第Ⅱ部
52 第Ⅱ部は、ジョブ・カードの作成支援に関わる「ジョブ・カード作成アドバイザーを 養成するために、ジョブ・カード制度の内容、ジョブ・カードの作成支援や就職支援、 キャリア形成支援の仕方などについて理解していただくために編纂されたものです。 第Ⅱ部「ジョブ・カード編」では、 ① ジョブ・カード制度の目的と仕組みを理解する ② ジョブ・カードを効果的に機能させる実務力(ジョブ・カードを活用したキャ リアコンサルティングにより、相談者の能力開発意識と就業意識を高める力) を習得する ③ 関連制度について理解することを主たる目的とし、受講者の皆さんがジョブ・カー ド制度について理解し、有効に活用していただけるように簡潔にまとめています。
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1.ジョブ・カード制度とは
ジョブ・カードは、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職等の促進を目 的とした、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールで す。 ジョブ・カードの活用により、相談者のキャリアの振り返りやキャリア・プランの検 討などをきめ細かく行うことができ、また、各様式の作成を通して職業能力の棚卸しや 職業生活設計等を行うことができます。その結果、職業能力を見える化することができ、 求職活動時や訓練受講時等に職業能力証明のツールとして活用することができます。 ジョブ・カードは、労働市場インフラとして、一般の求職者~在職者~学生など幅広 い方を対象に、求職活動、職業能力開発などさまざまな場面で用いることができます。 また、電子化することによって、これまでの職業経験や、職業能力証明などの情報を蓄 積・管理しやすくなることから、求職活動時等にその情報を自らが抽出・編集して職業 能力証明に活用するなど、活用の幅が広がることが期待されています。2.ジョブ・カード活用のメリット
キャリアコンサルティングを受けながらジョブ・カードを作成していくことにより、 主に以下のような効果が期待できます。 ● 自分の大事にしたい価値観に気づく 「なぜ自分はこの仕事を選んだのだろうか」、「これからどのような働き方がしたい のだろうか」とは、誰もが考えたことのあるテーマではないでしょうか。そのカギとな るのは、皆さん一人一人が大事にしてきた(大事にしている)「価値観」です。 まだ、自分でも気づいていない(明確に意識していない)価値観があるかもしれませ ん。その価値観に気づくチャンスでもあります。 ● 自分の強みに気づく 「強み」というと何か特別な資格や特技のことだと考える人が多いようですが、皆様 がそれぞれ積んでこられたキャリアはすでに立派な「財産」であり「強み」なのです。 まずそのことに気づいていただきます。 ● これからどのようにキャリアを重ねていくのか(キャリア・プラン)がはっきりする 以上で「気づき」を得た「価値観」や「強み」に加えて、社内(上司・同僚・部下) や社外(顧客・取引先)、さらにはご家族といった、皆様を取り巻く人々からの「期待」 までも考え合わせて、相談者一人一人に合ったキャリア・プランを作成します。 将来目指す働き方を実現するために、これからどのような能力開発をしていけばいい のか、具体的にどのようにやればいいか等もはっきりさせていきます。 能力開発は、資格取得ばかりではありません。キャリアすべてが大事な能力開発の機 会です。 ※ キャリア・プラン(職業生活設計)とは、職業生活における将来の目標を定めたうえで、 それを実現するための計画のことです。このキャリア・プランを作成することを「キャリア・ プランニング」といいます。第1章
ジョブ・カード制度の概要
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3.「ジョブ・カード制度総合サイト」の活用とジョブ・カードの管理・電子化等
①ジョブ・カード制度総合サイトについて ジョブ・カード制度総合サイトは、ジョブ・カードを利用してキャリアアップしたい方 や求職活動を行いたい方などをサポートするためのサイトです。 ・ジョブ・カード様式や記入例のダウンロード ・ジョブ・カード作成支援ソフトウェア ・ジョブ・カード情報登録・検索ソフトウェア ・キャリア・プラン作成のための質問 などジョブ・カードを作成する上で参考となる情報を掲載しているので、ご活用ください。 (以下、ホームページ掲載内容)55 ②ジョブ・カードの管理・電子化について 作成したジョブ・カードは作成者本人が所有・管理します。 データは電子化(パソコン・クラウドストレージ等)を用いて本人が管理し、本人の責 任の下で必要な情報を抽出・編集し活用します。 ジョブ・カードを作成する方法を決定 ジョブ・カード作成支援ソフトウェ アを使って作成 ご自分の PC にインストールすることで、ジョブ・カード 作成支援機能や、履歴書出力機能を使用できます。 様式(PDF)を使って作成 印刷して手書きで作成するための様式です。 様式(Excel)を使って作成 特別なソフトを PC にインストールせずに、Microsoft Excel を使ってジョブ・カードを作成するための様式です。 ジョブ・カード作成を支援する情報など このサイト(ジョブ・カード制度総合サイト)の各種の情報 ジョブ・カード記入例 ジョブ・カード作成支援ソフトウェアの記入支援機能 ジョブ・カード作成アドバイザーへの相談
ジョブ・カード作成の流れ
56 個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職等を促進するため、ジョブ・カードが、「生涯 を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担う労働市場インフラとして活 用されることを目指して、下記を目標とする。 ①「ジョブ・カード取得者数(注)を 2020 年に 300 万人にする」こと (注:見直し前のジョブ・カード取得者とジョブ・カードの新規取得者(見直し前のジョブ・カ ード取得者を除く。)の合計数) ②新たなジョブ・カードの取得が自らの職業能力の向上などに貢献するとした者の割合を7割以上 とすること ③職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート等を有し就職活動を行う者のうち、当該シート等を 応募書類として活用した者の割合を 2020 年までの間増加させること (目標) ① 国(文部科学省、厚生労働省、経済産業省) : ・関係者に対する周知・理解の促進、電子化のためのソフトウェアの提供、サイトによる情報提 供、「ジョブ・カード制度推進会議」の運営等 ② 都道府県労働局 : ・関係機関から構成される地域のジョブ・カード運営本部の運営 ・業界団体、教育訓練機関等の関係者に対する役割、活用方法、助成金における活用のインセン ティブ措置、ジョブ・カードを活用した雇用型訓練に係る助成金、ジョブ・カードセンターで の援助、サイト等における関係情報の提供などの支援措置等の説明等 ③ 公共職業安定所 : ・まとまった時間をかけて職業相談・紹介を行う求職者へのジョブ・カードの活用 ・公共職業訓練等の受講指示等に際してのジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング の促進 ・ジョブ・カードを活用する雇用型訓練の実施企業に係る積極的な求人開拓等 ・職業能力証明(訓練成果・実務成果)シートを有する求職者への応募書類としての活用・必要に 応じた応募先企業の活用促進 ④ ジョブ・カードセンター(委託事業:各都道府県及び主要都市等に合計約 110 センター): ・制度の周知・広報、雇用型訓練実施企業の開拓・支援、ジョブ・カードを応募書類等として活 用する企業の開拓等 ・ジョブ・カードを活用した在職労働者の実務経験の評価、キャリアコンサルティング等を実施 する企業の開拓・支援 ⑤ (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、都道府県、委託訓練・求職者支援訓練実施機関 : ・ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングの実施及び訓練成果の評価 ・応募書類としてのジョブ・カード活用を訓練生及び応募先企業に対して説明 ⑥ その他の教育訓練機関:職業能力形成プログラム以外の教育訓練における訓練成果のジョブ・ カードへの記入の促進 ⑦ 大学等:必要に応じた学生のキャリア・プランニングのツールとしての活用 ⑧ 企業:必要に応じたキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールとしての活用 ⑨ 地域若者サポートステーション等:必要に応じたジョブ・カードを活用したキャリアコンサル ティング等の実施 ⑩ 特定地方公共団体及び職業紹介事業者: 必要に応じたジョブ・カードの応募・採用時の書類としての活用 (推進体制)
4.ジョブ・カード制度の普及促進・方策等
ジョブ・カードは、広く求職者・在職者・学生等を対象として普及を図ることとし、ジョ ブ・カード取得者数を平成 32 年までに 300 万人に到達させること等を目標としています。 ■普及促進方策等について57
5.各種助成金との関連
ジョブ・カード制度に関連する各種助成金制度には、下記のようなものがあります。 キャリアアップ助成金等の教育訓練関係の助成金申請の提出書類では、当該訓練の受 講が確かに必要かどうかについて、ジョブ・カード作成アドバイザー等による確認及び ジョブ・カードへのコメントの記入が必須です。 下記図表および、トピックス「ジョブ・カード制度関係の助成金リンク」を参照して ください。 平成29年9月現在 ■ジョブ・カードを活用する助成金について <トピックス> ジョブ・カード制度関係の助成金リンク ジョブ・カード制度に関連する各種助成金については、下記の WEB サイトを参照してください。 ○キャリアアップ助成金(人材育成コース) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html ○人材開発支援助成金 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html ○ジョブ・カードセンター https://www.jc-center.jp/center.html ※なお、情報は変更・更新されている場合がありますので、最新の情報を確認してください。58
1.ジョブ・カードを活用した支援とは
(1)概要 ジョブ・カードは、基本的に、本人が記入します。 ただし、能力評価に関わる様式は、教育訓練機関や企業等の評価担当者が記入すること になります。 作成したジョブ・カードは作成者本人が所有・管理します。応募書類として活用する場 合にどの情報を企業等に提出するかは、原則本人の意思に委ねられることになります。 (2)ジョブ・カード作成アドバイザーの役割・位置づけ 「ジョブ・カード作成アドバイザー」は、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサル ティングを実施することができる方のことです。ジョブ・カードはあくまで作成者本人が 作成・所有するものですが、より有益な内容とするために必要なアドバイスを行い、ジョ ブ・カードの作成支援を行うことが期待されます。 なお、ジョブ・カード作成アドバイザーであって、キャリアコンサルタントではない方 は、キャリアコンサルタントと同等以上のキャリアコンサルティングのスキル、知識等を 有していない状況にあることから、ジョブ・カードの作成支援をより効果的に行うため、 キャリアコンサルタントになることを目指すことが望まれます。 ※「ジョブ・カード作成アドバイザー」は、以前は「登録キャリア・コンサルタント」という 名称でしたが、職業能力開発促進法におけるキャリアコンサルタントと区別するため、平成 27 年 10 月に「ジョブ・カード作成アドバイザー」に名称変更されました。 ※キャリアコンサルティング関連の資格については、参考資料 14(219 ページ)を参照してく ださい。 (3)キャリアコンサルタントの役割・位置づけ キャリアコンサルタントとは、職業能力開発促進法における「キャリアコンサルタント」 を指します。キャリアコンサルタント国家資格を取得した方は、ジョブ・カード作成アド バイザーとして登録しなくてもジョブ・カードの作成支援を行うことが可能です。 キャリアコンサルタントになるためには、キャリアコンサルタント試験に合格し、登録 をすることが必要です。 (4)その他(企業担当者や大学等の教員等) ジョブ・カードは在職者や学生などにも活用することができます。 ※従前のジョブ・カード制度では、ジョブ・カードを活用するためには登録キャリア・コ ンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けることが必要でしたが、平成 27 年 10 月以降のジョブ・カード制度におけるジョブ・カードは、あくまでジョブ・カード作 成アドバイザーによるキャリアコンサルティングはジョブ・カードの作成を支援するも のとして位置づけられています。このため、本人の希望によりキャリアコンサルティン グを実施します。第 2 章
ジョブ・カードを活用した支援
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2.ジョブ・カードの様式について
ジョブ・カードの様式は、大きく 「様式1 キャリア・プランシート」 「様式2 職務経歴シート」 「様式3 職業能力証明シート」 の3つに分かれています。 ジョブ・カード様式一覧 様 式 名 称 様式1-1 キャリア・プランシート(就業経験がある方用) 様式1-2 キャリア・プランシート(就業経験のない方、学卒者等用) 様式2 職務経歴シート 様式3-1 職業能力証明(免許・資格)シート 様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート 様式3-3-1-1 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT 用) 様式3-3-1-2 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート (在職労働者の実務経験の評価用) 様式3-3-2-1 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート (離職者訓練(高齢・障害・求職者雇用支援機構)用) 様式3-3-2-2 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート (離職者訓練(都道府県等)用) 様式3-3-2-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(学卒者訓練用) 様式3-3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(求職者支援訓練用) 様式3-3-4 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート (科目ごとに評価している教育訓練用)60
3.ジョブ・カード各様式の活用方法
【キャリア・プランニングでの活用】
<キャリア・プラン関係> ●様式1-1・様式1-2 キャリア・プランシート ・目標や習得すべき能力等を記入 <職務経験関係> ●様式2 職務経歴シート ・記入して職業経験の棚卸しに活用 ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート ⇒ 実務経験(仕事ぶり)の評価 ・作成したシートを自己理解の際に活用 <免許・資格関係> ●様式3-1 職業能力証明(免許・資格シート) ・記入して自己理解等に活用 <学習・訓練関係> ●様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴シート) ・記入して自己理解等に活用 ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート ⇒ 訓練等の成果の評価 ・作成したシートを自己理解の際に活用 <評価関係> ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート ・作成したシートを自己理解の際に活用【応募書類としての活用】
<職務経験関係> ●様式2 職業経歴シート ⇒ 職務経験関係 + 企業確認 ・情報を編集して「履歴書」(JIS 規格等)の一部や「職務経歴書」(一般の様式)に活用 ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート <免許・資格関係> ●様式3-1 職業能力証明(免許・資格シート) ⇒ 免許・資格関係 + 免許等の証明書類(写)を添付 ・情報を編集して「履歴書」(JIS 規格等)の一部に活用 <学習・訓練関係> ●様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴シート) ⇒ 学習・訓練関係 + 修了の証明書(写)を添付 ・情報を編集して「履歴書」(JIS 規格等)の一部に活用 ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート ⇒ 訓練等の成果の評価 <評価関係> ●様式3-3 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート ・実務経験、訓練等の成果の評価を自己PR に活用61 このシートは就業経験のある方が、自身のキャリア・プラン(職業生活設計)等を記入します。 個人の希望により、ジョブ・カード作成アドバイザー等がキャリアコンサルティングを行った場 合、その結果等を記載する「キャリアコンサルティング実施者記入欄」があります。 なお、助成金の中には、ジョブ・カード作成アドバイザー等によるキャリアコンサルティング の結果等を記入したジョブ・カードが申請書類として必須になるものもあります。
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このシートは就業経験のない方等が、学校等でもこれまでの経験やそこから得られたことを踏 まえて自身のキャリア・プラン(職業生活設計)等を記入します。
個人の希望により、ジョブ・カード作成アドバイザー等がキャリアコンサルティングを行った場 合、その結果等を記載する「キャリアコンサルティング実施者記入欄」があります。
66 このシートには自身の職務経歴を記入します。キャリア・プランニングのために職業経験の棚 卸しを行うためのツールであるとともに、必要に応じて、自身が記入した内容を企業の担当者に 確認、署名・押印を依頼することにより「職業能力証明」のツールとして活用することもできま す。 なお、企業の担当者の署名・押印がなくても、応募書類に追加添付する等の活用ができます。 また、ジョブ・カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は、入力情報を抽出・編集 し、JIS 規格の様式例に基づいた履歴書、職務経歴書を作成するために用いることもできます。 なお、職務経験のない方は記載する必要はありません。
68 このシートは作成者本人が取得している免許や資格について記入します。キャリア・プランニ ングのための自己理解等の際に活用するとともに「職業能力証明」のツールとして応募書類に追 加添付する等の活用もできます。 また、ジョブ・カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は、入力情報を抽出・編集 し、JIS 規格の様式例に基づいた履歴書、職務経歴書を作成するために用いることもできます。
69 このシートは作成者本人の学校等での学習実績や職業訓練等の訓練実績を記入します。キャリ ア・プランニングのための自己理解等の際に活用するとともに「職業能力証明」のツールとして 応募書類に追加添付する等の活用もできます。 また、ジョブ・カード作成支援ソフトウェアにおいて作成した場合は、入力情報を抽出・編集 し、JIS 規格の様式例に基づいた履歴書、職務経歴書を作成するために用いることもできます。
70 このシートは訓練受講者や在職者に対して、教育訓練の成果の評価、職場での仕事の振返りの 評価を、教育訓練期間、企業の評価担当者が記入します。 キャリア・プランニングのための自己理解等の際に、個人が本シートにより自己チェックを行い ます。また「職業能力証明」のツールとして応募書類に追加添付する等の活用もできます。 (対象者別 全 7 種類)
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対象者別ジョブ・カード作成支援の実際
(1)ジョブ・カード作成アドバイザーの心構え 相談者自身が自己理解を深め、自らの職業意識やキャリア形成上の問題点を明確にし、 今後の職業選択やキャリア形成の方向付けが可能となるような支援を行うことが期待さ れています。 様式2(職務経歴シート)、様式 3-1(免許・資格シート)、様式 3-2(学習歴・訓練歴シ ート)で、過去のキャリアを振り返りながら現在の状態を確認し、様式1-1、1-2(キャリ ア・プランシート)で未来への展望を明らかにしていくプロセスがジョブ・カードを用い たキャリアコンサルティングです。キャリアビジョンとは未来予想図(計画)。組織に短 期(1 年以内)、中期(5 年以内)、長期(5 年以上)の事業計画があるように、個人にも 必要なのではないでしょうか。「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」 (エリック・バーン)を相談者とともに考えてまいりましょう。 そのためには、相談者が話すことを傾聴し、相談者が今何を感じ、何を求め、どうした いのかをしっかりと理解し、本人が自己理解を深め、考えを整理し、自らの将来への希望 や目標に向かって主体的な行動を取ることができるような支援を行うことが重要です。た だし、誘導し過ぎて相談者の自発性や主体的な判断を妨げることがないようくれぐれもご 留意ください。 支援の参考までに理論を紹介してありますが、これはその対象者だけに限定したもので はありません。みなさんのキャリア支援の参考になれば幸いです(対象者別に見やすいよ うに、解説が重複していることがあります)。 (2)ジョブ・カード作成支援の流れ ジョブ・カードを作成するのは、ジョブ・カードを利用する本人になります。キャリア コンサルティングを受けに来る段階では、本人による様式の記入は終了していることが基 本となりますが、自己理解や仕事理解などがうまくいかず、ジョブ・カードの記入に困っ ている人も多いため、場合に応じた支援が求められます。 1 回の面談でジョブ・カードの作成が終了しない場合は、次回面談日を予約し、次回ま でに記載すべき事項を伝えたうえで、様式1「キャリアコンサルティング実施者の記入欄」 に、途中経過および次回までの約束事項等を記入します。 面談時間内で「キャリアコンサルティング実施者の記入欄」が書けなかった場合は、ジ ョブ・カードを本人に返し、記入できる時刻を伝えます。 1)ジョブ・カード制度に関する説明・理解促進 ジョブ・カードを通じて自分自身の経験を振り返り、将来の希望や目標等をともに考え ていくという趣旨・目的を相談者に伝え、理解を促すことが大切です。 一度作成した後も研修や資格取得など自己研鑽について、仕事内容が変わったときに追 加していくなど、「生涯を通じたキャリア・プランニングのツール」として継続活用を進め ていくよう伝えてください。 2)キャリアコンサルティングの実施 様式 3-1(免許・資格シート)、3-2(学習歴・訓練歴シート)、2(職務経歴シート)か ら自己理解、職業理解を進め、様式1(キャリア・プランシート)でキャリアビジョンを まとめていく作成支援が一般的です。 記入された項目が少ない場合、適切な質問(5W3H を使ったオープン・クエスチョン) を用いながら自己理解を促していきます。実務においては、ご自身で「質問集」などを作 っておかれるといいでしょう。 3)「キャリアコンサルティング記入欄」の記載 キャリアコンサルティングを行った実施日時、所属(個人の場合は記載不要)、氏名、 電話番号、登録番号を記入します。第 3 章
対象者別 ジョブ・カードを活用した支援の詳細
78 コメントの記載内容は助成金等の申請書類として活用する場合とそうでない場合で異 なってきます。申請書類とする場合は、当該訓練の必要性にかかるコメントを記入します。 ≪記入例:訓練受講に支障がない場合≫ ○○分野への就業につき、本人の自己理解・職業理解、ならびに訓練への強い意志を確認 できたため、○○訓練を受講し、目指す技能を習得していただきたい。 ≪記入例:訓練受講に支障がある場合≫ ○○分野に関する職業理解はあるが、○○訓練を終了するまでの意志が確認できなかった。 受講については保留とし、次回判断する。 ○○分野に関する職業理解が十分とは言えず、○○訓練を受講する事は現段階では難しい と思われる。 訓練受講に支障がある場合のコメントは、本人が望んだ場合に記入します。本人が記入を望 まないケースは、口頭で行うことが一般的です。受講希望者の意欲をそがないよう丁寧なフィ ードバックを行ってください。 通常のキャリアコンサルティングの場合は、コンサルティングの過程や今後の展開について コメントを記入します。本人の成長を促すポジティブなコメントを記入してください。 ≪記入例≫ いままでの仕事を振り返ることでご自身の強みについて改めて確認が出来た。今後就業す る職務について、次回面談までに情報収集を進めることを約束した。 4)キャリアコンサルティングの終了 今回のキャリアコンサルティングを通じて感じたことや気付いたことを共有します。次 回面談の希望がある場合は、予約を受け付け、次回までの課題(負担にならない範囲での 宿題)を伝え、本人の主体的な行動を促します。 なお、ジョブ・カードの管理は利用者本人が行うことを再度説明し、電子情報として保 存する場合はパスワード設定を促すなど、適切な管理方法についても伝えます。 (3)様式別の作成支援ポイント 1)様式1-1 キャリア・プランシート(就業経験がある方用) □様式2~3 の客観的事実を踏まえ、本人の強み(能力、価値観、適性)について具体的 に記入できるように支援する。 □今後の課題や能力開発の目標を記入するとともに、受講したい教育訓練があれば具体 的に記入できるように支援する。 □応募書類などに活用する場合は、文章は出来るだけ簡潔に。3 行程度で改行し、1 行空 けるなど、読み手を意識させることが大切。 □否定的な表現は避け、肯定的な表現に置き換える。 ジョブ・カード作成支援ソフトをダウンロードし利用すると、画面上の質問に回答入力す ることで、様式 1-1 に反映します。ただし機械的な処理のため、文のつながりなどは加除修 正する必要がありますが、たたき台として活用できます。 2)様式1-2 キャリア・プランシート(就業経験のない方、学卒者等用) □本人の強み(興味、能力、価値観、性格、適性)を具体的に記入できるように支援す る。 □書けていないようであれば、いままでの経験から何を得て、これからどう活かしたい かを、深掘り質問をしながら記入できるように支援する。
79 3)様式2 職務経歴シート □インターンシップやアルバイト経験も含めて、雇用期間、雇用形態を記入する。就業 期間が長い場合、部署ごとに記入してもよい。職務内容や得られた知識・スキルを整 理することが出来る。 雇用期間や正式な会社名がわからない場合、ハローワークで雇用保険履歴、年金事務 所で年金加入履歴を照合することが出来る。 □職務内容が書けない場合は、「1 日の流れ」を聴いていくと整理しやすい。 □職務の中で得られたことは、「誉められたこと、達成できた目標」を聴いていくと整理 しやすい。「ヒト・モノ・カネ・情報・時間」の視点で、個人で行っていたのか、チー ムとして行っていたのかを質問するとまとめやすい。チームとして行っていたのであ れば「役割」についても記入すると応募時などのPR ポイントになる。 □JIS 規格の履歴書には「6 か月以上の職務」を記載することとあるが、ジョブ・カード 上は、短いものも記入する。今後の就業に活かせる経験かもしれない。 4)様式3-1 職業能力証明(免許・資格)シート □免許、資格の内容につき、不明点はインターネットなどで調べるよう伝える。 □応募書類などに活用する場合は、今後は活かせないものは記載しない。多種多様な資 格保有は却ってPR ポイントが曖昧になってしまうこともある。 5)様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート □中学校卒業以降の学歴を記入する。高等学校の学歴がある場合は、高等学校からでよ い。中退でも記入できる。 □社内外の研修、セミナー受講歴を記入する。 ジョブ・カードを用いてキャリアビジョンを相談者とともに考えていくプロセスで、押 えておきたい基本的な理論に触れておきます。 【ロジャーズ理論】 ロジャーズは来談者中心療法を提唱した。 ①受容的態度-無条件に相談者の人格を肯定的に受け入れること ②共感的理解-相談者の私的なその人自身であるかのように捉え、相談者に伝えること ③自己一致-相談者から感じ取り、自分の中に生じたものと行動と態度が忠実に一致してい ること これらを実践し、相談者との関係を確立することがカウンセリングにおいて重要となる。 【エリス理論】 エリスは人間は特定の考えや価値観を自分自身の考えや価値観として取り入れ、独自の信 念を作りあげ、その信念に基づいて判断と行動をすると提唱した。相談者は非合理的な信念 (イラショナル・ビリーフ、思い込み)のために不安な感情を抱え、悩むことがある。相談 者からこの単なる思い込みや考え過ぎを取り除き、押し付けや説得にならないように心掛け ながら、新たな判断と行動に繋がるように支援することが重要となる。 【エリクソン理論】 エリクソンは人間が誕生から死までに、社会的な人との関わりの中で、どう発達するかと いうライフサイクル理論を提唱した。また、人間の発達段階を8 つに区分し、達成しなけれ ばならない課題と課題が達成されなかった場合に陥る心理的な危機を唱えた。特に思春期青 年期の課題を「アイデンティティの確立」、危機を「アイデンティティの拡散」、同様に成人 期を「親密性」と「孤立性」、壮年期を「世代性」と「停滞性」、老年期を「統合性」と「不 信感」とするなど、発達段階の特性を区分した。
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1.在職者
(1)支援のポイント
対象年齢が若年者か中高年者か、性別が男性か女性か等によっても、現在の就業に肯定的 か否定的かによっても変わってきます。正解はありませんが、現在の仕事に「意味づけ」を 行い、誇りを持って就業し続けられるよう、場合によってはプライベート面での充実を図る ことを提案するなどします。悩んでいるときには、現在の職場の悪い面ばかりに目がいきが ちです。メリットについても目を向け、悔いのない意思決定ができるように支援することが 重要です。キャリア・ミスト(将来に霧がかかって良く見えない状態)からどうしたら霧が 晴れるのか、アドバイスが出来れば理想的です。 年配の方には、長所、短所と言うと若年者向けの印象があるかもしれません。おそらく社 内研修等で用いた「SWOT 分析」をしてみましょう、と言うとしっくりくるかもしれません。強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats)。
(2)質問例
□今までされてきた仕事についてお聞かせください。 □どのような役割(責任、チーム)でしたか? □仕事を通じて得られたものは何でしょうか? □これからどのような仕事をしていきたいですか? □周囲からどのようなことを期待されていると思いますか? □そのために足りない知識やスキルはありますか? □これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? 【スーパー理論】 スーパーは人間の職業活動は生涯発達し続けるとの考えを基に、「キャリアの生涯発達」を 論じ、「ライフキャリアレインボー」を提唱した。キャリアを段階(ライフステージ)と役割 (ライフロール)の2 つの視点で捉え、段階を①成長期②探索期③確立期④維持期⑤衰退期 (解放期)に区分し、役割を①子供②学生③余暇人④市民⑤勤労者⑥配偶者⑦家庭保持者⑧ 親⑨年金受給者に区分した。またライフキャリアレインボーは、個人は皆、生涯を通じて、 役割や環境が変化するため、個人が様々な役割や環境に身を置くことを虹として視覚化した。 この役割と環境をどう組み合わせ、役割の変化から相談者のやり甲斐を見い出すことで、相 談者の全生涯を通じたキャリア支援が効果的に行えるとしている。 【シャイン理論】 シャインは人間のキャリア開発には個人のニーズと併せ、組織のニーズと関係性も重視す る「キャリア・サバイバル-職務・役割の戦略的プランニング-」を提唱した。仕事は日々、急 激な変化を遂げ、複雑な人間関係の中で行われるものであることから、①現在の職務と役割 の棚卸し②環境の変化の識別③環境の変化が利害関係者の期待に与える影響を評価④職務と 役割に対する影響を確認⑤職務要件の見直し⑥プランニング・エクササイズの輪の拡張とい う6 項目を考慮し、個人のニーズと組織のニーズの双方を尊重し、マッチングしていくこと が、職場で生き残り、個人のキャリア開発をするうえで重要だと唱えた。81
(3)制度面での補足
セルフ・キャリアドック制度、訓練休暇等制度、技能検定合格報奨金制度などを会社に導 入することで助成金が得られる場合があります。 従業員の方自らが自己研鑽をされる場合、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給され る教育訓練給付制度を利用できる場合があります。(4)北海太郎さんへの具体的支援
中高年に見られがちなキャリア・プラトー(停滞)を感じました。長く 1 社で務めあげ、 出向、転籍で給与も下がりかなり落ち込んでいるようでした。様式 2「職務経歴シート」を 使って、過去を振り返る中で徐々に誇りを取り戻していきました。残された会社員生活を後 輩の育成に捧げる、いままで築き上げたネットワークを紹介する、と意欲的になりました。 プライベートでもお子さんたちが社会に出られ、余裕も出来たそうなので、専門実践教育給 付金を利用して経営大学院進学も視野に入れました。今までの経験をアカデミックに解析し、 業界・後進の発展に寄与したいとのことです。ただ年齢のこともありますので、健康面には 十分配慮するようお願いしました。88
2.求職者(就業経験がある方)
(1)支援のポイント
自ら望んだ離職か、会社都合等による離職かによって、相談者の感情は違います。まずは 相談者の気持ちに寄り添いながら、キャリアの棚卸をする中で、就業に向けて客観的に優先 順位をつけていきましょう。時間的に余裕がある場合は資格取得など、ご自身の武器を作っ ていくことも自信につながります。 就職活動は自分と言う商品を売るマーケティング活動でもあります。4C(Company, Client, Competitor, Channel)を自分自身、応募先、ライバル、労働市場ととらえ、調査分 析を進めていくことが大切です。(2)質問例
□今までされてきた仕事についてお聞かせください。 □どのような役割(責任、チーム)でしたか? □仕事を通じて得られたものは何でしょうか? □これからどのような仕事をしていきたいですか? □そのために足りない知識やスキルはありますか? □これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? 【シュロスバーグ理論】 シュロスバーグは人生の中での人間関係、役割、生活などの変化を「転機」と捉え、転機 をイベント(①予期していたことが起きる②予期していなかったことが起きる)とノンイベ ント(予期していたことが起こらない)に分類した。この人生の転機に対処するために4 つ のリソース①状況(Situation 役割の変化や期間など)②自己(Self 対処能力、年齢、健 康など)③支援(Support 支援者、公的・私的組織・団体サービスなど)④戦略(Strategies 行動、戦略の選択など)の点検と強化を行い、転機に遭遇した相談者に最善の方策で支援で きるとした。(3)東京平さんへの具体的支援
大学卒業後、非正規ばかりの仕事が続いたため、かなり自己効力感が下がっていた。単調 な仕事、誰にでも出来る仕事と仰っておられたが、様式 2 の作成過程で、丁寧にお話を聞い ていくと、真面目な性格で、コツコツと仕事をこなし、どこでもリーダーシップを発揮され ていた。40 歳を超えたことで年齢的なギャップ、特に体力面での不安を口にされていた。す ぐに現場マネジャーに就くのは難しいかもしれないが、職業訓練などでメンテナンス関係の 資格を取得されるのもよいのではとアドバイスをした。また、現在は実家にお住まいだが、 将来的に両親の介護も予想されるとのことであったので、介護関係の資格取得の提案を行っ た。キャリアコンサルティングを受けるのは初めてだったそうだが、将来への展望が開けた ことでかなりホッとされていた。89
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3.求職者(就業経験がない方)、学生等
(1)支援のポイント
社会人経験が少ないため、どうしても近視眼的な思い込みでキャリアを決める傾向があり ます。自身の興味・能力・価値観・性格など自己理解を深め、同時に世の中にどのような職 業があるのか仕事理解をしたうえで、職業選択をしていくことが望まれます。職場見学、イ ンターンシップ等を通じて「思っていたことと違う」というリアリティショックを最小限に する支援が望まれます。 短大生や専門学生の場合、4 年制大学生へのコンプレックスがある場合もあります。選択 したコースへの不安感があるかもしれません。丁寧に現在の状況を聴き、自信を持たせる支 援が求められます。(2)質問例
□学生時代に頑張ったことはどんなことでしょうか? □どのような役割(責任、チーム)でしたか? □長所や短所をお聞かせください。 □経験を通じて得られたものは何でしょうか? □これからどのような仕事をしていきたいですか? □これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? 【ホランド理論】 ホランドは「特定の職業環境にいる者は、類似した性格特性を持つ者が多い」との経験法 則から、同じ性格類型の人間が特定の職業環境を選ぶことが安定した職業選択、職業適応を もたらすという「職業選択理論」を確立した。また性格を①現実的②研究的③芸術的④社会 的⑤企業的⑥慣習的という 6 つのタイプに分類した。相談者の適職の発見、自己理解、仕事 理解を深める支援をするうえで、効果的である。 【シャイン理論】 シャインは生涯を通してキャリアが組織内でどのように発達するかというキャリア・サイ クルを①成長・空想・探究②仕事世界へのエントリー③基本訓練④キャリア初期⑤キャリア 中期⑥キャリア後期(非指導者)⑦キャリア後期(指導者)⑧衰え及び離脱の8 つの段階に 区分して提唱した。また、個人がキャリアの選択をする際、放棄しない価値観、能力などを キャリア・アンカーと名付け、①専門能力②経営管理能力③保障・安定④起業家的創造性⑤ 自律・独立⑥奉仕・社会貢献⑦生活様式⑧挑戦の8 つに分類し、提案した。 【レヴィン理論】 レヴィンは B=f(P.E)の概念式で「場の理論」を提唱した。人間の行動(B behabior)は、 個人の特性(P personarity)と環境条件(E environment)の両方の相互作用によって影響 を受けることになる。社会の中での人間行動の背景に、環境による影響もあることをふまえ、 相談者の環境(労働条件、労働環境、心理的環境など)を捉え、支援することが必要である。(3)制度面での補足
就業するにあたり知識やスキルが不足している場合、その習得のため職業訓練を受講する ことができる場合があります。96
(4)大阪華子さんへの具体的支援
ご両親から大手企業の一般事務に勤めるよう勧められていましたが、大学時代の興味を聞 いていく中で、スペイン語をなぜ専攻したのかをとても楽し気に話してくれました。様式1-2 を書いていくうちに、スペインへの短期語学留学や、駅での案内というインターンシップ、 アルバイトの輸入雑貨店での販売を通じて得ることがたくさんあったことを思い出されまし た。就職はご自身がするものと意識を変えられたようです。ご両親との話し合いの中で、先 輩訪問や企業研究を通してキャリアビジョンを決めていかれることと思います。102
4.訓練受講者(訓練前、雇用型訓練・専門実践教育訓練等)
(1)支援のポイント
職業訓練を通じて自己のスキルを向上させたいという意欲は素晴らしいことですが、働い ている自分像をイメージして訓練を選択しているかがポイントになります。自己理解・仕事 理解とともに訓練への意欲が求められます。残念ながら途中で訓練を止めてしまう例もあり、 この場合訓練機関への影響もありますが、本人の自己効力感が下がることがその後のキャリ ア発達に不安を生じさせます。(2)質問例
□今までされてきた仕事についてお聞かせください。 □どのような役割(責任、チーム)でしたか? □仕事を通じて得られたものは何でしょうか? □これからどのような仕事をしていきたいですか? □そのために足りない知識やスキルはありますか? □職業訓練を続けるモチベーションは維持できそうですか? □訓練終了後の就業イメージについてお聞かせください。 □これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? 【グラッサー理論】 グラッサーは幸せな人間関係を築くために、自分の人生に責任を持って生きることを「選 択理論」で提唱した。人間の行動は多くが選択され、生存、所属、力、自由、楽しみを満た すことが動機になる。その選択基準は、①Right(社会正義に反しないこと)②Reality(現 実的であること)③Responsibility(自己責任と考えられること)と唱えた。(3)制度面での補足
雇用型訓練には、有期契約労働者を対象に、正社員化を目指す「有期実習型訓練」、15 歳 以上45 歳未満を対象に企業の中核人材の育成を目指す「実践型人材養成システム」、直近 2 年以内に継続して新規雇用されたことがない 45 歳以上を対象にした「中高年齢者雇用型訓 練」があります。 なお、学校等の卒業・修了予定者はジョブ・カードの作成は必須ではありませんが、職業 選択やキャリア形成の一環としてできる限りジョブ・カードの作成やキャリアコンサルティ ングを行うことが望まれます。作成希望者には作成支援を行ってください。 また、専門実践教育訓練受講前にキャリアコンサルティングを実施する「訓練対応キャリ アコンサルタント」は、①国家資格キャリアコンサルタントであること、②専門実践教育訓 練の実施機関に雇用されている者または当該機関の役員でないこと、③訓練対応キャリアコ ンサルタントに係る研修を受けていること、が必要です。(4)愛知洋二郎さんへの具体的支援
プログラミング、経営を2 つの専門学校で学び、将来起業したいという目標にしっかりと 向かっておられることを、確認し、支持をした。ただ信念をしっかり持ってらっしゃるがゆ えに、周りとの軋轢も懸念された。チームで仕事をする中でコミュニケーションが重要なこ と、リーダーになったときのイメージなどを伝え、現在の課題も共有が出来た。中長期の目 標が設定できているので、スキルアップの職業訓練は大いに役立つのではないだろうか。103
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5.訓練受講者(訓練期間中、求職者支援訓練・委託型訓練等)
(1)支援のポイント
訓練の途中で止めてしまいたくなることはよくあることです。止めたくなった理由を丁寧 に聴きながら、訓練当初の決意、訓練後の展望を確認していくことが大切です。自信がなく なってしまっている場合、バンデューラの自己効力感の強め方を参考になさってください。 「動機づけ」がとても大切な時期です。 主婦の方など、長く就労から遠ざかっている場合、面接での不安があることが多いです。 面接練習の回数を増やすなどして一歩踏み出す勇気を持たせる支援が求められます。(2)質問例
□職業訓練の状況はいかがでしょうか? □職業訓練を続けるモチベーションは維持できそうですか? □訓練終了後の就業イメージについてお聞かせください。 □採用面接などが不安な場合、面接練習をしましょうか? □これからのキャリアを考える際に不安なことはありますか? 【バンデューラ理論】 バンデューラは自己効力感(自分が上手くやれそうだという期待感、自信)を提唱した。 自己効力感を高める要因を①成功体験(過去に成功した体験)②代理経験(自分以外の上手 くできている経験者をモデルとして見る)③言語的説得(周囲から能力があると言語的説得 や励ましを受ける)④情動的喚起(リラックスするなど生理的な状況をつくり喚起する)の 4 つに区分した。また「個人がある選択行動をするかどうかを規定する主な要因は、機会に 遭遇するかどうかが重要である」との機会遭遇理論を提唱した。(3)制度面での補足
求職者支援訓練・委託型訓練の場合は、キャリアコンサルティングが3 回以上必要(訓練 開始時、中間時点、修了間際)です。すべての回でジョブ・カードを作成する必要はありま せんが、訓練の経過を受講者が理解する際には有効です。 ※訓練期間が3 か月に満たない場合は、月 1 回以上のキャリアコンサルティング実施となり ます。(4)福岡真実さんへの具体的支援
訓練受講開始時に思い描いた目標を再確認することで、訓練継続の意欲が増したように感 じました。支援者としては、福岡さんが何に悩まれているのか、不安をしっかりと傾聴する ことが求められます。自分一人で抱え込まずに、もっと周囲に相談をするようアドバイスを 行いました。115