• 検索結果がありません。

中学校体育授業「剣道」における導入のあり方に関する検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中学校体育授業「剣道」における導入のあり方に関する検討"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

-113- 第18号 2019

1.はじめに

 平成24年に学習指導要領が改訂され,中学校では武道 が必修と定められた。これにより,これまで剣道を経験 したことのない生徒も,授業を通して剣道を経験するよ うになっている。平成29年告示の新学習指導要領におい て,武道領域は「・・・武道の伝統的な考え方を理解し, 相手を尊重して練習や試合ができるようにすることを重 視する対人的な技能を基にした運動である。」とあり,対 人技能を学ぶ中で,伝統文化への関心を高め,他者を尊 重する心を育てる教材として位置付けられている。また, 「武道は,中学校で初めて学習する内容であるため,基 本動作と基本となる技を確実に身に付け,それらを用い て,相手の動きの変化に対応した攻防を展開することが できるようにすることが求められる。」とあり,初心者指 導の重要性や,攻防の展開を指導目標とすることが示さ れている。  一方,「竹刀が重たい」,「打たれたら痛そう」,「怖い」 といったネガティブな意見があると報告されており,剣 道初心者の中には剣道に対する抵抗感を持っている生徒 も多くいることが想定される。また,動きや所作法の説 明が長く,1時間あたりの運動量が少ないというのも要 因の1つと考えられる。実際の学校現場では,剣道に精 通した体育教員が必ずしも剣道授業を行っているとは限 らず,外部からの指導者に授業を委託している場合も少 なくない。  筆 者 ら は,こ れ ま で の 剣 道 授 業 実 践(木 原 ほ か, 2009,2011,2013,2014,2016,2017)を通して, 剣道授業のネガティブなイメージを払拭するためには, 剣道授業の導入段階における授業内容のあり方が重要で あると認識している。そのために竹刀や簡易用具よりも 扱いやすく,なおかつ竹刀に見立てて扱うことができる 手刀での活動を導入段階で取り入れた授業を構想した。  手刀に関する先行研究として,有山(2007)による 「剣道のかけひきの動きを習得する-竹刀を用いないプ ログラム-」がある。これは,剣道のかけひきを手刀を 用いて段階的に指導している。また,簡易用具を用いた 剣道指導実践としては,田原(2011)は,片手打ち競技 として行われている短剣道やスポーツチャンバラに着目 し,剣道の初心者指導への有用性を示している。古賀 (2018)はポスター剣(簡易用具)を用いた3時間限定 の授業実践を行っている。また,木原ら(2009)は小学 校で用具の工夫がなされた簡易試作用具を用いた剣道授 業実践を行っている。  それらの先行研究を踏まえ,本研究では,導入段階に おいて,従来の竹刀や防具を使わず,剣道初心者の剣道 に対する抵抗感を緩和し,楽しく剣道の攻防が学べ,且 つ運動量を確保する手刀による導入授業の検討を目的と した。

2.剣道授業実践

 本研究の剣道授業実践は鳴門教育大学大学院の授業 「教育実践フィールド研究」において平成30年11月お よび12月になされたものである。 ①対 象:鳴門教育大学附属中学校1年女子 ②授業者:大学院生 A(剣道四段:男子25歳) ③期 間:平成30年11月29日〜12月7日  この間に2クラス合同で各3回の授業実践 1)3時間授業の概要  授業指導案として下記のものを作成した。なお,毎授 業終了時に授業評価と感想を記入するアンケート用紙も 配布した。なお,授業評価の内容は先行研究で木原ほか (2016,2017)が使用したものを参考に作成した。

中学校体育授業「剣道」における導入のあり方に関する検討

田邊  航

,中川 沙弥

,古賀 雅治

,西本 浩章

**

,木原 資裕

*** (キーワード:中学校体育授業,剣道,導入) *** 鳴門教育大学大学院 生活・健康系コース(保健体育) *** 鳴門教育大学 嘱託講師 *** 鳴門教育大学 高度学校教育実践専攻(教科系)

(2)

-114- ○本時の指導(1/3)  ⑴ 目 標   ・剣道の特性を知り,基本的な動きを身に付ける。  ⑵ 展 開 ○本時の指導(2/3)  ⑴ 目 標   ・実践的な剣道の動きを身に付ける。  ⑵ 展 開 ○本時の指導(3/3)  ⑴ 目 標   ・正しい防具の付け方を身に付ける。   ・正しい刃筋から胴打ちを身に付ける。  ⑵ 展 開  上記の指導案をさらに概要としてまとめてみると次の ようになる。 〈その他留意事項〉 ・毎時間,礼法指導を徹底した。 ・剣道具を大切に扱うよう指導した。 ・毎時間授業終わりにアンケート用紙を配布し,記入さ せた。 2)授業分析  本研究の剣道授業はすべてデジタルカメラで収録し, 授業ごとにパソコンに取り込み動画ファイルを作成した。 その動画をパソコン上で視聴しながら,検討を要する場 面を画像として収集し,パソコン上に保存した。  また,授業評価を授業ごとにエクセルに記入し,有意 差を算出し,その内容分析を行った。これらの検討は, ○礼法(左座右起など)の必要性について説明し 今後の授業で継続して行うことを指導する。 ・全日本選 手 権 決 勝 の映像を観る。 ・ワークシート記 入, 提出。 ・正座,礼。 ・二重円を作りペアを 呼ぶ。 ・笛の合図でランニン グとすり足を交互に行 う。 ・手刀で構え合い,笛 の 合 図で 相 手 の動き に合わせて前進後退。 ・相手の前進を,体を 開いてかわす。 ・ペアで片方の持って いる手ぬぐいを,手刀 で切る。 1.整列,挨拶 2.剣道についての説明 3.本時のねらいの確認 4.声だしゲーム 5.ランニング足さばき 6.足さばき 7.手ぬぐい切りゲーム 8.本時のまとめ 9.次時の確認 10.挨拶 ○本時の目標が達成できたか確認する。 ○次回は防具や竹刀を用いることを伝える。 ○最初に指導した礼法を意識すること。 ○安全面に配慮する。 ○ホワイトボードを使い剣道の足さばきを説明す る。 ○見本を行う。 ○たくさんの友達とできるようにペアを交代しな がら行う。 ○笛の合図を徐々に早くする。 ○始めと終わりにお互いの礼をさせる。 ○サイドステップや背中を見せないように注意さ せる。 ▲基本的な動きで相手をかわしているか。 学習内容及び学習活動 ○:教師の支援 ▲:評価規準 段階 導入 1 0 分 展開 30 分 終末 1 0 分 剣道の基本的な動きを身につけよう ○礼法がきちんとできているかを確認する。 ・ワークシート記 入, 提出。 ・正座,礼。 ・お互いに胸元と右胴 に手ぬぐいを提げる。 ・胸 ・胸→抜く→胸 ・腰 ・腰→抜く→胸 ・竹 刀 で 振 る 時 の イ メージを持たせる。 1.整列,挨拶 2.前時の復習 3.本時のねらいの確認 4.ランニング足さばき 5.手ぬぐいを取り合う 6.手ぬぐい奪取ゲーム 7.手刀での正面素振り 8.竹刀を持ってみる 9.本時のまとめ 10.次時の確認 11.挨拶 ○本時の目標が達成できたか確認する。 ○次回は本格的な素振りや打突部位を打ってみ ることを伝える。 ○前時の足さばきを意識させる。 ○一歩踏み出して奪う動作を身に付けさせる。 ○取る時に「エイ」と発声させる。 ○防いで(抜いて)から攻めに転じることを指導 する。 ○ペアを変えながら行う。 ○始めと終わりにお互いの礼をさせる。 ○自分の手ぬぐいを取られないように抑えること はさせない。 ○先ほどの動きを意識させる。 ▲実践的な動きの中で相手の手ぬぐいを奪えて いるか。 ○正面打ち、胴打ちの動きを確認する。 ○握り方や正しい構えを意識させ,素振りを行 う。 ○手刀での動きを意識させる。 学習内容及び学習活動 段階 導入 5 分 展開 3 5 分 終末 1 0 分 実践的な剣道の動きを身に付けよう ○:教師の支援 ▲:評価規準 ○来た人から防具と竹刀を取るように指示する。 ・ワークシート記 入, 提出。 ・正座,礼。 ・垂れと胴を着けてペ アで確認し合う。 ・正 面 素 振 り →  胴の素振り。 ・交代しながら行う。 ・上 段 の 構え から笛 の 合 図で 一 歩出て胴 を打ち合う。 ・一歩間を取って,中 段 から笛の 合 図で 一 歩出て二拍 子 の胴を 打ち合う。 1.整列,挨拶 2.前時の復習 3.本時のねらいの確認 4.防具を着ける練習 5.素振り 6.胴を打ち合う 7.片付け 8.本時のまとめ 9.授業全体のまとめ 10.挨拶 ○本時の目標が達成できたか確認する。 ○何人かの生徒にここまでの剣道授業について の感想を言ってもらう。 ○垂れ,胴の付け方の手本を示す。 ○生徒によっては個別で指導する。 ○正座,立膝で付けるように指導する。 ▲正しく防具を着けているか。 ○模擬刀を見せて竹刀との違いを説明する。 ○見本を行う。 ○手首を返すことや刃筋を特に指導する。 ○徐々に合図を早くする。 ▲正しい胴の打ち方で相手と打ち合っているか。 ○責任を持って防具を片付け,大切に扱うことを 意識させる。 学習内容及び学習活動 段階 導入 5 分 展開 3 5 分 終末 1 0 分 防具を着けて相手と胴打ちを打ち合おう ○:教師の支援 ▲:評価規準 授 業 内 容 〇オリエンテーション(礼法指導も含む) 〇声出しゲーム(次項・実践 1) 〇ランニング + 足さばき(次項・実践 2) 〇対人足さばき(次項・実践 3) 〇手刀を用いた活動  ・手ぬぐい切ゲーム(次項・実践 4) 〇手刀を用いた活動  ・相手の手ぬぐいを取る(次項・実践 5)  ・相手と手ぬぐいを取り合う(次項・実践 6)  ・手刀での素振り(次項・実践 7) 〇竹刀を用いた素振り(次項・実践 8) 〇胴,垂れの装着(次項・実践 9) 〇前時の復習 〇胴打ちの練習(打ち方,受け方) 〇胴を互いに打ち合う活動(次項・実践 10) 1 2 3

(3)

-115- 平成30年度の大学院授業「教育実践フィールド研究」 を受講した2名と担当教員により実施した。

3.授業内容

《実践1:声出しゲーム》  2人1組となり,片方は目を閉じて,もう片方が3〜 4メートル離れた位置からペアの名前を呼んで誘導する。 一斉に行うため,声が小さいと名前が聞こえず進むこと ができないことから,自然と大きな声を出すことを意図 した。 《実践2:ランニング+足さばき》  ランニングと送り足を笛の合図で切り替えながら,体 育館内を3周させた。 《実践3:手刀の構えからの対人足さばき》  笛の合図で片方が1歩攻め入ってくるのに対し,もう 片方は後退して間をとることや体を横に開いてさばくこ とを行った。 《実践4:手ぬぐい切りゲーム(攻防分離型)》  2人1組で片方は手刀で構える。もう片方は両腕を軽 く前に出した状態を取り,そこに手ぬぐいをかける。手 刀側は素早い送り足から相手の手ぬぐいを切り落とす。 手ぬぐいを持っている方は切り落とされないように間を とったり,体を横に開いたりしてさばく。 ※攻防分離:攻撃側は攻撃のみを,防御側は防御のみを 行う,攻めと守りが区別された場面。 《実践5:相手の手ぬぐいを取る》  手刀の構えから相手の胸元と腰に付けた手ぬぐいを笛 の合図で1歩踏み出して取る。 声出しゲームを始める前の位置関係  円:名前が呼ばれた方向に目を閉じたまま進む人。  円:ペアの名前を呼び誘導する人。 目を閉じている内側のペアの名前を呼ぶ    後退して間をとる    横に体を開いてさばく

(4)

-116- 《実践6:相手と手ぬぐいを取り合う(攻防一体型)》  手刀の構えから互いに胸元と腰の手ぬぐいを取り合う。 ※攻防一体:攻撃側と防御側の区別がなく,攻めと守り が目まぐるしく変化する場面。 《実践7:手刀での素振り(面・胴)》  手刀の構えから面と胴の素振りを行った。面素振りは 右手を大きく振りかぶること,胴素振りは右手の甲が床 と平行になることを強調した。 《実践8:竹刀を用いた素振り(面・胴)》  竹刀を用いて面と胴の素振りを行った。 《実践9:胴・垂の装着》  胴と垂の装着を2人1組で正しく着けられているか確 認し合いながら行った。なお今回は胴の胸紐を前で結ぶ (写真)よう指導を行った。これにより着装に要する時 間の短縮につながった。 《実践10:胴を交互に打ち合う》  今回は打突の容易さ,抵抗感の軽減,打突感覚を身に 付けさせるため胴打ちに焦点を当て指導を行った。  笛の合図に合わせて,打つ,受けるを交互に行う。

4.結果と考察

1)質問項目  毎授業終了時に行った,アンケートの集計にあたり, 「非常によく当てはまる」を5点,「あてはまる」を4点, 「どちらともいえない」を3点,「当てはまらない」を2 点,「全く当てはまらない」を1点とし,それぞれの項目 の平均と標準偏差から有意差を求め,検討を行った。 手刀での胴の素振り 手刀での面の素振り 竹刀での胴の素振り 竹刀での面の素振り 5 4.5 4 3.5 3 ■1時間目  2時間目  3時間目 1・2組 3・4組 全体 4.5 4.5 4.81 4.81 4.96 4.96 4.65 4.654.724.72 4.81 4.81 4.81 4.81 4.63 4.63 4.664.66 4.5 4.81 4.96 4.654.72 4.81 4.81 4.63 4.66 Q1.楽しく活動ができた

(5)

-117-  「楽しく活動ができた」の項目では,平均値の増加傾向 がみられる。これは3時間を通して生徒の充実感が得ら れる実践内容であったことが推察される。  「たくさん動けた」の項目では,3時間目が一番高い平 均値を示している。これは実際に打突部位を打つという 行為が,「剣道を行ったという」満足感につながり,それ が生徒の運動の充足感に影響を与えたのだと思われる。  「礼儀を意識して行えた」という項目に対し,3時間目 に一番高い平均値を示している。これは実際に打突を行 うとなったときに,今までよりもより一層相手に対し礼 儀や感謝の気持ちを持って行うことが必要であると生徒 自身が感じたためであろう。  「大きな声を出せた」の項目では,2時間目に低い平均 値を示している。これは2時間目の活動全体を通して発 声をさせる活動が少なかったことに原因があると考えら れる。  「足さばきがうまく行えた」の項目では,平均値の増加 傾向がみられる。最初は慣れない剣道の足さばきに抵抗 感があったものの,徐々に上達していくのを生徒自身が 感じたためだと思われる。  「剣道に興味がわいた」の項目では,3時間目に一番高 い平均値を示している。これは実際に竹刀で打突した時 の打突音や感触が剣道に対する興味,関心を高めたため であろう。 2)自由記述  手刀での活動についての記述の主なものは以下の通り である。 ・手刀と竹刀は似ている部分が多く同じような感覚でで きた。 ・手刀で練習したことで感覚がつかめて楽しかった。 ・手刀をすることでどのように打てばよいかのイメージ が持てた。 ・竹刀は扱うのが難しかったが,手刀をしたことで感覚 がつかめて楽しかった。  その他,手刀での活動に対して肯定的な意見の記述が 5 4.5 4 3.5 3 ■1時間目  2時間目  3時間目 1・2組 3・4組 全体 4.29 4.29 4.81 4.81 4.93 4.93 4.55 4.55 4.514.51 4.75 4.75 4.72 4.72 4.3 4.3 4.57 4.57 4.29 4.81 4.93 4.55 4.51 4.75 4.72 4.3 4.57 Q2.たくさん動けた ■1時間目  2時間目  3時間目 5 4.5 4 3.5 3 *p<0.05 1・2組 3・4組 全体 4.08 4.08 4.48 4.48 4.84 4.84 4.28 4.28 4.44.4 4.69 4.69 4.45 4.45 4.36 4.36 4.54 4.54 * * * * 4.08 4.48 4.84 4.28 4.4 4.69 4.45 4.36 4.54 Q3.礼儀を意識して行えた 5 4.5 4 3.5 3 ■1時間目  2時間目  3時間目 *p<0.05 1・2組 3・4組 全体 4.17 4.17 4.36 4.36 4.454.45 4.26 4.26 3.53 3.53 4.13 4.13 3.69 3.69 3.36 3.36 3.81 3.81 * * * * * 4.17 4.36 4.45 4.26 3.53 4.13 3.69 3.36 3.81 Q4.大きな声を出せた ■1時間目  2時間目  3時間目 5 4.5 4 3.5 3 *p<0.05 1・2組 3・4組 全体 3.7 3.7 4 4.57 4.57 3.85 3.853.963.96 4.36 4.36 4.15 4.15 3.78 3.78 4.15 4.15 * * * 3.7 4 4.57 3.853.96 4.36 4.15 3.78 4.15 Q5.足さばきがうまく行えた ■1時間目  2時間目  3時間目 5 4.5 4 3.5 3 *p<0.05 1・2組 3・4組 全体 3.91 3.91 4.63 4.63 4.93 4.93 4.26 4.26 4.34.3 4.59 4.59 4.54 4.54 4.06 4.06 4.24 4.24 * * * 3.91 4.63 4.93 4.26 4.3 4.59 4.54 4.06 4.24 Q6.剣道に興味がわいた

(6)

-118- 58件あった。これらのことから剣道授業の導入段階にお いて,手刀での活動は有効であると示唆される。  また,手刀に対する違和感や否定的な記述として次の ものがある。 ・手刀と竹刀では重量感といい,手の向きといい,違う 面がある。 ・腕の使い方は似ているが,動き方が全く違う。 ・手刀と竹刀では重さが違うので難しかった。 3)考察  動画分析,授業評価,自由記述をもとに以下の事項の 検討を行った。 ① 手刀での正しい構えの意識化  手刀の構えが崩れてしまう生徒が少なからずみられた。 例えば,右ひじが伸びて力の入った構えになっていたり, 左足の踵がつき,腰が引けた構えになっていた。これら の改善のために毎授業の始めや,活動の合間の時間など に構えの確認作業を行い,正しい構えの意識化を図るこ とが重要である。 ② 手ぬぐいを取り合う際の安全性の確保  手ぬぐい切りゲームの時に,他のペアとの衝突がみら れた。慣れない送り足で素早い移動を行う際には十分な 安全確保や,他のペアとの間隔を確保することが必要で ある。 ③ 発声をさせるポイント  1時間目では,声出しゲームを行ったことにより大き な発声という剣道の特性を実践することができた。しか し,それ以外の活動で声についての指導をあまり行わな かったことが課題として考えられる。特に2時間目では 活動全体を通して発声をさせる活動が少なかった。例え ば,手ぬぐいを取り合う際に「とった」という発声をさ せながら行わせれば,生徒も発声を常に意識し,より剣 道らしい活動につながると思われる。 ④ 手刀から竹刀へのギャップの軽減  剣道初心者に対していきなり竹刀を持たせて行わせる と剣道に対して抵抗感が生まれると考え,最初は何も持 たせず,なおかつ剣道の構えに類似した手刀を取り入れ た。しかし,手刀と竹刀を持った時の手首の向きが違う ことや,実際に竹刀を持った時に感じる重さ,竹刀の長 さなどに抵抗感を感じる生徒もいた。  前述した古賀(2018)の先行研究において「ポスター 剣」が使用されている。こうした簡易用具を用いた活動 を,手刀での活動と竹刀を使った活動の間に設けること で,生徒の抵抗感をさらに緩和させることや,竹刀を扱 う時のイメージにつながると考えられる。 ⑤ 相手を思いやった礼法の意識化  3時間目にはお互いに礼をする姿が生徒同士で積極的 にみられたが,1・2時間目は不十分な礼儀作法や,竹刀 の扱い方に問題がみられるところもあった。剣道は礼に 始まり,礼に終わるという考え方があるように,相手に 対して常に感謝と敬意の気持ちをもって行わなければな らない。またそうした指導の積み重ねが生徒の心の成長 へとつながる。剣道授業においては,何よりも最初に適 切な礼法指導が必要である。

5.おわりに

 今回の研究は附属中学校の1年生の女子生徒のみの授 業実践となった。今回の実践内容を,男子生徒を対象に した場合,あるいは男女共修の場合についても検討する 必要があろう。男女間での運動欲求や体力差,安全面な ども考慮しなくてはならない。また自由記述の中には「足 さばきが難しかった」という意見が複数あり,手刀での 構えや竹刀を扱うというよりも,足さばきの方に意識が 向いている傾向がみられた。このことからも剣道特有の 送り足の指導についても検討が必要である。さらに,授 業ごとの詳細な自由記述のデータに対する,客観的な視 点に立った分析も必要であろう。  最後に今回の授業実践は武道領域の全8時間のうち, 始めの1時間目〜3時間目までの時間で行った。4時間 竹刀(上)とポスター剣(下)

(7)

-119- 目以降は附属中学校の教員に引き継ぎ授業が行われた。  その後の経過として,①面を着用せず,竹刀で受ける 形で面打ちの練習②小手を着用しての小手打ちの練習 ③最終8時間目には面,小手,胴打ちの発表会を行って いる。次年度は防具を着用し本格的に打突部位を打ち合 う練習や判定試合を行わせる予定とのことである。

引用・参考文献

A.べネット,クリケットと剣道と国際化(第5回剣道 文 化 講 演 会),『剣 窓』全 日 本 剣 道 連 盟,pp.12- 16,2007.2 有山篤利,剣道のかけひきの動きを習得する-竹刀を用 いないプログラム-,

 https://www.youtube.com/watch?v=IdK1jDyQI5s 木原資裕・浅見裕・大塚忠義・松村司朗・横山直也・草 間益良夫・山神眞一・境英俊・太田順康,剣道実践に ともなう阻害要因の検討-経験年数による違いを中心 に-, 武道学研究,28-1,pp.33-46,1995  木原資裕・江口大祐・森明日香・草間益良夫・坂東隆男, 小学校における簡易試作用具を用いた剣道授業実践, 武道学研究,42-1,pp.9-21,2009 木原資裕・檜垣俊介・小林弘樹・李 柔那,中学校剣道 授業における指導内容の検討-指導歴30年教師の剣 道授業を中心に—, 鳴門教育大学授業実践研究,10, pp.83-91,2011 木原資裕・村上徳恭・西本浩章・加藤弘貴・横山健太・ 梶貴一朗・芦高裕郎・木下臣人,教育実習生が行う剣 道授業の検討-剣道初心者による剣道授業を中心に-, 鳴門教育大学授業実践研究,12,pp.123-129,2013 木原資裕・西本浩章・加藤弘貴・横山健太・真嶋健司・ 三井克馬・井口彩季・水口勇人・木下臣人・吉田哲也, 剣道初心者の教育実習生が行う剣道授業の問題点,鳴 門教育大学授業実践研究,13,pp.121-125,2014 木原資裕・西本浩章・中野竜太郎・徳永綜一郎・木島拓 也・中本貴規・藤岡莉子・藤原健真・田村律子,中学 校体育授業「剣道」における指導内容の検討-男女共 修のあり方を中心に-,鳴門教育大学授業実践研究, 16,pp.89-99,2017 木原資裕・園山由華・林祐輔・中野竜太郎・堀江修平・ 金森優太・秋津久範・篠原健真・田村律子,中学校体 育授業「剣道」に於ける段階的指導の検討,鳴門教育 大学授業実践研究,15,pp.123-131,2016 古賀雅治,中学校体育授業「剣道」における剣道具のあ り方に関する一考察,修士論文(鳴門教育大学大学院 学校教育研究科),76p,2018 中村民雄,剣道辞典-技術と文化の歴史-,島津書房, 429p,1993 大塚忠義,剣士に告ぐ-日本剣道の未来のために-,窓 社,212p,2005 大塚忠義,日本剣道の歴史,窓社,258p,1994 大塚忠義,日本剣道の思想,窓社,227p,1994 大塚忠義・宇都宮伸二・坂上康博,のびのび剣道学校, 窓社,226p,1990 角正武,剣道年代別稽古法-道の薫り-,体育とスポー ツ出版社,268p,2000 田原啓吾,剣道初心者指導における片手打ちの検討,修 士論文(鳴門教育大学大学院学校教育研究科),87p, 2011 武田庸助・林修・梅野圭史・木原資裕,体育授業におけ る人間関係力を高める運動教材の開発過程に関する研 究—小学校4年生:スポーツチャンバラにおける学習 過程の最適化-,教育実践額論集,第8号,pp.197- 209,2007 好村兼一,剣道再発見—剣道の「深み」を求める稽古法 —,スキージャーナル,191p,2007 全国教育大学剣道連盟編,教育剣道の科学,大修館書店, 202p,2004 全国教育大学剣道連盟編,ゼミナール剣道,窓社,292p, 1992 全国教育大学剣道連盟研究部会編,剣道の学習指導,不 昧堂出版,199p,1987 全日本剣道連盟編,安全で効果的な剣道授業の展開ダイ ジェスト版 第2版,全日本剣道連盟,67p,2014 全日本剣道連盟,「剣道の理念」剣道指導の心構え, http://www.kendo.or.jp/

(8)

参照

関連したドキュメント

お客様100人から聞いた“LED導入するにおいて一番ネックと

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

熱が異品である場合(?)それの働きがあるから展体性にとっては遅充の破壊があることに基づいて妥当とさ  

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

に至ったことである︒

   縮尺は100分の1から3,000分の1とする。この場合において、ダム事業等であって起業地

社会的に排除されがちな人であっても共に働くことのできる事業体である WISE