整備したアクシデントマネジメント策の概要 平成 4 年 7 月に通商産業省(当時)が発表した「アクシデントマネジメントの 今後の進め方について」に基づき,平成 6 年 3 月に通商産業省(当時)へ提出し た「東海第二発電所のアクシデントマネジメント検討報告書」(以下「AM検討 報告書」という。)において,アクシデントマネジメント策を整備し,平成 14 年 5 月に経済産業省に「東海第二発電所のアクシデントマネジメント整備報告書」 (以下「AM整備報告書」という。)を提出した。 AM検討報告書及びAM整備報告書で報告したアクシデントマネジメント策 について,報告書で報告する以前から整備していたアクシデントマネジメント策 と併せて第 1 表に示す。また,以下に各対策の概要を示す。 (1)原子炉停止機能に係る対策 当発電所の原子炉施設は,原子炉停止が必要となる異常時には,安全保護系 の信号により原子炉緊急停止系を作動させ,原子炉を自動停止する設計となっ ている。しかしながら,万一,原子炉の自動停止に失敗し,さらに原子炉が隔 離されると,原子炉及び格納容器が過圧される。このため,原子炉が自動停止 しない場合の対応として,従来から,手動スクラム及び原子炉水位制御による 出力の制御とほう酸水注入系の手動操作によるほう酸水の注入を並行して行う 操作の手順を定めている。 これに加え,確率論的安全評価(以下「PSA」という。)等の知見から,原 子炉停止機能を更に向上させるものとして,次のアクシデントマネジメント策 を整備している。(第 1 図参照) a. 原子炉再循環ポンプトリップ(RPT) 本アクシデントマネジメント策は,既存の原子炉緊急停止系作動回路とは 別に設置した計測制御系により異常(原子炉圧力高,原子炉水位低)を検知 し,原子炉再循環ポンプを自動でトリップさせ,原子炉の出力を低下させる ものである。原子炉再循環ポンプトリップの論理回路は,信頼性の高い多重 の論理回路構成としている。 b. 代替制御棒挿入(ARI) 本アクシデントマネジメント策は,既存の原子炉緊急停止系作動回路とは 別に設置した計測制御系により異常(原子炉圧力高,原子炉水位低)を検知 し,後備緊急停止弁とは別に設置したスクラムエアヘッダ排出弁を自動で開 放することにより,制御棒を挿入して原子炉を停止するものである。この代 替制御棒挿入の論理回路は,信頼性の高い多重の論理回路構成としている。 添付 4.1.1 (1/11)
(2)原子炉及び格納容器への注水機能に係る対策 当発電所の原子炉施設は,原子炉への注水が必要となる異常時には,安全保 護系の信号により非常用炉心冷却系(以下「ECCS」という。)及び原子炉隔 離時冷却系を自動で起動させ,原子炉へ注水する設計となっている。しかしな がら,万一,原子炉への注水に失敗した場合,炉心からの崩壊熱除去が不十分 となり,炉心損傷に至る可能性がある。さらに,原子炉が高圧に維持された状 態で炉心が損傷し,炉心溶融物の貫通により原子炉圧力容器が破損すると,炉 心溶融物が格納容器中に飛散する過程で微粒子化し,格納容器雰囲気直接加熱 が発生する可能性がある。 また,格納容器への注水が必要となる異常時には,運転員が手動で格納容器 スプレイ冷却系を起動し格納容器へ注水する設計となっているが,これに失敗 した場合,格納容器内の温度上昇等が生じる可能性がある。 このため,ECCS等が自動起動しない場合の対応として,従来から,給水 系,制御棒駆動水圧系,復水移送系及び消火系による注水,手動でのECCS 等の起動,並びに主蒸気逃がし安全弁を用いた原子炉の手動減圧及び低圧注水 操作の手順を定めている。 これに加え,PSA等の知見から,原子炉及び格納容器への注水機能を更に 向上させるものとして,次のアクシデントマネジメント策を整備している。 a. 代替注水(第 2 図参照) 本アクシデントマネジメント策は,既設の復水移送系及び消火系を有効活 用する観点より,これらの系統から残留熱除去系を介して原子炉へ注水でき るように配管の接続等を変更し,代替注水設備として利用できるようにする ことで,原子炉への注水機能を向上させるものである。また,同じ代替注水 設備によって残留熱除去系を介した格納容器へのスプレイ,ペデスタル(原 子炉圧力容器下部空間)への直接注水を可能にし,発生した蒸気のスプレイ による凝縮,ペデスタルの炉心溶融物冷却といった格納容器への注水機能を 向上させている。 この設備改造では,消火系と復水移送系の間の接続配管の設置,並びにペ デスタル部への注水配管及び流量計を設置した。なお,消火系はディーゼル 駆動のポンプを有するため,全交流電源喪失時にも使用できる。 基本的な操作の内容は,ECCS等による原子炉への注水が十分でなく, 原子炉の水位が低下していくこと,又は炉心溶融物への注水や格納容器への スプレイが十分でなく,格納容器の温度・圧力が上昇していくことを確認し 添付 4.1.1 (2/11)
た上で,代替注水設備を利用して手動で原子炉への注水や格納容器へのスプ レイを行うものである。これらの手順については,非常時運転手順書Ⅱ及び 非常時運転手順書Ⅲに記載することにより整備している。 b. 原子炉減圧の自動化(第 3 図参照) 過渡事象時に低圧での注水が可能になるように,自動で原子炉を減圧し, 原子炉への注水機能を向上させるものである。過渡事象時に高圧注水が十分 でなく原子炉水位のみ低下していく事象では,ドライウェル圧力高の信号が 発生せず,従来の設備では自動減圧系(ADS)が自動起動しない。このた め,原子炉水位低の信号発生後,主蒸気逃がし安全弁により原子炉を自動減 圧することで,このような事象においても低圧ECCS等による炉心への注 水が可能となるようにしている。 原子炉減圧の論理回路においては,多重論理構成とすることにより誤動作 を防止する設計とし,また,原子炉水位低の信号発生後,原子炉自動減圧ま でに運転員による十分な確認のため 10 分の時間遅れをもたせ,万一論理回 路に誤動作があっても減圧開始までに手動で作動を阻止できる設計として いる。 (3)格納容器からの除熱機能に係る対策 異常時には復水器により炉心の崩壊熱を除去し,復水器が使えない場合には, 残留熱除去系を手動で起動させ,格納容器から崩壊熱を除去することとしてい る。しかしながら,万一,格納容器からの除熱に失敗した場合,格納容器内の 圧力が上昇し,また,ECCSによる再循環ができなくなる可能性がある。こ のため,格納容器からの除熱に失敗し,格納容器内の圧力が上昇する場合の対 応として,従来から,格納容器スプレイ冷却系の手動起動及び換気系を用いた ベント操作の手順を定めている。 これに加え,PSA等の知見から,格納容器からの除熱機能を更に向上させ るものとして,次のアクシデントマネジメント策を整備している。 a. ドライウェル内ガス冷却装置による代替除熱 本アクシデントマネジメント策は,格納容器からの除熱が可能な既設の設 備を有効活用することにより,格納容器からの除熱機能を向上させるもので ある。 基本的な操作の内容は,残留熱除去系や格納容器スプレイ冷却系による除 熱が十分でなく,格納容器の温度・圧力が上昇していく場合に,ドライウェ ル内ガス冷却装置を手動で起動して格納容器からの除熱を行うものである。 添付 4.1.1 (3/11)
これらの手順については,非常時運転手順書Ⅱ及び非常時運転手順書Ⅲに記 載することにより整備している。 b. 残留熱除去系の復旧 本アクシデントマネジメント策は,残留熱除去系が故障した場合に,故障 箇所を同定し,保修要員が故障を復旧し,格納容器からの除熱機能を向上さ せるものである。これにより格納容器からの除熱ができない場合でも,事象 の進展が遅く時間余裕が大きいことを利用して残留熱除去系の故障を復旧 させ,格納容器からの除熱を行うことができる。これらの手順については, 故障機器復旧手順ガイドラインを制定することにより整備している。 c. 耐圧強化ベント(第 4 図参照) 本アクシデントマネジメント策は,格納容器から直接排気筒へ接続する耐 圧性を強化した格納容器ベントラインを設けることによって,格納容器過圧 防止としての減圧操作の適用範囲を広げ,格納容器からの除熱機能を向上さ せるものである。 基本的な操作の内容は,残留熱除去系や格納容器スプレイ冷却系による除 熱が十分でなく,さらに上記のアクシデントマネジメント策による事象の緩 和ができなかった場合に,格納容器の圧力が最高使用圧力を超えて上昇して いくことを確認した上で,本設備を利用して格納容器からの除熱を行うもの である。これらの手順については,非常時運転手順書Ⅱ及び非常時運転手順 書Ⅲに記載することにより整備している。 (4)安全機能のサポート機能に係る対策 外部電源喪失時には,非常用ディーゼル発電機,直流電源設備により安全機 能が確保される設計となっている。しかしながら,万一,全交流電源が供給で きない場合の対応として,従来からタービン駆動の原子炉隔離時冷却系により 炉心を冷却しつつ外部電源を復旧し,非常用ディーゼル発電機を手動起動する 操作の手順を定めている。 これに加え,PSA等の知見から,安全機能のサポート機能を更に向上させ るものとして,次のアクシデントマネジメント策を整備している。 a. 電源の融通(第 5 図参照) 本アクシデントマネジメント策は,高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機 の 480V の交流母線と 125V の直流電源予備充電器の接続ラインを設置し, 125V の直流電源を復旧し,さらに,非常用ディーゼル発電機の起動を可能と し,電源供給能力を向上させるものである。 添付 4.1.1 (4/11)
外部電源が喪失し,高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機のみが起動して いる場合に,3 区分の電源構成のメリットを活かして,非常用ディーゼル発 電機が接続されている 6.9kV 非常用母線に交流電源を融通し,必要な機器に 電源を供給するものである。また,外部電源が喪失し,高圧炉心スプレイ系 ディーゼル発電機のみが起動している場合で,かつ,直流電源が喪失してい る場合に,新たに設置した高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機の 480V 交 流電源母線と 125V の直流電源予備充電器の接続ラインを使用して,125V の 直流電源を復旧することで,非常用ディーゼル発電機の起動や,原子炉隔離 時冷却系統等の運転が可能となる。 電源融通の操作手順については,非常時運転手順書に記載することにより 整備している。 b. 非常用ディーゼル発電機の復旧 本アクシデントマネジメント策は,非常用ディーゼル発電機が故障した場 合に,故障箇所を同定し,保修要員が故障を復旧し,電源供給機能を向上さ せるものである。これにより全交流電源が喪失した場合でも,事象の進展が 遅く時間余裕が大きいことを利用して非常用ディーゼル発電機の故障を復 旧させ電源供給を行うことができる。これらの手順については,故障機器復 旧手順ガイドラインを制定することにより整備している。 添付 4.1.1 (5/11)
第 1 表 東海第二発電所で整備したアクシデントマネジメント策 機能 平成 6 年 3 月以降に整備した アクシデントマネジメント策 従来から整備している アクシデントマネジメント策 (1)原子炉停止機能 ①代替反応度制御(RPT及びARI) ①手動スクラム ②水位制御及びほう酸水注入系の手動操作 (2)原子炉及び格納容器への注水機能 ①代替注水手段(復水移送系,消火系による原子 炉・格納容器への注水手段) ②原子炉減圧の自動化 ①ECCS等の手動起動 ②原子炉の手動減圧及び低圧注水操作 ③代替注水手段(給水系,制御棒駆動水圧系,復水 移送系及び消火系による原子炉への注水手段) (3)格納容器からの除熱機能 ①格納容器からの除熱手段 ・ドライウェル内ガス冷却装置を利用した代替除熱 ・残留熱除去系の故障機器の復旧 ・格納容器ベント(耐圧強化ベント) ①格納容器スプレイ冷却系の手動起動 ②換気系を用いたベント (4)安全機能のサポート機能 ①電源供給手段 ・電源の融通(高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電 機からの 6.9kV/480V 融通) ・非常用ディーゼル発電機の故障機器の復旧 ①電源供給手段 ・外部電源の復旧及び非常用ディーゼル発電機の手 動起動 添付 4.1.1 (6/11)
第 1 図 原子炉再循環ポンプトリップ(RPT)及び代替制御棒挿入(ARI)の構成(概念図) 原子炉圧力高A 原子炉水位低(L2)A 原子炉圧力高C 原子炉水位低(L2)C 原子炉圧力高B 原子炉水位低(L2)B 原子炉圧力高D 原子炉水位低(L2)D CB-3A CB-4A CB-3B CB-4B M P M P 原子炉再循環ポンプA 制御棒挿入 スクラム ディスチャージ ボリュームへ 原子炉圧力 スクラム アキュムレータ スクラム弁 スクラム弁 スクラムパイロット弁 排気
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原子炉緊急停止系作動信号 RPT作動信号 添付 4.1.1 (7/11) 排気 手動ARI作動A 手動ARI作動B 代替反応度制御ロジック回路・
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排気 排気 排気 排気 後備緊急停止弁 ARI作動信号A ARI作動信号B 原子炉緊急停止系作動信号 ARI用電磁弁 制御用圧縮空気系 原子炉再循環ポンプB AND回路 OR回路第 2 図 代替注水(概念図) M M M M 残留熱除去系 M M M M ペデスタル注水ライン サプレッションプール ドライウェル 原子炉 圧力容器 ろ過水貯蔵 タンク 復水貯蔵 タンク 消火系 復水移送系 添付 4.1.1 (8/11) F 流量計
第 3 図 原子炉減圧の自動化(概念図) 原子炉水位低(L3)A ドライウェル圧力高A 原子炉水位低(L1)A LPCS ポンプ吐出圧確立 RHR-A ポンプ吐出圧確立 ドライウェル圧力高C 原子炉水位低(L1)C LPCS ポンプ吐出圧確立 RHR-A ポンプ吐出圧確立 A1 A2 B1 B2 時間遅れ 120 秒 時間遅れ 120 秒 ADS(A)作動信号 ADS(B)作動信号:ADS(A)と同じ論理 A1 A2 B1 B2 時間遅れ 10 分 時間遅れ 10 分 過渡時ADS(A)信号 過渡時ADS(B)信号:過渡時ADS(A)と同じ論理 過渡時ADS作動信号
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サプレッションプールへ 主蒸気逃がし安全弁(ADS用) 主蒸気管・ ・
排気 アキュムレータ アキュムレータ 不活性ガ ス系& 制御用 圧縮空 気系 不活性ガ ス系& バックアッ プ窒素 ボンベ 添付 4.1.1 (9/11) AND回路 OR回路第 4 図 耐圧強化ベント(概念図) サプレッションプール ドライウェル 原子炉 圧力容器
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AO MO MO 原子炉建屋換気系 原子炉建屋ガス処理系 AO AO AO AO・
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窒素ガスボンベ 窒素ガスボンベ ラプチャーディスク IA IA MO NC FC NC FC NC FC NC FC NC FO 排気筒 IA:制御用圧縮空気系 AO:空気作動 MO:電動 NC:通常「閉」 FO:駆動空気喪失時「開」 FC:駆動空気喪失時「閉」 添付 4.1.1 (10/11) IA IA IA第 5 図 電源の融通(概念図) 添付 4.1.1 (11/11) 予備母線2E (6.9kV) HPCS DG DG DG 非常用母線2C (6.9kV M/C) 非常用母線2D (6.9kV M/C) 非常用母線HPCS (6.9kV M/C) 非常用母線2C (480V P/C) 非常用母線2D (480V P/C) 非常用母線 (480V MCC2C-6) 非常用母線 (480V MCC2D-6) 非常用母線 (480V MCC HPCS) 蓄電池 蓄電池 予備充電器 充電器 充電器 125V 直流母線 125V 直流母線 蓄電池 充電器 125V 直流母線 変圧器 遮断器(M/C,P/C) 遮断器(MCC) NFB 設備追加 Aルート Bルート Aルート:高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機(HPCS DG)から 6.9kV の交流電源を融通す る。(通常運転時は,遮断器に設けられたインターロックによりHPCSの 6.9kV 非常用母 線と予備母線2Eは接続できない。) Bルート:HPCS DGから予備充電器を介して直流電源を融通する。(予備充電器の交流入力電 源NFBは,キーインターロックにより1系統のみの選択投入構成で分離されている。)
添付 4.2.1 (1/7) 緊急安全対策について 平成 23 年 3 月 30 日に経済産業省から当社に対して発出された「平成 23 年福島第 一・第二原子力発電所事故を踏まえた他の発電所の緊急安全対策の実施について(指 示)」(平成 23・03・28 原第 7 号)を受け,東海第二発電所では,福島第一原子力発 電所事故を踏まえ,津波によって 3 つの機能(交流電源を供給するすべての設備の 機能,海水を使用して原子炉施設を冷却するすべての設備の機能及び使用済燃料プ ールを冷却するすべての設備の機能)を喪失したとしても,炉心損傷及び使用済燃 料の損傷を防止し,放射性物質の放出を抑制しつつ,原子炉施設の冷却機能の回復 を図るための緊急安全対策を講じることとした。 緊急安全対策の実施状況については「平成 23 年福島第一・第二原子力発電所事故 を踏まえた緊急安全対策に係る実施状況報告書(東海第二発電所)」(以下「緊急安 全対策に係る実施状況報告書」という。)として平成 23 年 4 月に経済産業省へ提出 (平成 23 年 9 月及び 11 月に訂正版を提出)しており,その概要は以下のとおりで ある。(第 1 図,第 2 図及び第 3 図参照) 1. 短期的実施事項(すべて実施済) (1) 緊急時の電源確保 外部電源及び非常用ディーゼル発電機による電源が確保できない場合に,原 子炉隔離時冷却系による原子炉への注水や,原子炉の状態監視等を継続できる ように,電源車(低圧電源車)を配置した。 また,電源車(低圧電源車)から原子炉の状態監視計器に給電可能な受電盤 等に接続するために必要な電源ケーブルについても配置した。 (2) 緊急時の最終的な除熱機能の確保 外部電源及び非常用ディーゼル発電機による電源が確保できない場合に,原 子炉隔離時冷却系ポンプからの注水による除熱並びに代替注水を行うための水 源である復水貯蔵タンクへ,淡水タンク(ろ過水貯蔵タンク,純水貯蔵タンク 及び原水タンク)の水や海水を補給するための消防ポンプ及び消火ホースを配 置した。 なお,この消防ポンプ及び消火ホースにより直接,代替注水ラインへも供給 することができる。 (3) 緊急時の使用済燃料プールの冷却確保 燃料プール冷却浄化系及び既存の補給水系の機能喪失により,使用済燃料プ ールを冷却する手段がなくなった場合に備え,淡水タンク(ろ過水貯蔵タンク, 純水貯蔵タンク及び原水タンク)の水や海水を供給するための消防ポンプ及び
添付 4.2.1 (2/7) 消火ホースを配置した。 (4) 構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実施 a. 東北地方太平洋沖地震時に津波により浸水した取水口北側ポンプ槽につい て,防護壁内への水の流入経路を特定したうえで,閉鎖措置を実施した。 b. 原子炉隔離時冷却系,蓄電池,充電器,非常用交流低圧電源盤等のプラン トの安全上重要な設備が,津波により冠水することを防止するため,既存 扉やハッチ,建屋貫通部の隙間等にシール施工を行った。 2. 更なる安全性向上のための対応計画(一部実施済) (1) 緊急時の電源確保 a. 非常用発電機代替設備の配備(実施済) 非常用ディーゼル発電機の代替電源として,原子炉の状態監視及び冷却維 持並びに使用済燃料プール冷却維持に必要な機器等に必要な電力を安定的に 供給することができるよう,大容量電源車(高圧電源車)を配備した。 b. 非常用ディーゼル発電機海水供給用代替海水ポンプの配備(実施済) 非常用ディーゼル発電機を冷却するための海水系ポンプ及びモータが津波 により損傷し,機能回復が見込めない場合においても,非常用ディーゼル機 関の冷却が可能となる海水供給用代替海水ポンプ(海水利用型消防水利シス テム)及び仮設配管を配備した。 (2) 緊急時の最終的な除熱機能の確保 a. 原子炉への消防ポンプ等からの直接注入ラインの設置(実施済) 屋外から淡水タンク(ろ過水貯蔵タンク,純水貯蔵タンク及び原水タンク) の水や海水を消防ポンプ等で直接注入できる配管の敷設を行うことで,原子 炉へ水を容易に供給できるようにした。 b. 代替注水車の配備(実施済) 外部電源及び非常用ディーゼル発電機による電源が確保できない事態が長 期にわたる場合に備え,淡水タンク(ろ過水貯蔵タンク,純水貯蔵タンク及 び原水タンク)の水や海水を原子炉へ注水するための代替注水車(海水利用 型消防水利システム)を配備した。 (3) 緊急時の使用済燃料プールの冷却確保 a. 使用済燃料プールの代替冷却手段の強化(実施済) 使用済燃料プールを冷却するために必要な淡水タンク(ろ過水貯蔵タンク, 純水貯蔵タンク及び原水タンク)の水や海水を送水するための専用注水配管 を設置する他,代替ポンプ等(海水利用型消防水利システム及び消防ポンプ)
添付 4.2.1 (3/7) を配備し,安定的な使用済燃料プール冷却手段を強化した。 (4) 構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実施 a. 海水ポンプ防護壁の強化(計画中) 津波に対して海水ポンプ防護壁内に海水が浸水し難くなるよう,防護壁の 強化等を実施する。 b. 建屋の水密扉の強化(実施済) 建屋の扉について水密性を更に強化し,津波による建屋内への過度の海水 浸入防止を図った。 (5) 冷温停止に向けた対応 非常用発電機代替設備による電力供給を可能とし,さらには代替海水ポンプ による冷却水を確保することで,残留熱除去系により原子炉を冷温停止状態に 移行することが可能となる。また,これらの機能を回復することで使用済燃料 プールの冷却も可能となり,使用済燃料プールにおける使用済燃料の健全性を 確保できる。(第 4 図参照) このため,以下の資機材を配備する。 a. 電源の確保(一部実施済) 上記「(1)緊急時の電源確保 a. 非常用発電機代替設備の配備」に示す大 容量電源車(高圧電源車)を配備することで,冷温停止に必要な電源を確保 した。(実施済) なお,将来的には津波の影響を受けない場所に,非常用ディーゼル発電機 の代替となる空冷式の発電装置を設置する。(計画中) b. 代替海水ポンプの配備(実施済) 残留熱除去系海水系ポンプ,非常用ディーゼル発電機用海水系ポンプ等が 津波により使用できなくなった場合に備え,それぞれの代替としての流量を 確保できるポンプ(海水利用型消防水利システム)を確保した。 c. 海水ポンプモータ予備品の確保(実施済) 残留熱除去系海水系ポンプモータや非常用ディーゼル発電機用海水系ポン プモータ等が津波により冠水し,機能を喪失した場合に備え,予備のモータ を確保した。
添付 4.2.1 (4/7) 第 1 図 緊急安全対策の概要 (緊急安全対策に係る実施状況報告書提出時のイメージ) 電源車 非常用 電源盤 常用 電源盤 復水貯蔵 タンク 注入弁 復水移送ポンプ 原子炉隔離時 冷却系ポンプ 消防ポンプ 淡水 タンク 可搬式動力 ポンプ 消防 ポンプ サービス建屋 受水槽 可搬式動力 ポンプ ディーゼル 駆動消火 ポンプ 消火栓 残留熱除去系より ①より ①へ ②へ ②より 仮設配管(ホース) 仮設電源(ケーブル) 仮設配管 凡例 注入弁 格納容器ベント弁 ③へ ③より
添付 4.2.1 (5/7) 第 2 図 原子炉を継続的に冷却するためのシナリオ ○緊急時の電源確保 ・電源車による充電器への電 力供給による直流電源の確 保 ○緊急時の最終的な除熱機能 の確保 ・消防ポンプ等による水源へ の水補給 (原子炉圧力の低下) 電力駆動の注水 系の機能喪失 計測制御系 機能維持 (津波到達直後) ○緊急時の最終的な除熱機能 の確保 ・電源車による復水移送ポン プ等への電力供給 ・消防ポンプ等による代替注 水 津 波 全交流電源喪失 (津波到達直後) D/Gの機能喪失 海水系機能喪失 (津波到達直後) RCIC注水によ る原子炉水位維持 格納容器圧力上昇に伴い, 格納容器ベントを実施 (炉心損傷前であり放射能 放出はごく微量) 除熱機能の喪失 代替注水による 原子炉水位維持 外部電源喪失 (全交流電源喪失と同時) 原子炉は継続的 に冷却・水位維持 ○緊急時の最終的な除 熱機能の確保 ・電源車による格納容 器ベント弁等への電 力供給
添付 4.2.1 (6/7) 第 3 図 使用済燃料プールを継続的に冷却するためのシナリオ (津波到達直後) 津 波 (津波到達直後) D/Gの機能喪失 海水系機能喪失 (津波到達直後) 除熱機能の喪失 代替注水による プール水位維持 外部電源喪失 ○緊急時の使用済燃料プール の冷却確保 ・電源車による復水移送ポン プへの電力供給 ・消防ポンプ等による代替注 水 使用済燃料プー ルは継続的に水 位維持 電力駆動の注水 系の機能喪失 全交流電源喪失 (全交流電源喪失と同時)
炉心損傷防止 使用済燃料損傷防止 第 4 図 冷温停止へのシナリオ 原子炉冷温停止 ○最終的な除熱機能の確保 ・代替冷却ポンプによる冷 却水供給 ・海水ポンプモータ取替に よる復旧 ○電源確保 ・非常用発電機代替設備に よる電力供給 ・代替海水ポンプによる非 常用ディーゼル発電機 の機能復旧 交流電源復旧 残留熱除去系に よる冷却 原子炉は継続的 に冷却・水位維持 使用済燃料プール は継続的に冷却・ 水位維持 海水系機能復旧 交流電源復旧 残留熱除去系又は 燃料プール冷却浄 化系による冷却 ○電源確保 ・非常用発電機代替設備に よる電力供給 ・代替海水ポンプによる非 常用ディーゼル発電機 の機能復旧 使用済燃料プールは 継続的に水位維持 ○最終的な除熱機能の確保 ・代替冷却ポンプによる冷 却水供給 ・海水ポンプモータ取替に よる復旧 海水系機能復旧 添付 4.2.1 (7/7)
添付 4.3.1 (1/5) シビアアクシデントへの対応に関する措置について 平成 23 年 6 月 7 日,経済産業省から当社に対し,「平成 23 年福島第一原子力発電 所事故を踏まえた他の原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応に関する 措置の実施について(指示)」(平成 23・06・07 原第 2 号)が発出された。これを受 けて当社では,万一シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応するための措 置として,以下の事項を整備している。 ・ 中央制御室の作業環境の確保 ・ 緊急時における発電所構内通信手段の確保 ・ 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備 ・ 水素爆発防止対策 ・ がれき撤去用の重機の配備 これらの実施状況については,「平成 23 年福島第一原子力発電所事故を踏まえたシ ビアアクシデントへの対応に関する措置に係る実施状況報告書」として平成 23 年 6 月に経済産業省へ提出(平成 23 年 9 月に訂正版を提出)しており,その概要は以下 のとおりである。 (1)中央制御室の作業環境の確保(第 1 図参照) 長時間の全交流電源喪失における事故対応活動を継続的に実施するため, 緊急安全対策として配備した電源車から中央制御室空調ファン及び中央制御 室非常用循環ファンに給電することとした。さらに,各ファンの運転に必要 なダンパを開放し,中央制御室空調設備を閉回路循環で運転する運転手順を 整備した。これにより外部からの放射性物質の侵入を防止するとともに,中 央制御室内の空気を浄化し,居住性を維持する。 (2)緊急時における発電所構内通信手段の確保(第 2 図参照) 長時間の全交流電源喪失や津波による浸水時に構内PHS及びページング 設備が使用できなくなった場合の代替通信手段として,トランシーバー及び 衛星携帯電話を配備済みである。また,中央制御室と現場各所をつなぐ通信 線が敷設されており,簡易通話装置(乾電池駆動)による通信が可能である。 (3)高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備 (第 3 図参照) 高線量対応防護服を一定数発電所に配備した。また,高線量防護服,個人
添付 4.3.1 (2/5) 線量計,全面マスクなど,平成 12 年に締結した「原子力災害時における原子 力事業者間協力協定」にて定められていない資機材についても,必要に応じ 原子力事業者間で相互に融通しあうことを「経済産業大臣からの指示文書を 踏まえた高線量対応防護服等の資機材に関する取扱いについて(協定に準ず る文書による申し合わせ)」により確認した。 緊急時における放射線管理要員については,放射線管理班員以外の要員が, 線量計貸し出しやデータ入力などの業務を行い,放射線管理班員を助勢する 仕組みを整備した。 (4)水素爆発防止対策(第 4 図参照) シビアアクシデント時に格納容器から漏えいした水素の原子炉建屋への蓄 積を防止するため,福島第一原子力発電所の実施事例を踏まえ,原子炉建屋 への穴あけ作業に必要な資機材を準備するとともに,作業手順を整備した。 また,原子炉建屋の頂部へ穴を開けて水素ベント装置を設置するとともに, 原子炉建屋内の水素濃度を確認することが可能なように,建屋内に水素検知 器を設置することとした。 (5)がれき撤去用の重機の配備(第 5 図参照) ホイールローダ 2 台を津波の影響を受けない高所に配備した。
添付 4.3.1 (3/5)
第 1 図 中央制御室の作業環境の確保(イメージ)
添付 4.3.1 (4/5) 水素ベント装置の設置 (設置工事中) 建屋内水素検知器の設置 (設置工事中) 第 3 図 高線量対応防護服等の資機材の確保(イメージ) 第 4 図 水素爆発防止対策(イメージ) ○遮へいベスト ○重量:約18kg ○遮へい能力:約20%(カタログ値) 高線量対応防護服等の資機材について,原子 力事業者間で相互に融通することを確認
添付 4.3.1 (5/5) 第 5 図 がれき撤去用の重機の配備(イメージ) 【配備したホイールローダ】 【ホイールローダへの燃料供給方法】 燃料タンクの軽油をドラム缶に受けた後,ホイールローダに補給 仕様 コマツ WA100-6 全 長 6,190 mm 全 幅 2,340 mm 高 さ 3,035 mm 重 量 7,270 kg 掘起力 61.8 kN バケット容量 1.3 m3 常用荷重 2,080 kg 仕様 コマツ WA200-6 全 長 6,895 mm 全 幅 2,550 mm 高 さ 3,110 mm 重 量 9,815 kg 掘起力 93 kN バケット容量 2.0 m3 常用荷重 3,200 kg 軽油貯蔵 タンク ドラム缶 地下軽油 タンク
防護措置の実施に係る訓練の実施状況 訓練内容 訓練実施日 電源確保 高圧電源車の運転,供給負荷ケーブルの接続,給電 現場訓練 H23/11/28,11/29,H24/2/8,2/22,6/22,8/17, 8/20 低圧電源車の運転,供給負荷ケーブルの接続,給電 現場訓練 H23/4/19, 5/16, 11/15, H24/2/9 燃料補給訓練 (軽油貯蔵タンク,地下軽油タンクからの燃料抜き取り) 現場訓練 H24/3/21, 7/26,8/7 水源確保 海水利用型消防水利システムの取扱,海水の取水 机上又は 現場訓練 H23/8/22, 9/21, 9/22, 9/26, 9/27, 10/3, 10/6, 10/17, 10/18, 12/8, 12/9 H24/2/8, 2/22, 3/6, 3/7, 3/14, 3/27, 4/3, 4/10,4/13, 4/16, 4/19, 4/20, 4/25, 5/2, 5/8, 5/14, 5/15, 5/21, 5/25, 6/1, 6/7, 6/14, 6/19, 6/20, 6/26, 7/4, 7/6, 7/17, 7/18, 7/24,8/1,8/10 夜間の海水取水,燃料補給 現場訓練 H23/12/16 原子炉代替注水,使用済燃料プール代替注水 (海水利用型消防水利システム,消防ポンプ) 現場訓練 H24/8/2,8/9 復水貯蔵タンクへの海水補給 (海水利用型消防水利システム,消防ポンプ) 現場訓練 H23/4/7, 4/13, 4/15, 4/19, 5/10, 5/16, 9/26, 10/6 補機冷却海水系への代替海水供給 現場訓練 H23/11/25, 12/9 残留熱除去系海水系への代替海水供給 現場訓練 H24/2/8, 2/22, 6/20, 6/21 高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機海水系への代替海水 供給 現場訓練 H24/3/7, 3/8 総合 総合訓練 現場訓練 H23/4/19,5/16,H24/2/8, 2/22 添付 4.4.1 (1/1)