プログラミング授業実践の提案
Proposal of Programming Trial Class Practice Incorporating Simple Motion Simulation in
Elementary School
本研究の目的は,小学校における既存の教科の枠組みで,情報・情報技術に関する問題解決を取り入れたプ ログラミング教育の授業内容を開発することである.本研究では,小学校5年生を対象とし,小学校理科「小さ な生き物」をテーマとした簡単な動きのシミュレーションを取り入れた試行的なプログラミング授業を実践し,そ の教育効果を検討した.分析の結果,1)プログラミングを取り入れた学習への興味・意欲を持続・発展させるた めに,簡単な動きのシミュレーションを取り入れることの重要性,2)アルゴリズムの理解を深めるために,学習者 が問題解決過程を意識できる学習活動を計画することの重要性,3)学習者の問題の解決方法を考慮した適切 な足場かけを設定することの重要性が示唆された. <キーワード> プログラミング,小学校,シミュレーション,授業実践1.はじめに
近年,初等中等教育における情報教育の重要性は飛 躍的に増している.このように情報教育の重要性が増し ている背景に第4次産業革命の浸透が挙げられる.情 報通信技術がこれからの社会に与える影響は極めて大 きく,今後の社会変化に対応できる人材育成に向けて, プログラミングに関する教育への関心は高い.山本らは これまでに実践されてきた教育実践の結果から,初等 中等教育におけるプログラミングの教育的効果につい て,1)探究力,2)アルゴリズム的思考,論理的思考力,3) 物事や自己の知識に関する理解力,4)コミュニケーショ ン力,5)他者の理解や協力して物事を勧めたりする力, 6)情報(技術)的なものの見方や考え方,7)プログラミング が設計された基礎にある事象(現実)の捉え方(見方・考 え方)の7点に整理している[1]. 我が国においても,情報教育の重要性は広く認識さ れており,2020年から小学校におけるプログラミング教 育(以下,「小学校プログラミング教育」と表記)が本 格実施されている.我が国の小学校プログラミング教 育の目標は,知識及び技能として,「身近な生活でコン ピュータが活用されていることや、問題の解決には必要 な手順があることに気付くこと」,思考力・判断力・表 現力などとして,「プログラミング的思考の育成」,学び に向かう力・人間性として,「発達の段階に即してコン ピュータの働きを,よりよい人生や社会づくりに生かそう とする態度を涵養すること」が設定されている[2].特に, 我が国のプログラミング教育においては,プログラミン グ的思考の育成が目標の中核とされている.プログラミ ング的思考とは,「自分が意図する一連の活動を実現 するために,どのような動きの組合せが必要であり,一* 1
阪東 哲也
論文受理日:2020年6月26日 *1 BANDO Tetsuya : 鳴門教育大学 (〒772-8502 徳島県鳴門市鳴門町高島字中島748)つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせ たらいいのか,記号の組合せをどのように改善していけ ば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論 理的に考えていく力」と定義されている[3].我が国の小 学校プログラミング教育におけるプログラミング的思考 の捉え方はその基となるコンピュテーショナルシンキング と比べ矮小化していることが懸念されている.簡潔に言 えば,プログラミング的思考の定義には1)主に論理的思 考,情報処理の手順に焦点化されていること,2)プログ ラミングは学習の道具として位置付けられ,(情報)技 術のあり方を主眼においた展開が想定されないことが 指摘されている[4].学校教育法において,小学校が「義 務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを 施すことを目的とする」と規定されていることを踏まえる と,小学校プログラミング教育は,広義な意味では普通 教育における技術教育の領域と考えられる.普通教育 における技術教育の目標は技術リテラシー育成と考えら れており[5],小学校プログラミング教育においても,技術 リテラシー育成の観点を踏まえる必要性が指摘できる. 黒田・森山は技術リテラシー育成の観点を踏まえた小学 校プログラミング教育実践の方法を開発している[6].しか し,技術リテラシー育成の観点を踏まえた小学校プログ ラミング教育実践の指導事例の蓄積は十分に認められ てはいない. 技術リテラシー育成の観点を踏まえた小学校プログ ラミング教育実践の指導事例の蓄積に向けて,情報・ 情報技術に関する問題解決を通して,プログラミング的 思考を育成するフェーズ(図1)と,身につけたプログラミン グ的思考を活用した一般的な問題解決を行うフェーズの 2つの学習モデルが提案されている[7].我が国の初等教 育においてはプログラミングを中心として学習する教科 は設置されず,既存の教科の枠組みで実施することと なっている.既存の教科の学習内容に,直接プログラミ ングに関する学習内容は含まれていないため,各教科の 学習と無理なく関係づけられる情報・情報技術と関連 した単元の問題発見・解決学習を取り入れた指導事例 の蓄積は喫緊の課題である. そこで,本研究ではプログラミング的思考を育成する フェーズに着目し,小学校における既存の教科の枠組み で,情報・情報技術に関する問題解決を取り入れたプロ グラミング教育の授業内容の開発を行うこととした. 図1 プログラミング的思考を育成するプログラミング体 験を取り入れた学習モデル[7]
2.教科における小学校プログラミング教育の授
業実践の検討
小学校プログラミング教育の具体例について,小学校 学習指導要領には算数科:正多角形,理科:電気の使い 方,総合的な学習の時間についてプログラミングを取り 入れた学習活動例が記述されている[8]. 先進的に小学校プログラミング教育に取り組んでい る指導事例については,山本らが多様なプログラミング 教材を利用し,様々な学年・教科で精力的に開発を行っ ている[9],[10],[11].小学生を対象としたプログラミング教育 実践の多くはビジュアル型プログラミング言語を活用し たものであり,Scratchを活用した実践[12]やプログラミン を活用した実践[13]が報告されている.また,PICマイコ ンを組み込んだ小学校から使えるプログラミング教材も 開発されており,小学校での実践が報告されている[14]. これらのプログラミングを取り入れた授業実践は小学 校でのプログラミング教育がどのように展開できるかとプログラミング授業実践の提案 いう観点で検証されている.多くの教育実践で適切な 指導の足場かけを設定することで,小学校段階からプロ グラミングに関する学習に取り組めることが示されてい る.一方で,これらの実践を実施する教科について上述 したように,小学校の既存の教科の枠組みで実施しな ければならず,プログラミングの学習内容に関する授業 時間の捻出は各小学校のカリキュラム・マネジメントの 中で行われる必要がある.教科の学習内容を担保しな がら,プログラミング教育を進めていくことについて,ど ちらの目標も達成されない可能性があると懸念されてい る[15]. 本研究では各教科の学習小学校プログラミング教育 として活用できる授業時間に制限があることを考慮しつ つ,児童に過重な負担をかけない学習活動で,教科の 内容を踏まえた実践開発を行うこととした.そこで,小 学校プログラミング教育の手引きによる分類からC分類 「教育課程内で各教科等とは別に実施するもの」に着 目した.C分類は学習指導要領に示されている各教科等 とは別にプログラミングに関する学習を行うものであり, プログラミングに関する学習活動の実施に先立って,プ ログラミング言語や技能の基礎の学習に取り組むこと ができると示されている.同時にC分類における学習活 動の設定について,プログラミングの楽しさや面白さ,達 成感を味わえる題材設定,各教科の学習と関連させた 具体的な課題設定であることも明記されている[2].本研 究では,各教科の学習と関連させた具体的な課題設定 を行い,プログラミングを通して課題の解決に取り組む 学習としてC分類の実践を計画した. 設定する問題解決も解決方法の構造が簡単なもの から複雑なものまで考えられるが,プログラミングの学 習経験がないことと,実践時数に限りがあることを踏ま え,情報・情報技術と関連した解決方法の構造が短時 間で把握できるものを検討した. このような学習活動を計画するにあたって,学習者が 表現したいと意図した動作とプログラムとの関係を簡単 に理解できる必要がある.そのためには,画面上でのプ ログラミングで完結する内容ではなく,プログラムした 内容が現実世界で再現できる学習活動を検討した.こ のような条件を満たす動作は前後左右といった「動き」 であると考え,生き物の動きに関する内容を扱う教科で ある理科を選択した.教科との関係性を具体的に課題 として落とし込むために,プログラミングに関する学習 活動は前時までの学習を生かせる課題を検討した.こ のように教科領域に関連したプログラムと動作の関係 性を把握できるシミュレーションのような学習活動を取 り入れることで情報技術やプログラミング的思考を学び ながら,教科の学びに還元されることを目指した.
3.活用したプログラミング教材
本試行的実践で活用したプログラミング教材はレゴ ®WeDo2.0である.WeDo2.0基本セットにはレゴブロッ ク,ギア,タイヤ,センサー,モータ等が含まれており,レゴ ブロックを組み立てることで,様々な機構を簡単に再現 できる.また,WeDo2.0は学習活動に応じて指導者と学 習者が必要な機構をカスタマイズでき,学習者が簡単に 1つのモータを制御できる特徴を有する.これらの理由 で,本試行的実践ではWeDo2.0を選択した.なお,発達 段階を考慮し,扱うモータを1つに限定した. 本試行的実践では簡単な動きを作ることができるよ うに,4輪の車型を採用した(図2).なお,構造上,ステア リング機構を組み込むことは難しいため,プログラムを 使って意図的に制御できるのは前方移動・後方移動の みである.なお,車型の上部に生き物の写真を挟み,見 立てた生き物を視認できるようにした.このようにするこ とにより,指導者が,児童が取り組んでいるコースを確 認できるようにした. 活用したプログラミング環境はビジュアル型プログラ ミング環境WeDo2.0のWindows版である.WeDo2.0は 各動作がブロック化されており,プログラミング初学者 でも簡単にプログラミングできるようにインターフェース が工夫されている.図2 使用したプログラミング教材(車型)
4.授業実践
(1) 実践日時と実践対象者 実践日時は,2018年7月上旬であった.授業は筆者が 行った.総合的な学習の時間の授業として,2単位時間 (1単位時間は45分)連続して実践した. 実践対象者は東海圏のA小学校5年生48名(男子22 名,女子26名)である.WeDo2.0を含め,プログラミング 経験がないことを考慮し,2,3人を1グループとし,2人の グループを3つ,3人のグループを14つ,計17つのグルー プに編成した. (2) 実践環境 A小学校のコンピュータ室で実施した.グループに1台 のWindowsOSのノートPCと1台のWeDo2.0の車型を準備 した.車型は指導者が予め組み立てたものを配布した. (3) 本授業実践の目標設定 本授業実践は各教科の学習と関連づけた具体的な 課題設定を行い,プログラミングを通して課題の解決に 取り組む学習として計画したため,C分類に相当する. 教科の学習との関係性を示すために,教科における目 標との対応を検討した.本授業の目標は2010年告示小 学校学習指導要領理科第5学年「B 生命・地球」におけ る(2)動物の誕生「(イ)魚は,水中の小さな生き物を食 べ物にして生きていること.」に関する理解なものとす ることと設定した.なお,本内容は小学習指導要領の改 訂により,第6学年「B 生命と地球」における(3)生物と 環境の関わり「(イ)生物の間には,食う食われるという 関係があること.」に移行している. プログラミングに関する情報・情報技術と関連した内 容としては,コンピュータの働きを支えるプログラムの基 本構造として,アルゴリズムの基本を取り上げることに よって,プログラミング教育の目標である「コンピュータ の働き」への気づきを深めることを狙いとした. (4) 授業実践の概要 ①導入 スライド教材を利用し,理科における前時までの学 習(生き物間の食う食われる関係)を簡単に振り返った. そして,本時の学習課題として,小さな生き物の視点か ら,大きな生き物に食われないようにするために,どのよ うに動けばよいかを考え,プログラミングすることをつか ませた. ②プログラミングに関する知識の簡単な説明 次に,スライド教材でプログラミングに関する基礎的 な知識として,どのような順番で命令をするか整理した ものをプログラム,プログラムを作ることをプログラミン グということを説明した.そして,プログラムの進み方と して,順次処理は前から順番に進めること,分岐処理は 条件によって進み方を変えること,反復処理はくりかえ すことの3つで表現できることを説明した.児童は説明 した内容について,グループに配布したワークシートに 適切な言葉を貼り付ける活動を行わせた. ③ WeDo2.0 の操作方法 プログラミングの活動前に,プログラミング教材の操 作方法として,実行,進む向き(モータの回転の向き),進 む速さ(モータの回転数),進む時間(モータの回転時間) について簡単な範示を行った後,児童はグループで,前 方移動と後方移動,くりかえし,センサーの利用(障害物 (筆箱)の前で止まる)について,プログラムと動作の関係 を確認した.プログラミング授業実践の提案 ④WeDo2.0を利用したプログラミング プログラミングを取り入れた課題は,メダカに食べら れない(当たらない)ように,工夫して移動することで あった.プログラミング経験がないことを考慮し,課題 の難易度が異なる3つのコースを設定した(オオミジンコ コース(速さと時間固定),ゾウリムシコース(速さと最初の 動き固定),ボルボックスコース(速さのみ固定)).グル- プで相談させ,この3つのコースから好きな順番で取り 組ませた.プログラミング活動時の様子を図3に示す.な お,取り組ませる課題の順番を固定しなかったのは,自 分たちで意思決定を行うことにより,主体的に取り組む 意欲を高めることをねらいとしている. ⑤学習のふりかえりと評価 最後に,本時の学習のふりかえりをし,本授業実践の 評価を行わせた.なお,回答については特定されないよ う匿名化して処理を行い,成績評価に加えないことを説 明した.
5.調査の方法
(1) 調査項目 本授業実践の最後に,事後の授業評価を実施した (表1).授業実践に対する学習者の評価を把握する項目 として,先行研究を参考に8項目を準備した[16].プログラ ミングに関する学習効果を把握する項目として,順次処 理,分岐処理,反復処理,複数解の検討,コミュニケー ションの5項目を準備した.授業実践に対する学習者の 評価,プログラミングに関する学習効果を把握するため の各質問項目にたいして,「4:とてもそう思う」,「3:まあ まあそう思う」,「2:あまりそう思わない」,「1:そう思わ ない」の4件法で準備した.本試行的実践で設定された 課題を解決するための気づきの状況を把握する1項目を 「はい」,「いいえ」の2件法で準備をし,どんな気づきが あったかを自由記述させた.なお,プログラミングスキル の習得を目的としてはいないため,コースのクリア状況 は評価に含まなかった. 表1 調査項目表 1 調査項目 授業実践に対する学習者の評価 (1)今日の学習はよく集中できた。(集中) (2)今日の学習はわかりやすかった。(わかりやすさ) (3)今日の学習は楽しかった。(楽しさ) (4)今日の学習はよく理解できた。(理解度) (5)今日の学習は簡単だった。(難易度(簡単)) (6)今日の学習で使った道具は面白かった。(道具の面白さ) (7)今日の学習内容をもっと学びたい。(本学習の興味) (8)プログラミングについてもっと学びたい。 (プログラミングの興味) プログラミングに関する学習効果 (1)問題を解決するために,順番を考えることができましたか。 (順次) (2)こうりつよく命令するために,くり返しを使って考えること ができましたか。(反復) (3)問題を解決するために,条件によってちがう動きを考えるこ とができましたか。(分岐) (4)今日の問題を解決するための方法をいくつか考えることが できましたか。(複数解) (5)問題を解決するために,グループの人と話し合うことができ ましたか。(コミュニケーション) 気付きの状況 (1)今日の問題「メダカに食べられないようにする」を解決する ために,必要なことに気づきましたか。(はい・いいえ) (2)今日の問題を解決するために必要なことは何でしたか。(自 由記述) (2) 分析の手続き 本実践に対する学習者の評価とプログラミングに関 する学習効果については高得点であることがそれぞれ 高水準であることを示すように得点化した.気づきの有 無については,気づきあり群と,気づきなし群の2群に分 図3 実践時の児童の様子と,作成したプログラムの例類した.なお,気づきは得られたと回答したが,自由記 述にわからないと回答したものについては,気づきなし 群として評価した.本授業実践に対する学習者の評価 得点とプログラミングに関する学習効果得点に対し,気 づきの有無(2:あり・なし)×性別(2:男子・女子)の二元配 置分散分析を実施した.
6.学習効果の検証
実践対象者48名のうち,欠席や回答に不備のあった3 名を分析から除外し,45名(男子21名,女子24名)を分 析対象とした.有効回答率は93.8%であった. ① プログラミング活動時の様子 プログラミングに取り組む際には,グループ内でプロ グラミングする役割,車型の配置・回収する役割を交代 しながら,協働的に取り組む様子が見られた.特に授業 者からの積極的な介入はしなかったが,PCの操作が苦 手な児童には,得意な児童から自発的な声かけがあっ た.解決すべき課題はプログラミングという児童が十分 に経験していない内容であったが,日常的なグループ活 動の経験が活かされることを窺い知ることができた. WeDo2.0の操作方法については児童間で解決するこ とができた.若干ではあるが,WeDo2.0とノートPCとの 接続不良等のトラブル対応は授業者が行った.児童は ノートPCの操作経験が少なく,プログラミングの経験が ないため,トラブル対応の自己解決を図ることは難しい ことが予想される.通常,授業者は1名であることから, 同時に機器のトラブルが発生した場合の対応について は,予備機を準備すること等,事前準備が必要である. 本試行的実践では機器のトラブルが生じた場合は,ワー クシート上に鉛筆でプログラムを考えておくように事前 指導を行い,トラブルが発生した順に解決するようにし た.本試行的実践においても,一時的にノートPCがフ リーズする,一時的にBluetooth接続ができない等,小さ な機器のトラブルは発生したが,授業者が1人でも問題 なく対応できた. ② 問題解決に関する気づきの評価 気づき有群を対象に,設定した問題の解決方法へ の気づきに関する自由記述を質的に分析した.第一に, 「タイミングが必要だった.」,「開始するタイミングが 必要なこと.」等,タイミングに関する気づきが7件(およ そ18.9%)であった.次に,「メダカに食べられない(見つ からない)ためにセンサーがとても必要だとわかった.」, 「メダカを見つけたら止まること」等,センサーの活用 に関する気づきが7件(およそ18.9%),「前に進む 止ま る 反復 分岐 順次のプログラムを使うこと」,「協 力」,「みんなで協力する」等,協力に関する気づきが7 件(およそ18.9%)であった.そして,「プログラムの進み方 の,順次,分岐,反復の使い方です.」等,アルゴリズム に関する気づきが6件(およそ17.6%)であった.また,「止 まること」,「メダカの前で止まること」というプログラム に関する気づきが2件(およそ0.6%)であった.「あきらめ ないこと.気持ちをしっかりもつ!」という諦めずに最後 まで取り組むことに関する気づきが1件(およそ0.3%)で あった.最後に,「頭を使うこと」,「メダカから逃げる 工夫」等,その他に関する気づきが5件(およそ14.7%)で あった. 質的分析の結果,情報・情報技術に関して,センサー の活用やアルゴリズム,プログラムに関する内容が計15 件(およそ44.1%),小学校プログラミング教育における 学びに向かう力・人間性等に関係した,協力や諦めず に最後まで取り組むことに関する内容が計8件(およそ 67.6%),気づき有群34名中23件(およそ67.6%)であった. センサーの活用は,WeDo2.0の操作確認時に触れただ けであったが,7件(およそ18.9%)の記述がみられたこと は特筆すべきことである.センサーを活用した体験を取 り入れることで,タイミングを考える必要がなくなること を体感することにつながると考えられる.センサーを活 用した学習活動を加えるのであれば,さらに1-2単位時 間が必要になると考えられる. ③ 本授業実践に対する学習者の評価 本授業実践の楽しさ,道具の面白さ,本学習の興味,プログラミング授業実践の提案 プログラミングの興味については,二元配置分散分析の 結果,主効果,交互作用に有意差は認められなかった. いずれも平均値が3.5以上と極めて高水準であったこと から,本試行的授業実践が児童のプログラミングに対す る興味を十分にひくものであったと評価できる.「今日 の学習内容をもっと学びたい」,「プログラミングについ てもっと学びたい」という評価が高かったことから,本 授業実践のように簡単な動きであっても,(児童が)プロ グラミングしたことが問題解決につながるようにシミュ レーションを取り入れることの重要性を指摘できる. 本授業実践で設定した課題の適切さを検討するため に,集中,わかりやすさ,理解度,難易度(簡単)に対して, 二元配置分散分析を行った(表2).分析の結果,性別の主 効果に有意傾向が示された(わかりやすさ:F(1,41)=3.44, p<.1,η2=0.08;理解度:F (1,41)=3.49,p<.1,η2=0.07;難 易度(簡単):F(1,41)=3.61,p<.1,η2=0.08).わかりやすさに ついては,女子の方が男子よりも授業がわかりやすいと 評価した可能性が考えられる.一方,理解度と難易度に ついては,男子の方が女子よりも授業の理解度を高く, 難易度を簡単と評価した可能性が示唆される.一般的 には,授業をわかりやすいと評価した方が,授業の理 解度が高く,難易度が簡単であると評価すると考えられ る.本調査のデザインでは,これらの評価に影響する要 因を正確に特定できないが,女子は授業内容そのもの は分かりやすかったと感じたが,プログラミングを取り 入れた本学習の理解や難易度に影響すると推察される プログラミングに関する操作に困難さを感じた可能性が 考えられる.本授業実践では操作確認の活動を,順次, 反復,分岐(センサー)と3段階で構成したものの,それぞ れの操作を確認するための活動時間が十分でなかった 可能性が指摘できる.上述したように,小学校段階では プログラミングを中心として学習する教科が設定されて いないため,プログラミングの操作方法を一定程度習得 するための時間捻出は各校裁量となっている.教科での プログラミングに初めて取り組む際には,必要な操作ス キルをどの時点で習得させるかについては引き続き検討 の余地があると考えられる. プログラミングに関する学習効果を検討するために, 順次処理,分岐処理,反復処理,複数解の検討,コミュ ニケーションに対して,二元配置分散分析を行った(表 3).分析の結果,順次処理と分岐処理については気づ きの有無の主効果が有意であった(順次:F(1,41)=4.64, p<.05,η2=0.10;分岐:F (1,41)=5.32,p<.05,η2=0.11).どち らの項目も,気づき有群が気づき無群よりも高く評価さ れた.さらに,気づき有群では,「メダカが,来たときにセ ンサーでとまって,メダカがいないときに進む.」といった 分岐に関する記述がみられたことを踏まえると,問題の 構造を把握することで,意図した動作とプログラムの対 応関係が理解しやすくなったと推察される.プログラミン グに取り組む問題の構造を把握できるように足場かけを 表2 気づき×性別における本授業実践に対する学習者の評価(平均値と標準偏差) 気づき 性別 集中 わかり やすさ 楽しさ 理解度 難易度 (簡単) 道具の 面白さ 本学習の 興味 プログラミ ングの興味 なし 男子 n=7 3.57 (0.53) 3.43 (0.53) 3.57 (0.53) 3.43 (0.53) 2.86 (0.90) 3.71 (0.49) 3.71 (0.49) 3.57 (0.53) 女子 n=4 3.25 (0.96) 4.00 (0.00) 4.00 (0.00) 3.25 (0.50) 2.25 (0.50) 3.75 (0.50) 4.00 (0.00) 3.75 (0.50) あり 男子 n=14 3.43 (0.65) 3.64 (0.50) 3.71 (0.47) 3.86 (0.36) 3.00 (0.78) 3.64 (0.63) 3.86 (0.36) 3.79 (0.43) 女子 n=20 3.40 (0.60) 3.75 (0.55) 3.80 (0.52) 3.30 (0.66) 2.60 (0.68) 3.70 (0.57) 3.65 (0.59) 3.60 (0.60) 気づき F(1,41)=0.00 F(1,41)=0.01 F(1,41)=0.03 F(1,41)=1.48 F(1,41)=0.86 F(1,41)=0.09 F(1,41)=0.35 F(1,41)=0.03 効果量(η2) 0.00 0.00 0.00 0.03 0.02 0.00 0.01 0.00 性別 F(1,41)=0.59 F(1,41)=3.44† F(1,41)=2.16 F(1,41)=3.49† F(1,41)=3.61† F(1,41)=0.05 F(1,41)=0.05 F(1,41)=0.00 効果量(η2) 0.01 0.08 0.05 0.07 0.08 0.00 0.00 0.00 交互作用 F(1,41)=0.41 F(1,41)=1.61 F(1,41)=0.96 F(1,41)=0.92 F(1,41)=0.15 F(1,41)=0.00 F(1,41)=2.00 F(1,41)=0.91 効果量(η2) 0.01 0.04 0.02 0.02 0.00 0.00 0.05 0.02 †:p<.10
適切に設計することで,アルゴリズムの理解が促進され ることが示唆された.一方,本研究で設定した課題への 気づき無群の人数が少なかったため,本結果を直ちに一 般化して解釈することは難しい.しかし,少なくとも,気づ き有群の値は3.5前後と高水準にあることから,学習者 が問題解決に対する気づきが得られる機会が創出する ことの重要性は指摘できる.ただ,プログラミングを体験 すればよいのではなく,コンピュータを使ってどのように 問題解決を行ったかについて意識化されるよう,学習活 動を計画する必要性があろう. 一方,WeDo2.0を活用して分岐処理を学習する場合 は指導上留意する必要がある.WeDo2.0でセンサーを 活用する場合,分岐処理の考え方を使う.WeDo2.0の仕 様上,センサーが反応しなかった場合は何も起こらない ため,何も起こらないに相当するブロック(プログラム)が なく,センサーが反応した場合の一方の条件しか明示的 にプログラミングしない.そのため,分岐処理の分岐(条 件に対し,YesかNoかによって後続処理が異なること)に ついては十分に意識化されない可能性がある.先行研 究[14]を踏まえれば,発達段階として小学校段階では,分 岐処理の理解は難しい可能性が示されているため,分 岐処理の効果的な指導方法については引き続き検討す る必要があろう. 複数解の検討については,性別の主効果で有意傾向 が示された(F(1,41)=3.69,p<.1,η2=0.08).男子の方が女 子よりも複数解を検討した可能性が考えられる.この点 について,2つの解釈可能性がある.1つ目の解釈とし て,男子はいろいろな解決方法を考えながら試行錯誤 する傾向があり,女子は問題解決が確実に行える1つの 方法を模索する傾向があることである.この解釈に立脚 すれば,女子に対しても複数解を検討させたい場合は, プログラミングに取り組む前にいくつかの解決方法を 検討する学習場面を設定することが考えられる.このよ うな複数解の検討が必然的である学習機会を経ること で,複数解を検討する意識が育成されると推察される. 2つ目の解釈としては,特に,女子においては複数解を 検討するための時間確保が十分でなかった可能性であ る.この解釈に立脚すれば,検討のための時間を捻出す ることで,女子の複数解を検討する意識を育成できると 考えられる.このような検討のための時間にはプログラ ミングに取り組む前の問題解決の方法を検討する時間 だけでなく,試行錯誤しながら,検討した問題解決の方 法を検証するための時間の両方が含まれているものと 考えられる.
7.まとめと今後の課題
以上,本研究では,小学校5年生を対象に,ビジュア ル型プログラミング環境WeDo2.0を利用した試行的授 表3 気づき×性別におけるプログラミングに関する学習効果(平均値と標準偏差) 気づき 性別 順次 反復 分岐 複数解 コミュニケーショ ン なし 男子 n=7 3.00 (0.82) 3.43 (0.79) 3.14 (0.90) 3.14 (0.90) 3.43 (0.79) 女子 n=4 3.00 (1.15) 2.75 (0.96) 2.25 (0.96) 2.25 (0.96) 3.25 (0.96) あり 男子 n=14 3.57 (0.51) 3.43 (0.76) 3.43 (0.76) 3.07 (0.92) 3.29 (0.73) 女子 n=20 3.40 (0.50) 3.60 (0.60) 3.25 (0.72) 2.80 (0.77) 3.60 (0.60) 気づき F(1,41)=4.64* F(1,41)=2.78 F(1,41)=5.32* F(1,41)=0.61 F(1,41)=0.17 効果量(η2) 0.10 0.06 0.11 0.01 0.00 性別 F(1,41)=0.14 F(1,41)=0.99 F(1,41)=3.69† F(1,41)=3.63† F(1,41)=0.07 効果量(η2) 0.00 0.02 0.08 0.08 0.00 交互作用 F(1,41)=0.14 F(1,41)=2.78 F(1,41)=1.64 F(1,41)=1.04 F(1,41)=0.96 効果量(η2) 0.00 0.06 0.03 0.02 0.02 * p<.05;† p<.10プログラミング授業実践の提案 業実践を行い,その教育効果を検証した.分析の結果, 本研究における条件の下,以下のことが明らかとなっ た. 1) 情報・情報技術に関する問題解決を取り入れたプロ グラミングの学習を通して,簡単な動きのシミュレー ションを取り入れることで,学習やプログラミングに関 する学習活動の興味を高めることにつながること 2) 学習者がコンピュータを使って,どのように問題解決 を行ったかについて意識できるように,学習活動を計 画することで,課題の構造に気が付き,プログラムの 基本となるアルゴリズムの理解が深まることにつなが ること 3) 適切な足場かけとして,学習活動の構成,検討時間の 確保等を検討することで,性差による思考過程の違 いなどに対応する必要があること 本授業実践に対する評価が高水準であったことの解 釈として,教科・単元に対する興味・関心の高さ,授業 実践以前からプログラミングに対する興味・関心の高さ が影響した可能性も考えられる.本研究で得られた知 見は実践事後評価の分析から得られたため,これらの 可能性を排除することは難しい.しかし,プログラミング を取り入れた本学習への意欲が高水準であったことと, 実践事後もプログラミングへの興味・関心が高水準で 評価されたことを踏まえれば,少なくとも本授業実践が 児童のプログラミングに対する興味・関心を持続・発展 させるものであったことを意味していると解釈できる.こ のことから,プログラミング教育の導入期の展開として, 教科のテーマを生かした簡単な動きのシミュレーション を取り入れたプログラミング学習活動を取り入れること の重要性を指摘することができる. 今後は,児童の実態として,教科・単元への興味・関 心およびプログラミングへの興味・関心を把握し,プロ グラミングの興味・関心に与える影響をさらに詳細に検 証するためのプレ-ポストデザインの追試を実施するとと もに,中学校技術・家庭科(技術分野)との連携に向け て,教育課程内のプログラミング教育実践(A分類,B分 類,C分類)を学校全体の年間指導計画にどのように位 置付ければ良いか,具体的なカリキュラム・マネジメント のあり方についても詳細に検討する必要があろう. [ 文献 ] [1] 山本利一・本郷健・本村猛能・永井克昇(2016),初 等中等教育におけるプログラミング教育の教育的意 義の考察,教育情報研究,32(2),3-12. [2] 文 部 科 学 省 ( 2 0 2 0 ) , 小 学 校プログラミング 教 育の手引き(第3版),https://www.mext.go.jp/ content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002. pdf (最終アクセス日:2020年6月22日) [3] 文部科学省,小学校学習指導要領解説 総則編(平 成29年3月告示),東洋館出版,2018 [4] 阪東哲也・黒田昌克・福井昌則・森山潤(2017),我 が国の初等中等教育におけるプログラミング教育の 制度化に関する批判的検討,兵庫教育大学学校教 育学研究,30,173-184 [5] 日本産業技術教育学会(2012),21世紀の技術教育 (改訂),日本産業技術教育学会誌,54(4),別冊 [6] 黒田昌克・森山潤(2019),技術リテラシー育成の観 点から日常生活の問題を解決する学習活動を取り 入れた小学校プログラミング教育の実践とその効 果,日本産業技術教育学会誌,61(4),305-313 [7] 阪東哲也・藤原伸彦・曽根直人・長野仁志・山田哲 也・伊藤陽介(2019),情報活用能力育成を基盤と した小学校プログラミング教育カリキュラム・マネジ メントの提案,鳴門教育大学情報教育ジャーナル, 16,27-36 [8] 文部科学省,小学校学習指導要領(平成29年3月告 示),東洋館出版,2017 [9] 山本利一・鳩貝拓也・弘中一誠・佐藤正直(2014), ScratchとWeDoを活用した小学校におけるプログラ ム学習の提案,教育情報研究,30(2),21-29 [10] 山本利一・鈴木航平・岳野公人・鹿野利春(2017), 初等教育におけるタブレットを活用したプログラミン グ学習の提案,教育情報研究,33(1),41-48 [11] 山本利一・山内悠(2018),初等教育における特別な
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The purpose of this study is to develop a lesson content for programming education that incorporates problem solving related to information and information technology within the framework of existing subjects in elementary schools. In this study, the author implemented an experimental programming class for 5th grade students on the theme of “Small creatures” in the science of elementary school, and investigated the educational effects of the class. The results of the analysis indicated 1) the importance of incorporating simple movement simulations in order to sustain and develop interest and motivation for learning that incorporates programming, 2) the importance of planning learning activities that allow learners to be aware of the problem-solving process in order to deepen their understanding of the algorithm and 3) the importance of setting up appropriate scaffolding that takes into account the learners' problem-solving methods.
<Keywords>