地 域
か
ら
の
メ
ツ
セ
ージ
大
平町
の
経済活性化
は
、住
民主
体
の
まちづくりから
財 団 法 人 とち ぎ総 合 研 犠 構 理 事 長赤羽根
肇
1
大
平 町
の
概況
大
平 町は、 栃 木 県 南 部に位
置し、 北は栃 木 市、東
は小 山市、
西は岩
舟 町、南
は藤
岡 町と隣 接し て い る。 町の 地 勢は、
北 西は太 平 山 をは じめ とする 山々 が 連 な る 丘 陵 地帯
で、
中心部か ら南は平地 が広がっ てい る。匠陵 部と平 野 部の境を
JR
両 毛 線 が 走 り、
中 心部を東武 日光 線が 縦断してい る。 東武 日光 線 の 新 大 平下 駅 か ら は快 速で浅 草まで約70
分の 距 離にある。 ま た、
町の南 部を国 道50
号が横 断す るなど交 通の便に も恵 まれてい る。 町の産 業と して は、
日立 製 作 所 (現凵立ホー
ム &ライフ ソリュー
ショ ン)
とい す ・”
自
動 車の ⊥場 を有 する ほか、
農業で は ぶ ど う、
イ チ ゴ、
トマ ト、
にら、
t 条大麦などの 農 産 物 が ある。 また、
ぶ ど うの シー
ズンや、
桜や紅 葉の シー
ズ ン を 中 心に し た大 平 山 周辺 の ハ イキ ン グな ど、年
間を 通 して40
万 人 以 上の観
光 客が訪
れて い るD2
企業城
下 町
の
功
罪
大 平 町は、 1
で も触れ た ように大 規 模な 工場 を有 する 企業が2
社立 地する と と もに、
農 業も 数 多 くの特 産 物を 生産 するな ど、 産 業 活 動は活 発であ る。 人9,
0008
,
0007
,
0006
,
0005,
0004,
0003,
0002
,
000
工業従 事者 数の推移S50
55
60
H2
7
12
年 (工業 従 事 者 は 最 盛 期の約 半 数 ) な かで も日 立 製作所の.
「場は昭和ユ9 年に 設 置 さ れ、
現 在 も関 連 会 社のH
立ホー
ム &ライフ ソリ ュー
シ ョ ン と して 稼 働 中で ある。
大 平 町の 産業 ・
経 済は、
こ の 日立 の工場と切 っ て も切 れ な い 関係に あ る。 この 工 場は、 新 大 平 ド駅 東口の、 現在の 町の 中心部に設置さ れ、
周辺 には関連 企業が 立 地 し、
関連企業の 工場も含めて数 千 人の従 業 者、 家 族 を含めて万 単位
の住 民、多
額の町 税の納付
な ど、
高
度経済
成 長期
までは、
大 平町に多大
な貢献
を 果た してきてお り、 こ れにより、 町の イン フ ラ 整 備もかなり進ん で い る。 しか し、
工業は、
日、Z
製 作 所を中 心と し た機 械工業が中心で、
町の特 産 物を活か し た製 品 開 発 などの動 き など他 分野へ の 進 出が遅れ、
商 業 も、
隣接 する栃 木 市や小 山 市に押 され、
め ぼし い 商 店 街 も形 成さ れ な かっ た こ と か ら、
地元購 買 率 も30
%台で推 移 する な ど 立 ち後れて し まっ(
中心 部に広が る未利
用 地)
た。 また、観
光 も、
ぶどう農 家の高 齢 化や後 継 者 不 足、
さら なる観 光 資 源の 開 発の遅 れ など、
観 光 客も減 少 傾向
にある。 この よ うな課 題を 生 じさ せ た原 因を一
言で表 す な ら、
日立 製 作 所の 工場の存 在である とい っ て も 過言では ない 。 し か も、
経 済のグロー
バ ル 化の 進 展に伴う
生 産拠 点の海 外 移 転の影
響は、 日 立で も例外
では な く、
工場 縮 小、
従 業 員の整 理が行わ れ た。 その結 果、
周 辺に立地 した 下請 け企 業にも多 大 な 影 響を及ぼ し、
町の経 済に も 打 撃を与えた。 また、T .
taの縮小に よ り、
土地 が遊 休 化し、
町 中 心 部には広 大 な 未 利 用 地が出 現し、
空洞 化現象が起きるな ど、
大 平 町全体へ 計 り知れ ない 影 響が出てきてい る。 い ま まで の ロ 立1
杜に町その ものを託 すよう な意 識と体 制、 い わ ゆる企 業 城下町の典 型 的 な 例が大 平 町でも起こっ てい るの である。 (1) 中 心 市 街 地 活 性 化 基本
計 画 の 策定
大
平 町が、 モー
タ リ ゼー
シ ョ ンの進展
に伴
う都市構造
の変化
や、
商業施
設の郊外
進 出、
さらに高 齢 化に伴う
地域
力の減
衰が進む中心 市 街 地におい て、各
種の事
業・
施 策を連 携 さ せ なが ら再
生・再構築
を図
り、
「都市
の顔」
とし て機能
する 「個
性 的で にぎ わい の ある中 心 市 街 地 」の形 成を目的と して、 平 成15
年 に中心 市 街 地 活 性 化基本 計 画 策 定委
員 会を 立 ち 上 げ、
足 利工業 大 学 との共 同研 究に よ り、
中 心市
街 地 活 性 化の方策
を探
っ た。こ の研 究に より、
交
通 拠点
機 能の 整 備、 コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン機 能の整 備、
情 報 発 信 機 能 の整 備、
生 活 支 援 機 能の整 備 な どの中 心市
街 地 活 性 化 基 本 計 画が策 定さ れた。
この基本 計 画は、
平成16
年5
月25
日付 けで、
中 心 市 街 地 活 性 化 法に則っ た「
大 平 町 中心 市 街 地 活 性 化 基 本 計 画 」 とし て国に提 出さ れ、
今後
は、
町 内で、
TMO
組 織に よ る実行計
画 の 策 定へ と繋 がっ てい くこととなっ てい る ほ か、
TMO
の動 きに 連動 して、 中心市街
地 活 性 化の 中心 的 施設 た るべ き、
新 大 平下 駅東
口 の シ ョ ッ ピングセ ン ター
跡 地の活
用策
を探る べ く、
中高 生10
名 を含 む公 募 委 員20
名と 町内各
団体
か らの委員
を併
せ て ワー
クショ ッ プ を 開催 し、
住民一
体 となっ た活
性 化対策
に取り組
みは じめてい る。3
活性化
に
向
け
た
町
の
取
り
組
み
大 平 町に おい て も、
こ の よ うな 状 況に手 を拱 い てい る わ けで は なく、
昨 今、
産業の 振興や 中 心 市 街 地の活 性 化の た め に、
様々 な 施 策に取 り 組ん で きてい る。C2
) 大平
町 経 済 活 性 化 対 策 会議
の開催
大
平町 が、
中 心市街
地活 性 化 対 策と併せ取 り組んだ事
業で ある。
平成15年
に、
町内の 農・
商・
工・
消 費 者の代 表 者に 公募 委 員を併 せ、
赤羽根 を委 員長 に、
2
年間をか け て 町経 済の 活 性 化の 方 策を探る会 議をス ター
ト させ た。 委員 は各
業 種・
分 野の 中 堅層が集ま り、
活 発な議 論が期 待さ れたが、 当 初は、 業 種ごとの思い が 平 行 線 をた ど る展 開となっ てし ま っ た
。
しかし、
会 議の議 論 を重 ねる につ れて、
さ らには、 ピッ クア ップ し た委
員に よ るワー
キング・
グルー
プで議 論を進め るうちに、
委員
の 思い が重なり、
ひとつ の方向性
を示 すよう
にな り、
さ らに本年 4
月の長
野県
小布施
町 の視 察 後に思い もよらぬ方向
に発 展してい く こ と となる。 現 在、
会議 として は、
中 間 報 告 をとりまと め た段 階で、12
月の最 終 報 告に向 けて議 論を 深め てい るところ である。 (3) 産 業振興奨
励金
の 活 用 大 平 町で は、
中心 市 街 地 活 性 化や経 済 活 性化対策会議
の経
過 を踏 ま え、
地 域の 活 性 化 を 下支
えする た め に、
平 成16
年 度 か ら産 業 振 興 奨 励金制 度をス ター
ト さ せ た。 これは、
新技
術や新 商 品の開 発によっ て、 地域経済
の活性
化に寄 与し ようとする企業に対して、100
万 円以内の奨 励金 を支 給 し よう
という
もので あ る。8
月に第1
回の審 査 会を開 催し、 申 請の あ っ た2
社の うち1
社につ い て奨 励金100
万 円 を支 給 する こ と となっ た。 な お 審査 会 委 員は、
赤 羽根の他、
町 外の専 門家2
名、
町 内の代 表 者2
名か らなる が、 審 査 会 自体 も審 査に と ど ま らず、
町 外の2
名の委
員は特
に大
平町の応 援 団 となるべ く行 動 し よう とい うことの了解が委 員 全 員でなされた。4
住
民 主
体
の
取
り
組
み の
ス タ
ー
ト
(1) きっか け は 経 済 活 性 化 対 策 会 議 住民主 体の 取 り組みの きっ かけとなっ たの は、前
述の と お り、
経済活
性 化 対 策 会 議であ っ た。経
済 活 性 化 会 議は町 が 設置した会 議で ある。一
般 的に 、 行 政が設 置し た会 議は、 町 が 原 案 を作 成 し、
そ れに沿っ て議 論 を進めて、
住 民の了解
を取っ て 、住
民参加
が果た さ れ た という
形を取るこ と が多
い 。 しか し、経済活
性 化 対 策 会 議は始 め か ら異 なっ てい た。 事 務局
側が全 く資 料 を 用 意しない どころか、
進め 方 も全 くの白
紙で臨む という異
例の ス ター
ト と なっ た。 そこ で、 まず、 委 員全 員か ら、 大 平 町に対 する「
夢 」を自由に語っ てもらう
こ と か ら は じめた。 その 「夢 」 をKJ
法に よっ て分 類 し、
4
つ の テー
マ にまと め、 1
回の会 議 ご と に1
つ の テー
マ につ い てさ ら に議論
を進め ること に し た。 さ ら に は、若手委
員か ら5
人ほ ど を 選ん で ワー
キング・
グルー
プを作 り、
会 議の 議 論の集 約を行 うことに し た。 こ の議 論を ま とめ た もの が、
今回提 出した中 間報 告である。 この ように書 くと、
ス ムー
ズに議 論 が 進ん だ ように も見 受 け ら れる が、
当 初は、
例 えば 商業者
や消費
者の 方が農 業の話 をする と、
農業
者か らは農 業の こ とは農 業 者に任せ う と言 わ ん ば か りの発 言が な さ れ、
業 種間の垣根は 高かっ た。
こ の垣根が取 り払わ れ相互の 理解 が進む に は1
年
ほ どの期間 が必 要 だっ た。 (2)小布施
町視察
で目覚
める ?こ の よ
う
な時 期、
平成16
年
4
月に、鈴
木 俊 美 大 平 町 長 も参 加 し、 長 野 県 小 布 施 町へ 視 察 に行 くこと と し た。 小 布 施町 は、
株 式 会 社 ア・
ラ・
小布
施を 中 心に行
政 に頼 ら ない 住民 主 導の ま ちづ く りを行っ てい ること で著名
で ある。 こ の町で、
ア・
ラ・
小 布 施企画 部 長の関 女 史か ら、
約2
時 間、
会 社 設立の経緯
や活 動内 容につ い て丁 寧 なレク チ ャー
を受 け、
実 際に 町 内を歩い てみ たりし た。こ の視 察の会 議 委 員に
対
する効果
は めざ ま しい ものがあり
、帰路
の バス の 中で の幾
人か の「
何か し な くては1
とい う発 言に現れ始め てい た が、
その後の ワー
キ ング・
グルー
プの 会 議に は っ き りと し た形で引 き継が れ、経済
活 性 化 対 策 会 議として何 らかの行 動 を起こそ う という結論
に達 し た。手始
め とし て は、
8
月に東
武 鉄 道が 主催 す る太 平 山ハ イキ ン グに来るハ イカー
を対 象 に、
大 平 町の 特 産 品 を販 売 しよ う とい うこ と に なっ た。こ こ で最 大の問 題 となっ たのは
、
農 業はJA
が 主体に、 商 業は商工会 青 年 部と商 店 会 が、消費
者は消 費 者友
の会の出 店がす ぐに決 まっ たが、
工業の出 店 がで きない とい う点で あっ た (最 終 的に は木工業 者の出店が あっ た が)。 こ の点につ い て は、
ワー
キ ング・
グルー
プ や会 議で何 度 も議 論になっ た が、
工業者
側か ら、直
接 的な参加
はできな くて も、 町が 元 気にな れば結 果 的に工業にも良い結
果が 出 て くるの でその た め に応 援 する、
との 意思表
明 を 受 けて、
農・
商・
工・
消費者
一
体と なっ て 活 動で きる態 勢が整っ た。
(3} スター
トは成功
!〜
「
開け てみ て !大 平 の 玉 手 箱 」〜
8
月28
日土曜日。 台 風17
号の影
響が心 配さ れ た が、 な ん と か雨は避 けら れ た。 「開 けて (ハ イ キ ング客で賑わ う会場)
みて !大
平の玉手箱
」をテー
マ に大
平の宣 伝 を開 始 する。 準 備 開 始と時 を 同 じ く して、
ハ イカー
の受
付が横で始 まっ てい る。続
々到着
するハ イカー
。 その数
約1
,
300
人。受付
に長 蛇の 列が で き、 準 備に も力が入る。12
時 過 ぎ ハ イ カー
が戻っ て くる 。 全員一
致 して呼び込 み を開 始。 特 産のぶ どうは早々 に売 り切 れ。 その ほ かの商 品 も売 り切 れ 続 出。 出店 者はも ちろ ん、
出店
しなかっ た委員 (
そのな か に は 町会議員
も含
まれ る)
も、 自
らの商
品を売る かの ご とく呼び込み の声にも力 が 入る。 結 果は、
全体で約60
万 円の 売上げ。
座して 見て い るだけで何 も起こ らなかっ たこ と が 、 やればで きるとい う感 触に替
わっ た 。 こ れ を一
過 性の もの に し ない で、 続 けて い こうとい う意 欲 もで てい る。
9
月には今 度は町 民 向 け に朝
市を開 催 し、 こ れ を定 着 化 させ たい 意 向 もある。5
今 後
の
課 題
大
平 町の課 題とし て は、
商店街
の活性化
や、 中 心 市 街 地の活 性 化 対 策 など様々な 課題 があ る が、
こ こ で は、
緒につ い た住
民 主 体の 大 平 町 活 性 化の動 きにつ いての 課題 に絞
っ て述べ て み たい 。 (i) 息の長い活 動 と住民参加
住 民に よ る
取
り組
み は端
緒につ いた ば か り であ り、
この取
り組み が広く 町民に認 知さ れ る まで にはい た っ て い ない 。 こ の 取 り組み を単
に一
過性
の イベ ン トで終わ ら せ るこ と な く、息の長い 活 動と して続 けてい くために は、
住民主体によ る ま ちづ く りの意 義を町 民に知 らしめ る と ともに、
仲間の 輪 を広げてい くこ とが 必要で あ る。
この た め
、
12月に予定さ れて い る経 済 活 性化 対 策 会 議の提 言 後に