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バングラデシュ -- 政府とNGOの取り組み (特集 図書館と障害者サービス -- 情報アクセシビリティの向上 -- 各国事情)

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バングラデシュ -- 政府とNGOの取り組み (特集 図

書館と障害者サービス -- 情報アクセシビリティの

向上 -- 各国事情)

著者

金澤 真実

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

234

ページ

31-32

発行年

2015-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003257

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アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4) ●公立図書館のアクセシビリ ティ バングラデシュには、全国で六 八の公立図書館があり、障害者用 トイレとスロープはそのうちの三 九館に設置されている。しかし視 覚障害者のアクセシビリティに関 しては、点字ブロックや手すりな どハード面だけでなく、点字図書 やアクセシブルな録音図書である D A ISY ︵デジタル録音図書︶ などの蔵書、対面朗読サービスと いったソフト面が整備されている 公立図書館はひとつもない。しか し二〇一三年に障害者権利条約の 精神を反映した﹁障害者の権利と 保護法﹂が制定されたのを機に 、 首都ダッカにある中央図書館では、 現在倉庫として使用している一階 部分に障害者用のコーナーを新設 する計画がある。とはいえ、計画 の詳細は未定であり、視覚障害者 にもアクセス可能な図書の製作や 所蔵、再生機器の設置、対面朗読 サービスなどが実施されるかは不 明である。 ●デジタル ・バングラデシュ ︱政府の取り組み︱ 現政権は、建国五〇周年を迎え る二〇二一年までに中所得国にな るというビジョン二〇二一を掲げ、 ICT ︵情報通信技術︶による貧 困削減を目指す﹁デジタル・バン グラデシュ﹂を進めている。その 取り組みのひとつに﹁情報へのア クセス ︵ a2i ︶ プログラム﹂があ る。これは、すべての国民が IC T を利用した行政サービスを受け られるようにするものである。教 育分野の取り組みとしては、全国 にインターネットを整備し、コン ピューター、プロジェクター、ス クリーンをすべての公立小中学校 に設置するという﹁マルチメディ ア教室﹂を推進している。その他 に電子書籍の取り組みもある。今 までに一年生から一二年生までの ほとんどの教科書が電子書籍化さ れ、国家カリキュラム教科書委員 会により公開された。教科書以外 では、文化省が運営している公立 図書館部サイトで五三二タイトル の詩や歴史書を読むことができる。 ●デジタル ・バングラデシュ の課題 政府の主導により全国民の日常 生活に関わる様々な事柄でのデジ タル化が進んでいるが、視覚障害 者にとって課題は多い。障害者の ウェブ・アクセシビリティについ ての調査によれば、政府や省庁の ほとんどの担当職員は 、ウェブ ・ アクセシビリティについて知識が なく、ウェブページのアクセシビ リティに関する国際標準ガイドラ イン︵ W C A G ︶の基準を満たさ ないウェブページが多い 。また 、 前述した ﹁マルチメディア教室﹂ は、生徒一人に一台の端末が支給 されるのではなく、教室の前方に スクリーンを置きそこに映写され た画像や動画をクラス全体でみて 授業を進めるものである。インク ルーシブ教育を進めているバング ラデシュで、このような形で映し 出される映像が授業理解の鍵とな るのであれば、弱視など視覚に障 害のある生徒が置き去りにされる 心配がある。今後、視覚障害をは じめとした障害児に対して 、﹁ マ ルチメディア教室﹂ではどのよう な配慮が行われるのか注目してい く必要がある。 DAISY 図書︱ NGO 取り組み︱ 図書の D A ISY 化の取組みは、 二〇〇五年から Young Power in Social Action ︵ Y PS A ︶という NGO を拠点として開始された 。 YPS A は、ダスキン・アジア太 平洋障害者リーダー育成事業によ り日本で研修を受けた全盲の職員 を中心に、障害者のための ICT 情報センター︵ IRCD ︶を開設、

バングラデシュ

政府と

の取り組み︱

︻各国事情︼

図書館

障害者サービス

―情報アクセシビリティの向上―

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32

アジ研ワールド・トレンド No.234(2015. 4) 障害者だけでなく非識字者を含め 印刷された文字を読むことに対し て困難を覚える人々を対象として D A ISY を製作している。利用 者に非識字者を含めていることは、 国民の四割以上が非識字者という バングラデシュならではの事情を 感じさせる。二〇〇五年から現在 まで、 D A ISY 八〇〇タイトル と小学校一∼五年生までの教科書 の音声およびフルテキストからな るマルチメディア D A ISY が製 作された。 ●視覚障害者の情報アクセシ ビリティへの課題 昨年バングラデシュを訪問した 際、首都ダッカを中心に活動する 視覚障害当事者団体のメンバー七 人に情報アクセシビリティに関し て課題を聞く機会を得た。メンバ ーは、一人が弱視、六人は全盲で、 うち五人はコンピューター・プロ グラマーや IT マネージャー、障 害者団体の職員として働いており、 二人はこの団体でコンピュータ ー・トレーニングを受講中である。 コンピューターを日常的に使用 している彼らが、課題として一番 に挙げたのは、読み上げソフトの 性能と価格である。バングラデシ ュの公用語であるベンガル語の読 み上げソフトは無料でダウンロー ドできる。しかし、音質や発音の 鮮明さといった面で問題があり 、 このようなソフトを使い慣れてい る人でなければ利用することは難 しいという。英語の場合は、 J A W S や Open-book などの読み上 げソフトが入手可能であるが、一 〇〇〇ドル以上と大変高価である。 小学校校長の月給が約八〇ドル程 度であることを考えると個人で正 規品を購入することはかなり難し い。 次に彼らが課題として挙げたの は、再生機器の価格が高く普及が 遅れていることである。 D A IS Y を聞くためには、専用の再生機 か専用ソフトのパソコンへのイン ストール、または MP3 プレイヤ ーや D V D プレイヤーなどの再生 機器が欠かせない。しかし、これ らの機器は、いずれも高価で例え ば D A I SY 再生機で三〇〇∼一 〇〇〇ドル、 MP3 プレーヤーで さえ約一〇〇∼一一五ドルする 。 福祉機器として購入費用が助成さ れるといった行政からの支援はな く、購入に際しては個人で全額負 担するしかない。 三番目には、利用者の知識やス キル不足である。障害があるため に教育を受ける機会に恵まれなか った多くの障害者は、コンピュー ターや再生機の使い方を理解する ための基本的な知識やスキルが不 足している。最後に、障害者の約 八割が住むという農村部では、 D A I SY や電子書籍にアクセスす るための電力やインターネットな どのインフラ整備が遅れている 。 また、インフラがあったとしても、 それを利用するための費用を捻出 することが難しい貧しい障害者も 数多い。 ●点字で読みたい! コンピューターを駆使して仕事 をしている彼らが、日々の実感と して特に強調したことがある。そ れは、電子書籍や D A ISY など のデジタル録音図書が普及し、音 声で書籍を聞くことができても 、 やはり点字が必要だということで ある。音声で様々な本を聞き新し い言葉や単語を知ることができて も、ベンガル語のスペルが解らず コンピューターを使っての墨 字 文 書作成に困難が生じている。墨字 のベンガル語の綴りは点字で理解 できるので、点字で読むことが必 要なのだという。しかし、点字図 書の普及は、政府が国策として進 めている電子書籍以上に遅れてお り、点字の教科書でさえ必要とす る生徒全員に支給されていない 。 しかし、点字図書とデジタル録音 図書の普及は相反するものではな く、デジタル化する際にユニコー ドを使用すれば、データから点字 への変換ができ点字印刷が行える という。また現在バングラデシュ で入手することは出来ないが、点 字ピン・ディスプレイ︵点字情報 がピン状の凹凸によって表示され るもの︶が普及すれば、テキスト データから直接点字として読むこ とができる。 国をあげてデジタル化を進めて いるバングラデシュで、視覚障害 者の情報へのアクセスには課題が 山積している。特にベンガル語読 み上げソフトの改良、図書デジタ ル化に際しユニコード使用の標準 化、福祉機器購入助成などは個人 レベルでは解決が難しく政府や N GO などのイニシアティブが欠か せない。そのためには、海外から の資金および技術支援が大いに必 要とされている。 ︵かなざわ   まみ/一橋大学大学院 経済学研究科博士後期課程︶

参照

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