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ドイツ労働者派遣にみる失業保障の課題(一) 利用統計を見る

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(1)

ドイツ労働者派遣にみる失業保障の課題(一)

著者名(日)

上田 真理

雑誌名

東洋法学

54

2

ページ

37-59

発行年

2010-12-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000786/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

(2)

目次 はじめに Ⅰ   問題の所在 Ⅱ   派遣労働者の低賃金化・貧困化の現状と背景   1   派遣労働者の現状   2   低賃金をめぐる最近の訴訟動向    ( 1 )  協約による派遣労働者の低賃金化(以上、本号)    ( 2 )  ベルリン労働裁判所二〇〇九年決定と社会保障行政の課題 はじめに   本 稿 の 課 題 は、 派 遣 労 働 に 対 す る 失 業 保 障 を、 ド イ ツ 法 を 対 象 と し て 検 討 し、 日 本 法 へ の 示 唆 を 得 る こ と に あ 《 論    説 》

ドイツ労働者派遣にみる失業保障の課題(一)

 

  

 

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る。   経済的危機は、わが国では二〇〇八年の「派遣切り」という深刻な形として表れ、雇用のセーフティ・ネットの 課題が浮き彫りにされている。派遣労働者のおかれていた生活状況は、雇用のセーフティ・ネットの脆弱さに示さ れただけではなく、派遣労働者の失業後の生活保障の不在も露呈した。これまで高度経済成長のなかで労働者が急 増し、雇用者が就業人口の約八割に達しているにもかかわらず、被用者保険法・雇用保険法は雇用者よりも狭い範 囲にしか適用されてこなかった。被用者保険法・雇用保険法の適用を除外された労働者は、健康上の理由から仕事 を続けられなくなると、生活保護を利用するしかなくなってい ( 1) る。稼働能力がある要保護者に対する最低生活保障 のありかたが焦点になっているが、それと同時に問題にすべきであるのは、労働者が、失業又は傷病状態になった 場 合 に、 直 接 に、 そ し て 個 別 の 事 情 を 問 わ れ る こ と な く 典 型 的 に 対 応 す る は ず の 雇 用 保 険 (基 本 手 当) ・ 被 用 者 医 療 保 険 (療 養 給 付、 傷 病 手 当 金) が 何 ら 非 正 規 雇 用 者 に は 機 能 し て い な い こ と で あ る。 そ う し た 状 況 は、 社 会 保 障 制度を取り巻く、労働市場という外部の状況によるだけではなく、労働者の生活状況に被用者保険が機能していな い制度的欠陥である。わが国の社会保険制度の機能不 ( 2) 全を放置し、制度的欠陥への対応を怠ってきたこと自体が問 われるべきであっ ( 3) た。   ドイツでも、派遣労働者に「平等な賃金」が確立されていないことが問題になっているが、派遣労働者には雇用 保険法も被用者保険各法も適用されるのが原則である。そうしたなかで、派遣労働者の低賃金化に対する最近の判 例の展開に注目する。わが国における派遣労働の劣悪な状況を、労働法だけではなく、生活保障の視点から社会保 障法に表れている問題として検討する。そして、派遣労働者に限られる問題ではないが、失業者に対する生活保障 制度をいかに設計するべきであるのかを、雇用保険法だけではなく、最低生活保障制度の機能にも言及して検討す

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る。 Ⅰ   問題の所在 1   わが国の課題    ( 1 )  非正規雇用=家計補助型労働という前提の妥当性   非正規雇用者が、労働者であるにもかかわらず、失業・傷病・障害・高齢といった被用者としての保障制度のカ バ ー も な さ れ て い な い た め に、 失 業 し て も 雇 用 保 険 が な い、 傷 病 時 に 生 活 を 支 え る 傷 病 手 当 金 を 支 給 さ れ な い と いった状況におかれているのは、非正規雇用者を家計補助者ということを前提にしてきたことによる。   日本の雇用も社会保障も、男性正規雇用の世帯主と配偶者・子の被扶養者を構成員とする世帯がモデルになって いた。男性世帯主が正規雇用につき、生活保護水準を超える賃金を得ていれば、その配偶者が非正規雇用であれ、 貧困が問題とされることは少なかった。パートタイム労働者の劣悪な労働条件は、一九八〇年代の「家計補助型」 就労形態として、同一世帯の配偶者又は親の正規雇用者が存在し、その収入によっても生活していることを前提に して「正当化」されてきた、という批判があ ( 4) る。   一九九〇年後半、正社員を削減し、若者を中心にフルタイム非正規雇用者を正社員に「代替」させ ( 5) た。そうした 戦略は、二つの代替をはかったことになる。一つは、正社員に代えて、時給ベースでの低い条件をもとに算定し、 最低賃金ですら生活保護を超えない低賃金雇用者をつくりだした。二つは、正社員としての職を失うと、雇用保険 法の適用を受けないような劣悪な条件で、非正規雇用者としてでも再就職先をみつけざるをえない労働者が増加す

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る。   このようにみれば、これまでの失業者数の減少は、むしろ若者の非正規雇用が拡大するという矛盾を抱えこんだ といえよう。学校の卒業後に正社員になれない若者が非正規雇用につかざるをえなかったが、その後も正社員にな れずに不安定で劣悪な雇用にとどまっていた。非正規雇用者は一九九〇年代後半以降、家計を主として担う労働者 や 自 活 す る 若 い 労 働 者 に 多 く な っ て い た。 そ れ が、 二 〇 〇 八 年 の「派 遣 切 り」 と し て 大 き な 社 会 問 題 に 浮 か び 上 がった。    ( 2 )  わ が 国 の 社 会 保 険 (雇 用 保 険・ 被 用 者 保 険) の 機 能 不 全 ― 被 用 者 保 険 の 適 用 除 外 基 準 の 不 明 確 さ と 実 効 的な権利救済の不存在   (ⅰ)   上でみた前提のもとで、わが国において非正規雇用者の失業を支える所得保障の問題点を指摘しておきた い。これまで非正規雇用者のなかでも、当初、主婦パートタイマーを対象に、被用者年金の制度改革を中心に議論 されてきた。しかし、失業によって生活手段を一挙に失うフルタイム非正規雇用である派遣・有期雇用労働者を対 象 に、 「失 業」 保 障 の 有 効 な 救 済 制 度 が 存 在 し な い こ と は す で に 明 ら か に な っ て い る。 フ ル タ イ ム 非 正 規 雇 用 者 で ある派遣労働者・有期雇用労働者に、次のような不利益が生じることを問題点としてあげておきたい。一つは、非 正 規 雇 用 者 に、 運 用 上、 正 規 従 業 員 を モ デ ル と し た 雇 用 保 険・ 被 用 者 保 険 へ の 加 入 資 格 が な い こ と で あ る。 二 つ は、それらの保険に加入していても低賃金であることや、被保険者期間が細切れになることから受給権の内 ( 6) 容に不 利益が生じる。三つは、失業により保障が必要となる状況を捉えなおすことを課題とするが、そうした場合に、雇 用保険だけではなく、被用者医療・年金からも排除されている。以下、順にみておきたい。   (ⅱ)   まず、わが国の雇用保険及び被用者医療・年金保険の適用除外の基準が法律で明文化されていないことに

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問題がある。まず、雇用保険法をみれば、雇用保険法は二〇一〇年四月から適用対象の基準を改正している。一見 すれば、雇用保険法にカバーされる労働者が拡大可能となる基準が法律で定められている。というのも、適用され る 被 保 険 者 の 範 囲 を、 「一 年 以 上」 雇 用 さ れ る 見 込 み の 者 か ら「六 ヵ 月 以 上」 雇 用 さ れ る 見 込 み の 者 へ と 変 更 し (二 〇 一 〇 年 三 月 ま で) 、 そ し て さ ら に「三 一 日 以 上」 (同 年 四 月) と 短 縮 し て い る か ら で あ る。 し か し な が ら、 実 際 には雇用の見込みを使用者の恣意的判断にゆだね、たとえフルタイム労働者でも派遣労働者には明文をもって適用 対象とはしていない。それは、一九五〇年通達の「反復継続して就労しない者であって、臨時内職的に就業するに すぎないも ( 7) の」として、非正規雇用労働者=家計補助労働者として想定していることに起因する。   雇用保険法では、フルタイム労働以外の労働者=生計を維持する労働者ではないと考えられた。それらの労働者 には、世帯主の正規雇用による賃金での生活が確保されれば、失業時の所得保障の必要性はないとされ、使用者が 恣意的に「雇用の見込み」がないと判断する構造も、大きな問題にはならなかった。しかし、現状を踏まえて、す べ て の 労 働 者 に 雇 用 保 険 法 を 有 効 に 機 能 さ せ る に は、 「雇 用 の 見 込 み」 の 期 間 を 短 縮 す る 形 式 的 な 変 更 だ け で は な く、通達により不明確な形式でしか規律されていないことにより、任意保険化している雇用保険の適用除外の法構 造を見直す必要がある。さらに、労働者に加入資格があることが事後的に明らかになっても、保険関係を遡及的に 成 立 さ せ、 事 業 主 に 保 険 料 を 負 担 さ せ る こ と を 回 避 す る 運 用 が な さ れ て い 8) る。 遡 及 的 に 法 律 関 係 が 成 立 し な け れ ば、雇用保険の受給権を実効的に保障することができないことは、被用者保険法各法と共通している。   (ⅲ)   被用者医療保険法も被用者年金保険法も非正規雇用者に適用されていないことが多い。それは、労働市場 では平等な労働条件が本来保障されなければならないが、家計を主として担う家計維持者であるのか、それとも家 計補助者であるのかにより、雇用保険法や被用者医療・年金法に加入する資格の有無を決定していることによる。

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  健康保険法も厚生年金法も、従来、パートタイマーに対する適用が争われてきた。法律では、パートタイマーに ついて被保険者資格の適格性を規定していないことから、適用除外に該当しない限り適用される。しかし、厚生労 働 省 の 部 内 通 達 (一 九 八 〇 年 通 達(昭 和 五 五 年 六 月 六 日 付 の 各 都 道 府 県 保 険 課(部) 長 あ て 内 翰) ) は、 労 働 時 間 が フ ル タ イ ム の 四 分 の 三 以 上 で あ れ ば 被 保 険 者 資 格 を 認 め る、 と す る 一 方 で、 こ れ に 該 当 し な い 者 で あ っ て も、 就 労 形 態、職務内容等をもって総合的に勘案して被保険者資格を認めるのを相当とする場合があるとしてい ( 9) る。法律では 適 用 を 除 外 す る 労 働 者 を 広 く 規 定 し て い な い が、 一 九 八 〇 年 通 達 に よ り、 そ の 基 準 (「四 分 の 三 ル ー ル」 ) に 該 当 し ない者を被保険者から除外する運用が一方でなされてきた。たとえば、行政が、会計検査院の指摘をうけて、被用 者医療・年金保険法に労働者を加入させ、保険料の負担を労使に課す行政決定を行った場合に、使用者が行政不服 を申し立てることがある。裁決例には、パートタイマーに対して被用者保険法の適用除外が慣行上認められてきた に も か か わ ら ず、 明 確 な 根 拠 も な し に 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (強 調 筆 者) 、 そ れ を 認 め な か っ た 点 で 加 入 資 格 が あ る と し た 原 処 分 は 妥 当 とはいえず、しかも資格取得の確認を遡及して行った点で著しく妥当性を欠くものと判断せざるを得ないとするも の が あ 10) る。 他 方 で、 「四 分 の 三 以 上」 と い う 基 準 に 該 当 し な い 者 に つ い て 被 用 者 保 険 各 法 の 適 用 を 強 制 し な い と 解 す る 立 場 か ら、 法 定 の 適 用 除 外 に 該 当 し な い パ ー ト タ イ マ ー が 保 険 加 入 を 希 望 す る 意 思 を 有 す る 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 こ と か ら (強 調 筆 者) 、 内 翰 を 根 拠 に こ れ を 拒 む こ と は で き な い、 と す る 裁 決 が あ 11) る。 内 翰 に よ る 基 準 は、 強 制 加 入 制 度 自 体 を 揺 る がしていること、さらに遡及実施により保険料を賦課することを許容できない運用がなされていることから、短時 間労働者を、事実上、任意加入とするような運用を正当化する結果になっている。    ( 3 )  雇用保険の機能と最低生活保障の課題   (ⅰ)   二 つ 目 の 課 題 は、 雇 用 保 険 が 従 前 保 障 機 能 を 果 た す 前 提 に、 「平 等 な 賃 金」 請 求 権 が 確 立 さ れ て い る の か

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を検証し、最低生活保障のあり方を同時に検討することである。雇用保険が適用された労働者が失業した場合に、 支給される基本手当の支給額は、前職賃金の一定の割合である。前職賃金を基準にした雇用保険による所得保障だ けでは、従前所得の低賃金化により支給水準も最低生活を超えない限界が内在されている。しかも、正規雇用と非 正規雇用の二階層に分断されていた段階から、正規雇用から非正規雇用への流動化が進み、正社員を含めた労働者 全体の賃金破壊が勧められ ( 12) た。日本では、最低賃金法は施行されているが、そこにはパート労働者、学生アルバイ トの補助的労働者の賃金を含めて規律しているので、自立型労働者がフルタイム労働により最低生活を超える水準 の賃金を保障する制度は不在である。   も っ と も、 低 賃 金 労 働 者 の 最 低 生 活 保 障 の あ り か た を 検 討 す る 前 に、 「従 前」 所 得 に つ い て 検 証 す べ き 点 が あ ろ う。すなわち、一つに、従前の賃金がそもそも違法に低い額であった場合には、例えば雇用保険を例にすれば、基 本手当の支給額の算定をする際の基礎におかれる賃金は、違法に低い賃金ではなく、適法な賃金でなければならな い。ドイツでは賃金代替給付は、実際に支払われた賃金額ではなく、適法に成立している賃金請求権によれば支払 わ れ る べ き 賃 金 が 基 礎 に お か れ る と す る 考 え 方 (「成 立 論( Entstehungstheorie )」 ) に た ち、 連 邦 社 会 裁 判 所 は 法 理 を 確 立 し て き た (後 述) 。 従 前 所 得 保 障 は「平 等 な 賃 金」 の 請 求 権 を 基 礎 と す る、 と い う 考 え 方 の 確 立 に い た る 判 決 の動向を紹介し、日本法に示唆をえたい。   二つに、そもそも短時間労働であるために支給額が低くなることがある。わが国では、従前所得水準原則に最低 生活原則を接合し、給付額は少なくとも最低生活を確保するにたりるものとする必要があると指摘され、労災保険 における給付基礎日額制度、雇用保険における賃金日額制度を機能させることが課題とされてき ( 13) た。   (ⅱ)   他方ですべての労働者に雇用保険法が適用されるとしても、雇用保険だけでは最低生活を確保できる水準

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にいたらないことがある。従前所得保障機能を果たす被用者保険と、最低生活保障をどのように制度を設計するの か、という課題が残されている。   雇用保険の失業手当が最低生活の水準に満たない場合、又は受給期間を満了した長期失業者に対して雇用保険に 独自の失業扶助を導入するのか、そしてそれと並んで稼働能力の有無にかかわらない一般的最低生活保障法をどの ように機能させるのか、は目下の焦点になってい ( 14) る。    ( 4 )  「失業」の要保障状況の捉え直しによる被用者医療・年金の課題   すべての市民に最低生活を保障する検討の前に、失業という要保障状況を次の視角から捉えなおし、雇用保険だ けではなく、関連する他の制度と接合することが三つめの課題である。失業時の生活保障システムは雇用保険だけ では解決できないと思われる。これには二つの課題がある。一つは、所得保障は、傷病に対しては被用者医療保険 が、障害・老齢については年金保険が分担している。しかし、傷病が治癒せずに健康上の理由から失業する又は傷 病状態が継続して求職活動が困難な程度にいたる等は、時間的に連続した要保障状況であるにもかかわらず、社会 保険・雇用保険法では所得保障を包括的に捉えられていない。その結果、たとえば、失業者が健康上の理由から潜 在的な失業 ( 15) 者になっているとしても、そうした状況は、雇用保険の失業でも、年金の対象である障害でもない、と いうことになる。しかし、こうした状況は、失業と連続して、稼働年齢の労働者に生じる就労の中断による所得保 障の課題といえる。さらに、失業を広く捉え直すと、失業は、稼働年齢だけではなく、その後にやってくる退職後 の老齢年金による生活にも影響を与えることが長期的課題になってくる。   二つは、わが国では、労働者が職を失うと、被用者としてカバーされていた医療保険・年金保険に加入する資格 も失う。失業による要保障状態は賃金喪失にとどまるものではない。失業による貧困の拡大がとくに問題になった

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のは、失業者世帯の医療保険料負担を軽減し、医療へのアクセスを保障することである。医療保険は、非正規雇用 者や失業者が加入してきた国保の保険料が高く、保険料を滞納し、被保険者証を返還したため、事実上の無保険者 となり、病院に行けない、ということが問題になってきた。これを表しているのは、生活保護開始時の医療保険加 入 状 況 が、 二 〇 〇 七 年 九 月 で は「未 加 入」 「そ の 他」 が 三 四・ 六 % と い う 高 い 割 合 で あ り、 都 市 部 で は 四 割 か ら 六 割という未加入率であ ( 16) る。日本では被用者医療保険か、住民保険の国保に加入することになっているが、無保険状 態が高い率でうみだされていること、そうした状態になっても救済されないままであったことが明らかになってい る。日本では住民として国保に加入することができるが、保険料を滞納していれば、給付はなされないことから、 失 業 の 長 期 化 は 無 保 険 者 を う み だ す こ と が 問 題 で あ る。 も っ と も、 失 業 者 世 帯 の 医 療 保 険 料 負 担 を 緩 和 す る た め に、国保の保険料を免除する制度が二〇一〇年に導入された。一定の負担軽減としては有効であるが、自己都合で 離 職 し た た め に 雇 用 保 険 の 給 付 を 制 限 さ れ て い る 失 業 者 に は 適 用 し な い、 と い う 雇 用 保 険 と 結 び つ い た 制 約 が あ る。 2   検討対象と検討順序    ( 1 )  検討対象   本稿では、以上のわが国の問題状況を踏まえて、ドイツの派遣労働を対象に失業保障のあり方を検討する。ドイ ツの派遣労働者を対象にするのは次の理由による。   まず、派遣労働は、ドイツにおいて二〇〇三年から実施されている労働市場法改革の影響を強くうけているから で あ る。 そ の 一 つ は、 ハ ル ツ Ⅰ ( Erstes Gesetz für moderne Dienstleistungen am Arbeitsmarkt BGBl. I 2002 S. 4607 )

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により、失業者を労働市場に統合する雇用対策の重要な一手段として派遣が位置づけられた。労働者派遣法の規制 が 緩 和 さ れ る と 同 時 に、 派 遣 先 従 業 員 と の 均 等 待 遇 原 則 を 明 文 化 し て い る (同 一 労 働 同 一 賃 金 が 派 遣 法 で 規 定 さ れ て い る(三 条 一 項 三 号、 九 条 二 号) 。 い ま 一 つ は、 二 〇 〇 五 年 か ら 実 施 さ れ て い る ハ ル ツ Ⅳ ( Viertes Gesetz für modern Dienstleistungen am Arbeitsmarkt BGBl. 2003 I S. 2954 ) により、求職者基礎保障法として社会法典二編が制定された が、同法は失業者だけではなく、現に就労している生活困窮者にも適用される。これらの二つの動きは、派遣労働 に交錯して表れている。それは、ハルツⅠにより変更された労働者派遣法は、労働協約により一定の賃金水準が確 保された仕組みを緩和し、派遣労働者の低賃金化・貧困化を生み出している。それを示しているのが、社会法典二 編による失業手当Ⅱを受給している派遣労働者の増加という現象である。   低 賃 金 労 働 だ か ら と い っ て、 世 帯 で み る と 生 活 が 困 窮 す る と は 限 ら な い。 し か し、 派 遣 労 働 者 は、 パ ー ト タ イ マーと比べると家計維持者が多く、困窮する可能性が低くな ( 17) い (Ⅱ章で後述) 。   このような派遣労働者の貧困化と、失業者の派遣を通じた労働市場への統合が、失業者・求職者生活保障に交錯 し て あ ら わ れ て い る。 二 〇 〇 五 年 か ら 施 行 さ れ て い る 社 会 法 典 二 編 (求 職 者 基 礎 保 障 法) か ら 派 遣 労 働 者 の 置 か れ ている生活状況を確認し、その背景にある問題を明らかにしたい。   二つに、派遣労働者の労働条件、とくに賃金水準や雇用の安定だけではなく、被用者保険・雇用保険への保障は 適 切 に な さ れ て い る の だ ろ う か。 派 遣 労 働 者 が 失 業 し た 場 合 に、 そ れ ま で 被 用 者 保 険 法 が 適 用 さ れ、 保 険 料 を 支 払っていたにもかかわらず、派遣労働者の雇用保険の請求権が成立しない、又は支給額が低いことにより、失業手 当 Ⅱ を 受 給 せ ざ る を え な い こ と が 問 題 に な っ て い る。 こ う し た 事 態 を 重 視 し、 DGB (ド イ ツ 労 働 組 合 総 同 盟) は、 派遣法の改正を求める立場を明確にしている。

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  このようにドイツでも日本と共通して派遣労働の問題が表れているが、大きな違いは、最低生活保障機能が派遣 労働者に果たされていることである。失業手当Ⅱを受給する権利が確立している。日本では、非正規雇用による労 働市場がひろまり、最低生活が可能な水準の賃金が取得できない労働者の最低生活保障も、失業時の保障もない場 合がある。   もっとも、ドイツでは派遣労働者に最低生活保障が機能しているというのは一面にすぎない。低賃金による貧困 化に対して、派遣労働者の派遣先従業員と「平等な賃金」請求権の実現にかかわる訴訟が提起されている面に注目 したい。これが本稿においてドイツの派遣労働者を検討対象にする理由の二つめである。派遣労働者に必要に応じ て失業手当Ⅱが支給されているが、その場合に、失業手当Ⅱを支給した労働行政から、使用者に対しても訴訟が提 起 さ れ、 改 め て 使 用 者 の 責 任 が 追 及 さ れ る わ け で あ る。 使 用 者 が 派 遣 労 働 者 の 均 等 待 遇 の 責 任 を 負 う こ と、 「平 等 な賃金」を基礎に保険料の負担責任を負う法主体であることが、改めて明らかになっている。ベルリン労働裁判所 二〇〇九年一二月七日決 ( 18) 定を契機に、派遣労働は大きな転機をむかえているように思われる。   三つに、 「平等な賃金」を基礎に失業時の所得保障をおこなうべきであることはもとより、 「平等な賃金」請求権 の確立は、失業以外の傷病、障害・高齢といった医療保険・年金保険といった被用者の権利の実現にも影響を与え る。つまり、ドイツでは社会保険が従前の生活保障機能を有する以上、現役の職業生活だけではなく、一時的に職 を喪失する失業・傷病時、そして後にやってくる退職後の生活保障の基礎に「平等な賃金」が設定されることが不 可欠となる。この点でドイツ法から示唆されるのは、まず、失業時の生活保障を規律するのは雇用保険であるが、 失 業 に 関 連 す る 要 保 障 状 況 を、 医 19) 療・ 年 金 と も に、 緊 張 関 係 に あ る と は い え、 連 続 的 に 社 会 保 険 = 被 用 者 保 険 と して被用者の従前生活を保障している。そして、被用者保険法における使用者の保険料懈怠に対し、行政と使用者

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間において多くの争いが提起され、連邦社会裁判所は厳しく保険料に関する使用者の責任を追及している。日本の ように非正規雇用者に対する被用者保険法の適用基準の除外についての慣行を理由に「任意」保険化する運用は、 早急な是正が必要である。   四つに、失業をどのように拡大して、被用者保険・雇用保険法で捉えるとしても、それでも最低生活保障法制度 がどのような役割を担うべきであるのかは、重要な課題として残される。ドイツでは、失業手当・傷病手当金だけ で は な く 障 害 年 金、 早 期 の 老 齢 年 金 開 始 と い う よ う に、 被 用 者 年 金 も 失 業 者 の 生 活 保 障 に 大 き な 役 割 を 担 っ て き た。しかし、大量失業が問題になった一九八〇年代に、生活保護以外に最低生活保障・基礎保障法の制度が不在で あることが問題になっ ( 20) た。一九八〇年代から、失業者の最低生活保障のありかたを、雇用保険の内部で最低生活保 障機能をはたすように改正するべきなのか、あるいは雇用保険とは別に新たに設計するのか、といった議論がなさ れた。二〇年以上経過した二〇〇五年には、失業に対応する社会保障制度をどのように設計するべきであるのかに ついて、回答が与えられた。失業への対応は、雇用保険から、失業手当Ⅱという租税による「求職者」支援という 公的扶助に重点を移すというものであった。二〇〇五年に失業手当Ⅱが導入された後に、雇用保険にとどまらず、 将来の年金制度を公的扶助以外にどのように最低生活保障機能を果たすように改革するのかも、改めて高齢者貧困 の予防の視点から議論が始まっている。多くの労働者が職業生活において経験する失業、月収が四〇〇ユーロ程度 の ミ ニ ジ ョ ブ (些 少 労 働) へ の 従 事、 あ る い は 解 雇 を 回 避 す る 措 置 で あ る 操 業 短 縮 ( Kurzarbeit ) の 経 験 は、 失 業 に 関連する事象であり、職業生活終了後の将来の年金額にも影響を与えるからである。従来ほど多くの労働者が、公 的扶助の基準を超える厚生年金を受給できる見込みがなくなることを想定して、厚生年金の制度をいかに設計する の か、 公 的 扶 助 (社 会 法 典 一 二 編) と い う 租 税 に 基 づ く 一 般 的 な 最 低 生 活 保 障 が ど の よ う に 機 能 す る の か、 が 焦 点

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になってい ( 21) る。二〇〇三年からの労働市場改革を通じて、ドイツは、あらたな社会保障制度の設計に興味深い素材 を提供している。    ( 2 )  検討順序   以上の点を、ドイツ法を素材に次の順序で検討する。   まず、ドイツ派遣労働者の低賃金化を、社会法典二編の求職者基礎保障法の適用から簡潔にみたうえで、その背 景を明らかにする。   派遣労働者に対する最低生活保障をドイツでは求職者基礎保障法が担っている一方で、そもそも派遣労働者が困 窮する要因の一つである低賃金化の構造が問われている。派遣の協約締結をめぐる労働裁判所の判断を契機に、使 用者、失業手当Ⅱを支給していた労働行政、労働者という三面関係において、派遣先の正規従業員との「平等な賃 金」請求権の実現が課題になり、労働行政における派遣労働者の使用者の賃金および保険料支払い責任が確認され ている。さらに、失業している元派遣労働者からすれば、本来支払われるべき賃金に相応した、失業手当の増額と いう変更処分を求めることも「平等な賃金」に基礎をおいた従前所得保障の課題になる。   これらの論点の前提にあるのは、ドイツでは日本と異なり、派遣労働者に対して雇用保険・被用者保険各法が適 用 さ れ る こ と で あ り、 被 用 者 保 険 関 係 に 対 す る 使 用 者 の 責 任 に つ い て 社 会 法 典 四 編 (社 会 保 険) に お い て 明 文 化 さ れていることである。保険料を使用者が「故意に」滞納するような、システムの機能不全に対して、法律で実効的 な シ ス テ ム を 明 文 化 し て い る。 保 険 料 の 故 意 に よ る 滞 納 に つ い て、 使 用 者 の 責 任 の あ り よ う を、 社 会 法 典 四 編 (社 会保険) を確認しておきた ( 22) い。   そして、傷病・障害・高齢といった要保障状況は、医療保険や年金保険が捉える事象であるが、派遣労働者の失

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業からみれば、それらの生活状況は連続したものであり、失業に関連して生じる、連続した要保障状況であると捉 える必要があることを検証す ( 23) る。ドイツでは、失業による所得保障の必要性への対応はもとより、失業することに より他の医療・年金保険に加入することが困難になることもまた、要保障状況として捉える議論が一九八〇年代か らなされてき ( 24) た。   最後に、職業生活に生じる失業、そして傷病、障害といった失業に関連する要保障状況や、その高齢期への影響 について被用者保険・雇用保険改革と並んで問題になってきた最低生活保障の議論をみながら、一九八〇年代から 二〇〇三年労働市場法改革を経た継続性と転換について検証し、日本法への示唆をまとめたい。 Ⅱ   派遣労働者の低賃金化への対応 1   派遣労働者の現状と課題    ( 1 )  派遣に関する協約による低賃金化・貧困化   (ⅰ)   ドイツの派遣労働者の低賃金化の現状をみておこう。   派遣労働者の雇い入れから半年間の賃金は、OECDの低賃金の基準である中位所得の五〇%の水準にも達して い な い (時 給 六、 四 〇 ユ ー ロ) こ と が 指 摘 さ れ て い 25) る。 フ ル タ イ ム の 派 遣 労 働 も、 そ の 七 七 % が O E C D の 中 位 賃 金 の三分の二未満の低賃金しか受け取っていな ( 26) い。   二〇〇六年の派遣労働者の被用者保険が適用されている派遣労働者の平均月収は一九九九年のそれよりも低い、 という報 ( 27) 告もあり、それによれば賃金のダンピングにより派遣先事業所が利益を得ようとし、派遣労働者の時給は

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五ユーロ未満だったという。   派遣労働者の賃金が低いのは、派遣労働者の職業資格によることも一因である。職業資格付けが低い又は資格が ない人もいるが、しかし六割以上の派遣労働者は職業資格を有しているにもかかわらず、その職業資格よりも低い 資格の職場でしか雇用されていな ( 28) い。そのため、賃金も低くなっている。   さらに重要なのは、後にみるようにドイツ労働者派遣法には均等待遇原則が明文化されているにもかかわらず、 派遣労働者と派遣先の正規従業員との賃金格差が大きいことであ ( 29) る。DGBは、このような低賃金化の原因は、主 として立法が、集団の交渉により、平等な賃金や均等遇原則から容易に離れる条件を作り出したことにあるとして い 30) る。   派遣労働者の増加が一時的な現象であれば、まだそれほどの大きな問題にならないのであろうが、派遣労働が、 現在のコアにおかれている正規雇用をしだいに追い出し、正規雇用にとって代わるのではないか、そして、労働市 場を不安定化させ、社会全体にとってマイナスになる、という危惧が示されてい ( 31) る。   (ⅱ)   連邦政府は、二〇一〇年に第一一次派遣労働の報告書をまとめてい ( 32) る。二〇〇二年一二月二三日のハルツ Ⅰでは、派遣につくことで、労働者に初めて又は再度の職業生活に開始する機会を提供することが期待された。派 遣 労 働 者 は、 二 〇 〇 四 年 と 二 〇 〇 八 年 を 比 べ る と、 倍 増 し て い る (三 八 五 千 人 か ら 七 六 〇 千 人) 。 し か も、 派 遣 労 働 者を採用しているのは大きな規模の事業所に増加している。派遣期間が三カ月未満の労働者が半数以上であるが、 失業手当Ⅱを受給するのは、派遣が低賃金であること以外にも、世帯員の人数や子の数等の状況によることも強調 されている (( 2 )で後 ( 33) 述) 。   他方で、派遣労働は、確かに、二〇〇三年ハルツⅠにより変更された派遣法の施行後、失業者に対する雇用の機

(17)

会 を 提 供 し、 し か も 派 遣 の 就 業 形 態 で あ る こ と を 理 由 に 被 用 者 保 険 か ら 除 外 さ れ る わ け で は な く、 す べ て の 労 働 法・社会保険法が適用される雇用形態での雇用を提供したとしている。政府報告が強調するように、派遣労働者に 労働法も被用者保険法も適用され、わが国の派遣労働者がフルタイム型非正規雇用者として労働者の権利の行使が 制約されているのとは大きな違いであることは確かである。しかし、それでも、派遣労働者が失業・疾病といった リスクが生じる可能性が高いことが社会問題になっているのである。派遣労働者の貧困化の一面は、派遣労働者が 就労しているにもかかわらず社会法典二編が定める求職者基礎保障法を適用されているという現状に表れている。    ( 2 )  派遣労働者の貧困化   派遣労働者の報酬が低くなっていることは、稼働能力のある者に対する公的扶助である失業手当Ⅱの受給者の増 加に見られる。いわゆるワーキング・プアの増加という現象は、ドイツでも問題になってい ( 34) る。社会法典二編は、 求職者に対して租税に基づく最低生活を保障する失業手当Ⅱを定めている。失業手当Ⅱの請求権は、失業者だけで はなく、無業者、そしてすでに就労しているが最低生活に満たない要保障状況にあれば、成立する。派遣労働者は 派遣による報酬と最低生活の水準との差額を失業手当Ⅱによりうめることから、そこでは失業手当Ⅱは賃金を上積 み す る ( aufstockern ) 機 能 を 果 た し て い る。 派 遣 労 働 の 賃 金 が 低 い た め、 派 遣 労 働 者 の 約 一 二・ 六 % が 失 業 手 当 Ⅱ を受けてい ( 35) る。この割合自体は大きくないようにみえるが、次の二点に注意が必要である。一つは、確かに、失業 手当Ⅱの受給者は、パートタイムの一形態である、被用者保険の加入資格がないミニジョブとよばれる月額四〇〇 ユーロ未満の労働に従事する者に多い ( 36) が、派遣労働者の失業手当Ⅱ受給者の九四%はフルタイムで就労している、 と い う 点 で あ 37) る。 二 つ は、 派 遣 労 働 者 や 有 期 雇 用 の 労 働 者 は、 ミ ニ ジ ョ ブ 従 事 者 と 比 べ る と、 家 計 維 持 の 責 任 を 負 っ て い る こ と に 特 徴 が あ る。 二 〇 〇 八 年 の 就 業 者 (一 五 歳 か ら 六 四 歳 ま で) を 雇 用 形 態 と 世 帯 類 型 に よ り 分 析 し

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た統計をみれば、有期雇用者・派遣労 働者は、同一世帯に就業している世帯 員 が い な い 割 合 が 高 い (有 期 雇 用 が 四 八・ 〇 %、 派 遣 が 四 五・ 六 %) (図 表 1 ) 。 あ る い は、 同 一 世 帯 内 に 就 業 者 がいたとしても、非正規雇用者であり (有 期 雇 用 一 三・ 四 %、 派 遣 は 一 二・ 六 %) 、 他 の 就 業 形 態、 と く に パートタイマーやミニジョブ従事者と 比べると、派遣は有期雇用と並んで、 同一世帯内に期間の定めのないフルタ イ ム 労 働 者 (標 準 雇 用 者) が い な い こ と が 多 い、 と い う 特 徴 が あ 38) る。 そ し て、EUの指標を用いて貧困の可能性 が 生 じ る と み な さ れ る 割 合 (中 位 賃 金 の 六 〇 % を 基 準 と し て、 世 帯 員 の 人 数 や 子の年齢により算出される) をみれば、 十八未満の子がいる夫婦世帯で最も貧 図表 1  就業形態別の世帯就労状況(2008年)(%) 世帯員の就労状況 労働者標準 タイマーパート ミニジョブ従事者 労働者有期 労働者派遣 就業者が他にいない 40.3 27.6 33.9 48.0 45.6 非典型就業者が他にいる 13.4  6.6  9.9 13.4 12.6 標準雇用者が他にいる 41.1 56.9 49.9 35.1 40.0 その他  5.2  8.9  6.3  3.6  1.8

資料出所:Wingerter, Der Wandel der Erwerbsformen und seine Bedeutung für die Einkom-menssituation Erwerbstätiger, Statistisches Bundesamt (Hg.), Wirtschaft und Sta-tistik 11/2009, S. 1096. 図表 2  就業形態及び世帯類型別の貧困に陥る可能性がある就業者の割合(%) 世帯類型 労働者標準 タイマーパート ミニジョブ従事者 労働者有期 労働者派遣 単身世帯  3.0 48.7 57.8 23.4  8.6 単親世帯 13.5 42.6 53.5 42.0 ― 子がいない夫婦  1.4  9.6 16.6  9.5 ― 子が一人いる夫婦  3.1  8.6 14.7 15.6 17.1 子が二人以上の夫婦  6.6  8.6 14.1 18.9 23.9 資料出所:図表 1 と同じ

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困の可能性が高くなっているのは派遣労働者であ ( 39) る (図表 2 ) 。   二 〇 〇 六 年 一 〇 月 の 低 賃 金 労 働 の 平 均 月 収 は、 従 業 員 一 〇 人 以 下 の 零 細 企 業 を 除 い て も、 一 三 〇 〇 ユ ー ロ で あ る 40) が、派遣労働者はたいてい同一世帯に就業者がいないので、自己の収入を他の世帯員に補助してもらうことはほ とんど考えられない。そのため、家計を維持する七万人のフルタイム派遣労働者に対して最低生活を確保できない 賃金を、失業手当Ⅱが上積みしている。この背景については、労働者派遣法の均等待遇原則の例外による協約締結 が重要な論点になる。 2   低賃金をめぐる最近の訴訟動向    ( 1 )  協約による派遣労働者の低賃金化   労働者派遣法は、二〇〇二年一二月二〇日に成立したハルツⅠ (二〇〇三年一月から実施) により、派遣労働の利 用可能な分野を拡大し、派遣期間の制限も撤廃している。しかし、このような規制緩和と同時に、派遣労働者の均 等待遇原則を労働者派遣法に明文化しているのが特徴であ ( 41) る。しかし、均等待遇原則の例外も設けられ、その一つ が、派遣労働関係に適用される協約を締結することにより、派遣先の正規従業員と異なる派遣労働者の賃金を含め た労働条件を取り決めることができるというものである。派遣分野では、二〇〇三年以降、協約に基づく低い賃金 が支払われるようになっ ( 42) た。二〇〇三年改正法の実施前は、協約の適用を受けない派遣元は、単純労働に対して低 い時間給の取り決めをすることが多かった。しかし、改正により、均等待遇原則の導入とその例外が設けられたた め、派遣元は、報酬に関する均等待遇原則の適用を受けるか、あるいは派遣労働者に対して独自の企業協約を締結 す る か が 迫 ら れ た。 そ の 結 果、 派 遣 労 働 者 に 対 す る 協 約 が 締 結 さ れ、 協 約 に 基 づ き 低 い 報 酬 が 支 払 わ れ る よ う に

(20)

なった。   そのような状況のなかで、派遣労働者に低賃金しか支払っていないことに関して、使用者の引き受けるべき責任 が 問 わ れ る 議 論 が 注 目 さ れ る。 そ れ は、 次 に み る ベ ル リ ン 労 働 裁 判 所 二 〇 〇 九 年 四 月 一 日 決 定 (以 下、 ベ ル リ ン 労 働 裁 判 所 二 〇 〇 九 年 決 定 と い 43) う) を 契 機 と し、 そ も そ も 使 用 者 と 協 約 を 締 結 し て い る 組 合 の 締 結 能 力 が な い こ と が 主 たる争点になったのが発端である。この決定は二〇〇九年一二月七日にベルリン・ブランデンブルグ州労働裁判所 により基本的に確認され、連邦労働裁判所に係争中である。二〇一〇年一二月に連邦労働裁判所の判断が出される 予定である。派遣元と派遣先の協定が無効であれば、労働者派遣法にもとづき派遣先労働者と「平等な賃金」請求 権が派遣労働者に成立する。それは、次の内容を労働者派遣法が定めていることによる。労働者派遣法は、派遣先 事 業 所 に お い て 派 遣 先 の 比 較 し う る 労 働 者 に 適 用 さ れ て い る 労 働 報 酬 を 含 む 主 要 な 労 働 条 件 よ り 劣 悪 な 労 働 条 件 を、 派 遣 労 働 者 に 対 し て 予 定 す る 約 定 は、 無 効 で あ る と 定 め て い る (九 条 二 号、 た だ し 二 号 後 段 は 例 外 を 規 定 し て い る。 ) 。 そ し て、 こ の 場 合 に、 派 遣 元 は、 派 遣 労 働 者 に 対 し て、 派 遣 先 事 業 所 に お け る 比 較 し う る 労 働 条 件 を 保 障 し なければならない (一〇条四項) 。派遣労働者は派遣元に対して、派遣先の従業員との均等待遇を要求することがで きる。 (注) ( 1 )  派 遣 労 働 者 が、 健 康 を 害 し た た め 仕 事 を 続 け ら れ な く な り、 生 活 保 護 の 申 請 に い た る 状 況 は、 た と え ば 平 成 二 〇 年 二 月 七 日 大 阪府知事裁決(賃金と社会保障一四六九号(二〇〇八年)三一頁以下)にも表れている。 ( 2 )  生 活 を 保 障 す る は ず の シ ス テ ム が、 か え っ て 人 々 を 排 除 す る 状 況 に あ り、 「逆 機 能」 で あ る と い う 批 判 が あ る(大 沢 真 理「希

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望が台無し―逆機能する生活保障システム」東大社研編『希望学』 (東大出版会、二〇〇九年)一五三頁以下。 )。 ( 3 )  本稿は、倉田聡『社会保険の構造分析』 (北海道大学出版会、二〇〇九年)一〇六頁の評価とは異なる。 ( 4 )  脇 田 滋「若 者 を め ぐ る 雇 用・ 労 働 政 策 の 変 遷 と 課 題」 脇 田 滋・ 井 上 英 夫・ 木 下 秀 雄 編『雇 用・ 社 会 保 障: 主 体 形 成 と 制 度・ 政 策の課題』 (日本評論社、二〇〇八年)六〇頁。 ( 5 )  脇田滋、同右五八頁。 ( 6 )  な お、 労 働 者 の「自 己 都 合 退 職」 に 対 す る 厳 し い 運 用 も 検 討 す べ き 課 題 で あ る。 ド イ ツ 雇 用 保 険 法 に お け る 有 期 雇 用・ 派 遣 を 対 象 と し た「自 己 都 合 退 職」 に よ る 給 付 制 限 に つ い て、 上 田 真 理「有 期 雇 用・ 派 遣 労 働 者 に 対 す る 失 業 時 所 得 保 障 に 関 す る 一 考 察」福島二二巻三号(二〇一〇年)四二頁以下。 ( 7 )  濱口桂一郎「労働市場のセーフティネット」労働政策レポート七号(二〇一〇年)三七頁。 ( 8 )  パ ー ト タ イ マ ー の 健 康 保 険 法・ 厚 生 年 金 法 の 加 入 資 格 を 遡 及 し て 取 得 さ せ た こ と に 妥 当 性 が な い と す る 裁 決 例 が あ る(た と え ば 全 国 社 会 保 険 協 会 連 合 会『社 会 保 険 審 査 裁 決 集』 平 成 一 二 年 度 五 頁 以 下、 七 頁 以 下、 一 四 頁 以 下、 平 成 一 四 年 度 一 七 頁 以 下) 。 他方で、遡及実施が信義則に反しないとしたものもある(平成八年度四頁以下) 。 ( 9 )  全国社会保険協会連合会『社会保険審査会裁決集』一四年度二〇頁以下による。 ( 10)   全 国 社 会 保 険 協 会 連 合 会『社 会 保 険 審 査 会 裁 決 集』 平 成 一 四 年 度 一 九 頁 以 下。 平 成 一 二 年 度 七 頁 以 下(平 成 八 年 一 〇 月 三 一 日) 、さらに同五頁以下(平成一二年八月三一日) 、平成八年度四頁以下(平成八年八月三〇日)も参照。 ( 11)   全国社会保険協会連合会『社会保険審査会裁決集』一四年度一九頁以下。 ( 12)   後藤道夫「賃金低下と子育て世帯の問題について」経済二〇〇九年一二月号三八頁。 ( 13)   高藤昭『社会保障法の基本原理と構造』 (法政大学出版会、一九九四年)七八頁以下参照。 ( 14)   駒村康平『最低所得保障』 (岩波書店、二〇一〇年) 。 ( 15)   さしあたり玄田有史「二〇〇九年の失業」労研五九八号(二〇一〇年)一四頁以下。 ( 16)   後藤道夫、前掲注 9 、四〇頁。

(22)

( 17)

 

Wingerter,

Der Wandel der

Erwerbsformen und

seine

Bedeutung für die Einkommenssituation Erwerbstätiger, Statistis

ches

Bundesamt

Hg.

), Wirtschaft und Statistik 11/2009, 1080, 1092.

( 18)   NZA 2009, S. 740ff. ( 19)   失業者が健康上の問題を抱えていることについて

Adamy, Leiharbeit und Abeitslosigkeit, 2010, S. 6

参照。 ( 20)   R. Hauser, Mindestleistungen im System der Sozialen Sicherung der Bundesrepublik Deutschland außerhalb der Sozialhilfe, 1980 ; Hauser u.a., Verarmung durch Arbeitslosigkeit, in : Leibried/Tennstedt, Politik der Armut, die Spaltung des Sozialstaats, 1985, S. 213ff. ( 21)   Waltermann, Mindestlohn oder Mindesteinkommen?, NJW 2010, S. 801, 805. 政 策 上 の 現 代 の 議 論 と し て は、 Opielka, Sozial -politik, 2004 ; Riedmüler/Willert, Aktuelle Vorschläge für eine Mindestsicherung im Alter, 2009 ; Antrag der Abgeordneten Mat -th ias B irk w ald u .a un d d er F ra kti on D IE L IN K E , S ch utz b ei E rw er bs m in de ru ng u m fa ss en d v er be ss er en -R isik en d er A lte rs ar m ut verringern, BT-Drucks. 17/1116 v. 18. 03. 2010. 国 際 的 に も、 I L O は、 経 済 危 機 下 に お い て 連 帯 に 基 づ く 賦 課 年 金 の 再 評 価 に 言 及している(

ILO, The financial and economic crisis: a decent work response,

2010, 35 )。 ( 22)   上田、前掲注三、三四頁以下。 ( 23)   わ が 国 で の 失 業 と 障 害 の 捉 え な お し に つ い て、 さ し あ た り 福 島 豪「ド イ ツ 障 害 年 金 の 法 的 構 造(三・ 完) 」 法 学 雑 誌 五 三 巻 三 号(二 〇 〇 七 年) 六 五 三 頁、 河 野 正 輝「社 会 保 険 の 将 来 像」 河 野 正 輝・ 吉 永 彌 太 郎・ 阿 部 和 光・ 石 橋 敏 郎『社 会 保 険 改 革 の 法 理 と 将来像』 (法律文化社、二〇一〇年)二〇〇頁。 ( 24)   Ruland, Die Sicherung des Arbeitslosen gegen sekundäre Risiken, ZSR 1980, S. 463ff.; Bieback, Rentenversicherung und die A bs ich er un g de s R isik os d er A rb eit slo sig ke it, in : A rb eit slo sig ke it als P ro ble m d er R ec hts - u nd S oz ialw iss en sc ha fte n, 19 80 , S . 1 55 ff.; K öb l, Ü be rg re ife nd e so zia le R isik en -ü be rg re ife nd er s oz ial er S ch ut z-e rlä ut er t a m B eis pie l d er A rb eit slo sig ke it, SD SR V B d. 33 ( 1990 ), S. 47ff. ( 25)   Weinkopf, Vanselow, ( Fehl

(23)

( 26)

 

Adamy, Leiharbeit und Arbeitslosigkeit, 2010, S. 6.

( 27)   Ministerium für Arbeit NRW : Zeitarbeit in Nordrhein-Westfalen, Strukturen, Einsatzstrategien, Entgelte, Dortmund 2008, S. 79. ( 28)  

Adamy, a.a. O., S. 8

は、派遣労働者の六二・五%は職業教育を修了しているとしている。

29)

 

Adamy, a.a. O., S. 4.

30)

 

Adamy, a.a. O., S. 5.

31)

 

Adamy, a.a. O., S. 7.

( 32)   BT-Drucks. 17/464. ( 33)   BT-Drucks. 17/487, S. 5. ( 34)   名古道功「労働者の生活保障システムの変化」社会保障法二四号(二〇〇九年)一三六頁以下。 ( 35)   BT-Drucks. 16/9657, S. 3. ( 36)   Bruckmeier u.a., Working poor : Arm oder bedürftig?, IAB-Diskussion Paper 34/2008, S. 17. フルタイム労働者で失業手当Ⅱを 受給するのは配偶者の就労状況、子の数など世帯状況によることについて、 Adamy, Familiäre Situation von arbeitslosen und er -werbstätigen Hartz-I

V-Empfängern, Soziale Sicherheit 2010, S. 174ff.

参照。

37)

 

Deutscher Gewerkschaftsbund, Temporary Agency Work in Germany,

Five years after deregulation, 2010, 4.

38)

 

Wingerter,

Der Wandel der

Erwerbsformen und

seine

Bedeutung für die Einkommenssituation Erwerbstätiger, Statistis

ches

Bundesamt

Hrsg.

), Wirtschaft und Statistik 11/2009, 1080, 1096.

( 39)   Wingerter, a.a.O., S. 1092. ( 40)  

Adamy, a.a. O., S. 6.

( 41)   大橋範雄『派遣労働と人間の尊厳』 (法律文化社、二〇〇七年)一〇三頁以下。 ( 42)   派 遣 労 働 の 協 約 に 関 す る 最 近 の 問 題 に つ い て、 川 田 知 子「ド イ ツ 労 働 者 派 遣 法 に お け る 均 等 待 遇 原 則 の 機 能 と 限 界」 季 労

(24)

二二五号(二〇〇九年)一一一頁以下参照。 ( 43)   NZA 2009, S. 740ff. ―うえだ   まり・法学部准教授―

参照

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