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ICUにおける酸素療法

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Academic year: 2021

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(1)

2016年12月27日

慈恵

ICU Journal Club

研修医

2年目 石割 圭一

(2)

背景①

ü高酸素血症の直接的な肺毒性が、間質の線維化 や無気肺、気管・気管支炎に至る可能性がある。

N Engl J Med.1983;309(15):878-883. Annu Rev Physiol.1986;48:721-731.

ü高酸素血症が全身の末梢血管を収縮する。

Chest.1991;99(3):690-694.

ü動物実験において、高酸素血症が活性酸素を増 加させる。

(3)

背景②

üThe PROXI trialにおいて、周術期のFiO2高値と術 後30日死亡率の増加傾向を報告した。 JAMA. 2009; 302(14):1543-1550. üThe AVOID trialにおいて、低酸素血症の合併しな いST上昇の心筋梗塞への酸素投与が、早期の心 筋障害を増加し、発症6か月時点での心筋梗塞の サイズと相関した。 Circulation.2015;131(24):2143-2150.

(4)

目的:ICU患者において、控えめな酸素投与(SpO2:94 ~98%)は従来の酸素投与(PaO2≦150mmHgまたは SpO2:97%~100%)と比較して、予後を改善するのか。

(5)

方法①

ü単施設(イタリアのModena大学のsurgical ICU) üデザイン:非盲検化、無作為化比較試験 ü期間:2010年3月1日~2012年10月30日 ü対象:18歳以上で72時間以上のICU入室が見込ま れる患者

(6)

Exclusion criteria

ü18歳未満、妊娠者、ICU再入室、治療制限、免疫抑制また は好中球減少症の患者。 ü生命予後が24時間未満と見込まれる患者。 üCOPDの急性増悪患者やARDSの患者でPaO2/FiO2比が150 未満の患者は、異なるプロトコールで酸素投与療法が行わ れるので除外された。

Inclusion criteria

ü 18歳以上で72時間以上のICU入室が見込まれる患者

(7)

方法②

【統計解析】

üサンプルサイズの決定

3日以上の

ICU滞在患者の死亡率:23%

両群間で

6%の死亡率の差を検出するため、

検出力

80%, αエラー0.05と設定して計算。

üサンプルサイズ:

2年間で660人⇒32カ月で

480人(中断のため)

(8)

方法③

【研究の中断】

2012年5月に大規模な地震が発生した。その後、病 床数の削減によって患者登録が予定より18-20カ 月間の延長が必要となった。また看護スタッフによ る酸素療法の標準化に偏りが起きる可能性があっ た。2012年10月に研究を32カ月間(480人)で中断し て、予定外であるが中間解析を行われた。Primary outcomeにおいて両群間で有意差が得られ、統計 専門家と倫理委員会と相談の上で研究は中断され た。

(9)

方法④

【統計解析】

ü

Outcomeの解析:intention-to-treat解析

ü

Baselineと outcome の検定:Mann-Whitney

UとX²検定

ü 死亡までの時間における控えめな酸素投

与療法の効果は、

Kaplan-Meier解析とlog-rank検定で行われた。

ü患者背景と

ICU滞在時間でprimary outcome

のサブグループで

post hoc解析が行われた。

(10)

Study treatment

Conservative群: 控えめな酸素療法 • PaO2:70~100 mmHg またはSpO2 94~98% • 上記の目標を達成でき る最小限の値。 • FiO2は徐々に減量し、 PaO2 100mmHg または SpO2 98% 以上ならば、 酸素投与は終了とする。 Conventional群: 標準的な酸素療法 • PaO2≦150 mmHg また はSpO2:97%~100% • 上記の目標を満たすま では、最低0.4以上。 • SpO2が95~97%以下に 低下した場合は、目標 のSpO2に至るまでFiO2 を増加させる。 目標 設定変更 FiO2

(11)

Outcome

üPrimary outcome: ICUにおける死亡率 üSecondary outcome: ・ICU入室後、48時間以上が経過してからの新 規発症の呼吸器、心血管、肝臓、腎の機能 不全(SOFA score≧3点) ・再手術 ・血液・呼吸器系・創部の感染 ・院内死亡率 ・ICU滞在期間でのVentilation-free hours

(12)

フローチャート

Modified intention-to-treat解析から46人が除 外された。 ・2人が同意を撤回。 ・9人がデータ不足。 ・35人が72時間以上の ICU滞在時間がなかった。 1045人中、565人が除外基準をみたした。 480人が無作為化割り付けをされた。 236人がConservative群、244人 がConventional群。

(13)

Characteristic of the patients

患者背景としては、ICUの入室形態はSurgicalが約60%と多く、呼吸不全と人工呼 吸器管理患者の割合が多い。またSAPSⅡスコアの中央値は38前後。有意差は ないが患者背景はConventional群で重症な傾向がある。 呼吸不全 人工呼吸器

(14)

→Conservative群でICU死亡率、院内死亡率、新規発症のショック・ 肝不全・菌血症は有意に少く、またVentilation-free hoursが有意に 長かった。

(15)

→Conservative群で生存率が有意に改善する。

Median follow-up: 22days 〔IQR,13-37〕

Median follow-up: 24days 〔IQR,15-35〕

(16)

Oxygen control

• Conventional群: median FiO2,0.39〔IQR,0.35-0.45〕 median PaO2,102mmHg〔IQR,88-116〕 • Conservative群: median FiO2,0.36〔IQR,0.30-0.40〕 median PaO2,87mmHg〔IQR,79-97〕 →時間的荷重平均で、Conventional 群で有意にFiO2, PaO2は高かった。 控えめな酸素療法群 標準酸素療法群 102 87 0.39 0.36

(17)

→ICU死亡率とPaO2の時間的加重平均はU字の相関を示して いる。またPaO2>107mmHg以上が最も死亡率が高い。

(18)

→新規発症の臓器機能不全は、PaO2の時間的加重平均 と相関して増加した。

(19)

→Ventilation-free hoursは、PaO2の時間的加重平均と逆U 字の相関があった。

(20)

ü434人に対して、ICU死亡率をサ ブグループで事後解析を行った。 üConservative群は、ICU入室時に 呼吸器不全であった患者のICU 死亡率を12.8%下げた。 ü 人工呼吸器管理であった患者の ICU死亡率を10.9%下げた。 üICU滞在時間が6日以下の患者 のICU死亡率も9.4%も下げた。

事後解析

呼吸不全 人工呼吸器 ICU滞在期間≦6日 ショック 肝不全 腎不全 感染症 有意差はないが、その他 のICU入室時の患者背景 でも、Conservative群は ICU死亡率が少ない傾向 があった。

(21)

ü478人にITT 解析も行われた。 üModified ITT 解析と同様の 結果であった。 üconservative群はICU死亡率 を8.7%、院内死亡率を8.2% 減少させた。 üConservative群は新規発症 のショック・肝不全・菌血症 も有意に少く、Ventilation– free hoursが有意に長かっ た。 ü呼吸器や創部感染症の新 規発症は、両群で有意差は 認めなかった。

ITT解析

(22)

Discussion①

ü控えめな酸素療法(目標:SpO2 94-98%)が従来の 酸素療法と比較して、ICU死亡率を8.6%改善した。 ü控えめな酸素療法は、菌血症とショック、肝不全 の新規発症率低下と関連があった。 ü本研究の結果は、自然免疫における高酸素血症 の有害な効果が影響している可能性がある。

(23)

Discussion②

ü本研究では呼吸不全患者(

58%)が多く含ま

れていたため、新規発症の呼吸不全が両群

で有意差が出なかった可能性がある。

ü従来の酸素療法群で

Ventilation-free hours

が短かったのは、過剰な酸素投与が既存の

肺障害を悪化させ、回復を妨げている可能

性がある。

(24)

高酸素血症の有害性

ü短時間の常圧の高濃度酸素(FiO2≧0.8)が白血球のサ

イトカイン産生を減少させ、肺胞マクロファージの構造変 化を引き起こす。

Anesthesiology.2010;113(2):369-377. Am J Respir Cell Mol Biol.2003;28(4):443-450.

ü甲状腺手術を行った患者において、術後の酸素投与を FiO2:0.8で行った群では、FiO2:0.3の群よりCRPと血清IL-6、IL-10の値が少なかった。

Am J Respir Cell Mol Biol.2003;28(4):443-450.

ü高酸素血症の肺毒性は、ARDSや人工呼吸器関連肺障

害と同様の組織学的変化を引き起こす。

N Engl J Med.1967;276 (7):368-374. Crit CareMed.2004;32(12):2496-2501.

(25)

Limitation①

ü単施設非盲検化試験

ü本研究は、予定外に早期中断された。

ü患者背景において、従来の酸素療法群で重症

患者

(人工呼吸器管理、ショック、感染症、呼

吸・肝・腎機能不全)が少し多い傾向にあったこ

とが、

ICU死亡率に影響を与えた可能性がある。

ü細菌学的検体で同定されたときのみ感染症と

判断するので、新規感染症の発症を過小評価

している可能性がある。

(26)

Limitation②

ü本研究は、新規発症の臓器不全や感染症の

不十分なデータを避けるために、

Outcomeの解

析方法として

Modified ITT解析が選択された。

üただし、

ITT解析でもModified ITT解析と同様の

結果が得られている。

ü脳卒中や外傷性脳損傷

31人(6.9%)、急性心

筋梗塞

19人(4.4%)に関して、サンプルサイズ

が小さく、解析がなされていない。

(27)

Conclusion

ü

ICU滞在時間が72時間以上となる重症

患者において、控えめな酸素療法は従

来の酸素療法と比較して、

ICU死亡率

を低下させる。

ü早期に中断した研究に基づいた結果

であり、より大規模な多施設の研究で

控えめな酸素療法の有効性を評価す

ることが求められる。

(28)

Editorial①

ü両群の患者背景に偏りがある。控えめな酸素療 法群で年齢や重症度、臓器不全に関して有利で ある。 ü本研究は予定外の中間解析で良好な結果が得ら れた後に、研究が早期中断となった。中間解析は 過大評価の可能性があると知られている。 ü500人近い患者を集めたにも関わらず、Outcome の数が極めて少ない。控えめな酸素療法群での ICU死亡者数は25人のみである。有意差があって も偽陽性である可能性が高い。

(29)

Editorial②

ü

Modified ITT解析は、無作為化した後のイベン

トに基づいて患者を除外するので、その介入が

解析結果に影響を与える。

üただし本研究では、

Modified ITT解析とほとん

ど同様の結果が

ITT解析でも得られた。

ü

ITT解析でも、控えめな酸素療法はICU死亡率

8.7%(P=.009)低下させた。

ü

The ANZICS Clinical Trial GroupからのPilot

studyでは、控えめな酸素療法に関して、本研

究と異なる結果であった。

(30)

ü 研究デザイン:多施設無作為化試験 ü 目的:人工呼吸器管理を必要とする患者で、制限のない 酸素療法と比較して控えめな酸素療法の実現可能性を検 討する。 ü 対象:18歳以上で24時間以上の人工呼吸管理を受けた ICU患者108人 ü 方法:控えめな酸素療法(SpO2:88~92%)群52人と制限 のない酸素療法(SpO2:96%以上)群51人で比較した。 控えめな酸素療法は、制限のない酸素療法と比較して、新規臓器 不全発症・ICU死亡率・90日生存率に改善効果がなかった。

(31)

制限のない酸素療法群でも、SpO2>98%の時間は22%、PaO2>120mmHgの 時間は13%であり、高酸素血症であった時間が短い。 生存分析曲線は両群で有意差 はない。 制限のない酸素療法 控えめな酸素療法

(32)

Conservative群 vs. Liberal群 SpO2 (93.4% [92.9–93.9%] vs. 97% [96.5–97.5%]) SaO2 (93.5% [93.1–94%] vs. 96.8% [96.3–97.3%]) PaO2 (70 [68–73] mm Hg vs. 92 [89–96] mm Hg) FIO2 (0.26 [0.25–0.28] vs. 0.36 [0.34–0.39) (P, 0.0001forall). 88~92% 96%以上 →Girardis らの研究では、FiO2、 PaO2が高めに設定されている。 FiO2:0.36 vs. 0.39 PaO2:87 vs. 102 mmHg

(33)

Editorial③

ü本研究での目標と実際のPaO2は、控えめな酸素 療法群と従来の酸素療法ともに高めに設定されて いた。本研究は、PaO2が控えめと従来群で(87 vs. 102 mmHg)に対して、The ANZICS pilot studyは(70 vs. 92 mmHg)であった。 ü現時点では、ICUにおける酸素療法は、やや低め に設定し、生理学的に正常な範囲でPaO2に管理し て、高酸素血症の危険性をさける。

(34)

私見

【本研究の問題点】

ü単施設の研究である。 ü早期に研究が中断し、結果を過大評価をしている 可能性がある。 ü控えめな酸素療法群と従来の酸素療法群で、 FiO2(0.36 vs. 0.39)とPaO2(87 vs. 107 mmHg)と有 意差があるも、差が小さい。 ü従来の酸素療法群に重症患者が多い傾向がある。

(35)

私見②

【酸素療法について】

ü控えめな酸素療法(

SpO2:94~98%を目標)

は、

ICU死亡率や院内死亡率を改善する可

能性がある。

ü特に呼吸不全や人工呼吸器管理の患者に

おいて、より効果があるかもしれない。

ü

The ANZICS pilot studyの結果も考慮すると、

PaO2が低すぎても、高すぎても、予後を改善

しないかもしれない。

(36)

私見③

【今後の研究の方向性】

ü大規模な多施設の研究が望まれる。

ü目標とすべき

SpO2、PaO2の設定が肝心と

なる。

→本研究ではPaO2:82~93mmHgがICU死亡

率を最も改善した。

ü疾患ごとに至適な

PaO2を検討する必要性

がある

参照

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