• 検索結果がありません。

日本臨床麻酔学会 vol.34

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本臨床麻酔学会 vol.34"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

117 著者連絡先 香川草平 〒 182-0002 東京都調布市仙川町 1-15-47 医療法人社団慈香会愛和クリニック * 1医療法人社団慈香会愛和クリニック * 2東京慈恵会医科大学麻酔科学講座 Ⅰ 経皮的 CO2ガスモニターの歴史と測定原理  1954 年に Stow によって考案された電極によって 炭酸ガス分圧の測定が可能となった.1973 年頃に なって臨床の現場で簡便に動脈血の炭酸ガス分圧測 定ができるような分析器がラジオメーターより市販 された.1980 年頃になって初めて経皮的な動脈血 炭酸ガス分圧の測定器がロッシュから発売されたの であった.  1979 年に筆者がカリフォルニア大学(UCSF)に赴 任したとき,研究室には市販に至る前の動脈血炭酸 ガス分圧の測定器のプロトタイプがあり,経皮的動 脈血炭酸ガス分圧の測定器の改良が行われていた. これらの電極について多くの知識を得られたことは 大変に有意義で,筆者のその後の研究の始まりとな った1)(図 1).  炭酸ガス分圧測定電極のもとは pH メーターであ る.pH メーターは pH ガラスという特殊なガラスと 比較電極である塩化銀電極との間の電位差を測定す るものである.Stow によって,この pH 電極を用い た動脈血炭酸ガス分圧の測定方法が示された.Stow が考案したとき電極はゴムでカバーされていたがそ の後,このゴム膜は炭酸ガスの透過性のよいテフロ ン膜に換えられ,またテフロン膜の中は水の代わり に緩衝液に変更された.血液の中の炭酸ガスがテフ ロン膜を通過して pH ガラスの周囲の緩衝液の pH を 変化させる,この pH の変化をさらにその内側の pH メーターで測るという仕組みである.このようにし てテフロン膜を使い内側に緩衝液を置くというスタ イルを考案したのが Severinghaus であり実用的な 電極が出現したのである.Stow と Severinghaus と 2 つの名前をつなげて Stow-Severinghaus 電極とい う名前で現在呼ばれるのはそういう理由である2) (図 2).  経皮的動脈血炭酸ガス分圧測定とは皮膚から透過 してくる炭酸ガスをこの Stow-Severinghaus 電極 第 24 回日本臨床モニター学会教育講演 日臨麻会誌 Vol.34 No.1, 117 〜 123, 2014

経皮的 CO

2

ガスモニター─歴史,測定原理とその臨床応用─

香川草平

*1, 2 [要旨]経皮的動脈血炭酸ガス分圧測定とは加温された皮膚から透過してくる炭酸ガスをストウ -セベリングハウス(Stow-Severinghaus)電極によって測定するというものである.呼気ガス,経 鼻呼気ガス,動脈血炭酸ガス測定値の比較を行い「皮膚電極による炭酸ガス分圧の数値」が最も正 確に動脈血炭酸ガス分圧を反映することがわかった.皮膚電極による測定値のタイムコンスタント は約 4 分であった.無呼吸テスト,炭酸ガス換気応答の調査にも有用であることがわかった.最初 に 45℃で加温し 15 分ぐらい後に 42℃にすれば 12 時間ぐらいの連続測定が可能である.経皮的 動脈血炭酸ガス測定値は動脈血炭酸ガス分圧に対して 1 ないし 2 分の遅れがあることがわかった. キーワード:皮膚,電極,経皮的,PCO2

(2)

118 日臨麻会誌 Vol.34 No.1/Jan. 2014 によって測定するというものである.皮下から透過 してくる炭酸ガス分圧は通常は皮下の静脈の炭酸ガ ス分圧を反映する.また皮膚の循環の影響でこうし て透過してきた炭酸ガス分圧は約 50mmHg になる と考えられる.そこで,皮膚を加熱することによっ て皮膚直下の末梢の毛細血管を拡張させ,動脈血と 同じ組成とする方法が考案された.電極内のヒータ ーで皮膚を 44℃に加温することにより皮下の毛細 血管を拡張させ,動脈と静脈のシャントを作って炭 酸ガス分圧を等しくしてやろうという試みであっ た.これにより皮膚直下の炭酸ガス分圧は動脈血炭 酸ガス分圧に等しくなることがわかった3), 4)  皮膚の温度を上げて毛細血管を動脈化しその血液 中から透過してくる炭酸ガスを測ればいいという単 純なものではないのがこの方法のやっかいなところ である.すなわち炭酸ガス分圧は,通常 37℃の動 脈血の中では 40mmHg ぐらいである.しかし温度 が上昇すれば一定の割合でガスの分圧は上昇する. この上昇の度合いがどの程度かは一定の数式で表す ことができる.すなわち 44℃にまで加熱すると 37 ℃のときの血液中の炭酸ガス分圧は大体 1.37 倍ぐら い(約 55mmHg)に上昇するというふうに計算され ている5).さらに面倒なことに皮膚表面に出てくる 分圧には表皮で代謝された炭酸ガス分圧が加わるの である.これは約 4 ∼ 5mmHg と考えられている. 測定器では自動的にこれら 2 つの補正は行われるの であるが,機材の使用に際してはこの原理をよく理 解していることが必須である.  計算式は以下に示す.   PsCO2(37℃)= tcpCO2 10-0.021(T-37)  皮膚表面に出てくる分圧を測るとこれに表皮で代 謝された炭酸ガス分圧(約 4 ∼ 5mmHg,これを cor-rection factor という)が追加され最終的には大体 59 ∼ 60mmHg の炭酸ガス分圧ということになる.こ の皮膚表面での実測値 tcpCO2をこの式を用いて補 正し,経皮的動脈血炭酸ガス分圧 PsCO2を求める ことができる.したがって最終的な補正式は下記の ようになる.皮膚表面での実測値 tcpCO2をこの式 を用いて補正し経皮的動脈血炭酸ガス分圧 PsCO2 を求めることができる.   PsCO2(37℃)= tcpCO2 10-0.021(T-37)-k

tcpCO2= Nominal pCO2 value

PsCO2(37℃)= tcpCO2 value reading corrected to 37

図 1  カリフォルニア大学に赴任したときの筆者の家 族と Severinghaus 夫妻 同年に TcPCO2測定器がロッシュから発売された. 図 2 Stow-Severinghaus 電極 血液の中の炭酸ガスがテフロン膜を通過して pH ガラ スの周囲の緩衝液の pH を変化させる,この pH の変 化をさらにその内側の pH メーターで測るという仕組 みである.

(3)

119

℃(assuming a patient temperature of 37℃) T = Actual electrode temperature in ℃

0.021 = Anaerobic temperature coefficient of PCO2 in blood k = metabolism correction factor(0-8 mmHg or 0-1, 0 kPa) Ⅱ 臨床応用  皮膚電極の代表的な器材を示す.耳に貼り付ける 形の皮膚電極を用いた TOSCA500 であり,電極で 耳介をはさみ込むという形のものである.このほか に上腕部の内側の皮膚のやわらかいところに貼り付 けるような形のものもある(図 3).  耳介に貼り付ける形式の TOSCA500 と上腕部に 貼り付ける形の TCM3 の測定値を Bland-Altman 分 析により比較したが,いずれの電極についても動脈 血炭酸ガス分圧の数値とよく一致した.  麻酔中の患者で換気量を変化させて,10 分間測 定し終末呼気炭酸ガス分圧の変化および動脈血炭酸 ガス分圧と経皮的動脈血炭酸ガス分圧を比較したと ころ,良好な相関が得られた6)  気管挿管による人工換気および気管挿管なしでの 自発呼吸下での経皮炭酸ガス分圧,呼気炭酸ガス分 圧,経鼻呼気炭酸ガス分圧,動脈血炭酸ガス分圧の 数値の比較を行った.これらの状況の中では「皮膚 電極による炭酸ガス分圧の数値」が最も正確である ことがわかった7)(図 4).  成人男性を使い,皮膚電極による炭酸ガス分圧測 定の反応速度を調べた.自発呼吸で急激に呼吸を増 やし,矩形波に近い形で呼気炭酸ガス分圧を低下さ せて測定を行った.皮膚電極で測定した炭酸ガス分 圧の変化のタイムコンスタントは約 4 分ということ がわかった.  上腕に貼り付けるタイプのものと耳に貼り付ける タイプを同時に装着して測定し,差がないことがわ かった.  また脳死判定に際して無呼吸テストを行うとき, 約 7 分間にわたって皮膚電極を装着し変化を見た. 図 3 TOSCA500 の構造と使用状況

(4)

120 日臨麻会誌 Vol.34 No.1/Jan. 2014 無呼吸テストのときの皮膚電極による測定値の変化 は動脈血炭酸ガス分圧と平行することがわかった. この結果から見ると無呼吸テストのときの動脈血採 血の回数を少なくすることができるのではないかと 思われた(図 5).  皮膚電極を使って炭酸ガス換気応答の調査を行っ た.終末呼気炭酸ガス分圧の数値は呼気時のデッド スペースを含むと考えられるので終末呼気炭酸ガス 分圧の代わりに経皮炭酸ガス分圧の数値を使えばよ り正確な炭酸ガス換気応答の測定ができると考えら れた.その結果,換気反応は予想どおりほぼ直線的 であり,特徴的なドッグレッグは見られなかった. 皮膚電極が動脈の炭酸ガス分圧をいかに正確に反映 しているかということがわかる.すなわちデッドス ペースによる誤差のない正確な炭酸ガス換気応答が 測定できることがわかった8), 9)  耳介をはさむことで 42℃とより低い温度で皮膚 炭酸ガス分圧の測定を可能にしようとする器材につ いて詳細な検討を行った.44℃であれば皮膚の熱傷 を防ぐために 8 時間程度の制限があるが 42℃であれ 図 4  終末呼気,経鼻終末呼気,皮膚電極のそれぞれの炭酸ガス分圧測定値と動脈血炭酸ガス分圧との 比較 左上:人工換気中に測定された皮膚電極と PaCO2との差 右上:挿管にて人工換気中の終末呼気炭酸ガス分圧と PaCO2との差 左下: 術後の回復室自発呼吸下で,鼻孔に取り付けたカニューラにより測定された終末呼気炭酸ガス分圧 と PaCO2との差 右下:術後の回復室自発呼吸下で測定された皮膚電極と PaCO2との差

(5)

121 ば 12 時間ぐらいの連続測定が可能となる.そこで, この電極を使って 42℃で使用をしてみた.電極を 装着して数分で測定値は上昇していったん安定する ように見えるが,その後測定値はさらに上昇しその 後時間をかけて低下して安定するという形をとるこ とがわかった.その後の調査で最初に 45℃で加温し 15 分ぐらい後に 42℃に戻せばこの一時的な過度の 図 5  無呼吸テストのときの皮膚電極による測定値の 変化 無呼吸テストのときにも平行して動くことがわかる. 薄い線で示したものは無呼吸のときはこのように変 化するのではないかという想定の線である.無呼吸 テストであることから終末呼気炭酸ガス分圧は最初 のところしか測定値はない. 図 6  42℃あるいは 45℃に加温したときの耳介での測 定値の変化 図 7  皮膚電極による測定値と動脈血採血による測定 値の経時的変化 縦軸に炭酸ガス分圧,横軸に時間が書いてある.黒 丸が動脈採血による PaCO2の値である.白丸は同時 に記録された皮膚電極による PCO2の値である.白丸 で示した皮膚電極の測定値が少し動脈血 PCO2より遅 れているのがわかる.

(6)

122 日臨麻会誌 Vol.34 No.1/Jan. 2014 測定値の上昇が避けられることがわかった.現在の 製品では 42℃に電極温度を設定したときには Quick start と呼ばれるこの余熱プログラムが作動するよ うになりこの現象は回避されている10)∼ 13)(図 6).  Quick start と呼ばれるこのプログラムを組み込 んだ電極を用いて成人男子 5 人について測定を行っ た.この皮膚電極による測定値が動脈血採血による 測定値に対してどの程度遅れているかを見るために 0,1 分,2 分,3 分,4 分遅れの数値について Bland-Altman 分析をした.その結果,1 分後,2 分後のば らつきが最も少ないことがわかった.経皮的動脈血 炭酸ガス測定値は動脈血炭酸ガス分圧に対して 1 な いし 2 分の遅れがあることがわかった14)(図 7). 参考文献 1) 香川草平:CO2 モニタとパルスオキシメトリー.医科 学 77:77-82,2007 2) Astrup P, Severinghaus JW:The History of Blood Gas-es, Acids and Bases. Munksgaard, Copenhagen, 1986, 264-295 3) Severinghaus J:Transcutaneous blood gas analysis. Respir Care 27:152-159, 1982 4) 香川草平,藤原千江子,葛田憲道ほか:経皮的血液ガ ス測定.呼吸 28:1199-1203,2009 5) Siggaard-Andersen O:The Acid-Base Status of the Blood. Munksgaard, Copenhagen, 1976, 89 6) Otake T, Fujiwara C, Takinami M, et al.:Transcuta-neous carbon dioxide partial pressure measurement is more reliable than end-tidal carbon dioxide partial pressure measurement under controlled mechanical ventilation. Jikeikai Med J 47:219-226, 2000 7) Hirabayashi M, Fijiwara C, Ohtani N, et al.:Transcu- taneous PCO2 monitors are more accurate than end-tidal PCO2 monitors. J Anesth 23:198-202, 2009 8) Kagawa S, Fujiwara C, Otake-Otani T, et al.:Assess- ment of the hypercapnic ventilatory response mea-sured with the transcutaneous and inspired partial pressures of CO2. Jikeikai Med J 52:59-62, 2005 9)

Fujiwara C, Shoji K, Otake T, et al.:Hypercapnic ven-tilatory responses measured by transcutaneous PCO2 are more linear than those measured by end-tidal PCO2. Jikeikai Med J 49:127-132, 2002 10) Eberhard P, Gisiger PA, Gardaz JP, et al.:Combining transcutaneous blood gas measurement and pulse oxi-metry. Anesth Analg 94(Suppl):S76-S80, 2002 11) Kagawa S, Otani N, Kamide M, et al.:Initial transcuta-neous PCO2 overshoot with ear probe at 42 ℃. J Clin Monit Comput 18:343-345, 2004 12) Kagawa S, Severinghaus JW:Errors in monitoring transcutaneous PCO2 on the ear. Crit Care Med 33: 2414-2415, 2005 13) 平林万紀彦,大谷法理,香川草平ほか:耳介で測定す る経皮炭酸ガス分圧モニターにおける初期オーバーシ ュートの回避について.麻酔 55:1018-1022,2006 14) 葛田憲道,上出正之,香川草平:経皮的動脈血炭酸ガ ス分圧(TcPCO2)は 1 ないし 2 分前の PaCO2 を反映して いる.麻酔 61:638-642,2012

(7)

123

Transcutaneous PCO2 Monitor:History, Principles and Clinical Applications Sohei KAGAWA*1, 2

*1 Jikokai Inc. Med. Institution Aiwa Clinic

*2 Department of Anesthesiology, The Jikei University School of Medicine

 The measurement in PCO2

of the skin surface by means of Stow-Severinghaus electrode is de-scribed as the transcutaneous PCO2. End tidal PCO2, nasal end tidal PCO2 and PaCO2 are compared

with the values of transcutaneous PCO2. The transcutaneous PCO2 is best fitted with PaCO2 value in

all methods. Time constant of the transcutaneous PCO2 measurement is approximately 4 min. Skin

temperature of 42 degrees is tolerated for 12 hours after preheated 45 degrees for 15 min. The values of transcutaneous PCO2 are delayed 1 to 2 min after PaCO2.

Key Words : Skin, Electrode, Transcutaneous, PCO2

参照

関連したドキュメント

19 セミナー 「memento mori 滋賀− 死 をみつめ, 今 を生きる−」 を滋賀会館で日本財団,

 昭和62年に東京都日の出町に設立された社会福祉法人。創設者が私財

一般社団法人 葛西臨海・環境教育フォーラム事務局作成 公益財団法人 日本財団

ケース③

23-1•2-lll

(第六回~) 一般社団法人 全国清涼飲料連合会 専務理事 小林 富雄 愛知工業大学 経営学部経営学科 教授 清水 きよみ

一般社団法人 東京都トラック協会 業務部 次長 前川

一般社団法人 東京都トラック協会 環境部 次長 前川