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25 D Effects of viewpoints of head mounted wearable 3D display on human task performance

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(1)

平成

25

年度

学士学位論文

ウェアラブル3

D

ディスプレイ装着時に

おける視点位置の効果

Effects of viewpoints of head mounted wearable 3D

display on human task performance

1140322

北山 紗妃

指導教員

繁桝 博昭

2014

2

28

(2)

要 旨

ウェアラブル3

D

ディスプレイ装着時における視点位置の効果

北山 紗妃

近年安価なHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が発売され多くの人がHMDを手軽に 楽しむ機会が増えてきた.今後はHMDに映し出された映像を見るだけでなくHMD自体 にカメラが取り付けられ自分の動きと連動している映像を見ながら作業を行うことが普及し てくることが考えられる.医療現場ではすでに内視鏡手術向けに3D提示可能なHMDが使 用されている.HMDのカメラは視点を自由に変えることができるため,作業に適した視点 に変えることも可能である.しかし,HMDを装着した状態で人間の日常的な動作にどのよ うな影響が出てくるかはまだ解明されていない.そこで本研究では,日常的に見えている映 像と自身の身体方向の不一致が行動にどのような影響を与えるかについて線の上を歩く歩行 実験と線の中心をなぞるトレース実験で検討した.実験の結果,課題遂行時間において歩行 実験でカメラの向きによる主効果が,トレース実験では顔の向きの違いの効果がそれぞれ 認められた.このことから,作業の違いにより影響を受ける条件が異なることが明らかと なった. キーワード HMD,歩行,トレース,視点

(3)

Abstract

Effects of viewpoints of head mounted wearable 3D display

on human task performance

Saki KITAYAMA

Nowadays, many people can enjoy head mounted display (HMD) with low cost. It is going to be popular that we use HMD for not only to view just some contents but perform some specific operation with the movie associated with the observer’s movement taken by an attached camera. In medical practice, 3D HMD devices are already used for endoscopic surgery. The position of a camera attached to HMD in such a situation can be manipulated to better view for operation. However, it is not clear that how changing viewpoint have an effect on human behaviors. In this study, the effects of inconsistency between the visual image through HMD and body/head orientation on the performance of usual task were investigated through two experiments. The task in Experiment 1was to walk on the line drawn on the floor and the task in Experiment 2 was to trace the line with pen wearing HMD. The results showed that the significant effect of the manipulation of the orientation of camera was found in Experiment 1 while the significant effect of the manipulation of the head orientation was found in Experiment 2. These results suggest that the factors which affect the performance with different viewpoint wearing HMD depend on the tasks.

(4)

目次

1章 はじめに 1 1.1 背景と目的 . . . 1 第2章 実験1(歩行実験) 2 2.1 実験目的 . . . 2 2.2 装置. . . 2 2.3 被験者 . . . 4 2.4 手続き . . . 4 2.5 結果. . . 7 2.5.1 課題遂行時間 . . . 8 2.5.2 変動誤差 . . . 12 2.6 考察. . . 15 第3章 実験2(トレース実験) 16 3.1 実験目的 . . . 16 3.2 装置. . . 16 3.3 被験者 . . . 16 3.4 手続き . . . 17 3.5 結果. . . 18 3.5.1 課題遂行時間 . . . 20 3.5.2 変動誤差 . . . 23 3.6 考察. . . 27 第4章 まとめ 28

(5)

目次

謝辞 29

(6)

図目次

2.1 磁気式三次元位置測定装置 . . . 3 2.2 Webカメラ . . . 3 2.3 HMD . . . 3 2.4 テンキー . . . 3 2.5 実験に使用したHMD . . . 3 2.6 歩行実験の実際の道筋 . . . 5 2.7 歩行実験の距離 . . . 5 2.8 目線方向とカメラの向きの関係 . . . 6 2.9 真上から見たカメラの向き . . . 6 2.10 歩行実験 条件ごとの課題遂行時間 . . . 7 2.11 歩行実験 条件ごとの変動誤差 . . . 7 2.12 被験者Aの課題遂行時間(歩行) . . . 10 2.13 被験者Bの課題遂行時間(歩行) . . . 10 2.14 被験者Cの課題遂行時間(歩行) . . . 10 2.15 被験者Dの課題遂行時間(歩行) . . . 10 2.16 被験者Eの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.17 被験者Fの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.18 被験者Gの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.19 被験者Hの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.20 被験者Iの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.21 被験者Jの課題遂行時間(歩行) . . . 11 2.22 被験者Aの変動誤差(歩行) . . . 13 2.23 被験者Bの変動誤差(歩行) . . . 13

(7)

図目次 2.24 被験者Cの変動誤差(歩行) . . . 13 2.25 被験者Dの変動誤差(歩行) . . . 13 2.26 被験者Eの変動誤差(歩行) . . . 13 2.27 被験者Fの変動誤差(歩行) . . . 13 2.28 被験者Gの変動誤差(歩行) . . . 14 2.29 被験者Hの変動誤差(歩行) . . . 14 2.30 被験者Iの変動誤差(歩行) . . . 14 2.31 被験者Jの変動誤差(歩行) . . . 14 3.1 ペンタブレット . . . 17 3.2 トレース実験の道筋 . . . 18 3.3 トレース実験の手続きの模式図 . . . 18 3.4 トレース実験 条件ごとの課題遂行時間 . . . 18 3.5 トレース実験 条件ごとの変動誤差 . . . 19 3.6 被験者Aの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.7 被験者Bの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.8 被験者Cの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.9 被験者Dの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.10 被験者Eの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.11 被験者Fの課題遂行時間(トレース) . . . 21 3.12 被験者Gの課題遂行時間(トレース) . . . 22 3.13 被験者Hの課題遂行時間(トレース) . . . 22 3.14 被験者Iの課題遂行時間(トレース) . . . 22 3.15 被験者Jの課題遂行時間(トレース) . . . 22 3.16 被験者Aの変動誤差(トレース) . . . 25 3.17 被験者Bの変動誤差(トレース) . . . 25

(8)

図目次 3.18 被験者Cの変動誤差(トレース) . . . 25 3.19 被験者Dの変動誤差(トレース) . . . 25 3.20 被験者Eの変動誤差(トレース) . . . 26 3.21 被験者Fの変動誤差(トレース) . . . 26 3.22 被験者Gの変動誤差(トレース) . . . 26 3.23 被験者Hの変動誤差(トレース) . . . 26 3.24 被験者Iの変動誤差(トレース) . . . 26 3.25 被験者Jの変動誤差(トレース) . . . 26

(9)

表目次

2.1 条件一覧 . . . 5 2.2 歩行実験 被験者ごとの平均課題遂行時間(秒) . . . 9 2.3 歩行実験 被験者ごとの変動誤差(cm) . . . 12 3.1 トレース実験 被験者ごとの平均課題遂行時間(秒) . . . 20 3.2 トレース実験 被験者ごとの変動誤差(pixel) . . . 24

(10)

1

はじめに

1.1

背景と目的

近年安価なヘッドマウントディスプレイ(HMD)が発売され,実社会での使用が増加し てきている.すでに医療現場では内視鏡手術にHMDが使用され医師は奥行きを認識できる 3D映像を見ながら手術を行うことができる.さらに,災害発生時における聴覚障がい者 の避難支援のためにHMDを活用する実証実験も行われている.現在は主に医療や福祉の分 野において開発が進んでいるが,今後さまざまな分野においてカメラ付きウェアラブルディ スプレイを使用して作業を行うことが普及してくると考えられる. HMDのカメラは自由に視点を変えることができ,作業に適した視点に変更することも可 能である.例えば,内視鏡手術で使用されているHMDは,映像を上下・左右に反転して表 示することができるため,執刀医の内視鏡映像を向かい合った術者と助手が,内視鏡映像を それぞれの立ち位置からの視点で見るとこが可能である[9].しかし,HMDを装着した状 態で通常とは異なる視点が人間の日常的な動作にどのような影響を及ぼすかは明らかになっ ていない.そこで本研究ではHMDを装着した状態で映像と身体方向の不一致が日常的に行 う作業にどのような影響を与えるかを検討していく.今回は自己身体全体が移動する歩行と 自己身体の一部が移動するトレース作業の2つの動作から課題を遂行するためにかかる時間 と軌跡を測定する.

(11)

2

実験

1

(歩行実験)

2.1

実験目的

歩行実験では,視線と身体の向きの不一致が人間の基本動作の1つである歩行に及ぼす 影響について検討する.スタートからゴールまでの課題遂行時間と歩行の軌跡を測定する. 見えている映像と身体方向の不一致によってどれほど歩行に支障をきたすのかを明らかに する.

2.2

装置

本実験では,被験者の歩行軌跡を測定するために図 2.1の磁気式三次元位置測定装置 (POLHEMUS社,FASTRAK)を使用した.HMDとして図2.3の3次元ヘッドマウント ディスプレイHMZ-T3W(SONY製)を使用した.解像度が1280x720,本体重量が320g、 視野角が約45度であり,約20m先の750インチモニタと同様の映像を得ることができる.

Webカメラは図2.2のLifeCam HD-3000(Microsoft)を右目用,左目用の2台使用した.ス タートとゴールの際に使用するテンキーは,図2.4のSimpring無線テンキー(iBUFFALO, SRTK01BK)を使用した.なお時間の計測にはMATLAB+Psychtoolbox[10][11]を,デー タ解析にはMicrosoft Excel 2010,分析にはR言語を使用した. WebカメラをHMDを装着した時に目の部分に来る場所に瞳孔間間隔である6cm離して 取り付けた.Webカメラは角度を変更できるようにヒンジ付きのLEGOブロックに取り付 けた.Webカメラの間にFASTRAKのセンサーを取り付け頭の位置の座標を測定した.

(12)

2.2 装置

図2.1 磁気式三次元位置測定装置

図2.2 Webカメラ

図2.3 HMD 図2.4 テンキー

(13)

2.3 被験者

2.3

被験者

被験者は大学生10名(男性8名,女性2名,年齢幅20-22歳,平均年齢21.2歳)であっ た.すべての被験者は実験内容について説明を受け,十分理解してもらい同意書に署名した 上で実験に参加した.

2.4

手続き

被験者は図2.5のようにWebカメラを取り付けたHMDを装着した状態で左右分割方式 により融像された映像を見ながら,図2.6の白い線上の上を歩く.歩行実験に使用する道筋 は途中で左右に分岐しており,長さはスタート地点から分岐点までの直線を1m,分岐点か らゴール地点までの直線を1mとする(図2.7).スタート地点につま先を合わせ立ち,テ ンキーの 1 を押し,かかととつま先を合わせながら歩く.分岐点まで来たら被験者は試行前 に与えられた実験者の指示に従い左右どちらかの直線を通る.ゴール地点まで来たとき,再 びテンキーの1を押す.ここまでの動きを1試行とし,左右5試行ずつ計10試行を1条件 の試行数とする.条件は表2.4のように顔の向き(下,正面)× カメラの向き(正面,右, 左)の6条件に HMDを装着していない裸眼条件を含めた計7条件であった.カメラから 見える映像は常に下を向いたときの映像である.そのため,顔が下を向いている条件が視 点と身体が一致している条件(図2.8の右)であり,正面を向いた状態が不一致の条件(図 2.8の左)であった.カメラの向きは図2.9のように左,中央,右とずれている.なお,条 件と左右どちらを通るかはMATLABのShuffle関数を使用し被験者ごとにランダムな順に 行った. 歩行実験ではスタート地点からゴール地点までの歩行時間(課題遂行時間)と軌跡のばら つき(変動誤差)を各条件間で比較する.変動誤差は分岐点からゴール地点までの回帰直線 (式2.1)からの誤差(動きのばらつき)を式2.2を用いて算出し,被験者の動きがどの程度 ばらついているかを標準偏差で求める.どの程度ばらついているかを課題遂行時間同様各条 件間で比較する.

(14)

2.4 手続き 回帰直線 : y = ax + b (2.1) 回帰直線からの誤差= (y軸座標− (a ∗ x√ 軸座標)− b) 1 + a2 (2.2) 表2.1 条件一覧 PPPPPP PPP PPPP カメラの向き 顔の向き 下 (整合) 正面 (不整合) 裸眼 (HMDを装着していない状態) 裸眼 -左 左-下 左-正面 中央 中央-下 中央-正面 右 右-下 右-正面 図2.6 歩行実験の実際の道筋 図2.7 歩行実験の距離

(15)

2.4 手続き

図2.8 目線方向とカメラの向きの関係

(16)

2.5 結果

2.5

結果

歩行実験における条件ごとの課題遂行時間の平均値を図2.10に,動きのばらつきを示す 変動誤差の平均値を図2.11に示す. 図2.10 歩行実験 条件ごとの課題遂行時間 図2.11 歩行実験 条件ごとの変動誤差

(17)

2.5 結果

2.5.1

課題遂行時間

被験者ごとの条件ごとの課題遂行時間を表2.2と図2.12∼図2.21に示す. 図2.10から裸眼条件において最も課題遂行時間が短かった.HMDを装着した状態では, 自分の身体の向きと一致しているカメラが中央に向いているときにカメラが左右を向いてい るときに比べ課題遂行時間時間が短くなっている.見えている映像すなわちカメラの向いて いる方向と顔の向きが一致している場合と一致していない場合では、大きな差は見られな かった.そこで条件間に有意な差が認められるかを明らかにするため,裸眼条件を含めた7 条件間で1要因対応ありの分散分析を行った.この結果,HMDの有無の効果が認められた (F(6, 9) = 7.43, p < 0.01).Bonferroni法による多重比較の結果,特に裸眼条件と左-下条 件の間 (p < 0.05) , 裸眼条件と右-下条件の間 (p < 0.05) ,裸眼条件と右-正面条件の間 (p < 0.05) それぞれの間で有意な差が認められた. 次にカメラの向きと顔の向きの効果について2要因対応ありの分散分析を行った結果,カ メラの向きによる課題遂行時間への主効果が認められた(F(6, 18) = 6.47, p < 0.01).さら にどのカメラの向きの主効果が認められるかを明らかにするため,Shaffer法による多重比 較を行った結果,中央と左の間(p < 0.01),中央と右の間(p < 0.05)でそれぞれ有意な差 が認められた.カメラの向きが左右にずれていると成績は低下することが明らかとなった.

(18)

2.5 結果 表2.2 歩行実験 被験者ごとの平均課題遂行時間(秒) 顔の向き 下(整合) 正面(不整合) カメラの向き 裸眼 左 正面 右 左 正面 右 被験者A 9.39 11.08 10.33 10.81 11.83 11.36 13.75 被験者B 8.96 16.43 14.59 13.88 13.69 12.39 11.85 被験者C 8.17 13.48 9.70 10.74 14.73 13.27 14.27 被験者D 9.30 11.05 11.86 11.41 10.91 9.83 11.11 被験者E 11.04 12.35 10.90 12.10 12.38 12.38 11.35 被験者F 11.70 16.06 13.07 15.82 13.70 12.95 15.59 被験者G 10.63 13.81 12.93 13.36 13.86 12.53 15.03 被験者H 7.18 7.85 7.32 7.68 8.21 9.26 7.89 被験者I 11.44 12.95 10.94 12.86 11.43 10.53 12.08 被験者J 9.38 11.34 10.78 11.14 11.47 10.51 10.87

(19)

2.5 結果

図2.12 被験者Aの課題遂行時間(歩行) 図2.13 被験者Bの課題遂行時間(歩行)

(20)

2.5 結果

図2.16 被験者Eの課題遂行時間(歩行) 図2.17 被験者Fの課題遂行時間(歩行)

図2.18 被験者Gの課題遂行時間(歩行) 図2.19 被験者Hの課題遂行時間(歩行)

(21)

2.5 結果

2.5.2

変動誤差

被験者ごとの条件ごとの課題遂行時間を表2.3と図2.22∼図2.31に示す. 図2.11からばらつきの具合は,裸眼条件が一番小さかったがすべての条件において大き な差は見られなかった.裸眼条件を含めた7条件間で1要因対応ありの分散分析を行った結 果,変動誤差への効果は認められなかった(F(6, 9) = 1.22, p = 0.306).カメラの向きと顔 の向きの効果について 2要因対応ありの分散分析を行った結果でも有意な差が認められな かった(F(1, 9) = 0.26, p = 0.621 : F(2, 18) = 0.32, p = 0.728). 表2.3 歩行実験 被験者ごとの変動誤差(cm) 顔の向き 下(整合) 正面(不整合) カメラの向き 裸眼 左 正面 右 左 正面 右 被験者A 2.71 2.97 3.00 3.30 3.07 2.73 3.09 被験者B 2.52 3.26 3.52 2.57 2.84 3.13 2.53 被験者C 1.85 2.47 2.56 1.99 2.78 4.08 2.92 被験者D 2.31 4.05 3.66 3.40 2.48 2.85 2.88 被験者E 1.83 2.39 2.08 1.91 2.03 1.73 2.19 被験者F 1.98 2.07 1.33 2.08 1.88 1.99 1.61 被験者G 3.19 2.56 2.68 2.60 2.96 2.20 2.90 被験者H 2.06 2.34 1.74 1.72 1.75 2.28 1.68 被験者I 1.99 2.93 2.73 3.04 2.72 3.20 2.65 被験者J 2.00 1.82 1.90 2.38 1.64 1.90 2.17

(22)

2.5 結果

図2.22 被験者Aの変動誤差(歩行) 図2.23 被験者Bの変動誤差(歩行)

図2.24 被験者Cの変動誤差(歩行) 図2.25 被験者Dの変動誤差(歩行)

(23)

2.5 結果

図2.28 被験者Gの変動誤差(歩行) 図2.29 被験者Hの変動誤差(歩行)

(24)

2.6 考察

2.6

考察

歩行実験において課題遂行時間での有意な差が認められた.裸眼条件と比較した場合,左 -下条件,右-正面条件,右-下条件それぞれの条件間で有意な差が認められた.また,HMD を装着した条件のみで分析した結果,顔の向きの関係なくカメラが中央と比べ左右それぞれ にずれている条件で有意な差が認められた.変動誤差に関しては有意な差は認められなかっ た.カメラが中央にある場合は普段歩くときに見ている映像との違いが少なく歩けたのでは ないかと考えられる.左右のカメラのカメラの向きが左右どちらかにずれている場合,映像 と顔の向きが一致していても自分から垂直に伸びているはずの直線が見ている映像ではずれ て見えるため注意深く歩くようになり,課題遂行時間が裸眼条件やカメラが正面を向いた条 件よりも長くなったと考える.

(25)

3

実験

2

(トレース実験)

3.1

実験目的

実験では,視線と身体の向きの不一致が人間が日常的に行うペンによる動作に及ぼす影響 について検討する.スタートからゴールまでのトレース時間とトレース時の軌跡を測定す る.見えている映像と身体方向の不一致によってどれほどトレース作業に支障をきたすのか を明らかにする.

3.2

装置

本実験では,トレースの軌跡を測定するためにSlim Pen Tablet(Princeton社製)を使 用した(図3.1).このペンタブレットの上に道筋を書いた紙を貼り,その上を専用のペンで なぞるようにする.スタートとゴールの際に被験者が反応するためのテンキー(ELECOM, TK2-BT3H)を使用した.HMD,Webカメラ,課題遂行時間の測定およびデータ解析には 歩行実験と同じものを使用した.

3.3

被験者

被験者は大学生10名(男性6名,女性4名,年齢幅21-22歳,平均年齢21.6歳)であっ た.すべての被験者は実験内容について説明を受け,十分理解してもらい同意書に署名した 上で実験に参加した.

(26)

3.4 手続き 図3.1 ペンタブレット

3.4

手続き

被験者はHMDを装着した状態で左右分割方式に融像された映像を見ながら,図 3.2の 線の中心を専用のペンでなぞる.スタート地点にペン先を合わせた状態でテンキーの 1を 押し,線の中心をなぞっていく.分岐点まで来たら試行前に与えられた実験者の指示に従い 左右どちらかに進む.ゴール地点まで来たら再びテンキーの1を押す.ここまでの動きを 1試行とし,左右5試行ずつ計10試行を1条件の試行数とする.条件は歩行実験と同じく 裸眼条件を含めた7条件で行う.条件と分岐点からゴール地点まで左右どちらに進むかは, MATLABのShuffle関数を使用し被験者ごとにランダムに行っていった. トレース実験ではスタート地点からゴール地点までのトレース時間(課題遂行時間)と軌 跡(変動誤差)を各条件間で比較する.変動誤差は分岐点からゴール回帰直線の誤差(動き のばらつき)を式2.2を用いて算出し,被験者の動きがどの程度ばらついているかを標準偏 差で求める.どの程度ばらついているかを課題遂行時間同様各条件間で比較する.

(27)

3.5 結果 図3.2 トレース実験の道筋 図3.3 トレース実験の手続きの模式図

3.5

結果

トレース実験における条件ごとの課題遂行時間の平均値を図3.4に,動きのばらつきを示 す変動誤差の平均値を図3.5に示す. 図3.4 トレース実験 条件ごとの課題遂行時間

(28)

3.5 結果

(29)

3.5 結果

3.5.1

課題遂行時間

被験者ごとの条件ごとの課題遂行時間を表3.1と図3.6∼図3.15に示す. 図3.4より顔の向きと見えている映像が一致している場合(整合条件),カメラの向きの 間には大きな差は見られなかった.顔の向きと見えている映像が一致していない場合(不整 合条件),カメラが中央と右を向いているときには一致しているときよりも差があった. そこで条件間に有意な差が認められるかを明らかにするため,裸眼条件を含めた7条件 間で1要因対応ありの分散分析を行った.その結果条件間の有意な差は認められなかった (F(6, 9) = 1.80, p = 0.115).一方,カメラの向きと顔の向きの効果について2要因対応あ りの分散分析を行った結果,顔の向きによるトレース時間への効果が認められた(F(1, 9) = 9.62, p < 0.05). 表3.1 トレース実験 被験者ごとの平均課題遂行時間(秒) 顔の向き 下(整合) 正面(不整合) カメラ向き 裸眼 左 正面 右 左 正面 右 被験者A 5.72 6.02 5.48 6.16 5.29 7.60 8.03 被験者B 10.19 7.97 8.01 11.95 10.92 10.06 8.86 被験者C 6.29 9.55 7.99 6.30 7.36 9.26 8.69 被験者D 7.04 5.64 6.76 6.47 4.95 4.29 8.97 被験者E 5.32 5.06 4.45 5.59 3.82 7.31 6.62 被験者F 6.11 6.44 5.56 5.77 5.70 6.47 6.28 被験者G 10.64 7.94 9.89 8.38 9.82 9.32 11.97 被験者H 5.86 6.29 5.14 6.10 5.37 5.98 5.80 被験者I 2.55 3.16 2.92 2.63 2.97 3.00 3.34 被験者J 7.36 8.41 7.54 8.71 10.06 8.15 8.77

(30)

3.5 結果

図3.6 被験者Aの課題遂行時間(トレース) 図3.7 被験者Bの課題遂行時間(トレース)

図3.8 被験者Cの課題遂行時間(トレース) 図3.9 被験者Dの課題遂行時間(トレース)

(31)

3.5 結果

図3.12 被験者Gの課題遂行時間(トレース) 図3.13 被験者Hの課題遂行時間(トレース)

(32)

3.5 結果

3.5.2

変動誤差

被験者ごとの条件ごとの課題遂行時間を表3.2と図3.6∼図3.15に示す. 図3.5から裸眼条件のときとHMDを装着したときでは,大きな差が見られた.HMDを 装着した状態では映像と身体方向が一致しているか一致していないかで大きな差は見られな かった. 実際に条件間に有意な差が認められるかを明らかにするため,裸眼条件を含めた7条件間 で1要因対応ありの分散分析を行った.その結果,変動誤差において有意な差が認められた (F(6, 9) = 3.373, p < 0.01).さらにどの条件間で有意な差が認められたかを明らかにする ため,Bonferroni法による多重比較を行った.その結果,裸眼条件と中央-正面条件の間(p < 0.01) , 裸眼条件と右-下条件の間 (p < 0.01) ,裸眼条件と右-正面条件の間 (p < 0.01) それぞれで有意な差が認められた. 裸眼条件を除いたHMD装着時の6条件で顔の向きおよびカメラの向きによる変動誤差 への効果を明らかにするため2要因対応ありの分散分析を行った.その結果,有意な差は認 められなかった(F(1, 9) = 0.19, p = 0.892 : F(2, 18) = 0.72, p = 0.498)

(33)

3.5 結果 表3.2 トレース実験 被験者ごとの変動誤差(pixel) 顔の向き 下(整合) 正面(不整合) カメラ向き 裸眼 左 正面 右 左 正面 右 被験者A 1.9 2.2 2.2 2.5 2.9 3.7 3.3 被験者B 1.9 2.9 2.8 3.4 2.8 3.5 2.5 被験者C 2.2 4.9 2.5 3.5 4.3 5.6 3.9 被験者D 1.6 8.3 3.0 2.7 3.4 3.1 2.7 被験者E 3.3 5.5 6.2 5.1 4.0 3.6 3.4 被験者F 1.9 4.9 2.4 3.2 4.3 2.3 4.1 被験者G 2.1 2.3 2.5 2.8 7.0 3.7 4.7 被験者H 1.7 3.2 3.8 3.1 2.3 3.8 3.3 被験者I 2.0 3.0 5.4 3.4 2.0 3.5 3.9 被験者J 2.1 4.6 4.4 4.1 3.5 3.6 4.2

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3.5 結果

図3.16 被験者Aの変動誤差(トレース) 図3.17 被験者Bの変動誤差(トレース)

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3.5 結果

図3.20 被験者Eの変動誤差(トレース) 図3.21 被験者Fの変動誤差(トレース)

図3.22 被験者Gの変動誤差(トレース) 図3.23 被験者Hの変動誤差(トレース)

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3.6 考察

3.6

考察

トレース実験では,裸眼条件を含めたすべての条件間で比較した場合,変動誤差において 有意な差が認められたが課外遂行時間では有意な差は認められなかった.裸眼条件と比較し た場合,中央-正面条件,右-下条件,右-正面条件の間で有意な差が認められた.実験後の主 観評価より,トレース実験の場合利き手側を通る時に手で線が見えなくなるため難しいとい う報告があった.さらにカメラが右にずれると映像自体は左にずれたように見えるため,よ り分かりにくくなったと考えられる.また,ペンを使ってものを書くときにはほとんどの人 はペン先を見ながら書くと考えられる.そのため,見えている映像が普段見えている状態と 同じであっても顔の向きが普段のペン先を見ながらの作業と違い前を見て作業となるため, 手を使う作業においては顔の向きが整合的であることが重要であると考えられる.  

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4

まとめ

近年,安価なHMDが発売されておりHMDを手軽に利用できる機会が増えてきた.さ らに軽量化されることで利用者への負担が減っただけでなく,バッテリーが搭載されワイヤ レス化することで好きな場所で快適に HMDを楽しむことができるようになった.今後は, HMD自体にカメラが搭載されたHMDを装着しながら作業を行うことが普及してくること が考えられる.しかし,HMDを装着した状態で人間の日常的な動作にどのような影響が出 てくるかがまだ解明されいない.そこで、本実験で日常的に行う状態で実際に見えている映 像と自身の身体方向の不一致がどのような影響を与えるかを検討した. 今回の実験から,作業の違いによって影響を受ける条件が異なることが示された.どちら の作業においても変動誤差では映像と身体の不一致による効果は見られなかったが,課題遂 行時間において効果が見られた.歩行実験ではカメラの向きによる効果が見られ,トレース 実験では顔の向きによる効果が見られた. 今回は歩行とトレースの2つの動作を別々の実験で行いそれぞれの作業でどのような影響 が出るかを明らかにしてきた.しかし,他の動作や複数の動作を組み合わせた場合の影響は 明らかとなっていないため,今後の研究で明らかにしていく必要がある.

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謝辞

本研究を進めるにあたり,多くのご指導と多大な助言をくださった高知工科大学情報学群 の繁桝博昭先生とYan Pengfeiさんに深く感謝いたします.また,お忙しい中副査を努めご 指導いただきました任向實先生,吉田真一先生,さらに多くのアドバイスをしてくださった 門田宏先生に感謝いたします.自分たちの研究や講義などで忙しいにもかかわらず被験者と して実験に参加いただいた繁桝研究室のみなさん,友人たちに感謝いたします.本当にあり がとうございました.

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参考文献

[1] 高幣,野村,前田,館,“歩行における視覚と運動感覚の整合性に関する研究”,TVRSJ Vol.5 No.2 pp.831-836, 2000

[2] 島村 達也,関口 啓貴, 北島 律之,”歩行による距離感覚への映像の影響 ”,信

学技報,IEICE Technical Report HIP2006-32(2006-07)

[3] 岩瀬 弘和,村田 厚生,”長時間のHMD装着作業が平衡機能に及ぼす影響 ”,電子 情報通信学会論文誌 A Vol.J85-A No.9 pp.1005-1013,2002年9月 [4] 吉村 浩一,小高 佐友里,”逆さめがねの着用実験の心理学基礎実験への導入 - 福 祉・医療系心理学科への導入例の検討 -”,法政大学文学部紀要/ 法政大学文学部 編, 61号pp.125-136 [5] 吉村 浩一 ,(2002),『3つの逆さめがね』,ナカニシヤ出版 [6] 河合 隆史,盛川 浩志,太田 啓路,阿部 信明 ,(2010),『3D立体映像表現の基 礎 - 基本原理から制作技術まで -』,ナカニシヤ出版,オーム社 [7] ”静岡福祉大学らが実証実験 ヘッドマウントディスプレイで災害時の聴覚障がい者を 支援する ”,http://www.kknews.co.jp/maruti/news/2012n/0903 6d.html [8] ”ミ ニ マ ム 創 内 視 鏡 下 手 術   東 京 医 科 歯 科 大 学 大 学 院 ” , http://www.tmd.ac.jp/med/uro/practice/cure/mies.html [9] ”HealthTechNewsソニー,内視鏡手術向けに3Dヘッドマウント・ディスプレイを開 発 ”,http://healthtechnews.jp/2013/11/18/sony head mounted display/

[10] Brainard, D.H. (1997) The Psychophysics Toolbox, Spatial Vision 10:443-446. [11] ”Psychtoolboxをがんばる:心理学,実験,プログラミング”,      

図 2.1 磁気式三次元位置測定装置
図 2.9 真上から見たカメラの向き
図 2.12 被験者 A の課題遂行時間 ( 歩行) 図 2.13 被験者 B の課題遂行時間(歩行)
図 2.16 被験者 E の課題遂行時間(歩行) 図 2.17 被験者 F の課題遂行時間(歩行)
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参照

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