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スラリー塗工プロセスの Computational Process Material Design シミュレーションComputational Process Material Design Simulation of the Slurry Coating Process

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Academic year: 2021

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hp150029 「京」産業利用(実証利用) K Industrial Use

スラリー塗工プロセスの Computational Process Material Design シミュレーション

Computational Process Material Design Simulation of the Slurry Coating Process

諸星 圭1

、土橋 利幸1

、河村 芳海1

茶木 健太2、大畠 広介2、小沢 拓2

Kei Morohoshi1, Toshiyuki Dobashi1, Yoshiumi Kawamura1 Kenta Chaki2, Kosuke Ohata2, Taku Ozawa2

1トヨタ自動車株式会社、2

株式会社 JSOL

1

Toyota Motor Corporation, 2JSOL Corporation

要旨 分子レベルのシミュレーション手法である粗視化分子動力学法において溶媒蒸発モデルを開発、 「京」による大規模計算とあわせて初めてスラリー塗工プロセスの直接計算を可能にした。また、 溶媒蒸発後の多孔質構造をマクロ CAE とシームレスに接続して、電極性能を評価できるように した。開発手法の検証を燃料電池の正極触媒層を用いて行ったところ、溶媒蒸発後の多孔質構造 において酸素の拡散性や微粒子の被覆率が実験傾向を再現することを確認した。塗工現象を解明 するために、スラリーの分子特性や工程条件の影響についても調べた。 キーワード:塗工、スラリー、分子シミュレーション、蒸発、乾燥、多孔質構造 Abstract

The solvent-evaporation model was developed by using coarse-grained molecular dynamics, which includes molecular-scale information. Large-scale calculations on the K computer made it possible to calculate the slurry coating process directly and also to predict porous structures. After the solvent evaporation, by connecting the porous structure obtained by molecular simulations with macro CAE seamlessly, electrode performance was able to be evaluated. As a verification, the developed method was applied to positive electrode of catalyst layer in the fuel cell, and we confirmed qualitative agreement with experimental results, in regard to polymer coverage of small particles and a diffusion property of oxygen gas. In order to investigate slurry coating phenomena, the effects of material properties and process conditions on porous structures were also discussed.

Keywords: Coating process, Slurry, Coarse-grained molecular dynamics simulation, Solvent evaporation, Drying, Porous structure

© 2018 Research Organization for Information Science and Technology All rights reserved. Received: 1 March 2018

Accepted: 18 October 2018 Available online: 22 November 2018

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1. 研究の背景と目的 スラリー塗工は、微粒子と高分子を溶媒に混ぜたスラリーから溶媒を蒸発させて多孔質構造を 得るプロセスで、燃料電池や Li イオン電池の電極作製に用いられる。適用範囲が広く性能影響 が大きい割には現象がよくわかっておらず、経験に基づき試行錯誤的に行われることが多い。材 料から工程まで扱える方法論がないことに原因がある。そこで材料分子から溶媒蒸発過程までを あらわに扱うシミュレーション手法を開発し、塗工プロセスの現象を解明して電極性能向上につ なげることを目的とした。 2. 計算モデル 計算には、ビーズスプリングモデル[1]を用いた粗視化分子動力学法を採用した。複数の原子・ 分子を 1 つの粒子として扱い、原子・分子の特性を粒子間のポテンシャルに反映させるモデルで ある。スラリー中の微粒子・高分子・溶媒は Fig. 1 のように表し、微粒子を構成する粒子間は硬 い結合でつないで固体形状を保つようにし、高分子は伸縮するバネで粒子をつないで再現した。 非結合粒子間の相互作用には Lennard-Jones ポテンシャルを用い、分子構造に由来する分子間の親 和性をポテンシャルパラメータに組み込んだ。 Fig. 1 スラリー中の(左)微粒子、(中)高分子、(右)溶媒、のモデル 溶媒の蒸発は、初期に気液平衡状態をつくりスラリーから離れた限られた気体領域にいる気相 溶媒を一定の時間間隔で削除して、スラリー中にいる液相溶媒が気相溶媒に気化することを促す モデルとした。気相溶媒を削除する時間間隔を変えることにより、蒸発速度(プロセス温度)の 違いを表現できるようにした[2]。蒸発前のスラリーとして 100 万粒子モデルと 400 万粒子モデル (Fig. 2)における、セルサイズと気相溶媒の削除領域のサイズを Table 1 に示す。

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Fig. 2 蒸発前のスラリーの(左)100 万粒子、(右)400 万粒子、のモデル (黄色が微粒子、赤色が高分子、水色が溶媒) Table 1 セルと削除領域の(左)100 万粒子モデル、(右)400 万粒子モデル、におけるサイズ 溶媒蒸発後の多孔質構造の性能として、微粒子・高分子・空孔それぞれの構造起因の拡散性を 評価した。具体的には上下に濃度勾配を与えて拡散方程式を解き、全空間が一様に満たされてい る時の拡散係数に対する比率を求めた。それぞれの構造中の拡散性は、燃料電池なら触媒層にお ける微粒子中の電子、高分子中のプロトン、空孔中の酸 素の拡散性に対応し、発電性能を左右する物性である。 ビーズスプリングモデルの粒子のままでは拡散性を評 価できないので、多孔質構造を形づくっている粒子の分 布を濃度の分布に変換し、濃度分布を 3 次元メッシュで 分割して拡散方程式を解くことにより求めた。メッシュ 分割後の微粒子・高分子・空孔の体積分率が、粒子の時 と同じになるように変換を行った。微粒子の拡散性を評 価した結果例を Fig. 3 に示す。 溶媒蒸発は J-OCTA/COGNAC[3]、OCTA/COGNAC[4]、 J-OCTA/VSOP[3]を用いて行い、拡散計算には J-OCTA[3]、 OCTA/MUFFIN[4]を使用した。 Fig. 3 微粒子中の濃度分布

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3. 並列計算の方法と効果(性能) 高速並列分子動力学エンジン J-OCTA/VSOP でフラット MPI を用いて並列化した。粒子数 100 万での IO 含む 50 万ステップ当たりの平均計算時間は、コア数が 120 と 240 の時にそれぞれ 7746 秒と 4697 秒であり、並列化効率は 82%だった。粒子数 400 万ではコア数が 800 と 1600 の時にそ れぞれ 12445 秒と 9372 秒で、並列化効率は 66%となった。 4. 研究成果 400 万粒子の計算モデルの検証を、燃料電池の実験値を用いて行った。実験値は正極触媒層に おけるもので、高分子の体積分率が多孔質構造における酸素の拡散性と微粒子表面のうち高分子 に覆われている比率を示す被覆率に及ぼす影響について調べた結果である。そこで計算でも、高 分子の体積分率を変えたスラリーから溶媒を蒸発させて多孔質構造を形成し(Fig. 4)、多孔質構 造中の空孔の拡散性と高分子による微粒子の被覆率を求めた。 Fig. 4 乾燥工程により形成される多孔質構造(黄色が微粒子、赤色が高分子、水色が溶媒) 酸素の拡散性について、実験ではアイオノマー(高分子)の体積分率を 2 倍に増やすと拡散性 が 3 分の 1 程度に低下している[5]。計算では高分子の体積分率を 5%から 10%にしたところ、空 孔中の拡散性が低下し、実験と同じ傾向であったが低下幅は 3 割程度と小さかった。実際には酸 素は空孔中を拡散した後にアイオノマー中を透過していて、この透過分を計算では評価していな いことが原因だと考えられる(透過分を考慮すると拡散性はより低下する)。 高分子による微粒子の被覆率について、実験ではアイオノマーの体積分率が違う 2 種類の触媒 層を作製して、カーボン(微粒子)表面のアイオノマーによる被覆率を分析によって調べた[6]。 計算でも溶媒蒸発後の多孔質構造において高分子による微粒子の被覆率を算出し、実験と比べた (Table 2)。実験と計算のいずれにおいても高分子の体積分率が大きくなると微粒子の被覆率が 大きくなり、両者の傾向は一致した。

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Table 2 高分子体積分率による微粒子被覆率の変化の計算と実験の比較 溶媒蒸発モデルと電極性能評価法を用いた計算の実験との定性一致が確認できたので、スラリ ーの組成・材料が電極性能にどう影響するのかを調べるのにシミュレーションを用いることにし た。スラリーの組成として高分子の体積分率の影響を、材料として微粒子への吸着性の高い高分 子の影響を、それぞれ調べた。 スラリー中の高分子の体積分率を増やすと、溶媒蒸発後の多孔質構造として空孔の少ない緻密 な構造ができることがわかった。これは上述した微粒子への被覆率が増えることに加えて、被覆 している高分子同士が凝集しやすいために微粒子間の凝集が進みやすくなっているためだと考 えられる。電極性能として微粒子・高分子・空孔中の拡散性を評価した結果を Fig. 5a に示す。形 成構造の変化から予想されるように、微粒子・高分子中の拡散性が高まり空孔中の拡散性が低下 する結果であった。スラリー中の高分子に微粒子吸着性の高いものを用いると、空孔中の拡散性 は向上する(Fig. 5b)。その一方で微粒子・高分子中の拡散性は低くなっており、高分子の特性が 電極性能にとって影響していることがわかった。 微粒子・高分子・空孔中の拡散性を両立する電極をつくることを考えると、ここで検討した組 成や材料の選定に加えて溶媒蒸発条件などの影響も考慮した検討が必要になる。相互に影響を及 ぼし合う因子どうしのつながりをシミュレーションによって明らかにすることで、最適な電極を つくれるようになる。 Fig. 5 電極性能拡散性への(a)高分子体積分率、(b)高分子の微粒子吸着性、の影響 [%] [%]

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5. まとめと今後の課題 材料から工程までを直接扱うことのできる大規模な粒子モデルを用いた計算により、スラリー 中の溶媒蒸発後に形成される多孔質構造の予測モデルを開発した。分子レベルの粒子モデルとマ クロスケールのメッシュ法をシームレスに連結させることにより、形成後の電極性能としての拡 散性評価法を確立した。実験との比較により定性一致を確認できたので、スラリーの組成・材料 を変えた時の影響について調べ、塗工プロセスで起きている現象を明らかにすることができた。 今後は、実験検証に用いることができるミクロスケールの物性測定を充実させてモデルの精度 を向上させるとともに、スラリー中の高分子の剛直性や溶媒の蒸発速度などについても現象解明 を行いスラリー塗工で用いる材料や工程条件の最適化を目指していく。 参考文献

[1] K. Kremer, G. S. Grest, J. Chem. Phys., 92, 5057 (1990)

[2] M. Tsige, T. R. Mattsson, G. S. Grest, Macromolecules, 37, 9132 (2004) [3] JSOL Corporation. “J-OCTA”. http://www.j-octa.com/

[4] http://octa.jp/

[5] Z. Yu, R. N. Carter, J. Power Sources, 195, 1079 (2010)

[6] M. Lopez-Haro, L. Guétaz, T. Printemps, A. Morin, S. Escribano, P.-H. Jouneau, P. Bayle-Guillemaud, F. Chandezon, G. Gebel, Nature Communications, 5, 5229 (2014)

Fig. 2   蒸発前のスラリーの(左) 100 万粒子、(右) 400 万粒子、のモデル (黄色が微粒子、赤色が高分子、水色が溶媒) Table 1   セルと削除領域の(左) 100 万粒子モデル、(右) 400 万粒子モデル、におけるサイズ   溶媒蒸発後の多孔質構造の性能として、微粒子・高分子・空孔それぞれの構造起因の拡散性を 評価した。具体的には上下に濃度勾配を与えて拡散方程式を解き、全空間が一様に満たされてい る時の拡散係数に対する比率を求めた。それぞれの構造中の拡散性は、燃料電池なら触媒層に

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