アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書
著者
山谷 修作
著者別名
Yamaya Shusaku
雑誌名
経済論集
巻
9
号
1
ページ
p133-154
発行年
1983-10
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005483/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja133
アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書
は じ め に山 谷 修 作
日 次 はじめに 1. コスティング手法の目的 2. コスティング・プロセスの相違点 3. コステインク。手法の選択 4. LRMCによる TDMC手法 (1) コスティング・ピリオドの決定 (2) 限界容量費用の算定 (3) 限界電力量費用と限界需要家費用の算定 (4) コスティング・ピリオドへの配賦 5. レート・デザイン (1) レーティング・ピリオドの決定 (2) 料金型式の決定 (3) 収入リクワイアメント調整 おわりに 1960年代末から 1970年代初頭にかけて費用逓増局面への移行とエネルギー 危機を経験したアメリカの電気事業では近年,時間帯別(
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:TOD)
料金体系を導入する動きがみられる。この制度は,一日のピーク侍,オフピ ーク時の時間帯ごとに,異なる電気供給コストを反映した異なる電気料金を 課するものであり,それによって時間により変化する電気供給コストをプラ イス・シグナルの形で、需要家に知らせ,電気の使用をピーク時間帯からオフ ピーク時間帯にシフトさせることにより,電気の使用パターンを修正する誘 因を需要家に提供し,かくして既存の非効率なピークロード用発電施設への 依存と将来の施設建設の必要性を低下させること,電気供給施設の建設を必要とさせるシステム同時需要責任に応じて需要家に新規施設建設のための負 担を公平に配分することを目的としてレる。こうした料金体系を採用・実施 する試みは, 1970年代後半のウィスコンシン,ニューヨーク,カリフォルニ アの諾州を鳴矢として,進歩的な規制当局を擁する諸外!においてなされてお り,公益事業規制政策法 (PURPA)に基づく連邦政府の推進政策の下で,す でに1982年秋までに,全米の年問販売量5億キロワy ト・アワー以上の大手 民営電力企業127社のうち, TOD料金の採用を決定した企業33社,規制当 局の認可を受けて実施した企業48社に達している(拙稿(1983.8J参照〉。な かでも,最も普及率の高いとみられるウィスコンシン州では,同州で版売さ れる総小売電気量のほぼ45パーセントが長期限界費用に基づく TOD料 金 の 適用を受けてし、ると見積られているほどである(同上参照〉。 小論は, このようなアメリカ電気事業のTOD料金の設定プロセスの経済 合理性を明らかにすることを目的とするものである。その場合,アメリカの 電力企業による TOD料金体系のデザインは必ずしもフランス電力公社の緑 料金やイギリス中央発電局の卸供給料金のように〔長期〕限界費用に基づく ものだけではなく,会計費用をベースとしたものも多数認められる。そこで, 小論ではまず,会計費用をベースとしたコスティング手法と限界費用をベー スとしたコスティング手法の TOD電気料金設定における意義の相違を検討 し,それから資源配分効率を高めることを目的とする限界費用原理に基づく レートメーキング〈料金設定〉のプロセスを解明するという手j債をとること にする。 1. コスティンゲ手法の目的 時間帯別 (TOD)電気料金を設定するためのコスティング(費用計算〉の方 法には,非TOD料金の場合と同様,会計費用 (accountingcosts)に 基 づ い たコスティング手法と限界費用 (marginalcosts)に基づいたコスティング手 法とがある。会計費用手法は,埋没費用手法 (embeddedcost method)とも呼 ばれ,特定の会計年度,通常は電力企業がその収入リクワイアメント〈所要 収入額〉を決定するために用レると同様の,
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テスト年」における電力企業の 帳簿に記録された総費用に基づくものである。これに対して,限界費用手法 は,電力企業の帳簿から得られるものでも,またそれと一致するものでもなアメリカ時間待別電気料金設定プロセス覚書 135 七年間を通じての施設使用の様々な水準における,施設の取替ない
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追加 の現在または将米コストおよび追加的:燃料のコストに基づくものである。雨 費用概念と TOD・非 TOD料金との組合せは表 1に示されるとおりである。 このようなコスティング手法を用いて, TOD電気料金が開発されるのであ る。だが,特定のコスティング手法を選択し,時間により異なる費用から料 金をデザインするためには,料金設定目的の明示的な評価と順位づけが必要 である。その意味で,目的による料金設定という考え方が重要となる。そこ で, TOD料金のベースとしての時間差異会計費用 (time-differentiatedaccoun -ting costs: TDAC)および時間差異限界費用 (time-differentiatedmarginal costs: TDMC)という 2つのコスティング手法の目的の相違点をまず明らかにして おこう。 まず, TDACの主目的は,需要家に対して,①電力企業にとって,ピー クロードを充足するためにはオフピークロードを充足するに必要とする以上 に設備投資しなければならないこと,および②ピーク時の平均発電コストは オフピーク時の平均発電コストよりも高いこと,をシグナノレすることである。 このようにして, TDAC料金はこれらのコストを個々の需要家に対して非 時間差異料金よりも,より公正に配分することになろう。これに対して, TDMCの主目的は,需要家に対して, ピーク時電気の追加的な 1単 位 を 供 給するに必要とされる資源のコストおよびオフピーク時電気の追加的なl単 位を供給するに必要とされる資源のコストをシク'ナルすることである。この ように, TDMCの目的はピーグ時使用がオフピーク時使用よりも高価なこ とを示すことだけではなく,代替財に比較した電気の限界資源コストを反映 表1 費用と料金の組合せ 料 金 非時間差異 (NTD)料金│ 時間差異 (TD)料金 費 用会(計A費
C 用~
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非(N時T間DA差C異)会料計金費用│
時(T間D差AC異〉会料計金費用 限(界M費C)用I
非(N時T間D M差C異〉限料界金費用│
時(T間D差M異C)限料界金費用 1)Snavely, King, Harris&
Associates, Inc. (1980J, pp.35-6.し,それによって資源配分の経済効率を改善することにある。要するに,
TDAC
,TDMC
両手法の相違は,それらの目的の相違の結果にほかならな い。TDAC
手法の目的は電力企業の帳簿に反映されているように,均等に 歴史的なレし将来コストを配分することであるのに対して,TDMC
の 目 的 は様々な時聞における追加的電気消費の資源コストを反映することである。 したがって,もし料金設定の目的が需要家に対してピーク時の電気使用が オフピーク時の電気使用よりもコストがかかることを知らせることにあるな らば,あるいはその目的がピーク時の電気使用を減少させることにあるなら ば,TDAC
手法で充分かもしれない。しかしながら,時間差異の目的に需 要家による電気の効率的な使用や電力企業による資源の効率的な使用が含ま れる場合には,TDMC
手法のほうがより直接的にこうした目的にかなうの である。いずれのコスティング手法を料金のためのベースとすべきかの最終 的な選択は個々の電力企業と規制当局の判断に委ねられており,様々な目的 の相対的な重要性を評価して判断がなされることになろう。 2. コスティンゲ・プロセスの相違点 時間差異料金のコスティング=レートメーキングのプロセスを明らかにす るためにまず伝統的な非時間差異会計費用(nontime-differentiatedaccounting costs: NTDAC)に基づいた料金が決定されるプロセスを整理し,それとの相 違点をピックアップすることにしよう。NTDAC
に基づいた料金の決定プロセスは,次の4
つ の 主 要 ス テ ッ プ を 持っている。 ① レートメーキングの目的およびそれの達成手段を決定する。 ② 電力企業の総収入リクワイアメントを決定する。 ③ 料金デザインのためのコストを決定する〈すなわち,機能別,要素別, 種別別にコストを区分する〉。 ④ 料金をデザインする。 以上のうち,ステップ①と②はTOD料金を開発する場合にも必要とされ2) Mal岳s,R_H_ and R.G. Uhler (1982J, p.26.
3) Ibid_, p.28.
アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 137 る。
NTDAC
とTOD
のコスティング方法の相違は主としてステップ③にあ る。NTDAC
料金の場合には,ステップ③において作業は4
つしかない。す なわち,(
a
)
需要家種別(customerc!asses)の決定, (b)コストの機能区分(func -tiona!ization)(たとえば,総会計費用を発電,送電,配電の各部分に配賦する), (c) コストの要素区分 (cla田i五cation)(たとえば,機能区分されたコストを電力量,需 要および需要家関連部分に区分する),但)コストの需要家種別への配賦〈たとえ 図 1 TDAC手法のコスト区分・配賦 ④需要家種別への 配賦一 一
-一 ・ 電 -一 -一
. 一 一 一 一
一 一
一 - - 一 一 発
一 一 一 一 一 一
一 - 一 一
① 機 能 区 分 @ 要 素 区 分 ②コスティング・ ピリオドへの配賦 出所:Mallω, J.R., D. Smith andR.G. Uhler [1981), p.V-5.ば,住宅用等に割り当てる〉である。これに対して, TOD料 金 の た め の コ ス ティングにあっては,さらに追加的な作業が要求されるのである。 TDAC手法はステップ③において2つ の 追 加 的 作 業 を 必 要 と す る 。 す な わち,コスティング・ピリオド〈費用計算時間帯〉が区分され,さらに時間に より変化するコストが,これらのコスティング・ピリオドに配賦されねばなら ない。 TDAC手法におけるコストの区分・配賦は,図1に示すようなプロセ スを経て料金設定のベースとして供せられるのである。すなわち,TDAC手法 l主一般に,時間差異会計費用の計算におレて,次の4つのステップを経由する。 ① 機 能 区 分 (functionalization) ② 要素区分 (classi五cation) ③ 共通費のコスティング・ピリオド (costingperiods)への配賦 表2 コスティンゲ二レートメーキンゲ・プロセス 非時間差異 時 間 差 異 ス テ ツ 7. (手会NT計D費A用法C)
手会(T計D費AC用法~
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手限T界DM費C法用〉 レートメーキング目的の決定とコスティ。 。 。
ング手法の選択 2. 収入リクワイアメントの決定。 。 。
3. 料金デザインのためのコストの決定 ① 需要家種別の決定。 。 。
② コストの機能区分。 。
③ コストの要素区分。 。
④ コスティング・ピリオドの決定。 。
⑤ kwあたりの限界需要関連費用の決定。
⑥ 需要家あたりの限界需要家費用の決定。
⑦ ピリオドごとの限界電力量費用の決定。
⑧ 各ピリオドへのコストの配賦。 。
⑨ 各種別へのコストの配政。 。
4. 料金のデザイン ① レーティング・ピリオドの決定。 。
② 料金型式の決定。 。 。
③ 収入リクワイアメント調整。 。 。
アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 13!t ④ 需 要 家 種 別 (customersclasses)への配賦 まず,ステγプ①(機能区分〉において,総収入リクワイアメントは発電, 送電,配電,その他といった,関連する機能に従って区分される。機能別コ ストのうち,発電費は実際に用いられる発電施設の建設・維持費および燃料 費などから,送電費は送電線,変電所等の建設・維持費などから,また配電 費は配電線,電柱,柱上変圧器等の建設・維持費,メータ一関連費,料金徴 収関連費などから,それぞれ構成される。こうした機能区分の目的は資産勘 定および運営・維持費勘定の構成要素をその事業活動上の機能に従って区分 することである。 ステップ②(要素区分〉ではさらに,各機能についてのコストが需要,電 力量および需要家の各関連コストに区分される。需要費用 (demandcosts)は, 需要家によりシステムの様々なセグメントに課せられる需要のキロワット (kw)に比例して変化するコスト部分であり,発・送電施設およびピーグロ ードを充足するために必要とされる配電施設についての投資的・固定的な経 費により構成される。具体的には,減価償却費,設備投資額の金利および報 酬,管理および総務費の一部分などがこれに含まれる。電力量費用 (energy costs)は,需要家種別の消費キロワット・アワー (kwh)に 比 例 し て 変 化 す るコスト部分であり,主として燃料費および燃料処理費,用水費,発電所運 転維持費の一部から構成される。また,需要家費用は,電気の供給を受ける 需要家の数にほぼ比例して変化するコスト部分であり,一般配線の一部,引 込線および変圧器の建設・維持費,メーター設置費,検針・料金徴収関連費 を含む。ステッフ。①で、機能別に区分されたコストは,この段階において,供 給されるサーピスの計測およびコスト規定が可能な特性,すなわち需要の kw,消費量のkwh,および需要家の数と関連づけられることになるが,この ような過程がメーターから得られる情報によってはじめて可能となることは いうまでもない。 ステップ③〈コスティング・ピリオドへの配賦〉では,共通費 (jointcosts)が コスティング・ピリオドに配賦される。共通費とは,あるひとつのサーピス 供給活動のみと関連づけることが不可能なコストのことであり,たとえば発 6) 木村弥蔵(1972),p.295.
電コストはこのようなコストである。発電コストは一般に異なる需要家種別 への供給に関しても‘一臼の異なる時間の電気供給に関しでも共通してレる。 なぜならば,総コストは需要家または時間の各カテゴリーに対するサーピス 量のいかんに関係なく発生するからである。このステップは伝統的な非時間 差異.コスト・オプ・サーピス・スタディーにおいては実施されないものであ る。 ステップ④〈需要家種別への配賦〕では,ステップ③において配賦・区分さ れたコストが需要家種別ごとに配賦される。配賦要素は各コスト・カテゴリ ーにつし、て決定される。これらの配賦要素は電力量費用および需要費用につ レての各需要家種別の責任を表わしている。 さて,以上に述べた TDAC手法のコスティング・プロセスと TDMC手 法のそれとの相違点は次のようである。 TDMC手 法 も ま た 当 然 に コ ス テ ィング・ピリオドの区分を必要とする。しかしながら, TDMC手法は, NTDAC手法や TDAC手法で用いられるようなコストの機能区分および要 素区分を必要とはせず, kwあたりの年間限界需要関連費用,タイム・ピリオ ドごとのkwhあたりの限界電力量費用,およびl需要家あたりの年間限界 需要家関連費用を直接計算する。こうした限界費用は生産量の小さな変化に ともなう総費用の変化部分として定義される。需要関連限界費用は容量費用 責任に基づいてコスティング・ピリオドに割り当てられる。それから,許容 される収入を回収するように必要な調整を行なって,料金がデザインされる。 なせ守なら,規制当局が設定した収入リクワイアメントと限界費用に等しく設
7) この点に関して, Malko, J.R., D. Smith and R.G. Uhler (1981]は次のよ うに述べている。「一日または一年の異なる時閣に供給される電気は共通生産物 (ioint products)と考えることができる。なぜなら,一日のある時間に電気を供 給するに必要とされる設備および関連する固定費の多くは一日の他の時間に電気 を供給するためにも用いられるからである。かくて,時間差異コスト・オブ・サ ーピ、ス・スタディーにおける重要課題のひとつは, ¥,、かにして固定費または共通 費を,一日の異なる時間に電気を消費する需要家に則氏するか,である。
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(pp. V-27-8. )アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 141 定された料金から 1~} られる収入とは通常は一致しなし、からである。限界費用 がコスト要素ごとに計算される場合,各コスト要素の合計は設定された収入 リグワイアメントとは一般に異なるため,料金設定においては,コスト要素 のいくつかまたはすべてが,収入の過剰または過少回収を回避するために調 整されねばならないのである。表2には NTDAC,TDACおよびTDMCの 各コスティング=レートメーキング・プロセスが一覧できるが,それぞれの プロセスの聞の相違は,料金設定目的の相違を反映したものにほかならない。 3. コスティンゲ手法の選択 TOD料金設定のためのコスティング手法にTDAC手法と TDMC手法と があること,すなわちTOD料金は会計費用に基づいても, また限界費用に 基づいても設定可能であり,その場合同手法問の選択が料金設定目的に照ら してなされねばならないことはすでに述べたとおりである。現代の電気料金 設定目的のなかでも,最も重視されねばならないのは次のものである。第一 に,電気料金は,資源配分効率を高めるべく,需要家に対して電気供給の真 の経済コストをシグナルし,電気の供給と需要を効率的にマγチさせるもの でなければならない。第二に,電気料金は,需要家聞の公平を確保すベく, システムに課する負担に応じて需要家聞にコスト=料金責任を配分するもの でなければならない。第三に,電気料金は収入リクワイアメントを満たずに 足る料金総収入をあげるものでなければならない。 以上のような,最も重要と思われる3つの料金設定目的に照らしてTDAC 9) Ibid., p.27. 10) TOD料金設定のベースとしてTDAC手法とTDMC手法とを共に用いること も可能である。その場合,一方の手法が出発点として選択され,他方の手法が料 金デザインにおいてコストの修正をガイドするために用し、られることになろう。 その具体的な適用例についてはMalko,J.R., D. Smith andR.G. Uhler[1981]. pp. ¥ID-11-2を参照されたい。 11)電気料金の設定目的に関する代表的な見解は. Bonbright, J.C.[1961], pp. 291-2に述べられているが,最近ではMunashinghe,M. and J.J. Warford [1982J, pp. 10-1iこ.長期限界費用原理を提唱する立場からの注目すべき論述が みられる。
142 手法と TD班C手法の長短を比較してみよう。まず, TDMC手法に基づい た料金は,第一の資源配分効率目的と整合的である。伝統的な会計費用方式 に基づく TDAC手法では,歴史的コストまたは埋没コストの回収に関心が 払われ,将来資源については過去と等しく安価または高価であるとされるた め,過剰投資と浪費,または過少投資と不足としろ追加的コストがもたらさ れるであろう。これに対して,眼界費用に基づく TDMC手法では,需要家 の決定によって使用または節約される将来資源の量が重視され,稀少な資源 の浪費が回避されることに役立つ。このような意味で, TDMC手 法 は ま た 省エネルギ一目的とも整合的である。需要家に対するシグナノレとしての役割 をはたす資源配分効率上望ましレ料金は,将来資源の経済価値に関連づけら れるべきであり,このような観点からは TDAC手法よりも TDMC手 法 の 』まうがこのましいといえる。 TDMC手法に基づく料金はまた,第二の公平目的をも満足させる。 TDAC 手法では様々な需要家間への会計費用の配賦が恋意的になされるという難点 があるのに対し, TDMC手法を用いた場合には将来消費の資源コストが可 能なかぎり需要家がその電力シス
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ムに課せる追加的コストに従って需要家 聞により公平に配賦されるであろう。 たしかに,もし第三の収入リクワイアメント目的が重視されるとすれば, TDMC手法よりも TDAC手法が TODレートメーキングのために選択され るかもしれない。しかしながら, TODレートメーキングの本来の目的は資 源配分効率を高め, ピーク責任に応じた公平な負担を実現することであるか ら, TODレートメーキングのためのコスティングは TDMC手法によって なされるのが適当である。そして,収入リクワイアメントの達成については, レートメーキングの過程で,これのための調整を行なうことになろう。 ところで, TDMC手 法 を 選 択 す る と し て , そ の 場 合 に 短 期 限 界 費 用 (SRMC) と長期限界費用 (LRMC)のレずれが適切かとしう問題が残されて いる。電気のある特定の kwhを供給するための限界費用とは,厳密にいえ ば,そのkwhを供給する結果として発生する追加的な社会的コスト (addit-12) Munashinghe, M_ and J.J. Warford (1982J, p.ll. 13) Ibid., pp.11-2.
アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 143 tional social costs)である。このようなコストには,電力企業にとっての明示 的 (explicit)な貨幣コストだけでなく,追加的なkwhが供給される時間に おけるシステムの予備キャバシティー〈供給能力〉の 1kwの減少によりもた らされる様々な程度のシステム・アウテージ(供給遮断,停電〉の可能性の増 加に帰せられるコストなどの黙示的 (implicit)な社会的コストも含まれ宮。 したがって,ある特定の kwhを供給するためのSRMCとは,それを供給 するための電力企業にとっての追加的な明示的コストと,様々な程度のアウ テージの可能性に帰せられる「アウテージ・コストJ(outage costs)の増加分 とをプラスしたものにほかならない。これに対して, LRMCとは,ある特定 のkwhに関して,それを供給するための電力企業にとっての追加的な明示 的コストと, 1 kwだけシステム・キャパシティーを増加するための年間コ スト部分とをプラスしたものである。最適(または長期的均衡〉以外の一切の 条件の下で, LRMCとSRMCの聞には何らシンフ。ルな関係が存在しない。 たとえば,もし電力企業が余剰キャパシティーを有する場合にはSRMCは LRMCを下回るであろうし,他方,深刻なキャパシティーの不足に直面し ている電力企業についてはSRMCはLRMCを上回るであろう。 SRMCに基づいたTDMC手法は,電力企業がキャパシティーの大規模な 変更を実施する能力が限定されていること,並びにキャノ宅、ンティーの追加は ひとつには既存施設の特性に依存することを前提にしている。この手法は, 電力企業の先行きのコスト状況を反映するために将来の数ヵ年にわたる SRMCを算定する。他方, LRMCに基づいたTDMC手法は,すべての新 規キャパシティーの拡張が最適になされることを前提として,電力企業が電 気の1増分を供給するに要する「純粋なJLRMCを計算する。 LRMCによ るTDMC手法には,将来コストが長期にわたって取り扱われるので,結果 的な料金が長期的にきわめて安定的となる傾向がある。長期間にわたるコス トのこうした平坦化は,電力システム投資の「一括性J(Iumpiness)または 大規模性が存在するために特に重要であるとされる。 14) Crespi, G. [Dec.4, 1980J, p. 19. 15) Malko,工R., D. Smith andR.G. Uhler [1981], p. VI-24. 16) Ibid., p. VI-35. 17) Munashinghe, M. and J.].羽Tarford0982J, p.12.
4. LRMCによる TDMC手法 TODレートメーキンクeのための適切なペースとして LRMCが 選 択 さ れ たとしよう。 LRMCによる TDMC手法においては,料金デザインのための コストの決定プロセスは,①需要家種別の決定,②コスティング・ピリオド の決定,③kwあたりの限界需要関連費用の算定,④需要家あたりの限界需 要家関連費用の算定,⑤ピリオドごとの限界電力量費用の算定,⑥各ピリオ ト。へのコストの配賦,よりなる。これらのステップのなかでも,最も困難な 作業が要求されるのは,コスティング・ピリオドの決定, kwあたりの限界 需要関連費用の算定,および各コスティング・ピリオドへの限界需要関連費 用の配賦,の 3ステップである。 (1) コスティング・ピリオドの決定 時間差異コストを計算するためにはコスティング・ピリオドを決定しなけ ればならない。理論的には,システム限界費用は各電圧水準につレて,そし てまた年間kwhが供給される8,760時間の各々について異なるであろう。し かし,このような多数の異なるコストの計算は,多数のレーティング・ピリ オドを持った料金が実際の運営上不可能であり,需要家を混乱させるために 不要である。かくて少数の差異料金のみが実施可能であるため,レート・ア ナリストは時間および電庄水準を少数のコスティング・カテゴリーに集約し て,それらについてコストを計算することになる。コスティング・ピリオド については,最適な構成を決定するための厳格な基準というものは存在せず, 正確さと筒潔さの問に不可避的なトレードオフが存在する。 実際の作業としては,近似した限界費用を持つ連続的な時間および電圧水 準を寄せてグループ化L,限界kwhコストが相当に異なる時間ないし電圧 水準について異なるコスト・カテゴリーを設定することになる。通常は, 3 18) Crespi, G. (Dec. 4, 1980J. p.20を参照されたい。 Crespiはこれら 3つのス テップにおいて,主観的な判断がレート・アナリストに要求されると指摘してい る。 19) Crespi, G. (Dec. 4, 1980J. p.20. 20) Crespiは,この段階において主観的な判断が下されねばならず,こうしたコス ト・カテゴリーの選択が料金審査において問題とされることは避けがたいであろ うと指摘している (Ibid.)。
アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 145 "-'4の電圧水準および2"-'5のタイム・ピリオドについてコストを計算する ため,合計では 6'"'-'20のコスティング・カテゴリーが存在する。各カテゴリ ーの中では, kwhあたりの「平均」限界費用が当のカテゴリーに含められる kwhの限界費用の加重平均をとることによって計算される。 コスティング・ピリオドの決定は,コスティング・プロセスの中でも最も 主観の入りやすい,困難な作業であるが,ニューヨーク州ロングアイランド 地域で電気を供給している LongIsland Lighting Company (LILCO)では, ①コスティング・ピリオドの数がメータリングの実施可能性とマッチするか どうか,②コスティング・ピリオドが kw責任とマッチするかどうか,③コ スティング・ピリオドが kwh責任とマッチするかどうか,④コスティング・ ピリオド‘が需要家にマッチするかどうか,⑤代替的なコスティング・ピリオ ドの聞に整合性を維持するかどうか,という 5つの基準に照らして決定して いる。 LILCOでは.メータリングの実施可能性と整合的なコスティング・ ピリオドの数が決定された後,各タイム・ピリオドについて相対的な容量費 用を計測するために,①各時間における余剰キャパシティーを持たない相対 的可能性,および②各時間についてのピーグロード水準に接近する相対的可 能性.という 2つの指標を用いている。余剰キャパシティーなしの高い可能 性を持つ時間はピーグ・ピリオドに割り振られ,残りの時間はオフピークお よびインターきディエートといった,しかるべきカテゴリーに割り振られる。 同時に,各時間についての運転費用も分析され,高い運転費用を持つ時聞は ピーク・ピリオドに入れられ,その他の時聞はしかるべきピリオドに入れら れる。コステイング・ピリオドの最終的決定は,このような容量・運転費用 分析の結果に基づくと同時に,また需要家のニーズにも基づレてなされる。 この最終ステッフ。は無論判断を要するものである。 (2) 限界容量費用の算定 電気供給の限界容 iIE費用を算定するための手法ーとしては, Cicchetti,
c
.
J
・ -W.J. Gillen and P. Smolensky (CGS) (1977J により開発されたモテツレと National Economic Research Associates (NERA)により開発されたモデル 21)LILCOにおけるコスティング・ピリオドの決定方法については, Malko,J
.
R., D. Smith and R.G. Uhler (1981]Ch. ¥n並 び にLILCO経済調査部長Robert E. Ashburn氏よりのヒアリング (1982年12月30日実施〉に基づく。が代表的であるの NERAモデルは, ピークロード用のガス火力発電所の kw あたり年間平均コストに,関連する増分送・配電用投資のkwあたり年間平 均コストをプラスしたものを新規キャパシティーの kwあたり年間容量費用, すなわち限界容量費用の算定値として用いる。このモテツレの強みは,新規ピ ークロード用ガス火力発電所のコストの決定が比較的容易な点にあったが, 1978年に制定された発電所・産業用燃料使用法 (Power Plant and Industrial Fuel Use Act)により,もはやこうしたピークロード用発電施設が建設でき ないために,このようにして得られる仮設的な数値が現実のシステム限界容 量費用とし、かなる関係を持ちうるか,疑問とされるようになった。これに対 して, CGSモデルはシステムの現実の拡張に基づいており,モデルのコン ピュータ利用が容易なために多くの電力企業並びに規制当局によって採用さ れるところとなっている。ここではCGSモテ、ルにならって限界容量費用の 算定の方法を整理しておこう。 CGSモデルで、は,システム・プラナーが電力企業のキャパシティー拡張計 画において発電施設の運転開始日を繰上げ、または繰延べ調整することによっ て需要の変化に対応するものと想定される。このような調整に関連するコス トの変化部分こそ,生産量の変化により生ずる限界容量費用にほかならない。 具体的な算定方法はこうである。まず,ひとつは通常型の,レまひとつは 一年進歩した型の, 2つの発電施設からのそれぞれのコストの流れの差異の 現在価値を計算する。その場合,発電施設の建設計画の変更により 2種類の コストが生ずる。第一に,発電施設の将来の取替に関連するコストも含め, 資本支出をl年繰り上げることに関連するコストが生ずる。第二に,新規発 電施設を1年繰上げ運転することから運転費用の節約が生ずる。かかる節約 は,当の新規発電施設が給電計画において効率の劣る施設にとって代わった 場合には,燃料費の減少を反映するものであり,建設計画変更の前後におけ るシステムの将来の給電状況をシミュレートすることにより計算される。新 規のベースロード発電施設は,本来の能力で運転できるようになるまでに数 年を要することもあり,コストの計測はありうべきあらゆる効果を含めるべ く充分な長期間に及んでいる。 22) Cicchetti, C.J., W.J. GilIen and P. Smolensky(1977J, pp.7-18による。 23)一連の関連する資本プロジェクトをl年繰り上げることから引き起こされる将
アメリカ時間*I]JI電気料金設定プロセス覚書 147 次に,スケジューノレ調整の純コストを得るために,発電施設の繰上げ‘運転 の資本費用から燃料費の節約分が差し引かれる。こうして得られた価値額を 追加的発電施設のキャパシティーにより除せばkwあたりの限界容量費用が 得られる。それから,この限界容量費用比電気供給の中断を回避すゑため に,供給予備率 (reservernargin)を織り込むべく一定の係数を乗ぜ、られ,最 後に,各電圧水準についての限界容量費用を決定するために, ピーク時につ いて計算された送電ロス(lineloss)采数を乗じられる。 上述の算定プロセスはひとつの発電施設の調整のみを考慮したが,もし需 要の変化が複数の発電施設の調整によって充足される場合には,各発電施設 の調整に関連するコストの加重平均としてキャパ、ンティーの限界費用を計算 することになる。ある L、は,電力企業が他の電力企業との短期的な電力購入 契約により需要の変化に対応するケースも考えられよう。追加的なキャパシ ティーの源泉が他の電力企業から購入された電力である場合には,限界費用 はたんにそのキャパシティーに対して支払われる価格ということになるF こ のような場合の適切なコストは,既存の契約の下でのkwあたり価格ではな く,追加的購入に対して支払われる価格である。
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)
限界電力量費用と限界需要家費用の算定 限界容量費用の算定が大きな困難を伴うのと比べ,限界電力量費用と限界 来の各年についての追加的な年間資本支出,および非効率な発電キャパシティー を当初計画よりも 1年繰り上げて取り替えることから生ずる追加的な燃料の節約 の年額を計算するためには,電力企業のアナリストは最低10年から 15年先につい ての完全な電力システム拡張計画,各計画資木追加の資本コスト,および既存並 びに計画資本施設についてのかかる期間にわたる年間燃料・運営維持支出見積を 持たねばならないであろう。こうした数値の計測は技術的および政治的な不確実 性も伴って,きわめて困難な作業であり,従来しばしば限界費用原理の反対者た ちの攻撃材料となってきたところでもある。こうした問題点についての詳細は, Crespi, G. (Dec. 4, 1980), p.22を参照されたい。 24)いまかりに,供給予備率が15パーセント,限界容量費用が年間 kwあたり 10.61 ドノレと計算されたとすれば,供給予備率を含めた限界容量費用は 10.61ドルx
(l+0.15)=12. 20ドル となる。 25) Cicchetti, C.J., W.J. Gillen and P. Srnolensky[1977), p.9.需要家費用の算定は比較的容易で、ある。限界電力量費用とは,追加的な電力 量
kwh
を供給するために既存の施設を運転するに要するコスト〈運転費用= 燃料費+運営・維持費〉のことである。電力システムは熱効率(
h
e
a
tr
a
t
e
)
の異 なるいくつかの発電施設を有しており,それらの施設は負荷水準の変化に対 応して運転費用を最小化するように組み合わされて運転される。ピーク・ピ リオドにおける限界電力量費用は,負荷の増分に対応する増分ピークkwh
を 充足するために最後に運転される発電施設〈たとえばガス・タービン〉の運転 費用である。また,オフピーク・ピリオドにおける限界電力量費用は,負荷 の増分に対応する増分オフピークkwh
を充足するために運転される最小効 率のベースロード用発電施設の運転費用である。これらの運転費用は年聞の 各運転時間にZ
L
、て電力企業により提供されるシステム・ラムダ情報に基づ いて計算される。かくして得られた限界電力量費用は,様々な電圧水準で供 給される電気の限界電力量費用を得るために,送電ロス乗数を乗じられなけ ればならない。 限界需要家費用は, 1新規需要家を追加することに関連するコストである。 需要家費用は電気需要の水準(
k
w
)
ないし量(
k
w
h
)
と特に関連しないコス ト要素である。したがって,かかるコストは容量費用や電力量費用と同じ意 味でマージナルに捉えることができない。メータ一関連コストや料金徴収関 連コストなどの需要家関連のコストは,直接的に追加的な需要家に帰属させ ることが可能である。 (4) コスティング・ピリオドへの配賦TDMC
コスティングの最終作業は,kwh
あたりの限界容量費用および限 界電力量費用を各コステ」ング・ピリオドごとに合計することによって完了 する。TDMC
手法の下でのコスト配賦はTDAC
手法の下で必要とされるそ れとは全く異なっている。TDAC
手法では,共通費のコスティング・ピリ オド並ひ、に需要家種別への2段階の配賦作業が必要とされるのに対して,TDMC
手法では,限界費用を各コスティング・ピリオドに配賦する作業が 必要とされるだけである。その場合困難な作業は,限界容量費用,すなわち 新規システム・キャパシティーlkw
の年間限界費用の各コスティング・ピ リオドへの配賦である。 CGSモテ、/レで2
6
)
C
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4.1
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アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 149 ィング・ピリオドの全時間に均等に配賦する方法がとられる。このモデノレで、 は , こ の ピ リ オ ド 内 の ど の 時 間 も 現 実 の キ ャ パ シ テ ィ ー を 決 定 す る シ ス テ ム・ピーク時間である可能性を等しく持っており,このピリオド外のどの時 間もシステム・ピークになるポジティープな可能性を持たない,と想定され ている。
CGS
モデルは,新規システム・キャパシティーの kwあ た り 限 界 費 用 を ピーク・コスティング・ピリオドに割り当てられた時間数で除して,このピ ーク・ピリオドに供給される1kwhあたりの限界容量費用を得る。ピーク・ ピリオド電気の1kwhの総限界費用は,この限界容量費用に,このピーク・ ピリオドに生産された電気についての「平均J
限界電力量費用を加えること により計算される。 5. レート・デザイン コスティングのプロセスが完了すると,TOD
料金のデザインが可能とな る。このレート・デザインには,①レーティング・ピリオドの決定,②料金 型式の決定,③収入リグワイアメント調整,が含まれる。(
1
)
レーティング・ピリオドの決定 レーティング・ピリオドはコスティング・ピリオドと同じでもよいし,ま27) Malko, J.R., D. Smith and R.G. Uhler (1981)は. CGSモデノしにおいてす べての限界容量費用がピーク・ピリオドに割り当てられているぷに関して,オフ ピーク・ピリオドにおける負荷の増大がキャパシティーの追加を必要とするほど にリライアピリティー(供給信頼度〉を減少させる可能性を無視している,と指 橋している (p.VI-26)。なお,この点に関しての理論的展開については,山谷修 作(1983.8)を参照されたい。 なお,限界容量費用を各コスティング・ピリオドに配賦するためのいまひとつ の方法として.NERAモデノレがある。同モデノレは,各コスティング・ピリオド内 の時間についての平均的な供給停止(loss-of-Ioad)の可能性に比例して限界容量 費用をコスティング・ピリオドに割り当てる。しかしながら,現在大部分の州公 益事業委員会はCGSモデルまたはその変型をf!i,¥、て作業している。これは主と して. CGSモデルの場合,必要とされるコンピュータ・ソフトウェアが NERA モデルのそれよりも相当容易かつ安価に別用可能なことによる。 Crespi,G_ [Dec_ 4, 1980), p.21.
主こ異なってもよく,複数のコスティング・ピリオドを含んで決定してもよい が,コスティング・ピリオドを分割すべきではない。レーティング・ピリオ ドの決定においては,①実施上の妥当性,②ピリオドの幅,③需要家の理解, の3点に特に注意が払われる必要がある。まず,レート・デザイナーはレー ティング・ピリオドの選択においては,レーティング・ピリオドが多すぎて メータリングとビリγグに必要とされるコストを大幅に増加せしめることが ないかどうか,必要な使用量の計測を提供するメーターが利用可能かどうか, あるいは複雑なメータリングのコストが正当イじされるかどうか, といった点 に照らして実際の運営上の妥当性を考慮しなければならない。また,実際の 運営上実施可能なレーティング・ピリオドであっても,狭すぎるピーク・ピ リオドは他のピリオドへのピーグの移動を引き起こすかもしれないし,また 広すぎるピーク・ピリオドは高い料金に反応してロードをどーグ・ピリオド から他のピリオドヘシフトさせる機会を需要家に与えなし、かもしれない。し たがって, ピーク・ピリオドの幅をどのように決定するかも重要である。さ らに,レーティング・ピリオドの選択においては需要家の理解も大切である。 多すぎるピリオド,あるいは変化する境界を持つピリオドは需要家を混乱さ せることになるのそのような場合には,需要家は適切な選択を持って料金に 反応することができなくなり,
TOD
料金の制度を全面的に拒否するかもし れない。 以上のような諸点に充分に配慮したうえで,合理的なレーティング・ピリ オドが決定されることになろう。 (2) 料金型式の決定 商工業用需要家に対しては,一般に需要料金と電力量料金の二本立ての料 金型式が採用されるケースが多いが,ウィスコンシン州の MadisonGas and Electric Companyのように,需要家料金を別立てにして需要料金,電力量 料金,需要家料金の三本立ての料金型式をとることも可能である。需要およ び電力量の二本立て料金の場合には,原則として需要料金は限界容量費用と 限界需要家費用を反映し,電力量料金は限界電力量費用を反映して設定され る。また,需要,電力量および需要家の三本立て料金の場合には,原則とし て需要料金が限界容量費用,電力量料金が限界電力量費用,需要家料金が限 界需要家費用をそれぞれ反映して設定されることになる。アメリカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 151 他方,住宅用需要家に対しては,一般に固定料金または需要家料金と電力 量料金との二本立ての料金型式が採用されている。この場合,原則として固 定または需要家料金が限界需要家費用を,オフピーグ電力量料金がオフピー グ限界電力量費用を,またオンピーク電力量料金がオンピーク限界電力量費 用と限界容量費用の一部分をそれぞれ反映して設定されることになる。 (3) 収入リクワイアメント調整 総収入リグワイアメントは一般に州規制当局が認可した手続によって会計 費用に基づいて決定されるが, この点は
TOD
レートメーキンク.についても 何ら変わるところがない。限界費用をベースとして設定された料金から得ら れる収入が,会計費用をベースとして認可される収入リクワイアメントと一 致するのは偶然によるほかなく,通常,収入過不足が発生することは避けら れない。そこで最後に,限界費用に基づいて設定されるTOD
料金を収入リ クワイアメントに適合するように調整する作業が必要とされる。このような 調整にはいくつかの方法が考えられるが, 1980年 9月に公表されたエネルギ ー省の PURPA任意カeイドライン案では,収入リクワイアメントに照らし て収入過多となる場合には需要家料金を減少させ,収入不足となる場合には 需要家料金を増加させる方法が推奨されている。需要家料金はいつどれだけ 電気を消費するかについての需要家の決定に,最も小さな影響しか及ぼさな レために,こうした方法は資源配分に中立的というメリ γ トがある。しかし ながら,こうした調整方法には,収入不足の場合には,需要家の所得水準に かかわりなく同額が徴収されるため,逆進的となるとしづ意味で公正上問題 がないわけではない。 こうした点から,たとえば,TOD
料金を実施しているウィスコンシン州 の主要電力企業では,次のような方法で料金をデザインしている。 商工業用TOD
料金 ① 電力量料金 オンピーク電力量料金=オンピーク限界電力量費用 28)吉田豊彦(1981.3J. pp.18-9. 29)ウィスコンシン公益事業委員会 CPublicService Commission of Wisconsin) 電気料金部長 Terrance B. Nicolai氏よりのヒアリング(1983年2月24日実施〉 に基づく。オフピーク電力量料金=オフピーク限界電力量費用 一種別収入リクワイアメントー電力量料金収入 ②需要料金一 需要 (kw) すなわち,商工業用のTOD料金については,収入リクワイアメント調整は 需要料金においてなされており,需要料金は限界容量費用の一部分と限界需 要家費用を反映して設定されてレる。ウィスコンシン州の主要電力企業にお いては,限界費用が会計費用または平均費用を上回るため,これを調整する 必要上,限界容量費用をフルには需要料金に含めないのである。 住宅用TOD料金 ① 需要家(固定〉料金=限界需要家費用 ② 電力量料金 オフピーク電力量料金=オフピーク限界電力量費用 種別収入リグワイアメントー限界需要家 オンピーク電力量料金= 料金収入ーオフピーク電力料金収入 ンピーク kwh すなわち,住宅用のTOD料金については,収入リクワイアメント調整はオ ンピーク電力量料金においてなされており,オンピーク電力量料金は,オン ピーク限界電力量費用と限界容量費用の一部分を反映して設定されているの である。 こうした収入調整については,コスト・オプ・サーピスからの訴離と適切 30) なプライス・シグナルの歪曲をもたらすものとの批判も一部にある。しかし ながら,収入調整は, TOD料金を採用・実施している大部分の州規制当局 と電力企業によって合理的なものとみなされているほか,エネルギー省の
PURPA
任意ガイドラインにおいても,電気の節約,電力企業の効率,公正 な料金といった目的と矛盾するものではないとして支持されている。資源配 分効率の観点からは,収入調整はストリグトな限界費用に基づいた無調整の 料金の場合になされるであろう,電気の使用からの議離を最小化する方法に よってなされることが望ましいことはいうまでもない。 30) たとえば, Electricity Consumers Resource Council (March 1983Jを参照 されたい。商工業用の大口電力需要家により設立された調査・広報機関である ELCONは,実際に発生した会計費用に基づく TOD料金を支持するものの,限 界費用に基づく TOD料金は,法律により認められた収入リクワイアメントを充 足するために怒意的な収入調整を必要とするという理由でこれに反対している。アメジカ時間帯別電気料金設定プロセス覚書 153 お わ リ に
TOD
料金設定のためのコスティング手法の選択は,電力企業または規制 当局の料金設定目的に照らしてなされるべきである。もし経済効率が一連の 呂的中上位にランクされる場合には,限界費用手法が料金のデザインにおい て重要なウエイトを与えられることになろう。これはウィスコンシン州,ニ ューヨーク州,カリフォルニア州,パージニア州,オレゴン州などで用いら れているアプローチである。これに対して,料金型式や種別収入負担の急激 な変化の回避といった,伝統的な料金継続性の考え方が上位にランクされる 場合には,会計費用手法が選択されることになろう。たとえばワシントン州 ではこうした理由から会計費用手法が採用されている。しかしながら.TOD
料金のそもそもの目的が, PURPAが掲げるような,資源配分効率,省エネ ルギー,および公平にあるとするならば,会計費用ではなし限界費用をベ ースとすることが望ましいということができょう。 今日,電気料金の設定は会計費用に基づくべきか,限界費用に基づくべき かに関してマージナリストとしての経済学者と,反マージナリストとしての 実務家との悶で長年にわたって繰り広げられてきた,いわゆる“GreatRate Debate"はほとんとや沈静化してしまったかにみえる。すでにアメリカの電気 事業においても,ヨーロッバの電気事業と同様,限界費用原理による料金設 定は連邦政府と一部の州規制機関並びに電力企業によって合理的なものとし て受け入れられ,着実にその採用・実施率を高めているのである。 参 考 文 献Bonbright
,
James,
.
c
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