交通時間節約価値の日独比較-私的交通に着目して-
*Comparative Analysis of Value of Travel Time Savings between Japan and Germany*
加藤 浩徳**,カイ・アクスハウゼン***,今井 誠****
By Hironori Kato**, Kay W. Axhausen*** and Makoto Imai****
1.はじめに 交通時間節約価値は,交通プロジェクトの便益評価や 交通行動を説明する上で重要な役割を果たす1).そのため, 多数の実証的な研究が行われてきた2),3),4),5),6).一般に,交 通時間価値を分析することは,個人の効用関数を特定化 することに他ならない.これまでの交通行動に関わる多数 の研究でも指摘されてきているように,個人の効用関数特 性は,個人の属性や交通サービスの特性によって異なる. さらに,これらに加えて,個人の生活環境や社会的背景に よっても,交通時間価値は当然異なりうる.一般に,時間価 値には,人々の時間に対する考え方が投影されていると考 えられる.したがって,余暇に関わる交通時間価値を異な る地域間で分析することにより,人々の余暇活動時間,あ るいは余暇活動実施のための交通時間短縮の価値意識 の違いを検討することが可能と思われる. ところで,我が国の余暇活動の事情を鑑みると,1988年 の労働基準法の改正後,わが国の労働時間が大幅に短 縮してきているにもかかわらず,欧米諸国と比べて,余暇 に対する満足感が減少している人が年々増加しているとの 報告がある7).この背景には,労働環境の違いに加えて, 余暇に対する人々の考え方に,欧米諸国と根本的な違い が存在するためとも考えられる.今後,我が国における余 暇に関連する諸政策のあり方を見直す上で,労働あるい は余暇に対する考え方の大きく異なる欧米諸国と,余暇活 動時間の価値意識を比較分析することは,意義の大きいこ とと思われる. これまで,特定の国を対象とした交通時間価値の実証 分析4),5),6)や,我が国のデータを用いた余暇活動時間の価 値意識に関する実証分析8)はあるものの,異なる社会的背 景を持つ人々の間での時間価値の比較が行われたものは, チリとドイツとの比較を行った研究9)を除いて,筆者の知る あたり見あたらない.そこで,本研究は,日本の東京と,ド イツのカールスルーエで実施された活動ダイアリー調査デ ータを用いて,両都市間の時間や費用の配分行動の違い を比較するとともに,調査データにそれぞれ全く同一の消 費者行動モデルに適用することによって,余暇活動の交 通時間節約価値をそれぞれ求め,その結果を両者間で比 較することを目的とする. 2.分析手法の概要 (1)モデルの基本構造 本研究では,消費者行動モデルとして,加藤・今井10)が 提案している自由時間・所得の制約を考慮した資源配分 モデルを用いる.ここでは,個人の資源配分問題が,「1 週間に個人はどこで何回寄り道・外出余暇を行うか」という 選択と,「寄り道・外出余暇活動を行う際に時間と費用をい くら費やすか」という2段階の問題として取り扱われている. 具体的には,個人属性,地域属性,1日の時間と所得の制 約を入力すると,場所k での余暇をする際に費やす時間・ 費用を出力する下位のモデル(「1日モデル」)と,その時 間・費用と個人属性,および1週間の時間と所得の制約を 入力すると,1週間に場所k で行う余暇活動の回数を出力 する上位のモデル(「1週間モデル」)から構成される(図-1).これら2つのモデルの出力から,1週間の資源配分が *キーワード:交通時間節約価値,日独比較 **正員,博(工),東京大学大学院工学系研究科社会基盤学 専攻 ([email protected]) *** 非 会 員 , Ph.D , ス イ ス 連 邦 工 科 大 学 チ ュ ー リ ッ ヒ 校 (ETHZ)交通システム研究所 ****正会員,修(工),国土交通省 一週間の時間・所得配分 場所1 場所2 場所k 活動場所・回数選択 時間・所得配分 N1回 0回 一日 Nk回 時間・所得配分 一週間 一週間の時間・所得配分 場所1 場所2 場所k 活動場所・回数選択 時間・所得配分 N1回 0回 一日 Nk回 時間・所得配分 一週間 2 段階の 意思決定構造 図-1 分析に使用するモデルの構造
求まる.なお,後述する実証分析においては,1日モデル について,勤務日と休日の2ケースを設定している.モデル の詳細については,加藤・今井10)を参照されたい. (2)分析の対象 本研究では,余暇時間中に行われる活動を分析対象と し,私的交通の時間節約価値を求めることとする.本研究 で対象とする余暇時間中の活動とは,以下の通りである. ・寄り道余暇:出勤日の帰宅途中に行われる買物,外食な どの余暇活動.勤務先から出発して活動が行われること を想定する ・外出余暇:休日に移動を伴って行われる買物,外食など の余暇活動.自宅から出発して活動が行われることを想 定する ・日常余暇:自宅およびその周辺で行われる余暇活動(テ レビ鑑賞,ゲーム,盆栽等).移動を伴わないことを想定 する. その上で,本研究では,私的交通を,「寄り道余暇または 外出余暇に伴う移動」と定義する.なお,寄り道余暇・外出 余暇には宿泊を伴う旅行など遠方への移動を伴う余暇は 含まないものとする.また,日常的な買い物や単身者の外 食 の よ う に 生 活 上 必 要 な 外 出 ( い わ ゆ る Maintenance activity)については,義務活動と見なすこととする. (3)交通時間節約価値の定義 本研究で求めるのは,DeSerpa11)の提案した交通時間節
約価値(Value of Travel Time Saving: VTTS)である. 消費者は式(1)で示されるような制約条件付き効用最大 化行動を行っているものと考える.
(
G T t)
U U Max t T G, , = , , (1a) s.t. G+c=I[ ]
λ (1b) 0 T t T+ =[ ]
μ (1c) t t≥ˆ[ ]
κ t (1d) ただし,U( )
⋅ :効用関数,G:余暇活動の消費金額,T : 余暇活動の消費時間,t:交通時間,c :交通費用,I:予 算制約,T0:時間制約,tˆ:交通時間の下限値(以下,最 小交通時間),λ,μ,κt:ラグランジュの未定乗数である. このとき,交通時間節約価値は,以下のように定義 される. ∗ ∗ ∂ ∂ − = λ λ μ λ κt U tU * * * * (2) なお,変数の右肩のアスタリスクは,最適状態の値であ ることを表す.交通時間節約価値とは,「交通時間の消費 制約条件の緩和によって生み出される微少時間が他の (無制約の)活動に転換されることに対して,効用が無差別 になる所得水準の変化」と定義できるものである.式(2)より, 交通時間節約価値は,右辺の2つの項に分解することが できる.ここで,DeSerpa11)は,右辺の第1項を「資源としての時間価値」(value of time as a resource),第2項を「商品 としての時間価値」(value of time as a commodity)とそれぞ れ呼んでいる. 3.分析に使用したデータ 東京圏とカールスルーエ市で実施された活動ダイアリー 調査データの概略を示したものが,表-1である.分析に使 用したデータの作成方法の概略は以下の通りである. (1)東京圏の活動ダイアリー調査データの概略 東京圏については,JR東日本企画(2001)「関東移動者 調査」のデータ 12)を用いる.この調査は,2001 年3月に東 京駅を中心とした半径70 km 圏において,12~69 歳の男 女を対象に実施されたものであり,個人ベースの以下のデ ータを含むものである. ・トリップダイアリーデータ:1週間の交通機関(自動車・公 共交通)を用いた移動についての出発時刻,到着時刻, 移動目的などの実績データ. ・消費活動データ:1週間の「買物」,「飲食」,「レジャー・そ 都市名 東京(日本) カールスルーエ(ドイツ) 使用データ 関東移動者調査'01 Mobidrive 調査実施者 (株)ジェイアール東日本企画 スイス連邦工科大学(ETH)交通 研究チーム 調査年 2001年 1999年 調査機関 1週間 6週間 調査方法 紙ベースのアンケート調査 紙ベースのアンケート調査 データサイズ 389人の389週分の活動データ 55人分の315週分の活動データ 表-1 分析に使用したデータの概略
の他」の3種類の消費活動に関する実績データ. ・個人属性データ:性別,年齢,職業,居住形態等を含む データ. 留意点は,調査対象者が,平日,鉄道を利用して通勤 している人(休日の交通手段は問わない)に限定されてい る点である.また,買い物における購入金額については, 2002 年 11 月に東京圏居住者を対象として独自のアンケ ート調査を実施してデータを入手している. 個人の制約条件については,次のように設定している. まず,自由時間制約については,休日は,1日当たりの義 務活動(睡眠や食事等)時間を 9 時間と仮定して,1 日当 たり 15 時間を自由時間として設定した.一方で,勤務日 については,15 時間から各個人の労働時間ならびに通勤 時間および帰宅交通時間を控除したものを自由時間とし て設定した.次に,所得については,関東移動者調査デ ータ中に含まれる「1ヶ月の小遣い」というデータを4で割る ことで1週間の所得制約としている.データの詳細ならびに 加工については,加藤・今井 10)を参照されたい.最終的に, 389 人分の個人データを推定用のサンプルとして使用して いる. (2)カールスルーエ市の活動ダイアリー調査データの概略 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)を中心とする 研究チームは,1999 年,カールスルーエ市民を対象とし, 6週間の行動を追跡するダイアリー活動調査を実施した. この調査データは,Mobidrive と命名されている.調査方 法ならびに基礎データ特性については,Axhausen et al.13) を参照されたい.この調査では,個人の活動の種類,活動 の開始・終了時刻,各活動への支出金額,交通時間・費 用,個人と世帯の属性に関するデータが収集されている. Mobidrive データと東京の調査データとを整合させるため に,18 歳以上の個人のみを対象とする,労働者のみを対 象とする,自宅を起点とし外出余暇を行っている平日のデ ータを対象外とする,という条件に従って,オリジナルデー タから分析に用いるサンプル個人の抽出を行った.ここで, 最後の条件は,東京のデータにおいて,勤務日に自宅を 起点とする外出余暇が皆無であったことを受けて,モデル の構造上,このケースを考慮していないことに起因する. 一方で,個人の制約条件についても設定を行っている. まず,自由時間については,休日は,1日当たりの義務活 動(睡眠や食事等)時間を 9 時間と仮定して,1 日当たり 15 時間を自由時間として設定した.勤務日は,15 時間か ら労働時間ならびに通勤時間と帰宅交通時間を控除した ものを自由時間として設定した.次に,所得については, Mobidrive データには,個人の所得に関する情報が含まれ ていないので,賃金率の推定を別途行った.この推定方法 の詳細は,Greeven et al.14)を参照されたい.ここで,賃金 率推定式は,個人属性を変数とする重回帰式である.この 回帰式の重相関係数は 0.286 であり,その推定精度は必 ずしも高くないために,推定される交通時間節約価値の精 度にも影響を与えることが考えられる.しかし,全ての変数 について統計的な優位性が得られていることと,賃金率を 推計する他の方法が見あたらなかったことから,今回の分 析に使用することに決めた.この結果をもとに,データに含 まれる全個人の自由所得を設定している. 以上の手続きを経て,最終的には 55 人の個人に対す る 315 週分の個人データを準備した.データ分析に当た っては,同一個人であっても各週で独立した行動を行って いると仮定し,315 のサンプルデータがあるものと見なした. (3)東京とカールスルーエとのデータ比較 両都市の活動ダイアリー調査データについて,余暇活動 への配分時間と配分費用,自由時間および予算,個人属 性を比較した結果を示したものが,表-2 である.これより次 のような点が読み取れる. 第一に,1週間当たり休日の外出余暇回数についてみる と,カールスルーエの方が東京よりも約4倍も多いことがわ かる.この原因の1つは,外出余暇の定義の違いによると 思われる.Mobidrive データでは,いかなる短時間の外出 であっても外出と記録されているが,東京のデータでは比 較的長時間の外出のみが外出と記録されている.ただし, そうしたデータ特性の違いを取り除いても,依然としてカー ルスルーエの人々は東京の人よりも休日の外出を選好す る傾向にあるようである. 第二に,1週間当たり勤務日の帰宅時寄り道余暇回数に ついてみると,やはりカールスルーエの方が東京よりも約 2.5 倍多いことがわかる.この原因の1つは,両都市間での 労働時間の差によると思われる.例えば,2002 年の統計 データによれば,日本の平均年間労働時間は 1,954 時間 であるのに対し,ドイツは 1,525 時間にすぎない. 第三に,休日の外出余暇1回あたりの平均交通時間につ いて見てみると,カールスルーエでは約 20 分であるのに 対し,東京では約 75 分となっている.この原因の1つは, 都市圏の空間スケールの違いにあると考えられる.
第四に,平日の帰宅時寄り道余暇1回あたりの追加的な 平均交通時間についてみると,東京はわずか 8 分である のに対し,カールスルーエは約 30 分である.これは,都市 内の余暇施設密度の差に起因すると思われる.東京では, 帰宅時経路の途上に余暇施設(居酒屋等)があるのに対 して,カールスルーエではわざわざ帰宅時経路から大きく 離れた場所へ立ち寄る必要性が高い. 第五に,平均的な1回あたり余暇活動時間は,両都市間 でそれほど大きく変わらないこともわかる. 4.パラメータ推定と交通時間価値の推定結果比較 (1)モデルパラメータの推定結果 加藤・今井 10)で示された方法を用いて,1日モデルなら びに1週間モデルの未知パラメータの推定を行った.パラ メータの推定結果を示したものが表-3 および表-4 である. なお,ここでは東京とカールスルーエとの比較を行うために, 両都市のパラメータを示している.いずれも概ね良好な推 定結果が得られている. 表-2 東京とカールスルーエの活動ダイアリー調査データの特性比較 単位 平均 標準偏差 東京 観測された個人数=389 女性ダミー (もし女性ならば1,そうでなければ0) 0.170 0.376 既婚者ダミー (もし既婚ならば1,未婚ならば0) 0.710 0.455 30歳代ダミー (もし年齢が30歳代ならば1,そうでなければ0) 0.280 0.450 40歳代ダミー (もし年齢が40歳代ならば1,そうでなければ0) 0.234 0.424 50歳代ダミー (もし年齢が50歳代ならば1,そうでなければ0) 0.193 0.395 観測された週数=389 1週間当たり休日の外出余暇回数 回 0.470 0.751 1週間当たり勤務日の帰宅時寄り道余暇回数 回 0.509 0.907 1週間当たり休日の外出余暇目的の交通時間 時間 0.592 1.18 1週間当たり休日の外出余暇目的の交通費用 円 211 605 1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通時間* 時間 0.067 0.196 1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通費用** 円 30.3 124 1週間当たりの自由所得 円 68123 34655 休日に外出余暇が行われた総日数=287 休日1日当たり外出余暇活動時間 時間 3.39 2.48 休日1日当たり外出余暇活動費用 円 5368 6635 平日に帰宅時余暇が行われた総日数=290 勤務日1日当たり寄り道余暇活動時間 時間 2.01 1.56 勤務日1日当たり寄り道余暇活動費用 円 3561 3295 カールスルーエ 観測された個人数=55 世帯中子供存在ダミー (もし世帯に同居する子供がいれば 1,そうでなければ0) 0.127 0.336 賃貸住宅ダミー(もし賃貸住宅ならば1,そうでなければ0) 0.673 0.474 世帯人数 2.80 1.18 50歳代ダミー (もし年齢が50歳代ならば1,そうでなければ0) 0.255 0.440 公共交通定期券保有ダミー(もし保有していれば1,そうでな ければ0) 0.291 0.458 観測された週数=315 1週間当たり休日の外出余暇回数 回 2.10 1.44 1週間当たり勤務日の帰宅時寄り道余暇回数 回 1.39 1.67 1週間当たり休日の外出余暇目的の交通時間 時間 0.708 0.766 1週間当たり休日の外出余暇目的の交通費用 DM 12.0 32.0 1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通時間* 時間 0.722 0.993 1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通費用** DM 14.4 50.3 1週間当たりの自由所得 DM 704 384 休日に外出余暇が行われた総日数=527 休日1日当たり外出余暇活動時間 時間 3.19 2.94 休日1日当たり外出余暇活動費用 DM 47.1 75.2 平日に帰宅時余暇が行われた総日数=1,493 勤務日1日当たり寄り道余暇活動時間 時間 1.77 2.22 勤務日1日当たり寄り道余暇活動費用 DM 34.6 66.5 *[1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通時間] = [1週間の勤務地から帰宅時余暇活動場所までの交 [1週間の帰宅時余暇活動場所から自宅までの交通時間] - [1週間当たり勤務地から自宅までの **[1週間当たり勤務日の帰宅時余暇活動目的の交通費用] = [1週間の勤務地から帰宅時余暇活動場所までの [1週間の帰宅時余暇活動場所から自宅までの交通費用] - [1週間当たり勤務地から自宅までの #1 US ドル = 121.51円 (2001年3月平均値) = 1.863 DM (1999年9月平均値)
(2)交通時間節約価値の推定結果比較 パラメータ推定値を用いて,推定に使用したサンプル個 人および行動実績に対して,交通時間節約価値を求めた. 交通時間節約価値の平均値,中央値,標準偏差を両都市 間で比較したものが,表-5 である. まず,いずれの都市も,勤務日帰宅時寄り道余暇の交通 時間節約価値の方が,休日外出余暇の交通時間節約価 値よりも高い.これは,平日の方が自由時間の制約が厳し いことを考えれば,自然な結果だと思われる. 次に,東京では,勤務日,休日のいずれの余暇の交通 表-4 1週間モデルのパラメータ推定結果比較 説明変数 説明変数 記号 推定値 t値 推定値 t値 E(work day) 30歳代・40歳代ダミー -0.390 -3.17 50歳代ダミー 0.287 2.08 世帯人数 -0.187 -3.88 F(work day) 単位面積当たり小売店舗数 0.00158 7.93 0.423 16.4 βt(work day) 鉄道利用交通時間 -0.0129 -2.46 交通時間 -0.00225 -2.78 E(non-work day) 40歳代・50歳代ダミー -0.398 -3.49 公共交通定期券保有ダミー 0.414 3.48 F(non-work day) 単位面積当たり小売店舗数 0.00156 6.74 自家用車保有ダミー 2.50 10.5 居住地都心ダミー 1.14 10.1 βt(non-work day) 鉄道利用交通時間 -0.00024 -0.140 自家用車利用交通時間 0.00536 3.39 交通時間 -0.00296 -4.24 G 定数 3.94 20.6 4.58 29.0 世帯内子供存在ダミー 0.786 4.85 H 定数 0.762 2.41 女性ダミー -1.15 -2.79 既婚者ダミー 0.309 1.21 賃貸住宅ダミー 4.17 18.6 σ 勤務日分散 1.20 17.9 1.54 20.9 休日分散 1.02 17.5 1.84 24.0 初期対数尤度 -2056.4 -21110.7 最終対数尤度 -1139.8 -2839.5 観測データ数 389 315 東京 カールスルーエ 説明変数 説明変数 記号 推定値 t値 推定値 t値 推定値 t値 推定値 t値 A 単位面積当たり小売店舗数 0.000663 2.11 定数 -2.05 -39.0 -1.997 -26.74 自家用車保有ダミー -0.226 -1.67 B 自家用車保有ダミー 1.07 1.13 1.21 2.22 定数 -0.53 -3.79 -1.67 -8.87 C 定数 0.885 4.74 1.20 4.74 40歳代ダミー 0.138 2.48 女性の既婚ダミー 1.68 4.42 自家用車保有台数 -0.115 -3.19 30歳代ダミー -0.477 -1.94 男性ダミー -0.163 -2.00 40歳代ダミー 0.404 2.43 40歳代・50歳代ダミー 0.253 3.03 D 定数 -2.56 -10.1 -1.44 -2.92 20歳代ダミー 0.665 4.98 女性ダミー -3.07 -4.93 世帯人数 0.114 2.67 既婚者ダミー -1.37 -2.18 自家用車保有台数 -0.345 -3.70 40歳代・50歳代ダミー 1.59 2.55 賃貸住宅ダミー -0.397 -2.96 σ 時間分散 1.81 24.9 1.18 25.5 時間分散 0.665 40.1 0.896 31.1 費用分散 4.30 24.8 4.47 25.5 費用分散 1.11 32.5 1.14 25.3 初期対数尤度 -8957.1 -10377.7 初期対数尤度 -8703.9 -6053.8 最終対数尤度 -5336.8 -5704.8 最終対数尤度 -7545.0 -4865.0 観測データ数 290 287 観測データ数 1164 527 東京 カールスルーエ 勤務日 休日 勤務日 休日 表-3 1日モデルのパラメータ推定結果比較
時間節約価値についても平均賃金率より高いが,カール スルーエについては,勤務日は平均賃金率より高い一方 で,休日は平均賃金率よりも低い.これは,両都市間の消 費特性の違いを反映しているためと思われる.東京では, 1回あたりの余暇において金銭消費を伴う活動(例えば, 勤務日帰宅時寄り道では飲食,休日外出余暇では買い物 等)を行う傾向があるが,カールスルーエでは,散歩や友 人訪問のように単位活動時間当たりの消費金額の少ない 余暇活動が好まれる傾向にあると考えられる. (3)交通時間節約価値の分布の比較 両都市の(個人の交通時間節約価値)/(個人の賃金 率)の分布を比較したものが図-1 である.これより,東京の, しかも特に勤務日の帰宅時寄り道余暇交通では,この比 率がかなり分散していることがわかる.ただし,交通時間節 約価値の分布に関しては,使用されているサンプルのサイ ズの違いや,分析途上で設定されているデータの推定精 図-1 両都市の交通時間節約価値/賃金率の分布 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 1 2 3 4 5 勤務日の帰宅時寄り道余暇交通 休日の外出余暇交通 累積比率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 10 20 30 40 50 休日の外出余暇交通 勤務日の帰宅時寄り道余暇交通 交通時間節約価値/賃金率 累積比率 東京 カールスルーエ 交通時間節約価値/賃金率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 1 2 3 4 5 勤務日の帰宅時寄り道余暇交通 休日の外出余暇交通 累積比率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 10 20 30 40 50 休日の外出余暇交通 勤務日の帰宅時寄り道余暇交通 交通時間節約価値/賃金率 累積比率 東京 カールスルーエ 交通時間節約価値/賃金率 図-2 東京の交通時間節約価値/賃金率と 資源としての時間価値/賃金率の分布 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 10 20 30 40 50 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 東京 累積比率 勤務日帰宅時寄り道余暇交通時間節約価値 勤務日の資源としての時間価値 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 10 20 30 40 50 休日外出余暇交通時間節約価値 休日の資源としての時間価値 累積比率 東京 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 10 20 30 40 50 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 東京 累積比率 勤務日帰宅時寄り道余暇交通時間節約価値 勤務日の資源としての時間価値 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 10 20 30 40 50 休日外出余暇交通時間節約価値 休日の資源としての時間価値 累積比率 東京 図-3 カールスルーエの交通時間節約価値/賃金率と 資源としての時間価値/賃金率の分布 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 1 2 3 4 5 勤務日帰宅時寄り道交通時間節約価値 勤務日の資源としての時間価値 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 累積比率 カールスルーエ 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 1 2 3 4 5 休日外出余暇交通時間節約価値 休日の資源としての時間価値 累積比率 カールスルーエ 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 1 2 3 4 5 勤務日帰宅時寄り道交通時間節約価値 勤務日の資源としての時間価値 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 累積比率 カールスルーエ 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 1 2 3 4 5 休日外出余暇交通時間節約価値 休日の資源としての時間価値 累積比率 カールスルーエ 交通時間節約価値または時間価値/賃金率 勤務日 休日 平均賃金率 東京 平均値 円/時 18895.8 5541.5 3655.3 平均値/平均賃金率 5.17 1.52 1.00 中央値 円/時 7627.9 4154.5 3540.3 中央値/平均賃金率 2.09 1.14 0.97 標準偏差 円/時 31896.4 8642.1 1894.50 カールスルーエ 平均値 DM/時 21.1 15.4 19.4 平均値/平均賃金率 1.09 0.79 1.00 中央値 DM/時 21.3 14.8 16.3 中央値/平均賃金率 1.10 0.763 0.838 標準偏差 DM/時 12.8 10.3 12.9 表-5 交通時間節約価値の都市間比較
度(例えば,カールスルーエにおける賃金率回帰式の推 定精度)等にも依存することから,都市間で分布の違いを 直接比較することには十分な留意が必要と思われる.次に, (個人の資源としての時間価値)/(個人の賃金率)の分 布を,各都市について勤務日と休日で示したものが,それ ぞれ図-2 と図-3 である.これを見ると,勤務日の帰宅時寄 り道余暇の方が,休日の外出余暇よりも,交通時間節約価 値全体に対する資源としての時間価値の割合が,低いこと が読み取れる.これは,商品としての時間価値,すなわち 交通時間そのものによる不効用が削減されることによる価 値は,帰宅時寄り道余暇の方が休日の外出余暇よりも,相 対的に見て,高いことを意味する.このことは,混雑等の原 因により,帰宅時交通の方が休日交通よりも提供されてい る交通サービス水準が低いか,労働時間後の疲れ等の原 因により帰宅時交通の方が休日交通よりも交通による不快 感が大きいことを反映しているものと考えられる. 5.おわりに 本研究では,東京とカールスルーエとの活動ダイアリー 調査データを用いて,両都市間の資源配分特性の違いを 考察し,次に同一の資源配分モデルに基づいて推定され た交通時間節約価値を比較することによって,人々の行動 特性の比較を行った. まず,表-2 に示される活動ダリアリー調査データ結果の 比較から,ある程度,東京とカールスルーエでの時間ある いは費用の配分特性の違いを分析できたと考えられる.例 えば,カールスルーエの人々は,東京の人よりも休日の外 出を選好する傾向にあること等が推察されている.これらは, 人々の余暇に対する意識や都市の余暇施設,交通サービ スの違いを反映している可能性を指摘できる. 次に,交通時間節約価値の分析結果から,東京では, 余暇活動のための交通時間節約価値が,平均賃金率の 2 ~5 倍程度である一方で,カールスルーエでは,ほぼ同程 度となること等が明らかとなった.ここで,都市間比較にあ たっては,比較に意味を持たせるために,平均賃金率との 比率を用いるなどの工夫を行っている.しかし,依然として, 分析にあたって設定された予算制約データの定義が両都 市で異なるなど,分析作業において仮定あるいは前提とさ れたデータに様々な相違点が存在する,という限界がある. 例えば,今回使用した Mobidrive データには含まれていな い賃金率,あるいは自由に使用できる金額(東京における小遣 いにあたるもの)のデータが追加されることによって,より正 確に資源配分行動を分析可能となり,結果として交通時間 節約価値を推定できることが期待できる. また,さらに精緻な資源配分特性あるいは交通時間節 約価値の都市間比較を行うためには,同一の調査方法と データ設定方法による分析が不可欠であると考えられる. 特に,Meister et al.15)も指摘するように,これまでの活動ダ イアリー調査では,時間配分に関するデータは含まれる一 方で,所得や使用金額に関するデータが含まれないことが 多かった.これは,人々の時間と予算の配分行動を的確に 分析する上で,大きな制約となっている.現在,世界各地 において,様々な交通調査データのデータベース作り等 が進められつつある(例えば,EU の Optimizing the Use of Partial Information in Urban and Regional Systems (OPUS)プロジェクト)が,精度の高い国際間比較を行うた めには,活動ダイアリー調査の中で,時間と費用の両面を カバーするよう,調査設計段階から関係者間の調整が必 要と言えるであろう. 最後に,今後,さらに,国際比較等を通して,人々の余 暇や労働に対する意識を丹念に分析することによって,我 が国の余暇に関連する諸政策のあり方を検討していくこと が,豊かな社会の実現に向けて重要になると考えられる. 謝辞:東京圏の活動ダイアリー調査データの使用に当たっ ては,(株)ジェイアール東日本企画のご協力をいただいた.ここ に深く感謝する次第である.また,本研究は,平成 18 年度科学 研究費補助金(若手研究(A),課題番号:18686041)の支援を受 けて行われたものである. 参考文献
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Comparative Analysis of Value of Travel Time Savings between Japan and Germany
By Hironori Kato, Kay W. Axhausen and Makoto Imai This paper compares the resource allocation with the activity diary data of Tokyo, Japan and Karlsruhe, Germany. First, we compare the time and money budget allocation between two cities. The analysis shows that the people in Tokyo prefer engaging in the out-of-home leisure on a non-work day to the people in Karlsruhe. Then, we analyze the values of travel time saving (VTTS) in private travel for leisure in the two cities. The analysis results show that the ratio of VTTS to average wage rate is two to five in Tokyo whereas the ratio is almost one in Karlsruhe. These differences may reflect the preference in leisure activities, leisure facilities and transportation facilities of the two cities.