電気的手法を用いた溶脱後のセメント系材料の化学的および物理的変質
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(2) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12 表-1 セメントの化学組成. SiO 2 20.44. 化学組成(wt%) Al2O3 Fe2O3 CaO 5.23 2.88 64.06. リード線 12cm SO3 2.19. 4cm 4cm. 2.5cm. 表-2 試験体配合 セメント. W/C. S/C. OPC. 0.30 0.43 0.50 0.60. 1.0. W. 単位量 (kg/m3) C S 302 1007 1007 380 895 895 419 838 838 464 773 773. リード線. チタンメッシュ(陽極) 10A/m2. 蒸留水 エポキシ樹脂. *W: Water, C: Cement, S: Fine aggregates. 溶脱後の物性を取得できる評価手法は大変有用であると 考えられる.さらに,電気的手法は,最も迅速に溶脱を. チタンメッシュ (陰極). 進行させることができ,長期に亘る溶脱に伴う物理的変. 暴露面. 図-1 試験体の概要. 質の評価への適用が期待されている.特に,物質移動抵 抗性指標としての拡散係数の評価に関して,電気的手法 における溶脱現象を把握することは電気的手法の実用性. が56日となるまで封緘養生した.本論文では,作製した. を考慮した場合には非常に重要であると考えられる.し. モルタル試験体の長期に亘る溶脱現象に伴う変質を短期. かしながら,上記の課題に関する研究事例は非常に少な. 間で再現することを目的として,電気的手法の適用を行. い.. った.そのため,陽極としてチタンメッシュを底面から 2.5cmの位置に設置した.本論文では,打設底面を暴露. 以上の知見に基づき,長期に亘る電気的手法による溶. 面とし,暴露面以外をエポキシ樹脂で被覆した.. 脱後のセメント系材料の1)化学的な変質として,主要な 水和生成物であるCa(OH)2の消失およびC-S-HのCa/Si比の 低下を確認すること,2)物理的な変質として,累積空隙. (3) 電気的手法. 量および空隙率の増加を確認すること,および拡散係数 の増加に対する累積空隙量および空隙率の影響を明らか. 図-1に試験体の概要を示す.外部溶液は蒸留水とした. 外部溶液量は試験体の単位暴露面積あたり100cm3/cm2と. とするとともに,3)溶脱現象に伴う拡散係数の評価にお. した.通電は試験体内部のチタンメッシュを陽極,蒸留. ける電気的手法の妥当性を示すことを本研究の目的とし. 水中の電極を陰極として行った.試験体に対する付加電. た.. 流は10A/m2の定電流とし,通電時間は1000および2000時 間とした.通電中は,48~72時間に一回の頻度で外部溶 液を全量交換した. なお,本論文で同一試験に供する試験体および試験片. 2. 実験概要. 数n=3とし,平均値として各測定項目の結果を示した. (1) 使用材料および配合 本論文では,セメントには普通ポルトランドセメント (OPC,密度:3.16[g/cm3],比表面積:3320[cm2/g],表-1参. 3. 測定項目. 照) を使用し,細骨材には珪砂5号(表乾密度:2.60g/m3, 粗粒率:3.10,最大寸法:0.6mm)を使用してモルタル. 50℃の水中で材齢が56日となるまでの封緘養生,およ. 試験体を作製した.水セメント比(以下,W/C)は0.3, 0.43,0.5,および0.6の4水準を設定した.練混ぜ水には. び電気的手法の適用終了後,以下の項目に関する測定を. 蒸留水を使用した.各試験体の配合を表-2に示す.. 直深さ方向に5mm間隔で試験片を採取した.本論文では,. 行った.なお,電気的手法の適用終了後,暴露面から垂 試験片を多量のアセトンに浸し,浸した状態のままアス ピレータにより1時間減圧し,水和停止した.その後,. (2) 試験体作製方法 型枠はJIS R 5201に準拠した4×4×16cmの鋼製型枠を使. それぞれの分析用にアスピレータによる乾燥とD-dry(平 衡蒸気圧6.666×10-2Pa)を24時間実施した.. 用した.打設から24時間後に脱型し,50℃の水中で材齢. 521.
(3) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12. 圧力(MPa) 0-8 8-16 16-24 24-32 32-40 >40. モルタル中のCa(OH)2量 (g/cm3). 表-3 水銀圧入法における加圧減圧速度 加減圧速度(MPa/sec) 加圧時 減圧時 0.06 0.10 0.08 0.14 0.10 0.18 0.14 0.23 0.18 0.30 0.25 0.40. 0.14. W/C: W/C: W/C: W/C:. 0.12 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 0. 5. 10. 15. 20. 暴露面からの距離(mm). 試験片 非検出側セル. 5mm. 0.30 0.43 0.50 0.60. Cl-検出側セル. a) 1000 時間. 5mm 1mm. Ca(OH)2 飽和水溶液. モルタル中のCa(OH)2量 (g/cm3). エポキシ樹脂. NaCl 5mass%. 図-2 微小拡散セル試験の概要. (1) Ca(OH)2量 試験体中の試験後のCa(OH)2量を定量するため,示差 熱分析による分析を行った.示差熱分析には示差熱分析. 0.14. W/C: W/C: W/C: W/C:. 0.12 0.1. 0.30 0.43 0.50 0.60. 0.08 0.06 0.04 0.02. 計(DTG-60A,(株)島津製作所製)を使用した.測定は,. 0 0. 5 10 15 暴露面からの距離(mm). 20. 窒素雰囲気(流量:50mℓ/min)中で白金セルを用いて行っ. b) 2000 時間. た.なお,昇温速度は10℃/minとした.Ca(OH)2量は示差. 図-3 通電後のモルタル中の Ca(OH)2 量. 熱分析計による405~515℃の減量分をCa(OH)2の脱水に よる減量としモルタル中のCa(OH)2量を算出した.. 表-4 2000 時間通電後の C-S-Hの Ca/Si 比. (2) C-S-HのCa/Si比. W/C 0.30. 溶脱後の硬化体中のCa(OH)2量からCa(OH)2が概ね消失. 0.43. し,エトリンガイト及びモノサルフェートのXRDピー. 0.50. ク強度から,両者が概ね消失したと確認される箇所では, C-S-Hの変質も進行していると考えられる.そのため,. 0.60. 暴露面からの距離(mm) 0~5 0~5 5~10 0~5 5~10 0~5 5~10. Ca/Si比 0.67 0.74 0.86 0.76 0.79 0.64 0.64. C-S-Hの変質が進んでいると思われる箇所についてC-S-H の組成としてCa/Si比を測定した10).なお,エトリンガイ トおよびモノサルフェートの定性分析における粉末X線. 散セル試験により見かけの塩化物イオン拡散係数(以下,. 回折の測定条件は,ステップ幅を0.02°,スキャンスピー. 拡散係数)を測定した11).微小拡散セル試験の概要を図-2. ドを2°/minとし,それぞれ9.1°および9.9°付近の回折パタ. に示す.試験結果は濃度変化が定常となるときの傾きを. ーンに着目した.. 塩化物イオンの濃度変化速度として計算した.その後, 上記の濃度変化と単位時間,および単位面積あたりに移 動するイオン量に関してFickの拡散則を考慮し,拡散係. (3) 空隙径分布. 数を算出した.なお,n=3とした場合の本試験結果のば. モルタル中の孔径0.0096~10µmの空隙径分布(図中0.01. らつきは20%程度の範囲内であることを確認した.. ~10µm)を水銀圧入式ポロシメータにより測定した.水 銀 圧 入 式 ポ ロ シ メ ー タ に は PASCAL140 , お よ び PASCAL240を用いた.測定中の加圧および減圧速度を. 4. 実験結果および考察. 表-3に示す.なお,本論文では,累積空隙量を空隙径に 対応した水銀の圧入容量,空隙率を全体積に占める上記. (1) 溶脱後のCa(OH)2の消失およびC-S-HのCa/Si比の低. の孔径の空隙の総和が占める割合として定義した.. 下 図-3 に曝露面からの距離と 1000 および 2000 時間通電. (4) 塩化物イオン拡散係数. 後のモルタル中の Ca(OH)2 量の関係を示す.なお,所定. 所定の養生および電気化学的促進試験終了後,微小拡. 522.
(4) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12. 250 0-5mm D Cl:4.6×10-12 m2 /sec 5-10mm D Cl:4.0×10-12 m2 /sec 10-15mm D Cl:2.9×10-12 m2 /sec 15-20mm D Cl:3.1×10-12 m2 /sec Initial D Cl:2.5×10-12 m2 /sec. 200 150 100 50 0 0.01. 0.1. 1. 累積空隙量(mm3 /g). 累積空隙量(mm3 /g). 250. 200 150 100 50 0 0.01. 10. 空隙径(µm). 100 50 0 0.01. 0.1. 1. 250. 累積空隙量(mm3 /g). 累積空隙量(mm3/g). 150. 1. 10. b) W/C: 0.43. 0-5mm D Cl:1.1×10-11m2 /sec 5-10mm D Cl:1.0×10-11m2 /sec 10-15mm D Cl:5.5×10-12m2 /sec 15-20mm D Cl:5.9×10-12m2 /sec Initial D Cl:5.7×10-12m2 /sec. 200. 0.1 空隙径(µm). a) W/C: 0.30. 250. 0-5mm DCl:6.8×10-12 m2 /sec 5-10mm DCl:6.7×10-12 m2 /sec 10-15mm DCl:4.7×10-12 m2 /sec 15-20mm DCl:4.9×10-12 m2 /sec Initial DCl:4.5×10-12 m2 /sec. 200 150 100 50 0 0.01. 10. 0-5mm D Cl:2.8×10-11 m2 /sec 5-10mm D Cl:1.8×10-11 m2 /sec 10-15mm D Cl:1.4×10-11 m2 /sec 15-20mm D Cl:1.3×10-11 m2 /sec Initial D Cl:1.1×10-11 m2 /sec 0.1. 1. 10. 空隙径(µm). 空隙径(µm). c) W/C: 0.50. d) W/C: 0.60. 図-4 1000 時間通電後の空隙径分布と拡散係数(DCl). の養生終了後に変質前のモルタル中の Ca(OH)2 量を測定. C-S-HのCa/Si比は比表面積及び密度等の物理的性質,炭. 3. した結果,W/C を 0.30 とした場合には 0.13 g/cm ,W/C. 酸化に対する安定性及び塩化物イオンの吸着性に影響を 及ぼすことが知られている14),15).. 3. を 0.43 とした場合には 0.12 g/cm ,W/C を 0.50 とした場 合には 0.11 g/cm3,W/C を 0.60 とした場合には 0.09g/cm3. したがって,長期間の通電により,Ca溶脱にともな. であることを確認している.これより,W/C に関わら ず,曝露面近傍において Ca(OH)2 の消失が確認された.. う水和物の溶解が進行した結果,Ca(OH)2の消失および C-S-Hの変質が進行したセメント系材料の物性の取得に. また,W/C が高くなるほど Ca(OH)2 の消失が確認された. 関して,電気的促進試験は非常に有効であると考えられ. 曝露面からの距離が深くなることが確認された.特に,. る.. W/C が 0.30 及び 0.43 の場合では,曝露面からの距離が 0 ~5mm となる領域において,W/C が 0.50 の場合では,. (2) 溶脱後の空隙構造および拡散係数の取得. 曝露面からの距離が 0~10mm となる領域において,. 図-4に電気的手法により1000時間通電後の暴露面から. W/C が 0.60 の場合では,曝露面からの距離が 0~15mm. の距離と空隙径分布の関係を示す.なお,凡例に曝露面. となる領域において Ca(OH)2 の消失が確認された. 表-4に2000時間通電後のエトリンガイト及びモノサル. からの距離と微小拡散セル試験により測定した拡散係数 (DCl)を示す.これより,いずれのW/Cにおいても,暴露. フェートのXRDピーク強度から,両者が概ね消失した. 面に近いほど累積空隙量および最大空隙径は増加するこ. と確認される箇所のC-S-HのCa/Si比を示す.なお,一般. とが確認された.特に,W/Cを0.30とした場合では,総. 的に,健全な水和により生成したC-S-HのCa/Si比は1.7~ 2.0程度12), 13)であることが知られている.これより,長期. 細孔容積,および最大空隙径の著しい増加は暴露面から. 間に亘る通電に伴い,十分に硬化体中の水和物の溶脱が. 上とした場合には,累積空隙量および最大空隙径の著し. 進行し,C-S-Hの変質が進んでいることが確認された.. い増加は暴露面からの距離が5~10mmの範囲まで進行す. の距離が0~5mmの範囲に留まるのに対し,W/Cを0.43以. 523.
(5) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12. 250. 0-5mm DCl:7.3×10-12m2/sec 5-10mm DCl: 6.9×10-12m2 /sec 10-15mm DCl: 2.8×10-12m2 /sec 15-20mm DCl: 2.8×10-12m2 /sec Initial DCl: 2.5×10-12m2 /sec. 200 150 100 50 0 0.01. 0.1 1 空隙径(µm). 累積空隙量(mm3 /g). 累積空隙量(mm3 /g). 250. 0-5mm DCl:8.2×10-12m2/sec 5-10mm DCl:7.9×10-12m2/sec 10-15mm DCl:6.5×10-12m2/sec 15-20mm DCl:7.1×10-12m2/sec Initial DCl:4.5×10-12m2/sec. 200 150 100 50 0 0.01. 10. a) W/C: 0.30. 0-5mm DCl : 1.8×10-11m2 /sec 5-10mm DCl : 1.3×10-11m2 /sec 10-15mm DCl : 1.0×10-11m2 /sec 15-20mm DCl : 1.0×10-11m2 /sec Initial DCl : 5.7×10-12m2 /sec. 200 150 100 50 0 0.01. 10. b) W/C: 0.43. 0.1 1 空隙径(µm). 0-5mm DCl: 6.4×10-11 m2 /sec 5-10mm DCl : 3.1×10-11m2/sec 10-15mm DCl : 3.2×10-11m2/sec 15-20mm DCl : 2.1×10-11m2/sec Initial DCl : 1.1×10-11m2/sec. 250. 累積空隙量(mm3/g). 累積空隙量(mm3/g). 250. 0.1 1 空隙径(µm). 200 150 100 50 0 0.01. 10. c) W/C: 0.50. 0.1 1 空隙径(µm). 10. d) W/C: 0.60. 図-5 2000 時間通電後の空隙径分布と拡散係数(DCl) 7. 拡散係数(×10-11m2 /sec). 拡散係数(×10-11m2 /sec). 7 6 5 4 3 2 1 0. 6 5 4 3 2 1 0. 0. 50. 100. 150. 200. 250. 0. 累積空隙量(mm3 /g). 10. 20. 30. 40. 空隙率 (%). 図-6 累積空隙量と拡散係数の関. 図-7 空隙率と拡散係数の関係. ることが確認された.. 孔径1µm以上の粗大な空隙の増大が顕著となることが確. 図-5に電気的手法により2000時間通電後の暴露面から. 認された.さらに,上記の孔径1µm以上の粗大な空隙の. の距離と空隙径分布の関係を示す.なお,凡例に曝露面. 増大は試験体内部に向かって進行する現象が確認された.. からの距離と微小拡散セル試験により測定した拡散係数. 以上の累積空隙量および最大空隙径の変化が確認される. を示す.これより,通電時間の増加に伴い,W/Cを0.30. 範囲は,Ca(OH)2の消失およびC-S-HのCa/Si比の低下が確. とした場合でも,累積空隙量および最大空隙径の著しい. 認される範囲と概ね一致しており,本論文で得られた空. 増加は暴露面からの距離が5~10mmの範囲まで進行し, W/Cを0.60とした場合には,累積空隙量および最大空隙. 隙構造の変化は,Ca(OH)2の消失およびC-S-HのCa/Si比の 低下と関連付けられるものと考えられた.以上のように,. 径の著しい増加は暴露面からの距離が15~20mmの範囲. 長期間に亘り電気的手法を用いた場合の溶脱に伴う空隙. まで進行することが確認された.また,W/Cが高いほど. 構造の変化は実際の溶脱現象に伴う空隙構造の変化に関. 524.
(6) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12. 物)は拡散に全く寄与しないと考えると,細孔の実際の. 拡散係数(×10-11m2/sec). 7 6 5. 実験値. 経路は屈曲によりマトリクスの長さよりも移動距離が. DG Garbocziら. 長くなって見かけの拡散係数は減少するとともに,空 隙量が小さくなれば同時に拡散係数も低下する.横関. 4. らは,セメント系材料のような多孔質体中のイオンの. 3. 実効拡散係数Deと自由水中のイオンの拡散係数Dfは式 (1)3)の関係により示されるとしている.. 2 1. De = Pvol ⋅ f (θ ) ⋅ D f. 0 0. 10. 20. 30. 40. 空隙率 (%). ここで, De:実効拡散係数[m2/sec]. a) Garbocziらのモデル. 拡散係数(×10-11m2/sec). Df:自由水中の拡散係数[m2/sec]. Dn (n=4). 7. θ:空隙率[%]. 実験値 DS. 6 5. (1). Pvol:補正係数 f(θ):拡散係数低減係数. Dn (n=3). なお,Pvolはモルタル,およびコンクリート中の拡散. 4. 係数を解析する際の補正係数3)であり,骨材がイオン移. Dn (n=2). 3. 動経路を遮断すると考えられるため,使用ペースト容. 2. 積比が30%であればPvolを0.3として与えることができる. f(θ)はGarbocziらが細孔の屈曲による拡散係数の変化と細. 1 0. 孔量の変化に伴う拡散係数の変化をパーコレーション 0. 10. 20. 30. 40. モデルと既往の実験により検証した拡散係数の低減係 数(以下,拡散係数低減係数)を表す式(fG(θ))であり,式(2). 空隙率 (%). b) 須藤らのモデル. のように表される.H(x)はHeaviside関数であり,xが0以. 図-8 空隙率と拡散係数の関係. 下の時,H(x)は0,xが0より大きい時,H(x)は1と定義さ れる.. する既往の知見16)と一致することを確認した.なお,試 料内部において,初期試料と比較して,空隙が粗大化し. f G (θ ) = 0.001 + 0.07 ×. ている個所が確認された.これは,Ca(OH)2の僅かな消. θ. 2. +. 100 2. θ θ 1.7 − 0.18 ⋅ H − 0.18 100 100 . 失に加え,電気泳動によるSO42-の移動に伴い,エトリン ガイトの生成が試料内部の空隙の粗大化に影響している. (2). こと9)が推察された. 図-6および図-7に電気的手法による所定の通電時間終. 須藤ら 6)は空隙率が 20~70%となる範囲において式(1) 了後の累積空隙量および空隙率と拡散係数の関係を示す. で表される拡散係数低減係数と空隙率の関係を空隙率の これより,累積空隙量の増加に伴い,拡散係数が増加し, べき乗で表すことにより式(3) (fS(θ))を提案している. 特に本論文の範囲においては,累積空隙量が150~ 200mm3/g程度の範囲で拡散係数が著しく増加する傾向が 3.6 θ f S (θ ) = 2.35 確認された.また,累積空隙量の場合と同様に,空隙率 (3) 100 の増加に伴い,拡散係数が増加し,本論文の範囲におい ては,空隙率が25%~30%程度の範囲で,拡散係数が著 また,図-8 に電気的手法による所定の通電時間終了. しく増加する傾向が確認された.. 後の空隙率と拡散係数(DE)の関係を示す.なお,式(1)か ら算出される拡散係数に関して,式(2)による拡散係数. (3) 既往の解析モデルを用いた検討 細孔を多数の一様な大きさの毛細管群と考え,固体部. 低減係数を用いることにより算出した拡散係数(DG)およ. 分(モルタルおよびコンクリートの場合には骨材や水和. び式(3)による拡散係数低減係数を用いることにより算. 525.
(7) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12. 出した拡散係数(DS)を図中に示す.また,須藤らは式(3). 表-5 自由水中の塩化物イオンの拡散係数 14). を踏まえ,空隙率の累乗となる n 値をパラメータとし,. Cl-. イオン種. n=2,3,4 の場合について,Ca(OH)2 の溶脱による空隙の. 電解質種. 増加にしたがい拡散係数が増大することを表した式(4). 濃度(mol/dm3). により拡散係数(Dn)を表現している.なお,本論文では,. 拡散係数(cm2/sec). 初期空隙率の異なる試料を 4 種類用いた.そのため,各. 平均拡散係数(cm2/sec). NaCl 0.1. CaCl2 1. 0.1. 1. 1.95E-05 1.77E-05 1.87E-05 1.51E-05 1.78E-05. n 値について算定される Dn を累乗近似により示す. 理的物性の範囲において電気的手法の実用性を示すこと n. ができた.多機能セメントの利用拡大等と併せて,イオ. θ Dn = × D0 θ0 . (4). ン移動に及ぼす水和生成物の電気化学的な影響,材料お よび通電条件の適用範囲を検討し,電気的手法の実用性 および汎用性の検証が今後の課題である.. ここで, D0:初期拡散係数[m2/sec] θ0:初期空隙率[%]. 5. まとめ. ここで,自由水中の拡散係数は各電解質の種類および 濃度で決定される塩化物イオンの拡散係数. 17). (表-5 参照). 本論文では,長期に亘る電気的手法による溶脱後のセ. の平均値(1.78×10-5cm2/sec)とした.また,本研究では,. メント系材料の 1)化学的な変質として,Ca(OH)2 の消失. 配合(表-2 参照)から Pvol を決定した.すなわち,W/C を. および C-S-H の Ca/Si 比の低下を確認すること,2)物理. 0.30 とした場合には Pvol を 0.62,W/C を 0.43 とした場合. 的な変質として,累積空隙量および空隙率の増加を確認. には Pvol を 0.66,W/C を 0.50 とした場合には Pvolを 0.68,. すること,および拡散係数の増加に対する累積空隙量お. W/C を 0.60 とした場合には Pvol を 0.70 とした.. よび空隙率の影響を明らかとするとともに,3)溶脱現象. これより,電気的手法を適用することにより,モルタ. に伴う拡散係数の評価における電気的手法の妥当性を示. ル試験体の長期に亘る溶脱現象に伴う変質を短期間で再. すことを本研究の目的とした.その結果,電気的手法に. 現した場合に得られる拡散係数は,既往の空隙率により. よる溶脱後の変質に関して,空隙構造と拡散係数を取得. モデル化された拡散係数 DG および DS と一致することが. および評価することができた.また,溶脱後の空隙率と. 確認された.なお,須藤らは Dn が n=3.4 の場合に最も相. 拡散係数の関係に関して,既往の解析モデルを用いた検. 関が高いことを示唆している.一方,本論文の範囲内で. 討を行い,電気的手法における溶脱特性を把握し,電気. は,須藤らのモデルにおいて n=2 および 3 の場合に相関. 的手法の実用性を示す上で重要な成果を得た.特に,. が高いことが確認された.しかしながら,空隙率が 30%. 1)Ca(OH)2 の消失および C-S-H の変質が進行したセメン. 以上となる場合では,n=3 および 4 の場合に相関が高く. ト系材料の物性の取得に関して,電気的促進試験は非常. なることが推察された.したがって,上記の結果は,実. に有効であること,2)全累積空隙量が 150~200mm3/g 程. 際の水和物の固相から細孔溶液への溶解現象と細孔溶液. 度,空隙率が 25~30%程度の範囲で,拡散係数が著しく. 中から周辺環境への拡散現象における空隙率および拡散. 増加すること,および 3)電気的手法を適用することによ. 係数を直接取得し,評価できる手法としての電気的手法. り,モルタル試験体の長期に亘る溶脱現象に伴う変質を. の実用性を示していると考えられた.. 短期間で再現した場合に得られる拡散係数は,既往の空. 本論文では,上記においてモルタル試験体中の主要な. 隙率によりモデル化された拡散係数と一致することが確. 水和生成物は Ca(OH)2 と C-S-H の 2 種類とし,通電後に. 認された.. は各配合の試験体間で Ca(OH)2 量および C-S-H の Ca/Si 比 に差異が認められた.一方,塩化物イオンおよびクロム. 謝辞:本論文に関わる実験を遂行するにあたり,水銀圧. やセレンのような有害イオンのカルシウムアルミネート. 入式ポロシメータは東京工業大学大学院坂井研究室のご. 系水和物による固定化に着目した多機能セメントに関す. 厚意により使用させて頂きました.ここに記して感謝の. る研究が行われている 18).しかしながら,本論文では,. 意を表します.. 空隙率の変化が拡散係数に及ぼす影響を支配しており, Ca(OH)2 および C-S-H は化学的には塩化物イオンの移動. 参考文献. に大きな影響を与えなかったものと考えられた.また,. 1) 京谷修:放射性廃棄物処分施設の設計検討状況,土木学会. 本論文の実験で得られた溶脱に伴う空隙率の変化の範囲. 平成 17 年度全国大会研究討論会コンクリート構造物の超. は 10~40%程度の範囲内である.以上の化学的および物. 長期耐久性評価-1 万年コンクリートへの挑戦-資料,2005.. 526.
(8) 土木学会論文集E Vol.66 No.4,520-527,2010.12 2) 庭瀬一仁,廣永道彦,辻幸和:Design of the Concrete Used for. 11) Otsuki, N., Wanchai, Y., Nishida, Y., Yamane, H. : New. Sub-surface LLW Disposal Facility,コンクリート工学,Vol.44,. Test Methods for Measuring Strength and Chloride Ion Dif-. No.2,pp.3-8,2006.. fusion Coefficient of Minute Region in Concrete, ACI Ma-. 3) 横関康祐,渡邉賢三,古澤靖彦:カルシウムイオンの溶出. terials Journal, Vol. 101, No. 2, pp. 146-153, 2004.. に伴うコンクリートの変質に関する実態調査と解析的評価, 12) Buil, M., Revertegat, E. and Oliver, J. : A Model of the Attack of Pure 土木学会論文集,No.697/V-54,pp.51-64,2002.. Water or Under Saturated Lime Solution on Cement, ASTM STP 1123,. 4) 山本武志,廣永道彦:セメント系人工バリア材料の溶脱変. pp.227-241, 1992. 質特性の実験的検討,電力中央研究所報告,pp.1-32,2006. 13) 坂井悦郎,加藤昌宏,浅賀喜与志,大門正機:セメント水 5) Buil, M., Revertegat, E. and Oliver, J. : A Model of the Attack of Pure 和の相組成モデル,コンクリート工学年次論文報告集, Water or Under Saturated Line Solution on Cement, ASTM STP 1123, Vol.20,No.1,1998. pp.227-241, 1992. 14) 佐伯竜彦,齋藤太佳裕:フライアッシュが生成する C-S-H 6) 須藤俊吉,芳賀和子,広永道彦,田中知,長崎晋也:Ca の の組成に関する基礎的研究,Cement Science and Concrete Tech溶脱現象のモデル化と拡散係数の空隙依存性,土木学会論 nology,No.59,2005. 文集,No.753/V-62,pp.13-22,2004. 15) 佐々木謙二,佐伯竜彦:C-S-H の組成がコンクリートの耐 7) 斉藤裕司,中根淳,辻幸和,藤原愛:材料と配合の相違が 電気化学的促進手法によるモルタルの変質性状に及ぼす影. 久性に及ぼす影響,Journal of the Society of Materials Science, Ja-. 響,土木学会論文集,No.564/V-35,pp.155-168,1997.. pan,Vol.56,No.8,pp.699-706,2007.. 8) 斉藤裕司,田島孝敏,中根淳:拡散と電気化学的促進手法. 16) 山本武志,廣永道彦:セメント系人工バリアの長期性能評. によるモルタルの Ca 溶出に伴う変質試験,コンクリート. 価に関する各種溶脱試験法の適用性評価,電力中央研究所. 工学年次論文報告集,Vol.19,No.1,pp.1009-1014,1997.. 報告,pp.1-24,2004. 17) 化学便覧基礎編 II改訂第 3版,日本化学会編,丸善,p.67,. 9) 橋本勝文,大即信明,斎藤豪,松土真也:モルタルの Ca 溶脱変質特性に関する電気化学的促進試験を用いた実験的. 1984. 検討,セメント・コンクリート論文集,No.62,pp.405-410, 18) 坂井悦郎:カルシウムアルミネートの水和とその利用, 2008. Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,Vol.14,No.328, 10) 鈴木一孝,西川直宏,山出善章,谷口幾也:コンクリート. pp.184-190,2007.. の耐久性評価を目的とした水和組織の分析手法に関する研. (2010.4.27受付). 究,コンクリート工学論文集,34,pp.39-49,1990.. CHEMICAL AND PHYSICAL ALTERATION OF CEMENTITIOUS MATERIAL DUE TO LEACHING USING ELECTRICAL TREATMENT Katsufumi HASHIMOTO, Nobuaki OTSUKI and Tsuyoshi SAITO The long-term durability against leaching is necessary and currently treated as an important issue, and there are many investigations on the evaluation of the durability against leaching. Especially, many researches have been reported with using the numerical analysis for deterioration due to leaching. On the other hand, the electrical treatment, which can accelerate the deterioration due to leaching with high magnification, has been used to evaluate the long-term durability against leaching. However the ion migration mechnism in the electrical treatment is different from that in the real situation. Therefore, it is important to obtain the data, such as pore structure and diffusion coefficient, after electrical treatment and evaluate the leaching behavior in the electrical treatment for the applicability. The purposes of this research were to investigate 1) the chemical alteration, such as decrease of Ca(OH)2 and Ca/Si ratio of C-S-H, 2) the phyisical alteration, such as increase of cumulative pore volume and threshold pore and 3) the feasivility of the electrical treatment for evaluation of diffusion coefficient alteration due to leaching with void ratio.As the results of this study, the important data were obtained for underestanding the leaching alteration by electrical treatment and indicating the feasivility. Espacially, the following items for using electrical treatment were obtained. 1) Decrease of Ca(OH)2 and Ca/Si ratio of C-S-H were confirmed. 2) Cumulative pore volume and pore ratio were increased. It can be said that the electrical treatment is useful for evaluating the alteration of cementitious material due to leaching. 3) The relationship between void ratio and diffusion coefficient which was obtained by electrical treatment was similar to the modeled one in previous studies. Therefore, this result were showing the applicability of the electrical treatment for leaching alteration.. 527.
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