2012年3月、第11-1号
In this issue
特集:
アルゼンチン
アルゼンチンが輸入事前申告制度を新たに導入 ... 2グローバル
輸出管理ーワッセナー・アレンジメント、輸出管理内部規程に関する ベストプラクティス・ガイドラインを発行 ... 4米州
ブラジルー 2014年FIFAワールドカップ及び2016年オリンピックの 開催国ブラジルでは、付加価値税及び関税の節減が可能に ... 6 カナダーカナダ国境サービス庁の最新「国家通商コンプライアンス最優先リスト」 ... 8 メキシコーメキシコの新たな認定事業者制度 ... 10 IMMEXバーチャルオペレーションの新しい付加価値税(VAT)規則が発効: 新たなインボイス要件が適用に ... 12 メキシコが新たに署名した自由貿易協定 ... 14 ペルーー 2012年中に、ペルーで新たに7つの自由貿易協定が発効 ... 15 米国ー米税関、移転価格調整金を受け入れる新たな方針を提案 ... 17 カリフォルニア州サプライ・チェーンの透明性に関する法律 ... 18 非市場経済国(NME)に対する米国相殺関税法の適用性が明らかに ... 19アジア太平洋
オーストラリアー自由貿易協定の動向 ... 20 増加する税額更正及び加算税に備える ... 23 中国ー外商投資目録の改訂:一部産業の特典に影響も ... 24 日本ー更正の請求等に係る期間の見直し ... 26 韓国ー米韓自由貿易協定が発効 ... 29 タイータイ最高裁における商標権ロイヤリティに関する判決(事案No.962/2011) ... 30欧州、中東、インド、アフリカ
欧州連合ー EU新関税法の実施:重要懸案に欧州議会がビジネス寄りの決議を採択 ... 31 欧州裁判所が特定の中国靴メーカーに対するアンチダンピング課税取り消しを決定 ... 34 ロシアーロシアのWTO加盟と外国貿易関連法規への影響 ... 35 ウクライナー改正関税法に大統領が拒否権を行使 ... 37 貿易の動向:輸出入関税の引下げ、物品税の引上げ、及び割当の中止 ... 38 一定の関税関連犯罪に対し財務的制裁を導入 ... 40TradeWatch
※ このTradeWatchはアーンスト・アンド・ヤングの関税・国際貿易(Customs & International Trade)グループ により発行された"TradeWatch March 2012 Volume 11, Issue 1"の抄訳となります。
アルゼンチンが輸入事前申告制度を新たに導入
特集:
アルゼンチン
アルゼンチンの公共歳入連邦管理庁(AFIP)は、2012年
2月1日付けで新たに輸入事前申告制度(Declaración Jurada Anticipada de Importación: DJAI)を施行しま した。これにより、今後アルゼンチンの輸入者は、輸入前 に事前報告及び承認の取得を済ませる必要があります。 本制度は、アルゼンチンにおける現行の貿易手法を根底 から変えるものであり、輸入者はコンプライアンス対応に 追われています。 AFIP決議第3252(官報掲載日2012年1月10日)及び 3255(同1月23日)に基づき新たに施行されることになっ たDJAI制度により、今後輸入者は、輸入品に係る発注書 (または同等書類)を国外サプライヤーに発行するま での間に、当該輸入品に関する情報を税務当局に申告 することが求められます。これには、輸入者の納税者番 号、FOB価格、関税分類番号、数量、原産国及び輸出国等 の情報が含まれます。 さらに、DJAI申告を行った場合、同プログラムに参加して いる国際貿易に関係性のある政府機関から承認を得る 必要もあります。DJAI申告で提出された情報にアクセス が可能なこれらの政府機関は、各申告を申告後72時間以 内に承認・却下する権限を有しています。ただし、当該期間 を最大暦日で10日、あるいはそれ以上に延長することも 認められています。 輸入者が事前承認なしで輸入を行おうとしても、輸入時に 税関ITシステムがこれを受付けないため、輸入申告を行う ことはできません。よって、申告内容がある政府機関から 却下された場合、輸入者は輸入時までに、当該政府機関に 対して直接修正内容の申告を行う必要があります。一方、 申告後72時間経過後も特に政府機関から見解が示され ない場合には、輸入者は輸入手続きを進めることができ ます。 DJAI制度は、最終的にアルゼンチン国内で消費される輸 入品に適用され、自由貿易地域及び特別関税地域(Area Aduanera Especial)であるティエラ・デル・フエゴからの 輸入品も対象となります。ただし、例外も幾つか認められ ており、例えばサンプル品や贈与品として輸入する物品 や、クーリエ方式で輸送される輸入品には、一定の例外措 置が適用されます。また、現時点で明らかになっている規 則によると、一時輸入品はDJAI制度の適用外になると考 えられます。 AFIPは、政府機関によるDJAIへの参加手続きを規定した 決議第3256(2012年1月27日付け官報掲載)を施行し ました。 商務省はDJAI制度に参加表明した最初の政府機関です が、その参加は各DJAI申告への回答を、AFIPが定める10 暦日以内ではなく、15営業日以内に行うとするものです。 また、商務省はすでに輸入者に対し、DJAI申告とほぼ同様 の情報(税関ITシステム経由で利用可能な情報)を、同省 指定のEメールアドレス宛てに直接提供するよう非公式的 に要請していることから、今回のDJAI制度における商務 省の関与については不明瞭な部分があります。言い換え れば、現行では輸入者が同様の情報を2度提供する必要 が出てくる可能性があり、事務負担の増大につながる懸 念があります。 また、この一カ月の間に、農畜食糧衛生品質管理セン ター(SENASA)、保健省薬品・食品・医用技術管理庁 (ANMAT)、麻薬予防撲滅計画庁(SEDRONAR)及びブ ドウ醸造庁(INV)といった、さらに多くの政府機関がDJAI への参加を表明しました。
AFIPは、2012年4月1日に発効予定の新しい役務事前申 告制度、Declaración Jurada Anticipada de Servicios: DJAS)も策定しています。DJASは、非居住者から居住 者への役務提供、及び、居住者から非居住者への役務提 供に関する情報をアルゼンチン居住の課税事業者に対し 開示することを求めています。報告すべき役務には、商標 ライセンス、特許及び技術支援のロイヤルティが含まれ ます。DJASについて関税面で留意すべき点は、アルゼン チン税関当局が、この新しい申告制度を、サービスやライ センスのロイヤルティを海外に支払うアルゼンチン居住 企業の追跡調査に利用し、係る支払いを輸入品の関税評 価の対象とすべきかについて検証を行う可能性がある点 です。 新たなDJAI制度は多くの議論を呼んでおり、今後さら なるガイダンスの発行や変更が予測されます。現時点で アルゼンチンの輸入者がなすべきは、輸入貨物の通関遅 延リスクの増大を考慮し、今回の規制が自社のオペレーシ ョンに与える影響を評価することでしょう。また、新しい事 前申告義務に十分に対応し遵守できるよう、現行の社内ポ リシーや手順を更新し、必要となる変更を加えることも必 要でしょう。最後に、予測されるさらなる変更に備え、今後 の動向を注視することも忘れてはいけません。
2011年12月13日及び14日、オーストリアのウィーンに おいて、ワッセナー・アレンジメント(「ワッセナー」)の総会 が開催され、ワッセナー規制リストに待望の更新・改正が多 数加えられましたが、すべての輸出者に関連した興味深い 事項としては、輸出者向け輸出管理内部規程(ICP)の「ベ ストプラクティス・ガイドライン」が公表されたことが挙げら れます。
米国商務省産業安全保障局(BIS)の「How to develop an Effective Export Management and Compliance Program and Manual」やドイツ連邦経済・輸出管理庁 (BAFA)の「ドイツ輸出管理ハンドブック」、または日本 経済産業省の輸出管理社内規程等の各国当局が発行す る指針に基づき社内コンプライアンス規程を策定済み の大手多国籍輸出企業にとって、今回発表されたワッセ ナーガイダンスの内容に目新しい要素はないと言えるで しょう。しかしながら、輸出コンプライアンス社内規程を評 価する上で参照すべき国際的枠組みを提供することを意 図して本ガイドラインが策定された点は注目に値します。 今回の輸出管理に関するガイドライン発行は、サプライ チェーンセキュリティーの分野(例:世界税関機構の SAFE「基準の枠組み」、ISO/PAS 28000等)においても 見られるように、内部コンプライアンス規程をグローバル 規模で標準化しようとする試みであるといえます。
輸出管理内部規程の基本要素
ワッセナーの「輸出管理内部規程に関するベストプラク ティス・ガイドライン」には、以下8つのテーマが含まれてい ます。 1. コンプライアンス責務 CEO等の上級責任者の名で、輸出者として輸出管理 関連法規を把握し遵守する旨、文書にて宣言し、当該 内容を全従業員及び役員に周知徹底させる。 2. 体制及び責任 輸出管理最高責任者(CECO)を長とする輸出管理社 内組織を設置する。輸出管理業務は輸出管理マネー ジャー(ECM)が管理し、CECOに報告する。また必要 に応じて、各事業部門内の輸出管理責任者(ECO)の サポートを受ける。尚、同組織は以下について責任を 負うものとする。 ICPの作成及び改訂/業務手順書の作成及び改訂/関 連法規の改正や所轄官庁からの指令・指針についての 最新情報の収集・理解/該非判定、輸出許可申請の必 要性の確認及び取引審査/輸出管理業務一般/監査要 員の任命/トレーニング 同ガイドラインではさらに、コンプライアンス担当部 署を、営業部やその他の輸出業務中心の部門から独 立させるよう推奨している。 3. 輸出審査手順 該非判定、輸出許可申請の必要性の確認、エンドユー ス及びエンドユーザー審査、各取引固有の審査手順 及び輸出許可取得を包含した手続きを制定する。 4. 出荷管理 該非判定、輸出許可取得及び取引審査の実施や、当該 物品あるいは技術とその数量が輸出指示書に規定さ れた内容と一致している旨の検証が、出荷前に確実に 完了するよう同管理の周知に努める。 5. 実績評価 定期的な実績評価制度を制定し、輸出管理業務がICP とその業務手順に則り適切に実行され、かつ、関連法 規制を遵守している旨を確認する。同ガイドラインで は、企業の組織、規模及び輸出者のその他の状況が許 す限りにおいて、営業部門から独立した部門あるいは 外部専門家による同評価の実施を推奨している。輸出管理
ワッセナー・アレンジメント、輸出管理内部規程に関する
ベストプラクティス・ガイドラインを発行
グローバル
6. トレーニング 責任者及び従業員が、国内のすべての輸出管理関連 法規、ポリシー、管理リストについて、また、これらが改 正・変更された際には公表後直ちに、正しい認識が持 てるようトレーニング及び教育を実施する。全従業員、 特に新入社員、営業部門や輸出関連部門あるいは技 術移転に関与する部署の社員を対象に、定期的かつ 継続的なトレーニング・教育を実施する。また、外部イ ベントへの参加を含む社内トレーニング実施の記録も 保管する。 7. 記録保管 輸出関連文書を、国内の輸出管理規制に基づき一定 期間保管する。これら輸出関連文書には、輸出許可 証、エンドユース証明書、コマーシャルインボイス、 通関書類、製品スペックシート、電子決済の記録等が 含まれる。これらの記録については、追跡調査可能な 形での保管が求められる。 8. 報告及び是正措置 輸出管理規制違反あるいはICP手順違反(既知の 違反あるいは違反の疑い)が発覚した場合には、 迅速にその旨をCECOまたはECMに報告する仕組み を一連の手順に組み込む必要がある。同ガイドライン では、CECOまたはECMが、輸出管理の法令違反の発 生を確認した際には、迅速に所轄官庁に報告すること を推奨している。また、CECOまたはECMには、今後同 様の違反発生が防止できるよう、是正措置を講ずるこ とが求められている。 同ガイドラインは、企業の規模、組織構成及び個々の輸出 者の状況により、ICPの作成・実施方法が異なるであろう ことを認めつつも、適切に文書化され監査可能なポリシー と手順の整備こそが、いかなる輸出コンプライアンスプロ グラムにおいても重要な鍵を握るということを強調してい ます。
結論
ワッセナーのICPベストプラクティス・ガイドラインは、輸出 者にとって歓迎すべき指針であると言えるでしょう。各国 当局が公示する指針ほど詳細ではなく(米国BISのガイダ ンスが200ページなのに対し、ワッセナーのガイドライン はわずか5ページ)、また、法的効力を有するものでもあり ませんが、今回のガイドラインにより、輸出者が輸出コン プライアンス内部規程の妥当性を検証する際に参照でき る国際的な枠組みが提供されたからです。輸出企業は、 自社とその貿易パートナーの現行の輸出コンプライアン スプログラムを再検討し、今回新たに公表された国際的に 容認された基準を満たしているか確認する必要があるで しょう。ブラジル
2014
年
FIFA
ワールドカップ及び
2016
年オリンピック
の開催国ブラジルでは、付加価値税及び関税の節減が
可能に
2014年 の 国 際 サッカー 連 盟(FIFA)ワー ルドカッ プ、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックといった大 規模スポーツイベント主催に向け準備中のブラジルでは、 「競争」が過熱しています。しかし、これはスポーツ選手た ちの話ではありません。この2つのイベントによって期待 されるブラジルの成長と景気刺激策の恩恵を享受しよう と、外国企業の対ブラジル投資が過熱しています。こうし たイベントに備え、港湾・空港のキャパシティー拡張や利便 性向上など、国内インフラ整備に向けた政策をブラジル 政府が打ち出したことで、同国の経済見通しは明るいもの となっています。こうした状況を背景に、ブラジルは様々な 魅力的な投資の機会を提供しています。 同国の連邦政府と州政府は、新規ブラジル投資を支える 民間部門に向け、様々な財政的インセンティブを発表して います。具体的には、間接税の負担を削減するための様々 な特別プログラムがすでに決定しています。本稿では、 このような税務上のインセンティブプログラムの一部を取 り上げています。ブラジルで間もなく開催されるこれらス ポーツのビッグイベントに何らかの投資プロジェクトを予 定している企業は、その実施前に、これらのインセンティブ を検討する必要があります。2014
年
FIFA
ワールドカップに向けた
間接税関連の優遇措置
2014年FIFAワールドカップの試合がブラジル全土27 州のうち12州で行われることを考慮し、連邦政府はRECOPA(Regime Especial de Tributação para Construção, Ampliação, Reforma ou Modernização de Estádios de Futebol)という名称の特別減税制度を 急きょ制定しました。2010年10月に発表された同制 度の目的は、プロジェクトに係る税負担を軽減すること で、FIFA2013コンフェデレーションズカップ及び2014年 ワールドカップの各イベントに向けた国内のサッカースタ ジアム建設・近代化投資プロジェクトを促進することです。 特に同制度では、ブラジルのスタジアム関連の建設 プロジェクト用に輸入または現地調達される機械類及び 材料に課せられる連邦税(輸入関税、連邦付加価値税: VAT)、ならびに社会統合基金(PIS)と社会保険融資負担金 (COFIN))の一時停止措置が認められています。しかし、 こうした材料に課せられる輸入関税の一時停止措置が認 められるのは、当該物品がブラジル国内で調達できない (つまり、当該物品と同様の現地生産品がない)場合に限 られます。一方、PIS/COFINの免税措置は、輸入して現地 で提供する役務にも適用可能と考えられます。 スタジアムプロジェクトにおいて当該物品が使用された 場合、この課税一時停止措置は0%への税率引下げに転換 され、実質的に納税者の税負担はなくなります。しかし、当 該物品がスタジアムプロジェクト以外で利用された場合 は、一時停止措置を受けていた税金に加え、相応の罰金と 延滞税が課せられることになります。 同制度の利用希望者は、RECOPAに基づき連邦内国歳入 庁に承認申請を行う必要があります。同プログラムに参加 するには、2012年12月31日までに承認を受けなければ なりません。また、RECOPAによる特典は、2014年6月30 日をもって終了します。 RECOPAに基づき、FIFAは、直接サービスプロバイダー として特定の企業を指定することができます。指定され た企業は、一定の要件を満たせば、非耐久消費財及び耐 久消費財の輸入に伴い発生する輸入関税及び追加料金 (SISCOMEX、AFRMM、CIDE等)の免除等の優遇措置を 享受することができます。FIFA指定企業ではさらに、FIFA イベントに直接関連する活動部分について、法人税及び 社会負担金が免除となり、また、その他様々な直接税や売 上税の免税措置も適用されます。 州付加価値税である商品流通サービス税(ICMS))につい て、ブラジルの各州は、ICMS合意No.108/2008に署名 しました。これにより、2014年FIFAワールドカップに向け た国内のサッカースタジアムの建設・近代化に使用される 物品の売買取引を免税とする権限が各州に付与されるこ とになります。現地で調達できない(つまり、同様の現地 生産品がない)物品が連邦政府の輸入関税免除の対象で あることから、輸入品にかかるICMSの免税も、現地で調達 できない(つまり、同様の現地生産品がない)物品に限定 されることになります。
米州
連邦政府の輸入関税が免除となることから、もうひとつの
ICMS合意No.39/2009でも、FIFA主催事業またはFIFA
関連事業に関連し、一時輸入の特別制度を利用して取引 された物品を対象に、ICMSを免除する権限を各州に与え ています。 投資プロジェクトを計画している企業は、FIFAワールド カップの試合を開催する各地方自治体が提供する減税策 について、詳しく調査すべきでしょう。
2016
年オリンピックに向けた
間接税関連の優遇措置
連邦政府は、現在に至るまで、オリンピックのイベントに直 接関連する減税の仕組みを一切発表していません。にも かかわらず、ブラジル各州は、連邦政府の減税プログラム の対象になると予測される適格物品や役務について、州 のICMSを免税とする方向ですでに足並みをそろえていま す。このような州政府の動きから、連邦政府のプログラム も、おそらくはFIFAのイベント向けの各種インセンティブ の効果が明らかになった後に公表されるのではないかと 考えられます。 オリンピックの開催地はリオデジャネイロですが、ICMS 合意No.90/2011では、オリンピック及びパラリンピック 開催委員会によるエネルギーの確保、及び同委員会によ る都市間・州間交通手段及び通信サービスの利用にまで ICMS一時停止措置を拡大適用しています。最後に
ブラジルは海外からの投資誘致に非常に熱心な国です が、FIFA2014年ワールドカップと2016年オリンピックは、 まさに、ブラジルで事業展開を検討する世界中の企業を 惹きつける大規模スポーツイベントです。これらのイベン トに向けての準備は着々と進行しています。今こそ、関連 する投資プロジェクトについて税務プランニングを開始 すべきでしょう。先を読むプランニングにより、ブラジルで の重い税負担を削減できる機会を特定し、また、税優遇 措置の利用の際に求められる厳しい諸要件のコンプライ アンスを高め、適切に計画を実行することが可能となるの です。カナダ
カナダ国境サービス庁の
最新「国家通商コンプライアンス最優先リスト」
2012年1月、カナダ国境サービス庁(CBSA)は、同国の通 商コンプライアンス重要品目の最新リスト(NPs)を発表し ました。NPsは、リスクベース手法に基づき定期的(通常は 6カ月ごと)に決定されます。また、CBSAがランダム検査 により関税コンプライアンスをモニタリングしている通常 の分野とは別に、特に関心の高い分野から構成されてい ます。NP
調査のターゲット
CBSAは、以下の製品分野とそれに対応する重点的コンプ ライアンス分野をNP調査のターゲットとして特定してい ます。関税分類
HS
コード
廃禽(Spent Fowl) (新) 02.07、16.01及び16.02項に属する様々な物品 鶏肉または七面鳥肉のうち、特定要件を満たすもの(Specially Defined Mixtures) (新) 1602.31.11.10、1602.31.11.90及び1602.32.92.10
ペット用がん具(新) 9503.00.90 海草(新) 1212.20.00 鋼鉄製のTポスト(新) 7308.40.00.90 生鮮の切花(新) 0603.19.00.00 安全帽子 (新) 6506.10.10.90
関税評価
HS
コード
自動車、バス、トラック用に使用するゴム製の空気タイヤ 40.11項に属する様々な物品 ビデオの記録用機器(第2ラウンド) 8521.90.90.00 液体ポンプ 8413.11.10、 8413.19.10、 8413.70.99 身辺用細貨類 71.13項に属する様々な物品 生鮮の切花(新) 0603.19.00.00原産国
HS
コード
植物性油脂(第2ラウンド) 1516.20.90.41、1517.90.99.00 液体ポンプ 8413.11.10、 8413.19.10、 8413.70.99 ココアパウダー 1805.00.00、1806.10.10、1806.10.90 NP製品を輸入している企業は、輸入事後調査または問い 合わせ等の形で、今後は税関の精査がさらに強化される との認識を持つことが必要です。また、現行のNPsに掲載 されていない物品や産業を取り扱う輸入者も安心はでき ません。なぜなら、一般にCBSAによる調査は、NPsで特定 された分野とそうでない分野の双方について実施される からです。CBSA
による
通商コンプライアンス調査への備え
過去数年間で、CBSAは、世界の多くの国・地域の税関当局 と同様に、税関のリスク評価に基づく定期的なレビュー システムの導入に至りました。それ以前の税関当局では通 常、輸入品を通関ごとに評価し、主としてランダムな「抜き 取り検査」を実施していました。しかし、国際貿易量の増大 と限られた予算を鑑み、CBSAも他の庁と同様、取引ベー スの評価から、調査ターゲットとなるリスクの高い業界、市 場セグメント及び輸入者を特定することにフォーカスする ようになりました。NPリストでは、これらのターゲットが特 定されています。 現在は、様々な分野の専門家からなる調査チームによる 現地検査が一般的に実施されています。調査官は帳簿や 記録を輸入申告書と照らし合わせて検証し、関税関連の 各種法令・規制に対するコンプライアンスのレベルを特定 します。さらに、購入、受領及び会計データを含む内部報 告システムを精査することで、情報が組織内でどのように 共有されているかを確認します。 多くの輸入者は、このような調査を侵略的と感じている ようですが、特に備えを怠っていた輸入者にとっては、時 間と費用のかかるものになりかねません。基本的に、最終 的な評価は、輸入者が適切な注意をもって輸出入活動を 行っているか否かに基づき下されます。罰則は時に非常に 厳しいものになりかねず、これを回避するため、輸入者は、 コンプライアンス対策、確実な手順、合理的なケアプログ ラムを確立しておく必要があります。 関税コンプライアンス確保のために事前の対応を怠 らない企業を対象に、CBSAは関税自己評価プログラム (Customs Self-Assessment Program)を制定してい ます。これは、米国の輸入者自己評価プログラムと同様の ものです。効果的なコンプライアンスプログラムを確立 している企業は、このプログラムを活用することで、要約 レポート(輸入貨物に係る帳簿等)を提出することで、納税 申告前の貨物の引取が可能となる等の特典が付与される 可能性があります。CBSAが国境で物品検査や現地検査 を行う権限は引き続き維持されますが、同プログラムの下 で十分なシステムを実施・保持し、コンプライアンス確保に 時間と費用の投資を惜しまない企業は、迅速な通関等に より、他の輸入者との比較において競争優位性が確保さ れるなど、その努力に見合った恩恵を享受することができ ます。さらにこうした企業は、健全なプロセスとシステムが 整備されていることから、いざという時にも、万全の態勢 で調査に対処することができるのです。 CBSAにとっても、現地調査は法執行の新しい形です。こう した調査には費用がかかりますが、避けることはできま せん。検査の影響を緩和するためにも、各企業には健全な コンプライアンスプログラムを確立しておくことを強く推 奨します。自社の製品がNPリストに掲載されている企業 には、事後調査のリスクが増大した旨がすでに通知されて います。しかし、ターゲットとされている企業だけでなく、 すべての輸入者が相応の準備を整えておくべきでしょう。メキシコは、同国の認定企業制度(Empresa Certificada) を再構築し、新認定企業スキーム(Nuevo Esquema de Empresa Certificada: NEEC)という新たな認定事業者 (AEO)制度を創設しました。NEECは、貿易細則(GFTR) 第3.8.1則の改正によって制定され、2012年1月2日付け で施行されました。 NEECは、既存の認定企業制度に、新たな項目としてサプ ライ・チェーンにおける安全対策を加えるものであり、米 国の「テロ行為防止のための税関産業界提携プログラム (C-TPAT)」、カナダの「PIP(Partners in Protection)制 度」、及び世界の他のAEO制度と同様の制度で、世界税関 機構の「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのSAFE 基準の枠組み」にも整合しています。 この新しいプログラムでは、サプライ・チェーンの安全性と 関税コンプライアンスに関するさらに厳しい条件を満たし たNEEC企業だけに与えられる、特別な関税上の特典が用 意されています。したがって、NEEC-AEO制度において認 定を受けた企業には、基本認定で認められている地位より もさらに高い、「信頼できる貿易業者」としての地位が付与 されることになります。
AEO
認定に課せられる、
さらに厳しい条件
第3.8.1則の「L」に定められているように、NEEC-AEO制 度では、関税コンプライアンス及び安全性に関する義務 について、さらに厳しい要件を満たすことが求められて います。企業は、自社の納税義務履行が適正であるとの 判定を得る、税関総局の税関規則課(Central Regulatory Administration: CRA)に対し書面による申請を行う等、 基本的な認定企業要件を今後も満たしていく必要があり ます。 NECC-AEO認定を獲得するには、企業は特に、以下の義務 を満たさなければなりません。 • 税関総局の国際課(Central Administration of International Affairs: CAIA)より、NEEC企業として 適正であるとの判定を得ていること • 申請前の少なくとも5年間、対外貿易事業を行ってい ること • 「企業プロフィール」に記載された安全性及び関税等 についての特定項目を遵守していること 「企業プロフィール」は、正確に記入され、かつ、自社の 標準業務手順や文書化手順についての情報を包含して いることが求められます。これらの手順には、サプライ・ チェーンにおける安全性計画、内部監査、施設の物理的安 全性、物理的アクセスコントロール、通商パートナー選定 基準、及び物流プロセスマップなどが含まれます。また、企 業は、税関総局と自社の間の連絡係となる窓口を指定し なければなりません。 CAIAへNEEC判定を要請し回答が出されるまでに、最長 で100営業日を要する可能性があります。CAIAからの回 答取得後、NEEC-AEO制度参加の申請をCRAに行います が、この最終認可が発行されるまで、さらに40営業日を要 する可能性があります。今後
NEEC-AEO
認定企業に限定して
付与される特典
大きな変更点として、以前はすべての認定企業によって 享受されていた主要な特典の一部が、今後はAEO制度に 基づき事業を営むNEEC認定企業のみに限定されるよう になります。これらの特典には以下が含まれています。 • 事後調査開始後の修正申告 • 専用(Express)レーンでの通関 • 制度変更後の産業分野別生産促進プログラム(PRO SEC)の特恵関税率の使用 • 外国企業所有貨物の所有権をメキシコ内購入者へ バーチャルに移転(IMMEXオペレーションに適用)メキシコ
メキシコの新たな認定事業者制度
IMMEX
企業への影響
IMMEX企業が失う(または、AEO認定企業が獲得する) 最も重要な特典は、メキシコ内購入者への物品のバー チャル移転制度でしょう。NEEC実施以前、GFTR第3.8.4 則のSection VIに基づき、IMMEX制度に参加するすべて の認定企業は、一時輸入した物品または完成品を、確定輸 入された物品としてメキシコ内購入者に移転することが 認められていました。このオペレーションは、物品を物理的 に輸出することなく、メキシコ内でそのまま納品すること ができる「バーチャル」輸出入プロセスを通じて実施され てきたものです。 関税上、メキシコ内購入者へ物品をバーチャルに移転する ことによって、IMMEX企業は関税の支払いを延期するこ とができ、さらには免除となる可能性もあります。ただし、 これに関連して、付加価値税の扱いが修正されています ので注意が必要です。(TradeWatch本号の「IMMEXバー チャルオペレーションの新しい付加価値税(VAT)規則が 発効:新たなインボイス要件が適用に」も併せてお読みく ださい。) 一方、メキシコ内購入者は、バーチャル移転制度の下で、 IMMEX企業が製造した物品を確定輸入する際に、メキ シコが締結する各FTAの特恵関税率を適用することによ り、輸入関税の影響を軽減することが可能でした(すなわ ち、IMMEX制度に基づきメキシコ国内で製造された物品 の取引に等しい)。1 NEEC制度の発効により、メキシコ内購入者への物品の バーチャル移転は、AEO制度の下で事業を営むNEEC企 業のみに許可されるため、現在IMMEX企業の間で一般的 となっている当該プロセスは、今後その利用が制限される ことになります。この特典を失うことなく、引き続きそのメ リットを享受するためには、今回の新制度に参加すること が不可欠と考えられます。既存の認定企業
(
Empresa Certificada
)への影響
2012年1月2日以前に認可を受けた認定企業の場合、通 常の有効期間は1年で、その後1年ごとの更新となります。 したがって、これらの企業は、現行の認可が失効するまで は、既存の認定制度の特典をすべて享受することができ ると考えられます。しかし、これらの企業が現在享受する特 典のすべてを今後も維持していくには、更新申請の際に NEEC-AEO制度が定める新たな参加要件を満たすことが 必要となるでしょう。 このように、メキシコで事業を営む企業は、自社の認定 企業としての認可失効日に注意を払い、更新の際にはさら に厳しい要件を受け入れる備えをしておく必要があるで しょう。結論
メキシコのAEO認定にNEEC制度が導入されたことで、 これまで以上に厳しいNEEC要件を満たしたメキシコの 輸出入業者には、関税上のメリットという大きな競争優 位性がもたらされることになります。さらに、メキシコは C-TPATなどの他のAEO制度との相互承認を進めている ため、さらなるメリットがサプライ・チェーン全体にもたら されるでしょう。また、サプライ・チェーンの安全性や関税 コンプライアンスに関して、同じように高い標準を設定し ている事業パートナーとは、今後さらに取引の機会が増え てゆくことが期待できます。 1 経済省貿易細則第 3.2.29則。一時延期の後、認定IMMEX企業の「バーチャルオペレー ション」を対象とした付加価値税(VAT)の新規則が施行さ れました。その結果、外国企業が認定IMMEX企業によって 組み立てられた物品をバーチャル輸出制度の活用により メキシコ市場で販売しても、輸出品に適用されるVAT税 率0%を利用することができなくなりました。このような取 引は、販売及び確定輸入の両方においてVAT課税対象と なったことから、メキシコ内購入者が支払ったVATを回収 するには、新たに課せられる重要なインボイス要件を満た さなければなりません。
背景
認定企業(Empresa Certificada)制度(現在はNEEC。同 様にAEO基準を満たすことが要求される2)の下で認定さ れたIMMEX企業だけが享受できる税優遇措置のひとつ に「バーチャル輸出」と呼ばれる貿易メカニズムがありま す。外国企業は、このバーチャル輸出メカニズムの活用に より、メキシコのIMMEX企業が一時輸入した物品を、いか なる関税制度にも関与していない(すなわち、IMMEX企 業でも認定企業でもない)メキシコ内の最終顧客に販売 することができます。 昨年の貿易細則(GFTR)改正以前は、IMMEX企業によっ て製造された製品のメキシコ国内顧客への販売は輸出と みなされ、輸出販売と同様のVAT税率が適用されていま した。言い換えれば、通常の国内取引に課せられるVAT税 率16%ではなく、輸出品に適用される税率0%が、これらの 取引に適用されていたのです。 しかし、2011年9月のTradeWatchで報告したように、先 般のGFTR改正により、認定IMMEX企業によって組み立て られた物品を外国企業がメキシコ国内市場で販売した場 合、これを輸出ではなくVATの対象となる販売として扱う、 とする条項が盛り込まれました。その結果、このように有 利なVAT上の扱いが事実上消失することとなったのです。
VAT
二重課税の問題
外国企業(販売者)がメキシコにおいて納税者として登録 されていない場合、この新しい規則の下では、メキシコ国 内の顧客がVATに相当する額を源泉で支払わなければな りません。その結果、物品のメキシコへの確定輸入及びメ キシコ内での販売の両方においてVAT課税対象となり、 実質的にはVATが二重に課せられてしまいます。 原則、メキシコ国内の物品購入者は、控除や還付制度を通 して支払ったVATを回収することが可能ですが、購入者側 に生じるキャッシュフロー上の重大な影響や手続き負担が 主な懸念事項となっていました。 また、現実には、メキシコ国内の購入者が、このような取引 で生じたVATを回収しようとしても、そこには限界があり ました。外国企業によって発行されたインボイスは、メキシ コ税法に基づく書式で作成されていなかったために、有効 とみなされないケースが多かったのです。 このような状況から、同新規則の施行は一時延期となり、 その間、メキシコの税務当局は、メキシコ税法(連邦租税 通則、Código Fiscal de la Federación)を改正し、バー チャルIMMEX移転の文書要件に関する規則を制定しま した。IMMEX
バーチャルオペレーションの新しい付加価値税
(
VAT
)規則が発効:
新たなインボイス要件が適用に
インボイスに関する新たな要件
2012年1月1日発効のメキシコ税法暫定規則(税務雑 則、Resolución Miscelánea Fiscal)第I.2.8.3.1.5則に は、外国企業が発行するインボイスに基づきメキシコ内購 入者がVATの控除または還付を請求する際に、当該イン ボイスに求められる最低限の要件が定められています。 同規則に基づき、今後認定IMMEX企業が組み立てた製品 をメキシコ国内の顧客へ販売する際、外国企業が発行す るインボイスは、下記の内容の記載があるもののみ、メキ シコの税務上有効であるとみなされることになります。 • 外国のインボイス発行者の法人名、住所、及び納税者番 号(またはそれに相当するもの) • 発行場所及び日付 • インボイス発行対象であるメキシコ内購入者の納税者 番号(Registro Federal del Contribuyente)
• 当該インボイスに記載された取引によって移転される 物品の数量、測定単位、及びその特徴に関する記述 • 単価(数字での記載)及び合計価格(数字または文字で の記載) • 当該取引に関して合意された合計価格の支払い回数 (1回または分割払い) • 分割払いの場合、取引総額を含め、取引総額が分割払 いで支払われることの記載。また、上述の条件を満たす インボイスが各回発行される旨の記載 • それぞれの価格が電子資金振替、小切手、デビットカー ドまたはクレジットカードで支払われていることを示す ための、当該口座またはカード番号の少なくとも下4桁 上記の内容がインボイスに記載されていれば、VAT回収 の申請時に、その有効性の裏付けとすることができます。 ただし、これら記載内容の確認は、メキシコ内購入者の責 任であることをしっかりと認識する必要があるでしょう。し たがって、メキシコ内購入者は、外国企業と協力し、上記の インボイスに関する要件が満たされるよう努めなければ なりません。 最後に、今回のバーチャルオペレーションを対象とした新 規VAT規則の適用は、AEO基準の厳格化という点からも、 認定IMMEX企業にとっては非常に残念な展開となりまし た。しかしながら、バーチャル輸出による国内市場向け販 売は、IMMEX企業だけに許された強みであり、同メカニズ ムは今後も認定IMMEX企業に競争優位性をもたらすも のと考えられます。一方で、メキシコ内購入者側に発生す る手続上の負担やキャッシュフロー上の課題については、 これらが今後販売取引にどのような影響を及ぼすか展開 を見守る必要があります。
メキシコが新たに署名した自由貿易協定
2012年1月9日、メキシコ政府は、新たな自由貿易協定 (FTA)を批准する2つの政令を公布しました。これらの協 定がメキシコの特恵貿易ネットワークに加わったことで、 ペルー及び中米におけるビジネスチャンスの拡大が期待 されます。ペルーとの自由貿易協定(
Commercial
Integration Agreement
)
メキシコ、ペルー間の自由貿易協定は、両国が以前に 締結した経済補完協定第8号を拡大したものです。今回 の新しい協定では、さらに広範囲の製品に対して特恵関 税が適用され、また、数ある条項の中でも特に、サービス 貿易、紛争解決メカニズム、及び革新的な原産地規則の 累積メカニズムについて規定されています。2011年4月 6日にメキシコ、ペルーの両国によって署名された同協定 は、2011年12月15日にメキシコで批准され、2012年2 月1日に発効しました。 (TradeWatch本号の「2012年中にペルーで新たに7つ の自由貿易協定が発効」も併せてお読みください。)メキシコ−中米自由貿易協定
メキシコ−中米FTAは、(i)メキシコとコスタリカ、(ii)メキ シコとニカラグア、(iii)メキシコとノーザントライアングル (ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル)と、それぞれ 個別に締結した既存のFTAを一本化したものです。専門 的な交渉が2011年10月20日に終了し、その1ヵ月後に 同協定は署名されました。物とサービスの貿易及び投資 を促進するための単一の規制枠組みを当該6ヵ国間にも たらしたという点で、同FTAは重要な意味をもちます。メ キシコ政府は、同FTAを昨年12月中旬に批准し、これを最 近の政令で公布しました。同FTAは、中米諸国による批准 と、その旨を記した外交文書の取り交わしをもって発効と なります。 これらの新たなFTAは、企業のサプライ・チェーンに関税 削減の機会をもたらすものですが、その機会を享受する にあたって、企業には原産地規則等の特定要件を満たす ことが求められているため、同FTAによる費用削減の可能 性を評価する際には、各FTAが課す要件についても検討 することが重要となります。2012年中に、ペルーでは7つの新たな自由貿易協定 (FTA)が発効します。これらのFTAの発効により、ペルー が締結する二国間・地域貿易協定の数はさらに増え、世界 の様々な市場に特恵待遇でアクセスする機会を模索する 企業にとっては、さらなる関税プランニングのチャンスと なります。
拡大を続けるペルーの
FTA
ネットワーク
これら新規FTAは、タイ、メキシコ、日本、欧州連合、パナ マ、コスタリカ、グアテマラといった世界の多様な国・地域 と締結されるものです。ペルーはすでに、米国との貿易 促進協定をはじめ、チリ、中国、カナダ、欧州自由貿易連 合(EFTA)3、シンガポール、韓国等の国・地域と締結した FTA等からなる広範な特恵貿易協定のネットワークを有し ていますが、そこにさらに今回の新規FTAが加わります。 さらに、ペルーは、MERCOSUR(アルゼンチン、ブラジル、 ウルグアイ、パラグアイ)及びキューバと経済補完協定を 締結しており、また、アンデス共同体関税同盟の加盟国で もあります。 その他にペルーは、現在、ホンジュラス、エルサルバドル 及びベネズエラ(アンデス共同体の下で適用された関税 上のメリットを共同体脱退後も維持)とFTA締結に向け た交渉を進めており、また、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP)の交渉にも参加しています(交渉参加国はオース トラリア、ブルネイ・ダルサラーム、チリ、米国、マレーシア、 ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム等)。加 えて、世界貿易機関の多国間貿易自由化交渉であるドー ハラウンドの一環としての交渉も進められています。新たな
FTA
の概要
以下の表は、新たに発効するFTAの概略を示したもので す。注目すべきは、これらのFTAの多くが、物の貿易だけで なく税関協力、投資、サービス、知的財産等の幅広い分野 における自由化・協力に関する取り決めをしていること です。 直送基準、原産地証明の形式要件、原産地規則及びその 他の条件はFTAごとに異なりますが、これらの要件は、物 品をペルーに輸入する前に満たされていなければなりま せん。遵守を怠った場合、当該物品には特恵待遇が適用さ れませんので注意が必要です。さらに、(事後調査などによ って)輸入後にノンコンプライアンスが発覚した場合、ペ ルーの輸入者には、納付不足となっている関税や税金及 び延滞金の支払いに加え、未払い関税及び税金の200% に相当する罰金が科されます。 ペルーはすでに、米国と締結したペルーにとって初めて のFTA発効に伴い、関税評価や関税分類に関する事前 教示制度、国境対策、その他様々な貿易促進対策を実施 し、FTA実施時に課題となり得る問題への対策を打ち出し ています。これらの施策は、ペルー関税法及び付随規則の 規定に従い、ペルーへの輸入品すべてにすでに適用され ています。 ペルーにとって、1年の間に7つもの新たなFTAが発効す るのは初めてのことです。上述のような特恵貿易のメリッ トを享受しようとする際には、原産資格やその他のFTA特 有の要件が輸入前に満たされていることを確認するよう 十分な注意を払うべきでしょう。ペルー
2012
年中に、ペルーで
新たに
7
つの自由貿易協定が発効
3 EFTA加盟国との間では、唯一ノルウェーとのFTAが発効していなかったが、今年中には発効する見通しである。新しい
FTA
の概要
FTA
発効日
関税上のメリット概要
主な輸出品
ペルー ・ タイ 2011年12月31日 全タリフラインの70%に適用される関税 が5年以内に撤廃される • • タイの自動車、及び電化製品ペルーの農産品、水産品、及び鉱物 ペルー ・ メキシコ 2012年2月1日 12,000のペルーのタリフラインに適用 される関税が10年以内に撤廃される • • メキシコの消費財、及び技術ペルーの繊維製品及び衣料、農産品、水産品、 並びにワイン ペルー ・ 日本 2012年3月1日 ペルーの特定のタリフライン(実際に取引 されている物品のほぼすべて)に適用され る関税が17年以内に撤廃される • 日本の自動車、電話、コンピューター、テレビ、 及び電子機器 • ペルーの農産品、水産品、及び鉱物 ペルー ・ 欧州連合 2012年前半(推定) 特定のタリフラインに適用される関税が 11年以内に撤廃される • • EU の消費財、及び技術ペルーの繊維製品及び衣料、並びに農産品 (バナナ及び水産品には特別規制が適用される) ペルー ・ コスタリカ 2012年前半(推定) 両国間で取引される物品の80%の関税が 5年以内に撤廃される • コスタリカの医薬品、及び電気機器(スイッチ、接合素子、導体など) • ペルーの農産品及び水産品 ペルー ・ パナマ 2012年前半(推定) 両国間で取引される物品の90%以上の 関税が5年以内に撤廃される • • パナマの原油、医薬品、宝石、及び本ペルーの農産品 ペルー ・ グアテマラ 2012年前半(推定) 両国間で取引される物品の81%以上の 関税が5年以内に撤廃される • グアテマラの鑑賞魚、化学薬品、獣医薬、ニス、染料、インク、燃料、及び宝石 • ペルーの農産品、殺虫剤、合成洗剤、並びに衣料米国
米税関、移転価格調整金を受け入れる
新たな方針を提案
米国税関国境警備局(CBP)は、2011年9月に初めて提案 された移転価格調整金の関税上の取扱いに関する方針 の採用に向け一歩前進しました。同方針は、一定の条件が 満たされた場合、移転価格調整金が発生する場合におい ても、関税評価上取引価額の利用を認めるというもの です。 去年9月、CBPは、「取引価額」の利用が認められる状況に 関するCBPの解釈を拡大するという方針変更を提案し、こ れに対するパブリックコメント募集の通知を発行しました。 具体的には、同提案の中でCBPは、移転価格ポリシーを 客観的な規定であるとみなし、さらに、移転価格ポリシー に基づき価格が下方修正された場合、関税の過払額の還 付が認められる可能性にも言及しました。また、同通知に は、必須となる特定要件の概要も示されました。(詳細は TradeWatchの2011年12月号をご参照ください)。 CBPは、過去に発行したルーリングを取り消し、新しい ルーリングを発行することにより、方針の変更を採択する ことにしました。新しいルーリングの内容は、関税法に基づ く具体的な検証手法を適用した場合にも移転価格ポリ シーに基づく価格が独立企業間価格であることが証明さ れれば、当該移転価格ポリシーに基づき実施された輸入 後の関税評価額の調整を認めるというものです。CBPは、 同提案に対し当初寄せられたコメントの多くは肯定的で あったと述べています。この方針転換が採用されれば、 移転価格の事後調整を定期的に行っている輸入業者に とっては、さらに柔軟な対応が可能になります。輸入業者への影響
製品を関連者から購入し米国に輸入している企業の多く は、目標利益率に基づいて移転価格を設定しています。 この手法では、ある一定の期間(会計年度であることが多 い)の財務実績がターゲットとする利益率のレンジに収ま っている場合、調整は行われませんが、利益率がターゲッ トとするレンジ外である場合は、利益率をレンジ内に収め るために遡及的に購入価格が調整されます。今回のCBP の動きは、このような手法を採用している輸入者が、調 整の入る可能性のある購入価格を取引価額として扱い、 上方・下方いずれかの修正が入った場合にその調整額を 「CBP Reconciliation Program」でCBPに報告すること を可能にするものであり、輸入者にとっては、明るい見通 しが開けたことになります。 この新しいCBPの方針によってメリットを享受できる可能 性のある輸入業者は、以下の3つの対応を考慮するべきで しょう。 1. 関税関連の証明書類を準備すること CBPの提案では、関税上も適切とされる移転価格に 基づいた調整の報告に限定されており、CBPが移転 価格の分析結果をそのまま関税評価上の証明として 受け入れることを意味しているわけではありません。 今回提案された方針により、関税が還付される調整 も含む調整の実施が容易になることから、納税者に とって、これまで以上に移転価格の分析結果を関税 法に基づく検証結果で補完することが重要となりま す。CBPは、納税者自身が行った移転価格の調査。分 析だけでは、関税評価上の規則を満たすことは難しい という見解を明らかにしています。 2. Reconciliation Programの申請を行うこと CBPは、今回の新たな提案はCBPのReconciliation Programを利用している輸入者に適用されることを 想定したものだとしています。同プログラムにより輸 入者は、輸入時に暫定価額を申告し、輸入後21ヵ月以 内に最終価額への調整を行うことができます。輸入者 は、輸入前にこのReconciliation Program使用の承 認を受けていなければなりません。移転価格調整を検 討している輸入者は、今回の新しい方針のメリットを 享受するために、Reconciliationの申請を行うべきで しょう。 3. 移転価格ポリシーの補完を行うこと CBPの提案する新しい方針に関するルーリングには、 輸入業者によって示されるべき5つの具体的な基準が 記載されています。これらの基準の一部(関税上調整 の対象となる製品の特定等)は現行の移転価格ポリ シーでは明確に示されていない場合もあるため、移転 価格ポリシーをこうした関税上の基準にも適合するよ うに修正することが輸入者にとって有利になる可能性 があります。2012年1月1日に施行されたカリフォルニア州サプライ・ チェーンの透明性に関する法律(CTSC法)は、カリフォル ニア州外からの注目も強く集めています。CTSC法は、製 品のサプライ・チェーンにおいて、人身売買や奴隷的労働 の防止の観点から公正な貿易を督励しようとするもので す。同法は、カリフォルニア州の小売業及び製造業に従事 する大企業(世界中に及び総売上が年一億ドルを超える 企業)に対し、その防止策を自社のウェブサイトにおいて 消費者に開示することを求めています。
開示要件
CTSC法の対象となる企業には、以下の実施状況を開示す ることが求められます。 • 人身売買及び奴隷的労働に関して、サプライヤーの監 査を行う • 人身売買のリスクの評価及び適切な対応策をとる目的 で、製品のサプライ・チェーンを検証する • 社内における責任の基準を構築する • サプライ・チェーンの運営管理に直接携わる従業員及び 経営陣に対し、製品のサプライ・チェーンにおけるリスク を軽減するため、人身売買及び奴隷的労働に関する教 育を行う • 製品の原材料が、事業の行われている国における人身 売買防止法に適合するものであることを証明するCTSC
法に違反した場合
同法違反に対する唯一の罰則は、州司法長官による差し 止め請求であり、請求に基づき、裁判所が企業による特定 の行為の履行または行為の差し止めを命令します。しかし ながら、多くの企業にとっては、法令違反によるレピュテー ション・リスクの方がより深刻な問題となるかもしれま せん。CTSC法違反という悪い評判によりビジネスが失わ れることが、最も懸念される影響と言えるでしょう。今後の展開
カリフォルニアでビジネスを行っているか否かに関わ らず、サプライ・チェーンにおける人身売買や奴隷的労 働のリスクに取り組む努力をしている米国企業は、一歩 先んじていると言えるでしょう。2011年8月に連邦法案 (HR2759)が提出され現在審議中ですが、同法案によれ ば、アメリカ証券取引委員会(SEC)に登録された企業はす べて、カリフォルニア州法と同様の開示義務を負うとされ ています。提出された法案は、公開企業がSECに提出する 年次報告書において、自社のサプライ・チェーンにおいて 強制労働条件や奴隷的労働、人身売買及び悪質な児童労 働の存在を特定し対処するために、その企業がその事業 年度においてとった対策を開示することを求めています。 いくつかの点において、本法案の開示要件は、カリフォル ニア州法よりも進んだものとなっています。最後に
CTSC法の対象となるか否かに関わらず、多くのグローバ ル企業は、自社のウェブサイトにおいて、企業としてのサ ステナビリティ及びサプライヤー管理責任の一環として、 責任あるサプライ・チェーン運営についての情報を掲載 しています。ウェブサイトでの情報開示に加え、いくつか の企業はさらに世界に散らばるサプライヤーとの取引に おけるサプライ・チェーンの持続可能性と信頼を維持する ために、業界団体と協力していることを顧客に表明してい ます。またある企業は、米国税関・国境警備局のサプライ・ チェーン・セキュリティ・プログラムであるテロ行為防止の ための税関産業界提携プログラム(C-TPAT)に基づく活 動を拡大し、CTSC法の要請の一部を満たすよう心がけて います。この人権問題の分野では、それが規制への対応、 あるいは自主的な取り組みであるか否か関わらす、今後よ り活発な動きが見られると予測されます。そして、CTSC法 の要件をその他のサプライ・チェーンに関する法的規制と どのように統合していくかを検討することが、ビジネスに とって重要となるでしょう。カリフォルニア州サプライ・チェーンの
透明性に関する法律
非市場経済国(
NME
)に対する
米国相殺関税法の適用性が明らかに
2012年3月12日に大統領の署名を受けた新法によ り、1930年に施行された関税法における相殺関税条項 が、非市場経済国(NME)にも適用されることが明らかと なりました。これにより、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC) による判決が覆ることとなります。GPX International Tire Corp.(GPX社)対米国政府の 裁判の2011年12月19日付け判決(2011-1107-09) の中で、CAFCは、相殺関税法は中国のようなNMEには適 用されないという判断を下しました。このGPX社のケース は、2007年の米国商務省(DOC)による決定の上訴審で あり、中国から輸入されたオフロード用タイヤにDOCが反 ダンピング措置及び相殺関税を課したことを不服とする ものです。 GPX社に係る同判決は本件で対象となった中国製のタイ ヤ以外にも大きな影響を与えるものとなりました。当時、 タイヤ以外にも相殺関税が課せられている中国製品及び ベトナム製品(ベトナムもNMEです)がありましたが、同判 決により、DOCにはNMEからのいかなる輸入にも相殺関 税を課する法的権限がないと解されるものであったから です。 しかしながら、新法によりDOCは引き続きNMEに対して相 殺関税法を適用することができるようになったため、今回 のGPX社の判決は覆りました。またこの法律は、2006年 11月20日以降の事案についても遡及して適用されます。