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意味記憶からの情報検索 : 人間の記憶についての認知心理学的研究 利用統計を見る

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意味記憶からの情報検索

―人間の記憶についての認知心理学的研究―

Retrieval Time from Semantic Memory

岡林春雄 雨宮美佐子

HaruoOKABAYASHI MisakoAMEMIYA

 This experiment measures retrieval time from semantic memory, and this paper explaines how a network representation of the propositions is created. Such representa− tions reveal in graphical form the associative connections between concepts. The closer together the concepts in a propositional network are, the better cues they are for each other’s recall. The results of this experiment almost support the network of concepts assumed by Collins and Quillian(1969)in their experiment to compare reaction time in making true−false judgments about statements, but some do not. A hierarchy of con− cepts which they proposed can be rarely seen in this study. キーワード:semantic memory, retrieval time.  人間の長期記憶には一般に,膨大な情報が入っている. その情報の中には当然,前回の誕生日には何をしたとか, 小学校の時いじめられたとかいうような個人的な経験が 入っている.このような個人の生活経験の記憶を特に, Tulving(1972)は,エピソード記憶と呼んだ.検索す る場合に,特定の日時や場所が関係してくるような情報 をたくわえているのがエピソード記憶である.人間はま た,エピソード記憶とは違って,特定の日時や場所に関 係しない情報,例えば,リンゴは赤いといった「事実」 も情報として記憶している.この非エピソード的情報が 意味記憶と呼ばれるものである.単語や言語的記号,そ の意味などについての体制化された知識単語や記号の 間の関係や使い方などに関する知識を意味記憶は含んで いる.本研究では,この意味記憶に関して,人間の頭の 中(貯蔵庫)に入っている情報構造を意識しながら,情 報の検索にっいて反応時間を中心に検討してみたい.

検索速度に影響する要因

 FreedmanとLoftus(1971)は,意味記憶の中か

ら適切な項目を見つける過程は継時的走査の過程なのか どうかを検証した.ここで継時的走査というのは,記憶 貯蔵庫の中で求めている情報を見つけるまで一つ一っ項 目を走査していくことである.例えば,「り」で始まる *心理学教室 **富士通京浜システムエンジニアリング 果物の名を聞かれたら,「果物」の記憶場所に行き,「り」 で始まる名前にぶつかるまでしらみつぶしに捜し,「り んご」に行き着く.これが継時的走査である.彼らの実 験がねらった研究目的は,カテゴリーの事例を連続的に 走査して適切な事例を被験者たちが見つけるのかどうか を決めることであった.もしそうならば,小さいカテゴ リーに属するものを探すよりは,大きなカテゴリーに属 するものを探す方が時間がかかるはずである.例えば, Wで始まる季節名(Winter)を探すよりは, Pで始ま る果物名(例えばPeach)を探す方が時間がかかるは ずである.何故なら,後者(例えば,Peach)の方が, 前者(Winter)よりも多くの探索を必要とするからで ある.しかしながら,実験結果では,そうではないこと が明らかになった.すなわち,彼らの実験結果では,大 きいカテゴリーに属する事例の名を検索するのと,小さ いカテゴリーに属する事例の名を検索するのとで,同じ 位時間がかかったのである.そこで,意味記憶から情報 を検索する際,人間は継時的走査過程を用いていないの ではないかと彼らは結論づけている.  さてそれでは,検索速度に影響する要因は何であろう

か.FreedmanとLoftus(1971)は,次の二つの方

法を使って被験者に刺激を提示した.第一の方法は,ま ず文字を示し,間を置いてからカテゴリーを指示する方 法である.例えば,文字「P」を示し,少し間を置いて から「果物」というカテゴリーを示す.被験者は,peach, pear, plumなどと反応するであろう.「果物」という

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指示が出てから被験者が反応するまでの反応時間を測る のである.被験者の心的操作を考えてみると,この文字 を先に示す方法では,「果物」というカテゴリーが出さ れるやいなや被験者は三つのことを頭の中で行なわなけ ればならない.まず,「果物」の情報がどこに貯えられ ているか記憶内を探さなければならない.つまり,記憶 内の果物のところにアクセスするのである.このステッ プのために要する時間をt1とする.次に,被験者はこ のカテゴリーから適切な情報を検索せねばならない.す なわち,「果物」のカテゴリーからPで始まる事例を探 さなければならない.このステップに要する時間をt2 とする.そして最後に,被験者は反応しなければならな い.これに要する時間をKとする.そこで,「P一果物」 という刺激が与えられた場合の全反応時間(RTi)は:    RT1=t1→−t2十K となる.  彼らの使用した第二の方法は,文字を指示する前に, カテゴリーを示す提示方法である.まず「果物」と指示 し,間を置いてから「P」を指示するのである.この場 合の反応時間は,Pが指示されてから反応するまでにか かった時間である.このカテゴリーを先に出す方法では, 「果物」とPとの間の時間中に,記憶内のカテゴリーに アクセスすることができる.そこで,この場合の全反応 時間(RTi)は:

   RT2=t2十K

となる.

 RT1とRT2の差をとることにより,カテゴリーにア

クセスする時間tlを推定することはできる訳であり, 典型的な実験では,tlは250ミリセカンドと言われてい る(Loftus&Loftus,1976).

ある検索が他の検索におよぼす影響

 ある事項を記憶から検索すると,それが他の事項の検 索にどのような影響を与えるのであろうか.Collinsと Quillian(1970)は,「カナリアは鳥である」といった 文を被験者に示してこの文が正 しいか誤っているかを判定させ, 次に「カナリァは飛びます」 という文を判定させた.その結 果,このように同じ主語が使わ れていれば,二番目の文に対す る反応時間は最初の文に対する 反応時間よりも0.5秒以上も短 縮されることにもなるというこ とが分かった.また,あるカテ ゴリーに属する事例名をあげ, 後でまた別の事例名をあげさせるような実験でも,この 反応促進効果が見い出されている(Loftus,1973;Loftus &Loftus,1974).  このような反応促進効果は,最初の検索がその記憶場 所周辺に対するアクセスのしやすさ(アクセシビリティー) を高め,その検索事項に関連する記憶場所を活性化させ る結果なのではなかろうか.ただ,このようなある記憶 場所に対するアクセシビリティーの高まりは一時的なもの であり,永久に活性化していることはあり得ないのである.

意味記憶構造と検索との関係

 意味記憶理論としての代表的なものには,ネットワー ク・モデル,集合論的モデル,特性比較モデルがある (Smith, Shoben,&Rips,1974).それぞれに特徴が あり,また問題もあるのだが,現在特に中心になってい るのはネットワーク・モデルであるので,ここではネッ トワーク・モデルを中心に考えたい.  CollinsとQuillian(1969)は,「カナリアには羽 毛がある」,「カナリアは魚である」などの文に対する真 偽判断の反応時間を指標として,人間の知識は多数の概 念の階層的ネットワーク構造として貯蔵されているとい うモデルを提出した.そのネットワークは,意味記憶に 貯蔵されている内的表象として,多くの概念や属性を, まず三っの概念水準の階層のどれかに位置づけている. そして,各水準での概念や属性は節点(nodes)として 表わされ,また水準内の概念と属性の関係や水準間にま たがる概念の関係は,リンクと名づけられた指針で表わ されている.つまり,彼らによる記憶構造モデルでは, 諸カテゴリーが上位一下位関係という形で階層的に構造 化・組織化されていることがわかる(図1).例えば, 「カナリア」の上位概念は「鳥」であり,「鳥」の上位概 念は「動物」である.また,ある一群のものを特徴づけ る属性は,この群と対応する階層構造内の場所だけに貯 蔵されていると仮定している.例えば,すべての「鳥」 を特徴づける属性(翼がある,飛べるなど)は,鳥のと          /翼がある

/〆、る夕

    \    ブルーバード\ カナリア     歌える

/餌を食べる

\皮膚がある

幸福をもたらす

     魚く

/つ\

サ・<

  危険だ 泳げる エラがある   ピンク色を   している

サケく

  食べられる 図1.階層的に組織された記憶構造の一部(Collins&Quillian,1969).

一104一

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ころにだけ貯えられていて,個々の鳥の名の所にはこの 属性は貯えられていない.  この構造をもとに,彼らは構造内の情報の検索のされ かたを検証するために,被験者に次のような課題文を提 示し,それに対して「はい」または「いいえ」での反応 を求めた. [課題文 例]  1.カナリアはエサを食べますか.  2.カナリアは飛びますか.  3.カナリアは黄色いですか.  図1からも分かるように,この三つの課題文は,答え るために必要な情報がそれぞれ異なった概念水準に位置 づけられている.「カナリアはエサを食べますか」とい う質問を分析すると,「エサを食べる」という情報は 「カナリァ」から二水準上の「動物」のところに貯えら れていることになる.同様に,「飛べる」と「黄色い」 という情報は,それぞれ一水準上,0水準上に貯えられ ている. 1500 反 応 時 間

 1400

百 ‖ 1300 (1310) カナリアは餌を食べますか      (1460) (1385) カナリアは飛びますか カナリアは黄色いですか 0       1        2  属性が貯蔵されている水準 図2.いろいろな名詞とその属性とに関する質問に答え るための反応時間(Collins&Quillian,1969)  実験結果は図2に示す通りであり,情報の水準がはな れるのに比例して,検索に要する時間も長くなっている.

本研究

 上述のような先行研究を受けて,本研究では,Collins とQuillian(1969)のモデルを意識しながら,文の真 偽を判定する時間(反応時間)を測ることにより,意味 記憶からの情報検索のあり方を確認する. 生50名に文章完成法によって,文を創出してもらった. →一ナ1↓、v  紬尾ムゴエ、⊥  忙rl n、us r・GttLL.))      ”.」− 1 L−i− 」一、」 9’よ4ノり,恢歌乍1は,1列ん4よ1男刀物は’’’”°’”c9(よ9ノ」 という文の空白箇所を埋めていくように求められた.こ のとき,空白箇所を埋める言葉は,その文章の主語にあ たる語(上の場合は“動物”)の特性や属性を表わす語, 主語から連想される語に限定し,空白箇所を埋めた言葉 からの連想語ではないことを教示された.文章完成の個 数については限定しない.被験者が終了を表明したとこ ろで次の課題に移り,同様な方法で,「哺乳類は……… です(ます)」,「鳥は… ついても回答を求めた. [本実験] 被験者:山梨大学生45名 手続き: [予備調査] 本実験で提示する判定刺激文を選ぶために,山梨大学 ・です(ます)」という文章に  被験者に個別に課題文一予備調査で選んだ88項目に フィラータスク(無関係課題)20項目を加えたもの一 をランダムに提示し,その刺激課題の真偽判定を求め, その反応時間を測る.反応時間測定は,コンピュータに よってミリセコンドの単位で記録した. 結果と考察:  刺激課題文として反応時間を測るターゲットになった 文のいくつかに関する反応時間の平均と標準偏差を項目 毎にまとめた結果を図3∼図11に示してある.  この中で特に,「動物と鳥類および魚類との関係」に ついてクU一ズァップしてみたい.反応時間を,その関 係の近さ/遠さの指標として表わすと,それらの関係 は図12のようになる.本実験のデータによる図12は,  2ae 標 準  Iso 偏 差  100 50 o 動 物 は 動 き ま す 動 物 は 呼 吸 し ま す 動 物 は 皮 膚 を 持 つ て い ま す 動 物 は 食 物 を 食 べ ま す 動 物 は 飛 べ ま す 動 物 は 泳 げ ま す 動 物 は 4 本 足 で す 動 物 は 2 本 足 で す eOO   反   応 850   時   間 800 T50 700 (msec) 図3.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差)

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 200  18e 標  160 準 140 偏  120 差  teo   eo

 80

  40

 20

  0

哺哺哺哺哺哺

乳乳乳乳乳乳

類   類   類   類   類   類 は    は    は    は    は    は 動   子   乳   4   泳   飛 物   を   で   本   げ   べ で   産   子   足   ま   ま す   み   を   で   す   す   ま   育   す   す   て      ま      す 1㍑ 11:

61反

1;1応 lll時 lll間 ;!1 ;1: 1;1 ;il 700 (msec) 図4.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) 25e 標 準  200 偏 差 5c 鳥 は 動 物 で す 鳥 は 飛 べ ま す 鳥 は 翼 を 持 つ て い ま す 鳥 は 口 ば し を 持 つ て い ま す 鳥 は 2 本 足 で す ll: ;;1 ㌫ 反 ;91応 lll時 !ll間 ;!: ;1: ;9: ;ll ;;:(。,,c) 図5.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) CollinsとQuillian(1969)が提案した図1と微妙に 違っている.この違いは,人間の記憶構造がCollins 等が提案した程,理路整然としてはいないということを 示唆しているのではなかろうか.実際に被験者の中には, 「動物は動物園にいるもの」とか「鳥類と鳥,魚類と魚 は,それぞれ違う」といった内省報告をしている者もお り,意味記憶といえどもかなり個人的な基準に基づいて 情報を整理しているのかも知れない.  次に,CollinsとQuillian(1969)が問題にした水 標 準 偏 2eo 差 Iso 5e  200 標 準  15e 偏 差 50 0 魚   魚   魚   魚   魚

は は は は il

膓:‡‡:

で   を   に   ま   を す   持   住   す   持   っ    み         っ   て    ま        て   い   す       い   ま      ま   す       す 1;1 器1反 ㌫ 応 ;;1時 ll:間 !;1 ;!1 ;ll ;;9 ;il 700  (msec) 図6.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) V      I      I       之      ヨ 一一ゥ一一一∋    .        r   $ 1     .     r−一一      1     ・     , 一     ,    }    l    l    ) I     I     .     1     {     l     l †一一一一@       1     ◆     i     i     l 1     }     f     l     ’     1     1 ,     ]       」     ,     1

     一

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一一

鼈鼈黶c一一

一早 一   一 一一 }  一 黶g 一  }  一一一 一  … c  一  一  一一  一

鼈鼈鼈鼈鼈

人 は 動 物 で す 人 は 哺 乳 類 で す 人 は 皮 膚 を 持 つ て い ま す 人 は 動 き ま す 人 は 呼 吸 し ま す 人 は 乳 で 子 を 育 て ま す 人 は 歩 き ま す 人 は 話 を し ま す  ;;1 −lll :lll .. P;1 _;ll  l認  lll −ll;1 :;1:  ;1: 一;;1 反 応 時 間 (msec) 図7.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) 準の違いによる検索時間の差について考えてみたい.図 13,14,15が示すように,概念水準の増加によって必ら ずしも反応時間は増えてはいない.この問題は,Rips,

ShobenとSmith(1973)によっても指摘されている

のであるが,この問題を解決する一つの方法として,節 点(ノード)間の中間にある節点を除外してある概念が 他の概念と直接結合するという可能性を許すということ が考えられている.例えば,本実験の結果から,「コリー」 と「動物」をダイレクトに結ぶラインがネットワークの中 に組み込まれている可能性が示唆されるのである.確かに 一106 一

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2“ 標  150準 偏 差 :oo o イ    イ    イ ル    ル    ル カ    カ    カ は    は    は 動   哺   食 物   乳   物 で   類   を す   で   食   す   べ      ま     す イ ル カ は 子 を 産 み ま す イ    イ    イ ル    ル    ル カ    カ    カ は    は   は 泳   魚   卵 げ   で   を ま   す   産 す       み      ま     す   反 e50   応   時 eoo 間 750 700  (msec) 図8.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) 標 準 偏 差 20e 150 too 5e o ク ? ; 》 ;

z

; ll ?k ; 7. ; 1:

f

goo S50 800 750 反 応 時 間 TOO    (msec) 図9.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) われわれにとって,コリーは犬の代表的な概念なのであ ろうが,同時にコリーは動物の代表的な概念だと考えら れるのである.  この概念水準の増加によって必らずしも反応時間は増 えないという問題は,Collins等(1969)の提案した 「ある一群のものを特徴づける属性は,その群と対応す る階層構造内の場所だけに貯蔵される」とする認知的経 済性の仮定につながっていくと思われる.上位概念のも つ属性をその下位概念はもたないとすることで,コンピュ ータのレベルからいけば記憶容量の浪費を防ぐことが出 来るのである.しかしながら,人間の記憶が常にそのよ うな認知的経済性にそって成り立っているとはいえない 榎 準  tse 偏 差  100 2a° dヨ≡≡£≡ヨ≡≡≡≡≡≡ヨ9°° o カ    カ    カ    カ    カ ナ   ナ    ナ    ナ    ナ リ   リ    リ    リ    リ ア    ア    ア    ア    ア は     は     は     は     は

膓ξ三:9

で   す   ま   ず   で す       す   り   す        ま        す   反   応 sso   時   間 TOO (msec) 図10.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) 200 標  150 準 偏 差  loe 50 o ダ チ ヨ ウ は 動 物 で す ダ チ ヨ ウ は 鳥 で す ダ チ ヨ ウ は 呼 吸 し ま す ダ   ダ   ダ チ    チ   チ ヨ     ヨ     ヨ ウ    ウ    ウ は    は   は 翼   足   飛 を   が   ぺ         ま

; tlす

2 す

す 900   反e50   応   時 eoe 間 750 700  (msec) 図11.課題文に対する反応時間と標準偏差 (折れ線グラフ:反応時間,棒グラフ:標準偏差) サメ {ナク琉 ダチョウ

rメダカ       図12.動物と鳥類および動物と魚類との関係     (注.それぞれの意味距離は,反応時間による.また,    鳥類と魚類は同じ平面上にはない.)

(6)

反 応 時 間 830 e2e slo SOO 790 (msec) 780 ll 8 @      |       ] C 正

 2

概念水準 3 A:コリーは犬です B:コリーは   哺乳類です C:コリーは動物です 図13.概念水準別の課題文に対する反応時間(1) 反 応 時 間 1.OOO 850 900 850 (mseC) 800     l C        ) @      1 @      |     ト @   [ `[      B @   , 1        2   概  念 水  準 A:キリンは哺乳類です B:キリンは動物です C:キリンは首が長いです D:キリンは子を産みます 3 E:キリンは食物を食べます 図14.概念水準別の課題文に対する反応時間(2) 反 応 時 間 95a 900 eso (mse(:) SOO C 1 1 8 i A D 1        2        3   概  念  水  準 A:コウモリは飛べます B:コウモリは子を産みます C:コウモリは食物を食べます D:コウモリは呼吸します 図15.概念水準別の課題文に対する反応時間(3)

乳で子_、/[嗣ぺL・ル・

飛ぶ ように本実験のデータから考えられる.人間は,一見無 駄に見えるような記憶構造をとることによって,逆に情 報処理能力を高めているようにも思われる.  最後に,本実験のデータに基づき,哺乳類に関して, 概念と属性の意味関係と意味距離を描いた図を提出して おきたい(図16).

_イーE垂コ

全体的考察

 本研究では,CollinsとQuillian(1969)の記憶構 造のモデルを意識しながら,意味記憶からの情報検索の あり方について検討してみた.その結果,Collins等の ネットワーク・モデルとは若干違った記憶構造が存在す るのではないかということが示唆された.そもそも,記 憶というものはかなり個人的なものであり,意味記憶と いえどもエピソード記憶と不可分な部分があるのかも知 れない.しかしながら,この個人的なものという要因は, 意外に小さい問題なのかも知れない.いくら個人的なも のでも,最大公約数的なものを考えていくことは可能だ からである.  それよりも大きな問題は,記憶のもっている抽象性な のではなかろうか.記憶はイメージである.「動物」と いう言葉を聞いた時,われわれは何かをイメージするは ずである.「鳥」にしても「魚」にしても,われわれは それぞれについて何かのイメージをもっている.問題は, そのイメージである.イメージというと,まず絵(pic−− ture)のように具体的ではないかと思われるが,どうも それ程簡単なものではなく,抽象的ではないかと考えら れている.イメージ論争については,詳しくはPaivio          (例えば1971)とAnderson(例   呼吸する    えば1980)の論争にゆずるとして,          記憶のもっている抽象性が意味記          憶構造論に影響をおよぼす可能性          は十分にあると思われる.        長い首 図16.哺乳類に関するネットワークモデル  最後に,意味記憶の検索と記憶 構造との研究上の関係について触 れておきたい.意味記憶からの検 索を扱ういかなる理論も同時に, 意味記憶の構造を定めなければな らない.構造と検索とは密接に関 連している.このため,ある理論 の検索に関する面か,構造に関す る面かを検証しようとする実験に は,限界が付きまとうことになる. それは,もし実験結果が理論を支

一108一

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持しなかった場合,どちらに欠点があるのかが不明確で あるからである.このことは,この手の研究を行う研究 者が頭の中に入れておかねばならない前提であろうし, そのようなことがあるが故に,研究者は発想を柔軟にし 創造性を高めておく必要があろう.        *      *  この意味記憶構造論は,具体的な応用分野として,教 育現場でどのように教材を構成していくかとか,授業で の教師から児童・生徒への発問をどのようにするか,ま た児童・生徒の意識構造といったようなことにつながっ ていくわけであり,教育心理学の分野での重要な基礎研 究の一つである.今後,データを積み重ねていきたい.

参考文献

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SemantlC memOry:

semantic decisions. ,81,214∼241.

参照

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