Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
在 英
29
年
の
創 作
活
動
を
支
え た 「
構 成 学
」
IIKousei−
Gaku”
SupportedMy 29 Years
Art
Activity
in
UK
志村 博フリ
ー
ランス アー
チ ス トSHIMURA
Hiroshi
Free
−
lance Artistイギリスの 地に初め て降り立っ たのは
、
今か ら約29
年 前に なる。
約3
年 間ケンブリッジ 州立芸術工科・
カレ
・
ソ ジ (Cambridgeshire
College
ofArts
andTechnology )でデザインやシル クスク リ
ー
ン を学ん だ後、
フリー
ラン ス・
アー
チ ス ト と なり、
版画作 家、
映 像 作 家と して今口 も イギリス・
ケンブ リッ ジ を拠 点に創 作 活 動を続けて い る。
「構 成 学」 を 学んだの は 東 京 教 育 大 学 時 代で、
主に学 部の4
年 問で ある か ら、
今か ら 三 十数年も 前の こ と に な る。
その 当時は、
ま だ 「構 成 学」 とは言わ な かっ た。
大 学に入 学し て、
すぐ に 登場し た唯一
の構 成 専 攻 專 門 課程が 「構 成 実 習」 だっ た。
毎週 出さ れる課題に、
新 入生であっ た 私 達は夢 中に なってケ ン ト紙に向かい、
ポスター ・
カ ラー
や烏凵 と格闘 し た。
配 色や分割 など、
造 形の 基 礎を次々 と学び ながら、
ポスター ・
カ ラー
で 色 を 作り、
烏口で線を 引 き、
平 面 を む ら な く塗る という よ う な、
基 本 的なプレゼ ン テー
シ ョ ン技 術の トレー
ニ ング も重ねた。 そ の後、
時 代は 大 き く移り、
プレ ゼ ン テー
シ ョ ン分 野で も革 新 的な技 術が次々 と開発 さ れ、
すっ か り様 変わ り して し まっ た。
現 在で は、
線を引 くこと、
色を塗るこ と か ら始 まっ て、
ど ん な 複 雑な分割 も塗り分け も、PC
モニ ター
上 での マ ウ ス操 作で、
自由 に作画 をコ ン トロー
ル出 来て、
あっ とい う 問 に む ら一
つ なく仕上げて し ま う。
私 白 身は 入学 当 時か ら映 像 的な もの に 強 く惹か れ、
写真の暗 室 にいること が多
く なっ た。
後 半は シルク スク リー
ン の写真 製 版による表 現に 夢中に なっ た。
決し て、
構 成 実 習を ま じめ にやっ て いた学生で はなかっ た が、
絵 の具皿 にポス ター ・
カラー
を 取り分け、
少 し つつ 水 を 加 え な が ら調色し、
丸 筆を使っ て 烏口に含ま せ境 界 線を 引 き、
平筆で色を塗り分ける作 業を、
今も懐 か しく想い出す。
後にこ の訓練が、
予期せ ぬ分野で 大 き な 力 を発揮 する と は、
その 時 は 思い も し な かっ た。
ケ ン ブ リッ ジ州 立 芸 術工科カ レッジでは、
主に グラフ ィッ ク・
デザ イナー
を養成 する コー
ス に所属 し てい た。
実戦 に 即 し たデザ イン教 育が中心で、
グ ラ フィ ッ ク・
デザイナー
を目指す学生 が ほ と ん どだ っ た。
デザイン・
ギル ドの資 格 試 験を受ける学 生も い て、
み んな 真 剣 だっ た。 毎 週 出さ れるデザ イン・
プロ ジェ ク トを、
決め ら れ た時 間 内で、
最終プレゼ ンテー
ショ ンまで仕上 げる訓練が繰り返さ れた。
カ レッ ジ で は教室内にプレゼン テー
シ ョ ンに 必 要 なす べ て の 材 料が備わっ て いた。
学 生たちは所 定の棚か ら、
自 由に材 料を取り出して 使っ て い た。
ボス ター ・
カ ラー
や ア ク リ ル絵の具、
カ ラー ・
インク はほ とん ど仙わ れる こと は な く、
カラー e
トー
ンやスク リー
ン・
卜一
ンを ふ んだん に使い.
レ タ リ ングは す べ て写植や レトラセ ッ トで素 早く組E
げられ た。
試 験 対 策と し て ば か り で な く、
実際の 仕事の [†rで も ス ピー
ドが 要求さ れ る よ うだっ た、
構 成 実 習で、
卞に ポスター ・
カラー
を使っ てプレ ゼン テー
ショ ン を し て い た頃か ら、
す で に数年 以上 が過 ぎて い て、
新し い時 代になっ て い た。
プレゼン テー
シ ョ ンの ノ∫法が 変っ た ところで、
デザ インや造形の基 本が変るもの では ない。
私は時々、
新しいプレゼンテー
ショ ンの 素 材を駆 使 し て構 成 実 習で培っ た数 学 的 な 分 割の’
冥 利”
や、
繊 細な配 色の“
技”
を披 露し て は、
他の 学生 た ち だ け で は な く、
先 生 た ち も驚かせ て いた。 私が在 籍して いたコー
ス は、
資 格 試験に即したユ年履 修を基 本と して、
ニー
ト歳 前 後の若 者が多く学ん でい た。
こ のコー
ス に参加する前に、
美術 基礎コー
ス な どを済ませ て い る 学生も多く、
構 成 実 習のよ う な 基 礎 的 な 造形教育は組ま れて いな かった。2
年 以 上在 籍 す る学生 はい ても、
印 刷に関わるデザ イン全般をこ な す た め、
様々 な 実 務 訓 練の繰 り返し であっ た。
そ れ らに関 わるマ ネー
ジメ ン トや法 律の 授業まであっ た。
私に とっ て、
デザ イン実 習以外は、
ほ と ん どが 目新しい分 野で あっ たu イギリ ス で認知 さ れてい る グラ フ でッ ク・
デ ザイ ナー
資 格 試 験に興 味のな かっ た私は、
自由気ま ま に 関 連 す るコー
ス と して の印 刷2〔} SPLCIAL ISSUE(〕F
』
ISSDVol
.
10No42003 デ ザ イン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
実 習
、
製 本 実 習な ど を多く履 修させ て もらっ て いた。
特に印 刷 実 習では、
オフセ ッ ト印刷 やスク リー
ン印 刷す な わ ちシル ク・
ス ク リー
ン、
そ して レ ター ・
プ レ ス と呼 ばれ る 活版 印刷 ま で、
本 格 的な設 備で の印 刷 実 技を、
各 専 門 技 官の指 導で、
次々と 経 験 す るこ とが 出 来 た。
驚い たこ と に、
私が受 け た 夜 間の印 刷 実習で は、
学生たちは年 齢も様々 で実際に印 刷 技 術 者を 目指 す 学 生は少な く、
趣 味 と して印刷を楽 し む 学 外の一
学生.
1
の方が 圧倒 的に多かっ た。
特に レ ター ・
プ レス の実習 で は、
その頃すでに実 際の印 刷 現 場か ら完 全に姿を消しつ つ あっ た 金 属の活字を、
本・
本拾い紺 上げた版を校止機で刷る作 業を、
み ん な楽し そ うにやっ て いた。
その た めの 新しい活 字 を 鋳造する機 械は毎目稼 動して いた し、
活 字の棚 と 組 版の作 業 台、
校正機 だけの 大 き な実 習室 もあっ た。 印 刷実習の 中で は、
ス ク リー
ン印刷 がもっ と も 真剣 に取り組んだ 科目であっ た。
教育 大学 時 代か ら、
“
シ ル クスク リー
ン”
と して、
ス ク リー
ン印 刷の写真 製 版な どに取り組 んで いた が、
こ こ で 見 たスク リー
ン 印 刷の写 真 製 版シ ステムや専用 イ ン ク は 全 く新 しい も の であっ た。
その 精 緻な表現 力は、
私に とっ て初 めて の経 験で驚きの連 続であっ た.
技術の 習 得 自体 は さ し て難しい もの では な かっ た。 私は時間の許す 限り作 品を作る こ と に没 頭 し た。
出 火 上 がっ た もの は、
製 本 実習で本に綴じ た り してい た。 後の活 動の 中 心になる“
シ ル ク ス クリー
ン版画”
と して の意 識 はなか一
っ た。
こ の ス ク リー
ン印 刷の実 習で も、
私の 作り山す作 品は、
他の 学 生た ち と は 全 く違って い たm
製版過程での 色分けの 方 法、
写 真 映 像をベー
スに し た構 図 や 配 色は、
技 官た ちの想 像も 超 え た ものだっ た ら しい。
制作途中では私が何を刷ろ う と し ている か誰も理 解で き な かっ た。
スク リー
ン印 刷 用イ ン ク の調 色は、
構 成 実習で繰 り返し取り絹 んだ ボス ター ・
カラー
の 調色 作 業と令 く同じ もの だっ たし、
複 雑な刷り版の 組み合わせ や配 色も自由にコ ン トロー
ル 出 火 た。
これ は ま さに4
年間 に わ たる構成実 習で の 基礎 造形の理 論面 と、
そ れ に伴う技 術 的な トレー
ニ ングの結果であ る と確 信して い る。
私.
がスク リー
ン 印 刷 実 習 で作った“
作 品”
は、
他の 学 生 た ち が欲し がっ た し、
技 官 達は大 事に保 管 して、
他の授 業な ど に 活 用 し ていたc その後、
イ ギリス に留 まり、
シル ク ス ク リー
ン版画作家と し ての 活 動 を始め る ことに な る が、
この 時の経 験が きっ か けになっ たこと は 言 う までも ない。
在 英15
年が経過 し た頃から、
版 画 作 家と して の活 動 だ けでなく、
凵本 向けのTV
番紺の 制 作に参加 す る機会 が多く な り、
独 自にビデオ映 像を 撮り、
番組を作るよ う に なっ た。
こ の こと は、
映 像 メデ でアの世 界が人き く広がり、
TV メディアも幅広 く 映像 素 材を求め る よ うになっ た か らで あるが、
同 時に 小 型 ビデオ・
カメ ラ の技 術 的な進歩によ る とこ ろ が大 きい。
そ れ ま でのTV
番 組制 作は、
専門 家 集団 の チー
ム・
ワー
クで の み遂 行が F.
ri能で、
とて も個人 的 な 技量で完 結す る もので は な かっ た.
私は イギリ ス で の版 画 作 家 活 動を続け な が ら も、
当時小 型化に 成 功した高画質S .VHS
ビデオ・
カメ ラ で映像 制作を 始め た。 この きっ か け も、
友人の 為に撮っ た留 学プ ロ モー
シ ョ ン・
ビデオ用の 素 材 映 像であっ た。
こ のVTR
を見た専門の編 集 者が“
これ は使える’
t
と判 断 した こ と に よる。
私「『身は ビ デオ映 像を撮る専門的 な訓 練は一
切 受けてい ないが、
動画であっ て も、
造 形の 基本は同じである。
フ ァインダー
の フ レー
ム に、
バ ラン スよ く 対 象を 切 り取る作 業に は、
コ ンポジ シ ョン感 覚が 必要で あ り、
構 成 実 習での 基 礎訓 練が大 き く役に 、b
ている。
現在は動 画 だ けでなく、
写真 も“
作 品”
と して展 覧 会 発 表 する よ う に なっ た。
1構 成 学」 の 素 晴ら し さ は、
オー
ル マ イ ティ の“
ソ フ ト・
ウェア”
であること に あ る。
ど ん な分野であれ、
造形 的 な仕 事を する場 合、
あらゆる 過 程 で 無 意識の う ちに、
こ の ヘ ノ フ ト・
ウェ ア”
機 能を活用 し て い るm 「構 成学」自体は限ら れ た守備 範囲を持た ない、
強 力で汎 用 性の大きい 基本ソ フ トなの で あ る。
意識 す る しない に関わ らず、
私の 在 英 29 年の創 作活用 を 陰で 攴え続け て来たの は 「構 成 実 習」 であっ た こ と は 間 違いない。
テ ザ イン学 研 究 特 集号 SPL〔:IAL ISSUEC )1