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<特集論文 : 貧困問題>貧困削減に向けたスポーツの活用に関する一考察

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<特集論文 : 貧困問題>貧困削減に向けたスポー

ツの活用に関する一考察

著者

岡田 千あき

雑誌名

人間福祉学研究

10

1

ページ

67-78

発行年

2017-12-31

URL

http://hdl.handle.net/10236/00027401

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1.はじめに  「貧困」と「スポーツ」

このふたつの言葉 の間には,一見すると距離があるようにみえる. 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックの 開催を控え,新国立競技場の建設,大会エンブレ ムの選定,東日本大震災の被災地を始めとした地 方と東京の温度差など課題は山積みである.しか し,それでも「スポーツ」という単語が一般的に 有する「明るい」「溌剌とした」「豊かな」といっ た陽のイメージと「貧困」という単語が有する陰 のイメージが対極にあることは否めない.  「貧困」と「スポーツ」の関係性を考える際に, まず思い浮かぶのは,スポーツ機会が豊富にある 状態と貧困である状態,すなわちスポーツの内側 にある様々な要素が十分であるか否かという議論 である.さらに,スポーツの外側に目を向けると, 貧困状態にある者と貧困状態にない者のスポーツ 機会の差異を考えることができる.例えば,スポー ツと社会階層やスポーツと社会化の議論の中で は,人とスポーツの関わりを社会との関わりに置 き換え,社会的行為としてのスポーツから人の在 り方が論じられている.本研究においては,これ らの既存の研究とは異なる第三の視座から「貧困」 と「スポーツ」を検討してみたい.スポーツを貧 困課題に向かう際の手段とすること,言い換える と貧困状態を脱却,あるいは改善するための手段 としてスポーツが機能するか否か,というのが論 点となる.スポーツを目的としてではなく手段と して捉えるため,ともすれば「スポーツ」の部分 は,他の単語に置き換えることも可能である.そ のため主な関心は,「貧困」を中心に据えて議論 を行う際に,あえて「スポーツ」を持ち出す利点 や難点となるであろう.  本研究では,まず始めに,「貧困」と「スポーツ」 を論じるベースとなる「開発と平和のためのス 特集論文:貧困問題 要約  「貧困」と「スポーツ」

 一見,遠いところに位置する二者の関係を考える際,様々な課題を 考慮に入れる必要がある.本研究では,「開発と平和のためのスポーツ」分野における関連研究の精査 とホームレスワールドカップの参加 5 ヶ国の事例の検証から,貧困の緩和や削減の手段としてのスポー ツの可能性と課題を論じることを目的とした.その結果,絶対的貧困とスポーツの議論において「貧困」 側,「スポーツ」側の双方の課題が明らかになり,さらに相対的貧困の議論においては,分析のベース となる当該社会における貧困とスポーツの関係を捉える重要性が認められた.複数の現場での事例か ら,貧困削減にスポーツが寄与する可能性は認められるが,その評価の仕方については慎重な議論が 必要である. Key words:ホームレスワールドカップ,貧困削減,開発と平和のためのスポーツ 人間福祉学研究,10(1):67―78,2017

貧困削減に向けたスポーツの活用に関する一考察

岡田 千あき

大阪大学人間科学研究科准教授

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ポーツ(Sport for Development and Peace: SDP)」 の考え方に触れる.始めの章において,SDP の 概要を説明した後に,SDP の実務,研究の両面 での発展の略史を述べる.続く章において,SDP 分野を中心に「貧困」と「スポーツ」に関わる先 行研究を分類し,精査する.最後に,「貧困」と「ス ポーツ」にまつわる現場での活動事例として,国 際的なスポーツイベントとして認知されつつある ホームレスワールドカップを紹介する.先行研究 の整理と事例の検証から,未だ始まったばかりの SDP 分野における「貧困」についての議論を整 理し,貧困の緩和や削減の手段としてのスポーツ に関する課題と展望を論じることが本研究の目的 である. 2.開発と平和のためのスポーツ 2.1.開発とスポーツ  国際社会では,「開発と平和のためのスポーツ」 の概念が,実務,研究,政策策定の様々な場面で 用いられている.SDP は,「一見,スポーツとは 関係が薄いと考えられる社会課題の解決にスポー ツのもつ力を動員しようとする考え方」(齊藤ら, 2015)と説明できるが,まずは「開発」と「スポー ツ」の関係性を簡単に整理したい.長い歴史があ り,現在も実務や研究の大部分を占めるのは,「ス ポーツの開発(Development of Sport)」である. スポーツの開発とは,分かり易く言えば,心理 学,栄養学,教育学,社会学などの頭にスポーツ が付くもの,または,スポーツの振興やスポーツ 界の発展を志向する考え方と言える.さらに, 1970 年代の高度経済成長と大規模スポーツ・リ ゾ ー ト 施 設 の 開 発 の 頃 か ら「 ス ポ ー ツ と 開 発 (Sport and Development)」の考え方が登場した.

こちらは,「スポーツ」と「開発」という単語が 従属関係を持たないものであり,スポーツの発展 によって及ぼされる社会に対する正負の影響,特 に自然環境破壊とスポーツの発展のつながりを議 論するものであった.最後に,1990 年代後半に 登場した「スポーツを通じた開発(Development through Sport)」は,前述の「スポーツ」と「貧 困」の関係を問う第三の視座と趣を同じくする. スポーツを手段として用いることにより,「個人, 社会,国の変化を促し,地球規模の課題の解決を 目指すもの(中略)言い換えると,スポーツの持 つ力を見直し,力の動員によって様々な分野の発 展に貢献するという考え方」(岡田,2014)と説 明される.欧米諸国を中心とした複数の国々では, スポーツを開発手段の一つとする SDP の考え方 が認知され,いくつかの国々においては,「スポー ツを通じた開発」と「スポーツの開発」が同様の 重みを持って受け止められ始めている. 2.2.開発と平和のためのスポーツの略史  1990 年代後半から,主に開発途上国における 事業の中でスポーツが活用される例が散見されて いた.2000 年代に入り,現場の活動を政策がす くい上げる動きが活発化し,2003 年にスポーツ と開発をテーマにした初の国際会議が開催され た.同年の国連総会において「教育,健康,開発, 平和を創造する手段としてのスポーツ」が決議さ れ,国連のイニシアティブによる SDP 発展の青 写 真 が 描 か れ た. こ の 時 期 に は, 各 国 政 府 や NGO による事業数も急増しており,特に NGO 事業については「国連が段階的にスポーツを通じ た開発に対するアドボカシーを強化した時期と重 なっている」(鈴木・岡田,2015)と考察されて いる 1 .その後,政府機関や国際 NGO などが参加 するプラットフォームやワーキンググループが立 ち上げられ,2008 年には,国連開発と平和のた め の ス ポ ー ツ オ フ ィ ス(United Nations Office o n S p o r t f o r D e v e l o p m e n t a n d P e a c e : UNOSDP)が設置された.この間,2001 年に初 代,2009 年に 2 代目の国連 SDP 特任担当も任命 されており,国連,UNOSDP,各国政府,国際 NGO などが中心となって SDP コミュニティが形 成されていった.2012 年に SDP 分野を担う次世 代の育成を目的とした「ユース・リーダーシッ

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プ・プログラム」が始まり,2013 年には毎年 4 月 6 日を「開発と平和のためのスポーツ国際デー」 とする国連決議がなされた.しかし,2017 年 5 月 に UNOSDP は閉鎖され,国連が SDP 分野の旗 振り役を果たす時代は終焉を迎えた.国連がス ポーツを重視する姿勢からの脱却を図ったとの見 方もあるが,SDP コミュニティが拡大し,もは や国連が分野をけん引する必要性が薄れたように も見える.  過去 20 年余りの国際社会における SDP 分野の 発展は,「NGO や一部の ODA 事業などで行われ ていたスポーツ関連事業に国際社会が着目し,国 連が主導し体系化,大衆化の過程を歩んだもので あった」(岡田,2015)と評価される.活動の大 衆化,活動数の急増により,「スポーツを通じた 開発事業の実際の活動が,ローカルな文脈とかけ 離れたところで行われる」(Guest, 2009)ことや 「限られたリソースを争わなければならない中 で,事業がしばしば資金獲得のための枠組みに嵌 め込まれる」(Howells, 2007)ことが問題視され ている.これらの SDP の課題が浮き彫りになる 時,SDP 分野の活動の量的な発展を手放しで喜 ぶのみでなく,質的な充実に目を向ける慎重さが 必要とされる.  日本における SDP は,政策レベルではもちろ ん,学術分野の一つとしても認知をされておら ず,一般的に理解を得られている概念とは言い難 い.しかし,国際協力機構のボランティア事業, 国際交流基金のスポーツ人材交流,日本体育協会 のスポーツ行政官の招聘といったスポーツに関わ る人材育成や技術移転を目的とした事業が長年に わたって行われてきた.その中で,2020 年の東 京オリンピック・パラリンピック招致の過程で, ス ポ ー ツ に よ る 国 際 貢 献 を さ ら に 推 進 す る 「 ス ポ ー ツ・ フ ォ ー・ ト ゥ モ ロ ー(Sport for Tomorrow:SFT)」構想が国際社会に提示され た.SFT は,①スポーツ・アカデミー形成支援 事業,②戦略的二国間スポーツ国際貢献事業,③ 国際アンチ・ドーピング強化支援事業,④オリン ピック・パラリンピック・ムーブメント全国展開 事業,⑤スポーツ・デジタルアーカイブ構想調査 研究事業からなり,平成 29 年度には 11 億 7,000 万円余の予算が計上されている.スポーツ庁から 事業を受託した日本スポーツ振興センターに設置 された SFT 事務局を中心に運営委員会やコン ソーシアム会員などが協力し,東京オリンピッ ク・パラリンピック招致の際に約束した 100 ヶ国 1,000 万人にスポーツの楽しさを届けるべく活動 が行われている. 3.貧困とスポーツ 3.1. スポーツと開発の国際プラットフォーム (International Platform on Sport and

Development)  国連によるタスクフォースの設置以降,SDP の議論が活発化し始めた 2003 年に「スポーツと 開発の国際プラットフォーム」(以下,プラット フォーム)が開設された.プラットフォームは, インターネットを活用し,オンライン上で SDP に関わる様々な情報の交換や蓄積,収集を試みる もので,スイスの政府系コンサルタントであるス イ ス 開 発 ア カ デ ミ ー(Swiss Academy for Development)が事務局として運営している.プ ラットフォーム上では,SDP に関わるニュース やイベント,求人などの最新情報が掲載されてい るほか,SDP の細分化された分野の説明がなさ れている 2 .これまでに世界各国の現場で行われ た活動の報告や研究の成果が掲載され,実際に使 用された教材なども公表されている.SDP に関 わる個人,団体,活動の情報を世界各国から登録 することができ,相互に連絡が可能であるほか, いくつかのテーマについて議論する場も設けられ ている.2017 年 8 月現在,登録されている 8,311 人の個人と 960 の団体の情報をオンライン上で得 ることができる.  このプラットフォームの「経済開発」の説明に おいて,①開発途上国におけるスポーツと筋肉流

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出(muscle drain),②スポーツ界における搾取 と子どもの保護,③地域スポーツイベントの招 致,低コストで使用できるスポーツ用品製造,ア スリートの送金などによるローカルなスポーツ市 場の発展,④就業に向けたスポーツを通じたスキ ルの習得,の 4 項目が取り上げられている.かつ ては,①∼③の研究や報告も見られたが,近年の SDP の議論では,④就業に向けたスポーツを通 じたスキルの習得が主なトピックとされることが 多い.より具体的には,コミュニケーションの促 進といったスポーツの特性を活かしたライフスキ ルの習得,スポーツを通じた職業観の醸成などと 表され,世界各国で実務や研究が活発に行われて いる.  ここで,「ライフスキル」に触れておきたい. ライフスキルは,世界保健機関(World Health Organization: WHO)によって「個人が,日々の 生活における要求や問題に効果的に対応するため に必要な適切かつ積極的にふるまう能力」と定義 づけられている.また,UNESCAP(2003)はラ イフスキルを「問題解決,批判的思考,効果的な コミュニケーションの技術,意思決定,創造的思 考,対人関係スキル,自己認識を構築する技術, 共感力,ストレスと感情の起伏への対処」と説明 している.ライフスキルを日本語に訳すと「生き るための技術」であるため,「人間が社会的な存 在として,日々の生活満足度を高めるために求め られる時には地域ごとに異なるコミュニケーショ ンの基本や人間関係の構築のための技術」(岡田, 2014)と言うことも可能であろう.  Cope ら(2017)は,WHO やユニセフのライ フスキルに関する資料を基に,スポーツとライフ スキルについて「スポーツが対象者のライフスキ ルの獲得や向上に貢献する可能性を示すいくつか の事実が明らかになっている」と述べている. Rossy; Jeanes(2016)は,スポーツを通じた教 育の具体的な内容や教育学からの評価に懐疑的な 見方を示しつつも「われわれは SfD(Sport for Development)の教育的要素は,持続可能な開発 や社会正義の達成への貢献の中心に位置するもの と信じている」と述べている.これらの研究から, 貧困を削減,緩和する試みの主体としての「個人」 に焦点が当てられ,個人がライフスキルを獲得 し,経済的に自立することが,SDP 分野におい て「スポーツ」と「貧困」を語る際のゴール地点 の一つと捉えられていることが分かる. 3.2.青少年とスポーツ  開発分野においては,貧困の議論の中心的なト ピックとして青少年育成や青少年教育が取り上げ られる事例がまま見られる.青少年(Youth)と は,国連の定義では「15 歳∼ 24 歳の人々」 3 であ り,世界の青少年人口は,1985 年に 9 億 4,100 万 人と全人口の 19.4 %を占めていた.1995 年には 青少年の「人口」は増加するものの「割合」は 18.0 %と減少し,2025 年には全人口に占める青 少年人口比が 15.4 %まで低下すると推測されて いる.1999 年の国連決議「青少年に関する世界 行動計画」の前文において,「青少年は大きな社 会的変革を引き起こす当人であり,受益者であ り,また犠牲者である.また,総じて,既存の秩 序に組み込まれようとしながら,一方ではその秩 序を変革する原動力となるという矛盾に直面して いる.青少年は,世界のあらゆる場所で,さまざ まに異なる発展段階の国々,そしてさまざまに異 なる経済社会的状況に住んでおり,社会生活への 完全な参与を熱望している」 4 と述べられている. 青少年は,広義には年齢で区分されているが,開 発分野においては,この年齢層に多い特有の課題 を 有 す る 青 少 年 を「 困 難 な 状 況 に あ る 青 少 年 (Youth at Risk)」とすることが多く,この場合 の青少年はより幅広い年齢層と捉えられている. 正に現代社会における受益者であり,犠牲者でも あるため,開発分野における青少年教育は,一般 的な意味での青少年に対する教育に留まらず,「青 少年が抱える諸問題の改善のための教育的アプ ローチ」(岡田,2007)を含めたものを示すこと になる.ここでの「諸問題」は,麻薬やアルコー

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ル依存,売買春や軽犯罪などの非行行為が中心に なる場合が多いが,国や地域によっては,紛争や 貧困,人権侵害やジェンダー格差などを背景に, より深刻な開発課題を青少年が背負う場合も少な くない.SDP 分野においては,これらの課題の 解決に向けて,様々な啓発,認知,行動変容,ラ イフスキルの獲得などへのアプローチが行われて いる.  SDP 分野における青少年とスポーツの議論の 中で,「ポジティブ・ユース・デヴェロップメン ト(Positive Youth Development: PYD)」 と い う単語が用いられている.Jones ら(2017)は, 7 つの学術データベースから抽出した 482 本の PYD に関わる論文のキーワードを統計的に処理 し,PYD のためのスポーツ活動の具体的な成果 を分析した.これによりいくつかの共通した課題 と障壁が示されると同時に,SDP 分野の大部分 の学術的論考が,個人的な成果,すなわちスポー ツ活動が青少年個人にもたらした成果を示すもの であることが明らかになっており,このことは, 前節で示したライフスキルの議論とも合致してい る.この研究の中では,「スポーツに関わる文脈(例 えば,コーチやチームメイトなどが表れるもの) とスポーツには関わらない文脈(例えば,コミュ ニティや学校などが表れるもの)は,基本的には 同じ研究の中では表出せず,全ての研究のうちの 27 % の み が 両 方 の 文 脈 を 有 す る 」(Jones ら 2017)という特徴も明らかになった.  この傾向について Jones ら(2017)は,PYD に関する論考がカバーする範囲の狭さを指摘して いるが,そもそも PYD 研究の中で貧困とスポー ツが語られる時,意識,無意識に関わらず,相対 的貧困について取り上げられることは少なく,絶 対的貧困が念頭に置かれていることが多い.絶対 的貧困は,衣食住といった基本的な生活条件を満 たすための最低限の経済基盤を中心とした考え方 であり,生活に関わるより広い課題や社会全体に おける不平等などは考慮の外にある.一方,人が 属する社会の中で標準とされる生活水準を下回る 被はく奪状況を指す相対的貧困が,PYD の議論 においてより重要となる場合もあり,これについ ては後に詳述する. 3.3.社会的排除・社会的包摂  貧困とスポーツの議論において,近年は,社会 的排除(social exclusion)や社会的包摂(social inclusion)の概念が用いられるケースが増加して いる.社会的排除や社会的包摂は,前節で述べた 相対的貧困の核となる考え方であり,特に 1970 年代以降に欧州の国々で社会福祉政策が転換され 始めた時期に隆盛した.  社会的排除について,阿部(2007)は,「人び とが社会に参加することを可能ならしめる様々な 条件(具体的には雇用,住居,諸制度へのアクセ ス,文化資本,社会的ネットワークなど)を前提 としつつ,それらの条件の欠如が人生の早期から 蓄積することによって,それらの人びとの社会参 加が阻害されていく過程」と説明する.一方,社 会的包摂は,「これまでの貧困の議論が,ただ単 にお金やモノの不足だけに注目してきたとすれ ば,社会的包摂は,人々が社会の仕組みから切り 離される『関係の問題』にまで視野を広げたもの」 (阿部,2017)とされ,社会的排除と社会的包摂 は表裏一体の関係にあると言える.  社会的包摂を実現する一つの方策として,ま た,社会的排除の有無を量るものさしの一つとし てスポーツも取り上げられている.スポーツの側 からみると「人はスポーツのような社会との関わ りを通じて関係を構築する」(Coakley; Donnelly 2009)と述べられているように,社会的相互作用 論の中で,スポーツ,社会,人の関係が示され, その後の社会的包摂とスポーツの論につながって い っ た. 社 会 的 排 除 と ス ポ ー ツ に つ い て は, Collins(2004,2014),Collins; Haudenhuyse(2015) が複数の研究を発表しており,社会的排除の状態 を無自覚的に生み出すスポーツの負の側面と, 人々がスポーツへの参加を妨げられるいくつかの 要因について,より仔細な検討が行われている.

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 Sherry(2010) や Magee; Jeanes(2011) は, 社会的排除,社会的包摂とスポーツの関係性を 「ホームレスワールドカップ」の事例を基に検証 した.検証の結果,ホームレス状態にある人々は, 他者との関わりの機会が極端に少なく,社会から の孤立を余儀なくされるが,サッカーに参加する ことにより,他者への信頼や共感といった感情を 獲得していることが明らかになった.同時にホー ムレス状態にある人々が,社会的スキルを身に付 ける際に相互に教材になり得ることや,チームの 中で何らかの責任を持つことが疑似的社会におけ る経験となることにも言及した.日常練習,試合 への参加,ホームレスワールドカップ大会を目指 す過程などが,全て社会的包摂の重要な要件であ る社会への参加やエンパワメント,社会的役割の 認識などにつながる可能性を有することが明らか になった.  ここまで,SDP 分野における貧困とスポーツ に関わる先行研究を整理したが,貧困問題の解決 に寄与するスポーツの特性を明確化するには至っ ていない.次章以降では,先行研究の議論を踏ま え た う え で,Sherry(2010) や Magee; Jeanes (2011)も取り上げたホームレスワールドカップ を事例として,スポーツと貧困の関係性に迫って いきたい. 4.ホームレスワールドカップ 4.1.ホームレスワールドカップとは  ホームレスワールドカップは,文字通りホーム レス状態にある人々のみが参加することができる ストリートサッカーの世界大会である.2003 年 から毎年開催されており,2016 年 7 月に行われ た第 14 回グラスゴー大会には,世界各国から男 子 44 チーム,女子 14 チームが参加した.大会に は,16 歳以上で過去の大会への出場経験がない 者で,①大会開催日より 1 年以内に 3 週間以上の ホームレス経験がある,あるいはストリートペー パー販売で生計を立てている,② 2 年以内に麻薬 やアルコール依存の治療を受けている,③ 1 年以 内に亡命したあるいは亡命申請中である,のいず れかに当てはまる者が各国男女 8 人ずつ参加する ことができる.約 50 の国や地域から 500 人以上 のホームレス選手が集まった第 14 回大会は 1 週 間にわたって開催され,男女ともメキシコの優勝 で幕を閉じた.  ホームレスワールドカップの開催は,ホームレ スワールドカップ財団と開催都市の行政機関,支 援団体で組織される大会本部によって行われ,大 会期間中は選手・コーチ・関係者など各国 10 人 分の宿泊場所,食事,移動費(多くの場合はバス や公共交通機関のフリーパスなど),観光の機会 などが提供される.大会は,予選 1 次リーグ,2 次リーグ,決勝リーグ,と分けて行われ,全ての チームが予選で敗退することなく,最終日まで毎 日 1 ∼ 2 試合を戦う仕組みとなっている.コート は,22m × 16m と通常のフットサルコートより狭 く,周囲には 1.1m の壁が設置されている.3 人の フィールドプレーヤーとゴールキーパーの 4 人が 出場するが,試合を止めることなく随時交代が可 能である.控え選手は 4 人までで,7 分ハーフで 行われる試合の間に全ての選手が 1 度は出場する ことが義務付けられている.フィールドに立てる 人数やコートの仕様などホームレスワールドカッ プ独自のルールを採用することで競技性とエン ターテインメント性のバランスが取られており, 「選手個人の能力の優劣ではなく,チームとして 図 1 ホームレスワールドカップのルール 出典:岡田(2014)

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の連携の優劣を競うという大会の目的と方向性を 明確に示している」(岡田,2012)と考察される.  ホームレスワールドカップへの選手の派遣は, 各国のナショナルパートナーと呼ばれる団体に よって行われる.ナショナルパートナーは,世界 73 ヶ国において,ホームレスワールドカップへ の選手派遣のみでなく,各国の貧困やホームレス の課題解決に向けた活動を行っており,これらの 活動の対象は,420 ヶ所以上の地域,10 万人以上 のホームレス状態にある人々に拡大している 5 . 各国の団体の活動内容,形態,規模,目的などは 多様であり,例えば,開発途上国の団体の中に は,設立者や代表者,スタッフなどを含めて海外 からの援助によって成り立っているものもある. 各団体の活動は,就労支援,教育支援,職業訓 練,孤児や難民の支援など様々であり,団体の成 り立ちをみても,福祉関係,教育関係,スポーツ 関係,青少年育成関係と幅が広い.必然的に各団 体の活動の中でのホームレスワールドカップの位 置づけや,ストリートサッカー,スポーツの活用 方法も一様ではなく,大会での優勝を目指す団体 もあれば,大会への参加,他国のチームとの交流 に最大の意義を見出している団体も見られる.  ホームレスワールドカップ本部の参加基準に加 えて,独自の基準を用いて国内での選手選考を 行っている国も存在する.例えば,メキシコでは, 2005 年に設立された Street Soccer Mexico が半 年間をかけて全国 32 県で地区予選を行い,地区 代表による本選終了後に男女各 8 人の代表を選抜 している.2016 年には全国で 28,000 人のホーム レス選手が予選に参加しているため「代表選手た ちは,高い競争率を勝ち進んでくるので,最後の 全国トーナメントに上がってくる頃には相当高い レベルでのポジティブな変化がある」 6 と言われ ている.選ばれた代表選手は,10 日間の合宿の 中で,「トレーニングのみでなく,グループセラ ピーや依存症のカウンセリングを受けるほか,コ ンディショニングやトレーニングなどの講義を受 講」(岡田,2016)する.  メキシコでは,大規模な国内での活動が行われ ているが,多くのナショナルパートナーにとって は,日常練習と大会開催地までの渡航費の確保が 活動の中心である.団体の規模が拡大するにつれ て,国内での活動範囲が広がる傾向は見られる が,海外で行われる大会に選手を派遣するための 渡航費を毎年工面するのは容易ではない.国内で の活動を拡大したものの,団体の方針やスポン サーの意向などにより,派遣を停止する国もある が,ホームレスワールドカップの意義が多様に捉 えられている証左とも言えるであろう.先行研究 では,「目標や到達点としてのホームレスワール ドカップは,年に一度の国際大会であることに加 えて,各国での日常的な活動の動機づけのための 存在」(岡田,2016)と分析されている.各国に おける貧困やホームレスの状況,ホームレスを取 り巻く公的支援を含めた社会的環境,ナショナル パートナーの専門分野やホームレスワールドカッ プの位置づけなどは大きく異なっており,それ故 にホームレスワールドカップを基軸に各国の貧困 課題への取り組みを比較検討することは意義を有 すると考えている. 4.2.ホームレスワールドカップからみえるもの  上記のような課題認識を踏まえて,2015 年か ら日本を含めた 5 ヶ国でのフィールドワークに基 づく研究を開始し,現在も継続中である.当該研 究では,ホームレスワールドカップ大会そのもの の検証はほとんど行わず,主に各国のナショナル パートナーの国内での活動に焦点を絞り,団体の 創設者やスタッフ,選手や活動の裨益者などに対 する個別インタビュー(一部についてはグループ インタビュー)を行っている.  ホームレスを定義するのは困難であり,単に貧 しくて住む家がないのみでなく,失業,犯罪,薬 物使用,アルコール依存,精神疾患などの複数の 問題を抱える者が多い.さらに,法制度や家族形 態,公的支援などの違いから,国によって「どの ような状態にある人をホームレスと呼ぶか」が異

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なっている.したがって,各国の貧困,ホームレ ス事情に精通するナショナルパートナーの存在は 重要であり,彼らが大会への出場を起点にした社 会復帰への道程をどのように描いているか非常に 興味深い.フィールド調査の中では,対象とした 5 ヶ国の大会出場の過程において,各国におい て,何が期待され,何がなされ,選手や社会がど のように変化したのかを検証することを試みてい る.以下に途中経過ではあるが,調査結果の一部 を紹介する.  ジンバブエのナショナルパートナーは,Young Achievement Sports for Development(YASD) である.2005 年に首都郊外のスラム地区の子ど も達に対して,HIV/AIDS 啓発,薬物乱用防止, 自尊心の醸成などを行う目的で設立された.活動 を行う地区では,2005 年に政府がスラムからの 一斉退去を求める施策を断行し,国連の発表によ ると約 70 万人が一夜にして住居や生活の糧を 失った.住民は一時的に他の場所に退避したが, 数ヶ月後に代替居住地に戻った被害者と支援者に より YASD が設立された.YASD は「賢いコミュ ニティと人をつくる必要性」 7 の認識の基に特に 教育に焦点を当てた活動を開始し,その一つが ホームレスワールドカップへの選手の派遣であっ た.「ホームレスワールドカップへの出場を目標 にトレーニングを積むことと,大会において最高 のパフォーマンスを見せることにより,『貧しい 環境=人生の敗者ではない』ことを実感させるこ とが最大の目的」(岡田,2016)とされており, 自尊心の回復に重点が置かれている.  2015 年,2016 年のホームレスワールドカップ を連覇したメキシコのナショナルパートナーは, 前 述 の Street Soccer Mexico(SSM) で あ る. SSM は,地方公共団体や NGO,社会福祉やス ポーツ関連の団体と連携し,各地域の課題に応じ た活動を行い,並行して地区予選も開催している ため,内容,規模ともに他国と一線を画してい る.メキシコでは,「様々な理由から,ホームレ スにまつわる問題を就業,住居,教育,福祉など の単一の枠組みで捉えて理解することが困難」(岡 田,2016)であるが,SSM はサッカーを媒体に これらの課題にアプローチしており,「団体の規 模,裨益者数,国内での認知度等の様々な面にお いて世界最大であり,ホームレスワールドカップ 大会の男女での連覇の話題の陰に隠れた活動の質 という点でも先進例として参考になる点が多い」 (岡田,2016)と考察される.  カンボジアでは,オーストラリアに本部を持つ Happy Football Cambodia Australia(HFCA) がナショナルパートナーとして活動を行ってい る.HFCA は,孤児院を中心とした複数の団体 から希望する子ども達を集めて定期練習を行い, ホームレスワールドカップに毎年,選手を派遣し ている.フットサルに関わる活動のみを行う団体 であり,国内のプロチームやカンボジアサッカー 連盟とのつながりも深い.カンボジアでは,部活 動や地域のスポーツ環境が十分ではなく,ホーム レスワールドカップへの出場は,国内のプロサッ カー選手になるための登竜門と捉えられている. 「実際に国内リーグでプレイするプロ選手も生ま れていることから,将来の生計手段の獲得の一つ として HFCA の専門性に期待が寄せられている」 (岡田,2016)のである.  香港のナショナルパートナーは,2005 年に複 数のホームレス支援の団体からメンバーを募って 発足した Street Soccer Hong Kong(街頭足球) である.街頭足球は,2005 年からホームレスワー ルドカップに選手を派遣するほか,2013 年から は 対 象 を ホ ー ム レ ス に 限 ら な い“Hong Kong Street Soccer”という国内リーグを開催してい る.このリーグとホームレス対象の日常練習か ら,毎年,春先に香港代表候補 25 人を選出しト レーニングを行うほか,ソーシャルワーカーによ る社会復帰に向けた個別のプログラムやカウンセ リングが行われる.代表選手の活動の一つには, 小・中学校での講演やスポンサー企業との交流イ ベントなどもあり,香港市民にホームレスワール ドカップに関心を持ってもらうことも活動の目的

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に掲げられている.街頭足球は,「ホームレス状 態にある人々がサッカープログラムへの参加を きっかけに,キャリア支援やリーダーシッププロ グラムを受講し,ボランティア,就学,就業など につなげる」(岡田,2016)という包括的なモデ ルの構築を試みている.  日本のナショナルパートナーは,NPO 法人ビッ グイシュー基金である.雑誌販売によってホーム レスの人々の雇用を創出する有限会社ビッグイ シューを母体とした非営利団体であり,2004 年, 2009 年,2011 年のホームレスワールドカップに 選手を派遣した.2017 年現在,東京と大阪で月 数回の定期練習を開催するほか,2015 年からダ イバーシティカップを開催している.ダイバーシ ティカップには,「若年無業者」「うつ病」「不登 校や引きこもりの経験者」「児童養護施設出身者」 「被災地・福島の若者」「ギャンブル依存症からの 回復施設」「海外にルーツを持つ若者」「難民とし て日本に暮らす者」などの様々なチームが参加し ている.ビッグイシュー基金は,「長年のホーム レスの課題への関わりやホームレスワールドカッ プへの参加経験から,何らかの困難や生きづらさ を抱えていたり,社会的にマイノリティとされて いる人々が外に目を開くきっかけを持ち,自発的 な他者との交流の媒体となるフットサルの機能に 着目し」(岡田,2016)活動の対象範囲を拡大し ている. 5.まとめ  先行研究の整理とホームレスワールドカップへ の参加 5 ヶ国の活動の概観からいくつかの示唆を 得ることができる.まずは,絶対的貧困とスポー ツの関わりについてである.スポーツの特性か ら,例えばプロの選手やコーチになり収入を得る こともあり,その意味で絶対的貧困への直接的な アプローチの可能性はゼロではない.事例として 取り上げたホームレスワールドカップでも,過去 に大会終了後にプロ契約をした選手がおり,活動 の成果として広く知られている.しかし,言うま でもなく極めて限定的な事例であり,国情や国内 のサッカー環境の影響も受ける.例えばカンボジ アは,2016 年のホームレスワールドカップのラ ンキングが 37 位であるが,これまでに国内のプ ロリーグに複数名の選手を輩出している.一方, ランキング 2 位のメキシコからプロ選手は出てお らず,国内のプロサッカーのレベルの違いは明ら かである.プロ選手になるというアメリカンド リームを見せることがスポーツの特徴を上手く活 用しているとも言えるが,選手の青田買いやドー ピングを始めとしたスポーツが持つ大小の副次的 な危険性にも留意が必要である.ホームレスワー ルドカップの事例に留まらないが,特にアフリカ 大陸出身の選手の国際大会での競技成績の上昇を 鑑みると,スポーツの急速なグローバル化,産業 化の中で,「スポーツ」や「スポーツ界」を開発 分野で上手く活用する才覚も必要となる.  同じく絶対的貧困の文脈において,収入創出や 就業に結び付けることを目的にスポーツが活用さ れている.国や団体によって,教育,ライフスキ ルの習得,コミュニケーション能力の向上などと 表現は様々であるが,スポーツに参加する個人が 何らかの内面的変化(時には無意識的な外面的変 化)を経て貧困から脱却することが想定されてい る.例えば,事例で取り上げたジンバブエでは, 社会と関わるための自尊心の回復が目的とされて おり,香港ではライフスキルの獲得,カンボジア では,雇用や教育の機会を見つけることが一義的 な目的となる.国や地域により経済状況も貧困の 定義も異なるために一概には言えないが,貧しさ から抜け出し,日々の生活の充実を図るという観 点から考えると,必ずしも各国に共通したホーム レスワールドカップの意義を見出す必要性はない のかもしれない.このスポーツの持つ柔軟性が「ス ポーツ」と「貧困」を考える際の優位な点である が,一方で成果の数値化の困難さが付きまとう劣 位な点でもあろう.  ホームレスワールドカップの大会実行委員会が

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行った 2007 年のデンマーク大会の終了後 6 ヶ月 時点の調査では,対象とした 381 人の大会出場選 手の中で 110 人(29 %)が新たに仕事を見つけ, 122 人(32 %)が教育を受ける機会を得た.145 人(38 %)の住居環境が向上し,118 人(31 %) がアルコールや薬物依存の状態から抜け出した 8 と報告されている.この結果は,個別の背景を考 慮外に一律に出されたものであり,大きな傾向を 掴む一次資料としては有用であるが,国ごとの比 較や経年的な変化を検証する資料としては活用で きない.しかし,この明示された数字が方々で活 用されており,その後に類似の調査が行われた形 跡もないことから,この種の調査の困難さと貴重 さは言わずもがなである.  相対的貧困へのスポーツの貢献については,さ らに入り組んだ議論が必要であろう.まずは,貧 困を「相対化」する基準をどこに求めるかを個別 に検討する必要性がある.相対的貧困へのスポー ツの寄与を測るのであれば,当該社会の課題の分 析を属人的に細かく行う必要があると同時に,こ れらの課題に対峙する人々の貧困の捉え方につい ても何らかの指標が必要となる.アクションリ サーチの手法を用いた定性的な評価が想定される が,そもそも相対的貧困に対するアウトサイダー の関わり方が難しく,加えて,現場での経験則を 基に行われてきたであろうスポーツの貢献につい ては,言語化がしづらい場合も散見される.ホー ムレスワールドカップの事例で言えば,現場の貧 困課題を理解する各国の団体がスポーツやフット サルのどの部分を「使える」と感じ,実際に成果 が表れているのかについて事例を基に検証し,ス ポーツの特性を明らかにする地道なアプローチが 必要であろう.  「貧困」と「スポーツ」の関係の検討を行って きたが,スポーツへの願望や期待は見られるもの の,スポーツが貧困削減に寄与したことを示す明 らかな事例は多くは見られない.その理由とし て,貧困の定義や現状が各国で異なっていたり, 絶対的貧困と相対的貧困の議論が混在していたり といった「貧困」側の問題に加えて,スポーツが 余暇や遊びといった不真面目なイメージを想起さ せることや,絶対的貧困を即座に解消する可能性 を内包するといった「スポーツ」側の問題も上げ られる.これらに加えて,SDP 分野の中でも「貧 困」と「スポーツ」をどのように結び付けるかに ついて,十分な議論がなされているとは言い難 い.その意味では,各国で異なる事情を有する ホームレスを定義づけ,毎年,開催されている ホームレスワールドカップは貴重な事例であろ う.ホームレスワールドカップに関わる各国の団 体に着目し,息の長い継続性のある検証を積み重 ねることは,「貧困」と「スポーツ」の関係性に迫 ることはもとより,スポーツの本質や貧困の根本 原因を突き詰めて考えることにもつながるであろ う. 注 1 鈴 木・ 岡 田(2015) は,1980 年 代 前 半 に 10 団 体以下であった NGO 数が,2012 年時点で 430 団体を超え,その後も加速度的に増え続けてい ると指摘している. 2 例えば,教育と子ども・青少年の育成,平和構 築,障がい者,復興,健康,ジェンダー,経済 開発,子どもの保護と安全などの分野がある. 3 1985 年の「国際青少年の年(International Year for youth)」に定められて以降,広く国連関連機 関で使用されている.United Nations ホームペー ジ“Definition of Youth” http://www.unesco. org/new/en/social-and-human-sciences/themes/ youth/youth-definition/[2017/08/20] 参照. 4 国際連合広報センターホームページ 歴史的視 点「国際青少年デー(8 月 12 日)」 http://www.unic.or.jp/news_press/features_ backgrounders/1411/[2017/07/30] 参照. 5 Homeless World Cup ホームページ

https: //www.homelessworldcup.org/about/ [2016/09/23] 参照.

6 2015 年のフィールドワークの際に行った Street Soccer Mexico の Costa 氏のインタビュー調査 より.

7 2016 年のフィールドワークの際に行った YASD の Petros 氏のインタビュー調査より.

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8 Impact Research Copenhagen 2007 Homeless World Cup,ホームレスワールドカップホーム ペ ー ジ http://www.homelessworldcup.org/our-impact/impact-research [2011/09/28] 参照. 参考文献 阿部彩(2007)「日本における社会的排除の実態と その要因」『季刊・社会保障研究 特集:社会 的排除と社会的包摂 ― 理論と実証―』43(1), 27 ― 40. 阿部彩(2017)「誰もが『居場所」』『出番』『つながり』 を も て る 社 会 は つ く れ る 」『The Big Issue Japan 日本版』185,13 ― 14.

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A study on poverty reduction through sport

Chiaki Okada

Graduate School of Human Sciences, Osaka University

  Several issues should be considered when analysing the relationship of poverty and sport . We tried to find the core significance of sport from verifying several related theses, and from referring to some case studies in 5 countries which participated in the Homeless World Cup.

  As a result, in the discussion of absolute poverty and sport, there are several issues situated in both of the areas, poverty and sport . Additionally, in the discussion of relative poverty and sport, the necessity of analysing their relationship in each social context was clearly recognized.

  Careful and profound observations and analysis should be important in evaluating sport as a tool for poverty reduction, although we see some potential poverty reduction through sport from enriching fields.

参照

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