Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№7:ラット三叉神経節細胞P2Y12受容体は細胞内
cAMP 産生を抑制することで細胞内Ca2+を動員する
Author(s)
川口, 綾; 征矢, 学; 黒田, 英孝; 佐藤, 正樹; 田﨑,
雅和; 一戸, 達也; 澁川, 義幸
Journal
歯科学報, 113(4): 426-426
URL
http://hdl.handle.net/10130/3153
Right
目的:P2Y12受容体は G 蛋白共役型受容体である P 2Y 受容体のサブタイプの一つであり,神経障害性 疼痛に関与するとされている。過去の研究で P2Y12 受 容 体 は Gi/oと 共 役 し,ア デ ニ ル 酸 シ ク ラ ー ゼ (AC)の活性を抑制することで,cAMP の産生を 減少させることが明らかとなっている。我々はこれ まで,ラット三叉神経節細胞における P2Y12受容 体が,A ニューロン,ペプチド性 C ニューロン, 非ペプチド性 C ニューロンの細胞体,軸索に局在 し,細胞内 Ca2+ストアからの Ca2+放出を活性化す ることを示した(第294回東京歯科大学学会)。しか し,この Ca2+ 放出を引き起こす細胞内カスケード は未だ明らかでない。本研究はラット三叉神経節細 胞における Ca2+ 放出様式を明らかにすることを目 的とした。 方法:新生仔 Wistar/ST ラット(7日齢)より急 性 単 離 し た 三 叉 神 経 節 を 初 代 培 養 し,Ca2+ 蛍 光 色素である fura-2を用いた細胞内遊離 Ca2+ 濃 度 ([Ca2+ ]i)を行った。 結 果 お よ び 考 察:P2Y1,12,13agonist で あ る2 -methylthio-ADP を投与すると[Ca2+ ]iは一過性に 増加し,この増加は細胞外 Ca2+ 非存在下において も確認された。しかし,この応答は sarcoplasmic reticulum Ca2+
-ATPase の inhibitor で あ る cyclopi-azonic acid により有意に抑制された。またこの応 答 は ryanodine 受 容 体 の inhibitor で あ る dantro-lene によっても有意に抑制された。細胞外 Ca2+ 存 在下に AC の inhibitor である SQ22536を投与する と[Ca2+ ]iは一過性に増加し,濃度依存性(EC50= 0.08μM)を 示 し た。ま た,PDE の inhibitor で あ る IBMX に よ り2-methylthio-ADP に よ る 一 過 性 の[Ca2+ ]i増加は有意に抑制された。これらの結果 よ り,細 胞 内 cAMP の 減 少 が Ca2+ ス ト ア か ら の Ca2+ 放出の trigger として働いている可能性が示唆 された。またこの Ca2+ 放出は ryanodine を介して 行われていることが明らかとなった。 今後は細胞内 cAMP と ryanodine 受容体の関連 性を明らかにし,Ca2+ 放出抑制のメカニズムを明ら かにする必要がある。 目的:セツキシマブ製剤は,免疫グロブリン G1サ ブクラスのヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗 体で,世界初のヒト上皮細胞増殖因子受容体(以 下:EGFR)を標的とする薬剤である。 本邦では2008年7月に EGFR 陽性の治癒切除不 能な進行・再発の結腸・直腸癌に対する治療薬とし て承認された。また,2012年12月には頭頚部癌に対 する治療薬として追加承認された。これに伴い口腔 外科領域でも使用例の報告が見られるようになって きた。腎毒性は低く,腎機能障害の為シスプラチン が使用できない場合でも適応できるというメリット がある。また,大量のハイドレーションの必要がな く,点滴による拘束時間の短縮や外来での使用も期 待される。 しかし,重度の infusion reaction として気管支痙 攣や意識消失などの報告も散見されることや,使用 例の多くは皮膚科領域の副作用の発現が認められる ため,十分に注意して使用することや,副作用に応 じて適切に皮膚科と併診することが望ましいようで ある。 今回,私たちは3例の口腔がん患者に対して,セ ツキシマブ製剤を使用した経験を報告する。 症例:3例の口腔がん患者,①上顎癌頚部リンパ節 転移症例,②口底癌手術拒否症例,③腎機能障害症 例,に対してセツキシマブ製剤を併用した化学放射 線療法を施行した。投与量は初回400mg/m2,2回 目 以 降 は200mg/m2と メ ー カ ー 推 奨 の 基 準 に 従 っ た。全例入院下での投与を行い,投与直後より持続 的にバイタルサインの測定が行える環境を整えた。 投与に先立ち,皮膚科外来の受診を行い保湿に努め るように十分に指導した。 結果:3例共にセツキシマブ製剤投与時にはステロ イドの併用を行い,初回は2時間,2回目以降は1 時間かけ,十分に観察するように対応し,重度の infusion reaction を発症することなく終了した。手 指,顔面を中心に保湿の指示を行っていたので,重 篤な皮膚症状は発症せず経過したが,軽度の爪周囲 炎,巻き爪,まつげのカール等の副作用所見が見ら れた。 各症例の経験よりセツキシマブ製剤投与時には, 事前に皮膚科との併診下で行う事が望ましいと思わ れた。また,投与時のバイタルサインの観察などに ついても基準を設けることで,安全な管理を行うこ とができた。 本製剤は重篤な副作用の報告も少なくないが,メ リットも多い。さらに経験を重ね,より安全に留意 した管理方法を検討してゆきたい。