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肺癌に対する両側一期的手術症例の検討 利用統計を見る

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平成14年4月1日

肺癌に対する両側一期的手術症例の検討

山梨県立中央病院 外科1内科2病理3

神谷健太郎 千葉成宏 羽田真朗 飯塚崇 石井健一

牧真彦 宮坂芳明 武川悟 中込博

三井照夫 芦澤一喜 宮下義啓 小山敏雄

要 旨

 当院において、原発性肺癌症例のうち両側同時性肺癌に対して一期的手術をした3例(0.5%)について検 討した。平均年齢は70.6歳、発見動機は、2例で咳、1例で肺炎と何らかの呼吸器症状を認め、平均腫瘍 径は第1癌で65mm、第2癌で25.3mmであった。呼吸機能は2例で閉塞性呼吸障害を有していた。手術 は第1癌に対しては葉切除と縦隔リンパ節郭清を施行、第2癌に対しては1例で腋窩開胸、2例でVATS による部分切除を施行した。3例とも術後経過は順調で、平均18日で退院した。病理学的検索で、2例は 腺癌一腺癌で分化度が異なり同時性肺癌であったが、1例は扁平上皮癌・扁平上皮癌で共に中分化の一側性肺 癌の他側への転移性肺癌だった。2例はその後再発することなく経過しているが、転移の1例は頸部リンパ 節転移などで2年後に死亡した。  当院では両側同時性肺癌に対して一期的手術を施行し、比較的良好な結果を得た。一回の手術で肺癌を 治療することが可能ではあるが、その適応に術前、術式、術後と様々な検討の余地があり、今後医療技術 の進歩により増加することが考えられる両側同時性肺癌に対しての1つの選択と考えられる。 key word8 両側同時性肺癌、多発肺癌、両側一期的手術 はじめに  近年、肺癌症例の増加、CTなどの画像技術向上 による診断能力の向上により、同時性あるいは異時 性両側肺癌症例が増加している1)。今回われわれは 当院で経験した肺癌のうち、同時性に認めた両側肺 癌症例のうち、両側一期的に手術をした症例に対し て臨床病理学的に検討した。

対象と方法

 対象は1986年∼2001年までの15年間に当院で 手術した肺癌症例のうち、同時性で両側一一一pm的に切 除した3症例(0.5%)に対して、臨床的背景、外科的 治療、予後などについて検討した。  男女比は2:1、年齢は63∼78歳、平均は70.6歳。  なお多発癌の定義は、Martiniら2)の基準と東北 大学加齢研外科を参考にして、他臓器からの転移 を否定でき各々が孤立した病巣である症例で、最 大径が大きいものを第1癌として、小さいものを 第2癌とした。

結 果

 Table 1に年齢・性・発見動機・部位・腫瘍径に ついて示した。3例とも何らかの症状を有しており、 その精査の中で同時性両側性肺癌が発見されてい る。第1癌、第2癌ともに、占拠部位に明らかな傾

向はない。腫瘍径は第1癌で平均65mm、第2癌

で平均25.3mmであった。  Table 2に術前の呼吸機能について示した。 VC は2,16∼4.07(D、平均は3,16(D、FEVI.0は1,63 ∼2.39(L)、平均は2.05(D。症例1、2で閉塞性呼 吸障害を有し、3例全例に縮小手術を施行した。 一31一

(2)

山梨肺癌研究会会誌 15巻1号 2002 Table 1 年齢・性 発見動機 (第1癌)  (第1癌)  (第2癌)  (第2癌)部位   腫瘍径(mm)  部位   腫瘍径(mm) 1 78、男 咳、発熱 左・上葉

65

右・下葉 21 2 71、男 肺炎、 精査中 右・下葉

60

左・下葉 35 3 63、女 咳、発熱 左・上葉 70 右・上葉 20 Table 2 呼吸障害 VC(L) %VC FEV1,0(L) FEV1.0% 縮小手術 1 閉塞性 3.27 106.2 2.15 65.6 ○ 2 閉塞性 4.07 128,6

239

62,2, ○ 3 正常 2,16 88.8 1,63 76.9 ○ Table 3 手術術式 (第i癌) 手術術式 (第2癌) 縦隔郭清 (第1癌) 縦隔郭清 (第2癌) 組織型 (第1癌) 組織型 (第2癌) 1 2 3 葉切 葉切 葉切 腋窩開胸  部切

VATS

部切

VATS

部切 あり あり あり なし なし なし Ad, 低分化 Sq. 中分化 A(1. 中分化 Ad, 高分化 S(1. 中分化 Ad. 高分化  Table 3に手術・郭清度・組織型について示した。 3症例とも第1癌に対しては葉切と縦隔郭清を施行 し、第2癌に対しては、縮小手術を施行。症例1で は腋窩開胸による部分切除、症例2、3ではVATS による部分切除を施行し、縦隔郭清は行わなかった。 組織型では、症例1、3では、Ad・Adで分化度が異 なり、症例2では、Sq−Sqで共に中分化で一側から 他側への転移性肺癌であった。  Table 4に術中の出血量、手術時間、術後入院期 間を示した。術前状態、手術手技に多少の差はある が、出血量は148∼429ml、平均317m1、手術時間 は245∼260分、平均253分、術後入院期間は16 ∼21日、平均18日であった。  Table 5にTNM分類・病期・予後について示し た。症例1、3では第1癌はstage I B∼fi B、第2 癌はT1で、組織学的に多発癌の確定診断を得た。 一32一

(3)

平成14年4月1日 Table 4 呼吸障害 手術術式 出血量(mD 手術時間(分) 術後入院期間   (日) 1 2 3 閉塞性 閉塞性 正常 葉切+部切 (腋窩開胸) 葉切+部切  (VATS) 葉切+部切 (VATS) 375 429 148 260 255 245 17 21 16 Table 5

pTNM

(第1癌) pStage (第1癌)

pTNM

(第2癌) 多発・転移 予後(月) 1 2 3

T2NOMO

T2N2M1

T2NIMO

IB

IV

nB

TINXMO

T2NXMO

TINXMO

多発 転移 多発  58 生存  24 原病死  7 生存 Fig,1 現在まで再発なく生存中である。症例2では、結果 的に一側肺癌の他側への転移性肺癌であり、術後外 来にて経過観察中に、頸部リンパ節へ再発し放射線 治療等追加するも2年(24ヶ月)後死亡した。  次に代表的な症例を提示する。  症例1 78歳 男性 1996年5月、発熱、咳があり、近医受診した。胸 部レントゲン上、左肺尖部に異常陰影を指摘され、 当院内科受診した。精査の結果、1t Bl+2よりclass

V、CT上rt S8に異常陰影を認め、 TBLBで

aden㏄arcinomaの診断で、手術目的に当科転科し

た。第1癌は左上葉に62㎜畷離影を認め、

T2NOMO stage 1 B。第2癌はlt S8に21mmの異 常陰影を指摘され、TINOMO stage 1 Aと診断した。 (Fig.1)1996年8月19日、右腋窩開胸により部分 切除術を施行し、次に左後側方切開により左上葉切 除+縦隔郭清術を施行した。術後経過は良好で第 17病日に退院した。術後5年、再発なく現在外来 にて経過観察中。 考 察  CTなどの医療技術の進歩により、今までは発見 できなかった小さな病変も含め、同時性に両側性の 肺癌が発見される機会が今後増加することが予想 一33一

(4)

できる。また、多発肺癌の絶対数も森田らの剖検よ り男女とも増加傾向を示している。ただ、これらに 対する治療の標準的な方法は明確になっていない。 特に同時性両側肺癌の手術の場合は、術前、術式、 術後と様々な問題が存在する3)。  術前の検討として、多発肺癌症例が真の意味での 多発肺癌なのか、それとも他方への肺転移なのか、 判断に苦慮する。当院では、多発肺癌の定義は Martiniらの定SC 2>などを参考としている。  また、多発肺癌の症例は比較的年齢が高齢である。 そのため、術前の心肺機能により制限を受けること が多く、今回の症例でも2例で閉塞性呼吸障害を有 しており、残存肺機能の予測と肺癌の根治性を考え て慎重にその適応を検討する必要があった。  手術法の選択としては、左右を別々に行う二期的 手術と同時に行う一期的手術があるが、それぞれ利 点、欠点を有している。  今回は同時性両側手術について検討を加える。到 達方法としては、当院で行った一側を側開胸にし、 他側を腋窩切開もしくはVATSを加えた手術と、胸 骨正中切開による手術がある。  当院で行った手術法は前者で、通常の葉切除の術 式に他側の手術を加えた形になっている。この方法 では、手術手技としては通常の手術を同時にするの で手技的には問題なく行える。また視野も十分に確 保でき、病変部がどの場所にあってもほぼ切除可能 であり、リンパ節郭清等も十分に行える。胸骨正中 切開の場合では、腫瘍が背側や一葉を占めるような 大きな場合や後縦隔への浸潤がある場合では限界 が生じ、また手術操作中、肺や血管、リンパ節郭清 中に心臓の圧排による低血圧や不整脈を生じ、時に 致命的になる場合が考えられる4・5)。  我々の選択した手術術式の問題点としては、手術 中の体位変換が必要であり、手術時間の面で不利と なる。また、この術式の場合完全根治手術として、 両側の葉切除が可能となるが、その場合残存肺機能 として術後の呼吸機能回復に不安が残るため、肺癌 の根治性として葉切除をするかどうかが問題とな ってくる。当院では、第1癌に対しては葉切除を行 い根治陛を高め、第2癌に対しては部分切除にとど め根治性では劣るが、術後の肺機能は問題なく経過 は良好であった。  術後管理としては、術直後の呼吸機能がどの程度 まで障害6)されているのかを正確に判断する必要 性があり、また退院後の長期経過観察が重要である。 肺癌そのものの根治性を考え、再発の検索等が厳重 に必要とされる。呼吸機能に関して、日常生活への 支障はないか、自覚症状としては特にないか、呼吸 機能検索を外来で行う必要があると考える。  当院で行った症例では、症例1と3では術後経過 は順調であり、その後再発なく経過していることも 考えると、今回の術式は適切であったと考えられる。 山梨肺癌研究会会誌 15巻1号 2002 症例2では、他側への肺転移であったため、手術適 応ではなかった可能性もあり反省させられた。  以上、同時性両側肺癌への一期的手術について検 討してきた。これからさらに医療技術が進歩してい く中で、多発性に病変を認めることが増えると予測 される。これらに対して根治性を優先し、拡大手術 的に両側葉切除し病変部を切除するのか、残存呼吸 機能を考慮し縮小手術として両側肺部分切除して いくか、苦慮していくことが多くなると思われる。 理想的には呼吸機能を温存しつつ、根治性の高い手 術を目指す必要性がある。当院ではそれを併用する ことで最大の効果と思われる術式を選択してきた が、今後同様の症例で更なる検討をする必要がある と考える。

参考文献

1)森田豊彦:剖検症例における肺多発癌の頻度・  内容・推移一目本病理剖検輯報(1958∼92年度  症例)による検討一。肺癌 37:283、1997 2)Martini N. and Melamed M.R,:Multiple  primary lung cancers. J Thorac Cardiova8c  Surg 70:606、 1975 3)君野孝二、綾部公懸、他:同時性肺癌の臨床的  検討。肺癌 30:43、1990 4)日吉晴久、岩波 洋、他:同時性両側肺癌症例  に対する一期的外科治療の検討。日呼外会誌  10:743、 1996 5)長坂不二夫、大畑正昭、他:両側同時肺癌に対   して一期的に両側上葉切除を行った一例。日呼  外会誌 11:61、1997 6)中原数也、三好新一郎、他:高齢者肺癌手術後  予測呼吸機能と手術後合併症について。目胸外  会誌 31:1193、1983 一34一

参照

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