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Title
Five-year longitudinal study on risk factors of
tooth loss in Japanese office workers
Author(s)
小山, 安徳
Journal
歯科学報, 116(6): 504-505
URL
http://hdl.handle.net/10130/4176
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 高齢者における歯の喪失リスクに関する疫学的研究は多く報告されているが,成人における歯の喪失リスク に関する経年的な疫学的研究は少ない。本研究は,生命保険会社の職員の2000年と2005年の歯科健診の結果を 用いて歯の喪失リスクにどのような要因が関連しているかを統計学的に求め,成人における健康教育の立案に 役立てることを目的とした。 2.研 究 方 法 研究対象者は,首都圏における生命保険会社に勤務する職員に対する歯科健康診査(受診者の年齢20−64歳) で,2000年度(2,048名)と2005年度(1,762名)のうち5年後で追跡が可能で解析ができた被検者,男性358名, 女性159名の計517名を20−29歳,30−39歳,40−49歳,50−59歳および60歳以上の年齢層に分けた。診査は各 事業所で行われ,口腔保健に関する質問紙調査と口腔診査(歯および歯周組織の状態(CPI))が行われた。性別 年齢別に口腔内の症状,喫煙,定期的健診の有無,口腔清掃習慣などの保健行動に関する項目によって2群間 に分け,5年間での歯の喪失の状態,現在歯数の差,5年間で1歯以上の歯の喪失の有無の検定を行った。ま
た,5年間で1歯以上の歯の喪失に対する各要因について SAS Ver9.2を用いた logistic 分析(stepwise 法)を
行い,調整オッズ比(年齢および性別で調整)を求めた。 3.研究成績および考察 各年齢における対象者数は,男女比が2.25で男性が多く,30−39歳の男性が最も多かった。60歳以上は4名 であり,各年齢群別の解析に用いなかったが,logistic 分析には加えて解析した。5年間に1歯以上の歯が喪 失した者の割合は20歳台で9.6(男性)および8.2%(女性),30歳台で10.8および10.2%,40歳台で7.2および 17.1%,50歳台は高く38.9および31.3%であった。5年間の一人平均の喪失歯数は20−49歳までは0.38−0.68 であり,50歳台では0.5であった。解析した要因のうち5年後の現在歯数に有意差が認められたのは,口腔状 態の自己評価で歯周疾患の症状,食品の噛みにくさ,喫煙および4mm 以上の歯周ポケットのある者であっ た。5年間に1歯以上の歯の喪失が起こることに関連する独立要因としては,年齢(オッズ比:1.05),歯科保 健用語の知識(2.12),硬い食品がかみにくい(2.77),喫煙(2.25),調査開始前の現在歯数が28未満(2.56)で あった。 4.結 論 この研究は,職域における成人の歯の喪失の予防には,現在歯を28歯に維持すること,禁煙,健康教育,良 氏 名(本 籍) こ やま やす のり
小
山
安
徳
(千葉県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1846 号(乙第730号) 学 位 授 与 の 日 付 平成21年7月15日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当学 位 論 文 題 目 Five-year longitudinal study on risk factors of tooth loss in Japanese office workers
論 文 審 査 委 員 (主査) 松久保 隆教授 (副査) 栁澤 孝彰教授 石井 拓男教授 山田 了教授 山根 源之教授 歯科学報 Vol.116,No.6(2016) 504 ― 56 ―
好な歯科治療が重要であり,成人期における歯の喪失リスクを下げる健康教育はこれらの項目に重点を置く必 要を示している。 論 文 審 査 の 要 旨 本審査委員会では,1)本研究対象の特性,2)歯の喪失の原因と補綴処置との関係,3)歯の喪失リス ク,4)各要因のコーディングの妥当性,5)主観的な評価の解釈,6)考察での表現の妥当性,など関連事 項について質疑が行われたが,概ね妥当な解答が得られた。 また,論文の解析および内容については,1)研究目的をさらに明確にすること,2)引用文献と本論文と の一致点と相違点を加えること,3)性差が見られなかったことの考察を加えること,4)χ2 検定,平均値の 差の検定の結果について考察を加えること,5)喫煙についてその要因としての考察を加えること,6)齲蝕 の要因を加えること,7)初年度と5年後の対象者の保健行動や自己評価の変化と喪失リスクの関連について 解析を加えること,などの指摘があり,解析を加えるとともにそれぞれについて加筆,削除,訂正を行った。 本研究で得られた結果は今後の歯科医学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと 判定された。 本審査委員会は主題ならびに関連問題について最終試験を行った結果,十分な学識を有することを認め,合 格と判定した。なお,英・独2カ国語につき試験を行った結果,合格と認定した。 歯科学報 Vol.116,No.6(2016) 505 ― 57 ―