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浅海養殖計画水域の海洋環境に関する研究 I 長崎鼻地先水域-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学農学部学術報碧 浅海養殖計画水域の海洋環境に関する研究

Ⅰ 長 崎 鼻地 先水域

井上裕堆,田中啓陽

96 近時,瀬戸内海沿岸各地に様々な養殖施設が相継いで建設され,その生産畳も年々増加の傾向にある..し かし各種養殖施設を水産環境ユ学的観点から眺めると,大抵の施設は海水交換,台風防災,汚染水の影響, 漁場老化 管理技術などの点で幾多の問題を内包している.これら諸問題を惹起した共通の基盤は主に浅海 環境立地条件の不適性である.つまり建設に際し,局所的特性をもつ浅海環境諸条件を基礎的に検討せず, ただ既存施設の模倣に依拠してきたためであろう… この様な見地よりいくつかの養殖施設建設計画水域の浅海環境立地条件を予備的に調査診断した一.一:達の 報告はこれである.しかしながら,ある立地条件の水域に養殖施設を築造した場合,どのように水域の環境 が変遷するかその諸相を解明するのが本研究の目指すところである、. 〔Ⅰ〕ま え が き 香川県屋島湾の湾口西側長崎鼻地先の水域に養魚場の築造が予定され,その基礎調査を水産環境工学的観 点から実施した.このような場合,(1)深浅測鼠(2)底堆積物(3)潮汐特性と流れ(4)塩分度と 水温分布(う)波(6)水質汚染などが主な調査項目であるが今回は前■3項目について調査を行なった小 部分としての築造計画水域に限定せず,全体としての屋島湾の概況も調査する必要があろう巾 なぜなら屋 島湾内ではすでに真珠,カキ,ノリ,ハマチなど多くの菱殖が行なわれまた湾奥に都市汚廃水の放出があっ てこれらの影響の現われることが危供されるからである. そこで屋島湾全体を概略的に把握するため潮流と底泥の調査を合わせ行なった.. 〔ⅠⅠ〕方 法 屋島湾の海水流動状況は漂流瓶を適宜浮遊させ潮流に乗って流動する距離とそれに要した時間から概略的 に把捉した‖ 養魚場予定水域については漂流瓶(1)の流動軌跡を2台のトランシソトにて追い数分間隔で測角 確定した.. 予定水域付近の地形を調べるため,平面・深浅測盟を実施した. fig1に示す測点Ⅹ,Yの上,中,下層にて30分間隔で束邦電探KK・製CNト2B型流速計を用い,流向, 流速を測定し,同時に測点Tで潮位観測を実施した.これに基づき養魚場築造予定水域の海水流通良を弥 定する. コ■アーサンプラ・一により底泥を採取し,その表層泥の酸化還元電位差(東亜電波KKのRM−1型Redox Meter),PH値(BeckmanPocketablePHMeter)および有機炭素鼻(TuRRINmethod)を測定した。 −・連の測定は昭和40年11月に行なったい 〔ⅠⅠIl結 果 a屋 島湾 海水流動 屋島湾々口は約10mの水深によって開けているが長崎男衆約300m付近に比較的浅い (最残部約02m)砂洲が存在している.湾内水深は3∼うmである. 養魚場予定水域で湾内からの流れ,すなわち北西流が卓越しているとき湾奥汚染水の影響の危惧がある‖

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97 第19巻第1号(1967) Fig1Bathymetricmap・ fig2は上げ潮初期に計画水域で北西流を与えるときの湾全体 の流向,流速の概要を示す.予定水域沖合の砂洲より東側の湾 口から広く屋島湾内へ流入するが,特に庵治よりから商流した 潮流は湾奥深く突込み次第に流速を減じ弾鼻に沿って円弧状に 流向を変え屋島東岸に沿った北西流となる.、湾口中央部ないし ば砂洲に近いところからの流入水は湾内への突込みが浅く比較 的.甲く転じて長崎鼻に向う..他方砂洲の西側つまり予定水域を 含む湾口から巾の狭いかなり速い流れとして流出する.. 弾鼻より奥の水域は流れがきわめて緩慢であり干満潮位差に もとづく流出入があるにとどまり潮流の流通ほ全くみられない. 弾鼻を境として屋島湾は明僚に2区分される。 また下げ潮時に計画水域で北西流となる場合湾全体の流れの 模様は変っても,この水域でほ巾の狭い速い流れ(約20cm sec) となる. いずれにせよ予定水域の北西流は湾の北水域の水を多晶に含 み湾奥の汚染蘭水の影響を個接顕著に受けることはない、 底泥 基経環境としての底泥の性状を綜合的に標示する と思われる酸化還元電位差と堆積有機物質の鼠的示標としての 有機炭素量の測定結果をfig3に与える.酸化還元電位差は質

Fig‖2lMap showing current pattern atearly且00dandsamplingposi− tionsofbottommudin Yashima bay

的表現であるからこの両者は直接対応しない..ここでは一応の

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香川大学農学部学術報告 98 .き芯きぞ独∈ドZ国トZOUNO讐芳日石≡う茜⊇○ トN国トZOUZ〇国威くUUHZくじ出○ DISTANCEFROMBAYBOTrOM,Km 十100 +200 十300 100 REDOXPOTENTIAL,mV Fig3Relationbetweenredoxpotentialand Organiccarboncontentofbottommud

Fig 4 Changesof organic carbon content inmudwithdistance f土om the bay

bottom 底泥の測定値(2〉を合せ点描した.両港魚場の測定値は41年11月に得たものであって季節的には同じである.. 屋島湾については有機炭素盈は湾口中央部の3mg/gwetwから湾奥部の17mg/gwetwまでに範囲する.. Fig.4ほ各採泥点の湾奥部からの距離と有機炭素鼠との関係を与えているい 流動状況の棚点から屋島湾は 2水域に区分されることばすでに述べた.北水域では平均10mg/gを与えるが湾口に近接するに従い有機炭 素選ば減少する.湾奥の南水域では有機炭素最の大きな差異ほ見られず,平均16mg/gを与えている。.この 傾向は北水域にほ比較的速い潮流があるが湾奥南水域は干満差のみによる流動しかないこと,南水域は全般 的にカキ,真珠などの養殖が盛んで歴史も古いことおよび都市汚廃水の放出のあることに基因する一. Noい8,9,11測点で有機炭素盈の多いのほこれら測点に沿って北西流のみられるときに湾内の海水がここ に収れんすること,この付近に真珠筏が多いことなどによるものであろう.・酸化還元電位差は北水域で,平 均0.16V,南水域で014Vを示しほとんど差を認めないい 香川県下の既存の養魚場の底泥と比較すると有 機炭素鼠は南水域では一億により多く北水域は少ない一RedoxPotentialは屋島湾の方が全体としてはるか に高く堆積物の分解が比較的良好に進行しているものと思われる小 bい 養魚場予定水域 地形的立地条件 養魚場予定水域を含む海岸線約350mを平板測蓋にて決定し,深浅測嵐は予定地先 約500m沖迄の範囲に波たり実施した.海岸線張出し支柱網仕切り式養魚場(水面積35×104m2)と支柱 網田い式養魚場(水面積08×101m2)を予定してこれをFig」1に示す小水深別の水面積,貯水蓑を算出し, この関係をFig5に与えた..表示した相対水位とは昭和40年11月14日13時の高潮を±0としている.

fig5から養魚場Aにおいて高潮位より水位が約2m下降すると水面積は35×104m2から,33×104m2

へと6%の減少,貯水量は19う×104m3から115×104m3へと,39%の減少を示し,形状として−は半椀形 に近いい 養触場Bは柱状形で水面積は不変,貯水螢は55×104m3から415×104m8へと18%の減少を示 す. 流動 計画水域における潮流の諸相を調査するため,11月24日(大潮期高潮12:15時)水域内のⅩj Y点(Figl)に船を固定し高高潮をはさむ約6時間にわたり流速,流向を測定したいfig6はその結果で ある..流向,流速は探さによりほとんど変らなかったので平均値として表示した. 伯方,計画水域全般の流れの模様をより詳しく知るため,11月14日(小潮,低低潮07:33時,高高潮15= 05時),(Ⅰ)低低潮後15∼310時,川)低低潮後4・0∼55時,(Ⅲ)高高潮前15∼05時,(m’)高高潮を含

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99 第19巻第卜旨(1967) ●−WaterareaoffarmA † ●・‥…・Water volume ク フ 竃ご宝×.く再出く出国トくき DEPTHINm BELOWHHW.,L

Fig・5Watervolumeand areainthe

prq)eCtedfishfarm Fig6TidalchaTaCteristicsandcurrents atStX and Y む1時間,(Ⅴ)高高潮後05∼10時の5回にわたり漂流瓶を浮遊させた結果はFig7である。 (Ⅰ)は北西流で全体的に流れば速く岸沿いで,20cm/SeC,約300m離れて30∼40cm/SeC,(Ⅱ)は転流時 で数cm′′secまで減じる.(Ⅲ)では討画水域を一様に南東に向って流れる…15∼20cm′SeC,(Ⅳ)ほ高高潮時 で転流が起る.(Ⅴ)一・方的北西流で15∼27cm secと早い‖ 総合すると,本水域においては高潮前3時に北西流から南東流へと転じ,以後高潮まで南東流を保ち,高 潮時に再度転じて北西流となり持続する. つまり,1潮内において高潮前の約3時間のみが南東流で他の約9時間は北西流が卓越するい Fig1に示 すように計画水域の北方沖合いに浅い砂洲があり,他力南方は湾内に広く開け水深も深いとこ.ろから,湾内 から湾外へ向う流れは屋島先端束岸とこの砂洲の間でしぼられる様称を呈.する.このため北西流は南束流よ り流れがかなり早くなる‖ 長崎鼻北方水域区(StZ)における春秋季平均大潮期の流向,流速の様相(4)をFig8に描いたい これか ら解かるように低,高潮時に流向は回転して約6時間は西南西流,約6時間は束北東流が卓越し,低,高潮 の中間に最大流速を示すい このように瀬戸内海の主水路においては潮汐に強く影響される変動が見られる.. しかし少しでも内湾および沿岸に入ると本報の様に海水流動は特異的な沿岸局地流の様相をしめしている… これは沿岸,内湾水域の特徴でもある小 流通量 Ⅹ,Y測点での流向,流速測定値を基にして計画水域の海水流通盈を見依ってみよう小 計画 水域中央通水断面積にこれと直角な流速成分を乗じて求めた流通鼠を経時変化の形で表示したのがFig9で ある‖ 大潮期においては高潮前3時に転流し,南束流となって次第に流通量を増し,高潮前1時にAで50× 104m3hr,Bで75×104m3h上達するが,その後減じて高潮時に再び転じ北西流とする..転流後1.5時にはA で94×104,Bで114×104m8hrと著じるしく大きい流通慮を与えるが,以後次第に減じる.、上げ潮とともに 涜適量を増し高潮前3時の転流まで北西流を持続する模様であるり いずれにせよ転流前後の05∼1“0時間 を除いてほ流通忍ばかなり大きい‖ そこでFig17,9その他予備的調査の資料から大潮期の1潮(約12時間) における流通虞と交流率(低潮時水量を基準)をもとめたのが,Tablelである.既設の他の養魚場より圧 倒的に交流率が高い.

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香川大学農学部学術報告 100 Fig∴7”Featuresofcurrentsintheprojectedarea‥(ⅠⅠ)4l5∼55hrsafterlowtide,(ⅠⅠⅠ) 15∼0.5hrsbefbrehightide,(IV)athightide,(V)0“5∼110hrsafterhightide ︶ゼゴ回国hSトZ日出感nU Fig小8.TidalcurrentcuIVeatStZsituatedtothe northofNagasaki−nO−hana

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第19巻第1号(1967) 占\∞lぷOtX︵出国ト<きじNlきOJhhOトヒ↑Zくh︺ぴ

TIMEOFDAY24,NOV

Fig9VariationsinthequantltyOfseawaterflowingthrough

theprq5ectedfishfarm Tablel・・Hydrauliccharacteristics Water Volume

Ing water

帥ityof鮎w ̄

2hs m3/about12hrs

牲慧・L」い慧L H・慧L】L・慧 169×10墾 49×104 19.5×101 55×104 36×104 0.8×104 34×10∵ 45×105

0.8×101i 60×10S

〔:Ⅳ〕あ と が き 長崎奥地先計画水域はハマチ養魚場を予定して取り上げたので,本水域と香川県下の比較的立地条件の類 似した既設の女木島衣魚場(a)と比較してみょう一. 女木島嚢魚場は海岸線利用張出し支柱網仕切式の構造で潮流流通型の典型的養魚場である..A水域はこ れと全く類似の構造となるであろう..女木島養魚場の高高潮時水面積7×104m2水容積36×104maでいずれ もA水域の約2倍である.他方,1潮約12時間の海水交流量は女木島養魚場で19×105m3,したがって低潮 時平均水容積をもとにした海水交流率は約8回/約12時間である.これをTablelと比較するとA水域の海 水交流率は約35倍ということになる.女木島養魚場での例年のハマチ収容尾数は24×104であり,充分健 康に成育しているからA水域ではこれの7∼8割程度の収容が可瀧であろうい B水域は幾分沖合に位置しかなり深い小 その上束方砂洲の存在によって流れがこの水域に収れんするので 流速が著じるしく速い..このためTablelに示す様に,海水交流率が極めて大きい値となる小 その点だけか ら考えれば収容密度の高い養魚場となると云える.しかしながら(1)仕切網に対する流れの抵抗が大きく特に 付着物による網の汚れで一層抵抗が増すこと(2)施工法(8)養魚のための諸作発と管理(4)魚の生理生態なとの点 から多くの疑問が残る,.ここにのべた基礎資料にもとづいてさらに充分の検討を必要とする.. 調査に際し柾々御世諸になりました女木島養魚株式会社社長L山本−・夫氏に感謝いたします.

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香川大学農学部学術報告 102 文 献 (1)井上裕雄,田中啓陽,斉藤 実:日水誌,32 (3)田中啓陽,井上裕雄,福田 清,前川忠夫:本 (5),う58−564(1966) 誌,18(1),77−83(1966) (引 田中啓陽,井上裕雄:日水誌,(投稿中) (4)備讃瀬戸束部測流図,水路部(1965).

Preliminaryenglneer1ngStudiesonenvir・Onmentalcharacteristicsof

Seaar・eaprqjectedfbr・marineculture

I.SeaArIeainFrIOntOfNagasaki−nO−hanaatYashima

HirooINOUEand YoshiakiTANAKA ltisnecessarYtOdetermineindetailthemarineenvironmentalconditionsin whichthe点sh

f衰・mistobeplaced.Aseriesofappliedresearcheswasunder・takeninordertohavesu組cient

information uponwhichtobase thelocation,installation methods and design techniques of

theprq]eCted伝shfムrm・These丘ndingswouldalsoenableustounderstanddiverseaspectsof

changeinenvironmentalconditionsincouISeOftimeafterconstructionofthc丘shfarm.

YashimabaylSClearlydividedintotwor・CglOnS by a narrow partacross Hq5iki−hana.In

thesouthreglOn,CurTent且owsveryslowlyandtheamountoforganiccarboninbottommud

comes to16mg/g wetweightontheaverage.Thisaccumulationoforganicmatterwillbe

readilyunderstoodonthegroundthatthesouthr・eglOnOfthebayhassupportedmanykinds

Ofmarin9Cultures,SuChasoyster・,fish・pearland other・S,fbr a considerablylong time”In

the northreglOn,the tide causcs a strong circulation and thereis a marked decreasein

quantltyOf’or・ganiccarbontowardsthemouthofthebay・TheseaareaprcleCtedfbr・marine

cultureis situatedin fiOnt Of Nagasaki・・nO−hana.CurTentS Show relatively narrow2,Onal

fbaturesandrunswiftlywithaspeedof20cm/sccthroughthestudyare”Theshoalexist−

1ngabout300mo仔盲horcisresponsiblefbrthisstrongcurrcnt・The瓜owISSOutheastwar・dfbr

aboutthree hours beft・re high water・and northwestward良〉r the rest ofhalfatidalcycle.

Water volumesoftheprqjected鮎h f左rms AandBwere16.91×104m3and4.9×104m3

respectivelyatlowwater・Inthesprlngtide,thequantlty Ofseawaterflowlng through the

farmAorBduring halfatidalcycle was280r・122times morethan the volume ofeach fAr・matlowwater,reSPeCtively.

The£shf衰mBislocated far o甜the shor・e and thetider・unSVeryStrOnglythrough this

deepareau Assuch,the constructionofthefarmBmaybeattendedwithenglneeringdifh・

culties,andmor・eOVertherewillbemanyvexedprIOblemsinthemethodsofmaintenance and

operationduringthecultivation

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