Japanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiet 二y for the Soience of De$ign職 人
の
手仕 事
と
私
た
ち
の
生 活
一
日
本
の 地 場
産
業 に み る
作
り 手 と
使
い手 の 関 係
Relation
of
Our
凵
festyle
and
the
Handiwork
of
Japanese
Craftsmen
梶 川 秀 親 KAJIKAWA Hidechika
tsunagu
一
日本の 手仕 事か らtsunagu 生まれる生
活
道 具の店
一
1
.
はじ
めに「 いらっ し ゃいませ」 と 「ご注 文 頂 き ま して誠 に あ り が と う ご
ざ
いま す1。
この レポー
トを お 読 み 頂い て い る方 々の中で、
普 段の仕 事の中でお客 様に毎 日挨 拶 する という方 はいらっ しゃ るだろ う か。 私は現 在、
岐 阜 県 土 岐 市 にて日 本 各 地で生 産 さ れ る 地 場 産業 品 (イ ンテ リ ア雑 貨 ) をセ レク ト販 売 するネッ ト ショッ プ兼 実 店舗
tsunagu
を 運 営 してお り、
併 せて取 り扱 う 食 器や 喫茶道具を用いた カフ ェ も営 業 して いる (図 1〜
図3 。
2013
年
3
月に多
治 覓 市 に 雑 貨のみ の店 舗 とし て移 転 )。
:
ぐ
\
謹 課
藷
ぞ
葺
攀の.
.
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一
.
♂・
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二.
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二)霍 星
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嶷 旨 ま1
ノ れ、
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一
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.
.
1
二.
tt
・
冨
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鎚
ご.
,
20]1・
].
21・
Opcn..
.
.
.
.
一
.
図 ]tsunagu DM 図
2
雑 貨 店 内 図3 カフェ店 内元 々 はメ
ー
カー
でプロダ クト デザインやブ
ラン ドマネ ジメン トの業 務 を 行っ ていた が、
所
属す る長 野 県デザ イン振 興 協 会の 委 託 事 業 に よ り地 域 活 性 化・
中 小 企 業の新
商 品 開 発 支 援に携 わ る中で、
「モ ノ づく りの現 場 とモ ノを 販 売 する現 場
をつ な げ る し く みの必 要 性」 を 感 じ、
現 在の事 業 を 開業
す る に 至っ た。
特 に その支 援 活 動 を 通 じ、
これ まで卸 問 屋の注 文の ま ま に モ ノを 作ってき た 生 産 者 が あ ま りに も消費
者の こ と を考え る こと がで きていないケー
スが ある ことを痛 感
し た か ら だっ た。
当 店tsunagu の コ ンセプト は
、
「作り 手 と 使 い手 をつ な ぐ橋 渡 し役とな り、
使い手である消費
者に職 人 た ちの 丁寧
な仕事
を 通じ て心 を 暖 かくする物 を 届け る」 と い う も の である。
ま た、
同 時に伝 統の良 さ を残 しつ つ、
現 代
の ラ イ フ スタイ ル に マッ チ し た新し さ を積 極 的に 取 り 入 れ た モ ノづく り に挑む生 産 者を支 援 する こと も 狙いと して い る。
した がっ て、
当店
の取 扱
い商 品
の基 準 は 下 記のと お りである。
・
素 材 と 品 質、
製 法 にこだ わっ た100
% 日本 国 内
生 産の各種
地 場 産
業品
・
主に職 人 達の 丁寧
な 手仕事
を中心 と して産 み出される商 品(
一
部
は機械
生 産)
・
な お かつ、
年
配 の世 代よ り も む し ろ、
若い世 代の人に も使
っ て貰
え る デザイ ン性
の高
い商
品 ま た、
ショ ップコ ンセ プ ト と併せ経 営 方 針と して 「生 産 者と 産 地の発 展に貢 献
す るこ と」 を掲
げてお り、
そのた め に一
貫 し て メー
カー
の希 望小売 価 格を遵守 し、
在庫処 分時な ど特別時を 除 き ネット販 売で当
た り前
となっ て い る常 時値 引
き販売
を行 わ ないとい う販 売 方 法 を守
っ て い る。 ま た、
特
に一
般
のネット販 売で は無 機 質で 自動 的な商 品の や り取り なっ て し まい が ち だ が、
消費 者
に そ の価格
を納 得
し て も ら え る様 当店
で は ひ とり ひ とりの お客 様に心を 込 め き め細か く丁 寧に販 売す ること に日々 努め て い る(
図4
、
図5
)
。こ れ ま で
、
各デ ザ イン誌に おい て は、
素 材・
材 質と加工技 術 /デザイ ン・
スタイ リングという観 点
か ら様
々な報 告
や 提 言 が な さ れてきてい るかと 思 うが、
今回 は こ う してメ イ ド イ ン日 本の商 品 を 販 売 して い る立 場 か ら、
日々 感じ る事柄
をレポー
ト・
考 察 していき たい。
図4
商 品 ギフト包 装 図5 ネッ ト販売顧 客へ の お礼状30
デ ザ イン学 研 究 鱒 集号Speclaトtssue oi Japanese SocFetV forthe Scienceo「Des「gm
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japane $e Socie しy for ヒhe Seience of De$ign2 .
代 表 商 品
の紹 介
それで は、
ま ず 当 店 が 取 扱 う 商 品の中 か ら、
地 場 産 業 品の各 力テゴ リー
特 に 特 徴 的 な 代 表 商 品の一
部 を 以 下 に 紹 介 していく。
2.
1,
陶 磁 器 品当店
所 在 地の東 濃 地 域 は 古 くか ら美 濃 焼きの産 地と して 有 名 で、
茶 碗・
皿 といっ た 日用 陶 磁 器 は 全 国シェ アの半
分 以上
を占
め る一
大 産 地である。
当
店ではこ の東 濃 地 区〜
瀬 戸、
三重 地 域 を中
心と し た産 地の陶 磁 器 を 扱っ ている。
■ぎや ま んカップ& ソー
サー
[
生 産 地 :岐 阜 県 土 岐 市 / 生 産 者:カ ネコ小 兵 / 価 格 ;2
,720
円]
まる で、
ぎ や ま ん ガラスのよ う な 美 しい透 明 感の艶を もっ た陶
磁器
。
そ の光 沢 が 高 級 感 を 醸 し 出 す。
贈 答 用としても 人気
が高
い(
図6
)
。 ■T
−
kamna
カ ップ& ソー
サー
[
生産
地 :岐 阜
県 土岐市 /
生 産者
:共 同 組 合B
−
side/価 格 :
3,
000
円]
職 人
がひ とつひとつ の模
様 を 掘 り込 む、
『飛 び 鉋 (か ん な ) 』 と い う技
法で表面加工さ れ た 北 欧 を 思 わ せる伝 統とモダン の融合
した意 匠 (
図
7
)
。
■ ドー
ナ ツ ド リッパー
(コー
ヒー
ド1丿 ッパー
)[
生産 地
:岐 阜県 瑞
浪市 /
生 産 者 :Torch
/ 価 格 :2,
300
円 ]元カ フェ の
経 営者
が考 案
・
開
発。
日 本 人 に も 飲 み 易いすっ き りし た味の ド リッブコー
ヒー
が 淹れ られる様、
形 状 を 追 求 し た秀逸
な商 品 (
図8
)
。当店
でもこの ド リッパー
で ハ ン ドド リッ プ の 珈琲を 提供し て い る。
.
’
ド
.
』
.
.
r
ク.
厚
図7
T
−
kamna
カッ プ& ソー
サー
図8
ドー
ナ ツ ド リッ パー
2.
2 .
木
工品
歴史 と伝 統の最 も 古い分 野で あ る と同
時
に、
作
り手 達 に よっ て現 代のライフ スタ イ ル に馴染
む よ う な 工夫 を 凝らしている商 品 が 多 く なっ てき た。
当店
で は、
北 海道
・
秋 田
・
長 野の産 地の木
工商 品 を 扱っ てい る。
図6
ぎや まんカップ&ソー
サー
灘
∴ ∵
∵
∵
Japanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiet 二y for t二he Soienoe of Design32
■秋田杉
の曲
げわ っ ば(
お櫃6
寸〉
[生 産 地 :秋田 県 大館 市/
生 産 者 ;柴 田 慶 信 商 店 /価 格
:35
,
000
円ユ
樹 齢
200
年以上の秋田杉の み を使用 し て 生産さ れ る、
キ メ細 かい木 目が 美し い臼木
の曲
げ わっ ぱ(
図9
)
。
曲 げ わっぱ
の 器 で は漆 塗り や ウ レタン塗装
のもの が多
いなか、
無
垢の白 木 にこ だわ って い る。
■ ateller m4 :信州
力ラ マ ツ の育 林箸
[生 産 地 :長野県 松 本 市 / 生 産 者 :ア ト リエ・
エ ムフ ォ/価 格
:1
,
000
円]
森 を 育て整 備 する サ イ ク ル で生ま れ る
、
今
まで商
品 価 値の少 な かっ た カラ マ ツ間 伐 材
の利
用を図り、
木 材
の命
を使
い切る とい う コ ン セプト で生ま れ た商
品(
1
年を目 処に取 替え) (図 ]0
)。
■atelie厂m4 :美
しい白木
の お重 箱 (
6
寸 ) [生 産 地 :長 野県 松 本 市/
生 産 者 :ア ト リエ・
エ ムフ ォ/ 価 格 :35
,
000
円 ]木 肌 が 大 変 美し い栃の木を
使
用 し、
外の表 面はオイ ル仕 上 げ、
内 部 表 面 は 古 来 から使
用 され て き た顔 料
であ るベンガ
ラの 朱 塗 り仕 様 (図11
)。
コ ス トダウ ン と試 行 錯 誤の 上改 良を重 ね て、
本 物の器 を よ り多
く の人に使
っ ても らうべ く生
み 出 さ れ た 商 品。
翳
鬚
図9
秋 田 杉の曲 げ わっ ば (お櫃6寸) 図10 信 州カ ラマ ツの育 林 箸 デザイ
ン掌 研 究 持 集 号SpecLal
ls$
コ
eefJapan
巳
seSoclet ゾOr 置heSclenceofDeslgn Vol
20
−
2 No78 2013 図11 臼 木の お重 箱 (
6
寸 ) 図12KAMI
マグ カップ 4t /襯 ■KAMI
マグ カップ 匚生 産 地:北 海 道 旭 川 市 / 生 産 者 :高 橋工芸 /価 格 :3
,
500
円/
デザ イ ナ
ー
:大治 将 典
氏]
北 海 道 産セン の木 材 を、
紙の よ うに薄 くロクロ で引いた繊 細 だが温もりのあ る商
品 (図12
)。
や さ しいロ当 た りで熱い飲み物
を 入 れても持ち手に熱が伝 わ らず 機 能 的 に も優
れている。2
.
3
.
和 紙 製 品ご
当
地 岐阜
の 美 濃 和 紙と山 梨の新 和 紙 素 材 商 品 を 中 心に扱 う。■麗ら か
祝
い袋 (
切り結び)
[生 産 地 :岐 阜 県 美 濃
市/
生 産 者 :古 川 紙工/ 価 格 :500
円 ユ美 濃和 紙
の老舗
メー
カー
が ご祝
儀 袋の新 しい見 え 方 につ いて.
「
r コ 取 り 組 み、
伝 統の もてな し の心をモダン で シン プ ル に 表 現 し た商
品(
図13
)
。■
SIWA
トー
ト バッ グ(
M
サ イズ )匚
生 産 地 :山梨
県 西八代 郡/
生 産 者 ;大 直 / 価 格 :6
,
900
円/デ ザ イ ナ
ー
:深 澤 直 人 氏]
山 梨 県の 老舗 和 紙メ
ー
カー
が、
和 紙 漉 き (す き )の製 法 を 取り入 れ た
ポ
リエ ステ ル 系 繊 維 を使 用 し、
和紙
の風合
いも あ りなJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japane $e So¢iety for the S¢ience of De$ign
図
13
麗 ら か 祝い袋 (切 つ結 び ) 図14SIWA トー
トバッグ 図 下は ナオロ ン の製 造工程 が ら破れ に く く耐 久 性にも 優 れ た 新 素 材・
ナ オロ ンを 開 発。
大御 所
デザイナー
の深 澤 直 人 氏 を 起 用 し、
バッグ、
ステー
ショナ リー
などの商 品 を 展 開 (図14
>。
シンプ ル さと軽 さ、
懐か しい 風合
いが新鮮
な 魅 力。
2
.
4
.
金 属 加工品新 潟 燕 市の ス テン レス
・
銅 食 器を中心 に商
品を扱っ て い る。
図15 ス テ ン レ ス のお弁 当箱 図]5
鍋 敷 き 「太 陽 」 と 「銀 河」 老 舗の真 鍮メー
カー
が気 鋭の地 場産業 品プ ロ デ ュー
ス の デ ザ イ ナー
と組 み、
真 鍮製
品の新
しい存 在 感
を表
した商 品 (
図
16
)。
2.
5.
布 製 品 ■花 ふ き ん (色 :さ く ら / す み れ / あ じさい/ 若 葉 / 菜の花)
[生 産 地 :奈 良 県 / 中 川 政 七商
店/
価 格 :700
円]
地 方の モノ づ く りを 元 気にす る
、
を旗 印に各生 産者の新商
品 プロデュー
ス を 積 極 的 に 展 開 す る奈 良
の大 人気 ブ
ラ ン ド・
中川
政 七 商 店。
同 社の商 品の中で も 定番 中の 定番で あ り、
単な る ふ きんで あ るがグ
ッ ドデザ
イン賞
を受 賞
した逸 品
。内祝
いな ど 贈 答 用と しても 人気の あ る商
品(
図16
)
。
図16 花 ふ きん ■ ス テ ンレス のお 弁 当 箱 (大 人 用 ) [生 産 地 :新 潟 県 燕 市 / 生 産 者;工 房アイ ザワ/ 価 格 :3
,
400
円]
昔 懐 か しい印 象の
、
ま さ に シンプ ル な お 弁 当 箱。永
く使
え る 商 品 と してオー
ソ ドックスなが ら大 人 気の商
品(
図15
)
。
■ 鍋 敷 き1「太 陽 」「銀 河」
[
生 産 地 ;富 山 県 高 岡 市/
生産
者 ;二上/
価 格 :
3,
500
円、
4
,
200
円デザイ ナ
ー
:大 治 将 典 氏 ]3
,
販 売 動 向
とト
レンド
につ い て当
店
で の取 扱い商品 は、一
般の生 活 雑 貨に比べる とや や 価格
帯
の高
いものが多
い。
そ のた め、
自 宅 用として 購 入される場 合 と ほぼ同等の比 率でギ
フ ト用 と して購 入 さ れ る場合
が多
い。
ギ フ ト用 と しては、
ぎ や ま ん カップ & ソー
サー
な どの人気
が高
い。
ま たこ こ最 近、
自 宅 用と して特に人気
が高
い も の は、
古 川 紙工 の麗 らか 祝い袋 / す り鉢/
ドー
ナ ツ ド リッパー
/
工房
アイ轍 飜
:
1
で
ll
:
1
∴
胤
Japanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designザワ
・
ス テ ンレス弁 当箱/
花 野 屋・
曲 げ わっぱ
弁 当 箱な どの 商 品であ る
。
ま た、
上 記 に 挙 げ た よ う な 特 に 売 れ 筋の商 品 に おい ては、
使 い手 に 受 け 入 れ ら れて いる デ ザ イン の特 徴 や ト レン ドが 見てと れる。
冒 頭の取 扱 商 品 基 準 を 踏 ま え、
これ までの商 品 販 売の感 覚 を 要 約 す る と 次のと お りであ る。
〈売れ る商 品の共 通 法 則〉素 材 /伝 統
の技
・
製
法/ 品質
・
機 能
へ徹
底 してこだ わっ ている。
何
よ り 丁寧
で あ る こ と。
ま
ず
は、
柴
田慶 信 商店
の曲
げ わっ ぱに見られ
るよう に素材
・
材 質
に き ち ん と こだわっ て い る こ と。 そ し て、
そ の地 方や素
材
に まつわる技法
・
製
法 を貫
き、
商 品
の仕
上 げ や品質
に妥 協
な く生 産さ れ て い る こ と。
シンプル
・
ナ チュ ラ ルなつ く り。(
体
に)
や さし い。無
駄 な装 飾
のない シ ンプルな
デザ
イン。機 能 的
であ りな
がら冷 た さ を 感 じないナ チュ ラルな テ イス トであ る
。
また商
品によっ ては オ
ー
ガ
ニ ック (有 機 栽 培 ) の 素 材 に よっ て実 際 に 肌 触 り な ど 体 に 優 しい こと。
外 観・
デ ザ インへ のひ と ひ ね り・
工夫 とこだ わ り が あ る。
斬 新 な 形で は ない、
ど ち ら か というと目立 たない部 分 や 細 部 に、
ま るで料 理の スパ イス の よ う にひとひねり工夫が凝ら し て あ る。どこか
新
しい、
だ け ど どこか懐
かしい感覚
。
外 観へ のひ と工夫 に よっ て
、
少
し今
までに な かっ た新
しい印 象 を 受 け る が、
そ れと同 時 に 自 分の子 供の頃 を 振 り返っ た よう な どこか 懐 か しい感 覚 を 覚 え る
商
品。
総
じて、
これら の要素
の大 部分
がバ ラ ン ス良
く織
り込 ま れた商
品が使
い 手 で あ る消費 者
か ら人気
が高
く、
良く売れて い る商
品
である と言
え る。職
人 達 が丁寧に モ ノづくりを行
う。一
見す る と ご く当
た り前
のよ うに思
う ことである。
しかし実 際
に商 品
を取扱
う中
で、
い くつか の生産 者
に お い て は高価 格
の商
品であ りな がら、
価 格
同等
の外観
の仕
上 げ 品質
を保
つ こ と が で きず、
い わ ゆ る’
や っ っ け仕 事
”
から改善
でき ない場 合
が あ り、
や
む を得 ず取 引 を中断
した 例 が あっ た。
これは、
長年
の卸
問屋 と のつき あい の中
だけ に 埋 も れてし まい、
自 分 達 が お 客様
に直接
触 れる“
最 終 商 品
”
を 提 供 しているという 自 覚 が 薄 れてし まっ た ため であろ う。
昨今
、
「感性
工学
」 「感性 品質
」 というアプロー
チ が重 要視
さ れてい る。
テクノ ロジー
が 成 熟しきっ た 現 在、〜
そ の商
品の価
格
に相
応 しい、
外観
・
品質
・
雰 囲気
そ して魅
力 が き ちん と醸成
されて いるか〜
の
部 分
につい て付加 価 値
を高
めて いく も ので あ る。 こ の点
につ いて、
様
々 な商
品や 生産 者を通じて私の感 じ34
デ ザ イン学 研 究 特 集 号Special
lssue
ofJapanese
Society
forthe
Science
o 「Design
Vol
.
20.
2 No.
782013 る 最 も 大 切 な部 分
として は、
「商
品の佇
まいが醸
し出
す空気 感
や 雰 囲 気 という も の は お 客 様 に 伝 播 す る」、
つま り、
「作 り手 の 徹 底 的 なこだ わ り やモノ づ く り に 込 めた想いが商 品から 溢 れ 出 て、
使い 手 は そ れ を 怖いほ ど 敏 感 に 感 じ取 る」、
ということで ある。
そ して、
そ れ が 結 局のところ、
「高 くて も 買いたい と思 わ せ る 魅 ガ’
」、
であ り、
ブ
ラン ド化 も し くはブ
ラン ドを 超 越 した希
少価値 化
へ と繋
がっ てい くの であ る。
4 .
産 業
・
経 済 社 会
の課 題
モ ノを販売 する と い う行 為 を 通じ て、
現 在の経 済 社 会・
産 業構 造
の状 況
に は様
々 な問 題
や課題
が ある こと を身 近
に実 感
する よ う に なっ た。単純
な問題 で は な く、
様
々 な要素
が絡
み合
っ て モ ノが売
れ ない時代
に陥
っ てい る のだと思う。 では以
下に それ
ら の課題を挙
げて み る。
4
.
1
.
分離
の時代 /社 会構 造 的な課 題
「 全 体 最
適
」一
「部
分 最適
」終 戦
〜
高 度 経 済 成 長、
バブ
ル 経 済 まで、
これ まで の経 済 社 会 は 分 離・
分 断の社 会であっ た といえる。
ブラン ドマネ ジ メント の考 え 方 に 「全 体 最 適 」 と 「部 分 最 適」 という 切 りロが あ る。
これ まで の大 量 生 産・
大 量 消 費の企 業 活 動 に おいては 効 率 化 を 最優
先 する あ ま り、
全てに おい て部 分 最 適 主 義つま り分 業 化 が推
進さ れ て き た。社 内
で の事業 部
問競争 / 自部
門優
先主義/
個人 能 力 主 義 /職 能
の細 分 化
、
、
部 分
を極
限 に効 率 化
して い く。
結 果 と して企 業 と企 業 を 構 成 す る 人 が 疲 弊 し きっ て し まっ たの がバブ
ル 崩 壊 以 降の社 会の現 状であ る。
こ う し た 分 業 の 弊 害 は 大 企 業 の 問題 だ けでな く、
地 方の地 場 産 業の 現 場にも 色 濃 く現 れて いると思 わ れ る。
つま り、
江 戸 時 代 な ど は 職 人と庶
民 が 道 具 を 壊 れては 直 し、
壊 れては 直 して大 切に使う こ と に よっ て、
作 り手と使い手の直 接 的 なつなが りが存在
して いた も の と思 わ れ る が、
近 代の産 業 構
造の中
で、
生
産者
一
卸
問屋一
小売 店
一
消 費者
という具 合に、
永らく作 り 手と使 い手
が分 断 さ
れてた状 況
が続
い て き たの では ないか。
こ のよ う な 原 因で地 方 の 生 産 者 に おい ては、
単 純 に 昔 な が ら の生 産はでき る の だ が、
何か新 しい こ とを 盛 り込 も うとした 時 にど う し た ら良
い か判
ら ない。
さ ら に 言 う と、
「生 活 者 の 暮 ら し の シー
ンの中
で、
自
分達
の商
品が ど の よ う に使 わ れ るの か、
想像
する こ とがで きない」 と い う現象
が起
き、
結 果として魅 力 的 な 商 品 を 生み出す こ と の障 害
と なっ て い る だ ろ う。
ま た
、
実際
に陶器 業
界な
どでは、
陶
器の石膏 型
屋/成
形 メー
カー
/ 釉 薬
屋、
と細
か く分かれて い た り、
木工業 界で は 加工 屋/漆 塗 り師
、
金
属加
工業
界でもひとつの商
品 を 最 初 か ら最 後 の工程 までを 自 社 内で完 結 す ること が 少 ない。
そ して現 在
、
こ の 各 産 業の分 業 化 状 態 に 対 して、
後 継 者 問 題 や 経 営 難によ り一
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designつの 工
程
の 工場
が廃 業
してし ま う と、
た ち どころ に 全 体の生 産 に 大打撃
を与え て し ま う と い う こ とを耳 にする。
4
.
2
.
経
済・
景 気の課 題一
「お 得 症 候 群 」周
知のと お り、
リー
マ ンショ ック 以 降、
日 本 経 済 は 底 冷 えの状態
が続
い て い る。
デ フ レ ス パイラル も 出口 の見 え る 気 配 が な い。
そ んな中
、
我
々 が よ く耳
に す る、
も し く は 目 に す る 「当店
通 常 販売価 格
の○○
%OFF
」、
「送料 無 料
」、
極
めつ けのキー
ワー
ド 「わ け あ り商
品」。
大手スー
パー
も 力 力 ク・
ヤスクの安売 り競 争
を押
し進 めてお り、
社
会 全体
で商
道 徳 が 低 下 して いる と危
惧 し て い る。一
昔 前
ま で は、
近 江 商 人の 三方 良 し とい う商
売
の精 神
が どこかし ら に残
っ て いたの では ないか と思 うが、
現 在は売る側も買う側
もどこ か自分 本 位 な 印 象 を 受 ける。
っ ま り
、
売
る側
は本 来
き ちんとそ の商 品
の価
値 を 消費
者 に伝 え、
きち ん と し た価格
で販売
す るべ き責 任 を 放 棄 し て しまい、
安 易 に 価格競 争
に走
っ て し ま う。
そ してネッ ト販 売 は さ ら に 拍 車 を か けて いく。
対 して買 う 側 は
、
例 え ば 街に買い物に行く に は電車
代や駐車
場 代 が か か る の に、
通 販で買い物
す る場 合
は送 料
を払
いた く な い、
とい っ た 具 合 に 本 来 支 払うべ き部 分に対し て、
対価
を 払い た く ない という具 合であ る。モ ノを 買 う 行 動の 中で
、
常に何か 『お得』 がな い と満足 でき ない。
い う な れ ば、
日本 人一
億総
「お得 症候 群
」 とい う病
気 に か かっ てし まっ ている 状 況であ る。
そして、
それが よ り状
況を 悪.
く す る悪循 環
に陥っ て い る。
4.
3.
モノ が 有 り余 り、
溢 れ る 市 場皆 さ ん が と り あ え
ず
何 か 日用 品 が必
要となっ た時
に買
い物
に でか け る 場 所 はどこだ ろ う か。
まず、
近所の100
円 ショ ップ や ホー
ム センター
を 思い浮
かべな
いだろ うか。よ く地 場 産
業
品のシェ アが、
コス ト の安
い中
国に持っ て行 か れたと い う話 を 聞 く。
だ が そ れだ
けでな く、
さ ら に現在
の100
円 ショ ップでは あ りとあらゆる ジャ ンル の商 品が網羅 さ れ、
ま たホー
ム セ ンター
も 含 めて一
箇所
の店
で、
しか も低 価格
な 日用 品 を お 手 軽 に 買 えてし ま う 時 代である。 こ のような中
で、
あ え て消 費 者か ら選んでも ら え る商
品と はどう い うものだろう か。
4.
4.
原 材 料 調 達の課 題産 業 の構 造 的 な 課 題 以
外
にも盲 点
と なっ て いる 部 分 に、
特 に 木工品 業 界では 原 材 料の調達
が難
し くなっ てきているという 点 も 挙 げられる。
完 全 国内 生産
の商
品でも、
例
え ば 漆 器の天 然 漆 な ど は国
内 産の ものは現 在ほ と んど採取 す る こ とができ ず、
中 国産の 天然 漆 を 輸 入 し た 上で国内
で調合
し て使
用 して いること を 知っ た。
また
、
木工品に使
わ れ る木 材
、
例えば 木 曽の 五木 とい わ れ る、
ヒ ノキ・
アスナロ・
コウ ヤマ キ・
ネ ズコ・
サワ ラな どの中 で、
特
に お櫃
に使
用 さ れる サ ワ ラな ど も 採取
量 が 限 られてきて いる。
という具 合に、
森 林
が整 備さ れずに荒 廃し ているとい っ た環境
も影響
し、
材 料 調
達 を含
め た環
境 を 守るこ とも 課 題と なって い る。
私 は 過
去
、
長 野 県 デザ
イン振興 協会 及
び同県
地 域 資 源 製品
開 発 支 援センター
の商
品 開 発 支援
に参
加し て い た。
また 現 在 は、
NPO
法
人メイ ド インジャ パ ンプロジェ ク ト/
岐阜 県
支 部 発 足 準備 会
の勉 強 会
に参
加し、
各 地 場 産 業の生 産 者 と 交 流 し勉 強 さ せてもらった。
このよ
うな複 合
的 な問
題 が か ら ま り あっ た 状 況 下 に おい て、
どのよ うに魅 力的
でかつ き ち ん と 売 れる商 品
を 生 み 出 して い くこと は共 通の悩み で あ り、
大き な課題 である。
5 .
ま と め と提
言そ れでは 私 た ち を 取 り
巻
く状
況の中
で、
今 後
日本
の地場
産業
品
や 手仕
事の商 品 と その 生 産 者が進 むべ き方向性
につ い て考
え て みたい。
5,
1.
『不 易 流 行』これ も ブ ランドマネ ジ メン ト業 務 時 代に
学
んだ大変 参 考
にな る考 え 方であ る。
い つ の 時 代に あ っ ても、
普
遍 の価 値 (
不 易)
と時 代 に よっ て変 わ る 価 値〔
流 行)
の両方
が存 在
する と い うも の。
ま ず は 残 すべ き 技 と置いていくや り方
、
もっ と言 うと“
残
す べきDNA
、
捨
て ていくDNA
”
の棚 卸し に向
き合っ てい く と い う こと が 今、
特 に 生産 者
に必
要 なのではないか。単
に昔
から 脈々 と受 継がれてき た技
法を残
す と い う こ と で はな く、
例 え ば 環 境 や身
体 に負 荷
の少
ない素材
とそ の加工技術
は 今 まで以 上 に フ ォー
カ ス す る部
分 を 明確
にす
る、
とい う様
にま さ に伝 統
と革
新 に 取 り組 んで い くという具 合に。
大 直の和 紙 新 素 材 『
SIWA
』 シリー
ズの商 品
も、
和紙
の風
合 いを 活 か した 新 素 材 を 開 発し、
今まで和 紙商
品のジャン ル に存 在 しな かっ た、
バ ッグ
やファ ッ ション小物
の アイテム に 展 開 し た 好 例で ある。
これ ま で、
「あ り そ う でな かっ た もの、
和 紙の シワ感
が懐
か しい」 を見事
に商品
し、
海 外でも 注 目 を浴 びてい る。
5.
2.
『半
工芸
・
半
工業
』 というキ
ー
コ ンセ プ トこれ までの地 場
産 業
品は、
伝統
工芸 品 と して の感 覚 に おい て は ど ち ら かと いうと美 術館
・
博物館
に収
め ら れるよ う な 商 品で あっ た り、一
部の高
級 品愛
好 家・
嗜 好 家 向 けの商 品 だっ た よ う に 思 う(
も し く は高度 経 済成
長路 線
の質
以 上 に 量 を 求 め た 廉 価 な 商 品の ど ち ら かであ っ た よ う に 思 う)
。
こ の場 合 は、
良い も巍 毛
鴨
1
霊
:
:
慧
:
臨
Japanese Society for the Science of Design
Japanese Societ二y for the Science of De$ignのは
高
くなるのが当たり前、
わ かる人にだ け わ かっ て も ら えば 良い という 芸 術 作 家 的 な 敷 居の高 さ が、
生 活 者である使い手 と の距 離を隔て て きて し まっ た。
一
方、
私たちの 日々 の消 費 社 会 は、
大 量 生 産・
大 量 消費
・
め ま ぐ る しい モデ ルチェ ンジ・
大 量 廃 棄のサ イ クル シ ス テ ムが 前 提であ つ、
100
円 ショ ップ に 行 け ば たいがい の物 が 買えて しま う お手 軽で敷 居の低いラ イフ ス タ イル の中にある。 ま た、
普段
の身
の回 りの 工業 製 品 は、
企 業 が 徹 底 的に コ ス トダウ ン に し の ぎを 削 り利益 を確 保し 生 産 されたモ ノ に囲 ま れて い る。
しかし
、
こ の お手 軽
な社会
が結 果 的 に 行 き詰 ま りを 見せ てい る こ と も皆
がなん とな く感 じている。
だ か らこそ、
作 り手 と使 い手 が お 互い に歩み寄 りL
作 り 手 は 敷 居 を 下 げて”卜
’
使い手は 逆に敷
居 を 上 げ たt/
中 間 領 域 と して半工芸・
半工業
のポ ジショ ニ ング が必 要 なの ではないだろう か。
も し
商
品 価 格 帯の高い手 仕 事の生 産 者であ れ ば、
従 来のや り 方だ け に こ だ わ ら ず、
ど う し た らよ り 消 費 者 が お 求め易
い価 格
に近 づけて い くこと がで き るのか、
材 料・
加工法 を 創 意工夫し て み る。
また
、
消費 者
はより品質
が良 く、
よ り長 く使う こ とがで き て結
果 的に メ リッ トのあ る商 品、
そ してその価 値 に見
合っ た価 格
の商
品を き ち ん と選ぶ。
お 互いの距 離 を 縮め る 「意 識 」 が必 要 な の だ と思う。 ア ト リエ・
エ ム フォの臼 木お重 箱も、
こ の半工 芸・
半工業の コ ン セプ トで作
り 手と のやり取 り を 重 ねて コ ス トダ ウンに 取 り 組んだ 末に生ま れ た商
品であ る。
5.
3 .
時 代に求め ら れ て い る の は 『癒 し 』特 に 実 店 舗 と カフェ で
直接
お客 様に接 して い て感じ る の は、
丁 寧 な 仕 事に接
す る と、
人は癒
さ れ た つ、
少 し元 気 に な れ た り するという こ と である。
現在
の便 利で手 軽 な 生 活 も 確 か に 必 要 なこ と なのだ が、
や は り それだけでは 人 は 心 満 た さ れ ない。
当 店のカフェ で は
、一
杯一
杯の珈 琲を心 を 込 めて淹 れ丁寧に 接 客 す る 様 に 努 めてお り、
ある お客様
に 「こ の店 に 来 る と元 気 にな れ ま す。
」 と 言っ て 頂 い た こ と が あ り、
本 当に商 売のや り 甲 斐 を 感 じ る と 同 時 に 逆 にこちらも 癒さ れ る体
験を し た。
職 人の丁 寧 な 手 仕 事 に 触 れて
、
心 がほっ と 温 ま る・
癒され る。
日本のモノ作 り に は 人 にそう したエ ネルギ
ー
を与
え ること ができ る。
よ り 身 近で愛着
の持
てる商
品 を社
会 に 提 供 す る。
そ のた め には、
まる で生 産 者で あ る作り手が」
旅 館の女 将 に なっ たよ う な 気 持 ち になって、
おもてな しの心 を 込 めて丁 寧 にモ ノづ く り を する こ とが大 切 で あ る。
そ こ には
、
使い手 が ど ん なシ チュ エー
ション で、
またど ん な 気 持ちでその商 品 を使っ ている のか、
そ の シー
ンを想 像 しなが ら の モ ノ づく り という ものが 自然 に伴
っ て く る もの で は ないか36it
イン学子死持 集号Speclal
ls$ueo「JapaneseSoc/etyfOrtheSciemce of De$lgn
Vol