Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design熊 本
県
と
の
官 学 連
携
UD
移
動 ミ
ュー
ジ ァ ム プ
ロ
ジ
ェク ト
Collaboration
with
Kumamoto
Prefecture
:Universal
Design
Traveling
Museum
Project
平 井 康 之
HIRA1
Yasuyuki
九州
大学
Kyushu
University
1 .
官 学運 携
の背 景
2007
年
7
月、
熊 本
県と九 州
大 学ユー
ザー
サ イエ ン ス 機 構(
User
Science
lnstitute
、
以 下USD
は、
ユ ニ バー
サル デザ イン (以 下
UD
) に 関 して連 携 協 力協
定 を締 結
し、
ユー
ザー
を 中 心 と し たデザ イン アプロー
チ を活
かし た共
同 研究
を行
っ て き た。USI
と は、
平成
16
年 度 文 部 科 学省 科 学 技
術 振 興 調 整 費 「戦 略 的 研 究 拠 点 育 成 プロ グ ラ ム 」 に採
択 さ れ、
設
立 さ れ た平
成21
年3
月 まで の5
年
間のプロジェ クト である。
熊 本
県で は、
潮 谷 義
子前 知 事
が当
選 した2000
年
から、
UD
へ の取 組 み が 始 ま り、
平 成14
年2
月に策 定 さ れ た 「く ま もとユ ニ バー
サ ル デ ザ イン振 興 指 針」 に 沿っ て県 政 各 分 野でUD
を 取 り入 れ た 施 策 が積 極
的 に推
進 さ れて き た。
USI
、
九州
大学
大学 院芸 術
工学研
究院 平 井
研究
室と、
熊 本
県総 合 政 策
局 企 画 課特 定政 策推 進 室
は、
2007
年 秋
のUD
ウィー
ク か ら、
く ま もとUD
大賞
を は じ め と す る取 組
みを 進 めてき た が、
2008
年
6
月 に県側
か ら、
次 のUD
ウィー
クは 「子 ども 」 をテー
マ と す る こ と、
そ の 理由
と し てUD
を 「使
えなか っ た人
が使
える よ う に な る」、
のは も ち ろ んの こと、
少 子 高 齢 社 会 に 向 けて 「使 っ ていた 人 が さ ら に 楽 し く使 え る よ う に な る」 た め に、
次世
代 を 担 う 子 ど も た ち を含
み、 さら に多
くの人
々 を巻
き 込 む 運動
に高
めて い こ うとい う考
え方が示され、
そ の方 向で企 画を進めて い っ た。
2 .UD
移
動 ミュー
ジ ア ム2007
年
に は熊 本 県
で企画
したUD
展
示 キット が、
小学 校
の 総 合 学 習 を 対象
と して作
ら れ 配備
さ れて いた。
これ は、
布製
の スー
ツケー
スに17
点のUD
商 品 事 例 を 巡 回 展 示 用 に まとめ た も ので ある。貸 出
し が 順調
に推
移 したの で、
当 初2
セ ッ トだっ た も の を11
セ ッ ト に増
やし、
県 内 すべて の地 域 振 興 局 に 分 散 配備
す ること となり
、
今
回のUD
移 動
ミュー
ジアムの実 現
に繋
がっ た。UD
展 示キ
ット からUD
移
動ミュー
ジアムへ 名 称 変 更 し た の は、
将 来 恒 久 的 なUD
ミュー
ジアムの実 現のた めの第一
歩
としたい という 思い からであ る。
UD
展 示 キッ トの 見 直し は2008
年8
月 にス ター
ト し、
9
月末
に最初
の模 擬 授 業
で のユー
ザー
調 査 を 行っ た。
さ ら に10
月に行
わ れ た2008
年
UD
ウィー
クでは 子 ど も や親子 を 対象に し た ワー
ク ショ ップ、
小 中 学 校の先
生 方へ のUD
移 動ミュー
ジ ア ム に関 する セ ミ ナー
を開 催 し、
併 催 さ れ た プロ トタ イプの展 示とワー
クショッ プ を 通 じて現場
の先 生 方 か らの改 善 点 な どの意 見 を ま とめ、
開 発に活 かした。
ま た 熊本県
の教育 委員 会
を は じ め と する関 連機 関
からも意
見や
要 望 をフィー
ド バックす る こ と で デザインを完 成さ せて い くと い う方 法
を採
っ た。今
回のコ ンセ プ トは 以 下の3
点であ る;1
)UD
の こ こ ろを 伝え る2
)
UD
を考
え るプロ セ ス と し て伝
え る3
) 社
会をつな ぐ仕 組 みづ く り1
)UD
のこ ころ を 伝 え るUD
の考 え 方 を、
商 品 事
例 な どの具 体 的
な サンプル による体
験 を 通じ て伝え る こ と は重 要 なこ と で あ る。 し か しUD
と は商
品 や
サー
ビスへ の アクセ シビ リティー
やユー
ザ
ビ リ ティー
を向
上 さ せる だ けで はない。
国で はユ ニバー
サ ル 社 会 基 本 法の制 定 が 進 め ら れて いる よ う に、
UD
は 「年 齢 や 性 別、
障 害の有 無 な どにか か わらず、
すべ て の人
がいきいき と働
き、
社 会参 加
し、
暮
ら しや すい」 ユ ニ バー
サ ル社
会へ の取 組 みと して 市 民 や 社 会 を 巻 き 込 ん だ 運 動としての側 面 が あ る。
そ の よ う な 考 え 方 を 実 践できる市 民 を 育て ること は 今 後の持 続 的 なUD
運 動の発 展の た め に 重要
であ る。
熊本 県
では活
動の当 初
か らUD
の こ こ ろ の重
要性
を謳
っ てきて い る。 しか し前
のUD
展 示 キット で は限 定 的な内
容に限られて い た ので、
今 回は教 材の中に積 極 的に展 開 す ること と した。
UD
移
動 ミュー
ジ
ア ム講
師 用ガ
イ ドブ
ック に は、
UD
の こ ころにつ いて、
「様々な 人 に 思いを 馳せること、
自
分 以外
の様
々 な 意見
を取
り入 れ よ う と する こと、〜
他の人 と と も に生
きて い くと い う こ と は自分
に とって何
がで きる こと/
線
梅
顛’
・
・
1・・
1欝
’
い
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ツ
図1 様々な 人に 思 いを 馳 せるUD カー
ド 謙、
.
.
助讌
欝彎
10
デザイン学 研 究 特 集 号sρecia 「Issue of 」apanese soclety forthescience oi design vol
、
16−
4 no.
64 20egJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designな
のか〜
そ う した優
しさの問
いか け がUD
の考
え方
の中
に はあ る」 とし、
「子ど も た ち一
人ひ とりの個 性 や 共 生の心を はぐ く む学 校 教 育
に おいて、
このよ う なUD
の考
え 方 を 取 り 入 れてい くこと は重 要」 である と学 校 教 育で のUD
の取 組みを 奨 励 する 内 容になっ ている。
2
)
UD
を考
え る プロセスと して伝
え るま た
、
次世 代
を 担う市民 である小 学 生へ の教 育と し て、
国
語 の教
科書
な ど にUD
が 取 り 入 れられてきて い る。熊 本
県とUSI
では一
般 市 民 や 小 学 生 を 対 象 にUD
ワー
クショ ップ を 開 催 して き た。
そ の活 動の中で、
日常の中 か ら 問 題 点 を 「気 づ き 」 と し て抽 出
し、
解 決 策
につなげ
て いくデザイ ン方 法
につ い て の リ テ ラ シー
を 向 上 させ るこ と、
実 生
活の体
験か らUD
を批判 的
に見 直 し、
それ らが すべ て完
成 さ れ た もの で はな く、
さ らに良
くし ていくべ き もので あ り、
わ れ わ れ 市 民の参 加 が 可 能であ るこ と を 感 じさ せる のが 重 要である と 考 え た。
デザ イン行 為 はデザ イナー
によるもの だ けで はない。 ハー
バー
ド・
ビ ジ ネス・
レ ビュー
誌2008
年
6
月 号で ア イデオCEO
の テ ィ ム・
ブ
ラ ウンが 「デザ イン思 考 」 とい う考 え 方 を 提 唱 し、
プロ セ スに 関 わる多
様
な 人 々 がデザ インプロセスを共有
すること ができると してい る。
また社 会 背景
と し て見る と、
学
生の学 力低
下も視
野 に 入っ て くる。PISA
は、
読 解 力
と数 学 的
リ テ ラ シー
と科 学 的
リ テ ラ シー
の3
つ の分 野につ い て15
歳の学 力を測る国 際 的な学 力 調 査である。
日 本の学 生 は 問 題解
決 能力
につ いて弱い という 結 果 が 出ている。
例
え ば、
単
に 文章
の テキス トでは な く、
非 連続
型 テ キ ス ト と い わ れ て い る デー
タや マップ か ら、
い か に情 報
を取 り出
す か、
そ れ をど
う 評価
して実
行 していくか と いうこ とに 評 価の重 点があ る。
UD
の 目指 す ものとPISA
の 目指 す 問 題 解 決 能 力 は、
社 会 的 弱 者の考 慮 という 視 点で見 れ ば、
全 く同 じ とは言 え ないが 「成人 後
の生活
に必 要
と さ れる重要
な 知識
や技能
につ い て の習 得」 や 「さ まざま な状況 に対 処す る能 力」な どか ら類
似
の部 分
を多
く含
むこ と か ら、
UD
教 育
は初 等 中等 教 育
で 「考
え る力」 を育
みPISA
へ の効 果も期 待で ぎ る。
そ こ で本 研 究で は、
UD
を 「展
示す
る」 か ら 「こど もの考
え る力
を育
む ツー
ル の開 発」 と して 学 習 キット をと らえ、
「ガイ ド ブック」 という プロセスを ま と め た 冊 子 や、
UD
カー
ドや 宿 題 シー
トな ど様
々 な補 助ツー
ル作 成し、
考える 力を育 む 内 容と した。
3
) 社 会 をつな ぐ 仕 組み つ くD
プロ トタ イ プの
開
発 に あ た り、
プロセスを 小学
生、
教 員
、
行
政、
企業
、
研 究機 関
な どス テー
クホ ルダー
の方々 と共有
す る こ とで、
で き る だ け多
くの人
に使
いや すい内 容
にす ることを試
み た。
同 様の教 材の貸 出 しキットの先 例としては、
国
立 民 族 学 博 物 館の 「みん ぱ っ く」 や 九 州 国 立 博 物 館の 「き ゅうばっ く」 な ど、
博物 館
がアウト リー
チ の目的
で、
ハ ンズ オン体 験
ができる キッ トを開 発し て い る。今
回のUD
移 動
ミュー
ジア ム で は、
社
会
をつ な ぐ仕組
み づ く りと して、
商
品事
例のサンプ ル を企 業
に協 賛いた だいた。
そ して実 際に使 っ た感 想 や 意 見 を 企 業に フィー
ドバ ック し、
実 際の社 会 に働 き か けるこ とでユ ニバー
サ ル社会
の発 展
に学校 側
が寄
与できる仕 組
みづ く り を行
っ た。
3 .UD
移 動
ミュー
ジ
アム
の構 成
UD
移 動ミュー
ジアム は、
]8
点
のUD
商 品
サンプ ル と、
それ ら の展
示 用 の16
点
の展示 スタン ドで構
成 され て い る。
さ ら に そ の中
で小 学
生の 日常生 活
で よ く使
われ
て い る5
点 (
八 サ ミ、
体 温 計、
爪 切り、
ノー
ト、
コ ンパ ス)を ピッ ク アップ し、
自
宅 に ある同 じ ものを 日 常 どのよ う に 使っ ているか につ いて調べて くる簡単
な課
題シー
ト を 宿 題 と して用
意 し た。
こ の シー
ト に は、
使
用 フ ロ セ スが子 ど も た ち に馴 染み や す く わ か りや すい よ う に書
かれ ている。
例 え ばハ サミを 保 管 場 所か ら 取 り 出 す
、
を3
段 階 評価
で、
へ っ ちゃら、
普 通、
大 変、
と書 き込め るよう になっ てお り、
自 分 と家
族 や友
達 を含
め計
3
人分
の違
いにつ い て調
べてく
る よう に なっ て い る。
ま た、
家
で使
っ て い る ハ サ ミ を置い て な ぞ る こ と で、
ど うい う ものを使
っ て い る か を 記 録 し た り、
実 際 に 切 る作 業をす る 練 習 など、
体 験 型 を 心 が けて作
成 し た。
これ は、
図2
「く ら し 」 の展示 スタン ド 鴨爵
窟
ぐ
駑
ゴ
惣
ご
甑
爨
ゼ
澄
、
3
曇
照
∵
蕊
斎
1
∫
广
拶
づ
噛
〆
冗
巉
1
_ 〆 …
一
一
魂
_ノ
図3
家で調べ てくる課 題シー
ト黼
騰
糊 欝
訓
1
』
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of DesignUD
が優
れて い る、
とい うお仕着
せ で はなく、
今 使
っ て い る も の に対し て、
UD
は本当
に い い の か を実 際
に 比較し考え る 力 を養
うこ とを
目的
として いる。
考
え る力
を強
調 す る た め に、
例
え ば ハ サ ミで は、
同じUD
でも二 つ の 違う デザ インを 展 示に入 れ、
ど ち ら が 使いや すいか 考 えるきっ か け を 与え る こ とを 意図 した。 ま た展 示
は、
「UD
の考
え方
」 か ら始
まる。 こ の セクショ ン の顔
と し て故
ロン・
メ イ ス の絵を ア イ コ ン と して取 り入 れ た。
他
のセク ショ ン に も そ れ ぞ れ を 代 表 する アイコンを 取 り 入 れ た。
これ らの絵 は、
福 岡でエイブ
ルアー
ト活 動 を 盛 ん に行
っ てい るNPO
の 工房 まる にお 願い し た。
続 くUD
商 品 事 例は、
単品
を羅
列 する の では な く、
生活
シー
ンが わ か りや すいよう に 「ま な び 」、
「くら し」、
「こ うきょう」 と い う、
3
つ の空 間に分 けて構 成
した。 輻tt
vaetv
、
’
鋤 窯麟
、
1
・
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静・
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ド』
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藤
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一
鬮 躙驪灘 鑼 鍵 癰 鑼 鑼 靉 鮮 参 潔 縛 灘象 灘 毒 趣 莎
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轡 鷁 蕨 蝉気
磯 嘩 構繍 醜 重ひ
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.
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蓼灘 輳轡 綾贈 毒 靉轍
鍵 緲 義働。
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ティ ス トに よ る ア イコ ン用 イ ラ ス ト2
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一
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一
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ヒ
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転
噌
雇
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.
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が
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輪
」
り
’
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驚
蔵
’
蓄
写
ヒ
も
.
ん
1h
乞
図5 講 師 用 ガ イ ドブックの学 習 プログ ラ ム》
黠
授 業
で は、
総 合
学習
の時 間で の使 用 を 想 定 してお り、5
段 階 に 分 け た講 師用 ガイ ドブック を 添 付し、
45 分 授 業5
回で 完 結 する内 容 と し た。
その中で実 際 にUD
商
品事
例 が中
心とな るの は 第2
段 階と第3
段 階で、
そ れ以 外はUD
の考え 方 につ い て の 内 容となっ て い る。第
1
段階
は、
本 編に 入 る前に行うゲー
ム 形 式の学 習。
これ か らプログラム を 進 行 するに あ た り、
子 ど も た ちの心 構 え や 理 解12
ヂ ザ イン学研 究特 集.
号special issue ofjapanesesocle 呼forthesciemceofdesign
vol