~ 1 ~
1.背景
公営住宅は、戦後復興期における住宅ストックの絶対的な不足を解消するため、昭和
26年に施行された公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者を対象者として供
給が図られてきました。
昨今、社会的弱者(※1
)の多様化や自治体の財政状況等により、公的主体(※2
)が賃貸住宅
を直接供給する手法には限界が生じるとともに、公営住宅についても、入居者・非入居
者間の不公平をはじめとする様々な問題が顕在化しており、現行制度の見直しが必要に
なってきています。
こうした状況を踏まえ、市営住宅の今後のあり方について、市全体の課題として、あ
らためて検討する必要があると考え、以下の調査・検討をしました。
2.大網白里市の現状
(1)市営住宅の管理状況≪表1・巻末参照≫
①立地状況
市内において6団地75戸を管理し、入居戸数は62戸、入居者数は112人と
なっています。
②戸別状況
耐用年限別に以下に分類されます。
ア.中浜、宮谷、桂山
昭和30年代に建設された木造住宅で、大幅に耐用年限(30年)を超えている
ため、退去のたびに順次用途廃止(取壊し)をしています。
なお、入居者の多くが、ほぼ建設当初から居住(50年程度)し続けている状況
にあります。
イ.北今泉、四天木
昭和50年代に建設され、耐用年限(45年)までは約10年を残していますが、
臨海部に位置する特性上、経年以上に老朽化が進んでおり、現在新規の募集を停止
し、修繕不能な不具合が発生している住宅の入居者には、同一団地内での移転を促
しています。
また、敷地は国有地を借地しており、加えて、市の津波浸水予想区域(※3
)に含まれ
ています。
ウ.東宮谷
平成10年度に建設され、鉄筋コンクリート造であることから、耐用年限(70
年)は50年余りを残しています。重大な不具合はみられず、適正に管理すること
により、耐用年限まで供用可能と思われます。
~ 2 ~
表1.市営住宅管理住戸・入居状況一覧
番号 住宅名 建設
年度 経過年
数(年) 耐用年数
(年) 構造 居住年数 平均居住年数
(年) 居住人
数 平均居住
人数 住所
1 中浜 S30 61 30 木造 * * 四天木乙2832-15
2 * *
3 * *
4 * *
5 * *
6 S36 55 * 50.2 * 1.8
7 S36 55 * * 桂山1134
8 S37 54 * 54 * 1.5 桂山2117
9 * *
10 * *
11 * *
12 * *
13 * *
14 * *
15 * *
16 * *
17 * *
18 * *
19 * *
20 * *
21 * *
22 * *
23 * *
24 * *
25 * *
26 * *
27 * *
28 * 26.8 * 1.7
29 * *
30 * *
31 * *
32 * *
33 * *
34 * *
35 * *
36 * *
37 * *
38 * *
39 * *
40 * *
41 * *
42 * *
43 * *
44 * *
45 * *
46 * *
47 * *
48 * *
49 * *
50 * *
51 * *
52 * *
53 * *
54 * *
55 * *
56 * *
57 * *
58 * *
59 * *
60 * 18.1 * 1.6
61 * *
62 * *
63 * *
64 * *
65 * *
66 * *
67 * *
68 * *
69 * *
70 * *
71 * *
72 * *
73 * *
74 * *
75 * 12.4 * 2.2
平均 22.58 1.8
:空室 管理戸数:75戸 合計 112
入居戸数:62戸
空き戸数:13戸 平成29年3月1日現在
注1) 中浜住宅については、退去に伴う整理中。
注2) 公表にあたって個人情報保護のため一部非表示(*)としています。
大網2907-5
四天木乙2573-25
S58 33
東
宮
谷
H10 18 70
鉄
筋
コ
ン
ク
リ
ー
ト
造
北今泉3696-81
四
天
木
S57 34
45
コ
ン
ク
リ
ー
ト
パ
ネ
ル
造
北
今
泉
S53 38 45
コ
ン
ク
リ
ー
ト
パ
ネ
ル
造
大網2982‐1
桂
山 30 木造
宮
谷
S35 56
30 木
造
~ 3 ~
(2)市営住宅の応募状況 ≪表2参照≫
①北今泉、四天木
現在は募集を停止しています。近年は、応募倍率が年々低下し、平成 26 年度は
応募がありませんでした。
②東宮谷
近年の倍率は低下傾向にあり、平成 28 年度では 1.0 倍となっています。
表2.市営住宅応募状況
団地名 北今泉 四天木 東宮谷
公募年月 募集
戸数
応募
総数
倍率 募集
戸数
応募
総数
倍率 募集
戸数
応募
総数
倍率
平成19年 2月 2 6 3.00
平成19年 7月 1 7 7.00
平成20年 2月 1 4 4.00 1 17 17.00
平成21年 7月 2 11 5.50
平成22年 2月 2 4 2.00
平成22年 7月 1 1 1.00 1 11 11.00
平成24年 6月 2 2 1.00
平成24年 9月 2 2 1.00
平成25年 2月 2 0 0.00
平成25年 6月 1 0 0.00 2 2 1.00
平成25年12月 1 1 1.00 2 0 0.00
平成26年 6月 2 0 0.00 2 0 0.00 1 6 6.00
平成26年12月 2 0 0.00 2 0 0.00
平成27年 6月 募集せず 募集せず
平成27年12月 募集せず 募集せず
平成28年 6月 募集せず 募集せず
平成28年12月 募集せず 募集せず 2 2 1.00
計 8 12 1.50 21 28 1.33 5 36 7.20
3.千葉県内の公営住宅の状況
(1) 公営住宅の管理状況 ≪表3参照≫
・ 全世帯に対する公営住宅の供給割合は、千葉県平均 1.55%に対し、本市は 0.41%と
平均以下となっています。
・ 市町村営住宅を有していない自治体が3市4町(印西市・白井市・富里市・栄町・多
古町・東庄町・芝山町)あります。
~ 4 ~
表3.市町村別の世帯数並びに市営住宅及び県営住宅の戸数
平成28年4月1日現在
イ 世帯数 ロ 市営住宅戸数 ハ 市営住宅の ニ 県営住宅戸数 ホ 市営+県営住宅の ヘ 市営+県営住宅の ト 市営+県営住宅の
(世帯) (戸) 供給割合(%) (戸) 供給戸数(戸) 供給割合(%) 供給割合の順位
ハ=ロ/イ×100 ホ=ロ+ニ へ=ホ/イ×100
千葉市 420,286 6,244 1.49% 7,240 13,484 3.21% 7 位
銚子市 26,005 736 2.83% 391 1,127 4.33% 3 位
市川市 231,136 1,967 0.85% 350 2,317 1.00% 32 位
船橋市 273,901 1,367 0.50% 1,260 2,627 0.96% 35 位
館山市 20,153 263 1.31% 0 263 1.31% 26 位
木更津市 55,180 470 0.85% 247 717 1.30% 27 位
松戸市 217,742 1,581 0.73% 393 1,974 0.91% 37 位
野田市 59,981 498 0.83% 451 949 1.58% 22 位
茂原市 36,136 759 2.10% 80 839 2.32% 16 位
成田市 55,935 283 0.51% 1,158 1,441 2.58% 12 位
佐倉市 69,335 234 0.34% 342 576 0.83% 38 位
東金市 24,753 145 0.59% 58 203 0.82% 39 位
旭市 23,393 402 1.72% 189 591 2.53% 13 位
習志野市 73,189 446 0.61% 1112 1,558 2.13% 17 位
柏市 176,975 713 0.40% 144 857 0.48% 45 位
勝浦市 8,689 184 2.12% 0 184 2.12% 18 位
市原市 114,244 901 0.79% 2,180 3,081 2.70% 11 位
流山市 72,307 483 0.67% 80 563 0.78% 41 位
八千代市 78,591 70 0.09% 0 70 0.09% 49 位
我孫子市 54,322 295 0.54% 234 529 0.97% 33 位
鴨川市 14,491 154 1.06% 32 186 1.28% 28 位
鎌ケ谷市 44,413 146 0.33% 178 324 0.73% 42 位
君津市 34,498 117 0.34% 504 621 1.80% 20 位
富津市 17,596 178 1.01% 74 252 1.43% 25 位
浦安市 75,404 162 0.21% 361 523 0.69% 43 位
四街道市 35,065 181 0.52% 192 373 1.06% 31 位
袖ケ浦市 22,796 88 0.39% 600 688 3.02% 9 位
八街市 27,132 441 1.63% 192 633 2.33% 15 位
印西市 32,663 0 0.00% 0 0 0.00% 公営住宅無し
白井市 22,856 0 0.00% 270 270 1.18% 30 位
富里市 20,171 0 0.00% 0 0 0.00% 公営住宅無し
南房総市 15,053 80 0.53% 0 80 0.53% 44 位
匝瑳市 12,740 231 1.81% 68 299 2.35% 14 位
香取市 27,398 310 1.13% 97 407 1.49% 24 位
山武市 19,473 153 0.79% 0 153 0.79% 40 位
いすみ市 14,809 242 1.63% 50 292 1.97% 19 位
大 網 白 里 市 1 8 , 9 5 3 7 7 0 . 4 1 % 0 7 7 0 . 4 1 % 4 6 位
酒々井町 8,967 4 0.04% 350 354 3.95% 4 位
栄町 8,244 0 0.00% 0 0 0.00% 公営住宅無し
神崎町 2,200 20 0.91% 0 20 0.91% 36 位
多古町 5,056 0 0.00% 0 0 0.00% 公営住宅無し
東庄町 4,566 0 0.00% 0 0 0.00% 公営住宅無し
九十九里町 6,408 20 0.31% 0 20 0.31% 47 位
芝山町 2,455 0 0.00% 82 82 3.34% 6 位
横芝光町 8,465 90 1.06% 198 288 3.40% 5 位
一宮町 4,523 121 2.68% 140 261 5.77% 2 位
睦沢町 2,439 29 1.19% 0 29 1.19% 29 位
長生村 5,493 12 0.22% 0 12 0.22% 48 位
白子町 4,191 14 0.33% 52 66 1.57% 23 位
長柄町 2,588 163 6.30% 0 163 6.30% 1 位
長南町 2,790 81 2.90% 0 81 2.90% 10 位
大多喜町 3,408 103 3.02% 0 103 3.02% 8 位
御宿町 3,054 54 1.77% 0 54 1.77% 21 位
鋸南町 3,316 32 0.97% 0 32 0.97% 34 位
計 2,625,927 21,344 1 19,349 40,693 1
千葉県平均 4 8 ,6 2 8 3 9 5 0 .8 1 % 3 5 8 7 5 4 1 .5 5 %
公営住宅有り 49市町村
~ 5 ~
(2)市町村営住宅の応募状況 ≪表4・図1参照≫
「千葉県の住宅2015(※4
)」では、千葉県を東、西、中央及び南の4つの地域に
分けて市町村営住宅の応募倍率を年度別で算出しています。各地域ごとの傾向は東
及び南地域が2.0 倍前後で推移し、本市の含まれる中央及び西地域は数年前まで 10
倍を超えていましたが、近年は4~5倍程度で推移しています。
表4.県内の地域別市町村営住宅の応募倍率の推移
※「千葉県の住宅2015」より
図1.地域の分類
4.市営住宅の問題点
・ 建設・維持管理には人件費も含めて多大なコストを要しますが、市営住宅の受益者は
市全体の0.41%の世帯に限られています(表3参照)。これは、入居要件を満たす世帯
に等しく住居を提供しているとは言えず、入居者・非入居者間の公平性に問題があり
ます。
・ 入居期間は長期に及ぶことが多く(表1参照)、受益者が固定化する傾向にあり、限ら
れた財源を用いて市営住宅を建替えることに市民の理解を得るのは難しい状況にあり
ます。
・ 居住要件を欠く(収入超過、滞納、不正入居等)ことになった入居者は速やかに退去
する必要がありますが、現実は様々な困難を伴います。
5.今後の方針
公営住宅法の施行時と現在とでは住宅事情が大きく変化しています。公営住宅の応
募倍率の低下や民間住宅の空き家・空き室の増加が進行していることからもわかるよ
うに一定の住宅ストックが形成されてきており、市が直接住宅を供給する必要性は低
下していると考えられます。
そこで、これまでの検討を踏まえ、今後の市営住宅のあり方についての方針を以下
のとおりとします。
年度
地域
22
年度
23
年度
24
年度
25
年度
26
年度
27
年度
中央 16.3 10.0 10.2 6.2 4.5 3.9
西 15.2 14.3 12.0 9.9 6.8 5.9
東 2.8 2.6 2.2 2.3 2.1 2.0
南 1.4 1.5 1.7 2.1 1.4 1.3
県全体 13.7 9.8 9.2 7.1 5.1 4.2
~ 6 ~
(1)基本方針
①施設管理について
耐用年限や老朽化の程度に応じた管理方針を長寿命化計画(※5
)に定め、各状況に
応じた適切な管理をしていきます。
なお、新たな市営住宅は建設しないこととします。
②入居者について
耐用年限に応じた計画的な退去を入居者に促すとともに、転居に係る支援を検討
します。また、市営住宅が真の住宅困窮者に適切に供給されるよう、入居者資格の
厳格化についても検討していきます。
③国等の動向について
国は、高齢者、子育て世帯、低額所得者、障害者、被災者などの住宅の確保に特
に配慮を要する者に対し、空き家などを活用する新たな支援策(※6
)を検討していま
す。今後は、市営住宅を直接供給するこれまでの手法に代わる制度として、国・県
の動向を注視し、本市での活用を検討します。
(2)施設別管理方針
P.1 2(1)②戸別状況の分類に基づき、以下のとおりとします。
①中浜、宮谷、桂山
入居者の退去後に解体することとします。ただし、入居者が払下げを希望する場
合、市財政部局とも協議のうえ、適切な財産処分を検討します。
②北今泉、四天木
耐用年限まで安全性と機能が確保できるよう管理することを基本とします。なお、
劣化状況の把握に努め、修復することが著しく不経済な住宅については、計画的な
入居者の退去を促すとともに、転居に伴う負担の低減措置を検討します。
③東宮谷
長寿命化計画の対象住戸として位置付け、適切な修繕計画のもとで耐用年限まで
所定の機能を維持します。
~ 7 ~
用語の説明
※1 社会的弱者
低額所得者、高齢者、障害者など、社会の中で弱い立場にある人。
※2 公的主体
地方公共団体、住宅供給公社、都市再生機構など。
※3 津波浸水予想区域
元禄地震と同じ震源域で発生する地震により、本市の沿岸の水深1m付近で津波高が
約10mとなった場合の浸水予想区域(大網白里市津波ハザードマップより)。
※4 千葉県の住宅2015
平成27年に千葉県が県内の住宅事情と住宅施策についてとりまとめたもの。
※5 長寿命化計画
予防保全的な管理や改善の実施等、長期的な視点に立った維持保全活動を行うことに
より更新コストの削減を目指すための計画。
※6 新たな支援策
平成29年2月3日に国土交通省が閣議決定した「住宅確保要配慮者に賃貸住宅の供
給の促進に関する法律の一部を改正する法律案」による施策で、空き家を活用した住
宅セーフティネットの強化を図る支援策などが盛り込まれた。