地域で安心して暮らし続けることへの支援
サービス等利用計画の評価とチェックリスト
NPO法人日本相談支援専門員協会
松下 義雄(徳島県・障害者生活支援センター凌雲)
平成25年度相談支援従事者指導者養成研修
地域で安心して暮らし続けることへの支援
50歳になる知的障害の男性Mさん。
20年間授産施設での入所生活後、就職が決まり施設を退所。グループ
ホームへ入居し職場へ通う生活となった。その後、自分だけの自由な暮
らしをしたいと、アパートでの一人暮らしを決意し生活することとなっ
た。
しかし、知人に詐欺に合い、地域生活を断念せざるを得ない危機的状況
が生まれた為、サービス等利用計画、地域定着支援により緊急時の支援
も含め生活全般の支援が開始された。地域で暮らしたいとの本人の願い
を実現するため、地域の様々な関係機関が協力し、安心した日々の生活
を取り戻すことができた。
【事例の概要】
安心・安全・快適・自立
した暮らしの実現
※計画作成にあたってのキーワード
年齢・性別
50歳 男性
障害の状況
知的障害(中度判定)
主な生活歴
○○町で生まれ、特別支援学校卒業後、S授産施設へ入所する。
20年間、入所授産施設での生活後、就職が決まり施設を退所、
グループホームで生活しながら、仕事へ通うこととなった。
経済状況
障害基礎年金(2級)及び本人の就労による収入
健康状況
心臓病があり服薬中であるが、体調は安定している。
家庭状況
本人のみの単身生活。
両親は高齢で他県に住んでいる。他県に住む2人の弟がいる。
支援には協力的。
主 訴
今の仕事を続けながら、元気で不安のない生活をしていきたい。
特記事項
※地域生活についての本人の想い
不安はあるけど、毎日自由な時間があるし、気をつかわなくて
いい。ひとり暮らしは楽しい。
Mさんの基本情報
やさしい
思いやり
がある
真面目で
会社の評
価も高い
やる気が
ある
教えれば
できる
体力があ
る
Mさんのストレングス
弟がよく
面倒をみ
る
会社が
協力的
友人が
いる
年金が
ある
近くに
民生委員
がいる
相談受付~問題の把握 自立支援協議会を通じて課題検討 生活全般の支援の継続 友人からの相談受付から 問題についての状況把握 を進める中で、詐欺被害 に対する問題があきらか になった。 詐欺被害に対する具体的 な対応策と、生活全般に ついての環境改善のため、 サービス等利用計画を作 成して関係機関で連携し た支援を行う。 サービス等利用計画に基づき、生 活支援サービス、地域定着支援を 導入し、本人の生活は大きく改善。 関係者で常に情報を共有し、新た な課題については対応している。 行政・友 人・会 社・支援 センター で話し合 う
ニーズ把握・情報収集
サービス等利用計画作成
支援チームづくり・サービス調整
課題についての協議
サービス等利用計画を作成 するとともに、自立支援協 議会での課題の共有を行い、 課題検討会議で具体的な対 策についての協議を行う。 また、支援チームによる情 報共有をこまめに実施し、 具体的な支援を実施してい く。地域定着支援・モニタリング・調整
新たな福祉課題に対しては、地域自 立支援協議会を活用して、課題提議 して、情報を共有し、解決に向けて 協議している。 ヘル パー 司 法 書 士 友 人 銀 行 役 場 会 社 警 察 個別支援会議 会社へ訪問 地域自立支援協議会 課題検討会議 相談支 援専門 員現在の状況
本人の望み
●悪い知人が来ないか不安
●お金の管理ができない
リフレーミング ⇔(お金の
管理がうまくできない。)
●家の掃除ができない
リフレーミング ⇔(掃除が
うまくできない。)
●料理ができない
リフレーミング ⇔(料理の
作り方がわからない。)
●人に騙されやすい
リフレーミング ⇔(人がい
い。)
●不安のない生活したい
●お金の管理ができるようにな
りたい
●掃除ができるようになりたい
●少しは料理もできるようにな
りたい
●騙されないようにしたい
このギャップについて目標を立てサービス等利用計画をつくる
本人は、「施設には行きたくない」と自宅での暮らしを
希望したが、本人の思いより施設の方が安心であるという
関係者の判断により、施設での短期入所が決定された。
本人の「施設には行きたくない」「自宅で暮らしたい」
という思いを関係機関との連携により、どう実現するかと
いう出発点ではなく、「施設が安心」という本人ニーズよ
り、支援者側の都合が優先され、本人の思いとは違う支援
を関係者の意向で押しつけている。
また、本人の生活面(食事、掃除等)本人のやる気や意欲
を見落とし、本人のエンパワメントを視点に置いた、スト
レングスの把握がされないまま、支援者側の視点で、サー
ビスの方向性が決め付けられている。
視点欠落プランの概要
視点欠点プラン
良好プラン
利用者及
びその家
族の生活
に対する
意向(希
望する生
活)
(本人)今の仕事を続けながら、元気 で不安のない生活をしていきたい。 (家族・弟)周りの人に協力もしても らいながら、二度とだまされないよう 安心して暮らせるようにしてやりたい。総合的な
援助の方
針
不安がない生活ができるよう、いろん な福祉のサービスや支援してくれる人 に協力してもらいながらすすめていき ます。長期目標
毎日不安なことをなくしていけるよう にします。また、生活で苦手なことは 手伝ってもらいながら、自分でできる ことを増やしていけるようにします。
短期目標
お金を騙されたり、脅されたりするこ となく、しっかり管理できるようにし ます。また、洗濯や掃除等の家事が自 分でできるようにしていきます。
コメント
①
本人がどのような生活をしたいと思っているのか、思いや希望、家族の意向など十分に汲み 取って表現されていない。誰の意向かが区別され、記載されていない。②
本人の思いとは別の長期目標が設定され、ストレングスが評価され、意欲を高めるような目 標となっていない。また、目標が漠然としており、本人や関係者にとってわかりにくく、方向 性があいまいで、具体的な記載となっていない利用者及び
その家族の
生活に対す
る意向(希
望する生
活)
このまま自宅で暮らしたい。 安心して暮らせるようにしたい。総合的な援
助の方針
本人が安心して暮らせる環境を整える。長期目標
不安をなくすことができるよう、施設 も利用しながら在宅での生活を維持し ていく。短期目標
自分でできないことは支援をしてもら い、生活を整えていく。
①
②
視
点
欠
点
プ
ラ
ン
良
好
プ
ラ
ン
解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための本 人の役割 お金の管理(自分 でも管理) だまされて契約した り、取られたりしな いよう管理してもら う。 20×× 年7月 ・日常生活自立支 援事業 (金銭管理) ・障害者生活支援 センター○○ (担当:○○) ・○○社協 ・無駄づかいをしない ようにする。コメント
①
なるべく自分でも管理がしたい」というニーズに対して、本人ができる能力の部分での支援 サービスや役割が用意されていない。②
支援目標に対するサービスの内容が、トータルな生活の視点での権利を守ることを考えると 適切とは言えない。 解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための 本人の役割 自分のお金は自 分で管理できる ようにしたい。 お金を守れるようにす るため、成年後見制度 の手続きを進める。 20×× 年7月 ・成年後見制度の 申請手続を行いま す。(※司法書士 にお金の管理をし てもらいます。) ・弟(申請手続 き) ・○○司法書士事 務所 (名前:○○○) ・手続きなどの話し 合いの時に一緒に話 しを聞いていてくだ さい。 ・自分の意思を言っ てください。 お金を計画的に使える ようにするため、何に どのくらい使っている かわかるようにする 20×× 年7月 ・金銭管理ノート をつくり、書き方 を教えます。 ・障害者生活支援 センター○○ (担当:○○○) ・レシートをあつめ ます。 ・毎日金銭管理ノー トにいくら使ったか 書きます。①
②
視
点
欠
点
プ
ラ
ン
良
好
プ
ラ
ン
解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための本 人の役割 緊急時の不安 施設で保護してもら う。 20×× 年7月 ・短期入所(一時 的に利用する) ・○○事業所 (担当:○○○) ・障害者生活支援 センター○○ ・施設での生活に慣れ る。コメント
①
祉サービスが組まれている。思いをどうしたら実現できるかの視点でサービス内容が検討され「施設には行きたくない」という思いに対して、本人の思いとは違う「短期入所」などの福 ていない。 解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための 本人の役割 毎日、不安がな い生活をしたい。 悪い人が家にこれない ようにする。また、緊 急時にすぐに連絡でき るようにする。 20×× 年7月 ・地域定着支援を 申請します。(24 時間の緊急時支 援) ・警察と協力し、 夜間の巡回をたの みます。 ・電話を取りつけ、 緊急時に連絡でき るようにします。 ・緊急連絡網の作 成をします。 ・障害者生活支援 センター○○ (担当:○○) ・○○警察署 ・民生委員 (名前:○○) ・友人 ・電話機に使い方を 覚えてください。 ・緊急時にどこに連 絡するか、緊急時の 連絡先を覚えてくだ さい。①
視
点
欠
点
プ
ラ
ン
良
好
プ
ラ
ン
解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための本 人の役割 食事の準備 食事の準備が自分で できるようになる。 20×× 年7月 ・家事援助 (1時間/週 4回) ・○○事業所 (担当: ○○○○) ・ヘルパーに教えても らう。 清潔を保つ ヘルパーに掃除をし てもらう。 20×× 年7月 ・家事援助 (1時間/週 4回) ・○○事業所 (担当: ○○○○) ・自分でもできるとこ ろはやる。コメント
①
支援 目標が実現可能で意欲を持てる内容となっていない。②
全体として本人の思い・希望、ストレングスを意識した内容となっていない。③
本人ができそうな役割があまり明確とはいえない。 解決すべき課題 (本人のニーズ) 支援目標 達成 時期 福祉サービス等 種類・内容・量(頻度・時間) 課題解決のための本 人の役割 ごはんや簡単な 料理ができるよ うになりたい。 ごはんの炊き方や簡 単な調理はできるよ うになる。 20×× 年10月 ・ヘルパーを頼みます。 居宅介護:家事援助 (1時間/週4回) ※ごはんの炊き方や料理 の仕方を教えてもらう。 ・○○事業所 (担当: ○○○○) ・ヘルパーと一緒に 調理しながら、覚え ていきましょう。 部屋の掃除がき ちんとできるよ うになりたい。 部屋をきれいにする ことができるように、 教えてもらいながら 掃除のやり方を覚て いく。 20×× 年10月 ・ヘルパーを頼みます。 居宅介護:家事援助 (1時間/週4回) ※掃除の仕方を教えても らう。 ・○○事業所 (担当: ○○○○) ・ヘルパーに教えて もらいながら掃除の やり方を覚えていき ましょう。①
②
③
視
点
欠
点
プ
ラ
ン
良
好
プ
ラ
ン
コメント
①
支援サービスを提供することで、どのような生活が実現できるのか、本人の思いや希望がど う実現できるのか記載されていない。 サービス提供 によって実現 する生活の全体像 ・不安がない生活が送れるように関係機関で連携して解決へ向けて行く。日常 生活面での改善も必要。 サービス提供 によって実現 する生活の全体像 ・知人に騙されたり、脅されたりして不安な生活を送っていたので、早期に不 安が解消できるように関係機関とも連携して解決へ向けて行く。また、これま で、適切な日常生活面での支援を受けてこなかったため、生活環境面での乱れ があった。しかし、本人は、素直な性格で、生活意欲もあり、居宅介護サービ スを入れ、教えて行く事で身の回りのことも自立へとつなげていくことが可能 と感じられる。サービス提供にあたっては、エンパワメントできるような支援 に心がけていく。①
視点欠点プラン
良好プラン
コメント
①
週間計画表に記載されていない、生活の中での楽しみや趣味、余暇活動など記載がされてい ない。 主な日常生活上の活動 ・仕事から帰ってからは、あまり外出しない。テ レビを見ているか、遊びに来た友人と話をして いる。 主な日常生活上の活動 ・仕事から帰ってからは、あまり外出しない。 テレビを見ているか、遊びに来た友人と話をし ている。 ・休日は、買い物に行ったり、支援センターに 遊びにいく。 ・日曜日は教会に行く。①
プラン作成上の視点
良好プランのポイント
①
エンパワメント・ア
ドボガシーの視点
・本人のやる気やできる力に注目して力を引き
出し生活能力を伸ばしていく。
・詐欺被害から生活を守れるようにする。
・本人が自己選択、自己決定できるようわかり
やすい計画作成づくりに配慮。
②
総合的な生活を支援
する視点
・現在の生活から将来も安心して生活が継続で
きるような支援体制づくり。
③
連携・チーム支援の
視点
・本人の想いに共感し協働できる支援チーム
をつくる。
④
ニーズに基づく計画
の視点
・「施設には行きたくない。このまま家にいた
い。」という本人の気持ちを優先した支援。
⑤
中立・公平性の視点
・多様なサービス資源の活用。
良好プランの作成上の全体的評価
プラン作成上の視点
視点欠落プランのポイント
①
エンパワメント・アド
ボガシーの視点
・本人のストレングスに焦点をあて、エンパワ
メントしていく視点がなく、マイナス部分のみ
に着目した計画となっている。
②
総合的な生活を支援す
る視点
・フォーマル、インフォーマルな支援も含め、
多様な支援サービスの中から、本人ニーズに基
づく適切な支援内容とはなっていない。
③
連携・チーム支援の視
点
・どの機関がどのように支援していくのか、具
体的な内容が記載されていないため、支援目標、
役割分担等が明確になっていない。
④
ニーズに基づく計画の
視点
・「施設の方が安心」と本人ニーズより、支援
者側のニーズが優先されている。
・本人が意欲をもって前向きに取り組もうと思
えるような計画となっていない。
⑤
中立・公平性の視点
・本人ニーズに基づき、多様な地域資源の活用
が工夫されていない。
視点欠落プランの作成上の全体的評価
【チェック結果スコア】 標準事例 視点欠落事例 1 エンパワメント、アドボカシーの視点 4.60 0.00 2 総合的な生活支援の視点 3.80 0.60 3 連携・チーム支援の視点 3.80 1.20 4 ニーズに基づく支援の視点 4.20 0.60 5 中立・公平性の視点 3.80 1.20 6 生活の質の向上の視点 3.00 0.60 0 1 2 3 4 5 1エンパワメント、アドボ カシーの視点 2総合的な生活支援の 視点 3連携・チーム支援の視 点 4ニーズに基づく支援の 視点 5中立・公平性の視点 6生活の質の向上の視 点 標準事例 視点欠落 事例