中小企業技術者研修と地域産業社会
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(2) 102 (810). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). ��. ����. ��. ���� �� 出典:筆者作成. 図 1 職業能力開発政策における 4 つの主体. ために,職業能力開発政策に関する若干の概念. と,行政─個人間では,職業訓練サービスの提. 的な整理を試みたい.. 供や労働・就業相談の実施,行政─地域産業社. 職業能力開発における主体(アクター)とし. 会間では中小企業支援施策(金融支援や企業誘. て,個人,労働市場,地域産業社会,行政とい. 致,技術者研修等)の展開,個人─労働市場間. う 4 者を想定する.図 1 は,このような地域に. では雇用関係,また,個人及び地域産業社会か. おける職業能力開発政策に関する 4 つの主体の. ら行政へは納税(住民税,事業所税等)といっ. 関係を簡単に示している.余語トシヒロ (2005). た関係が成立している.. p. 168 を参考としたものである. ここでの地域産業社会とは,企業,地域企業. 1―2 職業能力開発政策の 3 つの社会的役割. 群などから構成されているものである.この地. 施策面 で 考 え る と,技術 や 技能 の 修得 は,. 域企業群には,商工会・商工会議所,経営者協. 個人 の 人的資本 の 蓄積 と な る も の で あ る が,. 会,経済同友会,中小企業団体中央会,工業会. 同時に企業における技術・技能の集積,ひい. など様々な組織・団体が含まれ,これらの組. て は 地域社会 の 安定,あ る 種 の 社会関係資本. 織・団体も地域産業社会の構成員であると捉え. (ソーシャル・キャピタル)の蓄積にも繋がる. る.. ものと考えられる.技術・技能の修得が十分. また,この中では個人は地域社会においては. に得られず,一旦失業することになれば,社. 住民・市民であるが, 企業においては従業者 (時. 会的な支援が求められることとなるほか,社. として失業者・求職者)であり,行政に対して. 会的排除の懸念さえ生ずることになる.ちな. は納税者である.企業もまた,産業活動の主体. み に,久米功一等(2010)で は,「社会的排除. であるとともに, 雇用主であり納税者でもある.. とは,社会生活を送る上で共通に必要となる. さらに,この 4 者間の関係性を若干説明する. 財 や 社会関係 を(他人 と 比較 し て)相対的 に.
(3) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (811) 103. 表 1 先端産業から地場産業に至るまでの技術・人材・資金の類型 産業 . 資源. 先端産業. 地域伝統文化産業, 自動車産業,家電産業,商業・流 地場産業,コミュニティ・ビジネ 通業など スなど. 技術. ハイテク技術(新素材・新エネル 金属加工技術,電子組立技術,機 伝統技能・技術 ギー産業)など 械技術,食料品製造業技術等 陶芸・木工等の技術. 人材. ベンチャー企業経営者 大学,国・県研究機関の研究者. 熟練技能者,技術者,中小企業者, 自治会・町内会,シルバー人材セ 商工会議所,工業会 ンター,地域作業所・授産所. 資金. 新興株式市場 ベンチャーファンド. 地銀,信用金庫・信用組合等. コミュニティ基金. 出典:筆者作成. 欠くことをいう.」としている.. に,「ど の よ う な 主体 に よって 中小企業研修,. そこで,職業能力開発政策の社会的役割をま. 人材育成は,担われてきたのか」ということ.. とめると,主に 3 つの役割に整理できると考え. そして第三には,「どのような研修内容,研修. られる. すなわち, ①教育・訓練, ②就業継続 (労. コースを行ってきたのか」ということであり,. 働市場 へ の 社会的統合) ,③技術力向上・技能. 第四には,それら研修の内容やコースが戦後の. 継承 の 支援 で あ る. (Grollmann and Rauner,. 地域の産業構造と対比して,どのような関係に. 2007). あるのかということである.. 本稿では,戦後の中小企業の人材育成につい て,技術者の研修事業をケーススタディとして. 2 中小企業の人材育成における課題. 取り上げることとする.これは③の「技術力向. 2―1 技術・人材・資金についての類型. 上・技能継承」の側面に関するものである.技. まず,中小企業の人材育成における課題を整. 術者研修事業は,中小企業の技術力向上のため. 理してみよう.表 1 は 先端産業から地場の伝. の事業 で あ る が,同時に企業就職後の社員の. 統文化産業に至るまでの技術・人材・資金につ. キャリアアップ事業,すなわち職務上の経歴を. いて,類型化したものである.. 積み,能力向上を図る事業でもある.. 表のように表現すると技術面では,ハイテク. では,具体的な検証に入る前に,中小企業技. 技術から,金属加工技術,機械技術,伝統技術. 術者研修について,どのようなことが課題であ. まで及んでおり,それぞれ別個の隔絶した技術. るのかを整理しておきたい.. のように見えるが,現実にはそうした技術の間. まず,第一の課題は,地域社会及び地元企業. には明確な境界は存在せず,相互に影響・融合. 群の要求に対応した教育・訓練内容が適切な訓. しているのが現実であろう.この技術に対応し. 練機関でなされているかということである.第. た人材・集団としては,先端技術の開発研究者. 二の課題は地域の産業構造の変化に対応した職. やベンチャー企業創業者から,地域における中. 業能力開発政策が展開出来ているか,というこ. 小企業団体,商工会議所,工業会など,さらに. とである.. 伝統的な木工産業,コミュニティ・ビジネスな. この 2 つの課題をさらにブレイクダウンする. どがある.資金についても,新興株式市場から,. と,次の 4 つの問題点が挙げられよう.第一に. 自治体のコミュニティ基金に至るまで,様々な. 挙げられるのは, 「誰を対象として研修,人材. 資金調達手段が用意されている.. 育成を行ってきたのか」という点である.第二. 地域社会における雇用を考える場合,これら.
(4) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 104 (812). 表 2 中小企業の経営上の課題<長期的課題> 1位. 2位. 3位. 4位. 5位. 製造業. 受注量確保 (72.2%). 人材の確保・育成 (38.8%). 低価格競争 (32.2%). 後継者不在 (30.4%). 資金調達・債務保証 (26.1%). 卸売業. 受注量確保 (47.8%). 人材の確保・育成 (45.2%). 低価格競争 (41.9%). 資金調達・債務保証 (32.9%). 後継者不在 (23.7%). 小売業. 低価格競争 (40.8%). 大型店との競合 (35.3%). 後継者不在 (33.7%). 人材の確保・育成 (25.2%). 資金調達・債務保証 (20.2%). 出典:経済産業省『商工業実態基本調査報告書』(1998 年 6 月調査). 先端産業から,地場産業に至る技術,人材,資. 業が個人商店を含む零細事業主が多くを占めて. 金の関係を全体的に視野に入れ,この枠組みの. いることによるものと考えられる.ものづくり. 中で,企業の技術力,地域の産業力を高め,雇. という観点から,製造業に注目すると,「人材. 用の増大に導いていく必要があると考える.. の確保・育成(38.8%)」と「後継者不在(30.4%)」 を合わせると,約 7 割と非常に高い値となる.. 2―2 中小企業の経営上の課題. 一般に経営上の課題ということでは,受注の問. では次に, 中小企業の経営上の課題において,. 題や資金調達面での課題が想定されるが,人材. これまで人材の問題がどのような位置を占めて. 面での課題のウェイトが大きいということが分. きたのかを確認してみたい.表 2 は,経済産業. かる.. 省 の『商工業実態基本調査報告書』 (1998 年 6 月調査)に お け る 中小企業 の 経営上 の 課題 の 「長期的課題」を示している.. 2―3 人材教育に関する課題 また,人材教育に関する課題を中小企業庁の. 製造業,卸売業とも第 1 位は, 「受注量確保」. 『人材活用実態調査』 (2004 年 12 月)でみると,. であるが,第 2 位はどちらも「人材の確保・育. 表 3 に示すとおり,製造業の現場では,「教育. 成」となっている.小売業が,第 1 位に低価格. のための時間的な余裕がない」が 48.8% と最も. 競争,第 2 位に大型店との競合を挙げているこ. 高く,実に,半数の企業が,時間的余裕がない. ととは対照的な結果である.一般的に課題と思. ことを挙げている.次に「指導する人材が足り. われている資金調達,債務保証という課題は,. ない」32.6% と製造業以外の 27.9% を大きく上. 製造業,小売業で第 5 位,卸売業で第 4 位と優. 回って お り,製造業 に お け る 人材教育 に お け. 先順位としては,相対的に低位のものとなって. る問題点の特徴と言える.製造業以外でも第 1. いる.. 位,第 2 位は同じ項目であるが,製造業と製造. ここで,注目すべきは,やはり製造業で「人. 業以外の対比では,製造業で「技術の継承がで. 材の確保・育成(38.8%) 」が第 2 位に挙げられ. きていない(18.3%)」「教育したい人材が少な. ていることではないだろうか.卸売業では,比. い(14.6%)」が高いのに対し,製造業以外では,. 率はより高く 45.2% であるが,小売業では,第. 「教育のための金銭的な余裕がない(18.4%)」 「教. 4 位で 25.2% と低くなっている.製造業で第 4. 育したくても人材が定着しない(14.1%)」が高. 位となっている「後継者不在」も人的要素であ. くなっている.. り,30.4% と高い値となっている.小売業では,. さらに,図 2 は,イノベーション人材育成の. 「人材の確保・育成」というよりも「後継者不. ための取組を示している.中小企業にとって,. 在」が高く 33.7% となっている.これは,小売. 単に,ものづくりだけではなく,イノベーショ.
(5) ����. ����. ����� ������� ����� �� �������. �������� ������ ��������. ������� ����� �������. ����� �������� ���� ����� ��������. ������� ����� ����� �������. ���������������������� ����� �������� 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). �. (813) 105. 表 3 人材教育に関する問題点. � �� ������������ 製造業 (%) � �� �� �� �� �� �� �� �� ��. ① 教育のための時間的な余裕がない. 製造業以外 (%). ������� 48.2 ����� 32.6 ����� 23.6 ����� 20.1 ����� 18.3 ����� 16.2 ����� 14.6 ����� 9.5 ���� 4.2 ����. ���������������� ② 指導する人材が足りない ������������ ③ 特に問題はない �������� ④ 従業員側の意欲が低い ����������� ⑤ 技術の継承ができていない ������������� ⑥ 教育のための金銭的な余裕がない ���������������� ⑦ 教育したい人材が少ない ������������ ⑧ 教育したくても人材が定着しない ���������������� ⑨ その他 ����. �������� 42.8 �����27.9 �����25.2 �����20.6 �����9.7 ����18.4 �����10.8 �����14.1 ����� 4.8 ����. 出展:中小企業白書 2006 年度版 原典は,中小企業庁『人材活用実態調査』(2004 年 12 月)を製造業の比率の高い順に筆者が. ��������� ���� ���������������������������� � �� ����� 並べた. �� �����. �. % 60 50. 上司あいるは先輩の 指導による技術・技能の 継承,56. 2 � セミナーや講演会等への 参加促進,37.3. 役職・責任あるポジション, 決定権限の付与,26.5. 40 30. 外部機関が行うプログラ ム等への参加促進,28.3. 技術革新の成果を 報酬に反映,25.9 社内ジョブローテーション による幅広地知識・技術 を習得させる,14. � 4. 20 10 0. 出典:中小企業白書 2006 年版.原典は,三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング㈱『技術・技能継承と技術革新を生み出す 人材に関するアンケート調査』 (2006 年 11 月) ��������������������. � � �. 図 2 イノベーション人材育成のための取組. ��������� 2006 ��� ������ UFJ ������������������� � � ��������������������������������� � �� ����. -2-. ンを図ることも重要な要素となっている.その. これらのことから,中小企業における人材育. イノベーション人材育成のための取組として. 成が,長期的な課題として製造業,卸売業で高. は,第 1 位が, 「上司あるいは先輩の指導によ. いウェイトを占めていること,その製造業の人. る技術・技能 の 継承」56.2%,第 2 位が「セミ. 材育成においては,教育する時間的な余裕がな. ナーや 講演会等 へ の 参加促進」37.3% で あ り,. い,指導する人材がない,従業員側の意欲が低. 「外部機関が行う研修プログラム等への参加促 進」は,28.3% と,第 3 番目の順位となっている.. い,技術の継承ができていないといった課題が あることが分かった.さらにイノベーションの.
(6) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 106 (814). ための人材育成を図る上では,上司あるいは先. を支援するねらいがあった.研修事業自体のね. 輩の指導,セミナーや講演会への参加,さらに. らいは,中小企業の技術力向上のための中小企. 外部機関が行う研修プログラムへの参加に取り. 業支援にあったが,同時に,現在では大変関心. 組んできたことが分かる.. が高まっているキャリアアップ事業,すなわち. 3 神奈川県における中小企業技術者研修. 職務経歴(キャリア)を積み,能力向上を図る 事業でもあったと言える.. 3―1 中小企業技術者研修事業とは 中小企業の技術に関する人材育成に関して. 3―2 神奈川県における中小企業技術者研修. は,中小企業,とりわけ「ものづくり」につい. この中小企業技術者研修事業については,神. て,これまで様々な主体,機関において実施さ. 奈川県における取組を取り上げる.社団法人神. れてきた.自社内でのオンザジョブトレーニン. 奈川県工業技術研修 セ ン ターが『42 年 の あ ゆ. グ(OJT)をはじめ,国や都道府県の中小企業. み 1966 年~ 2008 年』(全 31 頁)及び『42 年. 支援機関,職業訓練法人,協同組合・商工組合,. の あ ゆ み(資料編) 1966 年~ 2008 年』(全. 商工会議所・商工会地域による研修事業など,. 203 頁)(以下,『あゆみ』及び『あゆみ(資料. 多岐に亘っているのが実情である. ( (独)労働. 編)』と表記する)を 2008 年 3 月に発行してお. 政策研究・研修機構,2008). り,貴重な分析データとして活用が可能である. その中でも,本稿では,都道府県の工業試験. ためである.. 研究機関によって担われてきた「中小企業技術. 『あゆみ(資料編)』では,42 年間,約 4 万 6. 者研修事業」をケーススタディとして取り上げ. 千人に上る受講者・参加者のデータが整理され. ることとしたい.その理由は,この事業が,政. ている.この中小企業技術者研修事業は,全国. 府,自治体,地域の中小企業のそれぞれの関わ. の都道府県公設工業試験所で実施された事業で. りの中で進められてきたということ.また,高. あるが,42 年間に亘ってこれほど詳細に記録・. 度経済成長期の始まりといわれる 1963 年から,. 整理されたデータは,筆者の知る限り他に存在. 2011 年の今日に至るまで,内容の変遷を伴い. していない.この大変貴重なデータをもとに,. ながらも,実に 40 数年に亘り継続されてきた. 中小企業における技術者研修の状況を分析する. 中小企業支援施策であるということである.. こととしたいが,この 42 年間に及ぶデータに. こ の「中小企業技術者研修事業」は,1963. 基づいて,同事業を分析するのもまた初めての. 年 4 月に中小企業庁が中小企業振興策の一つと. ケースと思われる.. して,中小企業における技術者の質を高め,技. 神奈川県において,国の制度に則り,同事業. 術レベルの向上を狙い発足させたものであり,. が神奈川県工業試験所において開始されたのは. 国庫補助制度のもと各都道府県の工業試験所に. 1963 年度 で あ る.初年度 は,機械工学科,金. 4). おいて実施された .. 属材料科の 2 科でそれぞれ定員 40 名であった.. 当時の国政の状況を振り返ると,1963 年の. 研修事業が始まって間もなくの 1966 年 2 月. 7 月には,中小企業基本法が第 2 次池田内閣の. 24 日 に は,社団法人神奈川県工業技術研修 セ. もと,第 43 回通常国会で成立している.その. ンターが設立されている5).社団法人の設立趣. 前年の 1962 年には農業基本法が成立しており,. 意書には「本県では,特に工業技術の振興を図. のちに高度経済成長を遂げる基盤を築いた時期. るため,昭和 38 年から県下工業技術者の長期. といえる.当時の日本経済は繊維などの軽工業. 技術者研修事業を行ってきましたところ,各企. から,機械,金属,化学などの重化学工業化を. 業経営者においてもこれに積極的に協力し,目. 目指す時期であり,それらを支える中小企業群. 下盛況のうちに継続実施中であります.~(中.
(7) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (815) 107. 社 25 21 20. 18 14. 15. 13. 12. 10. 9. 8 5. 5. 上 50. 1人. 以. 0人 50 130. 20. 10. 1-. 30. 20 1-. -1 51. 0人. 0人. 人 00. 0人 -5 31. -3 11. 0-. 10. 人. 0人. 0. 出典: (社)神奈川県工業技術研修センター(2008b)より筆者作成). 図 3 従業員規模別会員企業数. 略)~この業界の意欲を反映し,更には民間企. なっている6).. 業と県行政との連携強化を図りながら本県工業. 図 3 は,2008 年度 の 会員企業 の 規模別割合. 界の進展に寄与するため,ここに新法人を設立. である.51~100 人,101~200 人規模の企業が. しようとするものであります. 」 とある. そして,. 比較的高い割合を示しているが,その前後の規. 1966 年 4 月 1 日からは,機械,金属,化学の 3. 模の企業も多く,零細から,中小中堅企業まで. 科を内容とする長期技術者研修,短期技術者研. 幅広い会員企業の社団となっていることが分か. 修,産地産業技術者研修が開始された.. る.. 社団法人の目的は, 「工業技術に対する各種. 次に,各種研修の内容をみてみよう.長期技. 研修事業及び工業技術の振興に関する調査,研. 術者研修は,講義・実習合わせて 310 時間,40. 究等の事業を総合的に行い,工業技術の改善,. 日間に及ぶ研修である.中期技術者研修として. 向上を図り,神奈川県内における工業の発展に. は講義・実習 60 時間に及ぶ研修が行われてき. 寄与する」というものである.その主な事業は,. た.そのほかに,短期技術者研修,産地産業研. 定款の第 4 条に規定されているが,⑴ 技術者. 修,高度技術者研修,新技術技術者研修,民間. の研修及び訓練 ⑵ 工業技術振興に関する調査. 企業技術者研修,新技術開発人材育成事業研修,. 及 び 研究(技術者研修 ニーズ 調査等)⑶ 工業. 大学公開技術研修という 7 種類の研修があり,. 技術に関する資料,文献及び図書の整備並びに. 表 4 にあるように,合計で 9 種類の研修が行わ. 公開(機関紙「研修だより」発行等)⑷ 工業. れてきた.(なお,短期研修は 2004 年度で終了,. 技術功労者の表彰又は推薦(文部科学大臣「職. 産地研修は 1990 年度で終了している.長期技. 域 に お け る 創意工夫功労者」表彰事業等)⑸. 術者研修は現在も継続実施されている.). その他の目的を達成するために必要な事業,と. こ の 9 つ の 研修事業 の 受講者 の 総合計 で.
(8) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 108 (816). 表 4 神奈川県工業技術研修事業の内容 研修の種類. 研修の目標. 研修時間数. 受講者数. ①長期技術者研修. 若手・中堅技術者を将来の指導的技術者に育成するため 講義約 230 時間, に,必要な幅広い技術の基礎と応用技術を習得させるこ 実習約 80 時間, と 合計 310 時間. 4,339 人. ②中期技術者研修. 最新の技術開発の成果を新製品の高付加価値化に活かす 講義 48 時間, こと(プラスチック成形加工,メカトロニクス,IC 応用 実習約 12 時間, 技術など) 合計 60 時間. 2,382 人. ③短期技術者研修. 企業の生産現場の仕事に関連した実践的な技術的内容を 講義および実習で約 36 時間 中心に,現場の改善に活かすこと(建築構造技術,プラ スチック成形加工,材料利用技術など). 4,133 人. ④産地産業研修. 地場産業における後継者育成等のために,専門技術の高 講義および実習で約 36 時間 度化を図ること. 1,702 人. ⑤高度技術者研修. より高度な専門技術や複合技術など,開発や改善に必要 講義 お よ び 実習 で 約 65 時間, なハイレベルの技術を付与すること ゼミナール・論文で約 15 時間. 1,162 人. ⑥新技術技術者研修. 先端技術の有する必要事項について,基礎的知識を付与 講義および実習で約 9 時間 すること. 2.932 人. ⑦民間企業技術者研修 民間企業の有する先進的な技術を活用し,応用開発に役 講義および実習で約 30 時間 立ててもらうこと. 250 人. ⑧新技術開発人材育成 各分野の最新の開発技術の動向をつかみ,製品開発に役 講義および実習で約 20 時間 事業研修 立ててもらうこと. 153 人. ⑨大学公開技術研修. 95 人. 大学における研究開発技術を活用し,応用開発に役立て 講義および実習で 24 時間 てもらうこと. 注:受講者数は,研修開始年度から 2007 年度までの延べ受講者数を示す. 出典: (社)神奈川県工業技術研修センター(2008b)より筆者作成. 17,148 人,この他に後に述べる市委託事業,講. 1973 年度 に は 工業化学科 を 定員 20 名 と し,. 演会,見学会等 の 参加者 が 2 万 3 千人余 り と. 公害化学科(定員 20 名)を 新設 し た.さ ら に. なっており,42 年間の事業参加者は総計で約 4. 1974 年度 に は 金属加工科 を 廃止 し 電子技術科. 万 6 千人に上っている.変化の激しい社会情勢. (定員 20 名)を 新設 し て い る.1974 年,75 年. の中で,現在に亘るまでの 40 数年という長期. は 機械基礎,機械加工,金属材料,工業化学,. 間,研修事業が継続し得たのか,驚嘆にも値す. 公 害 化 学,電 子 技 術,の 6 科,各 定 員 20 名,. る.その背景や内容をさらに具体的に検証して. 総定員 120 名 の 体制 と なった.1976 年 に は 機. いくこととしたい.. 械技術,工業化学(の ち に 材料化学),電子技. 表 5 は,長期技術者研修のコースの変遷を示. 術の 3 科となり,この 3 科の体制は,若干の定. している.先に述べたように,1963 年度に機. 員の減少は伴うものの,今日にまで続いている.. 械工学科 (定員 40 名) と金属材料科 (定員 40 名). これらの変遷は,研修ニーズに基づいたコース. で 始 ま り,1964 年度 に は,工業化学科(定員. 設定の結果といえよう.. 40 名)が加わり,1971 年度には機械工学科が,. 講師陣は,神奈川県内,首都圏の各大学の教. 機械基礎科(定員 20 名)と 機械加工科(定員. 授,助教授,企業研究所研究員・技術コンサル. 20 名)に,金属材料科は金属材料科(定員 20 名). タントが中心である7).前節では,企業経営上. と 金属加工科(定員 20 名)に 分 か れ,工業化. の課題として,中小企業の人材確保・育成が重. 学科(定員 40 名)と合わせて 5 科の体制となっ. 要な位置を占めており,製造業の現場では,「教. ている.. 育のための時間的な余裕がない(48.8%)」に次.
(9) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (817) 109. 表 5 長期技術者研修のコースの変遷 機械関連コース. 化学関連コース. 電子技術科. 金属関連コース. 公害化学科. 計. 1966(S41)年度. 西暦(和暦). 96 人. 31 人. 0. 96 人. -. 223 人. 1970(S45)年度. 88. 42. 0. 88. -. 218. 1975(S50)年度. 41. 20. 26. 22. 17. 126. 1980(S55)年度. 32. 22. 39. -. -. 93. 1985(S60)年度. 41. 36. 47. -. -. 124. 1990(H2)年度. 25. 15. 39. -. -. 79. 1995(H7)年度. 31. 18. 25. -. -. 74. 2000(H12)年度. 31. 22. 29. -. -. 82. 2005(H17)年度. 31. 16. 23. -. -. 70. 2007(H19)年度. 40. 16. 16. -. -. 72. 出典: (社)神奈川県工業技術研修センター(2008b)より筆者作成. いで, 「指導する人材が足りない(32.6%) 」と. この研修事業は 2002 年度まで継続した.横須. いう課題が高い比率で示されていたことを述べ. 賀市 に よ る 委託研修 は 1973 年 か ら 1993 年 ま. た.この研修事業はこうした課題・ニーズに対. で,相模原市 に よ る 委託研修 は 1983 年 か ら. 応すべく,地域の大学・大学院,研究者・コン. 1998 年まで,藤沢市による委託研修は 1994 年. サルタントによる研修,工業試験所による実習. 度から 1998 年度まで,大和市による委託研修. が行われていることが分かる.. は,1996 年度から 1999 年度まで実施された.. また, 『あゆみ』でも次のような記述がある.. これらの研修内容は,機械加工関連,マイコン. す な わ ち「 (長期技術者研修 は)昭和 38 年度,. 関連,パソコン関連,シーケンス制御,電気・. 機械工学科,金属材料科の 2 コースでスタート. 電子回路,プ ラ ス チック 加工,材料有効利用,. し,翌年新たに工業化学科を加えた.当初,い. 制御機器入門,セ ン サ 技術入門 の 各 コース で. わゆる「高度成長」経済下においては,企業の. あった.. 伸長には従業員の技術教育は不可欠という強い 参加意欲があり,例年定員を大幅に上回るほど. 3―3 1997 年という転換期. の参加があった.高校卒業後,実務経験 2 年程. 受講者の平均年齢はどのようになっている. 度の技術者に短大程度の技術知識を付与すると. だろうか.図 4 に示すように,1966 年の機械. いう研修の狙いもマッチした.一年間の長期に. 関連 コース の 平均年齢 は 24 歳,化学関連 コー. わたり,仕事をしながら(開設当時は夜間週 3. スは 23 歳となっている.受講者の平均年齢は,. 日実施) ,基礎的理論から応用知識まで,技術. 1966 年から 1994 年に至るまで,ほぼ 23 歳~. 者として必要な知識を幅広く体得できた.一. 25 歳で推移している.前節での『あゆみ』の. 流大学講師陣に加え,県工業試験所の機器類を. 引用には「高校卒業後,実務経験 2 年程度の技. 活用した実践的な実習も,この研修の魅力で. 術者に短大程度の技術知識を付与するという研. あった」 ( (社)神奈川県工業技術研修センター,. 修の狙いもマッチした.」とあるが,実際は,. 2008a p.8)とある.. 高卒後 5 年程度で受講した者が多いことが分か. この 42 年の間には,基礎自治体による研修. る.. 事業も設置された.1972 年 4 月には平塚市か. その後,1973 年から 1980 年頃にかけて,平. らの委託による短期技術者研修が開始された.. 均年齢が上昇している.1973 年には第一次石.
(10) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 110 (818). (単位:歳) 1966 年. 1973 年. 1980 年. 1987 年. 1994 年. 2001 年. 2007 年. 機械関連. 24. 23. 25. 25. 24. 28. 30. 化学関連. 23. 24. 29. 27. 23. 30. 31. 電子技術. -. -. 28. 26. 25. 30. 29. 歳 35 30. 機械関連. 25 化学関連. 20 15. 電子技術. 10 5 0 1966年. 1973年. 1980年. 1987年. 1994年. 2001年. 2007年. 出典: (社)神奈川県工業技術研修センター(2008b)より筆者作成. 図 4 長期技術者研修受講者の平均年齢の推移. 油 ショック,1977 年 に は 第 2 次石油 ショック. 図 5 は,長期技術者研修 の 学歴別受講者 に. が起きており,これらの経済危機との関係で,. ついて,1966 年から 2008 年までの推移を示し. 採用者数に影響があり,平均年齢が上がったも. たものである.1966 年の長期技術者研修生 127. のと推測される.. の内訳は,中卒者 2 名,高卒者 120 名,大卒者. そ し て,1998 年 を 過 ぎ る と,平均年齢 は,. 5 名であり,ほとんどが高卒者であった.. ほぼ 30 歳前後という状況に変化している.こ. 1966 年 の 研修生 の 平均年齢 は,図 4 に 示 す. れは,次に見る学歴別の研修生の状況と密接な. ように 23,24 歳であるから,先に述べたよう. 関係 が あ る.す な わ ち,中小企業 の 技術者 も. に,高校を卒業して,5~6 年後に研修を受け. 1996~98 年頃に,大卒者が上回るようになっ. ていることになる.ちなみに,この平均年齢か. て い る.1965 年頃 に 23 歳~25 歳 の 研修生 で. ら逆算すると,1966 年に研修を修了した,い. あったのは,高校卒業後 5 年~7 年後に研修を. わば 1 期生は 1943 年頃の生まれということに. 受けていること,1998 年以降では, 大学卒業後,. なる.. やはり 7 年~8 年後に研修を受ける,すなわち. 一般 に,「団塊 の 世代」と は,1947 年 か ら. 30 歳前後で研修を受けていることが分かるの. 1949 年までの 3 年間に亘る第一次ベビーブー. である.研修の効果,収益率と定年退職時期が. ムに出生した世代とされており,5 期生の頃は,. 同じと仮定すれば,このように研修年齢が上が. 1948 年頃の生まれである「団塊の世代」がこ. ることは,研修コストの回収期間が短くなる分. の研修を受講していることになる.. だけ,研修の費用対効果は悪化することを意味. 図 5 にあるように,高卒者の研修生の数は,. している.. その後,次第に減っていくが,平成の時代に入.
(11) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重) 1966 年. 1973 年. 1980 年. 1987 年. 1994 年. 2001 年. 2人. 6人. 2人. 2人. 0人. 3人. 中卒 高卒. 120. 99. 短大卒. 0. 1. 0. 6. 大卒. 5. 7. 21. 29. 28.2%. 31.6%. 30.3%. 26.6%. 27.8%. 127. 113. (大学進学率 ・男子)※ 合計. 140. (819) 111. 70. 93. 75. 120. 35. 2007 年 1人. 35. 22. 6. 6. 11. 17. 37. 38. 43.1%. 49.9%. 58. 58. 72. 人, % 中卒. 120 100. 高卒. 80 60. 短大卒. 40 20. 大卒. 0 1966年. 1973年. 1980年. 1987年. 1994年. 2001年. 2007年. (大学 進学率・ 男子%). 注:こ の進学率は, 「大学・短期大学への通信教育部への進学者を除く現役進学率」(出典:文部科学省,「学校基本調査」)で ある. 出典: (社)神奈川県工業技術研修センター(2008b)より筆者作成. 図 5 長期技術者研修受講者の学歴別推移. るまで,多数を占めてきたことが分かる.一方,. て低下しているものと考えられる.. 大卒者(図中 の 太線)は,昭和 40 年代 は 少数. 高卒と大卒が初めて入れ替わった年は,1997. であったが,昭和 50 年代に入ってから次第に. 年である.1996 年は高卒者が 37 名,大卒者が. 増えてきている.. 36 名であった.翌 1997 年は,高卒者が 31 名,. 図中には,男子の大学進学率(図中の破線). 大卒者が 36 名となり大卒者が上回った.大卒. も示してみた.昭和 40 年代は,大卒の研修生. 者が企業に入った後,5~6 年後にこの研修を. は少ないものの,昭和 60 年代以降は,男子の. 受けていることが多いと考えられることから,. 大学進学率と似たような推移となっている.な. この頃,長期研修を受けた大卒生は,1970 年. お,大学進学率は 1980 年から 90 年前後にかけ. 頃の生まれと推定される.「団塊の世代」ジュ. て,低下傾向にあるが,これは入学定員が横ば. ニアは 1970 年から 1974 年生まれのベビーブー. いで進学者数も横ばいであったのに対し,分母. ムの世代である.従って,「団塊の世代」ジュ. となる 18 歳人口が急増したために,比率とし. ニアが大学を卒業して研修を受ける頃に,高卒.
(12) 112 (820). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 者と大卒者の比率が入れ替わったことになる.. 2 点目は,この年がほぼ我が国の労働力人口. こ れ を コース 別 で み る と,機械関連 コース. のピークであったということである.ピークの. では,1998 年に大卒者が初めて上回り(高卒. 値は,1997 年 6 月の 6,811 万人(総務省:季節. 者 10 名,大卒者 14 名) ,化学関連 コース で は. 調整値)であった8).. 1996 年(高卒者 9 名,大卒者 12 名)に,電子. 3 点目は,我が国の名目 GDP のピークもこ. 技術科 で は,1997 年(高卒者 8 名,大卒者 13. の時期であったということ.名目 GDP は 1997. 名)に大卒者が初めて上回っている.このこと. 年 で 515 兆円(国民経済計算年報,2007 年 も. は,戦後から 90 年代後半という,かなり最近. ほぼ同数値)であった.この時期以降,日本経. に至るまで,中小企業の技術者として,高卒者. 済は,成熟期に移行したといわれる.(波頭亮. が主体となって担ってきたことが分かる貴重な. 2010,p. 28). データであるとともに,この時期がある種の転. このような極めてマクロ的な構造転換期に,. 換期に当たると考えられる.. このケーススタディにおいても,中小企業の長. この研修が始まったのが団塊の世代が就職し. 期研修受講者で大卒者が高卒者を上回り,受講. 始めた時期であるから,これまでの時代を団塊. 者全体の平均年齢も 25 歳前後から 30 歳前後へ. 世代の視点により区分すると,1960 年代は自ら. と上昇しており,学歴上,年齢階層上の変化が. が技術を学び蓄積した時期,70 年代,80 年代は. 起きているのである.社会経済構造上の変化が,. 働 き 盛 り の 高度成長期,1997~2007 年 は 50 歳. 地域における中小企業の技術者研修にまでも,. 台となり成熟期,そして自らの子どもたち,ジュ. 大きな影を落としているとみることができるの. ニアが社会人となった時期,2007 年以降は退職. ではないだろうか.. 期・第二の人生期ということになる. 先 に 述 べ た よ うに,この長期技術者研修に. 4 産業構造の変化と中小企業技術者研修. おいて高卒と大卒が初めて入れ替わった年は,. 4―1 神奈川県の産業構造の変化. 1997 年である.しかし, 「1997 年」という年は,. 前節では,中小企業技術者研修について,戦. 同時に我が国の労働・経済の転換期であったの. 後 40 数年の推移,変化についてみてきた.社. ではないかと考えられる.興味深いことに,他. 会経済構造上の変化が,研修受講者像にも少な. の経済統計を調べると,幾つかのデータからも. からず影響を与えているということも確認され. この転換期の状況は確認されるのである.. た.. 1 点目は,1997 年は夏にアジア通貨危機,そ. そこで,次にこの研修事業と戦後の産業構造. の後の大手金融機関の破綻などにより,大変厳. の変化とを対比してみたい.冒頭で設けた設問. しい不況の年であったということである.そし. に関連するが,産業構造の変化と対比すること. て,雇用情勢においても「就職氷河期」と言わ. で,研修のパフォーマンスを検証してみたいと. れる時期であった.ちなみに年齢階層別の完全. 思う.. 失業者数を見ると,1997~99 年では 25 歳~34. 表 6 は,神奈川県の産業別生産額の割合の変. 歳 が 最多 の 23 万人 で あ る.10 年後 の 2007 年. 化を示している.神奈川県の産業構造は,1960. ~ 09 年においても,最多の完全失業者数は 35. 年代,70 年代は輸送機械の比率が高く,80 年. 歳~ 44 歳 で 21 万人 と なって い る.同 じ 世代. 代以降は漸減している.鉄鋼業は 60 年代,70. の年齢層が 10 年経ってもなお厳しい雇用環境. 年代前半までは高い比率を保っていたが,70. 下に置かれていることが分かる. (厚生労働省. 年代後半以降は,5% 前後に止まっている.電. 2010, p. 15). 気機械(情報通信機械,電子部品・デ バ イ ス.
(13) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (821) 113. 表 6 神奈川県の産業別生産額の割合の変化 1966 年 S41 年. 1971 年 S46 年. 1976 年 S51 年. 1981 年 S56 年. 1986 年 S61 年. 1991 年 H3 年. 1996 年 H8 年. 2001 年 H13 年. 2006 年 H18 年. 20.9. 15.6. 4.2. 3.4. 5.1. 3.8. 3.2. 2.3. 2.3. 0. 2.2. 3.3. 8.2. 7.5. 6.5. 6.1. 7.3. 7.1. 10.3. 12.3. 12.9. 13.1. 11.3. 13.3. 12.7. 12.3. 14.5. 22.0. 22.7. 22.2. 21.5. 25.6. 29.5. 34.3. 29.8. 25.0 (注 1). 27.8. 23.7. 24.8. 19.1. 18.4. 16.5. 17.2. 15.6. 14.5. その他機械工業. 0. 12.2 (注 2). 1.3. 1.0. 1.4. 1.3. 1.1. 1.2. 1.3. 化学工業. 3.2. 3.3. 12.9. 13.7. 11.3. 12.9. 12.3. 14.3. 15.8. 繊維工業. 0.8. 1.1. 1.2. 1.2. 0.9. 0.6. 0.7. 0.5. 0.5. 食品工業. 6.3. 3.5. 7.3. 8.3. 7.3. 7.1. 4.3. 7.9. 9.5. その他. 8.7. 3.5. 9.9. 10.5. 11.2. 8.5. 8.1. 8.8. 9.5. 鉄鋼業 非鉄金属他 一般機械 電気機械 輸送機械. 出典: 「神奈川県工業生産指数年報」より筆者作成 注 1: 「電気機械工業」「情報通信機械工業」「電子部品・デバイス工業」を合算した. 注 2:1971 年の「その他機械工業」の内容は,船舶鉄道車両ほかである.. 工業 を 含 む)は 一貫 し て 2 割以上 を 保って い. している.研修事業の電子技術科が 80 年代に. る.一方,一般機械 は 10% 台 を 維持 し,近年. ピークであったのに対し,産業構造では電気機. は,若干その割合を高めている.化学工業は,. 械(電子部品等を含む)は 90 年代半ばにピー. 70 年代に 10% 台となり,その後,割合におけ. クを打っている.研修受講者数で機械関連と電. る増減はあるものの, 近年では増加傾向にある.. 子技術が拮抗しており,化学関連が若干それを. 神奈川県の産業構造の変化は,我が国全体の. 下回っているが,産業構造の割合でもほぼ同様. 産業構造の変化とは似て非なるものとなってい. のトレンドである.強いて言えば,研修事業の. る.主な製造業は,輸送機械,電気機械,一般. 方が,変化が先に表れていることであり,産業. 機械,化学であるという共通点はあるものの,. 動向に先んじているといえる.また,研修事業. その時代時代のリーディング産業では,神奈川. の数値は実人数であり,全体として,漸減傾向. 県では早期に高い比率となり,それが早期に転. にある.. 換してきたという経緯がある.特徴的なものは. こ の 中小企業技術者研修事業 が 40 数年間,. 鉄鋼業であるが,輸送機械なども神奈川では割. 今日に至るまで継続し得たのは,研修事業担当. 合が既に漸減しているのに比べ,全国での比率. 者,講師陣,受講者を派遣した中小企業の熱意,. は,依然逓増傾向にある. (厚生労働省 2010,p.. 努力はもとより,研修事業そのものが,産業構. 87). 造の変化に根差し,技術ニーズに即した,ある いは,時として先取りしたものであったという. 4―2 産業構造の変化と中小企業技術者研修. ことができよう.また,中小企業側の声によれ. こうした産業構造の変化に,中小企業技術者. ば,これらの研修事業によって中小企業の企業. 研修の長期技術者研修受講者の変化を重ねてみ. 力を高めてきたと考えられる9).. よう.図 6 及び図 7 を対比して分かるように, 1970 年代後半以降は,概ね同じような動きを.
(14) 114 (822). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 図 6 神奈川県の産業別生産額の割合の変化. 人 120 100 80 60 -7-. 40 20 0. 1966年 1971年 1976年 1981年 1986年 1991年 1996年 2001年 2006年. 出典:図 6,7 筆者作成. 図 7 長期技術者研修受講者のコース別推移. 5 職業能力開発政策の役割と社会単位. 業継続(労働市場 へ の 社会的統合),③技術力 向上・技能継承の支援である.. 5―1 職業能力開発政策の役割に関する三角形. そこで,この職業能力開発政策の役割に則し. 図 8 は,職業能力開発政策の役割と各主体の. て図 8 を解説したい.. 関係性を示した模式図である.本稿の冒頭で,. まず個人にとっては,教育訓練機関との関わ. 職業能力開発政策の社会的役割を主に 3 つの役. りの中で「教育・訓練」を享受し,同時に,職. 割に整理した.すなわち,①教育・訓練,②就. 業紹介・社会サービス機関との関わりの中で.
(15) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (823) 115. 就業継続(労働市場への社会的統合). 出典:筆者作成. 図 8 職業能力開発政策の役割に関する三角形. 「就業継続(労働市場への社会的統合) 」が果た. 地域産業社会の三角形から成り立ち,「就業継. されている.これが一旦,離職・失業となると. 続(労働市場への社会的統合)」の側面は,個人,. 社会的には不安定な形になりかねない.労働力. 職業紹介・社会サービス機関,労働市場の三角. を求めている労働市場と職業安定所や公営住宅. 形から成り立つ.さらに,「技術力向上・技能. をはじめとする職業紹介・社会サービス機関と. 継承」の側面は,試験研究機関・近隣大学,地. の関わりの中で,再就職を目指し就業を継続す. 域産業社会,労働市場の三角形から成り立って. るということになる.個人にとって,企業はあ. いると考えられるのである.このような図中の. る時には社宅・社員寮の提供者であり,また,. 小さな 4 つの三角形は,全体として大きな三角. 行政は公営住宅の提供者である.例えば,企業. 形を形成しており,その頂点は,教育訓練機関,. が労働者を大量に解雇すれば,社員寮や社宅を. 職業紹介・社会サービス機関,試験研究機関・. 追い出された労働者のために,緊急に行政が県. 近隣大学となっており,いずれも公的なサービ. 営住宅,市営住宅を提供しなければならないと. スを担うセクターとなっている10).すなわち,. いう関係にある.. 図 8 は,図 1 の三角錐を展開して出来る平面図. 一方,職業能力開発政策 は, 「技術力向上 や. となっているのである.. 技能継承」の役割も果たしており,試験研究機 関や近隣大学,地域産業社会(地域企業群)や. 5―2 職業能力開発政策に関する社会単位. 労働市場との関わりの中で,進められているの. こ の よ う な 4 つ の 主体 の 関係性 の 構築,. である.. 社 会 資 本 の 蓄 積 は, 地 域 社 会 に 根 ざ し た. 整理 す る と,職業能力開発政策 の 役割 の 中. (community-based)も の で あ る べ き で あ る.. で, 「教育訓練」の側面は,個人,教育訓練機関,. では,そのような地域社会とは,どのようなも.
(16) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). 116 (824). 社 300 252 250. ������ ������. 200 150. 130 98. 100. 44. 50 0. ���. ���. 38 27. 12. ����. 33. ���. 37. 25. ���. 32. 40. ����. 25 29. ������ ������. ���. 出典:筆者作成. 図 9 地域別会員数の変化. のなのか.職業能力開発政策は具体的にどのよ. の反映でもあるということができよう.こうし. うな社会的レベル,社会単位で取り組めばよい. た会員数の状況の変化を踏まえると,中小企業. のだろうか.. 研修に関しては,市町村単位で捉えた場合,産. そこで再び中小企業技術者研修事業のデータ. 業拠点の変動が大きく影響してしまうという. を 引用 し よ う.同事業 は,1966 年度 の 社団設. 課題がある.また,研修実施に適した,ある程. 立当初は 215 会員でスタートし,その後次第に. 度まとまった企業数を確保するためにも,市町. 会員数 は 増 え,1992 年度 に は ピーク の 740 会. 村単位より広域のレベルで実施されることが望. 員となった.ピークを越してからは,漸減し,. ましいと考えられる11).一般的には都道府県単. 2007 年度 は 461 会員 と なった.会員数 に 関 す. 位,広域自治体による実施が望ましいと考えら. る地域別のデータは,2007 年度と 1988 年度の. れる.現実的にも,そうした形での研修が長年. 2 時点が残されているため,これを対比してみ. に亘り実施されてきた訳である.. た い.こ の 約 20 年間 で,横浜市,川崎市,横. また,このような中小企業技術者研修に限ら. 須賀市が大幅に減少,ほぼ半減しているのに対. ず,職業能力開発政策がどのような社会単位を. し,藤沢市,平塚市では微減,相模原市,大和. 対象にして取り組むべきかは,常に重要な視点. 市では会員数が伸びていることが分かる.. であろう.. この変化には,2005 年に県工業試験所が県. また,このような広域自治体レベルに期待さ. 産業技術センターへと名称変更し,横浜市金沢. れる政策は,どのようなものであろうか.図 1. 区から県央の海老名市へと移転したことも要因. の三角錐の底面は,図 8 で説明したように職業. の一つとなっていると思われる.しかし,全体. 能力開発政策の役割を示しているが,三角錐の. 的には会員数が 657 社から 461 社へと減少して. 側面はそれぞれ,地域産業政策,地域雇用政策,. きた傾向の中で,相模原市,大和市で会員数が. 地域社会福祉政策に繋がるものとなっている.. 増加しているという事実は,京浜,横須賀地域. 失業から就業へ,就業継続,さらに技術・技能. から県央部への産業地域がシフトしていること. の向上という課題を果たすためには,これらの.
(17) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). (825) 117. 政策が連携,連動して進められることが求めら. おいては,戦後のかなりの期間にわたって,高. れている.政策面においても,4 つの主体から. 校卒業者の技術者を中心に研修が実施されてき. なる三角錐の関係性の成立が,広域自治体レベ. た.大学卒の技術者の割合が高卒者を上回った. ルで求められている.. のは,1997 年前後,この十数年前であった.. さ ら に,一般 に 先端産業 は 産業全般 を 引っ. 第二 に,「中小企業研修,人材育成 は,ど の. 張っていく存在ではあるが,雇用吸収力という. ような主体によって担われてきたのか」という. 面においては,それほど大きなものにはなり得. ことである.これは様々な研修主体が想定され. ないと指摘される.そこで検討されなければな. る が,地域 の 試験研究機関 や 近隣大学 の 研究. らないことは, 如何にリーディング産業を育て,. 員・研究者を中心に,商工会議所,工業会など. 地域の産業力,企業力を高め,雇用創出効果を. の企業集団,地元企業との連携,地域における. 高めていくかということが重要となろう12).. 研究者・技術者のネットワークにより担われて. 6 おわりに. きたといえる. 第三に,「どのような研修内容,研修コース. 中小企業技術者の人材育成について,職業能. を行ってきたのか」という課題である.既に述. 力開発政策の観点から企業や地域社会との関わ. べたように,戦後の日本経済における産業の発. りの中で,検討してきた.ここで冒頭に掲げた. 展に合わせた研修が行われてきた.ケーススタ. 問題点について整理したい.. ディの長期研修では機械技術,電子技術,化学. まず,地域社会及び地元企業群の要求に対応. 技術という主力産業に則した研修を堅実に実施. した教育・訓練内容が適切な訓練機関でなされ. してきていること,また,金属材料科,公害化. ているかという課題についてである.ケースス. 学科,プラスチック成形加工科など,その時代. タディで取り上げた中小企業技術者研修では,. の必要性に基づくテーマによる研修も同時に実. 地域の公設試験研究機関や近隣大学の研究員・. 施されてきていることなどが確かめられた.研. 研究者との連携の中で成り立っていたことが分. 修事業は,このような地域的な産業動向の変化. かった.これらの研修を通じて,基礎的理論か. を反映し,ある部分では産業構造変化の先を見. ら応用知識まで技術者として必要な知識を幅広. 越して進められてきたともいうことができる.. く体得できたと考えられる.. さらに,本稿の中で明らかになった中小企業. また,地域の産業構造の変化に対応した職業. 技術者研修と地域産業社会における課題を挙げ. 能力開発政策が展開されているか,という課題. ると次のとおりとなる.. については,第 4 節でみてきたように,中小企. まず,第一に挙げられるのが,中小企業の人. 業技術者研修の内容について,40 数年に亘り,. 材育成におけるネットワーク構築の必要性であ. 大分類の産業構造の変化と対比を試みた.極め. る.今回のケーススタディによる検証によれば,. て貴重な長期間のデータの比較であるが,結果. 産業構造の変化に対して,地域における職業能. は,両者の間にはそれほどの乖離は見られず,. 力開発政策は,ある程度適応し,有効に働いて. ほぼ同様の動向となっていることが分かった.. きたと考えられる.その適応について,大きな. 次に,中小企業技術者研修と地域産業社会と. 働きをしてきたのが,地元の中小企業群であり,. の関係を検討するにあたり,本稿の冒頭に設定. また地域の試験研究機関や近隣大学の研究員・. した 4 つの問題点について,整理しよう.. 研究者である.さらに,長期間に亘って研修事. 第一に, 「誰を対象として研修,人材育成を. 業を受講した研修生同士の人的ネットワークも. 行ってきたのか」 ,という点である.本稿で取. 重要である.政策的には,このネットワークを. り上げた研修事業に基づくならば,中小企業に. どのようなレベルで構築するかが重要となって.
(18) 118 (826). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 6 号(2011 年 2 月). いる.ケーススタディを参考にすると,ある程. 地域格差・所得格差の是正,地域の自律的発. 度広域的なレベルで構築することが望ましいと. 展に向け,今後の産業構造の展開の行方を見据. 考えられる.中小企業のニーズをしっかりと捉. えつつ,地域住民の職業能力開発,雇用の促進,. え,的確な地域社会単位に人的,物的な資源を. 技術・技能の習得支援に取り組んでいくことが. 13). 投入することが求められると考える. .. 望まれている.. 第二は,中小企業技術者の人材育成における 長期低落傾向への対応である.その要因には, いくつかの事象が背後にある.一つは,技術者. 付 記. の高学歴化,高年齢化である.我が国の所得水. 本稿 は,第 24 回横浜国立大学 ガ バ ナ ン ス/国際 開発研究会(2010 年 9 月 18 日開催)に お け る 報 告を踏まえているものである.当日は小池治教授, 池田龍彦教授はじめ,研究会参加者から貴重なご 指導・ご教示をいただいた.ここに記して御礼を 申し上げたい.. 準の向上,少子化が,大学への全入時代を迎え つつあるが,多くの若者が大学を修了して社会 に入り,企業のなかで経験を積み,数年して外 部の研修を受けるようになるため,本稿のケー ス ス タ ディで も,研修受講者 の 平均年齢 が 30 歳前後になっている.もう一つは,その中小企 業技術者研修事業の受講者数そのものが,近年 になって,極端に減少してしまっている.産業 の基盤となる技術力の空洞化が大変懸念される ところであり,人材育成は急務となっている. 第三は,2 つの大きな雇用上の転換期につい ての対応である.2 つの大きな就職氷河期,す なわち 1997 年前後と 2008 年前後に生じた若年 者の就職難である.とりわけ団塊ジュニアの若 者にとって,新卒時に第一の就職氷河期に直面 し,フリーターや派遣労働者として働いてきた 過程の中で,第二の就職氷河期に直面する状況 となっている.年齢階層別でもこの世代が最多 の完全失業者を生んでおり,大変厳しい状況と なっている.地域社会にとってもこの課題は大 変重い課題であり,地域雇用政策,地域産業政 策,地域社会福祉政策による対応が求められて いると考えられる. 本稿では,職業能力開発政策には 3 つの社会 的役割,①教育・学習,③就業継続(労働市場 へ の 社会的統合) ,③技術力向上・技能継承 の 支援があると整理してきた.これらの諸課題に ついても,職業能力開発政策を単に教育訓練政 策としてのみではなく,地域産業政策の一環と して,さらに地域社会開発の一環として,位置 付けることが重要と考える14) .. 注 1)技術・技能 の 継承問題 に 関 し て,久保田章市 は,最も対応を迫られているのは製造業である と指摘している. (久保田,2006,p. 31) 2)近年は「教育訓練の主役を担ってきた企業の 役割が縮小しつつある」ことから, 「 (教育訓練 サービス市場を整備する)にあたって,これま で注目されてこなかった公益団体や経営者団体 といった公的組織の役割に注目する必要があ る」という指摘がある. ( (独)労働政策研究・ 研修機構,2007,pp. 262─268) 3)文部科学省では,2007 年度より「地域産業の 担 い 手育成 プ ロ ジェク ト」を 開始 し た.同事 業 の 中 で,2007 年度 か ら 経済産業省中小企業 庁 と 共同 で,専門高校 と 地域産業界 が 連携 し て, 若手ものづくり人材を育成するための取組, 「工業高校等実践教育導入事業」を開始した. この事業の事業概要は「地域の産業界と専門 高校,行政等が連携して,生徒の企業実習,学 校への企業技術者の講師派遣,教員の企業研修 等を行うことにより,若手ものづくり人材を育 成するための専門高校の実践的な人材育成プロ グラムを開発・実証し,それらを全国へ波及す る事業について,経済団体等(以下「事業実施 機関」という. )に対し委託することにより実 施する. 」 (中小企業庁,2008)というものであ る. また,この事業に応募することができる応募 資格として,①公益法人(財団法人,社団法人) , ②認可法人(商工会,商工会議所,中小企業団 体中央会等) ,③特定非営利活動法人,④株式 会社,特例有限会社,合資会社,合名会社,合 同会社,⑤中小企業組合,⑥有限責任事業組合,.
(19) 中小企業技術者研修と地域産業社会(國重). ⑦任意団体となっている. 委託事業の内容としては,「地域ごとに,専 門高校と地域産業界がコンソーシアムを形成す る.具体的には都道府県教育委員会がものづく りに係る専門高校を,事業実施機関が主として 中小企業と連携して,組織体を形成する.」(中 小企業庁,2008)とある. さらに,地域雇用推進事業も取り組まれてい る.2005 年度に制定された地域再生法に基づ く事業で,地方公共団体が組織した「地域再生 協議会」に民間事業者等が参画し,地域再生計 画を作成,これを国が認定する,というスキー ムとなっている. 4)この中小企業技術者研修事業の事業費負担は, 国,都道府県,受講者 の 3 者 に よ る 負担 で 進 められてきたが,2005 年度には,三位一体改 革の流れの中で国庫補助制度が廃止となった. 2005 年度以降,神奈川県 で は 県単独事業(受 講者と県の負担)により,この事業が「技術力 強化支援事業」と い う 事業名称 で 継続実施 さ れている.2010 年度の「技術力強化支援事業」 の 予算 は,11,612 千円(う ち 受講料収入 9,350 千円).長期研修 3 コース の 受講料 は 各 13 万 円(約 40 日,テ キ ス ト 代,実習費含 む).な お,同事業 は,(独)雇用・能力開発支援機構 の「キャリア形成促進助成金」の対象であるほ か,横浜市,鎌倉市,秦野市,海老名市,綾瀬 市 で の 中小企業 へ の 受講料補助事業 の 対象 と なっている. 5)初代理事長 に は 山岡佑章・池内精工㈱代表取 締役が就任するなど,代々の理事長は,県内企 業の代表者で受け継がれてきた.初代のあとは, 高見澤一男・高見沢工機械㈱代表取締役,3 代 目 は,荒巻芳太郎・山王鍍金㈱代表取締役,4 代目 は 高井完勝・㈱高井精器取締役社長,5 代 目 は,木田正成・昭和精工㈱代表取締役,6 代 目 は,前角典男・コ ぺ ル 電子㈱取締役社長 で あ る.((社)神奈川県工業技術研修 セ ン ター, 2008b,p. 183) 同社団を 42 年間に亘り支えられた関係者各 位,また,『あゆみ』について膨大なるデータ をまとめられた同センター事務局(当時)の矢 口宏一,愛賢司,森川芳州,川副禮子各氏のご 尽力,ご努力に心より敬意を表したい. 6)中小企業技術者研修事業 は,同社団法人 が 2008 年度末で解散となるまで,県から同社団 法人への委託事業として実施されてきた.2009 年度以降は,県の直接事業として継続実施して いるものである.また,同社団の解散後,同社 団の会員ネットワークは,県産業技術センター 内の神奈川県産業技術交流協会へと引き継がれ ている. 7)直近 10 年間の講師は,各技術科で次のとおり.. (827) 119. 機械技術科 で 38 名.そ の 内訳 は 横浜国立大学 大学院 10 人,関東学院大学 3 名,神奈川工科 大学 2 名,防衛大学 2 名,その他大学 8 名,そ の他研究所・技術コンサルタント等 13 名の教 授・助教授・研究官等となっている.化学技術 科で 54 名.その内訳は,同様に横浜国立大学 大学院 21 名,関東学院大学 2 名,そ の 他大学 8 名,その他研究所・技術コンサルタント等 23 名.電子技術科 で 30 名.そ の 内訳 は,同様 に 首都大学東京 10 名,横浜国立大学大学院 6 名, 神奈川大学 5 名,その他大学 5 名,その他研究 所・技術コンサルタント等 4 名. ( (社)神奈川 県工業技術研修センター 2008b,pp. 197─199) 8)照山博司と玄田有史は,産業別にみた労働流 入出を分析している.その分析の中で, 「 1997 年以降,卸売・小売業からはネットで労働者の 流出(離職)が続いている.逆に,サービス業 では,ほとんどの年でネットでの労働流入(採 用)がみられる.製造業では,卸売・小売業と 同様にネットでの労働流出(離職)が続くが, 流出と流入(離職と採用)の乖離が卸売・小売 業やサービス業よりも大きく,他産業への労働 移動が進行していることを示す」 (照山・玄田, 2009 p. 7)としている. 9) 『あゆみ』の中の「 「42 年間のあゆみ」の発刊 に寄せて」として,第 5 代理事長の木田昭和精 工相談役の次のような言葉がある. 「会社の仕 事に深く関わっていた金属材料の分野では,望 月照一先生から粉末冶金の製法から組織, 特性, 特に私どもの会社で扱っていた超硬合金──炭 化タングステンとコバルトの合金で耐摩耗性に 優れ,金型材として活用される──について詳 しく指導して頂きました.私どもの会社は,塑 性加工に必要なツールを製造している会社です ので,工場には切削,研削,放電などの加工機 と計測機器が多く設置されています.治具ボー ラーの切削加工に関することでは,据付基礎か ら環境管理,特に機械の操作について篠崎義衛 先生にご指導を受けましたが,当社社員も何日 間か工業試験所で直接ご指導を受けたことが私 どもの会社の現在の精密切削加工の基盤を作り 上げたと認識しています. 」 10)雇用に関するトライアングルとしては,デン マークの労働市場におけるゴールデン・トライ アングルが有名である.その 3 つの要素は①フ レキシブルな労働市場,②手厚い失業保険と社 会保障, ③積極的労働市場政策である. このゴー ルデン・トライアングルは「フレキシキュリ ティー(Flexicurity) 」とも名付けられている. (樋口等,2005 p. 239) 11) かなり限定された特殊な研修ということでは, 全国を単位とする事業の実施もあり得るであろ う.これまで中小企業事業団による技術研修も.
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