JAEA-T
ec
hnolog
y
核燃料再処理施設におけるグローブボックスパネルの更新
Replacement of the Glove Box Panel in Nuclear Fuel Reprocessing Facility
Masahiko YAMAMOTO, Hidetomo SHIROUZU, Eito MORI and Naoki SURUGAYA
バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 再処理技術開発センター 施設管理部
Technical Services Department Tokai Reprocessing Technology Development Center Nuclear Fuel Cycle Engineering Laboratories Sector of Decommission and Radioactive Waste Management
山本 昌彦 白水 秀知 森 英人 駿河谷 直樹 JAEA-T ec hnology 2016-009 核燃料再処理施設におけるグローブボックスパネルの更新 日本原子力研究開発機構
JAEA-Technology
2016-009
DOI:10.11484/jaea-technology-2016-009This report is issued irregularly by Japan Atomic Energy Agency.
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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 研究連携成果展開部 研究成果管理課 〒319-1195 茨城県那珂郡東海村大字白方 2 番地4
核燃料再処理施設におけるグローブボックスパネルの更新 日本原子力研究開発機構 バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 再処理技術開発センター 施設管理部 山本 昌彦, 白水 秀知+, 森 英人※, 駿河谷 直樹 (2016 年 3 月 15 日受理) 東海再処理施設の分析所小型試験設備に設置されたグローブボックスは、長期の使用 に伴い、透明パネルが劣化して視認性が低下していたため、予防保全の観点から、パネ ルを更新した。グローブボックスのパネルには、可燃性のアクリルが多く使用されてい るが、平成23 年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後に制定された核燃料施設等 に係る新規制基準では、核燃料物質を取り扱うグローブボックスは、不燃性材料又は難 燃 性 材 料 を 使 用 す る こ と が 要 求 さ れ て い る 。 本 更 新 で は 、 米 国 Underwriters Laboratories 社が定めるプラスチックの燃焼性試験規格である UL94 で高い難燃性を 示すV-0 級に適合したポリカーボネートを用いてパネルを製作し、新規制基準への適合 を試みた。また、対象となるグローブボックスは供用中であるため、その内部は放射性 物質によって汚染されており、更新作業中も閉じ込め機能は維持する必要がある。そこ で、パネル開口部はビニール製シートで囲うとともに、作業場所周辺にはグリーンハウ スを設置することで、閉じ込め機能の確保を図った。また、汚染の拡大を防止するため、 事前にグローブボックス内部の汚染状況を調査し、除染を実施するとともに、作業者の 被ばくを評価して、作業時に必要となる放射線防護具を選定した。更新作業終了後、新 たに設置したポリカーボネート製パネルの材質検査、据付・外観検査、パネルを更新し たグローブボックスの負圧検査、漏えい検査を実施し、パネル及びグローブボックスの 閉じ込め機能が更新前と同様に維持できることを検証した。 核燃料サイクル工学研究所:〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 + 再処理技術開発センター 処理部 ※ 技術開発協力員
Masahiko YAMAMOTO, Hidetomo SHIROUZU+, Eito MORI※
and Naoki SURUGAYA Technical Services Department,
Tokai Reprocessing Technology Development Center, Nuclear Fuel Cycle Engineering Laboratories,
Sector of Decommission and Radioactive Waste Management, Japan Atomic Energy Agency
Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken (Received March 15, 2016)
The panels for visual confirmation of glove box installed at Operation Testing Laboratory in Tokai Reprocessing Plant have been deteriorated and transparencies have been decreased due to the long-term use. Therefore, the glove box panels have been replaced from the view point of preventive maintenance. In the new regulation formulated since the accident at Tokyo Electric Power Company’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, it is demanded that the glove box consists of incombustible or noncombustible materials. In this replacement, the new panels have been manufactured with the polycarbonate which satisfied the UL94 V-0 incombustible class. The glove box has been in service for 40 years and its inside is contaminated with radioactive materials. Thus, the contaminations have been investigated and decontaminated before the replacement work. Then, operator’s exposure and radiation protection equipment have been estimated. Also, it is necessary to replace the panels with maintaining the glove box’s enclosure function. The replacement has been conducted in closed space covering the opening parts with vinyl sheets. The enclosure function has been verified by the inspection of the new panels and glove box.
Keywords: Glove Box, Transparent Panel, Polycarbonate, Replacement Work, Incombustible Material
+ Reprocessing Operation Department, Tokai Reprocessing Technology Development Center
目次 1. はじめに ··· 1 2. 更新対象グローブボックスの概要 ··· 2 3. 更新するパネルの材質 ··· 3 4. グローブボックス内の汚染の処置 ··· 4 4.1 汚染状況の調査 ... 4 4.2 遊離性汚染の除去 ... 4 4.3 汚染の固定 ... 5 5. 安全対策 ··· 6 5.1 グリーンハウスの設置 ... 6 5.2 作業者の内部被ばく評価 ... 7 5.3 作業者の外部被ばく評価 ... 9 5.4 作業者の放射線防護具の選定 ... 9 5.5 その他の安全対策 ... 9 6. 更新の工程 ··· 10 6.1 作業手順の策定 ... 10 6.2 インナーバッグの取り付け ... 10 6.3 押さえ板の取り外しと仮押さえ板の取り付け ... 11 6.4 アウターバッグの取り付け ... 11 6.5 アクリル製パネルの取り外しとパネル取り付け面の清掃・除染 ... 11 6.6 ポリカーボネート製パネルの取り付け ... 12 6.7 パネルの締め付けトルク ... 13 6.8 作業工数 ... 14 6.9 廃棄物の処理 ... 14 7. 検査 ··· 15 7.1 材質検査 ... 15 7.2 据付・外観検査 ... 15 7.3 負圧検査 ... 15 7.4 漏えい検査 ... 16 8. まとめ ··· 18 謝辞 ··· 18 参考文献 ··· 19 付録 ··· 53
Contents
1. Introduction ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2. Overview of the glove box ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 3. Material of the new panel ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 4. Treatment of the glove box contamination ・・・・・・・・・・・・・・・・4 4.1 Investigation of the glove box contamination ・・・・・・・・・・・・・・4 4.2 Removal of the loose contaminations ・・・・・・・・・・・・・・・・・4 4.3 Covering and fixing the contaminations ・・・・・・・・・・・・・・・・5 5. Safety assessment・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 5.1 Green house set up・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 5.2 Evaluation of the operator’s internal exposure ・・・・・・・・・・・・・7 5.3 Evaluation of the operator’s external exposure ・・・・・・・・・・・・・9 5.4 Selection of worker’s protection ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 5.5 Other safety assessment ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 6. Replacement of glove box panels ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 6.1 Replacement procedure ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 6.2 Attachment of inner bag ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 6.3 Removal of holding plate and set up of temporary plate ・・・・・・・・11 6.4 Attachment of outer bag ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 6.5 Removal of the acryl panels and cleaning the glove box surface ・・・・・11 6.6 Installation of polycarbonate panels ・・・・・・・・・・・・・・・・・12 6.7 Tightening torque of panels ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 6.8 Workload for panel replacement ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 6.9 Waste treatment ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 7. Inspection ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 7.1 Material inspection ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 7.2 Installation and appearance inspection ・・・・・・・・・・・・・・・・15 7.3 Inspection of the glove box inner pressure ・・・・・・・・・・・・・・15 7.4 Leakage inspection ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 8. Conclusions ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 Acknowledgement ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 References ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 Appendix ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
図リスト Fig. 1 グローブボックスの配置とその概略図 ··· 20 Fig. 2 パネル、ガスケット、押え板の構造及び取り付け位置 ··· 21 Fig. 3 グローブボックス床面、天井、側面、パネルの表面汚染密度 ··· 24 Fig. 4 グリーンハウスの概略図と主な仕様 ··· 26 Fig. 5 パネル更新の作業フロー ··· 30 Fig. 6 インナーバッグの概略図 ··· 30 Fig. 7 パネル押さえ板の取り外しフロー ··· 32 Fig. 8 アウターバッグの概略図 ··· 36 Fig. 9 除染後のパネル取り付け面の表面汚染密度 ··· 40 Fig. 10 ペイント固定後に測定したパネル取り付け面の表面汚染密度··· 41 Fig. 11 ポリカーボネート製パネルの養生方法 ··· 42 Fig. 12 スタッドボルトへのナットの締め付けトルク ··· 44 Fig. 13 パネル更新で発生した廃棄物の発生量及びその内訳 ··· 47 Fig. 14 ハロゲンリークディテクターによる漏えい検査の概略図 ··· 50 Fig. 15 ハロゲンリーク試験法による漏えい検査実施箇所 ··· 52 表リスト Table 1 難燃性試験規格 UL94 の試験方法、判定基準 ··· 22 Table 2 アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニールの主な物性の規格値 ··· 23 Table 3 各グリーンハウスにおける作業者の放射線防護具 ··· 29 Table 4 パネル更新作業の作業項目と作業人工 ··· 46 Table 5 パネル更新作業で使用した主な物品とその使用数量 ··· 46 Table 6 検査用資料及び検査用計器一覧 ··· 48 Table 7 ポリカーボネートの基本物性及び厚みの検査結果 ··· 49 Table 8 ポリカーボネートの難燃性に係る検査結果 ··· 49 Table 9 ポリカーボネート製パネルの据付・外観検査結果 ··· 50 Table 10 グローブボックスの負圧検査結果 ··· 50 Table 11 グローブボックスのパネルの漏えい検査結果··· 52
写真リスト Photo. 1 グローブボックスの外観及びパネルの劣化状況 ··· 21 Photo. 2 スプレー式ペイントによる汚染固定後のパネル ··· 25 Photo. 3 グリーンハウスの設置 ··· 25 Photo. 4 グローブボックス保護用のプラスチック板 ··· 27 Photo. 5 テープ等を用いたパネル周辺の養生 ··· 27 Photo. 6 グリーンハウスに設置した線ダストモニタ ··· 28 Photo. 7 放射線防護具を着用した作業者 ··· 28 Photo. 8 グローブボックスに取り付けたインナーバッグの外観 ··· 31 Photo. 9 インナーバッグの設置箇所 ··· 31 Photo. 10 インナーバッグ取り付け後のグローブボックス ··· 32 Photo. 11 押さえ板取り外し時に設置したトレイ ··· 33 Photo. 12 パネル押さえ板の取り外し作業 ··· 33 Photo. 13 取り外し後の押さえ板 ··· 34 Photo. 14 仮押さえ板によるパネルの固定 ··· 34 Photo. 15 スタッドボルトに取り付けた真鍮製保護キャップ ··· 35 Photo. 16 汚染固定後のパネル取り付け部周辺 ··· 35 Photo. 17 アウターバッグの取り付け ··· 36 Photo. 18 アウターバッグ取り付け後のグローブボックス ··· 37 Photo. 19 アクリル製パネルの取り外し ··· 37 Photo. 20 取り外し後に廃棄用ビニールバッグからバッグアウトしたパネル ··· 38 Photo. 21 アウターバッグを調整して作成した仮設ヒュームフード ··· 38 Photo. 22 パネル取り付け面のガスケット付着跡 ··· 39 Photo. 23 パネル取り付け面の清掃、除染 ··· 39 Photo. 24 ペイント固定後のパネル取り付け面 ··· 42 Photo. 25 ビニール製シート等による養生後のポリカーボネート製パネル ··· 43 Photo. 26 ポリカーボネート製パネルの取り付け ··· 43 Photo. 27 パネルの締め付けトルクの調整 ··· 44 Photo. 28 グリーンハウスの解体、撤去 ··· 45 Photo. 29 パネル更新終了後のグローブボックス ··· 45 Photo. 30 不燃性廃棄物として搬出したアクリル製パネル ··· 47 Photo. 31 検査用ビニールバッグ取り付け後のグローブボックス ··· 51 Photo. 32 検査用ビニールバッグにサーチガス充填後のグローブボックス ··· 51
1. はじめに 東海再処理施設の分析所にある小型試験設備は、再処理施設の安全、安定運転、及び 再処理技術の高度化を図る上で重要な使用済燃料の溶解特性、溶解液等の溶媒抽出特性 等を評価するための試験施設として建設され、昭和47 年に竣工した。このような施設 では、プルトニウム(Pu)等の放射性物質の飛散又は漏えいを防止するため、グローブボ ックスが使用されている。グローブボックスは、放射性物質等を隔離した状態のまま目 視で取り扱えるように、透明パネルや試料取り扱い用グローブを取り付けた箱型の装置 であり、その多くは、本体の材質にステンレス鋼、パネルにアクリル、本体とパネル間 の密閉にクロロプレンゴム製ガスケットが使用されている。小型試験設備でも建設以来、 上述に示すようなグローブボックスが順次設置されてきたが、これらは設置から約 40 年が経過しており、一部のグローブボックスではアクリル製パネルの劣化が見られてい た。特に、これまでPu の溶媒抽出等の試験で使用されてきたグローブボックスは、パ ネルの透明度が低下し、視認性が悪化していた。このため、本件では、このグローブボ ックスパネルの更新を試みた。 平成23 年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故後に制定された核燃料施 設等に係る新規制基準では、核燃料物質等を取り扱うグローブボックスは、不燃性材料 又は難燃性材料を使用することが要求されている1)。しかし、多くのグローブボックス パネルの材質として使用されているアクリルは、空気中で可燃性を示す物質であり、そ の使用状況に応じて、不燃化又は難燃化等の適切な火災防護対策を講じる必要がある。 本件では、更新により新たに取り付けるパネルは、この新規制基準へ適合させるため、 難燃性を示すプラスチックから材質を選定して製作した。 また、更新対象のグローブボックスは供用中であるため、その内部は放射性物質によ って汚染されており、作業にあたっては作業者の被ばくと汚染拡大の防止を図る必要が ある。さらに、更新作業終了後のパネルについては、作業前と同様にグローブボックス が閉じ込め機能を確保していることを検証する必要がある。これらを踏まえ、本件では、 作業場所の空気中の放射性物質濃度等の評価、各種安全対策、パネルの更新作業手順と 検査方法について検討して、作業を実施した。本報告書は、この内容についてまとめた ものである。
2. 更新対象グローブボックスの概要 本件で更新対象となるグローブボックスは、小型試験設備のプルトニウム精製室に昭 和53 年に設置された G 型グローブボックスである。当該室内における対象グローブボ ックスの配置と概略図をFig. 1 に示す。更新対象の周囲には、2 台のグローブボックス と2 台のヒュームフードが設置され、5 m 程度離れた位置には、3 台のグローブボック スが設置されている。さらに、更新対象のグローブボックスは、架台上に設置されてお り、その寸法は、高さ1050 mm、横 3000 mm、奥行 700 mm である。このため、パ ネルの更新作業は、これらの設備・機器との取り合いを考慮して計画する必要がある。 グローブボックス本体の材質は、再処理施設で使用頻度の高い硝酸による腐食を考慮 してステンレス鋼であるSUS304L が使用されている。また、正面と背面の窓板にはグ ローブポートが取り付けられた6 枚の透明アクリル製パネルが設置されている。パネル は、Fig. 2 に示すようにクロロプレンゴムを原料としたコの字型の断面を有するガスケ ットによって端部を覆い、スタッドボルトを通した L 字型のステンレス製押さえ板で ナットにより密閉され、その漏えい率は、0.1 vol%/h 以下となるように設計されている 2),3)。以下に、アクリル製パネルの主な仕様を示す。 その他、グローブボックスの付属品として、ビニールバッグを取り付けたバッグポー ト、給気設備、排気設備、負圧計がある。グローブボックス内は、上部に取り付けられ た給気設備及び排気設備によって、常時負圧(設置室内の気圧に対して-300±50 Pa 又 は-30±5 mmH2O)となるように維持されている。なお、当該グローブボックスでは、 これまでPu 等の放射性物質を主に硝酸水溶液系で取り扱ってきた。グローブボックス 内部は、これらの試料が乾固して汚染となっていることが考えられた。また、グローブ ボックスパネルは、Pu の抽出試験等で使用してきた有機溶媒により、Photo.1 に示す ような経年劣化が発生し、表面は曇り、透明度が低下していた。 (1) 材質 透明アクリル樹脂 (2) 寸法 縦962 mm×横 960 mm×厚さ 10 mm (3) 重量 約11 kg(パネル 1 枚あたり) (4) 付属品 グローブポート及びグローブ(パネル 1 枚あたり4箇所) (5) 燃焼性 可燃性 (6) 化学的特性 酸、アルカリに対して耐性有り
3. 更新するパネルの材質 プラスチックの燃焼性を判断する指標としては、米国Underwriters Laboratories 社 による試験規格UL94 がある4)。これは、米国で提唱された規格だが、現在、日本のプ ラスチック産業界では、UL94 を燃焼性試験規格として広く採用している。UL94 で定 める試験は、所定の試験片を水平及び垂直に保持した条件で燃焼性を確認する水平燃焼 (HB)試験と垂直燃焼(V)試験の 2 種類がある。その試験方法及び判定基準を Table 1 に 示す。UL94 の HB 試験に適合する材料は遅燃性を示し、V 試験に適合する材料は V-2、 V-1、V-0 の順で高い難燃性を有し、自己消化性を示す。本件では、グローブボックス パネルの難燃化にあたって、UL94 の各グレードのうち、高い難燃性を示す V-0 に適合 するプラスチックをパネルの材質として検討した。 UL94 V-0 に適合する代表的なプラスチックとしては、分子骨格である直鎖状炭素-炭素結合の中に芳香族を加えて難燃性を高めたポリカーボネートや分子内に窒素及び ハロゲン系元素を加えて難燃性を高めたポリ塩化ビニールが広く知られている。日本工 業規格(JIS)にて規定されているポリカーボネート 5)、ポリ塩化ビニール 6) 及び現在グ ローブボックスパネルとして使用しているアクリル7) の主な物性の規格値等をTable 2 に示す。各材質の機械的性質、耐酸性、耐アルカリ性、耐有機溶媒性は、ほぼ同じであ ったが、ポリカーボネートの熱的性質は、荷重たわみ温度とビカット軟化温度が他のプ ラスチックよりも高く、また880 kGy までの積算線量範囲において放射線の影響を受 けず、耐放射線性にも優れている8)。耐震性能については、パネルの材質を変更した場 合でも、グローブボックスの全体重量が変化しなければ、これまでと同様の性能を維持 することができる。各材質の比重を比較すると、ポリ塩化ビニールの比重は、約1.4 と 他の材質よりも若干高いが、ポリカーボネートの比重は、約1.2 とアクリルと同じ値で ある。このため、グローブボックスパネルの材質をポリカーボネートに変更しても全体 の重量は不変であり、耐震評価上の問題はない。これらのことから、グローブボックス パネルの材質は、ポリカーボネートを選択した。新たに設置するパネルは、JIS で規定 されるTable 2 に示す機械的性質及び熱的性質を満足し、UL-94 V-0 に適合するポリカ ーボネートとして、積水化学工業製エスロンDC プレート(PH-407-AS)を加工して、従 来のアクリル製パネルと同じ寸法で製作した。なお、本件では、グローブボックスの固 有振動数と応力を参考までに評価した。耐震評価方法としては、計算コードで数値解析 を実施する有限要素法が主流であるが、本件では、モデル化が簡便で迅速に耐震性能を 評価できる1 質点系梁モデルによる評価方法を適用した(耐震評価の詳細については、 付録を参照のこと)。
4. グローブボックス内の汚染の処置 更新対象であるグローブボックスの内部は、これまでの使用により、Pu 等の放射性 物質によって汚染されている。このため、作業前に汚染状況を調査し、除染作業を実施 した。以下、各作業の詳細を示す。 4.1 汚染状況の調査 グローブボックス内部の汚染は、これまで取り扱ってきた試料の状況から、硝酸 Pu 溶液等の乾固物が原因と考えられた。このような汚染の形態には、放射性物質が取れや すい遊離性汚染と、固着して取れにくい固着性汚染がある。固着性汚染は固着部位に留 まっているため、直接接触しなければ大きな問題とはならないが、遊離性汚染は作業中 に容易に拡散するため、身体汚染の原因となる。そこで、本件ではまず、遊離性汚染の 状況を専用のろ紙(スミヤろ紙)で拭き取るスミヤ法で調査した。スミヤろ紙は、グロー ブボックス内表面の所定面積(100 cm2)を拭き取り後に取り出し、ポリエステル製フィ ルムで包み、測定用試料に調整した。その後、線シンチレーション式サーベイメータ(日 立アロカメディカル製TCS-21JE)及び線 GM 管式サーベイメータ(日立アロカメディ カル製TGS-146B)を用いて、表面汚染密度を求めた。なお、線はポリエステル製フィ ルムによる減衰率30 %、スミヤろ紙による拭き取り効率 10 %、サーベイメータの機器 効率100 %、線は線源効率 50 %、スミヤろ紙による拭き取り効率 10 %、サーベイメ ータの機器効率40 %として評価した。 その結果、表面汚染密度はグローブボックスの床面が最も高く、サーベイメータの検 出上限である: 7.1×103 Bq/cm2、: 2.5×102 Bq/cm2を超える値であった。また、パ ネルは、床面より若干低いものの: 5.7×103 Bq/cm2、:8.3×101 Bq/cm2と、高い表 面汚染密度を示した。 4.2 遊離性汚染の除去 当該グローブボックスでは、これまで硝酸水溶液系でPu 等の放射性物質を取り扱っ てきた。一般に、物質と固体表面の吸着には、ファンデルワールス力による物理吸着、 化学結合による化学吸着、イオンが反対電荷の表面にひきつけられる静電吸着がある。 グローブボックスで使用されているSUS304L とアクリルは、硝酸への耐薬品性を有す るため、放射性物質が化学吸着している可能性は低い。また、硝酸Pu 溶液等が乾固し た硝酸塩は電気的に中性であるため、静電吸着を起こしている可能性も低く、汚染は固 体表面への物理吸着によるものと考えられた。そこで、遊離性汚染は、まず放射性物質 を溶媒に溶解させるように水、アルコール、中性洗剤を湿らせたウェスで拭き取り、そ の後、不繊維布製スポンジ(3M 製スコッチブライト)及びメラミン樹脂製スポンジ(Lec 製メラミンスポンジ)による物理的除去を試みた。なお、作業中の表面汚染密度はスミ
ヤ法で調査した。 Fig. 3 にグローブボックス内部の床面、天井、側面及びパネルの除染結果を示す。水、 アルコール、中性洗剤を湿らせたウェスによる拭き取りを6 回実施することで、表面汚 染密度は約1/10~1/100 程度にまで低下した。その後、実施した不繊維布製スポンジ及 びメラミン樹脂製スポンジによる3 回の拭き取りにより、表面汚染密度は、: 2.5×102 Bq/cm2以下、: 2.5 Bq/cm2以下にまで低下した。なお、これ以上拭き取りを行っても、 表面汚染密度は低下しなかった。グローブボックス本体及びパネル表面は完全な平坦面 でなく、汚染が微細な傷等に入り込んでいる可能性がある。このため、拭き取りを行っ ても、汚染は完全に除去できなかったと考えられた。 4.3 汚染の固定 4.2 節で示したように、汚染が部材深部に入り込んでいる場合であっても、時間の経 過とともに表面に移行、遊離して、作業中に放射性物質が飛散する可能性がある。そこ で、グローブボックス内部及びパネル表面に塗料等を薄く塗布し、汚染の固定を試みた。 東海再処理施設では、これまでレムパック(日本特殊塗料製)と呼ばれる塗料やスプレ ー式水性ペイント(アサヒペン製)を使用した汚染固定方法がよく用いられてきた。レム パックは、特殊なアクリル系樹脂にキレート剤を加えた厚膜タイプの剥離型塗料であり、 金属との親和性が高く、表面の傷等にも均一に入り込むため、高い固定効果を期待する ことができる。そこで、最も高い表面汚染密度を示したグローブボックス床面には、レ ムパックを使用した。また、調査は行わなかったものの、グローブも高い表面汚染密度 が予想されたため、レムパックを使用して汚染を固定した。一方、スプレー式水性ペイ ントは、スプレー缶に封入された剥離型塗料であるため、塗布が容易であり、グローブ での操作が難しい、天井、側面及びパネル表面の汚染固定に適している。これらの箇所 は、スプレー式水性ペイントで汚染の固定を試みた。Photo. 2 に汚染固定後のパネルの 様子を示す。 固定後、スミヤ法で各箇所の汚染状況を調査した結果、Fig. 3 に示すように表面汚染 密度は、: 33 Bq/cm2以下、: 1.7 Bq/cm2以下にまで低下した。これらの結果より、 グローブボックス内部の放射性物質を減らし、作業者及び作業エリアの汚染リスクを低 減することができた。
5. 安全対策 グローブボックスパネルの更新作業を安全且つ円滑に行うには、放射性物質の拡散と 作業者の被ばくを防止することが重要となる。そこで、作業場所周囲にはグリーンハウ ス(以下、GH とする)を設置し、作業者の内部被ばくと外部被ばくを評価した。また、 評価結果より、作業者が着用すべき放射線防護具を選定した。以下、これら安全対策の 詳細を示す。 5.1 グリーンハウスの設置 GH は、放射性物質が作業場所から拡散するのを防止するため、グローブボックスの 周囲に鋼管パイプとビニール製シートを用いて設置した。Photo. 3 に GH 設置時の様子、 Fig. 4 に設置した GH の概略を示す。GH の設置作業にあたっては、鋼管パイプ等が更 新対象及び周辺のグローブボックスに直接接触するのを防止するため、Photo. 4 に示す 保護用のプラスチック板を各設備及び機器に設置した。また、開口時にグローブボック ス本体表面への汚染発生を防止するため、パネルの周辺はPhoto. 5 に示すように、テ ープを用いて養生を施した。 GH は、4 室構造とし、汚染レベルの高いハウスから順次、GH-1、GH-2、GH-3、 GH-4 とした。GH-1 は、パネルの更新作業を実施するハウスであり、GH-1 からの作 業者は、着用した放射線防護具の表面を除染し、サーベイメータによる汚染検査を実施 してから退出することにした。GH-2、GH-3 は、作業者が放射線防護具を着脱装する ハウスであり、GH-1 からの退出者が、ここで汚染検査を実施して放射線防護具を脱装 できるようにした。GH-4 は、GH からの退出者の最終汚染検査を実施するハウスとし、 ここで確実に汚染がないことを確認してから、GH を退出することにした。このように、 グリーンハウスを4 室構造にすることで、二重三重の汚染検査が可能となり、汚染の拡 大防止を図ることができる9)。また、GH 内は、ビニール製シートを多重に敷設するこ とで、パネルの更新作業中に発生する汚染の漏えいを防止するとともに、汚染が発生し ても、シートを交換することで、容易に除去できるようにした。なお、GH は、排気ブ ロアを用いて、内部を換気することで負圧とし、放射性物質を閉じ込めるようにした。 GH の換気は、GH-4 からプルトニウム精製室内の空気を取り込み、GH-1 から高性能 エアフィルタであるHEPA フィルタ(放射性物質の捕集率 99.97 %)を取り付けた排気ブ ロア(最大排気量:約 15 m3/min)を介して、既設のヒュームフードに接続して行った。 また、ヒュームフードの換気量(約 600 m3/h)と GH の容量(約 48 m3)を考慮しながら、 GH の換気回数が 1 時間あたり 10 回以上となるように、排気ブロアの排気量を約 10 m3/min に調整した。
5.2 作業者の内部被ばく評価 (1) グリーンハウス内の空気中の放射性物質濃度 本更新作業は、供用中のグローブボックスパネルを交換するものであり、放射性物質 の拡散等により、作業者の内部被ばくが発生する可能性があった。このため、作業開始 前にGH 内の空気中の放射性物質濃度を評価した。 4.3 節に示すように、汚染固定後のグローブボックス内部及びパネルにおける放射性 物質の表面汚染密度は、最も高い箇所で: 33 Bq/cm2、: 1.7 Bq/cm2であった。作業 箇所の表面汚染密度が空気中へ舞い上がる程度である再浮遊係数は、2×10-8 cm-1がよ く用いられるが、この値は作業状況によって10-5~10-8 cm-1の範囲で変動する10), 11)。 そこで、GH 内の空気中の放射性物質濃度は、日本原子力研究開発機構核燃料サイクル 工学研究所の再処理施設における放射線管理基準で規定されている5~6 人歩行時の再 浮遊係数(1×10-6 cm-1)を用いて、下記に示すように推定した。なお、パネル更新時の GH 内作業員の数は、2~3 人を予定しており、汚染の固定も実施しているため、計算 に使用する再浮遊係数は、保守側の値を用いている。 GH 内の空気中の放射性物質濃度() = 33 ( Bq cm⁄ 2) ×1×10-6 �cm-1� = 3.3×10-5 ( Bq cm⁄ 3) GH 内の空気中の放射性物質濃度() = 1.7 ( Bq cm⁄ 2) ×1×10-6 �cm-1� = 1.7×10-6 ( Bq cm⁄ 3) これらの結果から、GH 内で予想される空気中の放射性物質濃度は、: 3.3×10-5 Bq/cm3、: 1.7×10-6 Bq/cm3であった。 (2) 呼吸保護具の選定 法令で定められた放射線業務従事者に係る 1 週間平均の空気中の放射性物質濃度限 度をもとに、再処理施設の放射線管理基準では、線、線が混在する場合の空気中の 放射性物質濃度限度を下記のように規定している。なお、線放出核種として 239Pu(濃 度限度7×10-7 Bq/cm3)、線放出核種として90Sr(濃度限度 3×10-4 Bq/cm3)を仮定して いる。 ' = f 1+f� ⁄ � = 19× 3×10-4 1+19×( 3×10-4�7×10-7) = 7.0×10 -7 ( Bq cm⁄ 3) ' = 1+f� ⁄ � = 3×10-4 1+19×( 3×10-4�7×10-7) = 3.6×10 -8( Bq cm⁄ 3)
’ 線の影響を考慮した239Pu の空気中の放射性物質濃度限度������3� ’ 線の影響を考慮した90Sr の空気中の放射性物質の濃度限度(Bq/cm3) 法令で定める放射線業務従事者に係る 1 週間平均の 239Pu の空気中の放 射性物質濃度限度(7×10-7 Bq/cm3) 法令で定める放射線業務従事者に係る1 週間平均の90Sr の空気中の放射 性物質濃度限度(3×10-4 Bq/cm3) f 作業箇所の線と線の表面汚染密度の比(33/1.7=19) この結果より、GH 内で予想される空気中の放射性物質濃度は、放射線業務従事者に 係る空気中の放射性物質濃度限度を超えると推定された。そこで、作業者の呼吸保護具 として、全面マスク及び空気供給式ホースを接続したエアラインマスクを検討した。再 処理施設の放射線管理基準で定められた全面マスク及びエアラインマスクの着用限度 は、上述の空気中の放射性物質濃度限度(’、’)の 80 倍、8000 倍であり、下記の値と なる。 (全面マスク) 全面マスクの着用限度() = 7×10-7 ( Bq cm⁄ 3) × 80 = 5.6×10-5 ( Bq cm⁄ 3) 全面マスクの着用限度() = 3.6×10-8 ( Bq cm⁄ 3) × 80 = 2.9×10-6 ( Bq cm⁄ 3) (エアラインマスク) エアラインマスクの着用限度() = 7×10-7 ( Bq cm⁄ 3) × 8000 = 5.6×10-3 ( Bq cm⁄ 3) エアラインマスクの着用限度() = 3.6×10-8 ( Bq cm⁄ 3) × 8000 =2.9×10-4 ( Bq cm⁄ 3) ここで、全面マスク及びエアラインマスクの着用限度と 5.2 節(1)で求めた GH 内の 空気中の放射性物質濃度を比較すると、GH 内の空気中の放射性物質濃度は、全面マス クの着用限度よりも低いものの同じオーダーであった。一方、エアラインマスクの着用 限度は、GH 内の空気中の放射性物質濃度よりも 2 桁程度の裕度を持った値であった。 本件では、内部被ばくを確実に防止するため、パネルの更新作業を実施するGH-1 の作 業者の呼吸保護具にはエアラインマスクを選定した。これにより、作業者の呼吸する空 気中の濃度は、濃度限度を下回り、内部被ばく上の問題はない。なお、各 GH には、 Photo. 6 に示す線ダストモニタを設置して、作業中に内部の空気中の放射性物質濃度 を監視し、濃度限度を超える事態が生じた場合には、作業を中断し、除染等を実施する
ことにした。 5.3 作業者の外部被ばく評価 除染後に測定したグローブボックスの表面線量率は、1 Sv/h 以下であった。パネル の更新作業日数は、83 日を予定しており、1 日の作業時間は、最大 7 時間である。こ のため、累積線量率は、最大でも0.6 mSv であり、この値は、法令等で定められてい る放射線業務従事者の実効線量限度(50 mSv/年)を十分に下回る。この結果より、本作 業において、作業者の外部被ばく上の問題はない。 5.4 作業者の放射線防護具の選定 各GH における作業者の放射線防護具は、身体汚染の防止を主目的として Table 3 に 示すように選定した。GH 内作業者は、外部被ばく線量を的確かつ迅速に評価するため、 個人被ばく線量計、電子ポケット線量計及び警報付きポケット線量計を常時着用するこ ととした。また、放射性物質が直接身体に付着するのを防止するため、ポリエチレン繊 維製放射線防護服、酢酸ビニール製放射線防護服、ゴム手袋、綿手袋、シューズカバー、 フットカバー及びオーバーシューズを必要に応じて着用した。GH-1 の作業者が着用す るエアラインマスクは、空気供給系が停止した場合を想定し、自力で呼吸ができるもの を選定するとともに、マスクカバーを着用することでマスクへの放射性物質の付着を防 止した。各装備着用後のGH-1 作業者の様子を Photo. 7 に示す。GH-1 よりも内部被ば くの可能性が低いGH-2 の作業者は全面マスク、GH-3 及び GH-4 の作業者は半面マス クを着用することとした。 5.5 その他の安全対策 本パネル更新作業において、GH 内で火気等を使用するような作業はないが、万が一 の火災発生時の延焼等を防止するため、GH-1 及び GH-2 の床面には、防炎シートを敷 設した。また、空気取り込み後、最下流にあるGH-1 に酸素濃度計を設置して、全 GH 中の酸素濃度をモニターすることで、作業者の窒息防止を図った。さらに、GH-1 作業 者がエアラインマスクを装着する前に、供給空気中の一酸化炭素濃度を測定して、供給 空気に異常がないことを確認した。
6. 更新の工程 本更新では、放射性物質の拡散を防止するため、グローブボックスの閉じ込め機能を 維持したまま作業を実施する必要がある。作業にあたっては、パネル開口部とグローブ ボックスをビニール製シートで隔離する方法を検討し、閉じ込め機能の確保を図った。 以下、更新の各工程について示す。 6.1 作業手順の策定 供用中のグローブボックスパネルの更新方法については、桜庭らによる報告がある12)。 彼らは、グローブボックスの内側に SUS304 製の閉止板、外側にグローブ付きビニー ルバッグを取り付けることで、作業領域を隔離して、更新中のグローブボックスの閉じ 込め機能を維持した。本更新では、桜庭らの報告を参考に、Fig. 5 に示す作業手順を策 定した。 作業領域をグローブボックス及びGH の空間から隔離するにあたっては、閉止板の代 わりに、加工が容易で安価なビニール製シートをパネル開口部に取り付けることにした。 ビニール製シートは、インナーバッグ、アウターバッグとしてグローブボックスの内側 と外側に取り付け、この空間内でパネルの取り外し作業を行うことで、放射性物質を内 部に閉じ込めるようにした。また、パネル押さえ板の取り外し後に、幅約10 cm 程度 の仮押さえ板を取り付けることで、スタッドボルトとパネル周辺の養生を行えるように した。グローブボックスの各パネルは1 枚ずつ取り外し、正面のパネル 3 枚を取り外し た後、新パネルを取り付けるようにした。背面のパネル3 枚は、正面パネルの作業終了 後に同様の手順で更新した。なお、本作業は、日本原子力研究開発機構核燃料サイクル 工学研究所の放射線障害予防規程に定められた特殊放射線作業計画を策定して実施し た。 6.2 インナーバッグの取り付け インナーバッグはビニール製シートを加工して作製し、更新作業中にグローブボック ス内部の放射性物質が外へ漏えいすることを防止する目的で設置した。このため、イン ナーバッグは、両面テープと布テープを用いて、隙間のないようにボックス本体へ貼り 付けた。その後、作業中にバッグが移動するのを防止するため、Fig. 6 に示す伸縮棒で 固定した。また、バッグに中性能フィルター(捕集効率:95%)を取り付けることで、パネ ルとインナーバッグ設置箇所間の空間がグローブボックスの換気で負圧になるように 調整した。さらに、ファスナーを設け、インナーバッグ内とグローブボックス間で物品 の搬出入ができるようにした。インナーバッグの外観、設置箇所の様子、取り付け後の グローブボックス内部をPhoto. 8~10 に示す。なお、インナーバッグ表面は、取り付 け後にスプレー式水性ペイントで放射性物質の固定を図った。
6.3 押さえ板の取り外しと仮押さえ板の取り付け インナーバッグの取り付け後、パネルの押さえ板をFig. 7 に示すように取り外した。 押さえ板の取り外しにあたっては、放射性物質の付着を防止するため、押さえ板周辺の 作業箇所は、テープ又はビニール製シートで養生した。また、放射性物質の飛散を防止 するため、作業は排気ダクトに接続したトレイを設置して行った。Photo. 11 に設置し たトレイ、Photo. 12 に押さえ板取り外し中の様子、Photo. 13 に取り外した押さえ板 を示す。 押さえ板取り外し後、パネルはPhoto. 14 に示すように SUS304L で製作した仮押さ え板で固定した。スタッドボルトは、Photo. 15 に示す O リング付きの真鍮製保護キャ ップを取り付けて、その後の作業における放射性物質の付着を防止した。仮押さえ板取 り付け後、スミヤ法でグローブボックスの押さえ板取り付け箇所の線放出核種による 表面汚染密度を測定した結果、最大で23 Bq/cm2程度の汚染が確認された。このため、 当該箇所は、水及びアルコールで湿らせたウェスによる除染を行った後、テープ等を用 いて汚染を固定した。仮押さえ板の取り付け及び汚染固定後の様子をPhoto. 16 に示す。 6.4 アウターバッグの取り付け アウターバッグは、パネルの取り外し中に汚染が飛散してGH 内の空気中の放射性物 質濃度が上昇するのを防止するため、グローブボックスの外側に取り付けた。アウター バッグは、厚み0.3 mm のビニール製シートと塩化ビニール製パイプを用いて、パネル 3 枚に対して 1 つずつ製作し、テープ等を用いてグローブボックス本体に隙間のないよ うに固定した。取り付けたアウターバッグの概略図をFig. 8、取り付け時の様子を Photo. 17、取り付け後のグローブボックスを Photo. 18 にそれぞれ示す。アウターバッグには グローブを取り付けることで、バッグ越しにアクリル製パネルの取り外し及びパネル取 り付け面の清掃、除染ができるようにした。また、上部には中性能フィルタを取り付け ることで、パネル取り外し中にグローブボックスの換気でバッグの外側から空気を取り 込み、空気流線がグローブボックス内部へ流れるように調整した。さらに、アウターバ ッグの下部には、取り外したパネルを収納するための廃棄用ビニールバッグを取り付け、 ビニールバッグを溶着して切り離すことで、汚染を内部に閉じ込めたままパネルを廃棄 できるようにした。なお、パネルの重量は1 枚あたり約 11 kg であり、作業者 2 名で取 り扱うことで安全に作業を実施することが可能である。 6.5 アクリル製パネルの取り外しとパネル取り付け面の清掃・除染 アクリル製パネルの取り外し直前に、グローブボックスの給気と排気を調整して、空 気流線がアウターバッグとインナーバッグを通って流れるようにした。その後、仮押さ え板を撤去して、パネルはPhoto. 19 に示すように取り外し、廃棄用ビニールバッグか ら取り出した(Photo. 20)。取り外し中は、設置した線ダストモニタで GH 内の空気中
の放射性物質濃度を監視したが、放射性物質の上昇は見られなかった。パネル取り外し 後のグローブボックスの負圧は、2~3 mmH2O にまで低下したが、空気流線は、グロ ーブボックス側へ流れていることをスモークテスターで検査し、閉じ込め機能が維持さ れていることを確認した。なお、パネルと同時にガスケットも取り外しを行った。 アクリル製パネルの取り外し後、アウターバッグは、Photo. 21 に示すように、その 一部を切り取り、排気ダクトに接続したトレイを設置して仮設のヒュームフードにする ことで、パネル取り付け面の清掃及び除染作業をできるようにした。グローブボックス のパネル取り付け面は、長期の使用に伴い一部は表面が荒れ、Photo. 22 に示すように グローブボックスにガスケットの一部が付着していた。特に、パネルの取り付け面の底 部には、ガスケットの付着が多く見られた。このため、除染前に、グローブボックス本 体を損傷させないように軟質プラスチック製のヘラを用いて付着物を除去し、Photo. 23 に示すようにグローブボックスのパネル取り付け面を清掃した。その後、取り付け 面は、水及びアルコールで湿らせたウェスを用いて、拭き取りによる除染を行った。 Fig. 9 に除染後のパネル取り付け面の表面汚染密度を示す。なお、表面汚染密度は、ス ミヤろ紙を用いた拭き取りによる線の測定と線シンチレーション式サーベイメータ を用いたダイレクトサーベイ法による測定のみによって求め、線の測定は、当該室の バッググラウンドが高いため実施しなかった。除染後のパネル取り付け面の表面汚染密 度は、スミヤ法ではほとんど検出されず、ダイレクトサーベイ法では取り付け面の底部 で最大4.6×102 Bq/cm2と高い値を示した。拭き取りによる除染後も高い表面汚染密度 が確認されたことから、汚染は固着性のものであり、これ以上の除染は困難と考え、ス プレー式水性ペイントを吹き付けて、汚染の固定を図った。固定後の表面汚染密度は、 線、線ともFig. 10 に示すように、スミヤ法では完全に検出されなくなり、線はダ イレクトサーベイ法でも8.3×10-1 Bq/cm2以下となった。ペイント固定後のパネル取り 付け面の様子をPhoto. 24 に示す。なお、表面の荒れ部分は、スプレー式ペイントによ る取り付け面の平坦化を試み、新パネル取り付け時の密着性の向上を図った。 6.6 ポリカーボネート製パネルの取り付け ポリカーボネート製の新パネルは、アウターバッグの撤去後、取り付けを行った。作 業中に放射性物質が付着するのを防止するため、新パネルは、Fig. 11 及び Photo. 25 に示すように、ビニール製シートで多重に養生を施し、取り付け後に養生を撤去するこ とにした。パネルは、仮押さえ板で固定しながら、スペーサー等を用いて中心位置を調 整して1 枚ずつ取り付けた。パネル取り付け時の様子を Photo. 26 に示す。その後、パ ネルと取り付け面は、密閉性を高めるため、セメダイン製8051N シリコーンシーラン トを用いてコーキングを施して、押さえ板を設置した。なお、クロロプレン製のガスケ ット及びSUS304L 製の押さえ板は、従来の設計図面を基に新たに製作し、パネルと同 時に取り付けた。
6.7 パネルの締め付けトルク SUS 製グローブボックスは、本体と各パネルの接合面にクロロプレンゴム製のガス ケットが使用されており、スタッドボルトのナット締め付け力(締め付けトルク)で圧縮 変形を与えて、その弾性復元力により接合面の密閉、放射性物質の漏えいを防止してい る。このため、ナットによるパネルの締め付けトルクは、小さすぎるとガスケットが変 形せずに密閉性能が低下し、大きすぎるとパネル、ガスケット、及びスタッドボルトの 破損が発生する可能性がある極めて重要なパラメータである。原子力安全基盤機構の報 告では、グローブボックスパネルの締め付けトルクとして5 N・m が例として挙げられ ているが 13)、このトルクで締め付けを実施した明確な根拠は示されていない。このた め、本件では締め付けの実施する前に、そのトルクについて検討した。 締め付けトルクは、ボルトの耐力から一般的に下記の式で求められることが報告され ている14),15)。 Tf = KFd σ = AF S Tf 締め付けトルク(Nm) K トルク係数 F ボルトの軸力(N) d ボルトの呼び径(m) ボルトの耐力(N/mm2) AS ボルトの有効断面積(mm2) グローブボックスパネルの締め付けに使用するスタッドボルトの材質は SUS304L であり、その耐力はJIS で 175 N/mm2以上と規格されている16)。また、スタッドボル トは、M6 ボルトであるため、呼び径は 6 mm、有効断面積は 20.1 mm2である17)。ト ルク係数に平均的な値である 0.2 を使用すると、計算した締め付けトルクは 4.2 N・m となる。しかし、この値は、スタッドボルトの耐力から求められるトルクであり、長期 間使用しているグローブボックスのスタッドボルトをこのトルクで締め付けた場合、ボ ルトが破損、破断する可能性がある。そこで、グローブボックス製作メーカーへ新設の グローブボックスのパネル締め付けトルクを確認した。その結果、ボルトの耐力から求 めた締め付けトルクに安全係数を乗じた2~3 N・m を使用していることが分かった。ま た、締め付けトルクが2~3 N・m の場合でも、設置時に実施するグローブボックスの漏 えい検査の結果から、密閉性にも問題がないことを確認した。 このため、本件ではパネルの締め付けトルクは、Fig. 12 に示すように、負荷が大き いことが予想される各パネルのコーナー部3 本のナットは 3 N・m、それ以外のナット
は2 N・m とした。締め付けトルクは、トルクレンチ(東日製作所製 QL10N-MH)を用い てPhoto. 27 に示すように調整した。新パネルを取り付けてトルクを調整した後、パネ ルに取り付けたビニール製シートの養生は撤去した。また、GH は、内部に汚染がない ことを確認後、Photo. 28 に示すように解体して撤去した。更新作業終了後のグローブ ボックスの様子をPhoto. 29 に示す。 6.8 作業工数 本パネル更新に要した全作業行程日数は、当初、Table 4 に示すように合計 83 日を 見込んでいたが、グローブボックス内部及びパネルの取り付け面の除染に時間を要した ため、実際の作業日数は予定を12 日延長し、95 日であった。また、使用した主な物品 及びその数量は、Table 5 に示す通りであった。本作業では、作業者への汚染を防止す るため、多数のポリエチレン繊維製放射線防護服、酢酸ビニール製放射線防護服、ゴム 製手袋、綿手袋及びシューズカバーを使用した。特に、ゴム製手袋は、作業単位毎に交 換することで、汚染の拡大防止を図った。この結果、作業者への汚染はなく、作業を終 了することができた。 6.9 廃棄物の処理 本パネル更新で発生した廃棄物は、廃棄物処理施設にて処理、処分される。本件で は、廃棄物を専用の保管容器に収納し、廃棄物処理施設へ搬出するまでの作業を行った。 パネル更新で取り外したアクリル製パネル、及びパネルと同時に取り外したSUS304L 製押さえ板は、線放出核種に汚染された不燃性廃棄物として処理した(Photo. 30)。そ の他、パネル更新で発生した廃棄物の発生量とその内訳は、Fig. 13 の通りであった。 廃棄物は、紙・布類の可燃性廃棄物が最も多く、次いで、ゴム手袋等の難燃性廃棄物、 酢酸ビニール・ポリエチレン繊維類の可燃性廃棄物の順であった。
7. 検査 更新作業の終了後、新たに設置したポリカーボネート製パネルの材質検査、据付・外 観検査、グローブボックスの負圧検査、及び漏えい検査を実施し、グローブボックスの 閉じ込め機能等が更新前と同様に維持されていることを検証した。また、上記検査項目 について、原子力規制委員会による使用前検査を受検して、合格した。以下、各検査の 概要を示す。なお、本検査に使用した検査資料及び検査用計器は、Table 6 に示す通り であり、計器類は全て国家標準にトレーサブルなものを使用した。 7.1 材質検査 材質検査では、Table 6 に示す材質証明書を用いて、新たに設置したパネルの材料で あるポリカーボネート(積水化学工業製エスロン DC プレート PH-407-AS)が JIS K6735 で規定された Table 1 の機械的性質、熱的性質及び厚みを満足することを確認し た。また、同様にTable 6 に示す難燃性規格証明書を用いて、ポリカーボネートの燃焼 性が、UL-94 V-0 に適合する難燃性材料であることを確認した。検査結果を Table 7、 Table 8 に示す。検査結果は良好であり、パネルの材料として使用したポリカーボネー トに問題はなかった。 7.2 据付・外観検査 据付・外観検査では、新たに設置した6 枚のポリカーボネート製パネルの寸法と取り 付け位置についてコンベックスルールを用いて測定し、Fig. 1 に示すとおりであること を確認した。その後、パネルの表面に有害な傷及び変形がないことを目視により確認し た。なお、目視検査は、日本機械学会の発電用原子力設備規格に基づき 18)、照度計と コンベックスルールを用いて、検査箇所の明るさが540 lx 以上であり、目視検査にお ける眼から検査対象部までの距離が1200 mm 以内であることを検査前に確認した。検 査結果は、Table 9 に示すように良好であり、更新したパネルの据付・外観に問題はな かった。 7.3 負圧検査 負圧検査では、グローブボックスの閉じ込め機能を確認するため、パネル更新後のグ ローブボックスの内部が、-300±50 Pa の負圧状態に維持されていることを負圧計によ り確認した。なお、グローブボックスの負圧計は、本更新に伴い、新たに設置した。検 査で測定した負圧は、Table 10 に示すように-320 Pa であり、グローブボックスの内部 は、更新前と同様に負圧状態に維持されていた。
7.4 漏えい検査 グローブボックスの閉じ込め性能は、一般的にグローブボックス内空気の単位時間当 たりの漏れ率(vol%/h)で評価される。核燃料サイクル施設等で使用するグローブボック スの漏れ率の評価方法としては、JIS で規格化されている漏れなし容器法がある3)。こ の方法は、グローブボックスと漏れなし容器を接続後、負圧にして、両者の圧力差の変 化からグローブボックスの空気の漏れ率を求める方法である。漏れなし容器法は、新設 のグローブボックスの漏れ率の測定法として適用可能であるが、温度管理が難しく、供 用中のグローブボックスでは、その設備状況から漏れなし容器を接続することが難しく、 この方法を適用することはできない。そこで、本件では漏れなし容器法に代わる漏えい 検査方法として、ハロゲンリーク試験方法に着目した。 ハロゲンリーク試験方法は、所定のサーチガスを使用して、そのガスの漏れを高感度 で検出できるリークディテクター等の分析装置で検出する方法である。この方法は、サ ーチガスとリークディテクターを使用するだけであり、特殊な機器等を接続する必要も ないため、供用中のグローブボックスにも簡単に適用することができる。また、ハロゲ ンリーク試験方法は、日本非破壊検査協会でNDIS 3407「ハロゲンリーク試験方法」 として規格化されている 19)。そこで、更新した 6 枚のパネル取り付け部とグローブボ ックスの閉じ込め機能を確認するため、NDIS 3407 に準じたハロゲンリーク試験方法 による漏えい検査を実施した。 NDIS 3407 では、判定基準値として 1×10-6 Pa・m3/s が規定されている。この値は、 下記の式に示すように漏えい率(vol%/h)に換算することができる。ここで、計算に使用 したグローブボックスの体積は2.31 m3、グローブボックス内の気圧は、検査室内の大 気圧(標準大気圧:1.013×105 Pa)とグローブボックス内の負圧値との差である。なお、 当該グローブボックス内の負圧は、-300±50 Pa で管理しているが、ここでは漏えい率 をより厳しく評価できるように-350 Pa として計算した。 漏えい率 = 1×10-6�Pam3⁄ �×s 1 2.31�m3�× 1 1.013×105�Pa�-350�Pa�× 3600�s� 1�h� ×100 = 1.5×10-6�vol% h⁄ � 得られた漏えい率は、グローブボックスの設計値である0.1 vol%/h 以下2), 3) を十分 に満足する値であった。そこで、本件で実施する漏えい検査の判定基準は、NDIS 3407 の規格値をそのまま使用することとした。 検査は、事前にグローブボックスの正面及び背面のパネル(各 3 枚)を覆うように、検 査用ビニールバッグ(厚み 0.3 mm)を取り付けて実施した。検査用ビニールバッグの概 要をFig. 14、取り付け後の様子を Photo. 31 に示す。サーチガスには、クロロジフル オロメタンである HCFC-22(別称:R-22)を使用した。サーチガスは、ビニールバッグ
のガス注入口から充填し、Photo. 32 に示すようにビニールバッグが膨らんだのち、ハ ロゲンリークディテクターを用いて内部のサーチガスの充填を確認した。その後、30 分以上静置させて、グローブボックス内に設置したハロゲンリークディテクターを用い て、Fig. 15 に示すパネルとグローブポートの設置境界部からの漏えいが、1×10-6 Pa・ m3/s 以下であることを確認した。なお、検査前には温度計を用いて、検査室内の温度 がハロゲンリークディテクターの使用温度範囲内(0~50℃)であることを確認した。ま た、ハロゲンリークディテクターの掃引速度は、装置メーカーの推奨値である約5 cm/s 以下で検査を実施した。検査結果は、Table 11 に示すように良好であり、パネルとグロ ーブポートの設置境界部からの漏えいは確認されなかった。これらの結果より、パネル を更新したグローブボックスの閉じ込め機能は、更新前と同様に維持されていることを 確認した。
8. まとめ 長期使用に伴い、透明度が低下していたグローブボックスパネルについて更新を行っ た。新しく取り付けるパネルの材質は、新規制基準へ適合させるため、従来の可燃性材 料であるアクリルから難燃性材料であるポリカーボネートへ変更した。また、パネルの ガスケット及び押さえ板は、従来と同様の材質及び寸法で新たに製作し、パネルと同時 に更新した。 パネルの更新作業は、グローブボックス内及びパネル取り付け面の清掃・除染に最も 多くの時間を要し、作業日程は当初の予定よりも12 日ほど延長したが、ビニール製シ ート等で作業領域を隔離することで、放射性物質を内部に閉じ込めることに成功し、作 業者の有意な被ばく、放射性物質の飛散、汚染等を発生させずに完了することができた。 更新後、新たに設置したポリカーボネート製パネル及びグローブボックスの閉じ込め機 能が、更新前と同様に維持されていることを検証するため、材質検査、据付・外観検査、 負圧検査、漏えい検査を実施した。検査結果に問題はなく、原子力規制庁が実施した使 用前検査にも合格し、パネルを更新したグローブボックスの閉じ込め機能は、更新前と 同様に維持されていることを確認できた。これらの結果より、グローブボックスパネル を可燃性であるアクリルから難燃性のポリカーボネートへと更新し、新規制基準へ適合 させることができた。 核燃料再処理施設には、様々な種類のグローブボックスが使用されており、可燃性材 料であるアクリルは多くのグローブボックスで使用されている。これらのグローブボッ クスでは、今後、その使用状況等に応じて、パネル更新を含めた難燃化対策を実施する 必要がある。また、東海再処理施設は、建設されてから30 年以上が既に経過しており、 多くのグローブボックスでパネル等の老朽化が進んでいる。このため、使用が予定され ているグローブボックスについては、予防保全の観点から、パネルの更新が必要となる 可能性がある。このような状況を鑑み、今回の更新作業を通じて得られた知見や技術を 継承していくことが重要である。 謝辞 本件の実施にあたっては、株式会社E&E テクノサービスの小野瀬拓氏、薄井真人氏 に多大なご協力とご支援を頂きましたことを深く感謝いたします。また、実際の作業に おいては、千代田メインテナンス株式会社の冨塚俊洋氏、有田賢次氏に多大なご協力を 頂きましたことを深く感謝いたします。
参考文献 1) 原子力規制委員会: “再処理施設の位置、構造及び備基準に 再処理施設の位置、構 造及び備基準に 関する規則 の解釈の制定について”, 原管研発第 1311275 号 (平 成25 年 11 月 27 日制定). 2) JIS Z4808:2002. 放射性物質取扱作業用グローブボックス. 3) JIS Z4820:2002. グローブボックス気密試験方法.
4) UL-94:2013. Standard for Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.
5) JIS K6735:2014. プラスチック ‐ポリカーボネート板‐タイプ, 寸法及び特性. 6) JIS K6745:2008. プラスチック ‐硬質ポリ塩化ビニール板. 7) JIS K6718-1:2000. プラスチック ‐メタクリル樹脂板‐タイプ, 寸法及び特性 ‐第1 部:キャスト板. 8) 阿部仁, 渡邊浩二, 内山軍蔵: “グローブボックスパネル材の熱分解特性に対するガ ンマ線照射の影響の検討”, 日本原子力学会和文論文誌, 13, pp.136-144 (2014). 9) 綿引政俊, 赤井昌紀, 中井宏二, 家村圭輔, 吉野正則, 平野宏志, 北村哲浩, 鈴木一 敬: “グリーンハウス方式によるグローブボックス解体撤去工法の改良”, 日本原子 力学会和文論文誌, 11, pp.101-109 (2012). 10) 石黒秀治: “デコミッショニングにおける表面汚染密度測定”, デコミッショニング 技報, 第 45 号, pp.19-30 (2012). 11) 関昭雄, 大西俊彦, 叶野豊, 岩月恒信: “放射線管理のための表面汚染からの再浮遊 係数に関する文献調査”, PNC TN8420 88-008 (1988), 31p. 12) 桜庭直敏, 沼田正美, 古宮友和, 市瀬健一, 西雅裕, 冨田健, 宇佐美浩二, 遠藤慎也, 宮田精一, 黒澤達也, 川崎泰, 喜多川勇, 仲田祐二, 石川明義: “バッグイン・バッグ ア ウ ト 方 式 に よ る 大 型 グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス の ア ク リ ル パ ネ ル 交 換 技 術”, JAEA-Technology 2009-071 (2010), 34p. 13) 原子力安全基盤機構: “平成 19 年度 MOX 燃料加工施設閉じ込め性能等調査・試験 グローブボックスの閉じ込め性能に係る調査報告書”, 08 基シ報-0001 (2007). 14) 山本晃: “ねじのおはなし 改訂版”, 日本規格協会, 2005, pp.59-72. 15) JIS B1083:2008. ねじの締付け通則. 16) JIS G4303:2005. ステンレス鋼棒. 17) JIS B1082:2009. ねじの有効断面積及び座面の負荷面積. 18) JSME S NA1-2008. 発電用原子力設備規格, 維持規格. 19) NDIS3407:1999. ハロゲンリーク試験方法.
Fig. 1 グローブボックスの配置とその概略図 更新対象グローブボックスの周囲には、2 台のグローブボックスと 2 台のヒュームフ ードが設置され、さらに5 m 程度離れた位置には、3 台のグローブボックスが設置さ れている。なお、グローブボックスは、架台上に設置されている。 G型グローブボックス(更新対象) プルトニウム精製室 グローブボックス グローブボックス ヒュームフード (a) プルトニウム精製室における更新対象グローブボックスの配置 約5m (b) 更新対象グローブボックスの概略図 正面図 グローブポート パネル パネル パネル パネル押さえ板 架台 3000 給気設備 排気設備 給気設備 960 960 960 バッグポート 960 800 1050 1850 負圧計 (マノスターゲージ) 側面図 背面 パネル 正面 パネル バッグポート バッグポート 700 単位:mm
Fig. 2 パネル、ガスケット、押え板の構造及び取り付け位置 パネルは、ガスケットによって端部を覆い、スタッドボルトを通した L 字型のステン レス製押さえ板で固定されている。グローブボックスとパネルの閉じ込め性能は、ナッ トの締め付け力により、ガスケットに一定の圧縮変形を与え、パネルとグローブボック スを密着させることで担保されている。 ガスケット 押さえ板 スタッドボルト パネル ナット グローブボックス パネルの取付け構造 スタッドボルト パネル パネル パネル 押さえ板 ガスケット グローブポート Photo. 1 グローブボックスの外観及びパネルの劣化状況
Table 1 難燃性試験規格 UL94 の試験方法、判定基準 燃焼性クラス 項目 HB V-2 V-1 V-0 グレード 遅燃性 低い ← 難燃性 → 高い 試験方法 試験試料の一端を固定して 水平に保ち、試料の先端に 30 秒間ガスバーナーの炎 を接炎させる。また、炎を 離した後に試料が燃焼を続 けた場合、その燃焼の速度 を測定する。 試験試料を垂直に立て、保持した試料 の下端に 10 秒間ガスバーナーの炎を 接炎させる。 燃焼が 30 秒以内に止ま った場合、さらに 10 秒間接炎させる。 判定基準 厚さが3.05mm 以上の試料 に つ い て は 、 燃 焼 速 度 が 38.1mm/min を超えないこ と。厚さが3.05mm 以下の 試料については、燃焼速度 が毎分 76.2mm/min を超 えないこと。炎が試料の端 から 102mm の地点に到達 す る 前 に 燃 焼 が 止 ま る こ と。 (b)、(d)、 (g)、(h)のい ずれも満足 すること※。 (b)、(d)、(e)、 (g)、(h)のい ずれも満足 すること※。 (a)、(c)、 (e)、(f)、(h) のいずれ も満足す ること※。 ※グレードV-2、V-1、V-0 の判定基準は以下の通り。 (a) 接炎後、10 秒以上燃焼を続ける試料がないこと。 (b) 接炎後、30 秒以上燃焼を続ける試料がないこと。 (c) 5 個の試料(各 2 回)の合計 10 回の接炎に対する総燃焼時間が 50 秒を超えないこと。 (d) 5 個の試料(各 2 回)の合計 10 回の接炎に対する総燃焼時間が 250 秒を超えないこと。 (e) 試料下方に設置された脱脂綿を発火又は燃焼する粒子を落下させる試料がないこと。 (f) 2 回目の接炎後、30 秒以上赤熱を続ける試料がないこと。 (g) 2 回目の接炎後、60 秒以上赤熱を続ける試料がないこと。 (h) 固定用クランプの位置まで燃焼する試料がないこと。