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不登校予防のための学級における「居場所」づくりに関する実践的研究 : タグラグビーによる相互作用的達成感の獲得を目指して

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Academic year: 2021

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(1)不登校予防のための学級における「居場所」づくりに関する実践的研究   一タグラグビーによる相互作用的達成感の獲得を目指して一.                           教育実践高度化専攻                           心の教育実践コース                                P10036B                               梅園晋吾  不登校児童生徒数はここ数年減少傾向にあ. 前者からは「共通理解」「役割遂行」「絆」「相. るものの、未だ11万人を数え、出現率を見る. 互承認」、後者からはr他者貢献」という5. と横ばいが続き、楽観できる状況にはない。. つの要素が得られた。これら5つの要素から. また、不登校経験者のなかで「学校へ行きた. 構成されるプログラムを開発・実践した。. かったが行けなかった」という割合は全体の.  実践内容は、体育5時間、学級活動3時間. 29%にも登り(文部科学省,2001)、不登校に. の全8時間で行った。体育においてはタグラ. 陥らないような学級における居場所づくりが. グビーを単元として取り上げ、特別活動にお. 緊要の課題である。. いてはタグラグビーの活動を資料に学級活動.  宿泊型不登校支援施設における観察を通じ. で話合い活動を行う構成とした。タグラグビ. て,居場所づくりには、安心感だけでなく、. ーを単元に選んだ理由としては、以前にタグ. 達成感を獲得する活動、それも個人的達成感. ラグビーを実践した際に児童が他者のことを. にとどまらない達成感を味わったときに自己. 考えてプレーする様子が見られたこと、競技. 評価と横の関係の人間による他者評価が相互. としての馴染みが薄く周りの児童がプレーを. に作用し合う関係を通じて得られる「相互作. 通じて示す良さに新鮮な気持ちで気づくこと. 用的達成感」が不可欠であることが明らかと. ができること、ルールに柔軟性があり、児童. なった。よって、本研究においては、居場所. でルールづくりを進めることで価値観を共有. の定義を「児童が主体的に活動に取り組むな. することができること、他者に貢献するプレ. かで『相互作用的達成感』を獲得できる人間. ーが視覚的に捉えやすいことの4点が挙げら. 関係の場」とし、学級においてその具体化を. れる。体育の学習活動では、競技力を高める. 図ることを研究目的とした。. ととともに「盛り上げ役やなぐさめ役といっ.  居場所をマズローの5段階欲求説から捉え. た役割を決める」r自チームのメンバーのよい. ると,第2段階r安全の欲求」からさらに第. 点を発表する」「他チームのよい点を発表する」. 3段階「所属・愛の欲求」と第4段階「承認. といった活動を行った。また、学級活動にお. の欲求」の出現・充足によって不登校予防が. いては、「ルールづくり」rチーム名、ロゴ、. 可能になると考えられる。これらの欲求充足. 目標を考える」をテーマに話合い活動を進め. には,横の関係の人間からの承認や賞賛の獲. た。. 得が不可欠である。.  プログラムの実施前後で、竹西(2006)の関.  そこで、学級において「相互作用的達成感」. 係調節カ尺度を用いた質問紙調査を行い、効. を獲得するための要件を明らかにするために、. 果検証を行った(表1)。. 特別活動における「望ましい集団活動」の視.  その結果、「関係調節力尺度全体平均」とr関. 点,および、アドラー心理学におけるr共同. 係自尊心」に有意な上昇が見られた。. 体感覚」の視点から検討を行った。その結果、. 一76一.

(2) 所づくり」の実践によって、学級が他者を認. 表1 実践前後の関係調節力尺度の得点の変化 下位. プログフム. プログフム. 項目. 前. 後. 援助 意識. 共感性 関係 自尊心. 所属 意識 手続的 満足感. 全体 平均. 12.85. 13.42. (2,78). (3.07). 13.77. 14,85. (2.87). (3.12). 11.38. 13.00. (2.71). (4.33). 27.88. 30.42. (5.86). (7.50). 27.15. 28.96. (5158). (6.24). 3.276. 3.548. (.44). (.69). め合う集団へと変容していったと捉えること. t値. ができる。. 1.11n.s..  今後の課題は次の3点である。 1146n.s..  1点目は、数名の児童ではあるが,振り返 りの記述において、他者への関心が見られな. 2.39*p〈.05. かったことである。児童同士の主体的な関わ. 1165 n.s.. りから居場所を形成するように働きかけてき 1.25 n.s.. たが、すべての児童にとって学級が居場所と なるには至らなかった。居場所づくりを.通じ. 2.38*pく.05. て、すべて児童を対象とした第1次支援とし.  ※上の数字は平均値。下の( )は標準偏差。. ての不登校予防を進めるうえで、一人ひとり.  竹西(2006)は、「関係自尊心」を「周囲の他. の児童へのきめ細かな関わりの前提となるア. 者との関係において自己が必要とされること. セスメントの必要性が浮かび上がった。. によって生じる自尊感情のひとつ」と定義し ている。これは、本間(2006)のr自分がその. 場になくてはならない存在である」という居 場所感覚と大きく重なるものであり本研究に おける居場所の定義とも一致していると考え ることができる。したがって、児童にとって. 学級が居場所として感じられるようになった ことが確認されたと考えられる。.  また、児童の振り返りを通じて学級集団の 変容を捉えることにより、効果検証を行った。. その結果、児童の振り返りの記述から、児童 がチームや他者の良さを認める表現が多く見 られ、他者を承認・賞賛する、他者に貢献す るといった態度が徐々に形成されていったこ とが確認された。授業の最後の「よいところ. 見つけ」の時間においても積極的に手を挙げ て発表しようとする児童が増え、発表内容も 目を追うごとに具体的かつ細かいものになっ ていった。質的な側面からも、所属している. 集団の横の関係にある人間からの承認・賞賛 を得ることで、児童の居場所感覚が高まって.  2点目は、タグラグビーに取り組むなかで 勝敗や結果にこだわるあまり、喧嘩をしたり、. 泣いたりする姿が見られた。ある意味で真剣 さの表れと捉えることができ、達成感を得る ためには必要なこととも思われるが、試合中 に相手の欠点をつくような攻撃的な言・葉を発」. する児童が出てしまったことは課題である。. プログラム実施前後を比較すると、全体的に は攻撃的な言辞が減ってはいるものの、他者 への配慮を欠く言葉が聞かれることもあった ので、体育や特別活動だけでなく、教科、教 科外を問わず、学校生活の様々な場面で繰り 返し他者を認め合うような活動を展開するこ とが必要である。.  3点目は、学級での居場所づくりにおいて は一定の効果が得られたので、学校全体での 居場所づくりへと展開する可能性を探ること である。学級での横の人間関係に加え、身近 な縦の人間関係による縦割り班活動を通じて の「相互作用的達成感」の獲得を図ることが、 今後の課題である。. いったことが確認された。.  以上の点から、「相互作用的達成感」の獲得. を目指したタグラグビーを基軸とした「居場. 一77一. 修学指導教員  新井 肇. 指導教員   新井 肇.

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