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COVID-19対応から学ぶ教育・研究活動

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Academic year: 2021

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(1)51. 論 説. COVID-19 対応から学ぶ教育・研究活動 辻 佳 子1*、小 安 重 夫2,3、富 田 賢 吾4、大 島 義 人5.  新型コロナウイルス感染症は国内のみならず、全世界に関係する問題である。感染しない・させないため の基本的対策が重要であることは論を待たないが、一方で、大学の基本的な使命のひとつである教育・研究 機能を充分果たすためには、単にコロナの収束を待つだけではなく、研究のアクティビティを維持しつつ、 コロナ感染リスク対策をどのようにバランスさせるかを考えることが必要である。また、コロナ感染症対策 として研究活動の時間的空間的な分散を余儀なくされることは、実験室のリスクの複雑多様化の要因となり、 その際の安全管理や健康管理についても、研究現場の状況に合わせて検討していかなければならないし、ま たその方法は、状況に合わせて変化していくものである。「大学が大学であるため」に、第一波の経験から学 んだ環境安全に関わる知識と考察力を活かして、日々変化する状況に適切かつ合理的に対応するコロナリス クとの共生策が急務であると考える。 キーワード:COVID-19、教育研究活動、環境安全衛生、感染リスク. 1.は じ め に. 況が想定外・不測の事態である、人の移動にともない 感染拡大にバウンダリーがないということに加えて、.  新型コロナウイルス感染症は国内のみならず、全世. 特に実験室においてはリスクの複雑多様化の要因とな. 界に関係する問題である。私たちの暮らし方は日常生. る。また、コロナの収束を待つだけではなく、今回の. 活も含めて大きく制限され、今までの経験から想定で. 経験を活かして、大学の新しい教育研究活動とそれに. きる範囲を大きく超えた状況となった。大学の活動は. 適応した環境安全教育・管理の手法について、考える. 一般社会での活動とは大きく異なり、大学の基本的な. 必要がある。. 使命は、研究、教育、大学と地域との連携であり、特に.  本稿は、2020年7月第38回大学等環境安全協議会総. 教育・研究機能は守らなければならない。また、これ. 会に続いて開催されたシンポジウムの講演内容を元に、. らの活動の中で「自己の安全確保と環境への配慮」は. 感染リスクと研究推進や経済発展を総合的に考えた際. すべての構成員の社会的責務である。そのため、我々. に、大学等の教育研究機関が果たすべき役割について. は、オンラインの会議、講義、テレワークといった慣. 環境安全の視点からまとめたものである。. れない取り組みに適応し、また、大学等の環境安全水 準の進展や環境安全の素養を身につけた人材育成に対 する情熱を持ち続けてきたことと思う。  新型コロナウイルスが目に見えない、感染拡大の状. 2.COVID-19 対応から学ぶ新しい研究所運営  理化学研究所では、2020年2月に緊急事態対策本部 を設置、3月に各種特例措置の導入とICT 環境の整備、 4月に非常事態対策本部を設置した。政府の緊急事態. 2020年12月25日 原稿受付、2021年1 月13日 受理 1 東京大学環境安全研究センター 2 理化学研究所生命医科学研究センター 3 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室 4 名古屋大学環境安全衛生管理室 5 東京大学大学院新領域創成科学研究科 *[email protected] DOI:10.11162/daikankyo.20C1201 ©2021 Academic Consociation of Environmental Safety and Waste Management,Japan. Vol.11 No.3(2021). 宣言の発出を受け、全職員の在宅勤務を指示したが、 研究所のインフラの維持とCOVID-19 関連研究は例外と した。この時点で、理事長声明として、様々なニーズ に迅速かつ機動的に応えていけるよう、より効率的な 検出法の開発、効果的な治療薬開発のためのデータや 施設等の供出、人々の生活や社会を持続させるための 研究など、理化学研究所にしかない研究力・研究資源.

(2) 52. を最大限に活用した取組を推進し、国内外の研究機関. With/ Post COVID-19 pandemic に対応して科学技術に. や大学、企業と力をあわせ、新型コロナウイルスの克. 期待されることは何か、社会生活や環境の変化へ如何. 服に貢献することを発出した。. に貢献できるのか、これらはまさに研究機関として社.  5月に活動制限レベルの設定と段階的移行手続きを. 会に対して果たすべき責任の核心である。医療システ. 開始した。活動制限レベルは、接触機会の算出を出勤. ムの改革、スマートラボ・リモートラボといった感染. 率の2乗とし、その削減率をもとに感染の状況に応じ. 症対策への対応、新しい社会への対応と課題は山積で. 5段階とした。. ある。国立研究開発法人として、我々には研究力・研.  6月に新しい理研スタイルの導入、理研独自の「新型. 究資源を最大限に活用し、With- / Post-COVID-19 社会. コロナウイルス感染防止マニュアル」を策定し、 (1)無. へ貢献する研究活動の着実な実施が求められている。. 菌状態の創出はあり得ないこと、(2)陰性証明は不可 能なこと、(3)自らの身は自らが守ることを基本とす. 3.国立大学におけるCOVID-19 対応の調査. ることを原則として、所内外での自らの行動を律する.  新型コロナウイルスに関する国立大学法人の対応は. ことを3原則とし、13の遵守項目を定めた(図1)。. 各大学のホームページから伺い知ることができる。全86.  具体的研究テーマの中でも、「富岳」の計算資源を提. 大学のホームページを確認したところ(閲覧時期 5月. 供する研究課題は多くの人が知るところであるが、た. 下旬から6月上旬)、掲載規模の違いはあるが、ほとん. とえば、産学官連携により、「富岳」に実装を進めてい. どの大学がトップページに COVID-19 対応情報を掲載. る超大規模熱流体解析ソフトCUBEを主に用いて、既. しており(図2)、9割以上の大学がすべての情報を一. 存の手法では難しかった室内環境における飛沫飛散に. 般公開していた。. 関する高精度かつ大規模シミュレーションを実施し、.  情報公開している85大学のうち、行動指針を示すた. 様々な条件下のシミュレーション結果に基づき、空調、. めに、活動ごとにカテゴリー分けを実施している大学. 換気、パーティション等を活用した感染リスク低減対. が多く、警戒の強化・緩和等の可視化、今後の見通し. 策の提案に繋げている。. などの可視化に心がけていることがわかった。研究活.  COVID-19 pandemic により、世界的な科学技術、研究. 動、講義、課外活動に関する指針はすべての大学が項. 活動を取り巻く環境の変化がおきた。特に、世界的な. 目として挙げており、会議や事務体制についても、ほ. 研究交流、国際頭脳循環の停滞は著しく低下している。. とんどの大学が項目として挙げていた。校門の閉鎖や. また、経済活動の停滞、科学技術、研究開発に対する. 学外者の入構規制、出張、海外渡航に関する項目は多. 投資への影響も危惧すべき点である。今後益々、オー. くの大学が挙げていた。そのうち、34大学は警戒のレ. 図1 フルカラム プンサイエンスの推進体制の強化が必要となる。また、. ベルを数値化し、そのレベルに合わせた行動指針を示. 2020.02. 緊急事態対策本部設置. 新型コロナウイルスに係る基本方針 (2020.2.19). 2020.03. 各種特例措置導入& ICT環境の整備. 新型インフルエンザ等に対応するための行動計画 (2020. 3. 25). 2020.04. 松本理事長からのメッセージの発信. 非常事態対策本部設置. 全職員在宅勤務指示 (2020. 4. 8). 松本理事長からのメッセージの発信. 2020.05. 理事長目安箱への意見、質問を 受付、運営に反映. 理研独自の 【新型コロナウイルス感染防止マニュアル】策定. 全職員在宅勤務指示の継続 (2020. 5. 7). 松本理事長からのメッセージの発信. 2020.05. 活動制限レベルの設定と 段階的移行手続きの開始 松本理事長からのメッセージの発信. 2020.06. 新しい理研スタイルの導入 感染防止徹底を前提に 段階的な全研究活動の再開. 松本理事長からのメッセージの発信. 図1 理研でのCOVID-19 感染拡大への対応 環境と安全.

(3) ਦ2 ύʖϓΩϧϞ. ໃ. COVID-19 対応から学ぶ教育・研究活動. ʤਦ2, 3, 4߻ΚͦͱϓϩΩϧϞͲ΍ߑΚ͵͏ʥ 図3 ハーフカラム. ಝचʤφρϕϘʖζ͗αϫψଲԢ͹Ίʥ. ୉ ժ໚ൔ෾ఖౕ. 5月中旬 休業要請解除. 6月上旬. 大学 主導. 図2 トップページに掲載しているCOVID-19 図3 行動指針の警戒レベルを 対応情報の大きさ(n = 86) 下げた時期(n = 31). 未実施. 個人 判断. 5月末. ஦ ժ໚1/4ఖౕ. その他. 個人判断 部局判断. ಝ୉ ঘ ժ໚1/8ఖౕ. 53. 図4. 実施. 大学 主導. 部局 判断. 図4 活動自粛中の巡視の実施 (n = 97). していた。それ以外の大学では数値化等はせず、都. おける巡視や作業環境測定、健康診断等の実施状況に. 度、項目ごとに情報をまとめていた。学生数が多い大. ついて、国立七大学環境安全衛生連絡協議会および地. 学、また総合大学であるほど、数値化している傾向が. 区ごとの国立大学環境安全衛生連絡協議会のネット. 高かった。数値化を行っている大学のレベルの変更時. ワークを通じて、アンケート調査を行った。調査期間. 期等を確認すると、4月中旬の緊急事態宣言を受けて、. は6月4日∼6月22日、有効回答数100件(内訳 大学. 多くの大学がレベルを上げており、その後、ほぼ全て. 73校、高等専門学校19校、独立行政法人研究機関4件、. の大学が5月中旬の感染拡大の落ち着きに鑑みて警戒. 青少年教育振興機構自然の家等4件)を得ることがで. レベルを下げ、教育研究活動の活性化を図った。その. きた。. 時期は地域によってもばらつきがあるが、6月上旬に.  活動自粛中における職場巡視は、4割程度の機関が. はすべての大学が一旦、警戒レベルを下げていること. 実施を中止した(図4)。また、廃棄物の回収について. がわかった(図3)。. は、事業系一般廃棄物、産業廃棄物、実験系廃棄物の.  各大学において実施した特徴的な取り組みとしては、. 順で、回収を継続した機関の割合が減少した(図5)。. 新型コロナウイルス感染症対策憲章などの策定、大学. 回収回数を減らすという対応を含めて、事業系一般廃. の対応について FAQとして公開、COVID-19 感染症に. 棄物はほとんどの機関が継続し、産業廃棄物は1割の. 関する教育教材の動画公開、学生支援の強化、社会の. 機関が中止した。実験系廃棄物については2割程度の. 再起動を支援するための特許の無償公開、などが挙げ. 機関が中止した。一方で、作業環境測定は7割程度の. られる。. 機関が実施した。教職員の健康診断については、6割.  環境安全に関する対応について、活動自粛期間中に. 程度の機関が延期しており、実施した機関のうち3割. 図5(a). a, b, cの円が同じ高さにそろうように配置してフルカラム 図5(b) (b). 円の大きさは他の図にそろえる (a). 回数を 中止 その他 減らした. 図5(c) (c). その他 その他 時期的 になし 中止. 実施した. 実施した. 回数を 減らした. 時期的 になし. 実施した. 中止 回数を 減らした. 図5 活動自粛中の廃棄物の回収(n=90) (a)事業系一般廃棄物、(b)産業廃棄物、(c)実験系廃棄物 Vol.11 No.3(2021).

(4) 54. 程度は病院関係者や特定業務従事者のみを対象とする. 留学生は、一時帰国したら再渡日できなくなり、コミュ. など限定的な実施であった。. ニケーションは同じ国の友人とばかりになり、大学の.  自粛期間に伴うトラブルとして、自粛期間直後のコ. 国際化からは逆行した状況にある。. ンセントからの電気火災の発生、液体クロマトグラ.  また、対面での活動が制約され、ほとんどの講義や. フィのカラム目詰まりに起因する圧力上昇に伴い吹き. 会議がオンラインで実施されている。オンラインによ. 出した液体による眼の薬傷、排水の定期濃度測定時に. り、移動に伴う感染リスクは回避され、対面でのコミュ. 溜枡内の水量不足でサンプリングができなかった、と. ニケーション機会の代替手段として活用されている。. いう自粛中ならではのトラブルも発生していることが. しかし、ノンバーバルコミュニケーションや実験、実. わかった。. 習、フィールドワークのような研究教育活動の代替に.  COVID-19 パンデミック状況下で、環境安全担当とし. はなり得ない。安全教育においても、安全に関する知. て対応に苦慮した点も多数挙げられた。たとえば、消. 識と意識を持った学生を育成するために、いかなる状. 毒液・ハンドソープが在庫不足で調達が困難だったこ. 況であっても実施しなければならないが、これはオン. と、感染予防対策に関して様々な情報がある中で実効. ラインでは教育効果が低下する典型例である。. 的な方法の選択に苦労したこと、また、在宅勤務にお.  緊急事態宣言前後にはほとんどの実験や野外活動な. いて、関係者間のコミュニケーションの取り方の難し. どが停止していたが、少しずつ再開されるようになっ. さ、全構成員への周知徹底の難しさ、対面式安全講習. てきている(図6)。しかし、それぞれ自分の研究進捗. 会が実施できず特に新人教育に不安を覚える、といっ. を取り戻すのに必死で、しかも、三密を避けた研究体. た意見が挙げられた。一方で、良かった点も挙げられ. 制においては、新人に対する研究現場でのOJT の機会. ている。たとえば、在宅勤務やオンライン講義の加速. が減り、安全に関する座学の知識を使える知識に昇華. によりIoT 環境の整備や意識の変化があったこと、感染. する機会が減っているのが現状である。また、実験室の. 防止対策の基本的な認識が学内に浸透したこと、感染. コロナ対策として時間的空間的な分散を余儀なくされ. 症に対応する事業継続計画(Business Continuity Plan). るが、その際の安全管理や健康管理についても、研究. がこれを期に整備されたこと、などが挙がった。. 4.感染リスクと大学の研究活動 -withコロナ状況における環境安全管理-. 図6 現場の状況に合わせて検討していかなければならない。 (ハーフカラム). 【例年】 上級生.  大学等では新型コロナウイルス感染拡大防止のため. 新人. の活動指針を定めており、レベル(ステージ)に区切っ て段階的な対応をとっているところが多い。このやり 方は、比較的わかりやすく、理解が得られやすいが、 一方で、レベルの区切りに関する客観的な指標がない と、感染拡大リスクと活動レベルが対応しないという 状況になってしまうことが危惧される。COVID-19 パン. 新年度. 【今年】. 指導 OJT的 基礎習得. 活動停止. 卒業研究. 活動再開. 空白期間. しかも、withコロナ!. 研究の遅れを取り戻す. 上級生. 指導. 新人. OJT的 基礎習得. 卒業研究. デミックに関わらず、大学の実験研究には必ずリスク が伴うため、研究のアクティビティを維持しつつ、安. 図6 研究活動の段階的再開による研究現場の安全教育. 全管理や法令遵守をどのようにバランスさせるかを常 に議論してきている。同様に、COVID-19 感染リスクが 伴う中で、研究のアクティビティを維持しつつ、コロ. 5.ま と め. ナ感染リスク対策をどのようにバランスさせるか、を.  大学の使命は、教育研究の推進、地域社会との連携. 考えることが必要である。日常生活における感染拡大. にある。教育には人のつながり、ネットワーク、協調. 防止のための具体的な方策は、三密の回避等広く周知. 性といった人間力の醸成も含まれる。今回のCOVID-19. がされているが、Withコロナにおける「新しい研究様. パンデミックによる活動自粛は、大学生活を通じて、. 式」については、現在、どの大学等も苦労しながら模. 他者との関わりの中で対人関係の重要性を実感する機. 索している状態である。. 会が少なくなり、社会と自分の関わりの中で自分を高.  教職員や学生の自宅待機により、4月の入学式やガ. める機会が失われたことによる影響が危惧される。ま. イダンスが中止になり、それ以来、特に学生は大学に. た、全ての構成員がその個性と能力を十全に発揮でき. 来られていない状況が続いているところもある。特に、. る環境を整えることも使命としてあり、登校困難学生 環境と安全.

(5) COVID-19 対応から学ぶ教育・研究活動. 55. の解消は重大なテーマである。. である。第一波の経験から学んだことを活かして、「大.  コロナ禍において、これらの使命を充分果たせるよ. 学が大学であるため」のコロナリスクとの共生策が急. うに、その方法は、状況に合わせて変化していくもの. 務であると考える。. Education and research activities learning from COVID-19 Pandemic Yoshiko TSUJI 1*, Shigeo KOYASU 2, 3, Kengo TOMITA4, Yoshito OSHIMA5 1. Environmental Science Center, The University of Tokyo 2. RIKEN Center for Integrative Medical Sciences 3. Microbiology and Immunology, Keio University of Medicine 4. Environment Health & Safty Office, Nagoya University 5. Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo The ravages of Corona-Virus Disease-2019 have had an enormous impact on social life in all over the world. It is indisputable that basic measures to prevent infection are important. Moreover, in order for universities to fully fulfill the education and research functions that are one of the basic missions of universities, we must not only wait for settling down the spread of Coronavirus infections and getting back to normal, but also consider how to balance Coronavirus infection prevention measures while maintaining research activities. In addition, being forced to disperse research activities in time and space as a Coronavirus infection prevention is a factor in the complexity and diversity of risks in laboratories, and safety and health management in such situations must be considered in accordance with the situation at the research sites. In order for a university to be a university, there is an urgent need to take measures to coexist with Coronavirus infection risks in order to respond appropriately and rationally to the ever-changing situation, using the knowledge and considerations related to environmental safety that were learned from the first wave experience. Keywords: COVID-19, education and research activities, Environment Health and Safety, infection risk. Vol.11 No.3(2021).

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