諸外国における需要家保護策
需要家保護策の必要性
○電気は生活に必要不可欠な“
ユニバーサルサービス
”であり、既に自由化を実施した諸外国の多くは、自由化に伴い諸般の
事情によりサービスが受けられなくなってしまった需要家に対して何らかの保護策を講じている。
○欧州では1996年EU指令において規定した「
公共サービス義務(Public Service Obligation
)」の考え方を順次拡大し、全て
の家庭用需要がユニバーサル・サービスを享受できるよう義務づけている。一方、米国自由化州では、
各州の法律のもと対
策を実施
している。
⇒
利用可能性(Availability)
と
価格妥当性(Affordability)
の2つの概念に大きく分けて需要家保護策を展開。
利用可能性(Availability)の考え方
・自由化に伴い発生が想定される諸事項に関する議論 ①スタンダードオファー(Standard Offer) …新たに自由化対象となった需要家が、供給者選択の積極的な意思表示をしなかった場合における供給138
・低所得者層などの社会的弱者、また遠隔地・離島等に存在する需要家等に対して、妥当な価格で供給を受ける適切な契約条件等、に関する 議論 …新たに自由化対象となった需要家が、供給者選択の積極的な意思表示をしなかった場合における供給 ②デフォルトサービス(Default Service) …需要家と供給事業者者との交渉が成立せず、誰からも供給を受けられない場合における供給 ③ラストリゾート(Last Resort) …供給事業者の破綻等の理由により、需要家が誰からも供給を受けられない場合における供給価格可能性(Affordability)の考え方
出典:H23年度資源エネルギー庁委託調査「 諸外国における電気事業制度の現状に関する調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」より・イギリスは1999年に小売全面自由化が完了しており、EU加盟国の中でもいち早く競争性の強い電気事業制度を構築。一方で、電気事業関連制度 既存供給 事業者 需要家 既存供給 事業者 需要家 需要家が、供給者選択の積 極的な意思表示をしなかっ た場合、誰が供給するの か? 契約締結 自由化へ移行
○
新たに自由化対象となった既存需要家が、供給者選択の積極的な意思表
示をしなかった場合における供給
、として定義。
○EU各国では、EU指令
*1を念頭に置きつつ、各国政府が国内法に基づき制
度設計
-イギリス…「既存事業者」が継続供給(2000年公益事業法) -ドイツ…各地域において最も需要家数の多い事業者が「基本供給者」として供給義務 を負う(2005年改正エネルギー事業法) -フランス…EDF社による規制料金が適用○米国では多くの州において、
「既存事業者」
が継続供給
事例①: イギリス「2000年公益事業法(Utility Act 2000)」
利用可能性に関する議論~スタンダード・オファー①
139
・イギリスは1999年に小売全面自由化が完了しており、EU加盟国の中でもいち早く競争性の強い電気事業制度を構築。一方で、電気事業関連制度 等によって需要家保護策を充実化 ・小売自由化に伴う規制料金撤廃時において、“供給者選択の積極的な意思表示をしなかった”需要家に関しては、“同じ供給者と新たな供給契約 を締結したこととみなす”ことを定義( 出所: 2000年公益事業法 における“Schedule7-Transitional provisions and saving”の“PartⅢ-Former Tariff Customers” )
*1… 2003年改正EU指令第3条第3項ではユニバーサルサービスの定義を“合理的で、容易かつ明確に比較可能な透明性のある価格で、特定品質
の電力供給を、その領域内において受ける権利”と規定。(原文: right to be supplied with electricity of a specified quality within their territory at
reasonable, easily and clearly comparable and transparent prices)。また同第3条第3項ではラスト・リゾート等の利用可能性、第3条第5項では社
会的弱者、遠隔地の需要家の保護策等に関して規定。また2009年改正EU指令第3条7項において“加盟国は最終消費者保護のため十分な措置を
・フランスは2007年7月より小売全面自由化に移行したが、フランス政府は引き続き「規制料金」も維持しており、現在、この「規制料金」と「競争料 金(自由化料金)」が併存 (備考: TaRTAM(料金調整)制度) ※ NOME発効(2011年7月)に伴い撤廃(後述) ・フランスでは、一度、「競争料金」を選択した産業用・業務用需要家は再び「規制料金」に戻ることができない(小規模業務用、家庭用需要家は可 能)。(2000年電力自由化法) ・2000年中盤以降、化石燃料価格に連動する形で卸電力価格が上昇。従って、「競争料金」は、EDF社の原子力発電電力をベースとする「規制料 金」よりも大幅に高くなっており、多くの需要家は規制料金にとどまる状態が続いている ・フランス政府は競争料金に移行した需要家を救済する観点から、エネルギー部門法(2006年12月制定)においてTaRTAM(料金調整)制度を導入 ⇒競争料金を選択した需要家に対して、「規制料金+α(20%程度)」の価格で電力を供給。競争料金とTaRTAM料金の差分は、「電力公共サービス 拠出制度」(CSPE)、またはEDF等からの補填により賄う。 (規制料金撤廃に向けた欧州委員会からの圧力) ・2006年12月、欧州委員会はフランス政府の規制料金に関して意見書を提出。また、2007年6月、欧州委員会はフランス政府の規制料金に対して 調査を開始
事例②: フランスにおける規制料金制度
利用可能性に関する議論~スタンダード・オファー②
140
調査を開始 ・フランス政府は、欧州委員会からの規制撤廃に向けたプレッシャーを受け、「電力市場における新組織法(NOME)」を制定(2010年12月) ⇒2016年以降大口需要家に対する規制料金の撤廃、その過渡期的措置として「原子力発電電力へのアクセス制度(Arenh)」の実施を決定 ・NOME発効(2011年7月)に伴い、TaRTAMは撤廃「出所: CRE「Electricity and gas market observatory 3rd Quarter of 2011」
フランスにおける部門別・適用料金別の電力消費量 TWh 構成比 TWh 構成比 TWh 構成比 TWh 構成比 134.2 94.5% 135.0 94.3% 162.0 55.1% 162.0 55.2% 既存事業者 0 0.0% - - 35.7 12.1% - -代替事業者 0 0.0% - - 39.3 13.4% - -既存事業者 0.0 0.0% 0.1 0.1% 43.0 14.6% 74.2 25.3% 代替事業者 7.8 5.5% 8.1 5.7% 14.0 4.8% 57.3 19.5% 142.0 100.0% 143.2 100.0% 294.0 100.0% 293.5 100.0% 2011.9.30時点 家庭部門 合計 TaRTAM 適用 TaRTAM 非適用 規制料金 自由料金 家庭部門以外(産業、業務・商業) 2011.6.30時点 2011.9.30時点 2011.6.30時点 家庭部門 ・約95%が規制料金を選択 家庭部門以外の需要家 ・約55%が規制料金を選択 ・約45%が自由料金を選択 ⇒約25%がTaRTAM料金適用を受けていたが、 TaRTAM廃止に伴い、完全に競争料金に移行 家庭部門以外の需要家 ・約55%が規制料金を選択 ・約45%が自由料金を選択 ⇒約25%がTaRTAM料金適用を受けていたが、 TaRTAM廃止に伴い、完全に競争料金に移行 出典:H23年度資源エネルギー庁委託調査「 諸外国における電気事業制度の現状に関する調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」より
141
(競争的デフォルトサービス( Competitive Default Service(CDS) )
・既存電気事業者の供給エリアにおいて、供給事業者を変更していない需要家を無作為(約1/5)に抽出 ⇒抽出された需要家に対してサービスを供給する事業者を競争入札によって決定
事例④: ペンシルベニア州における強制的変更制度
利用可能性に関する議論~スタンダード・オファー③
事例③: ペンシルベニア州における比較価格(Price to Compare)
・ペンシルベニア州では1999年1月から部分自由化が開始され、2000年1月に全面自由化が完了。 ・小売電力料金を、①発電料金、②送電料金、③配電料金、④競争移行費用(CTC)に分割 ⇒②送電料金、③配電料金は規制価格。④競争移行費用は自由化にあたりストランデット・コスト回収を目的としたもの⇒既存事業者(EDC)の①発電料金に対して、 PUC(州公益事業規制委員会)との協議により、参考指標となる「比較価格(Price to Compare)」を設 定し、新規参入者が自由に設定する競争価格とともに公表(比較を容易にする目的)。 「比較価格」は、発電事業者の新規参入や需要家の供給者変更を促すため、想定市場価格より約3¢/kWh高めに設定(引き下げを禁止)。 ⇒比較価格は、スタンダード・オファー、デフォルト・サービスの料金としても適用 141 供給事業者の強制的変更の実施 →2001年1月にPECO Energy社地域において本措置が実施され、約25万軒の家庭用需要家が 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 99/04 00/04 01/04 02/04 03/04 04/04 05/04 家庭用 商業用 産業用 合計 ① ② ③ ④ ペンシルベニア州の新規参入者シェア(PECO社供給エリア)
(出所) Pennsylvania Office of Consumer Advocate、“Pennsylvania Electric Shopping Statistics” 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 99/04 00/04 01/04 02/04 03/04 04/04 05/04 家庭用 商業用 産業用 合計 ① ② ③ ④ ペンシルベニア州の新規参入者シェア(PECO社供給エリア)
(出所) Pennsylvania Office of Consumer Advocate、“Pennsylvania Electric Shopping Statistics” 2 4 6 8 10 12 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 家庭 商業 産業 平均 セント/kWh 部分自由化開始 全面自由化開始 電気料金の推移 電気料金の推移
(出所)DOE EIA、”Electric Power Annual 2005 - Data Tables”
2 4 6 8 10 12 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 家庭 商業 産業 平均 セント/kWh 部分自由化開始 全面自由化開始 電気料金の推移 電気料金の推移
(出所)DOE EIA、”Electric Power Annual 2005 - Data Tables”
→2001年1月にPECO Energy社地域において本措置が実施され、約25万軒の家庭用需要家が エンロン子会社のNew Power社へ移譲された(①)。しかし、エンロン崩壊によってNew Power社は 破綻し、これらの需要家はPECO Energy社が引き継ぐ結果となっている。(②)
→ PECO Energy社が1998年に提出した事業再編計画では、2003年1月1日までに家庭用およ び小口業務用需要家の新規参入者シェアが50%に達しない場合は入札によって所定の需要家の 供給事業者を変更することとされた。
142
(概要) ・米国テキサス州では、1999年に電気事業再編法(SB7)が成立、2001年7月からパイロット・プログラムが実施された後、2002年1月1日から ERCOT管内の私営電気事業者の全需要家に対して小売自由化が実施されている。 ・また、以下のような競争促進策を実施。 (スタンダード・オファー) ・小売自由化実施に伴い、既存事業者は小売供給部門を関連会社の形で分社化事例③:テキサス州におけるスタンダード・オファーの運用
利用可能性に関する議論~スタンダードオファー④
⇒基準価格(price-to-beat)制度… 既存供給事業者は新規参入者シェアが40%を越える、または2005年1月までは小口需要家に基準価格 (price-to-beat)で供給する義務が課せられていた。基準価格は燃料費の調整のみ認められた。 ⇒発電シェア規制の実施…州内を15区域のゾーンに区分し、区域内で各々20%以上の発電資産を所有することを禁じている。 ⇒発電設備利用権の競売… 40万kW以上の発電プラントを所有する既存電力会社は、5年間または地域の小売顧客(家庭部門及び小規模 商業部門)の40%が他の事業者に変更されるまでの間に、少なくとも15%相当の発電プラントの設備利用権を競売にかけなければならない。 (この条件が満たされるまで競売を継続する義務が課せられる。) 142 ・小売自由化実施に伴い、既存事業者は小売供給部門を関連会社の形で分社化⇒分社化された供給事業者は、関連小売電力供給業者(AREP : Affiliate Retail Electric Provider)と呼ばれる。一方、新規参入供給者が「競争的小 売電力供給業者」(CREP: Competitive Retail Electric Provider)と呼ばれる
・スタンダード・オファーのサービスについては、関連会社AREPが提供
⇒自由化実施時点までの積極的な供給者の選択をしなかった需要家は、AREP提供料金により、電力供給を受ける
143
事例①:イギリスにおける「標準ライセンス条件(SLC: Standard License Conditions)」
利用可能性に関する議論~デフォルト・サービス①
既存供給 事業者 需要家 既存供給 事業者 需要家 供給条件に係る交渉 が合意に達さなかった 場合、誰が電力を供 給するのか? 契約締結 自由化へ移行×
契約交渉 決裂○小売自由化の実施後、供給条件に係る交渉が合意に達せず、誰からも電気の
供給を受けられない需要家に対する供給
、として定義。
○ EU各国では、EU指令を念頭に置きつつ、各国政府が国内法に基づき制度設計
-イギリス… 「標準ライセンス条件」(SLC: Standard License Conditions)に基づき、全ての 供給者に対して家庭用需要家に対する供給義務を設定(「2000年公益事業法」) -ドイツ…各地域において最も需要家数の多い事業者が「基本供給者」として供給義務を負う (「2005年改正エネルギー事業法」) -フランス…EDF社による規制料金が適用
○米国では多くの州において、
「既存事業者」
がデフォルト・サービスを提供
143・2000年公益事業法30条では一定規模を超えて電気事業を営む者は、規制機関OFGEMを管轄するガス・電力市場委員会(GEMA: Gas and Electricity Market Authority)によりライセンスの取得が必要になると規定。OFGEMにより、その標準ライセンス条件(SLC)が設定
⇒事業許可証は、発電(Generation)、送電(Transmission)、配電(Distribution)、小売供給(Supply)、系統連係(Interconnector)の5つの部門毎に発行 ・SLCの「SECTION B: STANDARD CONDITIONS FOR DOMESTIC SUPPLIERS」では、小売供給業者に対するライセンス条件が設定。具体的に は、「国内供給契約に関する規則(Regulation of Domestic Supply Contracts)」の第22項“国内供給契約下における提供及び供給義務(Duty to offer and supply under Domestic Supply Contract)”において、ライセンス条件として、家庭用需要家からのオファーに応じる義務と契約に従い供給
する義務が規定 ⇒この条項の存在により、デフォルト・サービスが必要とされるような事態が生じることは無い ・ドイツでは、「2005年改正エネルギー事業法(Energiewirtschaftsgesetz)」に基づき、2007年1月から「基本供給者制度(Gundversorger)」の運用 が開始 ・「基本供給者制度」における「基本供給者」とは、地域において最も多くの家庭用需要家に供給している事業者であり、各地域のTSOが3年単位で指 名する。指名を受けた基本供給者は、価格を含む供給条件を公表し、その供給条件に従って、地域内の全家庭用需要家に対する供給義務を負う。 ⇒この供給義務を負う事業者が必ず存在していることにより、スタンダードオファー、デフォルトサービス、ラストリゾート等の提供が可能となる
事例②:ドイツにおける「基本供給者(Gundversorger)制度」
144
・OFGEMにより指名されたSoLR事業者が、既存事業者に代わり供給 義務を果たす事例①: イギリスにおけるSoLR制度
○小売自由化の実施後、供給者がなんらかの理由(破綻等)で市場から撤
退した場合の代替的供給
、として定義。
○EU各国では、EU指令を念頭に置きつつ、各国政府が国内法に基づき制度
設計
-イギリスでは…SLCの中で、Supplier of Last Resort(SoLR)条項が設定 -ドイツ…「基本供給者」が供給義務を負う -フランス…一定期間、RTE社が供給義務を負った後、入札により決定した最終補償契 約者が供給を実施
○米国では多くの州において
ラスト・リゾートは、デフォルト・サービスの一環
として提供
利用可能性に関する議論~ラスト・リゾート①
既存供給 事業者 需要家 既存供給 事業者 需要家 供給事業者の破綻等 の理由により、需要家 が誰からも供給を受け られない場合における 供給 契約締結 自由化へ移行×
破綻 144 SoLR事業者 OFGEM 電力供給 実施 既存事業者 (破綻事業者) 家庭用需要家 電力料金 支払 契約締結・ SLCの「SECTION A: STANDARD CONDITIONS FOR ALL
SUPPLIERS」では、全ての小売供給業者に対するライセンス条件が設 定
⇒「供給継続(Continuity of supply)」の第8項“ラストリゾート供給指令 下における義務(Obligations under Last Resort Supply Direction)”に おいて、ライセンス条件として、Supplier of Last Resort(SoLR)条項の 詳細が規定 備考: Consumer Focus UKに対するインタビューによると、現在までは倒産が発生 しているのは小規模な供給事業者に限定されており、SoLR事業者による継続供給 も容易だったが、今後、大規模な事業者の倒産が発生した場合は、SoLR制度では 対応できないことを懸念事項として指摘 平 常 時 既存事業者から ライセンス剥奪 破綻等による供給不可 電力供給 実施 OF G EMによる So L R指令 So L R事業 者 によ る 電 力供 給 通知 SoLR事業者 選択 電力供給 支払 契約締結 SoLR指令 SoLR指令発行により供給契約が成立 ⇒電気料金はSoLRが設定。合理的な供 給コスト と利益に概ね等しい額を超えて はならな い (SLC第8条第6項) SoLR事業者になっても、他需要家に対 して継続供給できることが条件 (SLC第8条1項) SoLR指令 の交付 SoLR事業者は、既存事業者に 代わり、電力を供給実施 (SLC第8条第3項) SoLR指令は、ライセンス剥 奪から6カ月以内に終了 (SLC第8条第2項) 出典:H23年度資源エネルギー庁委託調査「 諸外国における電気事業制度の現状に関する調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」より
145
・ペンシルベニア州では、既存事業者破綻時において、PUC(ペンシルバニア州公益委員会)により指名された
PoLR(
Provider of Last Resort)事業者
が、既存事業者に代わり供給義務を果たす
・PoLR供給事業者は、地元配電事業者が指名され、PUCよりライセンスが供給
事例③: ペンシルバニア州のPoLR制度
利用可能性に関する議論~ラスト・リゾート②
・供給者破綻等による供給途絶時は、一時的に
TSOであるRTE社が供給義務
を負い、その間に需要家は新たな供給事業
者を探す
・一定期間を過ぎても新たな供給事業者を探すことが出来なかった場合、破綻した供給事業者との契約期間は、
最終補償
契約者(fournisseur de dernier recours)
が供給を行う。
⇒
競争入札により決定
事例②: フランスによるラスト・リゾート制度
145
・PoLR供給事業者は、地元配電事業者が指名され、PUCよりライセンスが供給
⇒同様の制度は、ジョージア州、テキサス州、オハイオ州などでも導入中
価格可能性の考え方~低所得者層等の社会的弱者保護①
○低所得者層などの社会的弱者等に対して、妥当な価格で供給を受けることができるよう、適切な契約条件などの配慮
、に関
する議論
○EU各国では、EU指令を念頭に置きつつ、各国政府が国内法に基づき制度設計
-イギリス…低所得者層保護に関して「2000年公営事業法」に加えて「2000年家庭暖房と省エネルギーに関する法律」等が存在。また企業と政府 間の自主協定なども充実していたが、2011年4月「The Warm Home Discount」により法律で義務化
-ドイツ…社会保障制度政策の一環として、社会的弱者の保護を実施
-フランス…電力供給は公共サービスの意味合いが強く、 「2005年エネルギー政策指針法」等により社会的弱者を手厚く保護
○米国では、連邦レベルのプログラムに加え、各州が独自の取り組みを実施
(概要)
・2010年12月、英国エネルギー・気候変動省(DECC: Department of Energy and Climate)は、「The Warm Home Discount」と呼ばれる需要家
保護プログラムを発表。2011年4月より実施
事例①: イギリスにおける「The Warm Home Discount」プログラム
146
保護プログラムを発表。2011年4月より実施 ・電力を含むエネルギー供給会社に対して、社会的弱者に対するエネルギー料金を割引 ⇒これまでは自主協定に基づき割引を実施していたが、法律によって明確に義務付け (補助額、財源等) ・高齢の貧しい年金生活者、さらに低所得者、病気、障害等を持つ社会的弱者を対象に、約200万世帯/年のエネルギー料金を130£ディスカウント ⇒2015まで4年に渡り、約11億ポンドの予算を計上 ・以下の4点の支援重点分野を設定 ①コアグループ支援…燃料貧困(Fuel Poverty)と冬期の凍死リスクを持っている最貧状態にある年金生活者 ②ボーダーグループ支援…燃料貧困のリスクを持っているコアグループ以外のグループ ③取組継続(Legacy Spend)…エネルギー供給企業と政府間の自主協定終了(2011年3月)に伴い、その対象であった世帯の支援 ④産業イニシアティブ…「脆弱な状態にある顧客確認のためのパートナーシップ」などの自主協定枠組における取組事例の継続」 出典:H23年度資源エネルギー庁委託調査「 諸外国における電気事業制度の現状に関する調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」より価格可能性の考え方~低所得者層等の社会的弱者保護②
(概要)
・2000年公益事業法に基づき、独立的なガス電力小売市場における市場監視を目的として設立されたガス電力消費者会議
(the Gas and Electricity Consumer Council)の通称
・Energywatchは毎年年次報告書を公表し、市場監視の結果の公表を行うとともに、Ofgemに対し、ガス電力市場の市場監視に
おいて観察された事例を基に意見を申立てることができる。
(Energywatchの役割)
・消費者問題に監視助言と情報の提案又は提供を行うと共にそのような事項に関して消費者の見解を代表することができる。
・消費者の苦情を解消するため調査を行う。・エネルギー大臣、規制当局(特にOfgem)、ライセンス保持者及びその他地域機関
のような消費者利益に影響を与える活動を行う主体に助言と情報提供を行うことができる。
事例②: イギリス「Energywatch」による監視
147
※なお、「Energywatch」は2008年に「Consumer Focus UK」に統合されているが、基本的機能は引き継がれている。
内容 British Gas料金 未徴収問題 2003年2月に2003 EnergywatchはBritish Gasの課金問題につき問題を提起。その問題とは、数ヶ月から数年に渡 り5万件の需要家への料金徴収に失敗していたというもので、突然巨額の料金徴収が消費者に行われることと British Gasの本問題への自己満足的姿勢が問題とされた。Energywatchは未徴収額を1,300万ポンドと見積もり、 メディアにも呼びかけた結果、割引又は長期返済の実施をBritish Gasから引き出すことに成功した。 ガイドラインの 作成 2002年9月にEnergywatchとOfgemは債務と供給停止について好ましい実践に係わるガイドラインを公表。これは、 債務と未払いについて6つの段階を最低限踏む必要があることを示すもの。 Energywatch活動の例
価格可能性の考え方~低所得者層等の社会的弱者保護③
(概要)
・EDF社、GDF社、地方公共団体などが拠出する社会的弱者向けの基金。料金支払不能な需要家に対して、援助を実施
⇒2010年、EDF社は22€millionsをエネルギー連帯基金と関連する家庭向け基金(Social Housing Fund)に対して拠出。20万人の顧客を補助
事例③:フランスにおけるエネルギー連帯基金(Energy Solidarity Fund)
(概要) ・2000年フランス電力自由化法に関連して、EDF社が創設。2005年1月より開始 ・世帯年収が€5,520/年を下回る家庭に対し、家族構成に応じて、最大100kWh/月を対象に、電力料金の割引を実施 -単身世帯: 30%割引 -2人以上の子供がいる非単身世帯: 50%割引
事例④:フランスにおける特別割引料金制度
148
事例⑤:フランスにおける電力供給停止措置の禁止
(概要)・2006年7月13日に制定された「住宅国家契約法(ENL: Engagement national pour le logement)」では、エネルギー連帯基金から支援を受けている世 帯等に対して、冬季(11/1~3/15)における電力供給停止を禁止
価格可能性の考え方~低所得者層等の社会的弱者保護④
(概要)・低所得者や高齢者等の社会的弱者に対するエネルギー料金支払い支援プログラム。低所得者に対し、冬場、夏場、異常気象時における冷暖房費 の費用を支援するための制度であり、具体的には①冷暖房料金の支払い支援、②緊急時における支援、③住宅の耐候化に係る支援、等を実施する。 ・根拠法令は、1981年包括財政調整法第26編(Title XXVI of the Omnibus Budget Reconciliation Act of 1981)であり、社会保障制度の一つとしての位置 づけ
(管理・監督主体)
・連邦保健福祉省の児童家庭局(Administration for Children and Families)が監督を行い、各州が運営を実施
(財源)
・連邦政府から州に一括支給される交付金が財源となる。気象条件が州により大きく異なることもあり、州により給付金額が大きく異なる(気候環境が 厳しい州は多めに配分)。
⇒2009年は51億ドルの予算を確保(2000年代前半は3億ドル程度)
(給付要件)
事例⑥:低所得家庭向けエネルギー支援プログラム(LIHEAP: Low Income Home Energy Assistance Program)
149
(給付要件) ・世帯所得が州の定める一定額以下であること テキサ ス州 ペンシ ルベニ ア州 各事業者が寄付金を原資として 現金支援を実施。ex) $1 Energy Fund ・LIHEAP(連邦保健福祉省によるプログラムで、低所得者に対して、①冷暖房料 金の支払い支援、②緊急時における支援、③住宅の耐候化補修に係る支援、を 行う(公共福祉局)) ・WAP(連邦エネルギー省によるプログラムで、低所得者に対して、住宅のエネル ギー効率向上のためのサービス(効率化診断等)を行う(地域経済発展局)) ・CAP(州独自のプログラムとして、配電事業者に対し、低所得者への低廉な料金 設定等に係るプログラム策定義務を課している) ・LIURP(州独自のプログラムとして、配電事業者に対し、低所得者のエネルギー 効率向上のためのサービス提供に係るプログラム策定義務を課している。) 米国 各事業者が寄付金を原資として 現金支援を実施。
ex) Project Care Texas ・CEAP(LIHEAPに相当) ・WAP ・LIET-UPテキサス・プログラム(小売全面自由化にあたり、既存電力会社から事 業者変更を行わない需要家は従来より6%割安な電気料金が適用されるが、低所 得者に対しては従来より10%割安な電気料金を適用する。) 事業者によるプログラム 公的プログラム テキサ ス州 ペンシ ルベニ ア州 各事業者が寄付金を原資として 現金支援を実施。
ex) $1 Energy Fund ・LIHEAP(連邦保健福祉省によるプログラムで、低所得者に対して、①冷暖房料 金の支払い支援、②緊急時における支援、③住宅の耐候化補修に係る支援、を 行う(公共福祉局)) ・WAP(連邦エネルギー省によるプログラムで、低所得者に対して、住宅のエネル ギー効率向上のためのサービス(効率化診断等)を行う(地域経済発展局)) ・CAP(州独自のプログラムとして、配電事業者に対し、低所得者への低廉な料金 設定等に係るプログラム策定義務を課している) ・LIURP(州独自のプログラムとして、配電事業者に対し、低所得者のエネルギー 効率向上のためのサービス提供に係るプログラム策定義務を課している。) 米国 各事業者が寄付金を原資として 現金支援を実施。
ex) Project Care Texas ・CEAP(LIHEAPに相当) ・WAP ・LIET-UPテキサス・プログラム(小売全面自由化にあたり、既存電力会社から事 業者変更を行わない需要家は従来より6%割安な電気料金が適用されるが、低所 得者に対しては従来より10%割安な電気料金を適用する。) 事業者によるプログラム 公的プログラム
○遠隔地や離島など、都市部の需要家より相対的に高い供給コストが必要となるため、不利な供給条件の適用を受ける蓋然
性が高い需要家に対する供給
、として定義
(概要) ・EDF社、地域配電会社等が特定の公共サービスのために実施する追加費用を補償することを目的とする ・電気料金を通じて、最終顧客から直接徴収 (参考: 2011年度上半期のCSPEは、7.5€/MWh。改正2011年財政法では、CSPEを2012年6月30日までは9€/MWhに設定) (拠出金用途①~遠隔地への供給費用) ・EDF社、都市部の非国有配電会社は、このCSPEを行い、遠隔地への供給費用(離島、僻地への配電費用)の補填を実施 (拠出金用途②~再生可能エネルギー普及に向けた基金) ・再生可能エネルギーやコージェネレーション普及に向けた、発電電力の購入義務費用の補填を実施価格可能性の考え方~遠隔地、離島など不利な供給条件
事例①: フランスにおける電力公共サービス拠出金(CSPE: Contribution au Service Public de l’Électricité)
150
・再生可能エネルギーやコージェネレーション普及に向けた、発電電力の購入義務費用の補填を実施 ⇒不足分はEDF社が単独で負担料金 (拠出金用途③~TaRTAM制度の維持) ・TaRTAM制度で必要となる費用の補填を実施 (概要) ・イギリスでは、地域的特性により配電コストが高くなる地域に対する助成制度として、2004年エネルギー法に基づきAAHEDCを導入。現在、北ス コットランド地域において適用されている。 ・送電事業者であるNational Grid社は、全ての小売供給事業者から助成金を徴収。徴収した助成金は、北スコットランド地域における配電事業者で あるScottish Hydro Electric Power Distribution Ltd に対して付与⇒全小売事業者に対して適用される助成金は毎年度計算され、7月に公表(現在の設定料金は、 0.016297 ペンス/kWh)
事例②: イギリスにおける地域補助制度(AAHEDC: The Assistance for Areas with High Electricity Distribution Costs Scheme )
参考: 自由化に伴う移行措置~価格凍結
マサチューセッツ州における価格凍結と市場価格リンク型デフォルト・サービス
・ 2002年以降、全需要家は小売供給事業者(REPs)から電力供給を受けることとされ、既存のREPsは1MW以下の需要家に対し1999年の価格から 約6%引き下げられた価格(Price to Beat)による供給を2007年1月1日まで継続することを義務づけ ・2007年以降、既存の小売供給事業者(REPs)に対する価格規制は撤廃テキサス州における価格凍結制度
・小売料金は発電料金(比較価格)、送電料金、配電料金等に区分され、料金上限規制(rate cap)が設定。各料金上限は1997年1月のレベルに凍 結。 ・発電料金上限については6社について2006年に失効したが、大手2社を含む5社は2009年~2010年まで上限規制を継続。 ・凍結期間終了後、規制料金はデフォルトサービス料金のみとなる。デフォルトサービスでは、選択権を行使していない需要家に対する小売事業者 を入札によって決定し、その料金は一般的な市場価格である「比較価格(Price to Compare)」を反映したものとされるペンシルベニア州における価格凍結制度
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・電力自由化に伴う移行措置として、大手私営電力会社(SDG&E社、PG&E社、SCE社)の家庭用・小規模商業用需要家向け小売料金を凍結(1996 年6月10%引き下げ) ※背景として、自由化当時には、2002年までに卸電力価格が20%程度は低下すると見込まれていたため、全需要家に対して小売価格を凍結することで、その差額分を電力自由 化に伴って発生する回収不能費用(ストランデッドコスト)の回収に充てようというねらいがあった模様。 ・2000年以降、電力供給不足に伴い、卸電力価格が高騰 ⇒ SDG&Eは、ストランデッドコスト回収に伴い1997年7月に価格凍結が解除。同社は、卸電力価格高騰分を小売価格に転嫁。その結果、小売価格 が高騰し需要家に大きな影響。州政府はSDG&E社の小売価格を再凍結する法案を可決 ⇒ストランデッドコストの回収が終了していないため価格凍結を解除できなかったPG&E社とSCE社は、財政状態が急激に悪化し、事実上倒産へカリフォルニア州における価格凍結と電力危機への対応
・移行措置としてのスタンダードオファー料金は、1997年の規制料金を基準として1998年に10%引下げ、1999年にさらに5%引下げが行われ、以後2005 年まで同水準に凍結された。 ・選択権を行使しない需要家は、2005年2月以降、より市場価格とのリンクが強いデフォルトサービス料金に移行 ⇒燃料費や購入電力価格の変動に応じて、料金が変動欧米における需要家保護策比較表
イギリス ドイツ フランス ノルウェー 米国ペンシルベニア州 1995年 1998年 2007年7月 1991年 2000年1月 1999年:電気事業法 2000年:公益事業法 2005年改正エネルギー事業法 (Energiewirtschaftsgesetz)2000年:電力自由化法 改正エネルギー法(Energiloven) The Electricity Generation
Customer Choice and Competition Act ○:有り 1999年電気事業法、2000年公 益事業法にて義務付け ⇒標準ライセンス条件(SLC)に より規定 ○:有り ⇒改正エネルギー事業法第36 条により担保(通称: 基本供給者 (Gundversorger)制度) ○:有り ⇒2000年電力自由化法により 担保 ○:有り ⇒改正エネルギー法により担保 ○:有り ⇒PUC(ペンシルべニア州公営 事業委員会)による州法に基づ き規定 ○:2000年公益事業法に基づき 「既存事業者」が継続供給 ○: 比較価格(Price to Compare) により担保 ○:SLCにより規定 ⇒需要家からのオファーに応じ る義務と供給義務が設定 ○: 比較価格(Price to Compare) により担保 ○: 改正エネルギー法に基づき 配電事業者が供給 全面小売自由化開始時 期 需要家保護に係る 主要法令 ユニバーサル・サービス の有無 全需要家への供給義務 スタンダード・オ ファー デフォルト・サービス ○:基本供給者制度により担保 (改正エネルギー事業法第36条 等) ○: EDF社が規制料金で供給
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○:SLCにより規定 ⇒SoLR供給事業者が供給 ○:RTE社が供給 ○:PoLR供給事業者が供給 ・既存事業者破綻時等には、 SoLR供給事業者が、その事業 者に代わり電力供給義務を担う ・指令する権限はGEMA(及び OFGEM)が持つ。 ・地域において最も多くの家庭 用需要家に供給を実施している 小売事業者を「基本供給者」とし て、当該地域のTSOが3年毎に 指名 ・既存事業者破綻時等において も、この基本供給者がその地域 における電力供給義務を負う ・RTE社による供給は、一定期 間経過後、終了。 ・新たな供給者が決まらない場 合は、最終補償契約者最終補 償契約者(fournisseur de dernier recours)を競争入札によ り決定 ・改正エネルギー法に基づき、 その配電エリアの支配的な小売 事業者(多くは地元の配電事業 者)に対し供給義務 ⇒NVEよりラストリゾート供給者 として指名 (最初の6週間は、Nord Pool Spot価格 +0.05 NOK/kWh以下 に価格を設定) ・既存事業者破綻時等におい て、あらかじめ最終保障事業者 (PoLR: Provider of Last Resort)として指名された地元配 電業会社が供給義務を担う ⇒PUCによるライセンス付与○:「The Warm Home Discount」 により法律で規定 ×: 原則無し (生活費保護制度でカバー) ○: 有り(例: エネルギー連帯基 金制度、特別料金割引制度、電 力公共サービス拠出金制度な ど)
○: 有り ○: 有り(LIHEAP, WAP, CAP等)
社会的弱者に向けた供 給停止回避の保護手段, 割引停止等 主な特徴 ラスト・リゾート 出典:H23年度資源エネルギー庁委託調査「 諸外国における電気事業制度の現状に関する調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」より