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Evaluating mammal assemblages in undisturbed beech forests with camera traps: A case study in the Shirakami Mountains, northern Japan

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Academic year: 2021

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-1- は じ め に 安価で信頼性の高いカメラトラップ(別名として,セ ンサーカメラや自動撮影カメラ)の開発と普及に伴い, 野生動物の生態や行動の評価といった基礎研究を支える ツールとして,さらにはインベントリ(種の目録)の作 成や個体数モニタリングといった保護管理の現場を支え るツールとして,当該機材は広く利用されるようになっ た.本研究では,日本海側の冷温帯を代表する景観であ るブナ(Fagus crenata)の林を主とした生態系が広く保 存されてきた白神山地を対象に,50 台のカメラトラッ プを体系的に設置し,既存の哺乳類相と,それらの種の 出現頻度を2010 年の春から夏にかけて記録した.白神 山地はユネスコ世界自然遺産に指定されていることもあ り,自然環境の動態を評価するための各種モニタリング 事業は行われているが,哺乳類相の体系的な評価結果は これまでに公表されていない.こうした人為攪乱の少な い森林景観における哺乳類各種の出現頻度は,さまざま な生態系改変の影響を評価する場面で理想的なコント ロールとなりうる.また,2013 年以降,白神山地にお Wildlife and Human Society 8 : 1­4, 2020

データペーパー

カメラトラップをもちいた

攪乱の少ないブナ林における哺乳類相の評価:

白神山地の事例

江成広斗・江成はるか

山形大学農学部

Evaluating mammal assemblages in undisturbed beech forests with camera traps:

A case study in the Shirakami Mountains, northern Japan

Hiroto Enari, Haruka S. Enari

Faculty of Agriculture, Yamagata University

要旨 白神山地には日本海側冷温帯林を代表する景観であるブナ(Fagus crenata)林を主とした人為的攪乱 の少ない生態系が広域的に残されてきた.そこで,本研究では白神山地北東部に位置する高倉森南域(40 ha, 平均標高414.5 m)に 50 台のカメラトラップ(設定:昼間・夜間ともにカラー静止画,3 枚連写,5 分間イン ターバル)を空間的にランダムとなるように配置し,哺乳類相と,それらの種の出現頻度を記録した.調査 期間は2010 年の春から夏とし,カメラトラップの有効作動期間は合計で 3,580 カメラ日であった.その結果, 合計で23,234 枚の写真が撮影され,筆者らによる同定の結果,349 回のカメラトラップの作動で撮影された 703 枚の写真に哺乳類(種レベルまで同定出来たものは 10 種)が撮影されていた.撮影頻度が高かった哺乳 類種はニホンカモシカCapricornis crispus(174 回作動:357 枚)で,ニホンザル Macaca fuscata(75 回作動:

183 枚)がそれに続いた.

Key words: cool-temperate forest, Fagus crenata, inventory, mammal fauna, world heritage site

   

受付日:2019 年 12 月 4 日 受理日:2020 年 1 月 31 日 責任著者:江成広斗 enari@tds1.tr.yamagata-u.ac.jp

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野生生物と社会 第8 巻 2020 -2- いて明治から昭和初期の間に絶滅したニホンジカ(Cervus nippon)の分布回復が徐々にみられはじめているが,当 研究の記録は,そうしたニホンジカの分布回復前の哺乳 類相を記録したものとなる. 調 査 地 青森県西目屋村西部に位置する高倉森南域を調査地 (40 ha; 図 1)とした.高倉森は白神山地北東部に位置 し,過去100 年以上,伐採などの人為的攪乱による影響 が少ないブナ林が優占し,森林生態系保護地域(保全利 用地区)および国指定鳥獣保護区に指定されると同時 に,ユネスコ世界自然遺産地域(緩衝地域)にも含まれ る. サンプリング方法 使用したカメラトラップの機種はD50(Moultrie 社, 北米アラバマ州)とした.当該機種のセンサー反応距離 は13.7 m,反応角度は 22°,フラッシュ照射範囲は 1.5~ 13.7 m である(メーカー公表値に基づく).日中はカラー 静止画,夜間もフラッシュを用いてカラー静止画で撮影 され,赤外線により動物を感知した際は3 連写撮影する ように設定した.また,同一個体の重複撮影を回避する ために,赤外線感知後に5 分間のインターバル(非作動 時間)を設定した.使用したカメラトラップはあらかじ め作動試験を行い,作動不良のあるものは除外した. カメラトラップ設置個所は,調査地からランダム抽出 した50 サイトとし,立木の高さ 1 m に固定した.各カ メラは2010 年 5 月初旬に設置し,8 月中旬に回収した (詳細は,datafile_camera_environment.csv を参照).各カ メラの有効作動期間(camera·day)の平均は 71.6±20.8 (SD)カメラ日で,合計 3580 カメラ日であった. カメラトラップに撮影されたすべての動物種は著者ら によって同定された.種名(標準英名・標準和名・学 名)はOhdachi et al.(2015)に基づいて記した.哺乳類 ではないが,地上移動が多くカメラトラップによる撮影 頻度評価が可能なヤマドリ(Syrmaticus soemmerringii) についても補足資料として記録した.ただし,その他 の撮影された鳥類は記録から除外した.その結果,哺 乳類は703 枚(349 回作動),ヤマドリは 21 枚(10 回 作動),計724 枚(359 回作動)が記録された.また, 連写された静止画から判断できる動物の行動様式を, 採食(feeding)・移動(moving)・休息(resting)・不明 (unknown)に区分して記録した. カメラトラップによる野生動物の検知確率は水平方向 の植生鬱閉度に影響を受けやすい(江成 2015).そこで, 以下の2 つの方法で林内の見通し度を評価した(結果は datafile_camera_environment.csv を参照). (1)立木密度の評価:立木密度が見通し度に及ぼす影 響をみるために,カメラ設置個所において,地上高1 m 地点から魚眼レンズを取り付けたカメラにより全天写真 を撮影し,平均開空度(mean canopy openness)をフリー ウェアCanopOn2(竹中 2009)により算出した.なお, 全天写真は2010 年 8 月に撮影した. (2)下層植生による水平方向の遮蔽率:カメラトラッ プから5 m の地点に,2 m 長の赤白ポール(20 cm 刻み で赤と白が入れ替わる)を設置し,カメラトラップ前に 図1 .調査地の配置とカメラトラップ設置個所    背景地図に地理院タイル(https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html)を使用. !! ! ! ! ! ! !!! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!! ! ! ! ! ! ! ! ! 0 0.5 km " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " " 142°0'0"E 141°0'0"E 140°0'0"E 4 1 ° 0 '0 " N 4 0 ° 0 '0 " N ! カメラトラップ設置個所 調査地

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Wildlife and Human Society 8, 2020 -3- 立つ観察者からその赤白ポールを観察することで,カメ ラトラップ前の遮蔽量(下層植生により赤白ポールが隠 れる割合)を11 段階(0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)に 分けて記録した. データファイルの構成 本研究データは以下2 つのデータファイル(ともに csv ファイル形式.文字コードは UTF-8)から構成される. 1) datafile_camera_environment.csv:各カメラの設置場所 及び設置環境についての記録 2) datafile_camera_data.csv:各カメラで撮影された動物 種と行動の記録 データファイルの詳細 1)datafile_camera_environment.csv 列名 詳細 Waypoint 設置個所の位置を示すID latitude 設置場所の緯度(十進法),測地系:WGS1984 longitude 設置場所の経度(十進法),測地系:WGS1984 elevation 設置場所の標高(m) WHS 1:ユネスコ世界自然遺産地域登録地,0:登録地外 forestTYPE 国有林施業図に基づく主要上層木.各凡 例の優占種は以下のとおり beech:ブナ mixed(broadleaf):  ブナ,ミズナラ(Quercus crispula)

mixed(cedar & broadleaf):

 スギ(Cryptomeria japonica),ブナ,  ミズナラ standAGE 国有林施業図に基づく調査時点の主要上層木の林齢(年) UV_0-20 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高0~20 cm の下層植生の遮蔽量 UV_20-40 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高20~40 cm の下層植生の遮蔽量 UV_40-60 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高40~60 cm の下層植生の遮蔽量 UV_60-80 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高60~80 cm の下層植生の遮蔽量 UV_80-100 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高80~100 cm の下層植生の遮蔽量 列名 詳細 UV_100-120 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高100~120 cm の下層植生の遮蔽量 UV_120-140 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高120~140 cm の下層植生の遮蔽量 UV_140-160 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高140~160 cm の下層植生の遮蔽量 UV_160-180 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高160~180 cm の下層植生の遮蔽量 UV_180-200 (0:遮蔽なし~10:完全遮蔽)地上高180~200 cm の下層植生の遮蔽量 CanopyOpenness 平均開空度(%) Date_started カメラトラップ設置日 Date_ended カメラトラップ回収日.ただし,途中で 故障や電池切れにより調査者によるカメ ラ回収場面が撮影されていないものは, 最後にカメラトラップが通常作動した日 とした CameraDay カメラトラップの有効作動期間(カメラ日) 2)datafile_camera_data.csv 列名 詳細 Waypoint 設置個所の位置を示すID.なお,動物 種が一枚も撮影されなかったサイトにつ いては掲載可能なデータが存在しない. そのため,該当サイトのWaypoint はこ のデータ内に出現しない Event_ID カメラトラップ(ガー作動回数(撮影機会)に対するシリ3 連写設定)のトリ アル番号 Month 動物が撮影された月 Day 動物が撮影された日 Year 動物が撮影された年 Time 動物が撮影された時刻(24 時間表記) Species (common name) 撮影された動物の標準英名 Species (Japanese name) 撮影された動物の標準和名 Species (scientific name) 撮影された動物の学名

Activity 行動様式:採食(feeding)ing)・休息(resting)・不明(unknown)の ・移動(mov-4 区分

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野生生物と社会 第8 巻 2020

-4- 許諾と使用権

利用者はCreative Commons attribution license CC-BY 4.0 International(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ legalcode)に基づき,インターネット経由でデータをダ ウンロードできる. データ所有者と連絡先 名前:江成広斗,江成はるか 所属:山形大学農学部 住所:〒997-8555 山形県鶴岡市若葉町 1-23 連絡先(メール): h_enari@hotmail.com もしくは enari.haruka@gmail.com 謝   辞 当該データサンプリングに際して,三井物産環境基金 (2007 年度第 1 回活動助成:冷温帯に生息するニホンザ ルの生態と保全に関する研究)を一部使用した. 引用文献 江成広斗(2015)個体数の評価.「野生動物管理のため のフィールド調査法」(關義和・江成広斗・小寺祐二・ 辻大和,編),pp. 313−351,京都大学学術出版会,京 都.

Ohdachi, S.D., Y. Ishibashi, M.A. Iwasa and T. Saito (2015) “The wild mammals of Japan (second edition)”. Shoukadoh, Kyoto.

竹中明夫(2009)『全天写真解析プログラム CanopOn2』 (http://takenaka-akio.org/etc/canopon2/)2019 年 12 月 2

参照

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