異文化 トレーニングとしての 「日本事情」教育

全文

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異文化 トレーニングとしての 「日本事情」教育

出原節子

要 旨

「日本事情」教育 は,昭 和37年の文部省令 によ って認知 された留学生 のための特設科 日であ り,4年 制大学 の留 学生対象 の設置科 日と して認可 されて い る。

歴史 的 に,「 日本事情」教育 は 日本語語学教育 と深 くむす びつ き, 日本語教員 や 日本研究 の専 門教員 を中心 に, 担 当者 がそれぞれ の裁量 で 「日本事情」教育 をお こな ってきた経緯 があ り,そ こには異文化 との接触 を 目的 と した 教育 とい う視点 が欠 けて いた。

富 山大学留学生 セ ンター 日本語研修 コースで は,「 日本事情」 の クラスを"異

文化 トレーニ ング"の

場 と して位 置 付 け,1999年 10月か ら留学生 と日本人学生 の合 同授業 を実施。 そ こでの交流 を通 して,『異文化 コ ミュニケー シ ョ

ン能力 を養 う』 こと,F異 文化 リテ ラシーを獲得す る』 ことを 目標 と してい る。

本稿 では,授 業 の実践報告 をす るとともに,今 後 の 「日本事情」教育 の行 く道 を探 る。

【キーワー ド】異文化 トレーニング,異 文化コミュニケーション,異 文化理解,合 同授業,日 本事情

1 は じめ に

「日本事情」の教育内容は,省 令では,一 般 日本事情, 日本の歴史 0文化 ・政治 ・経済 ・自然 ・科学 技術 といったものとなっている。授業科 目の内容は, 日本人学生 に対する‐般教養科 目の趣 旨と同様の 教育的意図を実現できるように留意するとともに,学 生の専攻分野 に応 じた基礎知識を もちあわせて学 習 し得 るよう配慮することが望ましいと規定 されてお り, ここか らは知識教授型の授業形態が窺える。

田中 (1991)は,「異文化 における外国人 は,未 知の行動を習得す るために,試 行錯誤 と時間を費や し,そ の過程で不快な思いを した り,不 利益をこうむった りす るが,(ソ ーシャル ・)ス キルの習得 は これを軽微 にす るという点で,精 神衛生上の効用 も考え られる」 と言い,手 塚 (1991)は,「多 くの種 類のサポー ト・ネ ッ トワークを もっている学生ほど,さ まざまの課題をうま くこな しているようにみえ る」 と言 う。 さらに,長 谷川 (1999)は,「 『日本事情』教育は,『学習者の異文化対処行動能力の育成』

という大枠か ら再度捉え直す時期にあるのではないかと思 う」 と述べている。

これ らの視点をス、まえ,富 山大学留学生セ ンター (以下,本 セ ンターとす る。)で は留学生 に対す る 一方的な知識の提供ではな く,留 学生が感 じている文化的な差異による戸惑いや当面する,或 いは当面

している問題や困難を緩和 し,減 少 させるのに役立つスキル獲得の手助けとなる 「日本事情」教育を目 指 している。

2 合 同授業をおこなう目的と意義 2日1 語学能力強化

日本語研修 コース (以下,研 修 コース とす る。)の 学生 は,月 曜 日か ら金 曜 日までの1時限か ら4時限 (9:00〜 16:30)ま でを留学生 セ ンターで過 ご してい る。 その上,研 修 コースに在籍 中の6か月 間は国 際交流会館 に居住 してお り, 日本人 と接触す ることがほとん どない。 そ こで, 日本人 と接す る機会 と習 っ た 日本語 を実際 に使 う場 を提供 し,加 えて, 日本人学生 による 「語学支援」 の態勢 をつ くることで語学 能力 の強化 をはか る。

日本人学生 に とっては留学生 と日本語 で交流す ることで,普 段何気 な く使 っている"母

"について考

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えてみる機会 になる。

2.2 留 学生 支援

言葉 も文化 も分か らない異国で何か問題が生 じた時, 自分 ひとりで対処 0解 決 しなければな らないと した ら,心 理的に非常に負担である。 このような時,気 軽に援助を得 られる人が身近 にいれば,そ の負 担はかな り軽減 されるが,留 学生は困難 に直面 した り問題が発生 した時, 日常的に何のかかわ りもない

日本人 に救 いを求めることは しない。

横田 (1999)は ,「 日本での人間関係や ソーシャル ・サポー ト (社会的支援)の ネ ツ トワークを もっ ていない留学生 (外国人)に とっては,『交流』 の機会を持つ ことが 『支援』の機会を得 る土台なので ある」 と述べている。

また,坪 井 (1999)は,「留学生支援 という視点か ら見 ると, 日本人学生 は留学生の 日常生活のなか で最 も身近な支援の要員になるべき存在である」 と言 う。

国立大学においては昭和47年度より外国人留学生チューター制度が実施 されているが,留 学生センター にはチューター予算がないため,研 修 コースの学生 にはチューターをつけることができない。そこで, 日本人学生 に"国

際交流学生ボランテ ィア"と

して授業 に参加 して もらい,留 学生活支援態勢を整える。

2.3 異 文 化理 解

異なる文化の中で経験するコ ミュニケーション上のつまずきは,言 葉によるものだけに限 らない。 ま た,外 国語を身 につけるためにはその言葉の言語的側面を習得す るだけでは十分 とは言えず,文 化的側 面 も合わせて学習す る必要があるので,交 流を通 して 日本人学生の行動様式や考え方,価 値観などを学 ぶ。同時に, 日本人にとって も異なる文化 における行動様式や考え方,価 値観などを学ぶ場になる。

さらに,出 身地域や年齢,学 部の異なる人 々と交流することにより,「異文化」 は国と国の間にのみ 存在す るのではないこと,つ ま り性別,年 齢 ・年代,職 業,宗 教などにより様 々な 「異文化」が存在 し ていることに気付 く。

2.4 自 文化 理解

異文化を理解 し,尊 重するには,「自文化の相対化」が不可欠である。様 々な文化 と触れあうことで, 自文化を"多

くの文化の中の一つ"と

して認識 し,自 文化を絶対視す ることを避 けなければな らない。

相手文化を理解するためには,ま ず 自国の文化を知 る必要がある。多種多様の文化に属す る人 々と接 し,そ の経験か ら自国の言語や文化に対する関心を高める。そ して, 自文化を知 り,理 解 し,誇 りと敬 愛の念を もつ。それを基盤 にして他国の文化を知 り,理 解 し;尊 重す る。お互いの尊重な くして,望 ま

しいコ ミュニケーションは成立 しないことを学ぶ。

2.5 異 文化 交 流活動 の拠 点

2001年5月現在の 日本 における留学生数 は過去最高の78,812人となっている。 これに日本語学校など の就学生を加えると,『留学生受入れ10万人計画』は既に達成 されているのでは, という声 もある。

富山大学で も,全 学生数 に占める留学生のパーセ ンテージは低 い (約3.7%)が ,2000年 10月に204人 であった留学生数が2001年11月には260人を超え,か な りの増加である。

近年,・日本 に住む文化背景の異なる人 々は確実 に増加 し,「内なる国際化」 という言葉 も一般的にな り,社 会 は多文化共生の時代を迎えている。だが, 日本の社会が国際的に多様性を受け入れ られる社会 になったとは思えない し,文 化の異なる人々と友好的にお互いを理解 し合えているようにも見受けられ ない。

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富山大学を例にとってみて も,大 学 コ ミュニティーにおいて 日本人学生 と留学生が 日常的に積極的か つ活発な交流をおこなっているかといえば,「否」である。留学生 と日本人学生の交流 どころか,学 部 0 学年の異なる日本人学生同士の交流す らおこなわれていないのが現状である。

このような状況を鑑み,本 セ ンターの 「日本事情」 を留学生 と日本人学生が交流す るための一つの

"きっかけ"とし,「日本事情」クラスを"核"にして留学生と日本人学生,留 学生同士, 日本人学生同士の 交流へ と拡大 させ,異 文化 との共存 ・共生 に向けた一歩 とする。

3 「 日本事情 」授業 の実践 3.1 受 講留 学生

受講留学生数を表1に示す。

表 1

大使館推薦

国費留学生 学内募集留学生

日韓共同理工 系学部留学生

合 計

1期 (99/10〜 00/03)

3 5

2期  (00/04‑00/09)

5 6

3期 (00/10〜 01/03)

2 1

5 (3) 9

4月月 (01/04‑01/09)

2

2 (1) 3 (3)

8

5期 (01/10〜 02/03) 0 0 4 (4)

3 9

*( )は ,私 費学生数

3期か ら学内より研修 コースヘの受講生を募集 している。受講希望者は指導教官の推薦を得た上で, 受講申込書を所属学部長経由で留学生セ ンター長宛に提出 し,同 セ ンター長に認められた場合は,研 修

コースヘの参加ができる。

5期か らは 「日韓共同理工系学部留学生事業」 による韓国人学部予備教育生が受講 している。

3.2 受 講 日本人 学生

4月 と10月の年 2回 ,『国際交流学生ボランティア』(以下,学 生ボランティアとする。)と して授業に 参加す る日本人学生を学内か ら募集 している。

表2は,1期 か ら5期までの授業に登録 した 日本人学生についてまとめた ものである。

表 2

学 部 学 年 性 別

経 済 人 文 教 育 理 学 工 学

3 4

合 計

1期/99秋 3 (2)

3 6

6 (4) 2 (1)

4 7 8 4 16 20

2期/00春 3

3 0 0 2 2

3

4

3期/00秋 4 (1)

6 2 0 0 3 7 12

4期/01春 4 (2) 2 (2) 3 (3)

0 5 4 0 4 6 10

5期/01秋

5 0 0 3 7 8

*( )は ,引 き続 き授業 に再参加 した学生数

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毎期,新 しく登録 した学生 と再参加 の学生 で15人前後 にな り,授 業 には,期 によ って異 な るが,6〜

13人が出席 している。学生 ボラ ンテ ィアにとっては,単 位 の付与 もな く出席 の義務 もない授業であるが, 都合のつ く限 り参加 して いる。

1期には工学部 か ら2人の参加があ ったが,2期 以 降 の登録 がないのは,工 学部 はキ ャンパ スが本 セ ン ターや他 の4学部 があるキ ャンパ スか ら少 し離 れて い る上,実 験 が多 く,実 験 が長 引いた りす ると参加 が難 しい とい う事情が考 え られ る。事実,1期 ・2期 に参加 した学生 か ら 「毎回参加 したいが,実 験 な ど が忙 しく,難 しい」 との声があ った。

3.3 授 業 開 始 時 期

「日本事情」 の授業 は 日本語 の授業 よ り1週間か ら10日程度遅 れて スター トす る。 これ は,初 級 クラ スの学生 が最低で も使用教科書である 『みんなの 日本語 I』 の5・6課が終わ ってい ることが望 ま しい と 考 えたか らで ある。幸 い1日 1課 の進度 なので,動 詞 の導入後 に 「日本事情」 をスター トす ることがで

きる。動詞が導入 されていると, 日本語 での説明や指示 が容易 とな る。

授業 は水 曜 日の4時限 (15:00〜 16:30)に 固定 している。

3.4 授 業 の 内 容

1期か ら5期 までにお こな った授業 の内容 をテーマ別 に以下 に記す。

授業では,異 文化への対処方法を身 に付 け,実 践力 を養 うために, どのテーマ もゲーム的な要素 を多 く取 り入れている。 そ して,一 緒 に行動 した り何 かを作 り上 げ ることで 「一体感」を もたせ るために共 同作業 を中心 に授業 を進 めている。

a)文 字や言葉 に関す ること

日本語能力強化 を 目的 にお こな う。

 人 探 しゲーム (Q&A)

。 か るた (「絵 カー ド」 と 「文字」 のマ ッチ ング)〜 「かるた」 は学生 ボランテ ィアが作成 0 し りとり

・ 伝言 ゲーム

・ 全ての 「ひ らがな」 を使 って言葉 を作 るゲーム

・ 言葉 による伝達 を見直すためのゲーム

;2人 でペ アーにな り,背 中合 わせで一方 が言葉 で指示 を出 し,そ れ に従 って もう一方が絵を描 く ことで,情 報 の全てが言葉で伝え られない ことに気付 くことを 目的 と している。

・多種多様な言葉の存在 を知 るために,留 学生 の国の言葉 (挨拶 な ど)を 習 う

b)非 言語伝達 に関すること

自分が伝 えたい ことを相手 に正確 に伝 え るためには,言 語 による伝達 だけではな く,言 葉 を使 わない 伝達があ ることを学ぶ ことも必要である。そ こで,以 下 のようなゲームを通 して非言語的伝達 につ いて 学ぶ。

・ジェスチ ャーゲーム

・絵で情報 を伝える

。シグナル,サ イ ン

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c)文 化や価値観 に関する こと

異文化 や 自文化への認識 を高 める。

・デ ィスカ ッシ ョン

… 「マナー」 について

… 「わた しの国の一番大切な 日」

… 「新年」の迎え方

… 「贈 り物」 について

…タプー,迷 信について

… 「日本人気質」 ―ステ レオタイプー

・連想ゲーム

;文 化背景 が異 な ると,あ る言葉 か ら連想す る物や事柄が異 なることを学ぶ。

・ 「色」 について

;学 生達 に風景画 を描 かせ る。 その時,『 山』 を必ず描 くよ うに指示す る。す ると, 日本人 は山を

̀緑'で

描 き,ほ とん どの留学生 は ̀茶 'で

描 く。時 には 「私 の国 (モル ドヴ ァ)に 山はあ り ません。丘 がある」 とい うこともある。普段見慣れているもの,当 た り前 と思 っている ものが当た

り前でない ことに気付かせ る。

・諺,謎 謎

;諺 や謎謎 も文化 を反映 してい る。例 えば, 日本で は 「赤 い顔 を して,赤 い服 を着 て街角 に立 って いるもの,な んだ」 と聞 くと 「ポス ト」 とい う答が返 って くる。 しか し,世 界 にはポス トが赤 くな い国 (アメ リカ :青 ,フ ラ ンス :黄 色,中 国 :緑)が 数多 く存在 している。諺や謎謎 を通 して,様 々 な文化 を知 る。

d)そ の他

・折 り紙

0日 本の歌,留 学生 の国の歌

0留 学生の発表 (「国の食べ物 ・特産物」「遊 び」などについて) 0日 本人の発表 (「出身地」「日本 の遊 び」 な どについて)

・日本の昔話 (紙芝居 「桃太郎」)

3.5 授 業 の 進 め 方

第1回 目の授業 ではお互 いが知 り合 いにな るために,必 ず 『名刺交換』 をす る。一例 と して,そ の進 め方 を紹介す る。

① まず,各 自がB5紙 半分 のサイズで 「名刺」 を数枚作 り, 日本人学生 は留学生 と,留 学生 は 日本人学 生 と交換す る。

②次 に,相 手か らもらった名刺の余 白部分 に相手の情報を3つ以上書 く。情報のや り取 りは 日本語を基 本 とす る。 この時点では,初 級の学生 はまだ506課 あた りまで しか習 っていないが,年 齢や家族構成 についての単純な質問をは じめ,既 習動詞を使 った質問をすることができる。

③名刺交換が終わ った ら,交 換 した相手に関する情報を皆 に紹介する。

学生達は授業時間が過ぎて も帰る気配 もな く,英 語や漢字の筆談などを交えなが ら延々と 『名刺交換』

を続 け,終 わった頃にはす っか り打 ち解 けてお り,非 常に効果的である。

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4 結 果

授業は毎回時間通 りに終わることがな く, 日本人学生 と留学生,或 いは日本人学生同士が教室に残 っ て交流を続 けていた。

放課後 には 『日本語勉強会』や 『語学eichange』を した り,一 緒 に遊 びに出かけた り,誰 かの部屋 に集まって食事会やパーティーを した り,ま た休 日には ドライブに行 った りして楽 しんでいる。

本セ ンターでは春 と秋の年 2回 ,『異文化交流パーテ ィー』を,毎 週木曜 日 (12:30〜13:30)に は セ ンター教員 も参加す る留学生 と日本人学生の 『お しゃべ リタイム』を開いているが,研 修 コースの

「日本事情」 クラスの学生達が中心にな って参加 し,交 流の輪を広げている。

学生ボランティアは留学生の研修旅行 に一緒に行 った り,フ ィール ド・トリップの付添いとして参加 した り,学 部新入留学生の時間割 り作成の手伝いを した り,と 様 々な本セ ンターの活動 に積極的に参加 している。

研修 コースの 「コースエバ リュエー シ ョン」 の留学生 コメン ト ( 資料 ・A ) や 日頭での感想 によると, 合 同 「日本事情」授業 は異文化適応 のために大変効果 的かつ有意義 だ った ことが うかがわれ, " 異 文化

トレーニ ングの場" と

しての役割 を十分果 た して いると思 われ る。 また, 学 生 ボラ ンテ ィアにお こな っ たア ンケー トの コメ ン ト ( 資料 ・B ) か らも,狙 い通 りの効果がみ られた と判断で きる。

ただ,3期 の留学生 コメン トに 「日本人学生が外国人 との交流 にあま り興味がなさそ う。友達がひと りもできなか った」 とあった ことは,残 念だ。3期の学生達 も授業中は和気 あいあいとした雰囲気で, 特に問題は見 られず,ま た,放 課後に 『日本語勉強会』を した り,国 際交流会館の留学生の部屋に集まっ て頻繁に食事会やパーティーを した りして楽 しんでいると聞いていたのだが,そ の輸か ら外れた学生が いたようだ。

なお, 日本人学生か ら屋外活動を望む意見 (資料 ・C)が 多数あるので,フ ィール ド・トリップヘの 参加を勧めている。

5 問 題点 5 . 1

留学生の中に,学 生ボランティアとの交流 にあま り興味を示 さない様子の学生がいた。個人の性格に よるものか もしれないが,学 生 ボランティアに対 して打ち解けた様子をみせることもな く,「仕方な く 参加 している」 という態度を示す学生が3期と4期で3人いた。(3人とも研究生)

日本人学生か ら 「留学生すべてとは言わないが, 日本人学生 との交流を望んでいないように思える留 学生 もいる」 という声を聞 くことがあるが, もし,留 学生が 日本人学生 との交流にあまり興味がないと

した ら,そ れは次の理由によるのではないか と推測する。

・富山大学では留学生の70%以 上が私費留学生である。私費留学生の多 くは生活のためにアルバイ ト をせ ざるを得ない状況で,時 間的にも精神的にもゆとりがない。

・ 学内で同国人のネ ットワークがうまく機能 しており, 日本人の社会か ら距離をおいたところで生 活が成 り立つ。学生達は同郷の絆で結ばれ,助 け合 って生 きているので, 日常的に日本人学生の助 けを借 りる必要がない。

・ 「異文化理解」 とか 「異文化適応」の発想が乏 しい。

・ 性格。(内気,恥 ずか しが りや,引 っ込み思案)

いずれにせよ,学 部留学生同様に,研 究生 もアルバイ トを しているようなので,学 業 との両立で気持 ちにゆとりがなか ったのではないか と思 う。或いは,研 究生の当面の目標は大学院合格であ り,そ のた めには 「日本語」 は入試 に必要だが,「交流」 は不必要だと判断 し,無 駄な授業だと思 ったのか も知れ ない。

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5.2

学生 ボランティアの参加者数が一定 していなか った。1期では日本人学生か ら 「ボランティアの数が 多すぎた」,2期 では留学生か ら 「日本人学生が少なか った」 とのコメン トがあったが,実 際,期 によっ て,週 によって 日本人学生の数が増減 し, クラスの運営に苦慮 したこともあった。

6 お わ りに

異 な る文化 との接触 が多 ければ, 自然 に異文化 が理解 できて,仲 良 くや っていける能力が身 に付 くわ けではない。 む しろ反対 に,接 触 の機会が増 えれば,誤 解 や摩擦 も多 くな り,ス トレスや フラス トレー シ ョンの種 にな ることもある。 しか し,時 代 はます ます グローバル化 に向かい, 日本国内であ って も外 国人 との接触 を避 けて生活す ることは難 しい。

異文化 とどのよ うに共存 し,共 栄 してい くのか。 そのためには, ど うすればよいのか。 この合 同 「日 本事情」 の授業がその答の一つ にな らないだろ うか。

異文化理解 とは単 に知識 を増 やす ことではない。異文化 と接触 した り,対 話す るためには知識 も必要 だが実践力 が伴 わな けれ ば意 味がない。 異 な る文化 を持 つ人 々 とよ りよい関係 を構築す るためには,

異文化」への対処方法 を身 に付 けることが大事 だ。

自分の文化を保持 した上で新 しい文化のルールを習得 し,異 文化の人 々との付 き合い方 (異文化 コ ミュ ニケー シ ョン ・スキル)を 身 につ けるために,今 後 もこのような授業がます ます必要であるとの確信 を 得 ている。

参 考 文 献

(1)八 代京子 ・町 恵 理子 ・小池浩子 ・磯貝 (吉田)友 子 (1998)『異文化 トレーニ ング』三修社 9)西 田 司 (1998)『異文化 の人 間関係』多賀 出版

G)デ ーヴィッ ド・マツモ ト (1999)『日本人 の国際適応力』本の友社

に)手 塚千鶴子 (1991)「留学生 の異文化適応 ス トラテ ジー」『異文化へのス トラテ ジー』り│1島書店pp.62‑83 5)長 谷川恒雄 (1999)「 『日本事情』―その歴史的展開―」『21世紀 の 「日本事情」創刊号』 「21世紀 の 『日本事情』」

編集委員会編pp.4‑15

鯰)田 中京子 (1991)「在 日留学生 の文化的適応 とソー シャル ・スキル」『異文化間教育5』異文化間教育学会pp。98‑

1 1 0       .

 横 田雅弘 (1999)「留学生支援 システムの最前線」『異文化 間教育 13』異文化 間教育学会pp.4‑18 (a 坪 井 健 (1999)「留学生 と日本人学生 の交流教育」『異文化間教育 13』異文化 間教育 学会pp.60‑74

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<資 料 >

A:「 コースエパ リュエー シ ョン」 の留学生 コメ ン ト (1)たの しか った。

(aいい経験 にな った。

(3)おもしろか った。

(4にの時間 に友 だ ちがで きた。

(0日本文化 を知 ることがで きた。

(6)日本人学生 が少 なか った。

(7)日本人学生 が外国人 との交流 にあま り興味がな さそ う。友達 が ひとりもで きなか った。

(3にの活動 は とて もいい とお もいます。私 た ちは 日本人学生 とともだちにな りま した。 日本 の文化 もな らいま した。

(9)ほん とに楽 しくて役 にた った時間で した。 この時間を通 して友達 も作 った し,若 者 の文化 も習 いま し た。教室 内だけでな く,い ろいろな場所 でいい経験 にな るよ うに した らもっといい と思 います。

00日本人学生 との時間は 日本の生活 になれる時,い ちばんいい時間だ った と思 いま した。 しか し,ち ょっ と時間が少 なか ったと思 います。

llllはなすのがあ ったか ら,上 手 にな った と思 います。

l121とて もよいです。 日本人友達で きま した。 日本 の文化 についての授業 もとて もよい。必要 だ と思 いま す。

00とて もお もしろか った。 日本人学生 とともだちにな るためにいいきかいで した。 日本 のぶんか もな ら いま した。

0対話機会 が もっとおおいほうがいい と思 う。

l151有益 な時間だ った と思 う。

0ち ょっと時間が少なか った と思 う。

0〕日本人学生 ともっと話 したい。

B:学 生ポ ランテ ィアに対 するアンケー

卜の回答 (抜粋)

質問 :「 日本事情」 の授業 はどうで したか。 自分 自身 に変化が あ りま したか。

(1)留学生 の視野 の広 さにお どろいた。 自分 の価値観が大 き く変 わ ったよ うに思 われ る。外国 に行 った時 よ りも,「外 国」 に触 れ ることがで きた と思 う。学 内で外 国を体験 で きた し世界 の広 さを考 え ることが で きるよ うにな った。身 の回 りだけが中心 であ った生活 に奥 ゆきがで きた。未来 の ことにつ いて考 え る

ことができるよ うにな った。 (理学部)

(2)異文化 を持つ人達 との交流 は もちろんの こと,同 じ日本人 と して大学 にい る人達 との交流 ができた こ とが 自分 に とって大変有意義 な もので した。周囲 との交流 に消極 的な方 で したが,こ うした機会 を与 え られ, 自分 自身積極的な方 向へ動 いた と思 います。 日本人 の学生 には特 に,経 験 がない,ま た機会がな いというデ ィスカ ッション形式の授業 は自分 自身 を表現す るための大変良い機会だ ったと思 います。 日々, 自分 の考 えや意見を明確 にとらえ,ま た人 に伝え るとい う事 の重要 さがわか りま した。 (経済学部) (3)今まで は留学生 の存在 と自分 には,(同 じ大学 にいて も)壁 を1枚はさんだ よ うな存在 で したが,身 近

な存在 と して感 じるようにな りま した。 日本人 の友人が増 えてよか った。 (学年,学 部 に関係 な く集 まっ ていた)(経 済学部)

(4)普段 なにげな く行動 していることに も興味 を持つ よ うにな った。 日本 の こと,私 の ことについて もう 一度考え直す ことができた。異文化を持つ人 々を理解す るには, 自分の文化を もっと理解 しなければな

らない と感 じた。 (工学部)

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(9)

(5)自分 の常識 はあ くまで 日本 だけの,私 だけの ものなのだ と改 めて感 じた。 テ レビや雑誌で留学生 の出 身 国のニ ュースが扱われていると,以 前 よ りも関心 を もて るようにな った。 日本事情の クラスに参加 で

きた ことは,私 に とって有意義 な経験 とな りま した。 (理学部)

(6)私は留学生 のみな さんを 自分 と照 らしなが ら見 ていま した。 自分 が海外べ留学 した時,現 地 の学生 は どんな気持 ちで接す るのだろ う?と。私 も含 めて, この授業 に参加 していた 日本人 の学生 は,何 か とコ ミュニケー シ ョンを とろ う,楽 しみたい, とい う気持 ちで臨んで いたので,留 学 した時:私 もこんな風 に1妾して もらえ るのかな, と少 し安心 しま した。 あま りた くさん この授業 に参加す ることがで きなか ら たのですが,私 の顔を覚えて くれた留学生 が汽車 の中で声 をか けて きて くれた時 は, とて もうれ しか っ たです。 (教育学部)

(7)他の様 々な国の文化 や,特 に今 まで気 に していなか った 「日本」 についてよ く考えるようにな りま し た。ただ単 に色 々な友達がで きただけでな く,そ の人 の文化や 自分 の今 まで生 きてきた環境 ・文化な ど, よ く考 え るよ うにな りま した。友達 がた くさんで きま した。 日本人 も留学生 も。 あ と"文

'について, 日本 について とて もよ く考 え るよ うにな りま した。 また,さ まざまな国のあいさつ, ジ ェスチ ャーを学 ぶ ことがで きて大変楽 しか ったです。 (理学部)

0)自分が 日本人である事 を 自覚 した。世界が広 が った。 (工学部)

(9)今まであま り自分 の国である 日本 の事 につ いて考え ることがなか ったので,こ の クラスに参加 して新 たな発見がた くさんあ って シゲキを受 けま した。 「言葉 は文化 であ る」 とい うことがす ご く良 く分 か っ た授業 だ った と思 います。 (経済学部)

ID"日本文化"(言

語 ・習慣 な ど)に つ いて考え,勉 強 しようと考 え るよ うにな った。 クラスで取 り上 げ られた ことの多 くは,知 らなか った ことばか りで,い い刺激 にな りま した。 いろいろな国か ら来 ている 留学生,学 部 も年齢 も出身地 も様 々な 日本人学生 らと話 し合 いをす ることができて,良 か った。 いろい ろな人達 と交流 で きて,本 当に楽 しい半年間で した。特 に,留 学生 の皆 さん とお互 いの国 について話 し 合 った時が印象 に残 っています。 (教育学部)

llll自国の文化 ・習慣 について再考 し,他 のボラ ンテ ィアの人 々と共有す る時間を持て,有 意義 であ った。

(人文学部)

00自分 たちで授業 をつ くるとい う受 け身ではない姿勢 を感 じる

クラスで した。 とて もリラ ックス した雰 囲気 の中で進 んでい ったのが よか ったですも短 い間で したが,私 自身 も様 々な意見 に触れ,成 長す るこ とができま した。後半 は卒論準備等 であま り時間が とれなか ったのですが,楽 しいクラスで した。 日本 人 ボラ ンテ ィアが多す ぎたよ うな気 が します。 (教育学部)

l131他言語 な どが学べて楽 しか った。 あま リア ジア圏に興味がなか ったが, も っといろいろ知 りた くな っ た。 同 じ大学 にいなが ら交流 がなか った留学生 の人 々 と話す ことがで きた。 留学生 の人 々の国の言葉 (あい さつ等)を 授業 の初 めに行 っていたのがす ご くよか った と思 う。卒論 の関係 でなかなか参加 で き なか ったことがす ご く残念 です。 (教育学部)

00ず っと積極的な人間 にな りたい と思 っていま した。変 わ って しまいたい と思 っていま したら ですが, 自分 が意見 を持 っていれば,必 ず しも自分 が !と 前 に無理 して出ていかな くて も, 自分 は 自分 だ と考え られ るようにな った と思 います。 (教育学部)

10日本 について改 めて考 え るようにな った。今 まで漠然 と改 めて考 えた こともなか った ことに気付 き, 新鮮 な発見 があ った。留学生 の方を通 して,海 外 に対す る好奇心 が満 た された ことと日本 に対す る自分 の考 えを考 え直す良い機会 にな った ことが良か った。 (人文学部)

10自分 は日本人であるのに, 日本の ことについて どれだけ知 らない ことが多いか とい うことを痛感 した。

他 国の ことを知 ることだけが異文化理解 だ と思 うところがあ ったが, 自国の ことを しっか り知 った上で お互 いに教え会 うことが大切 なのだ と思 った。留学生 と触れ合 う機会が ほとん どゼ ロに等 しく (以前 に

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(10)

オース トラ リアか らの留学生 と友達 にな ったが,自 分の国の ことを こんなに考えた り,話 した りしなか っ たので)こ れ まで過 ご してきたが,何 かを気付かせて くれ るよい機会 であ った。 ただ一つだけ残念 だ っ た こと,反 省 したい ことは;授 業以外で はほとん ど関わ りを もてなか った, もたなか った ことであ る。

私 自身,気 持 ち的に も接 したい と思 っていたが,行 動 に移せなか った とい うことである。 (教育学部) 0つ外国の文化 の話 をき くことで, 日本文化 に関心 を もつ よ うにな った。 自分 の 日本文化 にたいす る知識 のな さを痛感 した。 (経済学部)

00日本 の ことをあま りに も知 らなか った 自分 が恥ずか しい。 (経済学部)

19大変良 い経験 にな りま した。大変勉強 にな りま した。 また,こ れか らます ます い っそ う勉強 していき たい とい う気持 ちにな りま した。 (理学部)

10い ろんな国の会話 (あ りが とう, ごめんな さい とか トイ レは どこですかな ど)を 比べなが ら学べて良 か ったです。 (経済学部)

C:要 望 0ア イデ ィア

(1にの授業で学んだ ことを外 で発表す ることがで きた らいい と思 う。

(2)広い教室がのぞま しい。

(3)授業時間を土 曜 日の午前 中 ぐらいに して欲 しか った。

)料理 を もちよ り,食 文化交流 を したい。

(5)学外 に出て文化 について学ぶの も良 い と思 う。

(6)キャンプで野外炊飯 な ど したい。

(7)教室の中だけでな く,外 に出ていろいろな事 をす ると楽 しい と思 います。 お花見 とか花火 とか,あ と ピクニ ックや博物館,美 術館,科 学文化 セ ンター,植 物園な どに行 くの も良 いのではないで しょうか。

侶)料理 な どを作 る機会 が欲 しか った。

(9)とて も楽 しか ったので,週 1回 でな く, も っと増 や して欲 しい。

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参照

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