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電力変換器の高効率化を可能にする3 kV耐圧GaNダイオード

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Academic year: 2021

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72 2013.05   図1│試作したpnダイオードの素子構造(断面図) 15 mμ 15 mμ SiO:∼150 nm2 SOG:∼200 nm Ti(30 nm)/Al(300 nm) Pd(200 nm) p-GaN:Mg(2×1020 cm-3), 10 nm p-GaN:Mg(1×1018 cm-3), 500 nm n-GaN:Si(1×1015 cm-3), 5 m n-GaN:Si(1×1016 cm-3), 15 m n-GaN:Si(2×1018 cm-3), 2 m μ μ μ n-GaN 自立結晶ウェーハ Ti(50 nm)/Al(250 nm) 1,100 nm

電力変換器の高効率化を可能にする

3 kV

耐圧

GaN

ダイオード

高耐圧を実現するためには,低キャリア濃度層の精密な濃 度制御が求められる。  そこで,残留不純物低減のために高純度原料を使用し, 装置部材からの不純物混入を減らした。また,キャリア生 成に必要な原料供給量の精密制御を行い,特に,キャリア 補償の原因となるアクセプタ型不純物濃度を低減した。  

pn

ダイオードの半導体構造部そのものの耐圧は,

p

層,

n

層のキャリア濃度,および厚さによって決まる。

pn

ダイ オードに高電圧を与えると,

pn

界面に最も高い電界が発 生 す る。 こ の 値 が,

GaN

の 降 伏 電 界 強 度 と さ れ る

3.3

MV/cm

を超えないようにデバイス構造を設計した。今回 は高耐圧と低オン抵抗を両立させるため,

pn

界面近傍の

n

層側のキャリア濃度を一段下げることにした。実際にダイ オードを動作させるためには,絶縁膜や電極構造も重要で ある。プラズマドライエッチングで素子分離を行い,絶縁 膜を

SOG

Spin on Glass

)と

SiO₂

2

層構造としてプロセ スダメージを抑えた。また,電極で絶縁膜の大部分を覆う SiCやGaNなどの化合物半導体は,Siよりも材料固有の限界性能 が高いことから,高効率な電力変換デバイス用途への展開が期待さ れている。近年,GaN自立結晶ウェーハが複数の企業から提供さ れるようになり,GaNパワーデバイスの商業的実用化に必要な要件 がそろいつつある。このような中,日立電線株式会社は,欠陥密度 が少なく極性反転区のない自社製GaN自立結晶ウェーハ上に有機 金属気相成長(MOVPE)法を用いてpnダイオードを試作した。そ の結果,3 kV耐圧と0.9 mΩ・cm²の低オン抵抗を実現した。 1.Siデバイスの性能限界を超える新材料パワーデバイスの開発  

SiC

(炭化ケイ素)や

GaN

(窒化ガリウム)はバンドギャッ プや絶縁破壊電界が大きく,飽和電子速度が高いことか ら,小型・低損失・高耐圧デバイス用の材料として期待さ れている。

Si

(シリコン)デバイスの代替だけでなく,こ れまで

Si

デバイスでは実現できなかった新しい分野での 応用も徐々に進んでいくものと考えられている。 大電力用のデバイスでは,大電流密度化が可能でウェー ハ利用効率の高い縦型構造が有利であるため,全面が均一 で,転位,極性反転区などの結晶欠陥が少ない自立結晶 ウェーハが必要となる。日立電線は,すでに青色レーザ向 けに低欠陥密度の

GaN

導電性自立結晶ウェーハを製造・ 販売している強みを生かし,

GaN

自立結晶ウェーハ上に 大型電極を有する縦型

pn

ダイオード構造を試作して高電 圧動作の実証を試みた。 2.GaN自立結晶ウェーハ上pnダイオードの試作  

pn

ダイオード用エピタキシャル結晶は,

MOVPE

Metal

Organic Vapor Phase Epitaxy

)法によって作製した。原料 としてガリウムを含む有機金属原料と,アンモニアガスを 用いた。これらの原料を主に水素ガスと混合し,

1,000

℃ 以 上 に 加 熱 し た 成 長 炉 内 で 基 板 と な る

GaN

自 立 結 晶 ウェーハ上に

GaN

系半導体薄膜を成長させた。  

pn

ダイオードのようなバイポーラ型デバイスで

kV

級の

topics

金田

直樹

Kaneda Naoki

土屋

忠厳

Tsuchiya Tadayoshi

三島

友義

Mishima Tomoyoshi

中村

Nakamura Tohru

(2)

73 topics Vol.95 No.05 400–401  グリーンイノベーションに寄与する高機能材料 100 10-1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 逆方向電圧(V) 電極直径400 mμ 逆方向電流密度 ( A/cm 2) -500 -1,000 -1,500 -2,000 -2,500 -3,000 -3,500 0 図3│試作したpnダイオードの逆方向電流−電圧特性 図2│試作したpnダイオードの順方向電流−電圧特性 電流 100 10-1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 0 1 2 3 4 順方向電圧(V) 電極直径60 mμ オン 抵抗 R on ( m Ω ・ cm 2) 順方向電流 ( A ) 5 6 7 8 0 0.5 1 1.5 オン抵抗 注 : が,全面にわたって均一で,結晶欠陥が少ないことによる ものである。 4.今後の展望  今回の試作で,日立電線製

GaN

自立結晶ウェーハ上に, 高耐圧と低オン抵抗を両立した高効率パワーデバイスを作 製し得ることが示された。今後,

GaN

の材料物性を十分 に生かしたオン電圧の低いショットキーダイオードや,高 速スイッチング動作可能なトランジスタを提供していくこ とで,省エネルギーな電力システムの構築に寄与すること ができる。 構造とすることで,電極近傍での電界集中を抑えている1)。 素子断面構造を図1に示す。 3.試作した縦型GaN pnダイオードの特性2)  試作した縦型

GaN pn

ダイオードの順方向の電流−電圧 特性を図2に示す。オン抵抗(

R

on)は

4 V

において

0.9 m

Ω・

cm²

となり,ダイオード構成層の抵抗成分から予想される 値よりも小さくなった。これは,通電時の発光により,新 たなホールが発生して導電率を低下させる導電率変調によ るものと考えられ,この材料系に新たな優位性が見いださ れた3)。  試作した縦型

GaN pn

ダイオードの逆方向の電流−電圧 特性を図3に示す。

GaN

自立結晶ウェーハ上の縦型

pn

ダ イオードの逆方向耐圧として,初めて

3 kV

耐圧を確認で きた。これは今回試作に使用した

GaN

自立結晶ウェーハ

1) 畠山,外:GaN基板上高耐圧GaN pn接合ダイオード,電子デバイス研究会,

EDD-12-035,電気学会(2012.3) 2) 畠山,外:自立GaN基板上の耐圧3 kV pn接合ダイオード,第73回応用物理学会学 術講演会,12p-F2-16,応用物理学会(2012.9) 3) 望月,外:小型GaN p+nダイオードのオン抵抗低減機構に関する考察,電子デバイ ス研究会,EDD-12-031,電気学会(2012.3) 参考文献 金田直樹 1996年日立電線株式会社入社,技術研究所次世代機能部品・材料 研究部所属 現在,GaN系化合物半導体の開発に従事 応用物理学会会員 土屋忠厳 1986年日立電線株式会社入社,技術研究所次世代機能部品・材料 研究部所属 現在,化合物半導体などの開発に従事 応用物理学会会員,IEEE会員 三島友義 1983年日立製作所入社,日立電線株式会社技術研究所次世代機 能部品・材料研究部所属 現在,化合物半導体,新薄膜材料などの研究開発に従事 工学博士 応用物理学会会員(フェロー),電気学会会員,IEEE会員(Senior Member) 中村徹 1975年日立製作所入社,1998年法政大学理工学部電気電子工学 科教授 現在,GaNトランジスタ,SiC,グラフェンなどの研究に従事 工学博士 応用物理学会会員,電気学会会員,IEEE会員(Fellow) 執筆者紹介

参照

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