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_??_ Fig. 1. Annual number of subjects who were bitten by possibly rabid animals in the rabies endemic regions and thereafter visited our vaccine clin

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狂犬病 の現況

高山

直秀

要 旨 狂 犬 病 は 予 防 で き るが,治 癒 させ ら れ な い 代 表 的 ウ イ ル ス 性 人 獣 共 通 感 染 症 で あ る 。 日本 で は1957年 以 降 ヒ トの 狂 犬 病 も動 物 の狂 犬 病 も発 生 の報 告 は な い が,狂 犬 病 が 常 在 す る 国 々 は い ま な お 多 数 あ る 。 した が っ て,狂 犬 病 が 日本 に侵 入 す る 可 能 性 は 常 に考 え て お く必 要 が あ る 。 近 年 日本 か ら海外 に旅 行 ない し出 張 す る 人 々 は年 間1600万 人 を超 え た 。 こ う した状 況 で は狂 犬 病 常 在 地 へ の 旅 行 者 が イ ヌ や ネ コ な ど に咬 まれ て狂 犬 病 ウ イ ル ス に感 染 し,帰 国 後 に狂 犬 病 を発 病 す る輸 入 狂 犬 病 が発 生 す る 可 能性 は高 い 。 日本 で は狂 犬 病 ワ クチ ン を常 備 す る 医 療 機 関 が 少 な く,狂 犬 病 免 疫 グ ロ ブ リ ンは 製 造 も輸 入 も さ れ て い な い た め,海 外 で の 動 物 咬 傷 被 害 者 に 狂犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 を迅 速 に実 施 で き る状 況 に な い 。 日本 で の 輸 入狂 犬 病 発 生 を防 ぐた め に は,医 療 機 関 に お け る 狂 犬 病 へ の備 えが 必 須 で あ る。 (日 救 急 医 会 誌2002; 13: 351-60) キ ー ワ ー ド:輸 入 狂 犬 病,狂 犬 病 ワ ク チ ン,曝 露 後 発 病 予 防,曝 露 前 免 疫,人 獣 共 通 感 染 症 1. い ま,な ぜ 狂 犬 病 か 日本 か ら狂 犬 病 が 消 え て す で に40年 以 上 が 経 過 し,狂 犬 病 の 診 療 経 験 が あ る医 師 も獣 医 師 も ほ とん どい な くな っ た。 日本 人 の 大 部 分 は狂 犬 病 を過 去 の 病 気 と思 い こ んで い る よ う にみ え る。 しか し,狂 犬 病 の 国 内 発 生 が ない 国 は例 外 的存 在 で あ り,狂 犬病 は大 多 数 の 国 々 に常 在 して お り,と くにア ジ ア地域 で は毎 年 多 数 の狂 犬 病 犠 牲 者 が 出 て い る1)。 日本 国 内 に狂 犬 病 が な くと も,交 通 手段 が発 達 して い る現 在 で は,周 囲 の 国 々か ら狂 犬 病 が侵 入 す る 可 能性 は 以 前 よ り も増 大 して い る。 国 内 で発 生 す る 可 能性 が 最 も高 い の は,狂 犬 病常 在 地へ の旅 行 者 が イヌ や ネ コ に咬 まれ て 狂 犬 病 ウ イル ス に感 染 し,帰 国後 に発 症 す る ヒ トの輸 入 狂 犬 病 で あ る。 海 外 渡 航 者 数 は 年 々増 加 して い る う え,狂 犬病 を忘 れ た 日本 人 は狂 犬 病 に 対 す る 警 戒 心 が ま っ た く な い た め,狂 犬 病 危 険 動 物 に 咬 ま れ る 可 能 性 が 高 い か らで あ る(Fig. 1)。 狂 犬 病 を 忘 れ た 日本 で は,狂 犬 病 ワ ク チ ン を常 備 す る 医 療 機 関 が き わ め て 少 な く,狂 犬 病 免 疫 グ ロ ブ リ ン は 輸 入 も製 造 も さ れ て い な い な ど,医 療 関 係 者 の 間 に も狂 犬 病 に 対 す る 備 え が ほ と ん ど な い 。 ま た, 狂 犬 病 の ウ イ ル ス 学 的 検 査 を 実 施 で き る 研 究 機 関 も 限 ら れ て い る 。 狂 犬 病 患 者 が 年 間0-5例 しか な い 米 国 で も狂 犬 病 患 者 が 生 前 に 診 断 さ れ ず,病 理 解 剖 で は じ め て 狂 犬 病 と 診 断 さ れ る こ とが 少 な くな い2-4)。 病 理 解 剖 実 施 率 が 低 い 日 本 で は,た と え 狂 犬 病 患 者 が い て も,生 前 診 断 が で き な い ま ま見 逃 さ れ る 可 能 性 が 大 き い 。 日 本 で の 輸 入 狂 犬 病 は1970年 に1例 報 告 さ れ て い る に 過 ぎ な い 。 狂 犬 病 が 日本 か ら消 え て 15年 足 ら ず の 時 期 で あ っ た が,ネ パ ー ル で イ ヌ に 咬 ま れ て 帰 国 した 青 年 が 狂 犬 病 を心 配 した に も か か わ らず,日 本 に狂 犬 病 は な い とい う思 い こ み の た め か, 生 前 診 断 で き な か っ た5)。 生 前 診 断 の 前 提 は 狂 犬 病 を疑 う こ と で あ る 。 飛 行 機 で 数 時 間 の 地 域 で は 数 百,

Actual situation of rabies 東 京 都 立 駒 込 病 院 小 児 科

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Fig. 1. Annual number of subjects who were bitten by possi-bly rabid animals in the rabies endemic regions and thereaf-ter visited our vaccine clinic to receive the rabies post-expo-sure prophylaxis. _??_ =female; •¡=male 数 千 の 人 々 が 毎 年 狂 犬 病 の 犠 牲 に な っ て い る こ と を 認 識 し,神 経 症 状 を 示 す 渡 航 歴 が あ る 患 者 で は 狂 犬 病 を 鑑 別 診 断 に 加 え る べ き で あ る 。 狂 犬 病 は 決 して 過 去 の 病 気 で は な い 。 2. 狂 犬 病 の 概 略 狂 犬 病:「 感 染 症 法 」に よ る4類 感 染 症,代 表 的 人 獣 共 通 感 染 症 の ひ とつ 。 病 原 体:狂 犬 病 ウ イ ル ス(ラ ブ ドウ イ ル ス 科 リ ッ サ ウ イ ル ス 属) 自 然 宿 主:キ ツ ネ,ス カ ン ク,ア ラ イ グ マ,コ ウ モ リ,イ エ ロ ー マ ン グ ー ス な ど。 媒 介 動 物:イ ヌ,ネ コ な ど。 疫 学 的 特 徴:一 部 の 島 国 や 半 島 の 国 々 を 除 い て, 全 世 界 で 発 生 。 ほ と ん どす べ て の 哺 乳 動 物 が 罹 患 す る が,地 域 に よ っ て ウ イ ル ス 伝 播 動 物 が 異 な り,ア ジ ア,ア フ リ カ,中 南 米 で は イ ヌ の 狂 犬 病 が 多 発 し,西 欧, 北 米 で は 野 生 動 物 の 狂 犬 病 が 多 い 。 南 北 米 大 陸 で は コ ウ モ リ が 狂 犬 病 ウ イ ル ス を 媒 介 し て い る 。 臨 床 的 特 徴:狂 犬 病 ウ イ ル ス が 致 死 的 な 脳 炎 を 引 き起 こ す た め,発 病 す れ ば ほ ぼ100%死 亡 す る 。 発 病 病 理 的 特 徴:侵 入 門 戸 付 近 で 増 殖 し た 狂 犬 病 ウ イ ル ス が 神 経 を上 行 し て 中 枢 神 経 系 に 達 して,は じめ て 症 状 が 出 る の で 潜 伏 期 が 通 常1-3か 月 と長 い 。 感 染 経 路:狂 犬 病 ウ イ ル ス 感 染 動 物 に よ る 咬 傷 が 主 な 感 染 経 路 。 ほ か に 感 染 動 物 の 唾 液 に よ る 粘 膜 曝 露,エ ア ロ ゾ ル 感 染,角 膜 移 植 に よ る 感 染 な ど が あ る 。 ヒ トで の 潜 伏 期:1-3か 月 が60%を 占 め る 。1年 以 上 の 例 も6-8%あ る 。 ヒ トで の 主 要 症 状:前 駆 症 状 と し て は,咬 傷 部 周 囲 の か ゆ み,痺 痛,頭 痛,発 熱 。 急 性 期 症 状 と して は,強 い 不 安 感,恐 水 症,恐 風 症,け い れ ん 発 作,麻 痺 な ど。 診 断 上 の 要 点:狂 犬 病 常 在 地 へ の 渡 航 歴,動 物 咬 傷 歴 の 確 認,恐 水 発 作,恐 風 発 作 。 治 療 法:対 症 療 法 の み 。 ほ ぼ100%死 亡 す る 。 予 防 法:組 織 培 養 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 に よ る 。 狂 犬 病 危 険 動 物 に よ る 咬 傷 を 受 け る 前 の 曝 露 前 免 疫 と 咬 傷 を 受 け た あ と の 曝 露 後 発 病 予 防 が あ る 。 曝 露 後 発 病 予 防 に は 抗 狂 犬 病 免 疫 グ ロ ブ リ ンの 併 用 が 望 ま し い 。 備 考:診 断 後7日 以 内 に 最 寄 りの 保 健 所 に 届 け 出 る 。 狂 犬 病 の イ ヌ な ど を 診 断,検 案 し た 獣 医 師 は た だ ち に 最 寄 りの 保 健 所 に 届 け 出 る 。 3. 第2次 世 界 大 戦 後 の 流 行 と 狂 犬 病 予 防 法 第2次 世 界 大 戦 後 の 混 乱 の 中 で,1935年 以 降 全 国 で の 発 生 件 数 が20件 以 下 に ま で 減 少 した 狂 犬 病 発 生 数 が 再 び 増 加 し は じ め た 。1948年 に 東 京 で 流 行 が は じ ま り,翌1949年 に は 狂 犬 病 は 関 東 一 円 に 広 が り, 東 京,千 葉,埼 玉 で は 狂 犬 病 の イ ヌ が100頭 以 上 と な り,狂 犬 病 患 者 も76名 に 達 し た 。1950年 に は 狂 犬 病 の イ ヌ の 数 は 関 東 地 方 を 中 心 に867頭 と な っ た 。

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1950年8月,狂 犬 病 予 防 法 が 制 定 さ れ,飼 い イ ヌ の 登 録 お よ び 年2回 の 予 防 接 種 が 義 務 づ け られ た 。 一 方 で 野 良 イ ヌ の 捕 獲 な ど に も力 を 入 れ た 。 そ の 結 果 1951年 以 降 狂 犬 病 の 発 生 件 数 は 確 実 に 減 少 し,1957 年 以 降 は 全 国 で の 狂 犬 病 発 生 を ゼ ロ に す る こ と が で き た6)。 日本 が 狂 犬 病 を 撲 滅 で き た 理 由 と し て,(1)島 国 で あ る た め 防 疫 活 動 が 効 率 的 に 実 施 で き た,(2)野 生 動 物 の 間 に 狂 犬 病 の 流 行 が な か っ た,(3)コ ウ モ リ と イ ヌ と の 間 に 生 活 圏 の 重 複 が な か っ た,(4)国 民 の 民 度 が 高 く狂 犬 病 予 防 に 協 力 的 で あ っ た な ど が 挙 げ ら れ て い る7)。 しか し,こ の 間 に命 が け で 狂 犬 病 に立 ち 向 か っ た 狂 犬 病 予 防 員(獣 医 師)や 予 防 技 術 員 な ど の な か か ら,狂 犬 病 や 曝 露 後 発 病 予 防 の 副 反 応 な ど の た め に 死 亡 し た り,廃 人 に な る な ど の 犠 牲 者 が 少 な か らず 出 た こ と を 忘 れ て は な ら な い 。 4. 世 界 に お け る 狂 犬 病 発 生 状 況 日本 で は,地 理 的 条 件 が 幸 い して,ま た 国 民 が 狂 犬 病 対 策 に 協 力 的 で あ っ た た め,狂 犬 病 を撲 滅 で き た が,世 界 の 大 部 分 の 地 域 で は,い ま な お 狂 犬 病 が 発 生 し て い る 。 狂 犬 病 常 在 地 と い っ て も,地 域 に よ り狂 犬 病 発 生 状 況 に 大 き な 差 が あ る 。 ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 で は イ ヌ や ネ コ に 対 す る狂 犬 病 対 策 の 実 施 に よ っ て イ ヌ や ヒ ト の 狂 犬 病 は 発 生 が な く,森 林 地 帯 の キ ツ ネ な ど の 野 生 動 物 に み ら れ る だ け で あ る(森 林 型 流 行)。 キ ッ ネ の 狂 犬 病 発 生 地 域 も,狂 犬 病 生 ワ ク チ ン を餌 に 入 れ て 空 中 か ら散 布 して キ ツ ネ を免 疫 す る 作 戦 を 展 開 し て い る た め,か な り狭 め ら れ て い る 。 北 米 で も イ ヌ や ネ コ へ の 狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 に よ り,森 林 や 草 原 に住 む キ ツ ネ,オ オ カ ミ,ス カ ン ク,ア ラ イ グマ,コ ウ モ リ な ど の 野 生 動 物 に 狂 犬 病 発 生 が み ら れ る に 過 ぎ ず(森 林 型 流 行),イ ヌ に 咬 ま れ て 狂 犬 病 を 発 病 す る 症 例 は 輸 入 例 を 除 い て ほ と ん ど み ら れ な い 。 米 国 内 で は1990年 か ら1998年 末 ま で に 狂 犬 病 患 者 が27 例 報 告 さ れ て い る が,そ の う ち20例 は コ ウ モ リ か ら 感 染 し た もの と結 論 さ れ て い る8)。 ア ジ ア,ア フ リ カ お よ び 中 南 米 で は 依 然 と し て 動 物 に よ る 咬 傷 が 原 因 で ヒ ト狂 犬 病 例 が 多 数 発 生 し て い る 。 全 世 界 の 年 間 ヒ ト狂 犬 病 発 生 数 は4万 か ら5 万 例 と さ れ て い る が,そ の90%は イ ン ドを は じ め と す る ア ジ ア ・ア フ リ カ 地 域 で 発 生 し て い る9)。 ア ジ ア ・ア フ リ カ ・中 南 米 で は,主 に 都 市 部 の イ ヌ の 間 で 狂 犬 病 ウ イ ル ス が 伝 播 さ れ て お り,ヒ トや ネ コ は 狂 犬 病 の イ ヌ に 咬 ま れ て 狂 犬 病 を 発 病 して い る(都 市 型 流 行)。 ア ジ ア 地 域 で 狂 犬 病 ウ イ ル ス を 感 染 させ る 加 害 動 物 の95%は イ ヌ で あ る 。 ア フ リ カ で は イ ヌ の ほ か に ジ ャ ッ カ ル や マ ン グ ー ス が 狂 犬 病 伝 播 動 物 と し て 重 要 で あ る 。 中 南 米 で も北 米 と 同 じ く食 果 コ ウ モ リや 食 虫 コ ウ モ リ が 狂 犬 病 ウ イ ル ス に 感 染 し て い る 。 しか し,狂 犬 病 伝 播 動 物 と し て は 吸 血 コ ウ モ リの 方 が 重 要 で あ る 。 5. ア ジ ア に お け る 狂 犬 病 狂 犬 病 発 生 状 況 に 基 づ い て ア ジ ア 諸 国 は4段 階 に 区 分 で き る 。 第1は 香 港 の よ う に,以 前 か ら ヒ トの 狂 犬 病 発 生 が み ら れ な い 国,第2は イ ン ドネ シ ア の よ う に 狂 犬 病 対 策 が 効 果 を 上 げ は じ め,一 部 の 地 域 で 狂 犬 病 が 消 失 し た 国,第3は タ イ や 中 国 の よ う に, ヒ トの 狂 犬 病 発 生 が 激 減 し て い る 国,第4は 狂 犬 病 対 策 が 実 施 で き ず,狂 犬 病 が 多 発 し て い る 国 で あ る10)。 ア ジ ア 諸 国 に お け る 狂 犬 病 の 現 状 は 下 記 の よ う で あ る 。 韓 国 で は,1984年 に は 発 生 件 数 が ゼ ロ と な っ た が,1993年 か ら北 緯38度 線 を 中 心 とす る 非 武 装 中 立 地 帯 に 近 い 地 域 に 限 局 し て 再 び 動 物 の 狂 犬 病 の 発 生 が み ら れ,次 第 に 増 加 し て い る 。 こ れ は 非 武 装 中 立 地 帯 で 発 生 し て い る 森 林 型 狂 犬 病 流 行 が 波 及 し た も の と考 え ら れ る 。 ヒ トの 狂 犬 病 症 例 は1984年 以 降 報 告 さ れ て い な か っ た が,1999年5月 に 狂 犬 病 に よ る 死 亡 者 が1例 発 生 し た(一 部 佐 藤 克 氏 の 調 査 に よ る)。1994年 以 降,韓 国 保 健 福 祉 省 は ヒ ト2倍 体 細 胞 ワ ク チ ン を100ド ー ズ,お よ び25件 の 曝 露 後 発 病 予 防 に 十 分 な 免 疫 グ ロ ブ リ ン を輸 入 し て い る 。 イ ン ドネ シ ア で は,1989年 か ら,狂 犬 病 流 行 阻 止

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の 活 動 が ジ ャ ワ 島 お よ び カ リマ ン タ ンの 島 で は じめ ら れ,こ れ らの 地 域 で の ヒ ト狂 犬 病 症 例 発 生 総 数 が 1988年 の117例 か ら1995年 の36例 ま で 減 少 し た 。 さ ら に,一 部 の 地 域 で は 報 告 症 例 が ゼ ロ に な っ た 。 一 方 で,狂 犬 病 発 生 が な か っ た フ ロ ー レ ス 島 で は1997 年 に 他 の 島 か ら持 ち 込 ま れ た イ ヌ か ら 狂 犬 病 流 行 が 発 生 し,多 数 の イ ヌ を 処 分 し た が,流 行 は 終 息 せ ず, 2000年 に は ヒ ト狂 犬 病 も59件 発 生 し た 。 イ ン ドで は 一 年 中,狂 犬 病 が 流 行 し て い る 。 毎 年 約3万 人 が 狂 犬 病 で 死 亡 し,約100万 人 が 狂 犬 病 ワ ク チ ン に よ る 治 療 を 受 け て い る 。50万 人 の 人 々 は 無 料 で 接 種 さ れ る セ ン プ ル 型 ワ ク チ ン(10-5参 照)を 受 け,残 りの 半 数 は 有 料 で 組 織 培 養 狂 犬 病 ワ ク チ ン 接 種 を 受 け て い る 。 狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 を 受 け る 人 の 約35-40%は 子 ど もで あ り,曝 露 後 発 病 予 防 を 必 要 と す る 動 物 咬 傷 症 例 の96%は イ ヌ に 咬 ま れ て い る 。 最 近,狂 犬 病 に よ る 死 亡 者 数 が 増 加 し た 地 方 が あ る 。 狂 犬 病 死 亡 者 数 増 加 の 第1要 因 は イ ヌ 個 体 数 の 増 加 と考 え ら れ て い る 。 犠 牲 者 増 加 の 第2要 因 は, 人 口 密 度 が 増 大 し て ヒ ト と イ ヌ との 接 触 が 増 し た こ と で あ り,第3要 因 は,イ ン ドで は 効 果 的 な 動 物 狂 犬 病 流 行 阻 止 計 画 が 実 施 さ れ て い な い こ とで あ ろ う。 バ ン グ ラ デ シ ュ は 狂 犬 病 常 在 地 で あ る が,狂 犬 病 に 関 す る 正 確 な 統 計 的 デ ー タ は な い 。 各 地 に あ る 病 院 の 診 療 録 に 基 づ き,毎 年 約2000人 が 狂 犬 病 で 死 亡 し て い る と推 定 さ れ る 。 咬 傷 の95%は イ ヌ に よ る も の で あ り,曝 露 後 発 病 予 防 を受 け る 人 の 約45%は15 歳 未 満 の 小 児 で あ る 。 い ま で は,多 くの 人 々 が 狂 犬 病 を 知 っ て い る が,依 然 と し て 動 物 の 咬 傷 を 軽 視 し て 治 療 を 受 け て い な い 。 ネ パ ー ル も狂 犬 病 常 在 地 で あ り,毎 年210人 以 上 の 狂 犬 病 に よ る ヒ ト死 亡 例 が 報 告 さ れ て い る 。 し か し,意 識 の 低 さ と情 報 網 の 欠 如 の た め,狂 犬 病 発 生 事 例 や 狂 犬 病 症 例 の 報 告 漏 れ が 多 い 。 タ イ で は,ヒ ト狂 犬 病 死 亡 数 が1980年 の370件 か ら1995年 の74件 へ と確 実 に 減 少 して き た 。 こ の ヒ ト狂 犬 病 死 亡 数 の 減 少 は,日 本 の よ う に イ ヌ へ の ワ ク チ ン接 種 に よ る も の で は な く,イ ヌ な ど に 咬 ま れ た 人 々 に た だ ち に 適 切 な 曝 露 後 発 病 予 防 を 行 う こ と に よ っ て 達 成 さ れ た も の で あ る 。 し た が っ て,動 物 咬 傷 を受 け な が ら曝 露 後 発 病 予 防 を 受 け な い 者 で の 狂 犬 病 発 病 の 危 険 は 依 然 と し て 大 き い 。 タ イ に お け る 狂 犬 病 の 主 な 伝 播 動 物 は イ ヌ で あ り,96%以 上 を 占 め る 。 残 る4%は 主 に ネ コ,サ ル,さ ら に 頻 度 は き わ め て 低 い が,鶴 歯 類 と小 型 野 生 動 物 で あ る 。 タ イ で は 組 織 培 養 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ンが 輸 入 さ れ て 広 く使 用 さ れ て い る 。 中 国 で は,1980年 代 の 末 ま で 狂 犬 病 が 中 国 の す べ て の 地 方 で か な り流 行 して お り,1987-89年 に は 毎 年 5200例 以 上 の 狂 犬 病 に よ る ヒ トの 死 亡 例 が 報 告 さ れ て い た 。 そ の 後,狂 犬 病 に よ る 死 亡 者 数 は 劇 的 に 減 少 し,1990年 に は3500例,1995年 に は わ ず か200例 ま で に な っ た 。 狂 犬 病 死 亡 者 の 減 少 は 主 に,ハ ム ス タ ー 初 代 腎 細 胞 を用 い て 生 産 さ れ た 狂 犬 病 ワ ク チ ン を用 い た 狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 が 全 国 的 に 実 施 さ れ て い る こ と に よ る(毎 年500万 人 に 実 施)。 ま た,一 部 の 地 域 で は べ ロ 細 胞 狂 犬 病 ワ ク チ ン が 輸 入 さ れ, 曝 露 後 発 病 予 防 に 使 用 さ れ て い る 。 ヒ ト狂 犬 病 症 例 の 大 部 分 は 中 国 南 東 地 域 か ら報 告 さ れ て お り,患 者 の90%以 上 は 狂 犬 病 を 疑 わ れ る イ ヌ に,約5%は ネ コ に 咬 ま れ て い る 。 6. 狂 犬 病 の 感 染 経 路 通 常 ヒ トは 狂 犬 病 の イ ヌ や ネ コ,キ ツ ネ,狂 犬 病 ウ イ ル ス 保 有 コ ウ モ リ な ど に 咬 ま れ て 感 染 を 受 け る が,手 指 の 傷 を 介 す る 経 皮 感 染,エ ア ロ ゾ ル を 介 す る経 気 道 感 染,さ ら に 角 膜 移 植 に よ る ヒ ト-ヒ ト感 染 も8例 報 告 さ れ て い る 。 患 者 に 咬 ま れ た り,患 者 の 唾 液 で 粘 膜 が 汚 染 さ れ て 医 師 や 看 護 婦 が 狂 犬 病 を 発 病 した 例 は こ れ ま で 報 告 さ れ て い な い 。 6-1. 経 気 道 感 染 咬 み 傷 以 外 の 感 染 経 路 で 疫 学 上 重 要 な も の は 経 気 道 感 染 で あ る 。 米 国 で1957年 と1960年 に コ ウ モ リ が 住 む 洞 窟 に 入 っ た 科 学 者 と鉱 山 技 師 が 狂 犬 病 を 発 病 し た 。2人 と も動 物 に咬 ま れ た こ と は な か っ た が, 共 に 発 病 の 少 し前 に 同 じ テ キ サ ス 州 の 洞 窟 に 入 っ て

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い た 。 そ の 後 の 調 査 で こ の 付 近 の 洞 窟 に住 む 食 虫 コ ウ モ リ の 間 で 狂 犬 病 が 蔓 延 して い る こ とが 判 明 した 。 狂 犬 病 ウ イ ル ス は コ ウ モ リの 唾 液 や 鼻 汁,尿 に排 泄 さ れ て お り,こ れ ら ウ イ ル ス を 含 む 体 液 が コ ウ モ リ の 出 す 超 音 波 に よ っ て 霧 状 に な っ て 洞 窟 内 に漂 っ て い て,こ れ を 吸 い 込 む こ と に よ っ て 狂 犬 病 に感 染 す る と考 え られ た 。 こ の 推 論 は 後 に動 物 実 験 と空 気 か ら の 狂 犬 病 ウ イ ル ス の 分 離 に よ っ て 確 認 さ れ た11)。 コ ウ モ リが 住 む 洞 窟 内 で の 狂 犬 病 感 染 は,ス カ ン ク の よ う に 洞 窟 を 利 用 して い る 動 物 に も起 こ り,こ こ で 狂 犬 病 に な っ た 動 物 が 洞 窟 の 内 外 で 他 の 動 物 に 狂 犬 病 を 伝 播 す る の で,疫 学 的 に 重 要 で あ る 。 6-2. 実 験 室 内 感 染 実 験 室 内 感 染 例 は こ れ ま で 米 国 か ら2例 が 報 告 さ れ て い る 。1972年3月1日 に56歳 の 獣 医 師 が 頭 痛, 嘔 吐,腹 痛,全 身 倦 怠 感 を訴 え て 入 院 し た 。1.5日 後 に 体 温 が40.5℃,呼 吸 数 は40/minと な っ た 。 患 者 は 昏 睡 に 陥 り,呼 吸 も 不 規 則 と な り,発 病8日 後 に 死 亡 し た 。 蛍 光 抗 体 法 で 脳 組 織 に狂 犬 病 ウ イ ル ス 抗 原 が 証 明 さ れ,マ ウ ス を 用 い て 狂 犬 病 ウ イ ル ス が 分 離 さ れ た 。 患 者 に 動 物 咬 傷 歴 は な か っ た が,発 病12日 前 に 動 物 用 狂 犬 病 ワ ク チ ン を 製 造 す る た め に ワ ク チ ン株 を 感 染 さ せ た ヤ ギ の 脳 を ミキ サ ー で 粉 砕 し た と き に 発 生 し た エ ア ロ ゾ ル を吸 入 して 狂 犬 病 に 罹 患 し た もの と結 論 さ れ た 。 患 者 は13年 前 に 狂 犬 病 ワ ク チ ンの 接 種 を 受 け て い た が,抗 体 は な か っ た12)。 2例 目 は32歳 の 技 師 で,彼 は 誤 っ て 狂 犬 病 ワ ク チ ン株 の エ ア ロ ゾ ル に 曝 露 さ れ た 。2週 間 後 に 発 熱 し, 頭 痛,倦 怠 感 を訴 え,さ ら に1週 後 に 意 識 が 混 濁 し, 昏 睡 に 陥 っ た 。 昏 睡 状 態 は12日 間 続 い た が,そ の 後 意 識 も運 動 機 能 も徐 々 に 回 復 し た 。 し か し,失 語 症 が 残 っ た 。 こ の 技 師 は 定 期 的 に 狂 犬 病 ワ ク チ ン の 接 種 を 受 け て お り,発 病1か 月 前 の 検 査 で は 中 和 抗 体 が32倍 で あ っ た 。 発 病1.5か 月 後 の 中 和 抗 体 は 血 中 が64000倍,髄 液 中 が16000倍 で あ っ た13)。 こ の 症 例 は ワ ク チ ン接 種 に よ り血 中 中 和 抗 体 を 保 有 し て い て も,狂 犬 病 ウ イ ル ス を エ ア ロ ゾ ル と し て 多 量 に 吸 い 込 め ば 発 病 し う る こ と を 教 え て い る 。 6-3. 移 植 に よ る感 染 1979年 米 国 で 原 因 不 明 の 髄 膜 脳 炎 の た め 死 亡 し た 39歳 の 森 林 警 備 員 か ら 角 膜 移 植 を受 け た37歳 の 女 性 が,4.5週 後 に右 眼 球 後 部 の 頭 痛 お よ び肩 項 部 の 疼 痛 を訴 え た 。2日 後 に 頭 痛 が 右 側 全 体 に 及 び,顔 の 右 半 分 に しび れ 感 が 生 じた 。3日 後 に は 構 音 障 害 と歩 行 障 害 が 現 れ,4日 後 に 嚥 下 困 難 が 現 れ た た め 入 院 し た 。 入 院 後 筋 力 低 下,呼 吸 不 全,嚥 下 困 難 が 進 行 した た め 気 管 内 挿 管 を行 っ た 。 そ の 後 昏 睡 に 陥 り,入 院16 日 目 に心 不 全 の た め 死 亡 し た 。 病 理 検 査 に よ り移 植 を 受 け た 患 者 の 角 膜,視 神 経,側 頭 葉,脳 幹 部 に狂 犬 病 ウ イ ル ス が 証 明 さ れ た14)。2例 目 は1980年 フ ラ ン ス で 脳 炎 の た め 死 亡 し た57歳 の 女 性 か ら角 膜 移 植 を 受 け た36歳 の 男 性 で,術 後33日 に 発 病 し,41日 後 に死 亡 し た 。 死 後 の 検 査 で 脳 内 に 狂 犬 病 ウ イ ル ス が 証 明 さ れ た 。 角 膜 提 供 者 の 女 性 の 脳 か ら ネ グ リ小 体 が 検 出 さ れ た15)。3, 4例 目 は1981年 タ イ で 意 識 障 害 を起 こ し て 死 亡 し た 少 年 か ら角 膜 の 移 植 を 受 け た 41歳 の 女 性 と25歳 の 男 性 で あ り,術 後 そ れ ぞ れ22 日 と31日 に死 亡 し た 。 女 性 患 者 の 脳 か ら狂 犬 病 ウ イ ル ス が 検 出 さ れ た 。 ま た 角 膜 提 供 者 の 脳 か ら も ネ グ リ小 体 が 検 出 さ れ た16)。5, 6例 目 は1988年 イ ン ドで 同 じ提 供 者 か ら 角 膜 の 移 植 を 受 け た64歳 と48歳 の 男 性 で,そ れ ぞ れ 術 後15日 と253日 で 死 亡 した 。48 歳 の 男 性 は64歳 の 男 性 が 狂 犬 病 と診 断 さ れ た 後,た だ ち に 狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 に よ る 曝 露 後 発 病 予 防 を 受 け た が,な ぜ か 途 中 で ワ ク チ ン 接 種 を 止 め て し ま っ た 。 潜 伏 期 が 延 び た の は 狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 の 効 果 で あ る と考 え られ る17)。7, 8例 目 は1994年 に イ ラ ン で 角 膜 移 植 を受 け た2名 の 男 性 で,そ れ ぞ れ 手 術 後26日 と40日 に 発 病 し,27日 と41日 後 に死 亡 し た18)。 こ れ ら の 症 例 は,原 因 不 明 の 脳 炎 で 死 亡 した 患 者 か ら の 角 膜 移 植 は 避 け る べ きで あ る こ と を教 え て い る と 同 時 に,狂 犬 病 の 生 前 診 断 の 難 し さ も例 示 し て い る 。 7. 狂 犬 病 の 症 状 お よ び 治 療 法 潜 伏 期 は15日 程 度 か ら1年 以 上 と ば ら つ き が 大 き

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い 。患 者 の約60%で は潜伏 期 が1-3か 月 で あ り,1年 以 上 の 潜伏 期 が7-8%の 患 者 で記 録 され て い る。 前 駆 期 は2-10日 間で,発 熱 や 食 欲 不 振 な ど非 特 異 的症 状 に加 え て,す で に治 癒 した咬 傷 部 位 が 再 び チ クチ ク痛 ん だ り,咬 傷 周 囲 の知 覚 過 敏,か ゆ み な ど が現 れ る。知 覚 過敏 や痺 痛 は 求心 性 に範 囲が 広 が り, 咬傷 を受 け た 上 下肢 の け い れ ん も起 こ る。 急 性 神 経 症状 期 は2-7日 間 続 く。 患 者 は 間欠 的 に 強 い不 安 感 に襲 わ れ,精 神 的動 揺 を示 す が,そ れ以 外 の と きは 意 識 清 明 で 医 療 職 員 に も協 力 的 で あ る。 患 者 の約 半 数 に咽 頭 喉 頭 筋 群 の け い れ ん に起 因す る 嚥 下 障 害 が起 こる。 この け い れ ん に は強 い痛 み を伴 うた め,患 者 は発 作 の原 因 とな る飲 水 を避 け る よ う にな る(恐 水 症)。 また喉 頭 の け い れ ん は顔 面 に冷 た い風 が 当 た っ て も誘 発 され る た め,患 者 は風 を避 け る(恐 風症)。 さ らに進 行 す る と,高 熱,錯 乱,麻 痺, 協 同運 動 失 調,全 身 け い れ ん な どが 現 れ,や が て昏 睡 に陥 る。 昏 睡 期 に入 る と,低 血 圧,不 整 脈,呼 吸 不 全 な どが 起 こ り,や が て呼 吸 停 止,心 停 止 して死 亡す る(狂躁 型)。 一 方,恐 水 発 作 や恐 風 症 を示 さず, 麻 痺 が 主 な症 状 とな る狂 犬 病(麻 痺 型)も 患 者 の20% 程 度 あ る と され て い る19)。 狂 犬 病 は,発 病 の予 防 は可 能 で あ っ て も,治 癒 さ せ え な い疾 患 で あ る。 発 病 して しま っ た狂 犬 病 に対 す る有 効 な治 療 法 は ない 。1980年 代 に イ ン ター フ ェ ロ ンが 治 療 に応 用 さ れ た こ とが あ るが,無 効 で あ っ た20)。ワ クチ ン接 種 歴 の ない 回復 例 の 報 告 は,米 国 で の6歳 の男 児 とア ル ゼ ンチ ンで の45歳 の女 性 の2 例 の み で あ る。 狂 犬 病 の 長 い 潜 伏 期 を利 用 して,狂 犬病 危 険動 物 に咬 ま れ た後,た だ ち に狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を 開始 す る曝 露 後 発 病 予 防 が 現 在 で も狂 犬 病 死 を免 れ る 唯 一 の方 法 で あ る 。 8. 診 断 お よ び 検 査 法 狂 犬 病 常 在 地 で イ ヌ な どの狂 犬 病 危 険 動 物 に咬 ま れ た既 往 歴 が あ り,恐 水 発 作 の よ う な典 型 的 な症 状 が あ れ ば,臨 床 的 に狂 犬 病 と診 断 す る こ とは可 能 で あ る。 しか し,咬 傷 既 往 歴 は不 明 で あ る こ とが 少 な く な い う え,狂 犬 病 の 臨 床 経 験 を有 す る 医 師 が ゼ ロ に 等 しい 日本 で は 臨 床 的 に狂 犬 病 と診 断 す る こ と は 不 可 能 に 近 い で あ ろ う 。 狂 犬 病 の 生 前 診 断 は,唾 液 や 髄 液 か ら の 狂 犬 病 ウ イ ル ス 分 離,皮 膚 生 検 標 本,角 膜 擦 過 標 本 で の 蛍 光 抗 体 法 に よ る ウ イ ル ス 抗 原 の 証 明,逆 転 写 ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応(RT-PCR)に よ る ウ イ ル ス 遺 伝 子 の 証 明 な ど に基 づ く。 い ず れ の 検 査 法 も狂 犬 病 ウ イ ル ス が 脳 組 織 で 増 殖 し,さ ら に 脳 以 外 の 部 位 に 広 が っ た の ち に は 有 用 で あ る が,病 初 期 に は 狂 犬 病 ウ イ ル ス が 広 が っ て い な い の で,診 断 に は 役 立 た な い 。 ま た,病 初 期 に は 抗 体 産 生 が み ら れ な い の で,抗 体 検 査 も 早 期 診 断 に は 役 立 た な い 。 す な わ ち,狂 犬 病 の 生 前 早 期 の 検 査 診 断 は 現 在 不 可 能 で あ る 。 狂 犬 病 流 行 地 で 動 物 咬 傷 を受 け た あ と,狂 犬 病 ウ イ ル ス に 感 染 した か 否 か を知 る 手 段 も な い 。 ま た,生 前 診 断 が で き て も有 効 な 治 療 法 が な い の で,ほ ど な く死 亡 す る と い う患 者 の 運 命 を 変 え る こ と は で き な い 。 9. 狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 WHOは 狂 犬 病 常 在 地 で 狂 犬 病 危 険 動 物(イ ヌ,ネ コ,ア ラ イ グ マ,ス カ ン ク,コ ウ モ リ な ど)に 咬 ま れ た と き は,1)水 と石 鹸 で 傷 口 を 十 分 洗 う,2)ア ル コ ー ル や ポ ビ ドン ヨ ー ドな ど の 消 毒 液 で 消 毒 す る, 3)医 療 機 関 を 受 診 し て 抗 狂 犬 病 免 疫 グ ロ ブ リ ン (RIG)と 組 織 培 養 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ンの 接 種 に よ る 曝 露 後 発 病 予 防 を受 け る よ う勧 告 して い る 。 RIGに は 人 間 の 血 液 か ら作 られ た 製 剤(HRIG)と ウ マ 血 清 か ら 作 ら れ た 製 剤(ERIG)が あ り,HRIG な ら体 重1kgあ た り20単 位,ERIGな ら体 重1kgあ た り40単 位 を,1回 だ け で き る だ け 多 く傷 口 に 注 射 し て,も し余 分 が あ れ ば 肩 に 筋 肉 注 射 す る 。 組 織 培 養 ワ クチ ン は初 回接 種 日 を0日 と して,0日,3日,7 日,14日,30日,必 要 に 応 じ て90日 の5回 な い し 6回 接 種 す る21)。 咬 傷 受 傷 後 た だ ち に 曝 露 後 発 病 予 防 を 開 始 す る こ とが 望 ま し い が,た と え 遅 れ た と し て も 開 始 し な け れ ば な ら な い 。 一般 に は 破 傷 風 予 防 の た め に 破 傷 風 トキ ソ イ ド も注 射 す る 。

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10. 現 在 世 界 で 使 用 さ れ て い る 人 体 用 狂 犬 病 ワ ク チ ン 先 進 国 で は 副 反 応 が ほ と ん ど な い 組 織 培 養 ワ ク チ ン が 使 用 さ れ て い る が,発 展 途 上 国 で は 組 織 培 養 ワ ク チ ン と 平 行 して 旧 式 の 動 物 脳 由 来 ワ ク チ ン も使 用 さ れ て い る の で,注 意 が 必 要 で あ る 。 10-1. 組 織 培 養 凍 結 乾 燥 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン

a) ヒ ト2倍 体 細 胞 ワ ク チ ン(Human Diploid Cell Vaccine; HDCV)

b) 精 製 ベ ロ細 胞 ワ ク チ ン(Purified Vero Cell Rabies Vaccine; PVRV)

c) 精 製 ニ ワ ト リ 胚 細 胞 ワ ク チ ン(Purified Chick Embryo Cell Vaccine; PCEC)

d) 日本 製 精 製 ニ ワ ト リ胚 細 胞 ワ ク チ ン(PCEC-K) 化 学 及 血 清 療 法 研 究 所(化 血 研)が 製 造 し て い る 唯 一 の 国 産 狂 犬 病 ワ ク チ ン22)。 組 織 培 養 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン の 副 反 応 と し て は 注 射 局 所 の 発 赤 以 外 に 目 だ っ た も の は な い が,ヒ ト 2倍 体 細 胞 ワ ク チ ン の 接 種 を 受 け た 人 で は と き に 全 身 性 の 蕁 麻 疹 が み ら れ る こ と が あ る 。 曝 露 後 発 病 予 防 の ワ ク チ ン接 種 方 式 は 上 記 の 通 り で あ る が,PVRVを 用 い た 皮 内 接 種 方 式 が タ イ で は 採 用 さ れ て い る(タ イ 赤 十 字 方 式)。 本 方 式 で は PVRVの0.1mlを0日,3日,7日 に は2か 所 に 皮 内 注 射 し,30日,90日 に は1か 所 に 皮 内 注 射 す る23)。 10-2. 組 織 培 養 濃 縮 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン

a) 吸 着 型 狂 犬 病 ワ ク チ ン(Rabies Vaccine Adsorbed; RVA) ワ ク チ ン株 ウ イ ル ス を ベ ー タ プ ロ ピ オ ラ ク トン で 不 活 化 し,リ ン酸 ア ル ミ ニ ウ ム に 吸 着 さ せ て 濃 縮 し た 液 状 の ワ ク チ ン で あ る 。 b) ハ ム ス タ ー 腎 細 胞 不 活 化 濃 縮 狂 犬 病 ワ ク チ ン 増 殖 し た ワ ク チ ン株 を フ ォ ル マ リ ン で 不 活 化 した の ち濃 縮 し,1回 量 を ア ン プ ル に 封 入 した 液 状 の ワ ク チ ン で あ る 。 10-3. ア ヒル 胎 児 由 来 精 製 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン 増 殖 させ た ワ ク チ ン株 を 不 活 化 した の ち,密 度 勾 配 遠 心 法 に よ り精 製 し て 製 造 し た も の 。 接 種 ス ケ ジ ュ ー ル は 組 織 培 養 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン と 同 様 で あ る 。 10-4. 乳 の み マ ウ ス 脳 由 来 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン 1回 量 は1mlで あ る 。 曝 露 後 発 病 予 防 に は,連 日 7-11回 接 種 後,10日 ご と に2回 追 加 接 種 す る 。 か つ て 副 反 応 と して ギ ラ ン ・バ レ ー 症 候 群 の発 生 が 報 告 さ れ た が,現 在 の 改 良 さ れ た ワ ク チ ン で の 発 生 は な い と さ れ て い る 。 こ の ワ ク チ ン は 中 南 米 で 広 く用 い ら れ,ベ トナ ム な ど ア ジ ア 諸 国 で も使 用 さ れ て い る 。 10-5. 動 物 脳 由 来 不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ン(セ ン プル 型 ワ ク チ ン) ワ ク チ ン株 を 感 染 さ せ た ヤ ギ や ヒ ツ ジ の 脳 材 料 を 石 炭 酸 で 完 全 に 不 活 化 し て 製 造 した ワ ク チ ン 。 神 経 系 副 反 応 発 生 の 危 険 が 大 き く,効 果 が 少 な い ワ ク チ ン で は あ る が,安 価 で あ る た め,い ま も な お イ ン ド な ど で 使 用 さ れ て い る 。 11. 日 本 に お け る 狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 の 実 態 日本 国 内 で は40年 以 上 狂 犬 病 の 発 生 が な い た め, 狂 犬 病 へ の 関 心 が 薄 く な り対 策 も 不 十 分 で あ る 。 日 本 で は,WHOが 注 射 を勧 告 し て い るRIGは 製 造 も輸 入 も さ れ て い な い の で,入 手 で き な い 。 した が っ て, WHOの 勧 告 通 りの 曝 露 後 発 病 予 防 は で き な い 。 ま た,狂 犬 病 ワ ク チ ン は1社 が 製 造 して い る が,常 備 し て い る 病 院 は 少 な く,人 体 用 の 狂 犬 病 ワ ク チ ンが あ る こ と さ え 知 ら な い 医 師 もい る 。 現 在 の 日本 で 曝 露 後 狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 が で き る 病 院 は 非 常 に 限 ら れ て い る 。 し た が っ て,狂 犬 病 危 険 動 物 に 咬 ま れ た と き は 現 地 で た だ ち に狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 を 受 け る べ きで あ る 。 そ れ を せ ず に,治 療 目 的 で 日本 に 帰 る こ と は 最 悪 の 選 択 とい え よ う 。 た だ し,地 域 に よ っ て は,イ ヌ な ど に 咬 ま れ た 人 々 に,廉 価 で あ る が 副 作 用 の 危 険 が 大 き く効 果 が 小 さ い 旧 式 の 狂 犬 病 ワ ク チ ン を無 料 で 注 射 し て い る こ とが あ る 。 現 地 の 人 が 親 切 に教 え て くれ た と こ ろ へ 行 っ た らセ ン プ ル 型 ワ ク チ ン を注 射 さ れ た と い う 事 例 もあ る の で,ワ ク チ ン の 種 類 に も注 意 す べ きで あ る 。

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12. ヒ トの 輸 入 狂 犬 病 対 策 す で に 日本 で は狂 犬 病が 撲 滅 され て い る とは い え, 海 外 の 多 くの 国 々 で は狂 犬病 が 流行 して い る。 した が って,外 国 か ら 日本 に狂 犬 病 が持 ち込 まれ る可 能 性 は常 に考 えて お く必 要 が あ る 。 す な わ ち,(1)日 本 人 が 狂 犬 病 常在 地 で イヌ な ど に咬 まれ て狂 犬 病 ウ イ ルス 感 染 を受 け,帰 国 後 に狂 犬病 を発 病 す る ヒ トの 輸 入 狂 犬 病,(2)合 法 的,非 合 法 的 に輸 入 され た動 物 の 狂 犬 病,(3)輸 入狂 犬病 動 物 を感 染 源 とす る狂 犬病 の 国 内 流 行 な どで あ る。 現 状 で 最 も発 生 の 可 能性 が 大 きい の は ヒ トの輸 入 狂 犬 病 で あ ろ う。 なぜ な ら,狂 犬 病 を忘 れ た ま ま海 外 渡 航 す る 日本 人 の 数 は次 第 に増 加 して す で に年 間 1600万 人 を超 えた ば か りで な く,旅 行 形 態 が 以前 の よ う な団体 観 光 旅 行 か ら個 人 的探 検 的旅 行 へ と変化 した た め,感 染 を受 け る危 険 は い っそ う増 大 して い るか らで あ る 。 この予 測 を裏 付 け る か の よ う に,海 外 の 狂 犬 病常 在 地 で動 物 に咬 まれ,狂 犬病 曝 露後 発 病 予 防 を希 望 して 当 院 の ワ クチ ン外 来 を受 診 す る咬 傷 被 害 者 の 数 は年 々増 加 してい る(Fig. 1)。 また 受診 者 の 年 齢 別 分 布 をみ る と20代 前 半 の 若 年 成 人 が 圧倒 的 に多 い24)。ヒ ト輸 入 狂 犬 病 の発 生 を予 防 す る た め に は,若 年 成 人 へ の啓 蒙 を行 う一 方 で,咬 傷 被 害 者 に対 して 狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を迅 速 に行 え る医療 機 関 を確 保 し,現 在 製 造 も輸 入 も され て い ない抗 狂 犬 病 免 疫 グ ロブ リ ン を輸 入 な い し製造 して,日 本 国 内 で も利 用 で き る よ う にす る必 要 が あ る。 13. 狂 犬 病 曝 露 前 免 疫 副 反 応 が ほ とん どな い 組織 培 養狂 犬 病 ワ クチ ンが 開発 され て,ワ クチ ン接 種 を して狂 犬 病 に備 え る と い う ワ クチ ン本 来 の 利 用 法 が 可 能 とな っ た。 狂 犬病 曝 露 前免 疫 のた め に,WHOは 組 織 培 養 狂 犬 病 ワ クチ ン を0日,7日,28日 の3回 接 種 す る 方式 を勧 め て い る21)。一 方,日 本 で は組 織 培 養 狂 犬 病 ワ クチ ンを1か 月 間 隔 で2回 注 射 し,6か 月 後 に3回 目を注 射 して基 礎 免 疫 完 了 と して い る22)。一般 には 海 外 出張 が 決 ま って か ら,実 際 に出 国 す る まで の期 間 はせ いぜ い2-3か 月 で,日 本 方 式 で狂 犬 病 曝 露前 免 疫 を完 了 す る時 間的 余 裕 が ない 場 合 が ほ とん どで あ る。 狂 犬 病 ワ クチ ンは1回 接 種 だ けで は効 果 が な いが,2回 接種 す れ ば多 くの 人 々で 多少 な り とも抗体 が 産生 され る。2回 の接 種 で 産生 され る抗 体 の持 続 は 不 十 分 で あ る。 しか し,赴 任 先 で イヌ な ど に咬 まれ た と き に,す ぐ に狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を受 け れ ば, 早 い時 期 に抗 体 の産 生 が は じま る の で,RIGの 注 射 を しな くて も狂 犬 病 の発 病 を予 防 で き る と考 え られ る。 狂 犬 病 危 険 動 物 に顔 面 や 手 指 を咬 まれ た場 合 に は通 常RIGの 注射 が必 要 と なる 。RIGは 日本 で は製 造 も輸 入 もされ て い ない の で 入 手 不 能 で あ る が,狂 犬 病 常 在 地 で あ っ て もRIGは 世界 的 品不 足 の た め 入 手 で きる と は限 ら ない 。 した が って,狂 犬病 常 在 地 に赴 任 ない し長 期 旅 行 す る予 定 の あ る人 々 は あ らか じめ 狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を少 な くと も2回 は 済 ませ て お くべ きで あ る 。 ま た,狂 犬 病 流 行 地 で動 物 を 扱 った り,野 外 調 査 に従 事 す る予 定 の 人 々 はWHO方 式 で3回 の狂 犬 病 ワ ク チ ン接 種 を済 ませ て か ら赴 任 す る ほ うが 安 全 で あ ろ う。 獣 医 師 の よ う に狂 犬 病 の 危 険 に曝 され る機 会 が多 い職 業 の 人 々 は,2-3年 に1回 狂 犬 病 ワ ク チ ンの追 加 接 種 を受 け る こ とが 勧 め られ て い るが,一 般 の旅 行 者 や 赴 任 者 に は狂 犬 病 ワ クチ ンの 追 加接 種 は必 要 とさ れ て い な い25)。しか し,狂 犬病 患 者 が 多 数発 生 してい る地 域 に長 期 滞 在 す る人 々 は 獣 医 師 に準 じて 狂 犬 病 ワ クチ ンの 追 加接 種 を受 け て お け ば,よ り安 全 で あ ろ う。 これ まで 医 師 や 看 護 師 が 狂 犬 病患 者 に咬 まれ た り な ど して狂 犬 病 を発 病 した とい う報 告 は ない 。 しか し,狂 犬 病 患 者 に接 す る場 合 には 感 染 の危 険 は常 に あ るの で,救 急 患 者 を扱 う医 師 や 看護 師 は狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を受 け てお い た ほ うが よ い。 狂 犬 病 曝 露 前 免 疫 を済 ませ た 人 々 が狂 犬 病 常 在 地 で イ ヌ な ど に咬 まれ た と きは,0日 と3日 の2回 狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 に よ る曝 露 後発 病 予 防 を受 け る よ うに勧 告 され てい る(RIGは 不 必 要)25)。曝 露 前 免 疫

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終 了 後 数 年 を経 過 して咬 まれ た場 合 に,何 回 ワ ク チ ン接 種 を受 け れ ば よい か とい う判 断 は非 常 に難 しい と思 うが,顔 面 や手 な どに咬 傷 を受 け た場 合 は発 病 の危 険 が高 いの で,4-5回 の ワクチ ン接 種 を受 けた方 が 安全 と思 わ れ る。 14. お わ り に 狂 犬 病 の発 生 が な い 国 々 は例 外 的 で あ り,ほ とん どの 地域 で狂 犬 病 は発 生 して い る。 日本 国 内で の発 生 は な くと も,海 外 で動 物 に咬 まれ て帰 国後 に発 病 す る輸 入狂 犬 病 は発 生 す る可 能 性 が あ る。 いか な る 検 査 法 も狂 犬 病 の生 前 早 期 診 断 に は役 立 た ない 。 一 度発 病 した狂 犬 病 を治 療 す る手 段 もな い。 狂 犬 病 は 発 病 を予 防 で きるが,決 して治 癒 させ え ない 病 気 で あ る 。狂 犬 病 常 在 地 で不 幸 に して イ ヌ な どに咬 まれ た と きは,す ぐに現 地 の信 頼 で きる医 療 機 関 で 組 織 培 養不 活 化 狂 犬 病 ワ ク チ ンを用 い た狂 犬 病 曝 露 後 発 病 予 防 を受 け る必 要 が あ る。 狂 犬 病 常 在 地 に入 る前 には狂 犬 病 ワ クチ ン接 種 を済 ませ る用 心 が 必 要 で あ る。 また,狂 犬病 患 者 を診 療 ・看 護 す る機 会 が あ る 医 師や 看護 師 も,医 療 現 場 で の混 乱 を避 け るた め に, 狂 犬病 曝 露前 免 疫 を受 け た ほ うが よい 。 文 献

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4) CDC: Human rabies - Montana and Washington, 1997. MMWR 1997; 46: 770-4. 5) 万 年 和 明,三 舟 求 真 人:狂 犬 病 概 説. JSAVA 1995; No. 35: 5-30. 6) 岩 渕 秀 夫:狂 犬 病 の 流 行 と予 防 の 変 遷.日 獣 医 師 会 誌 1970; 23: 367-76. 7) 岡 村 宜 典:Zoonosisと 家 畜 衛 生.小 児 感 染 免 疫 1993; 5: 45-6.

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(10)

ABSTRACT Actual Situation of Rabies

Naohide Takayama

Department of Pediatrics, Tokyo Metropolitan Komagome Hospital

Rabies is a preventable, but incurable, infectious disease caused by the rabies virus that belongs to the genus Lyssavirus of the family Rhabdoviridae. Although no human or animal rabies cases have been reported in Japan since 1957, rabies is still endemic in many countries. The possibility that rabies may invade Japan must therefore be kept in mind. Recently, more than 16 million Japanese people travel abroad annually. Consequently rabies seems most likely to occur among travelers who return to Japan without proper post-exposure treatment after having been bitten by stray dogs or cats in rabies-endemic regions. Today in Japan, however, few medical institutions keep rabies vaccine in stock and thus cannot offer post-exposure vaccination to travelers bitten by animals in rabies-endemic areas. To ensure that deaths from rabies, especially imported rabies, improvement in the supply of post-exposure prophylaxis to travelers bitten by possibly rabid animals is strongly called for.

(JJAAM 2002; 13: 351-60)

Fig. 1.  Annual  number  of  subjects  who  were  bitten  by  possi- possi-bly  rabid  animals  in  the  rabies  endemic  regions  and   thereaf-ter  visited  our  vaccine  clinic  to  receive  the  rabies

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