平成23年8月 防 衛 省
次期Xバンド衛星通信整備事業に関する基本的な考え方
1 策定の趣旨 次期Xバンド衛星通信網の構築について、中期防衛力整備計画(平成23 年度~平成27年度)は、PFI導入を念頭に、「民間企業の資金、経営能力 及び技術的能力を積極的に活用するなどして、我が国産業の振興にも資する 効果的かつ効率的な事業形態を追求する」としている。 本年5月、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法 律(以下「PFI法」という。)が改正され、人工衛星の製造等について実際 に同法を適用することが可能となった。 防衛省では、今般、次期Xバンド衛星通信網の構築について、PFI導入 による事業化に向けて、平成24年度予算で概算要求することとしたので、 現時点における基本的な考え方を明らかにすべく、本文書を策定するもので ある。なお、PFI事業としての「実施方針」は、今後の検討を踏まえ、P FI法に基づき別途作成・公表する予定である。 2 次期Xバンド衛星通信網構築の必要性 地理的に分散した各種の部隊をネットワークで結びつけることは、状況認 識の共有により情報優越の確保に資する。さらには、一般に目標の探知から 指揮統制、行動までに要する時間を短縮することで、各局面において機先を 制した優位な作戦展開が可能となる。 こうしたネットワーク化において、衛星通信は覆域が広く、地形等による 遮蔽物の影響を受けにくい点で地上間の無線通信に比し有利である。とりわ けXバンド通信は、他の帯域に比べ気象等の影響を受けにくく、確達性の高 い安定した通信が可能である。 防衛省・自衛隊は、現在、主として作戦部隊の指揮統制を目的とした衛星 通信における基幹通信として、スーパーバードB2号機、同C2号機及び同 D号機の3機によるXバンド衛星通信システムを運用しているが、このうち2 B2号機及びD号機の2機が平成27年度中に設計寿命を迎えるため、後継 衛星の整備が急務となっている。 3 次期Xバンド衛星通信網の在り方 人工衛星は、打上げ後は二度と改修できない。このため、後継衛星の整備 に際しては、費用対効果の最大化を追求し、設計寿命を迎える平成40年頃 までの自衛隊の通信所要を見据え、これを充足できる能力を備えさせる必要 がある。 具体的には、次期Xバンド衛星通信網は、防衛大綱の定める動的防衛力の 構築や今後予想される自衛隊の通信所要の更なる増加を踏まえ、各自衛隊の 部隊が所望の時期に所望の相手先と所望の通信を行うことを可能とするもの でなければならない。また同時に、一元的な通信統制の下、使用可能な周波 数帯域の中で所要の通信に対し状況に応じて柔軟に通信回線を割り当てられ ることも必要である。したがって、次期Xバンド衛星通信網の構築に当たっ ては、抗たん性に優れた高速大容量通信を可能にするとともに、通信方法や 通信器材も含めた通信システム全体の統合を進めていくことが不可欠である。 こうした統合的な通信システムの整備が進めば、例えば、目標を探知した 部隊とそれに対処する部隊との間で優先的に音声、データ等のあらゆる情報 を即時に共有させて一体的に連動させることで、迅速に目的を達成するとい ったことが可能となる。そしてその延長上には、特定の部隊間に限ることな く、自衛隊の全ての部隊が他の全ての部隊のセンサーとなり、対処部隊とな って、あたかもひとつの有機体であるかのように機能する態勢の実現も視野 に入ってくることとなる。 探知 攻撃 指揮命令 状況に応じた通信回線のコントロール 陸 海 空 統 陸 海 空 統 統 海 空 大規模災派 海警行動 BMD対処 陸 衛星統制 西 尾 目標 探知 攻撃 指揮命令 状況に応じた通信回線のコントロール 陸 海 空 統 陸 海 空 統 統 海 空 大規模災派 海警行動 BMD対処 陸 衛星統制 西 尾 目標 探知 攻撃 指揮命令 状況に応じた通信回線のコントロール 陸 海 空 統 陸 海 空 統 統 海 空 大規模災派 海警行動 BMD対処 陸 陸 海 空 統 陸 海 空 統 統 海 空 大規模災派 海警行動 BMD対処 陸 衛星統制 西 尾 西 尾 目標
4 PFI導入による事業化 新たな通信衛星の製造・打ち上げ、システムの整備から運用に至る一連の 事業には多大なコストが必要になると見込まれる。しかも、衛星事業には、 複雑な製造工程に起因するスケジュールの遅延、打上げ失敗、宇宙環境の変 化による衛星機能の障害等さまざまな事業リスクが存在する。しかしながら、 防衛省ではこれまで衛星事業を主導した経験がなく、衛星の整備、運用等に 関する知見を有していない。このため、独力でこれらのリスクを管理し、コ ストを低減していくことには困難がある。 この問題に対処するためには、民間の資金、経営能力や技術的知見を長期 安定的に最大限活用してリスク管理の最適化を図ることが有効である。また、 リスク管理の効果に加えて企業の効率化努力を引き出していくことによって、 経費負担の軽減・平準化も期待できる。これらにより、防衛省が必要とする 性能を確実に満たした上で、優れた費用対効果を実現し得る事業形態の構築 を追求していくことが可能となる。 こうした考慮から、防衛省では、通信衛星の製造から設計寿命間の運用ま でをPFI導入により事業化すべく、現在、作業を進めている。今後、PF I法の定める実施方針の策定に向けてさらに詳細なコスト分析を行っていく 予定であるが、本事業についてPFI方式を採用した場合、現時点で、概ね 数%程度のVFM(Value for Money:費用対便益)を見込んでいる。
5 想定される事業内容 次期Xバンド衛星通信事業は、現用衛星の設計寿命等との関係を考慮し、 大きく、①通信ミッション機器1機分の製造請負(平成23年度予算化済み) と②次期Xバンド衛星通信整備等に係るPFI事業(平成24年度概算要求 予定)の二つに分けることとしている。PFI事業については、現在、対象 範囲等を含め検討中であり、今後変更があり得るが、その骨幹的な内容とし ては、次の要素について統合運用を前提に事業化し、平成27年度中に運用 を開始することを想定している。 ◇ 次期Xバンド通信衛星の整備(製造、打上げ等)及び運用 ◇ 次期Xバンド通信衛星の運用に必要な施設・設備の整備及び維持管理 ◇ 次期Xバンド衛星通信網の統合的な管理システムの導入
4 なお、平成23年度に先行して製造に着手する通信ミッション機器は、後 日、PFI事業により別途製造される衛星本体に組み込ませることとしてい るところ、衛星バス部や地上管制機器とのインターフェースを確実に行う必 要がある。このため、通信ミッション機器の先行製造に当たっては、衛星バ ス部等の諸元・規格・基準等に関する必要な技術資料の作成も併せて行わせ る等、製造請負人とPFI事業者を協力させることでPFI事業の整合的な 実施を図る方針である。 6 今後の予定 今後は、23年度に予算化された通信ミッション機器1機分の製造請負に 関する契約に向けて速やかに手続きを進めるとともに、PFI事業部分につ いて平成24年度予算で概算要求する予定である。 その後、PFI事業については、当該予算編成の状況も見つつ、実施方針 の策定、公表等PFI法に定める手続きを進め、平成24年度上半期を目途 としてPFI事業契約を締結し、最終的には平成27年度中に次期Xバンド 衛星通信システムの運用を開始したいと考えている。 以 上
D号機 C2号機 B2号機