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〈新刊紹介〉『世界に冠たる中小企業』黒崎誠 著、『バランスシートで読みとく世界経済史』ジェーン・グリーソン・ホワイト 著、川添節子 訳

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彦根論叢 2015 autumn / No.405 118

新刊紹介

過去約2年間に発行された書籍の中から時事的で 話題性があり内容豊かなものを会員のご要望に応 えながら編集部が選択して紹介いたします。 『世界に冠たる中小企業』 黒崎誠著|講談社現代新書 2015、251pp.  本書は、日本のモノづくり産業を底辺から支え、そ の凄さがわかる個性あふれる中小企業が数多く紹 介されている。著者は、長年、時事通信社で主に経 済畑で記事を書いてきた経験を生かして、綿密な取 材の基にかつ生々しい臨場感が伝わる文章で書か れており非常に興味深い。  本書の構成は、おおまかに「伝統技術」を活かし て世界シェアを獲得している企業五社、「専門分野 に特化」で成功した企業五社、「超先端技術」で世 界に挑む企業四社、「ニッチ市場」を制する企業六 社、ノウハウを活かして「業態転換」で勝機を見出し た企業四社から成る。  そのうちのいくつかを紹介すれば、以下のとおりで ある。国内のみならず米国でもシェア

1

位の切れ味鋭 いニッパーを作る会社、世界シェア

70

%のカニカマ 製造機を作る会社、世界有数のシェアを誇る繊維機 械のスピンドルを作る会社、海外の自動車メーカー 向けが八割という金型部品を作る会社、小惑星探査 機「はやぶさ」や東京スカイツリーでも使われた高度 なバネで勝負する会社、世界トップブランドの美容 師向けのハサミを作る会社、新幹線の車輪を作る大 型工作機械専門のメーカー、国内の紙幣印刷や海 外のフェラーリのエンジン製作で使われる超精密工 作機械専門のメーカー、ノーベル賞級の世界トップ 水準の高度な研究開発に使われる超ハイテク実験 装置を作る会社、超小型カプセル内視鏡など世界 的に画期的な医療機器を作る会社、カメラのピンボ ケを防ぐ機器を作る会社、世界随一の超精密鏡面 磨き加工の会社、世界シェア

30

%を誇る摘みたての ようにみずみずしい新鮮さを保つブリザーブドフラ ワーを作る会社、蓄電するためのコンデンサ用リー ド線端子で世界シェア

40

%を誇る滋賀長浜の会社、 建設機械の根幹部品である大型旋回ベアリングで 世界シェア

40

%の会社、高度なレーザー技術で検 査やセキュリティー分野で非接触型の機器を作る会 社など。  総じて浮かび上がってくるのは、日本の中小企業 のとてつもない底力と圧倒的な個性である。

80

年代 までの好景気から一転してバブル崩壊後の

90

年代 以降の低迷期において、会社の規模を原因として大 企業以上に大きなダメージを受けたにもかかわらず、 不死鳥のごとく見事に蘇った様が描かれている。 評/『彦根論叢』編集委員/可児島達夫

(2)

新刊紹介 119 『バランスシートで読みとく世界経済史』 ジェーン・グリーソン・ホワイト著、 川添節子訳|日経BP社 2014、252pp.  本書は、複式簿記の考案者であるルカ・パチョー リの足跡を追いながら、複式簿記の誕生と会計への 発展を通じて、世界経済の歴史を読み解くという興 味深い内容である。著者は決して会計学者でも会計 専門職業人でもなく、ジャーナリストであるが、堅苦 しくなく、簿記会計を文学小説的なタッチで描いて いるのが面白い。  ルカ・パチョーリは

1494

年の『算術、幾何、比およ び比例全書』(原著の頭文字

Summa

から通称スン マといわれる)の中で初めて複式簿記を明らかにし ている。また、このパチョーリはレオナルド・ダ・ヴィ ンチの師匠であったと言われる。「簿記」と「芸術」は 無縁のように思えるが、フランシスコ修道会の修道 士であったパチョーリは元来、数学者であり、理路 整然とした数学や複式簿記の考え方は、ダヴィンチ の遠近法を用いた均整のとれた緻密かつ謎に満ち た絵画と共通する点があったのであろう。  パチョーリによってヴェネツィアで誕生した複式簿 記は、印刷技術によって一気に欧州中に普及し、日 常的な取引記録のみならず、集計・検算機能を持ち 合わせ、さらに意思決定に役立つという商業には不 可欠な道具となった。この複式簿記は、産業革命の 時代に製造業での原価計算へ応用され、さらには株 式会社の誕生とともに単なる取引の記録方法からビ ジネスを管理する方法、つまり「会計」へと進化した。  

19

世紀のイギリスにおいて、鉄道業が巨額の資金 を多くの投資家から集め、配当の支払いに窮するあ まり帳簿をごまかす不正が多発した。「

1844

年株式 会社法」で資本と利益を明確に区分し、配当の原資 は利益であることを規定し、その後の改正で会社設 立時、事業活動期、解散時に「会計士」を必要とさ れるようになり、株式会社の発展は利益計算や資産 評価に関する論点を生み、「有限責任」、「会計期間」、 「減価償却」、「法人格」といった概念が誕生し、「会 計士」による「公的な監査」の導入に至り、「会計士」 は権威ある職業となった。  複式簿記の考え方は、ゾンバルトやウェーバーな どの思想にも影響を与え、資本主義誕生の基礎とな り、さらに世界恐慌、第二次対戦の戦中・戦後を通 して、ケインズ革命による

GNP

GDP

などの国民 経済計算の導入と普及にも影響をおよぼし、企業の みならず国の富を測る手段ともなった。  最後に、著者は、環境への影響を考慮した上での 経済発展を今後考えていかなければならず、そのた めには会計専門家が率先して自然を会計に取り込 む方向に誘導すべき、たとえば環境会計の推進を主 張する。それを通じて、簿記会計は企業、国を越えて 地球上の限りある資源を測る手段となりえると展望 する。  「簿記」がどうしても馴染めない学生諸君、一見小 難しく思える「会計」を食わず嫌いで遠ざけている学 生諸君、大して「会計」を学ぶことなく転学科しようと する会計情報学科の学生諸君、たとえば、本書のよ うな簿記会計の歴史の本から学んでみるというのは いかがであろうか。 評/『彦根論叢』編集委員/可児島達夫

参照

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