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(1)

日本緑内障学会

緑内

内障

障診

診療

療ガ

ガイ

イド

ドラ

ライ

イン

(2)
(3)

緑内障診療ガイドライン第 3 版序文

緑内障は, 世界的にも中途失明原因の最上位疾患

の一つであり, それは本邦とても例外ではない. 緑

内障による視機能障害は, 不可逆的ではあるが, 適

切な診断, 治療および管理によりその進行を抑制し,

患者の生涯にわたっての生活, 特に視覚の質を維持

することもまた十分可能であることも, ここに明記

されなければいけない.

21 世紀に入って, 日本緑内障学会及び関係者の

尽力により, 緑内障を主眼においた 2 つの眼科疫学

調査が本邦で行なわれた. その結果, 地域による差

は多少はあるものの 40 歳以上の日本人成人におい

ては概ね 5∼7%が緑内障に罹患していること, お

よびその約 90%が潜在患者であることなどが明ら

かとなった. この罹患率は従来考えられていたもの

の約 2 倍であり, この事実はいやしくも眼科専門医

を標榜する以上は, 緑内障の診断・治療・管理に関

する一定水準の知識を備えていざるを得ないことを

意味している. しかし緑内障に限らず, 近年の眼科

諸分野の診断および治療に関する知識や手段の発展

は目覚しいものがあり, 眼科専門医といえども, す

べての分野における知識を常に up-date していく

(4)

ことが困難であることは想像に難くない.

このような背景を考慮し, 日本緑内障学会は

2003 年に, 眼科医が日常診療において緑内障患者

を前にして常に時代の水準に合致した適切な診断行

為を行えるための一助として, 緑内障診療ガイドラ

インを上梓した. 本ガイドラインは 2006 年に第 2

版として改訂が施され, 2012 年にその第 3 版が作

成されることとなった.

本ガイドラインは現時点での本邦における緑内障

診療の一つの基準を体系的に示そうとしたものであ

る. しかし, 本ガイドラインは, その墨守により個々

の状況下における柔軟な個別的対応に齟齬を来すた

めのものではなく, また個々の臨床状況下での医師

の判断を束縛, 強制するものでもないこともまた事

実である.

本ガイドラインの活用が, 本邦の緑内障診療のレ

ベル向上およびよい意味での統一に少しでも資する

ことを祈って序としたい.

2012 年 5 月

日本緑内障学会

理事長

新家

(5)

緑内障は 40 歳以上の 5.8%

前後が罹患し, 適切

に治療されなければ失明に至る重篤な視機能障害を

もたらす疾患である. 現在の高齢化社会において緑

内障は中途失明原因の第二位をして占めており, そ

の診断・治療・管理を適切に行うことは, 人々の生

活の質の保持の上だけではなく, 社会の医療負担の

増加を抑制する上でも極めて重要である.

緑内障は純粋な疾患単位ではなく, 症候群と理解

されるべきであり, その診断と治療, 管理に際して

はしばしば長期にわたる経過のもたらす錯綜した臨

床所見を整理する知識と思考能力が要求される.

このような背景を考慮し, 日本緑内障学会は眼科

医が日常診療の場で緑内障に対して適切な診断・治

療を含む医療行為を行うことの一助を目的として本

ガイドラインを作成した.

本ガイドラインは現在の緑内障診療の基準とされ

るべき在り方を体系的に示すことを試みたものであ

る. しかしながら, 本ガイドラインは個々の臨床状

況での医師の判断を束縛し特定の方向づけを強制す

るものではない. 本ガイドラインを参考とすること

により, 診療レベルの向上とともに診療間の差異が

(6)

減少することが望まれる. 一方, ガイドラインがあ

まりに重視され, 臨床医の個々の状況への個別的対

応を制約し今後の進歩の診療の場への導入に対する

臨床医の柔軟さを損ねることがあってはならない.

本ガイドラインが我が国の緑内障診療の向上に資

することがあれば関係者一同の喜びはこれに過ぐる

ものはない.

2003 年 11 月

日本緑内障学会

理事長

北澤 克明

* その後報告された緑内障疫学調査 (多治見スタディ) では, 40 歳以 上の緑内障の有病率は推定 5.0%であった

(7)

第 2 版への序

緑内障診療ガイドライン第 1 版は 2003 年に作成

され, 日本緑内障学会会員のみならず, 日本眼科学

会雑誌やインターネットを通じ, 広く眼科臨床医に

読んで頂くことができた. また, 同ガイドラインは

英語版も作成され, 日本発のガイドラインとして海

外にも知れ渡ることとなった.

第 1 版が作成されてから 3 年あまりになったが,

そのわずかな間にも緑内障診療並びに緑内障研究は

長足の進歩があり, 同時に緑内障の疾患概念も変貌

を遂げることとなった. そのため, 日本緑内障学会

では, 時代の変遷に対応すべく, 緑内障診療ガイド

ライン第 2 版を作成した.

主な改変点として,

1. 緑内障を緑内障性視神経症として定義した.

2. Primary angle-closure (PAC) の概念を取

り入れ, その邦訳を 「原発閉塞隅角症」 とした.

3. 「補足資料」 を設け, 引用を簡便にした.

4. 緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判

定ガイドラインを追加した.

改訂にあたっては, 緑内障診療ガイドライン作成

委員, 日本緑内障学会理事および評議員, 並びに学

(8)

会事務局の近藤明氏に多大なご助力を頂いた. ここ

に厚く御礼を申し上げたい.

引き続き本ガイドラインが緑内障診療の一助にな

ることを期待する.

2006 年 3 月

日本緑内障学会

緑内障診療ガイドライン作成委員会

委員長

阿部 春樹

(9)

第 3 版への序

日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン初版は

2003 年に作成され, その後 2006 年に改訂第 2 版が

作成された. いずれも日本眼科学会雑誌に投稿され

たり, ポケット版が作成されて, 日本緑内障学会の

会員のみならず, 広く一般の眼科臨床医に配布され,

緑内障診療の基本となるガイドラインとして今日ま

で緑内障診療に広く活用されてきた. さらに学会の

ホームページにも掲載されて, 他の医療スタッフや

患者さんにもインターネットを通じて公開され, 情

報の共有化に貢献することができた.

また, 同ガイドラインは英語版も作成され, 日本

発のガイドラインとして海外にも広く知れわたるこ

ととなった.

2006 年に改訂第 2 版が作成されてから 5 年余り

経過したが, その間にも緑内障診療や緑内障研究に

は新たな知見がもたらされた. そのため日本緑内障

学会では, 時代の変遷に対応すべく, 緑内障診療ガ

イドライン第 3 版を作成した.

主な改変点としては

1. 新しい点眼薬 (プロスタグランジン関連薬,

配合点眼薬) を追記した.

2. フローチャートにおける原発閉塞隅角症・原

発閉塞隅角緑内障に対する治療法として, 水

晶体摘出を追記した.

3. 原発閉塞隅角緑内障の分類として, ①隅角構

造と緑内障性視神経症の有無による分類, ②

(10)

隅角閉塞機序の分類, ③発症速度による分類

の 3 つを示し, ①において, 原発閉塞隅角症

疑いを追記した.

4. 新しい眼圧計 (iCare



と dynamic contour

tonometer

) を追記した.

5. 薬物治療において, 「コンプライアンス」 を,

「アドヒアランス」 に改変し, 両者の相違を

示した.

6. 「インプラント手術」 を 「チューブシャント

手術」 に改変した.

7. 抗血管内皮増殖因子 (VEGF) 薬を用いた治

療を追記した.

8. 眼底三次元画像解析装置として, 光干渉断層

計について詳述した.

9. 緑内障チューブシャント手術に関するガイド

ラインを追加した。

改訂にあたっては, 緑内障診療ガイドライン作成

委員, 日本緑内障学会理事および評議員, ならびに

学会事務局の近藤明氏の多大なご助力に感謝申し上

げたい.

引き続き本ガイドラインが, 緑内障診療の一助と

して, 広く活用されることを期待する.

2012 年 5 月

日本緑内障学会

緑内障診療ガイドライン作成委員会

委員長

阿部 春樹

(11)







フローチャート

 Ⅰ. 緑内障の病型・病期の決定  Ⅱ. 静的量的視野計測(自動視野計)  Ⅲ. 眼圧下降治療:方針 [原発開放隅角緑内障(広義)]  Ⅳ. 眼圧下降治療:目標眼圧設定 [原発開放隅角緑内障(広義)]  Ⅴ. 眼圧下降治療:薬物治療の導入 [原発開放隅角緑内障(広義)]  Ⅵ. 原発閉塞隅角症・原発閉塞隅角緑内障の治療  Ⅶ. 急性原発閉塞隅角症・急性原発閉塞隅角 緑内障の治療 

第 1 章 緑内障の定義



第 2 章 緑内障の分類

 Ⅰ. 原発緑内障  1. 原発開放隅角緑内障(広義)  2. 原発閉塞隅角緑内障  3. 混合型緑内障  Ⅱ. 続発緑内障  1. 続発開放隅角緑内障の眼圧上昇機序 2. 続発閉塞隅角緑内障の眼圧上昇機序 Ⅲ. 発達緑内障  1. 早発型発達緑内障  ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… …… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ………

(12)

2. 遅発型発達緑内障  3. 他の先天異常を伴う発達緑内障 

第 3 章 緑内障の検査

 Ⅰ. 問 診  1. 眼 痛  2. 頭 痛  3. 霧 視  4. 視野欠損  5. 充 血  Ⅱ. 細隙灯顕微鏡検査  1. 角結膜  2. 前 房  3. 虹 彩  4. 水晶体  Ⅲ. 眼圧検査  1. 眼 圧  2. 眼圧計  Ⅳ. 隅角鏡検査  . 隅 角  2. 隅角の観察方法  3. 静的隅角鏡検査と動的隅角鏡検査  4. 補助診断に有用な検査機器  Ⅴ. 眼底検査  1. 視神経乳頭と網膜神経線維層  Ⅵ. 視野検査  1. 視 野  2. Goldmann 視野計  3. 静的視野  4. その他の視野測定  5. 緑内障性視野異常の判定基準と程度分類  ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… …………

(13)

第 4 章 緑内障の治療総論

 Ⅰ. 緑内障治療の原則  1. 治療の目的は患者の視機能維持  2. 最も確実な治療法は眼圧下降  3. 治療できる原因があれば原因治療  4. 早期発見が大切  5. 必要最小限の薬剤で最大の効果  6. 薬物, レーザー, 手術から選択  Ⅱ. 治療の実際  1. ベースラインデータの把握  2. 目標眼圧  3. 緑内障と QOL  4. 緑内障薬物治療におけるアドヒアランス  Ⅲ. 緑内障治療薬  1. 緑内障治療薬の分類  2. 薬剤の選択  3. 治療トライアル  4. 薬物併用の留意点  5. 併用療法  6. 点眼指導  Ⅳ. レーザー手術  1. レーザー虹彩切開術  2. レーザー線維柱帯形成術  3. レーザー隅角形成術 (レーザー周辺部虹彩形成術)  4. 毛様体光凝固術  5. レーザー切糸術  Ⅴ. 観血的手術  1. 適 応  2. 術 式  ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ………… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ………

(14)

第 5 章 緑内障の病型別治療

 Ⅰ. 原発緑内障  1. 原発開放隅角緑内障  2. 正常眼圧緑内障  3. 原発閉塞隅角緑内障・原発閉塞隅角症  4. 混合型緑内障  Ⅱ. 続発緑内障  1. 続発開放隅角緑内障  2. 続発閉塞隅角緑内障  Ⅲ. 発達緑内障  1. 早発型発達緑内障  2. 遅発型発達緑内障  3. 他の先天異常を伴う発達緑内障 

補足資料 1

 1. 日本における緑内障有病率  2. van Herick 法  3. 隅角所見の記載法  4. 緑内障性視野異常の判定基準  5. 緑内障性視野異常の程度分類  6. 緑内障治療薬 

補足資料 2 緑内障性視神経乳頭・

網膜神経線維層変化判定ガイドライン

 1. 眼底観察法  2. 視神経乳頭および網膜神経線維層の観察ポイント  3. 眼底三次元画像解析装置を用いた 緑内障診断の意義  ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… ……… … ………

(15)

補足資料 3 緑内障チューブシャント手術

に関するガイドライン

 Ⅰ. はじめに  Ⅱ. チューブシャント手術実施の留意点  Ⅲ. 各 GDD の原理, 術式, 成績, 合併症  ……… ……… ……… ………

(16)
(17)

緑内障は我が国における失明原因の常に上位を占め, 社 会的にも非常に重要な疾患である. 2000∼2002 年に行わ れた詳細な緑内障疫学調査 (多治見スタディ) では, 40 歳以上の日本人における緑内障の有病率は推定 5.0%であっ た (補足資料 1 [1] 参照). さらに, 同疫学調査において, 緑内障の新規発見率は 89%であったことから, 我が国で は, 未だ治療を受けていない緑内障患者が多数潜在してい ることも明らかとなった. 緑内障の視神経障害および視野障害は, 基本的には進行 性であり, 非可逆的である. また, 緑内障では, 患者の自 覚なしに障害が徐々に進行するため, その早期発見と早期 治療による障害の進行の阻止あるいは抑制が重要課題とな る. 近年, 緑内障に対する診断と治療の進歩は目覚しく, 新 たな診断および治療手段が多数臨床導入され, その診断と 治療は多様化している. しかしながら, 個々の症例に適し た診断および治療手段を選択し, 早期診断と早期治療を行 い, さらに quality of life あるいは quality of vision を 考慮した疾患の管理を長期にわたって行うことは, 必ずし も容易ではない. また, 診断と治療のさまざまな選択肢を 駆使しても, 障害の進行を阻止あるいは抑制できない症例 が少なからず存在しており, 大きな問題となっている. 特に最近の医療の技術革新に伴って, 治療水準の維持と 向上が重視されており, 治療の質を向上させる目的から, 近年, 診療ガイドライン作成の必要性が高まってきた. さ らに患者と医療者側のコミュニケーションや, 治療の選択 とその情報の共有化, そしてチーム医療においてガイドラ

(18)

インが有用であるとされている. また, 社会的な背景とし て, 医療のグローバル化への対応や医療経済の観点から医 療資源の効率的利用による医療費の節減が求められており, 規範としてのガイドラインの必要性が指摘されている. このような背景のもとに, 日本緑内障学会では, 緑内障 診療ガイドラインを作成した. 本書では, まず緑内障の診 断と治療に関する要点を 「フローチャート」 で示した後, 「緑内障の定義」, 「緑内障の分類」, 「緑内障の検査」, 「緑 内障の治療総論」, 「緑内障の病型別治療」 の 5 章と補足資 料に分けて解説を加えた. 本書が日常の緑内障診療の一助 として広く活用され, 役立つことを期待する. ■医療は本来医師の裁量に基づいて行われるものであり, 医師は個々の症例 に最も適した診断と治療を行うべきである. 日本緑内障学会は, 本ガイド ラインを用いて行われた医療行為により生じた法律上のいかなる問題に対 して, その責任義務を負うものではない.

(19)

フローチャート

Ⅰ. 緑内障の病型・病期の決定

問 診・視 診 視力検査・屈折検査 細隙灯顕微鏡検査 眼 圧 検 査 隅 角 検 査 眼 底 検 査 視 野 検 査 その他の検査 検査所見の総合評価 病 型 決 定 病 期 決 定 緑内障性視神経障害所見・ 緑内障性視野障害所見

(20)

Ⅱ. 静的量的視野計測(自動視野計)

* 動的量的視野計測(Goldmann 視野計) ** その他の視野計による視野の評価 検 査 の 信 頼 性 再 検 (−) (+) 正 常 異 常 不変・改善 悪 化 視 野 の 評 価 視 野 の 評 価 (−) (+) * ** スクリーニング検査 初 回 検 査 経 過 観 察 閾 値 検 査 閾 値 検 査 再 検 検査の信頼性

(21)

Ⅲ. 眼圧下降治療:方針

[原発開放隅角緑内障(広義)] (+) (−) (−) (+) 治 療 開 始 時 病 期 無治療時眼圧 その他の危険因子 目標眼圧達成 視神経所見・視野所見の悪化 目標眼圧設定 治療選択 治 療 継 続 治 療 変 更 目標眼圧変更

(22)

Ⅳ. 眼圧下降治療:目標眼圧設定

[原発開放隅角緑内障(広義)] 高 値 低 値 目 標 眼 圧 初 期 後 期 高 値 低 値 (−) (+) 遅 い 速 い  短 い 長 い 病 期 無 治 療 時 眼 圧 そ の 他 の 危 険 因 子 視 野 障 害 進 行 余 命

(23)

Ⅴ. 眼圧下降治療:薬物治療の導入

[原発開放隅角緑内障(広義)] 単剤(単薬)投与 多 剤 併 用 (配合点眼薬投与を含む) 薬 剤 変 更 (+) (−) 目 標 眼 圧 達 成 薬 剤 変 更 レ ー ザ ー 治 療 ・ 手 術 治 療* (+) (−) 目 標 眼 圧 達 成 薬 剤 継 続 * レーザー治療・手術治療の選択については第 4 章 「緑内障の治療総論」 を参照

(24)

Ⅵ. 原発閉塞隅角症・

原発閉塞隅角緑内障の治療

隅 角 閉 塞 機 序 相対的瞳孔ブロック機序 プ ラ ト ー 虹 彩 機 序 レーザー虹彩切開術 可 能 眼圧コントロール 眼圧下降(薬物治療・手術治療) 経 過 観 察 良 好 不 良 周辺虹彩切除術 縮 瞳 (薬物治療) レーザー 隅角形成術 水晶体 摘 出 不可能

(25)

Ⅶ. 急性原発閉塞隅角症・

急性原発閉塞隅角緑内障の治療

レ ー ザ ー 虹 彩 切 開 術 良 好 眼 圧 下 降 (薬 物 治 療 ・手 術 治 療 ) 薬 物 治 療 眼 圧 下 降 隅 角 開 放 消 炎 周 辺 虹 彩 切 除 術 眼 圧 コ ン ト ロ ー ル 不 良 経 過 観 察 不 可 能 可 能 * 症例によっては水晶体摘出も選択肢となることがある(第 5 章 「緑内 障の病型別治療」 を参照)

(26)

第 1 章 緑内障の定義

緑内障は, 視神経と視野に特徴的変化を有し, 通常, 眼圧を 十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制し うる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である.

(27)

第 2 章 緑内障の分類

は じ め に

緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応 した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)であり, 緑内障は臨床上隅角所見, 眼圧上 昇を来しうる疾患(状況)の有無および付随する要因により分類 することができる. 基本的には, 眼圧上昇ないし視神経障害の 原因を他の疾患に求めることのできない原発緑内障, 他の眼疾 患や全身疾患あるいは薬物使用が原因となって眼圧上昇が生じ る続発緑内障, 胎生期の隅角発育異常により眼圧上昇をきたす 発達緑内障の 3 病型に分類される. 原発緑内障は原発開放隅角 緑内障(広義)(従来の原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障を 包括した疾患概念)と原発閉塞隅角緑内障に大別される. 緑内障の治療方針を立てるうえでは, 眼圧上昇機序による分 類が有用である. 続発緑内障の眼圧上昇機序は, 病型により, また病期により単一でないことにも注意が必要である. 現在, 閉塞隅角緑内障及び関連疾患の診断においては隅角診 断と緑内障性視神経症の有無を考慮した国際分類が主に疫学研 究における診断の統一性のため我が国を含め広く使用されてい る. 本ガイドラインではこうした観点から, 表 21 に示す緑内 障分類を採用する.

Ⅰ. 原発緑内障(primary glaucoma)

1. 原発開放隅角緑内障(広義) 原発開放隅角緑内障(広義)とは, 従来の原発開放隅角緑内障 (以下, 広義と付されないときは, 従来の概念での原発開放隅 角緑内障を意味する)と正常眼圧緑内障を包括した疾患概念. 原発開放隅角緑内障(広義)の発症および進行の危険性は, 眼圧 値の高さに応じて増加する. また, 視神経の眼圧に対する脆弱

(28)

表 21 緑 内 障 の 分 類 Ⅰ. 原発緑内障(primary glaucoma)

1. 原発開放隅角緑内障(広義)

A. 原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma) B. 正常眼圧緑内障(normal tension glaucoma,

nor-mal-pressure glaucoma)

2. 原発閉塞隅角緑内障(primary angle closure glaucoma) A. 原発閉塞隅角緑内障 B. プラトー虹彩緑内障 3. 混合型緑内障 Ⅱ. 続発緑内障(secondary glaucoma) 1. 続発開放隅角緑内障 A. 線維柱帯と前房の間に房水流出抵抗の主座のある続 発開放隅角緑内障

(secondary open angle glaucoma: pretrabecular form)

例:血管新生緑内障, 異色性虹彩毛様体炎による緑 内障, 前房内上皮増殖による緑内障など B. 線維柱帯に房水流出抵抗の主座のある続発開放隅角

緑内障

(secondary open angle glaucoma: trabecular form) 例:ステロイド緑内障, 落屑緑内障, 原発アミロイ ドーシスに伴う緑内障, ぶどう膜炎による緑 内障, 水晶体に起因する緑内障, 外傷による 緑内障, 硝子体手術後の緑内障, ghost cell glaucoma, 白内障手術後の緑内障, 角膜移植 後の緑内障, 眼内異物による緑内障, 眼内腫瘍 による緑内障, Schwartz 症候群, 色素緑内障, 色素散布症候群など C. Schlemm 管より後方に房水流出抵抗の主座のある 続発開放隅角緑内障

(secondary open angle glaucoma:posttrabecular form)

例:眼球突出に伴う緑内障, 上眼静脈圧亢進による 緑内障など

D. 房水過分泌による続発開放隅角緑内障

(secondary open angle glaucoma:hypersecretory form)

(29)

2. 続発閉塞隅角緑内障

A. 瞳孔ブロックによる続発閉塞隅角緑内障

(secondary angle-closure glaucoma: posterior form with pupillary block)

原因疾患:膨隆水晶体, 水晶体脱臼, 小眼球症, ぶ どう膜炎の虹彩後癒着による虹彩ボンベ など

B. 瞳孔ブロックによらない虹彩水晶体の前方移動に よる直接閉塞(secondary angle closure glaucoma: posterior form without pupillary block) 原因疾患:膨隆水晶体, 水晶体脱臼など

C. 水晶体より後方に存在する組織の前方移動による続 発閉塞隅角緑内障

(secondary angle closure glaucoma: posterior form) 原因疾患:小眼球症, 汎網膜光凝固後, 強膜短縮術 後, 眼内腫瘍, 後部強膜炎, ぶどう膜炎, 原田病による毛様体脈絡膜離, 悪性緑 内障, 眼内充填物質, 大量硝子体出血, 未熟児網膜症 D. 前房深度に無関係に生じる周辺虹彩前癒着によるも の

(secondary angle closure glaucoma: anterior form) 原因疾患:ぶどう膜炎, 角膜移植後, 血管新生緑内 障, 虹彩角膜内皮(ICE)症候群, 前房内 上皮増殖, 虹彩分離症など Ⅲ. 発達緑内障(developmental glaucoma) 1. 早発型発達緑内障 2. 遅発型発達緑内障 3. 他の先天異常を伴う発達緑内障 無 虹 彩 症 , Sturge-Weber 症 候 群 , Axenfeld-Rieger 症 候 群 , Peters’ anomaly , Marfan 症 候 群 , Weill-Marchesani症候群, ホモシスチン尿症, 神経線維腫症, 風疹症候群, Pierre Robin 症候群, 第一次硝子体過形 成遺残, 先天小角膜, Lowe 症候群, Rubinstein-Taybi 症候群, Hallermann-Streiff 症候群, 先天ぶどう膜外 反など

(30)

性には個体差があり, 特定の眼圧値により原発開放隅角緑内障 と正常眼圧緑内障を分離できないため, 両者を包括した疾患概 念として原発開放隅角緑内障(広義)とする. 原発開放隅角緑内 障(広義)は, 臨床の場では, 便宜的に高眼圧群(原発開放隅角 緑内障)と正常眼圧群(正常眼圧緑内障)に区分される. 多治見 スタディの対象者眼圧分布によれば, 右眼眼圧は 14.6±2.7mm Hg(平均値±標準偏差), 左眼眼圧は 14.5±2.7 mmHg(同)で あり, 正常眼圧を平均値±2 標準偏差で定義すると, 正常上限 は 19.9∼20.0 mmHg となる. したがって, 日本人において眼 圧 20 mmHg を境に原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障の二 臨床病型に分けることには一定の合理性がある. 原発開放隅角 緑内障(広義)は慢性進行性の視神経症であり, 視神経乳頭と網 膜神経線維層に形態的特徴(視神経乳頭辺縁部の菲薄化, 網膜 神経線維層欠損)を有し, 他の疾患や先天異常を欠く病型. 隅 角鏡検査で正常開放隅角(隅角の機能的異常の存在を否定する ものではない). 視神経所見と視野所見の対応に不一致のある場合, 視神経乳 頭の色調が陥凹の程度に比して蒼白な場合などのときには, 視 野, 視神経の再検査のうえ, 頭蓋内疾患などの検索を行うこと も考慮すべきである. なお, 原発開放隅角緑内障(広義)のなか に, myocilin, optineurin などの遺伝子異常を認めることが ある.

1) 原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma) 原発開放隅角緑内障(広義)のうち, 緑内障性視神経症の発生 進行過程において, 眼圧が統計学的に規定された正常値を超え ており, 眼圧の異常な上昇が視神経症の発症に関与しているこ とが強く疑われるサブタイプ. 眼圧には日内変動, 季節変動な どの存在が知られているため, 眼圧測定回数が少ない場合, 眼 圧が異常高値を示さないこともまれでない. 付記) 眼圧など房水動態の点では原発開放隅角緑内障と共通

(31)

する特徴を有しながら, 視神経の特徴的形態変化ならびに視野 異常の存在を欠く病型を高眼圧症(ocular hypertension)と呼 ぶ. 原発開放隅角緑内障の前段階とする考え方がある一方, 視 神経の眼圧抵抗性の強い症例とする考え方がある. 高眼圧症か ら緑内障へ進行しやすい症例の背景として, 緑内障の家族歴, 血管因子, 加齢, 人種, 屈折異常などが知られている. また, 角膜厚が厚いほど眼圧が高く評価されることに留意する必要が ある.

2) 正 常 眼 圧 緑 内 障 (normal tension glaucoma, normal pressure glaucoma) 原発開放隅角緑内障(広義)のうち, 緑内障性視神経症の発生 進行過程において, 眼圧が常に統計学的に規定された正常値に 留まるサブタイプ. 正常眼圧緑内障における視神経症の発症に 眼圧異常が関与していないことを必ずしも意味するわけではな い. また, 別の発症要因として眼圧非依存因子(循環障害など) を推定させる所見を呈することも多い. 眼圧には日内変動, 季 節変動などの存在が知られているため, 眼圧が常に正常範囲に あることを証明することは時として簡単ではなく, 日内変動測 定などを要する場合が多い.

2. 原発閉塞隅角緑内障(primary angle closure glaucoma) 原発閉塞隅角緑内障は, 他の要因なく, 遺伝的背景, 加齢に よる前眼部形態の変化などで惹起される隅角閉塞により眼圧上 昇を来し, 緑内障性視神経症に至る疾患である.

1) 隅角構造と緑内障性視神経症の有無による分類

(1) 原発閉塞隅角症疑い(primary angle closure suspect: PACS)

原発性の隅角閉塞があり, 眼圧上昇も, 器質的な周辺虹彩前 癒着(peripheral anterior synechia: PAS)も緑内障性視神経 症も生じていない, すなわち非器質的隅角閉塞(機能的隅角閉 塞, appositional angle closure とも呼ばれる)のみの症例.

(32)

(2) 原発閉塞隅角症(primary angle closure: PAC) 原発性の隅角閉塞があり, 眼圧上昇または器質的な周辺虹彩 前癒着を生じているが緑内障性視神経症は生じていない症例.

(3) 原発閉塞隅角緑内障(primary angle closure glaucoma: PACG) 原発性の隅角閉塞があり緑内障性視神経症を生じた症例. 付記1) 原発性の隅角閉塞の診断は, 第一眼位において対光 反応による縮瞳に伴う隅角開大, 隅角鏡による圧迫を可能な限 り排除して行う静的隅角鏡検査(static gonioscopy)によって 行うことが推奨されている. 隅角鏡診断による隅角閉塞を欧米 では occludable angle(閉塞の可能性のある隅角の意味, 邦訳 なし)と呼ぶ(第 3 章, 検査の項を参照). 隅角閉塞は, 線維柱 帯色素帯が隅角全周の 3/4 (270 度)以上にわたり観察されず虹 彩線維柱帯間の接触が推測される(iridotrabecular contact: I TC)として定義することが提唱されているが, 範囲を 180 度以 上または少しでも閉塞があれば, と定義すべきとの意見も存在 する. 超音波生体顕微鏡や前眼部光干渉断層装置などによる画 像診断の位置づけも未だ明確でない.

付記2) 現時点の欧米文献では primary angle closure が 原発閉塞隅角症の意味で用いられる場合と, 原発閉塞隅角症と 原発閉塞隅角緑内障を包括した病名あるいは両者を生じる隅角 の病態の意味で用いられている場合があるので, 解釈に注意を 要する. 本ガイドラインは, 語義の曖昧さを避けるため, pri-mary angle closureを原発閉塞隅角症に限定して使用するこ とを勧める.

2) 隅角閉塞機序の分類

隅角閉塞機序は画像診断の普及以前から論じられており, 主 に治療効果によりその機序の重要性が認識されてきた. 原発閉 塞隅角緑内障は相対的瞳孔ブロックによる原発閉塞隅角緑内障

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と同一視されていたが, プラトー虹彩の機序の関与している症 例も多い. また, 水晶体, 毛様体もその発症に関与する. これ らの因子, またはその他の因子が複合して関与している.

(1) 相対的瞳孔ブロック(relative pupillary block) 瞳孔領における虹彩―水晶体間の房水の流出抵抗の上昇に引 き続く虹彩の前方膨により隅角閉塞をきたす. レーザー虹彩 切開術の高い有効性からほとんどの原発性の隅角閉塞に相対的 瞳孔ブロックが関与していると考えられる. (2) プラトー虹彩(plateau iris) 虹彩根部が前方に屈曲し散瞳時に直接隅角を閉塞する虹彩の 形態異常である. 虹彩形態そのものについてはプラトー虹彩形 態(plateau iris configuration), プラトー虹彩形態による隅角 閉塞をプラトー虹彩機序(plateau iris mechanism)と呼ぶ. プラトー虹彩機序による眼圧上昇と緑内障性視神経症をプラトー 虹彩緑内障(plateau iris glaucoma)と定義する. 欧米ではプ ラトー虹彩機序による眼圧上昇と緑内障を性視神経症 plateau iris syndromeと呼んでいる. 診断には, 隅角鏡とともに画像 診断が有効であるが, 定量的な定義は存在しない. プラトー虹 彩は厳密には瞳孔ブロック解除後に診断が確定する. 相対的瞳 孔ブロックとプラトー虹彩機序の合併症例ではレーザー虹彩切 開術などによる瞳孔ブロック解除後に診断される. (3) 水晶体因子(lens factor) 水晶体の前進, 膨, 加齢による増大も原発性の隅角閉塞発 症に関与している. また, 瞳孔ブロックも水晶体と虹彩の間の 房水流出抵抗の増大によるものであり水晶体が深く関与する. (4) 毛様体因子 画像診断においてのみ診断可能な微少な特発性の毛様体脈絡 膜滲出(ciliochoroidal effusion, uveal effusion)を伴う原発閉 塞隅角症/緑内障の症例が存在し, 浅前房化, 毛様体ブロック の増強による隅角閉塞に関与することが推測されている. 特に, 急性発作眼において高頻度である.

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3) 発症速度による分類 急性型は隅角の広範な閉塞により短時間に眼圧が上昇し, い わゆる緑内障発作に代表される臨床症状を呈し, 慢性型は隅角 の閉塞が徐々にあるいは間欠的に生ずるために眼圧上昇が軽微 かつ緩徐なものである. 急性型と慢性型の中間型として亜急性 または間欠性というカテゴリーをおく考え方もある. (1) 急性原発閉塞隅角緑内障・急性原発閉塞隅角症 他覚所見として, 眼圧上昇はしばしば 40∼80 mmHg に達し, 視力低下, 対光反射の減弱ないし消失を認める. 細隙灯顕微鏡 では, 角膜浮腫, 周辺部の浅前房, 周辺部虹彩の前方への突出, 瞳孔の中等度散大, 結膜充血および毛様充血が観察され, 隅角 鏡で広範な隅角閉塞を認める. 眼底で乳頭浮腫, 静脈うっ滞, 乳頭出血などを認めることもある. 他眼は狭隅角ないし閉塞隅 角. 自覚症状として, 視力低下, 霧視, 虹視症, 眼痛, 頭痛, 悪心, 嘔吐などを認める. こうした所見の一部を欠き, 自覚症 状の乏しい症例もある. 薬物による散瞳(散瞳点眼薬, 抗コリ ン薬内服など), 精神感動, 暗所などが発作の誘因となること がある. 急性発作寛解後, 視神経乳頭は蒼白あるいは緑内障性陥凹を 呈することがある. そうした症例では, その時点で急性原発閉 塞隅角緑内障の診断が確定する. 治療などにより視神経症の発 症をみる前に寛解した症例では, 発作時には緑内障性視神経症 の有無の判断は困難なことも多い. このため, 発作寛解後にも 視神経症の認められない症例は急性原発閉塞隅角症(acute pri-mary angle closure)と呼ぶ.

(2) 慢性原発閉塞隅角緑内障 原発閉塞隅角緑内障の大部分をしめる. 急性型の自覚症状・ 他覚所見ならびに既往の認められない症例. 視神経乳頭陥凹の 拡大, 視野欠損など原発開放隅角緑内障と同様の自覚症状・他 覚所見を示す. 診察時に眼圧は必ずしも高値を示すわけではな い. 隅角検査において原発性の隅角閉塞に伴う器質的隅角閉塞

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(周辺虹彩前癒着)を伴う症例と伴わない(非器質的隅角閉塞)症 例がある. 原発開放隅角緑内障との鑑別には適切な隅角鏡検査 が必須である. 3. 混合型緑内障(mixed glaucoma) 混合型緑内障とは原発開放隅角緑内障と原発閉塞隅角緑内障 の合併例のことである. 混合型緑内障という用語を用いるべき ではないという意見も存在する. 混合型緑内障の診断にあたっては, 慢性原発閉塞隅角緑内障, および狭隅角眼に生じた原発開放隅角緑内障の可能性を念頭に 置かなければならない.

Ⅱ. 続発緑内障(secondary glaucoma)

続発緑内障は他の眼疾患, 全身疾患あるいは薬物使用が原因 となって眼圧上昇が生じる緑内障である. 続発緑内障も緑内障 性視神経症(GON)を有する症例のみで定義するのが本ガイド ラインの緑内障の定義に沿った一貫性のある解釈である. しか しながら, 本症の一部では, 原疾患, 他疾患の存在により緑内 障性視神経症による視神経の形態的変化, 機能変化(視野変化) の評価が困難である. このため, 経過措置として, 従来の解釈 どおり, 続発緑内障には続発性の眼圧上昇を有し, 緑内障性視 神経症を生じていない症例を含めることとする. 続発緑内障の 分類については, 病因による分類, 眼圧上昇機序による分類, あるいは, 治療手段による分類, などいくつかの視点から考え ることができる. しかしながら, こうした分類法には一長一短 がある. 例えば, 病因による分類では, 血管新生緑内障が開放 隅角機序として始まり閉塞隅角機序に眼圧上昇機序を変化させ ながら進展することを表現しにくい. 眼圧上昇機序による分類は, 病因検索および最適な治療法へ の道標として, 本ガイドラインの趣旨に合い, 有用性が高いと 考えられるため, ここではそれに従って記述する. 同じ病因で あっても眼圧上昇機序が異なることがありうること, 同一眼に

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おいて眼圧上昇機序が変化しうることに十分な注意が必要であ る. 続発緑内障の診断においては, 眼圧上昇機序確認のための 隅角検査は不可欠である. 1. 続発開放隅角緑内障の眼圧上昇機序 1) 線維柱帯と前房の間に房水流出抵抗の主座のあるもの 線維性血管膜, 結膜上皮などにより, 異常房水流出抵抗が生 ずる. 2) 線維柱帯に房水流出抵抗の主座のあるもの 落屑物質, 炎症性産物, マクロファージ, 虹彩色素などによ り異常房水流出抵抗が生ずる. 副腎皮質ステロイドの副作用と しても生じる. 3) Schlemm 管より後方に房水流出抵抗の主座のあるもの 上強膜静脈圧の亢進によるもので, 眼窩内の圧上昇に伴うも の, 上眼静脈圧亢進によるもの, 動静脈瘻によるもの, 血管腫 によるものがある. 4) 房水過分泌によるもの 2. 続発閉塞隅角緑内障の眼圧上昇機序 1) 瞳孔ブロックによるもの 膨隆水晶体, 水晶体脱臼, 虹彩後癒着などが瞳孔ブロックの 原因となる. 2) 瞳孔ブロックによらない虹彩―水晶体の前方移動による 直接閉塞 水晶体脱臼が原因となり瞳孔ブロックの機序なく直接隅角閉 塞することがある. 3) 水晶体より後方に存在する組織の前方移動によるもの 硝子体前方移動, 毛様体脈絡膜滲出などが原因となる. 4) 前房深度に無関係に生じる周辺虹彩前癒着によるもの 血管新生緑内障, 虹彩角膜内皮(ICE)症候群, ぶどう膜炎, 手術, 外傷などが原因となる.

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Ⅲ. 発達緑内障(developmental glaucoma)

隅角形成異常に起因する緑内障は, 本ガイドラインにおいて, 先天緑内障でなく発達緑内障で統一する。発達緑内障は, 形成 異常が隅角に限局する早発型発達緑内障, 遅発型発達緑内障, 他の先天異常を伴う発達緑内障に分類すると理解しやすい. 早 発型発達緑内障は以前の原発先天緑内障に相当する. 1. 早発型発達緑内障 先天異常が隅角に限局する病型. しかしながら, 虹彩発育異 常による軽度の低形成などを合併することはしばしばである. また, 従来より牛眼と呼ばれていた角膜径増大, 角膜混濁など の病態を呈することが多い. 2. 遅発型発達緑内障 先天的な隅角形成異常に起因する緑内障であるが, 異常の程 度が軽いため, 発症時期が遅れる病型. 3. 他の先天異常を伴う発達緑内障

無虹彩症, Marfan 症候群, Axenfeld-Rieger 症候群, Peters’ anomaly, Sturge-Weber 症候群, 神経線維腫症など多岐にわ たる.

文 献

1) 北澤克明:緑内障クリニック. 改訂第 3 版, 金原出版, 東京, 1996. 2) European Glaucoma Society: Terminology and Guidelines

for Glaucoma, Second edition,2003.

3) Ritch R, Shields MB: The Secondary Glaucomas. Mosby, St. Louis,1982.

4) 北澤克明, 白土城照, 新家眞, 山本哲也:緑内障. 医学書院, 東 京, 2004.

5) Iwase A, Suzuki Y, Araie M, Shirato S, Kuwayama Y,

Mishima HK, et al: Tajimi Study Group, Japan Glaucoma Society: The prevalence of primary open-angle glaucoma in

Japanese. The Tajimi Study. Ophthalmology111:16411648,

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第 3 章 緑内障の検査

Ⅰ. 問

初診時の問診は, 緑内障診療において基本的かつ重要な検査 である. 詳細な問診は, 緑内障の診断および管理方針決定に際 して必要不可欠である. 続発緑内障の可能性を考慮するために は, 眼の外傷, 炎症, 手術, 感染症などの既往歴のほか, 全身 疾患の既往歴や薬物治療歴についても聴く必要がある. また, 自覚症状の問診も重要で, 霧視, 虹視症, 眼痛, 頭痛, 充血な どは急性緑内障発作の既往を疑わせる. さらに, 家族歴の聴取 も重要で, 特に緑内障の家族歴を有する例では, 血縁者の視機 能障害について聴くことが望ましい. 他医における眼圧, 眼底, 視野など診断および治療に関する情報があれば, できるだけ利 用すべきである. 1. 眼 痛 急性緑内障発作などで眼圧が著明に上昇した場合, 強い眼痛 が突然自覚されることが多い. 一般に, 眼圧が正常値から著し い高値まで急激に上昇した際に強い眼痛が自覚される. 眼痛は, 角膜上皮障害, ぶどう膜炎における毛様体の刺激などでも起こ りうる. 2. 頭 痛 急性緑内障発作では, 急激な眼圧上昇に伴い, 嘔気, 嘔吐を 伴った頭痛がみられ, 視力低下, 羞明, 虹視症などを伴う. 3. 霧 視 著明な眼圧上昇に伴う角膜浮腫やぶどう膜炎による続発緑内 障などでは, 霧視が自覚されることがある. 4. 視野欠損 緑内障の初期では, 視野検査で視野異常が検出された場合で あっても, 視野異常が自覚されないことが多い. 患者が視野異 常を自覚した場合, 視神経障害あるいは視野障害が既に相当進

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行している場合が多い. 5. 充 血 充血は, 急性緑内障発作のほか, ぶどう膜炎による緑内障, 血管新生緑内障, 水晶体融解緑内障などの各種続発緑内障にお いて自覚される.

Ⅱ. 細隙灯顕微鏡検査

細隙灯顕微鏡検査は, 緑内障診療において基本的な検査であ る. 本検査では, 角結膜, 前房, 虹彩, 水晶体などを観察する が, 補助レンズの併用により, 隅角や眼底を観察することがで きる. 1. 角 結 膜 角膜浮腫は急性緑内障発作などで眼圧が著明に上昇した場合 にみられるが, 虹彩角膜内皮(ICE)症候群などの角膜内皮障害 を伴う続発緑内障では眼圧が正常範囲内にあっても角膜浮腫が みられることがある. レーザー治療(特にレーザー虹彩切開術) または手術治療後に水疱性角膜症を併発することがあり, 注意 が必要である. 早発型発達緑内障では, 眼圧上昇に伴う眼球の 膨張により, Haab 線と呼ばれる Descemet 膜破裂がみられる ことがあり, 角膜内皮上の蛇行した隆起線として観察される. このほか, ぶどう膜炎による緑内障では角膜後面沈着物, 色素 緑内障や色素散布症候群では角膜後面に紡錘状の色素沈着 (Krukenberg spindle)がみられることがある. 2. 前 房 閉塞隅角緑内障の診断において, 細隙灯顕微鏡検査による前 房深度のスクリーニングは簡便かつ有用である. 日本人は欧米 人に比して, 浅前房の頻度が高いことが知られている. van Herick法(補足資料 1 [2] 参照)は, 角膜厚と周辺部前房深度 を比較することにより, 隅角の広さを推定する方法である. プ ラトー虹彩緑内障では, 前房深度がほぼ正常にもかかわらず狭 隅角や隅角閉塞がみられるため, その診断には, 細隙灯顕微鏡

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検査による前房深度の評価のみでは不十分であり, 隅角鏡検査 が必須である. 3. 虹 彩 通常, 虹彩は平坦あるいは軽度に前方へ膨隆した形状を呈す る. 虹彩が著しく前方へ膨隆している場合, 瞳孔ブロックの存 在が疑われる. 虹彩の異常所見として, 虹彩と角膜または隅角 線維柱帯との前癒着, 水晶体との後癒着, 虹彩の血管新生, 虹 彩萎縮, 虹彩結節などが挙げられる. 4. 水 晶 体 緑内障と関連する水晶体異常として, 水晶体の大きさや形状 の異常(膨化水晶体, 球状水晶体など), 水晶体の位置異常(水 晶体脱臼, 水晶体亜脱臼など)などが挙げられる. 水晶体の位 置異常には, 毛様小帯の異常(先天異常, 外傷, 落屑緑内障な ど)が関与するものがある. 水晶体の位置異常, 白内障進行に よる水晶体厚増加などは, 隅角閉塞の原因となりうる. 成熟あ るいは過熟白内障では, 水晶体物質の流出を伴い, 水晶体融解 緑内障を併発することがある. 水晶体前面の観察も重要で, レー ザー虹彩切開術や周辺虹彩切除術後に水晶体前面と虹彩に虹彩 後癒着が起こることがある. 落屑緑内障では, 水晶体前面や瞳 孔縁などに特徴的な白色物質の沈着がみられる.

Ⅲ. 眼圧検査

1. 眼 圧 多数例を対象とした調査結果により, 眼圧値の分布は, 高い 値への歪みを示し, 完全な正規分布を示さない. 正常眼圧の平 均値(±標準偏差)は 15.5(±2.6)mmHg 前後であり, 統計学的 に求めた正常眼圧の上限値は約 21 mmHg とされてきた. しか し, これらの値は欧米人を対象とした調査結果に基づいたもの である. 多治見スタディの対象者眼圧分布によれば, 右眼眼圧 は 14.6±2.7 mmHg(平均値±標準偏差), 左眼眼圧は 14.5±2.7 mmHg(同)であり, 正常眼圧を平均±2 標準偏差で定義すると,

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正常上限は 19.9∼20.0 mmHg となる. 眼圧には日内変動があ り一般に朝方に高いことが多いが, 個人によりパターンは異な る. また, 眼圧には季節変動もあり, 一般に眼圧は冬季に高く, 夏季に低いことが知られている. 眼圧に関連する因子として, 年齢, 性別, 屈折, 人種, 体位, 運動, 血圧, 眼瞼圧および眼球 運動などが挙げられ, また, 種々の薬物も眼圧に影響を与える. 2. 眼 圧 計 Goldmann圧平眼圧計は, 臨床的に最も精度が高く, 緑内 障診療において標準的に使用されるべき眼圧計である. Gold-mann圧平眼圧計では, Schiotz眼圧計に代表される圧入眼圧 計とは異なり, 測定値が眼球壁硬性の影響を受けにくいという 利点がある. Tonopenや Perkins圧平眼圧計は座位でも仰 臥位でも眼圧測定が可能なポータブルな眼圧計である. iCare は点眼麻酔なしで眼圧測定が可能なポータブル眼圧計であるが, 測定原理が全く異なることに留意すべきである.

Dynamic contour tonometer(DCT)は, 角膜厚の影響を比 較的受けにくい眼圧計であるが, 測定値が Goldmann 圧平眼 圧計よりも若干高値となる特徴がある. 非接触型眼圧計は測定 手技が簡単であるが, スクリーニング目的に限定して使用され るべきである. 測定値には角膜の物理学的特性の影響があるこ とが知られ, 例えば, 角膜が薄いと眼圧が低く, 角膜が厚いと 眼圧は高く測定されることが知られている. 一般に眼圧測定値には角膜の物理学的特性に注意が必要で ある. 特に, レーザー屈折矯正角膜切除術(photorefractive keratectomy: PRK)やレーザー角膜内切削形成術(laser in situ keratomileusis: LASIK)などレーザー屈折矯正手術後の 眼圧測定値の解釈には十分な注意が必要である.

Ⅳ. 隅角鏡検査

1. 隅 角

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鏡検査では, Schwalbe 線, 線維柱帯, 強膜岬, 毛様体帯など の隅角を構成する各部位を正しく認識することが重要である (隅角所見の記載法については補足資料 1 [3] 参照). 病的な隅 角鏡所見として, 糖尿病網膜症, 網膜静脈閉塞症, 内頸動脈閉 塞症などの眼虚血性病変では, 隅角に新生血管がみられること がある. 生理的にも隅角に血管が観察されることがあるが, 血 管は同心円状または放射状の規則的な走行を示す. 病的な新生 血管は, 不規則な曲がりくねった走行をとり, 多数の分枝を示 すことが多く, 周辺虹彩前癒着を伴うこともある. また, 活動 性のぶどう膜炎では, 隅角に炎症性滲出物がみられることがあ り, 周辺虹彩前癒着を伴うこともある. 1) Schwalbe 線 Schwalbe線は Descemet 膜の終わる部分に相当して存在し, 前房内に突出する隆起としてみられる. 2) 線維柱帯 Schwalbe線と強膜岬の間に線維柱帯と Schlemm 管が位置 する. 線維柱帯の中央から強膜岬側は, 機能的線維柱帯に相当 し, 色素帯として観察される. 落屑緑内障, 色素緑内障, 色素 散布症候群などでは, 線維柱帯に著明な色素沈着がみられるこ とが多い. 特に落屑緑内障眼では, Schwalbe 線前方に波状の 著明な色素沈着がみられることがあり, これを Sampaolesi 線 と呼ぶ. 3) 強 膜 岬 強膜岬は毛様体帯と線維柱帯の間の白い線として観察される. しばしば虹彩突起がその表面にみられる. 発達緑内障眼では, 虹彩が強膜岬より前方に付着しており, 強膜岬が観察できない ことがある. 4) 毛様体帯 毛様体帯は毛様体の前面に相当し, 灰黒色の帯として観察さ れる.

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2. 隅角の観察方法 隅角鏡検査には直接型隅角鏡による直接法と間接型隅角鏡に よる間接法がある. 直接型隅角鏡として Koeppe レンズなど があり, 間接型隅角鏡として Goldmann 隅角鏡や Zeiss 四面 鏡などがある. 3. 静的隅角鏡検査と動的隅角鏡検査 隅角閉塞の正確な診断には静的隅角鏡検査と動的隅角鏡検査 の両方を行うことが必要である. 1) 静的隅角鏡検査(static gonioscopy) 暗室下で細隙灯顕微鏡の光量を極力下げ, 瞳孔領に光を入れ ずに隅角鏡で眼球を圧迫しないようにして, 第一眼位における 自然散瞳状態での隅角開大度を評価する. 非器質的隅角閉塞と 器質的隅角閉塞を鑑別できない. 2) 動的隅角鏡検査(dynamic gonioscopy) 静的隅角鏡検査に引き続き施行する. 細隙灯顕微鏡の光量を 上げて縮瞳させ隅角鏡または眼位を傾けて軽度の圧迫を加える ことにより隅角を開大させる. 器質的隅角閉塞の有無や範囲に 加えて結節, 新生血管の有無などを診断する. 3) 圧迫隅角鏡検査(indentation gonioscopy) 動的隅角鏡検査の一種で, 隅角鏡によって角膜中央を圧迫し て変形させることにより房水が周辺虹彩を後方に押し下げ隅角 底が観察されやすくなる. 角膜との接触面積が小さい専用レン ズを使用すると効率的に圧迫できる. 隅角が非常に狭いため通 常の動的隅角鏡検査によっても非器質的隅角閉塞と器質的隅角 閉塞の鑑別が困難な場合に行う. 4. 補助診断に有用な検査機器 超音波生体顕微鏡は, 隅角を含めた前眼部組織の微細構造を 断面として観察することができる診断機器で, 緑内障診断にお ける有用性が報告されている. 前眼部光干渉断層計は非接触性 に隅角部を観察できる診断機器であり, 解像度は超音波生体顕 微鏡に勝るが, 毛様体は観察できない.

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Ⅴ. 眼底検査

1. 視神経乳頭と網膜神経線維層 緑内障診断において, 視神経乳頭あるいは網膜神経線維層の 形態学的変化の検出はきわめて重要である. 視神経乳頭や網膜 神経線維層の障害所見は, 緑内障の病期と関連するが, しばし ば視野異常の検出に先立って検出される. 特に正常眼圧緑内障 では, 眼底検査による視神経障害所見の検出が疾患の発見のきっ かけとなることが少なくない. 眼底検査による視神経所見の観 察には, ①検眼鏡, ②補助レンズを用いた細隙灯顕微鏡, ③眼 底写真撮影, ④無赤色眼底観察, ⑤眼底三次元画像解析がある. 検眼鏡を用いた観察法の場合には, 直像鏡を用いるべきである. また, 視神経乳頭陥凹を三次元的に観察する立体的観察が推奨 されるが, そのためには, 細隙灯顕微鏡と補助レンズ(非接触 型レンズや Goldmann 三面鏡など)を用いた方法が簡便かつ有 用である. 視神経乳頭や網膜神経線維層に緑内障による変化が生じてい ないか, 前述した 5 つの眼底観察法を適宜用いて判定する. 内 容の詳細については, 補足資料 2 “緑内障性視神経乳頭・網膜 神経線維層変化判定ガイドライン” を独立して設けたので参照 されたい.

Ⅵ. 視野検査

1. 視 野 正常視野は, 横長の楕円形をしており, 固視点に対して, 上 側と鼻側で 60 度, 下側で 70∼75 度, 耳側で 100∼110 度程度 である. 視野計測の手法として, 動的計測と静的計測の 2 つが ある. 視野計では, 視標の明るさは apostilbs(asb)の単位で 表示される. 1 asb は, 0.3183 candela/m2 (0.1 millilambert) に相当する.

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2. Goldmann 視野計 Goldmann視野計は, 国際的にも標準的に用いられている 視野計である. 背景輝度は 31.5 asb, 視標と被検眼の距離は 30 cmに設定されている. 視標サイズは, 0 (1/16 mm2), Ⅰ(1/4 mm2 ), Ⅱ(1 mm2 ), Ⅲ(4 mm2 ), Ⅳ(16 mm2 ), Ⅴ(64 mm2 )で, 視標の明るさは, 1 a (12.5 asb)から 4 e (1000 asb)まである. 通常, Ⅴ/4 e, Ⅰ/4 e, Ⅰ/3 e, Ⅰ/2 e, Ⅰ/1 e の設定を用いて計 測を行う. 本視野計による動的視野計測では, 検者が視標を動 かしていくつかイソプターを描く. 熟練した検者による場合, 精度の高い結果を得ることができる. 3. 静的視野 一般に, 静的視野計測は, 動的視野計測に比して, 初期緑 内障における視野異常の検出に鋭敏である. 視野計として Humphrey視野計や Octopus 視野計が最も普及している. 静 的視野の感度には, デシベル表示が用いられている[1 decibel (dB)= 0.1 log Unit]. これらの静的視野では, 中心 30 度以内 の精密測定が主に行われている. 測定プログラムにはスクリー ニング検査と閾値検査がある. 緑内障の検出にはスクリーニン グ検査が有用であるが, 経過観察には閾値検査法が必須である. 検査結果には, 眼瞼下垂, 屈折異常, 中間透光体の混濁, 瞳孔 径, 加齢などが影響する. 固視の状態, 偽陰性と偽陽性の出現 頻度, 短期変動などが検査結果の信頼性を評価するうえで有用 な指標となる. また被験者の経験は重要で, 一般に初回の検査 結果はそれ以降の結果よりも信頼性が低い. 検査結果は, 実測 閾値, グレースケール(実測閾値の灰色濃淡表示), トータル偏 差(年齢別正常値からの偏差), パターン偏差(被検者の予測正 常視野からの偏差)などで示される. 4. その他の視野測定

Blue on yellow perimetry(short-wavelength automated perimetry: SWAP), Frequency doubling technology

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である可能性が報告されている.

5. 緑内障性視野異常の判定基準と程度分類 補足資料 1 [4, 5] 参照

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第 4 章 緑内障の治療総論

Ⅰ. 緑内障治療の原則

1. 治療の目的は患者の視機能維持

現在, 緑内障治療の目的は, 患者の視機能を維持することで ある. 視機能の障害は, 個々の患者の quality of life (QOL) を大きく損なうことになる. しかし, 治療にあたっては, 治療 による副作用や合併症のみならず, 通院や入院に伴う社会的・ 経済的負担, あるいは失明への不安なども QOL に有害である ことを念頭に置かなければならない. 2. 最も確実な治療法は眼圧下降 現在, 緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療 法は眼圧を下降することである. 眼圧以外の因子に対する新た な治療法として, 視神経乳頭の血流改善治療や神経保護治療が 注目され試みられており, 将来革新的な治療法となる可能性が ある. 3. 治療できる原因があれば原因治療 眼圧上昇の原因が治療可能であれば, 眼圧下降治療とともに 原因に対する治療が必要である. 原発閉塞隅角緑内障など瞳孔 ブロックが眼圧上昇の原因である緑内障に対する虹彩切開, ぶ どう膜炎に伴う緑内障に対する消炎治療, 血管新生緑内障に対 する網膜光凝固, ステロイド緑内障に対する副腎皮質ステロイ ド投与中止などが原因治療にあたる. 4. 早期発見が大切 緑内障では, 現在のところいったん障害された視機能が回復 することはない. また, 後期例では治療を行っても進行する例 があることが知られている. したがって, 緑内障治療において は早期発見, 早期治療が大切である. 5. 必要最小限の薬剤で最大の効果 現在多数の緑内障治療薬が認可されているが, 薬物治療の原

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則は必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ることである. そのためには, 各薬剤の作用機序, 副作用, 禁忌を理解してお かなければならない. さらに, QOL, 治療にかかわる費用, アドヒアランスなどへの配慮も必要である. 6. 薬物, レーザー, 手術から選択 緑内障には, 薬物治療, レーザー治療, 手術治療の選択肢が あるので, 症例や病期・病型に応じて適切な治療を選択しなけ ればならない. 多剤の併用は, 副作用の増加やアドヒアランス の低下につながることもある. アドヒアランスの向上のため配 合点眼薬の使用も考慮すべきだが, 原則的に初回から配合点眼 薬を使用することなく, 単剤併用により副作用の有無や眼圧下 降効果を評価することが望ましい. 一般的に, 眼圧コントロー ルに多剤(3 剤以上)の薬剤を要するときは, レーザー治療や観 血的手術などの他の治療法も選択肢として考慮する必要がある.

Ⅱ. 治療の実際

緑内障は慢性に経過する症例が大部分であるので, ここで述 べる治療は, 原発開放隅角緑内障(広義), 虹彩切開術後の原発 閉塞隅角緑内障, 慢性続発緑内障などを対象としたものである. 1. ベースラインデータの把握 各症例の無治療時の状態はベースラインデータとして重要で ある. 無治療時の眼圧レベルは, 視神経障害を引き起こした眼 圧であり, このレベルであればさらに障害が進行すると考えら れる眼圧である. 治療効果を判定するにも無治療時の眼圧を把 握することが必要である. また, 無治療時の視神経乳頭所見や 視野所見を把握することは, 治療方針を決定するためのみなら ず, 障害の進行を早期に検出し速やかに治療の修正, 変更を行 うために大切である. したがって, 後期例など特に治療開始を 急ぐ必要のある例でない限り, 治療開始の前に眼圧, 視神経乳 頭所見, 視野所見などのベースラインデータを十分把握してお くことが望ましい.

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2. 目標眼圧 緑内障治療の最終目的は視機能維持ではあるが, 視神経障害 は非可逆的であること, 緩徐に進行するため治療効果の判定に 長期間を要することを考えると, 視神経障害の進行を阻止しう ると考えられる眼圧レベル(目標眼圧)を設定して緑内障を治療 することは, 合理的な方法である(フローチャートⅢ∼Ⅴ参照). 1) 目標眼圧設定 視神経障害の進行を阻止しうる眼圧を前もって正確に知るこ とは困難ではあるが, 治療を開始するにあたっては, 緑内障病 期, 無治療時眼圧, 余命や年齢, 視野障害進行, 家族歴, 他眼 の状況などの危険因子を勘案し, 症例ごとに目標眼圧を設定す る(フローチャートⅣ参照). 一般に, 緑内障は後期例であれば あるほど視野障害が進行しやすく, かつ, 進行した場合に QOLに及ぼす影響が大きいので, 目標眼圧は低くあるべきで ある. また, 無治療時の眼圧レベルが低ければ低いほど, 目標 眼圧を低く設定する必要がある. さらに, 視野障害の進行速度 はもちろん, 患者の年齢や余命と治療の得失のバランス, 他眼 の状態, 家族歴等々のリスクを十分考慮してそれぞれの例に応 じた目標眼圧を設定する. 目標眼圧の例としては, 緑内障病期に応じて, 初期例 19 mmHg以下, 中期例 16 mmHg 以下, 後期例 14 mmHg 以下 というように設定することが提唱されている1). また, 各種の ランダム化比較試験27)の結果をもとに, 無治療時眼圧から 20 %の眼圧下降, 30%の眼圧下降というように, 無治療時眼圧か らの眼圧下降率を目標として設定することが推奨されている. 2) 目標眼圧の修正 目標眼圧による治療の限界は, 最初に設定した目標眼圧の妥 当性が経過を経ないと判断できない点である. すなわち視神経 障害の進行を阻止できた時点ではじめて目標眼圧が適切である と確認できる. 目標眼圧は絶対的なものではなく, 目標眼圧を 達成していても進行する症例もあれば, 目標眼圧を達成してい

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なくとも進行しない症例もある. したがって, 目標眼圧は定期 的に評価し修正することが必要である. 例えば, 視神経障害や 視野障害に進行がみられた場合は, さらに低い目標眼圧に修正 する必要がある. 一方, 治療による副作用や QOL に対する影 響がみられた場合には, 目標眼圧を維持することが必要かどう かを判断しなければならない. また, 長期にわたり進行がみら れない場合には, 現在の目標眼圧が必要かどうか再考すること も必要である. 目標眼圧はあくまでも治療の手段であり治療の 目的ではないので, 目標眼圧にこだわらないことも大切である. 3. 緑内障と QOL QOLは患者にとって最も重要なものの一つである. 緑内障 により視機能が障害されることは QOL に甚大な影響を及ぼす ことはいうまでもないが, 適切な診断と説明を行っても, 慢性 的でかつ失明に至る可能性がある疾患と診断されることは, 患 者やその家族に心配や不安をもたらす可能性がある. また, 治 療の副作用, 経済的負担, 時間的負担なども QOL に悪影響を 及ぼすと考えられる. 患者の QOL を保つためには, 疾患の治療のみならず我々の 診断と治療が個人に与える影響についても考慮しなければなら ない. それぞれの患者に対して, 自身の現在の状態や経過をど のように認識しているのか, 日常生活にどのような困難がある のかを問いかけるようにして接するべきである. QOL が妨げ られているようであれば, 治療の中止も患者と話し合うべき選 択肢である. 4. 緑内障薬物治療におけるアドヒアランス 緑内障はきわめて慢性に経過する進行性の疾患で, 長期の点 眼や定期的な経過観察を要し, かつ自覚症状がないことが多い ので, 治療の成功には患者の協力が保たれることが必須である. コンプライアンスは医師からの一方的な治療指針を患者が守る ことを指すが, アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程 に参加したうえ, その治療方法を自ら実行することを指すもの

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と定義される. 緑内障治療薬に対するアドヒアランスは医師が考えているよ りはるかに悪いことが報告されている. アドヒアランス不良は, 緑内障性視神経症が進行する重要な要因の一つであるので, 治 療にはアドヒアランスが得られやすい薬剤を選択する, 進行し たときにはアドヒアランスを確認するなどの配慮が必要である. また, アドヒアランスを改善するために①疾患, 治療, 副作 用について十分に説明する, ②最小限の治療とする, ③ライフ スタイルに合わせた治療を行う, ④正しい点眼指導を行うこと も大切である.

Ⅲ. 緑内障治療薬

1. 緑内障治療薬の分類 (表 41, 補足資料 1 [6]参照) 1) 交感神経刺激薬 (1) 受容体非選択性 (2) 受容体選択性 2) 交感神経遮断薬 (1) 受容体遮断薬 ) 受容体非選択性 ) 受容体選択性 (2) 受容体遮断薬 (3) 受容体遮断薬 3) 副交感神経刺激薬 4) プロスタグランジン関連薬 5) 炭酸脱水酵素阻害薬 (1) 全身薬 (2) 局所薬 6) 高張浸透圧薬 7) 配合点眼薬 2. 薬剤の選択 原発開放隅角緑内障(広義)においては, プロスタグランジン

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表 42 主 な 緑 内 障 交感神経刺激薬 遮断薬 遮断薬 ジピベフリン チモロール カルテオロール レボブノロール ベタキソロール ニプラジロール 主な眼圧下降機序 線維柱帯流出 促進 房水産生抑制 房水産生抑制 +ぶどう膜強 膜流出促進 点眼回数 2 回/日 1∼2 回/日 1∼2 回/日 局所副作用 結膜アレルギー    結膜充血    角膜上皮障害        眼瞼炎    睫毛多毛    虹彩・眼瞼色素沈着    虹彩炎    胞様黄斑浮腫    角膜浮腫    角膜ヘルペス再発    縮 瞳    上眼瞼溝深化    全身副作用 徐 脈    血圧低下    頻脈・血圧上昇    気管支収縮      血漿脂質上昇    配合点眼薬については各薬剤の項を参照のこと

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点 眼 薬 と そ の 特 徴 遮断薬 副交感神経 刺激薬 プロスタグランジン関連薬 炭酸脱水酵素 阻害薬 プロストン系 プ ロ ス ト 系 ブナゾシン ピロカルピン ウノプロスト ン ラタノプロスト トラボプロスト タフルプロスト ビマトプロスト ドルゾラミド ブリンゾラミ ド ぶどう膜強 膜流出促進 線維柱帯 流出促進 ぶどう膜強膜 流出促進 ぶどう膜強膜 流出促進 房水産生抑制 2 回/日 4回/日 2 回/日 1 回/日 2∼3 回/日                                                                                                    

表 2 1 緑 内 障 の 分 類
表 4 2 主 な 緑 内 障 交感神経刺激薬 遮断薬 遮断薬 ジピベフリン チモロール カルテオロール レボブノロール ベタキソロール ニプラジロール 主な眼圧下降機序 線維柱帯流出 促進 房水産生抑制 房水産生抑制+ぶどう膜強 膜流出促進 点眼回数 2 回/日 1∼2 回/日 1∼2 回/日 局所副作用 結膜アレルギー    結膜充血    角膜上皮障害        眼瞼炎    睫毛多毛    虹彩・眼瞼色素沈着   

参照

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