償会の等員役、くなでる等主株、はれこ、が債補売たは、却から生じ損ま害賠償債権に係るた 12はたま得取の券証その者係関のbは)五一〇条(却項たは、債務者ま売) の者得取の券証の者係関のそはたま務取債、びよお、債たじ生らかし消権 政〇二(頁三六号八五三一、頁八一〇号七五三一トスリュジ﹂非是の〇八後の法代世新﹂法産倒と任責事民社年会るす関に示開実不﹁元藤後)、化 13) 示倒と任責事民の社会るす関に開法実不﹁元藤後、てしと究研行先産(る損けおに続手産倒の権求請償賠害る上す対に社会の家資投︱︱)下・劣
( )同志社法学 六六巻二号六二アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化二六四
策学研究二号三二九頁(二〇〇九年)参照。また、加藤貴仁﹁流通市場における不実開示と投資家の損害﹂新世代法政策学研究一一号三〇三頁、三二七頁・脚注(
( 59)(二〇一一年)も参照。 14融債に関する法的問題﹂金法劣務事情一一二六号六頁、後﹁) にアメリカにおける劣後債つ樹いては、岩村充=神田秀六
-九頁(一九八六年)参照。
第一章 連邦倒産法五一〇条(b)項の立法史
序論
本章では、まず、五一〇条(b)項の制定の基礎となった
Sla in & K rip ke
の議論を検討し、株式等に係る債権は劣後化されるべきという彼らの主張は、リスクとリターンは均衡すべきという規範的価値判断に基づくものであることを明らかにする。次に、五一〇条(b)項の立法資料を検討し、同規定も同様の規範的価値判断に基づいていることを指摘する。その一方で、五一〇条(b)項の具体的内容については、Sla in & K rip ke
の議論とは異なる点等があるが、立法資料は特に説明を行っていないことを明らかにする。すなわち、①
Sla in & K rip ke
の議論とは異なる内容(劣後的証券に係る債権のみならず、一般債権等の上位の権利を表章する証券に係る債権も劣後化されること、および、劣後化後の債権の順位について、普通株式に係る債権は普通株式の順位へと劣後化・それ以外の証券に係る債権は当該証券に対して劣後化されること)、および、②彼らの議論を超えた内容(﹁債務者の関係者の証券﹂の取得または売却に係る債務者に対する取消し債権・損害賠償債権の劣後化)が組み込まれていること、そして、その趣旨について立法資料は沈黙していることを指摘する。このような五一〇条(b)項の規律の意義については、第二章の第二節から第四節で検討する。
( )アメリカにおける株主等の損害賠償債権の会社倒産時の劣後化同志社法学 六六巻二号六三二六五 第一節
Slain & Kripke
の議論第一款 議論の背景 第二巡回区控訴裁判所の一九七八年のSt irl in g H om ex C or p.
判決 )1(まで、不実開示によって株式を取得した者の取消し債権や損害賠償債権は、一八九八年連邦倒産法 )2
(の会社更生手続き(
C or po ra te R eo rg an iz at io n
)において、その額の一部について一般債権として分配を行うという形で実務上処理されており )3(、裁判所も総合考慮の結果として、そのような更生計画を﹁公正・衡平﹂なものとして認可していた )4
(。
このような実務的処理には、次のような背景が存在した。すなわち、そのような債権の処遇について明確な司法判断は示されていなかったところ )5
(、会社更生手続きについて助言する権限を有していたSEC )6
(は、かかる債権は一般債権であるという立場を採っていた )7
(。そして、更生管財人は、倒産手続きの迅速性 )8
(、さらに、おそらくSECの立場を考慮して )9
(、かかる債権の一部について分配を行う更生計画を立案していた。
第二款
Slain & Kripke
のリスク配分に関する規範的議論 )(((
このような状況に対して、一九七三年に
Sla in & K rip ke
は、﹁倒産時、投資の回収を求める株主は、債権者の債権が完全に満足を得るまでは分配を受けることができない﹂という絶対優先原則(ab so lu te p rio rit y ru le
)が多くの議論を経て確立されており、また、証券規制法等は訴権の存在を定めているだけであり、株主や劣後債投資者といった下位の権利者 )(((について、訴権を有する場合に絶対優先原則を無視する根拠は明らかではないと批判した )(₂
(。
すなわち、彼らは、株主等の債権の優先順位は株主・債権者間のリスク配分の問題であると指摘し、株式の発行の場面を取り上げて、配分が問題となるリスクを①何らかの原因による事業の倒産リスクと②証券の違法な発行のリスクに