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小児耳 2014; 35(3) 発達障害から発達凸凹へ orders ; DSM 5, 2013) において, 児童青年期の精神科疾患は大きく変わった 発達障害は神経発達障害 (Neurodevelopmental disorders) と総称されるようになった 発達障害における大きな変化は,ADH

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― 9 ― (179) 浜松医科大学医学部医学科 児童青年期精神医学講座(〒4313192 静岡県浜松市東区半田山1201) ― 9 ― (179)

第 9 回

日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

特 別 講 演

発達障害から発達凸凹へ

登志郎

(浜松医科大学医学部医学科 児童青年期精神医学講座) 近年の罹病率研究では,発達障害は子どもの 1 割を越えるという驚くべき頻度が示され る。これだけ一般的な問題は,多因子モデルが適合することが知られている。多因子モデル によって示される,より広範な素因を有するグループを筆者は発達凸凹と呼んできた。2013 年に発表された新しい診断基準 DSM5 では,多元診断がうたわれており,これは多因子モ デルを前提としており,発達凸凹というとらえ方にも合致する。 発達障害の広がりに,支援の側が追いつかない現状がある。特に自閉症スペクトラム障害 は,その特異な認知特性を考慮しないと,教育そのものが成立しない。さらに最近,発達障 害と心的トラウマとが掛け算になった症例に出会うことが多くなった。これらの難治性症例 の臨床的な特徴を紹介し,その治療について述べた。 キーワードDSM5,発達障害,ASD,ADHD,子ども虐待 . 発達障害はどこまで広がるのか 発達障害の罹病率に関する最近の報告をまと めると,知的障害 1 パーセント1),自閉症スペ

ク ト ラ ム 障 害 ( Autism spectrum disorder ; ASD)2 パーセント強1,2),注意欠如多動性障

害 ( Attention deˆcit hyperactivity disorder ; ADHD)35 パーセント3),学習障害 5 パーセ ント4)など,重複があるにせよ単純に合計すれ ば子どもの約 1 割以上という驚くべき数字にな る。これが,わが国の現実からも解離していな いことは,2012年に文部科学省が全国で実施 した調査によって,通常クラスに在籍する生徒 児童の中で発達障害と考えられる児童が計6.5 パーセント認められたと報告されたことから分 かる。現在わが国において,特別支援教育を受 けている児童生徒は,支援クラス,支援学校な ど,全部を含めて2.9パーセントであり,この 両者を足すと約 1 割になるからである。 この様なきわめて頻度が高い問題は,多因子 モデルに合致することが知られている。多因子 モデルとは,病気の発症に遺伝的な素因と,環 境因との両者が関わるという疾病であり,その 代表は高血圧,糖尿病などのいわゆる慢性疾患 である。ASD を例に取れば,遺伝的な素因の 関与は否定できないが,それ以外の要因も大き く影響し,その発現のありかたは非常に多彩多 様な形を取る。むしろ最近の研究では,アレル ギーなどの環境因の方が大きく関係しているこ とが定説になった5)。例えば父親の出産時の年 齢 が ASD の 発 症 に 関 係 す る と 報 告 さ れ て い る6)。多因子モデルで考えたとき,筆者は従来 の発達障害よりもずっと広範な,素因としての 特殊な認知特性を有するグループを発達凸凹と 呼ぶことを提案した7) 2013年 5 月に発表されたアメリカ精神医学 会作成の「診断と統計のためのマニュアル第 5 版(Diagnostic statistical manual of mental

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dis-― 10 dis-― (180) 表 DSM5 における自閉症関連の下位群の変化 DSM(1994) DSM5(2013) 広汎性発達障害 299.00自閉性障害 299.80レット障害 …遺伝子が特定されたの でなくなる 299.10小児期崩壊性障害 299.80アスペルガー障害 299.80特定不能の広汎性 発 達 障 害 (PDDNOS  非定型自閉症) 299.00

Autism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム障害)

…全部ここに押し込む

315.39

Social Communication Dis-order(社会的コミュニケー ション障害) …全部ではないがPDDNOS の一部を入れる ― 10 ― (180) orders ; DSM5, 2013)において,児童青年期 の精神科疾患は大きく変わった。発達障害は神 経発達障害(Neurodevelopmental disorders) と総称されるようになった。発達障害における 大きな変化は,ADHDが発達障害に位置づけ られたこと,これまで自閉症グループの上位概 念として用いられていた広汎性発達障害の呼称 が廃止され,その下位群もすべて ASD に統一 されたこと,ASD が重症から軽症の者までス ペクトラム(連続体)として捉えられるように なったこと,さらに ADHD と ASD の併存が 認められたことである。DSM5 では多元的診 断という考え方が採用されている。これはスペ クトラムとして疾患を捉えることに他ならな い。つまり,多因子モデルに合致する考え方で あり,発達凸凹という捉え方に合致する。 一つ注意を喚起しておきたいのは,DSM5 に お い て も , そ の 前 の 版 で あ る DSM  (1994)に比較したとき,背後の病因が意識さ れるようになったものの,クレペリン型の診断 基準に留まったということである。クレペリン 型診断とは,症状と経過によって精神科疾患を 分類するという記述精神医学に基づく伝統的な 診断,分類方法である。精神科における診断 は,他の医学領域の診断とは実は大きく異なっ ていることを記憶しておいてほしい。 発達障害は,これだけ頻度が多いとなると, 言葉の遅れを専門的に診てきた小児耳鼻科医に おいては言うに及ばず,一般の耳鼻科医といえ ども日常的に出会う対象となってきた。未診断 の初診もあれば,併存症を主訴として受診をし てくることも多い。 . ASD の臨床 発達障害の中でもASDはそのチャンピオン とも言うべき存在である。その理由は,自閉症 の体験世界が,健常者の体験世界では届かない 部分を有しているからに他ならない。DSM では表 1 に示す診断カテゴリーによって構成さ れていた。つまり自閉性障害,レット障害,小 児期崩壊性障害,アスペルガー障害,特定不能 の広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder Not Otherwise Speciˆed : PDDNOS)非定型自閉症(Atypical Autism) である。DSM5 では,このうちレット障害は Methyl-CpG-binding protein 2 遺伝子が原因遺 伝子と特定されたことを受け,DSM5 では独 立した診断名としては挙げず,もし自閉症スペ クトラムの症状がレット障害に関連しているこ とが判明した場合は,その旨を付記することに なった。そしてレット障害以外の下位診断項目 4 つをすべて自閉症スペクトラムに押し込む形 になった。さらに DSM(1980)以来,自 閉症および広汎性発達障害は,自閉症の 3 兆候 と呼ばれてきた,社会性の障害,コミュニケー ションの障害,想像力の障害とそれに基づく行 動の障害(こだわり行動)の各領域の機能の遅 れや異常の有無によって判定されてきた。しか し,DSM5 では,自閉症スペクトラムの診断 基準は表 2 のように,社会的コミュニケーショ ンおよび相互関係における持続的障害,および 限定された反復する様式の行動,興味,活動の 2 つの領域にまとめられた。そして知覚過敏 性・鈍感性など知覚異常の項目が診断基準に追 加された。さらに幼児期を過ぎて初めて見いだ される可能性に関して言及した。要するに従来 の幼児期の症状を中核とした診断基準から,ど の年齢でも用いることが可能なものへと大きく 変わったのである。診断という視点からする と , こ れ ま で の DSM  を そ の ま ま 用 い る と,特定不能の広汎性発達障害がとても多くな

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― 11 ― (181) 表 DSM5 における自閉症スペクトラム障害 診断 基準 以下の A, B, C, D を満たすこと A社会的コミュニケーションおよび相互関係におけ る持続的障害(以下の3 点) 1. 社会的,情緒的な相互関係の障害 2. 他者と交流に用いられる言葉を介さないコミュ ニケーションの障害 3. (年齢相応の対人)関係性の発達・維持の障害 B限定された反復する様式の行動,興味,活動(以 下の2 点以上で示される) 1. 常同的で反復的な運動動作や物体の使用,ある いは話し方 2. 同一性へのこだわり,日常動作への融通のきか ない執着,言語・非言語上の儀式的な行動パター ン 3. 集中度や焦点付けが異常に強く限定,固定され た興味 4. 感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性,ある いは感覚に関する環境に対する普通以上の関心 C症状は発達早期の段階で必ず出現するが,後にな って明らかになるものもある D症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障 害を引き起こしている ― 11 ― (181) ってしまう。この項目は,非定型自閉症という 呼称もある非定型群である。非定型群がもっと も多いと言うことは,診断基準そのものに問題 があることに他ならない。DSMと DSM5 との違いを表すと図 1 のようになる。これまで の考え方では,PDD とそれ以外は隔絶されて いる。一方スペクトラムとは連続体のことであ る。例えば,光のスペクトラムである虹の色は どこまでが赤でどこまでが黄色といった境界線 を引くことはできずに,赤から紫まで色が変化 して行く。自閉症スペクトラムにおいても,重 症の者から軽症の者まで境界線を引かずに連続 していて,その最も軽い群は,従来から指摘さ れてきた広範な自閉症発現型(Broad Autism Phenotype ; BAP ) に 連 続 的 に つ な が っ て 行 き,さらにその外側に一般のちょっと変わり者 に連続して行く。この考え方をとれば,健常者 との境界に位置する境界線上の軽症者が最も人 数が多いと言うことは当然である。 療育上の問題は,自閉症の体験世界の特異さ にある。自閉症は人を避ける。なぜか。怖いか らである。筆者は自閉症に接するものに次のよ うに注意を喚起している。健常児と ASD との 違いを喩えてみれば犬と猫の違いを想定しても らうとわかりやすい。犬に対しては多少強引な 対応をしても言うことを聴いてくれるが,猫に それを行ったらパニックを起こすだけであり, 一度怖い思いをすると,忘れてくれない。不快 なことを行わせるためには準備が必要であり, マイナスの強化子を決して用いず,プラスの強 化子によって徐々に適応的な行動を積み上げる ことによってのみ,社会的な行動が可能にな る 。 こ こ に す ば ら し い テ キ ス ト が あ る 。 All cats have Asperger syndrome8)という英語の絵

本である。この本は,実に愛らしい猫の写真 と,それにぴったりの自閉症圏の児童の行動に 関するワンフレーズの解説によって構成されて おり,自閉症というものの理解を,笑いながら することができる。わが国においても,知的な 遅れのない ASD の児童青年が沢山存在するこ とについては周知される様になってきたが,学 校教育において柔軟な対応ができず,相変わら ず知能指数によって振り分けがなされ,ASD の児童の個別のニードに応じた教育ができてい ない。例えば静岡県の状況で言えば,支援クラ スがある学校は限られていて(拠点校と呼ばれ る),全ての学校に設置されていない。そうす ると,転級が必要である状況でもそれが転校に なるので,支援クラスへの移行のハードルが著 しく高くなっている。支援クラスと通常クラス とを個々の児童のニードに応じて柔軟に使い分 けると言ったことが全くできず,不適応児を増 やしているのである。通常クラスに6.5パーセ ントの個別のニードがある生徒が存在すること が明らかになっているのに,この拠点校方式は 現状から乖離している。筆者が最近経験した 6 歳の ASD の児童である。知覚過敏性が強く, また母親には被虐待の既往があり,母親もまた 発達凸凹レベルの ASD を有している。この児 童は,過敏性と練習不足のため,また母親の社 会的な苦手さのために,幼児教育をほぼ完全に 受けることができずに就学年齢を迎えた。しか し知的に正常であるために,教育委員会は通常 クラスに処遇を決めたのである。幼稚園に 3 年 間完全に行けなかった児童が,6 歳になったか

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― 12 ― (182) 図 広汎性発達障害と自閉症スペクトラム障害の違い ― 12 ― (182) らといって通常クラスに通えるかどうか,常識 的に考えてみれば答えは分かると思うのである が,案の定,完全な不登校になり,今後の処遇 をめぐって受診したのであった。筆者は通常ク ラスは困難であることを説明したが,処遇の変 更はなされず登校は全くできていない。発達障 害の治療とは,治療的教育である。この状況は 変えられなくてはならない。 こうして発達障害への教育的対応が遅れてい るうちに,発達障害に深く関連する別の問題が 日常的に溢れるようになってきた。それは子ど も虐待である。 . 発達障害とトラウマの複雑な関係 先の 6 歳児の母親は,被虐待の既往があっ た。このように特に選別をしたわけではないの に,親の側に様々なトラウマの既往が認められ ることが少なくない。発達障害と心的トラウマ とは複雑な絡み合いを示す。まず発達障害の側 から見たときに,子ども虐待や集団教育でのい じめなど,トラウマ体験がかけ算になると,そ の 転 帰 が に わ か に 悪 化 す る と い う 事 実 が あ る9)。逆に迫害体験を何ら持たない児童の場 合,知的障害の有無に関わらず,学校教育にお けるミスマッチさえなければ何も問題が起きな い。毎年確実な進歩と発達が見られ,それは成 人以降の年齢でも続く。ところが暴力的噴出, 非行行為などの症例の場合,患児のみならずそ の親の側にも,子ども虐待,学校でのいじめ体 験といったいわばトラウマの既往が認められる のである。多因子モデルで理解できるように, 発達障害の親族には発達凸凹を抱えた者が多 い。認知の凸凹は一般にマイナスではなく,実 は,優れた実績を有する人に少なくない。とこ ろがここにトラウマ体験が掛け算になった場 合,親の側においても精神医学的問題を抱えて いるものが実に多い。その代表は非定型的な気 分変動である。発達障害は愛着の形成が遅れ, 非社会的行動や,衝動的な問題行動などが多発 するため,診断が遅れた時にトラウマを呼び込 みやすいことは事実である。しかし一方,トラ ウマの側から見ると,特に子ども虐待によって 生じる愛着障害は,発達障害に非常に類似した 臨床像を呈する。筆者はこれを第 4 の発達障 害7)と呼び,一般の発達障害とは区別すること を試みたが,子ども虐待の世代間連鎖など,世 代を超えた時には一次的な問題か,二次的な問 題か分からなくなってしまう。 表 3 を見てほしい。これは S 県児童自立支 援施設における全児童調査の結果である。数年 前,ケアワーカーから児童への暴力事件が起 き,筆者らは施設への介入を依頼された。きち んとした対策のためには科学的な資料が必要 と,県と施設に全児童調査を要請したところ両 者の快諾を得て,その後,継続的に全児童調査 が実施されている。当初筆者は,彼らの多くは 被虐待児であるので,重症な解離を有してお り,そのために指導が入らないのではないかと 仮説を立てていた。調査を行ってみた結果,重 症の解離がある児童は 3 割程度に認められた

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― 13 ― (183) 表 M 児童自立支援施設全児童調査 N=102 ADHD- ADHD+ 計 ASD- 19 6 25 18.6 5.9 24.5 ASD+ 35 42 77 34.3 41.2 75.5 計 54 48 102 52.9 47.1 100.0 ASD, ADHD どちらかが陽性 81 ― 13 ― (183) が,それが問題の中心ではなかった。入所児に お い て一 貫 し て ASD 陽性 者 75パ ー セン ト , ADHD 陽性者50パーセント,そのいずれかが 陽性である者は 8 割を越えたのである。われわ れは一例一例について,症例検討を重ねてき た。すると,ASD 陽性者の生徒の親も,非社 会的な行動が認められる症例が大半であった。 さらにその親の大多数はまた,被虐待の中で育 っていた。治療という側面で言えば,子どもた ちに実施したグループによる SST は有効に働 いたのである。 この事情が,たまたまわれわれが調査をした 一施設のみに認められた特性とは考えられな い。なぜなら,われわれが治療を行っている外 来(浜松市子どものこころの診療所)において も,病棟(国立病院機構天竜病院児童精神科病 棟)においても,また S 県の情緒障害児短期 治療施設においても,子どもは発達障害の診断 が下され,被虐待があり,親の側は発達の少な くとも凸凹が認められ親自身が元被虐待児で今 は加虐側になっているという例が極めて多いか らである。 振 り 返 っ て み る と 既 に 1980 年 代 Gillberg ら10)は移民の間に自閉症が多いという報告を行 っていた。また最近になって Fujiwara ら11) 日本で社会階層が低いグループに ASD が多い 可能性を報告した。われわれが診ているのは同 じグループなのではないだろうか。そもそもク レペリン型診断は病因を特定しないことを前提 としている。また1990年代以後,Asperger 症 候群の登場によって,ASD の診断の地平が拡 がった。ASD と抑制型反応性愛着障害の鑑別 も,ADHD と脱抑制型反応性愛着障害との鑑 別も,筆者の経験では,臨床所見のみではきわ めて困難である。この問題は今後,大きな臨床 的なテーマになるのではないか。鑑別が困難と いうだけではなく,何よりもトラウマが掛け算 になった症例は,親の側の問題もあり,対応に 困難を抱えるからである。 どうしても筆者の所には難治症例が集まる。 すると実は上記のようなワンパターンである。 子どもの側は,発達障害の診断を受けていて, 様々な不適応や問題行動を多発させている問題 児である。親の側は,その子どもへの過剰な叱 責や虐待を繰り返していて,自身が発達障害も しくは発達凸凹を抱える。そして親も,その両 親からの体罰や過剰な叱責,情緒的虐待,さら に学校教育における激しいいじめなどを受けて いる。つまり様々な重症のトラウマを抱えてい る。これが子そだての中でフラッシュバックと して噴出し,暴力加害を含む親の側の問題行動 の噴出になるのである。この様な親の多くが気 分変動を抱えており,精神医学的診断を行う と,非定型的な双極型の臨床像を呈してい る。この両者はどうやら無関係ではなく,フラ ッシュバックを引き金に不眠,興奮,時には人 格のスイッチングなどが生じ,これが躁転を生 むという状況が見える。この親の側は精神科の 未受診者はほとんどいない。しかし受診して軽 快をしたという例がきわめて少ない。その理由 を考えてみると,気分変動に対して,うつ病と 診断され抗うつ薬のみが処方されて逆に悪化し ていること,さらに双極性障害としても難治性 で,一般的な気分調整薬の服用による治療のみ では気分変動を止めることが非常に困難である ことがあげられる。この難治性の理由は,先に 述べたように気分変動の引き金にフラッシュバ ックがあるからである。この親は,つまりは発 達障害もしくは発達凸凹を基盤に持つ複雑性ト ラウマである。この非定型的で難治性の気分変 動の起源は,学齢児の愛着障害の児童に認めら れる激しい気分の上下ではないか。被虐待児に は,抑うつとハイテンション(一般に午後にな ると)が認められる特有の気分変動があり,そ れが徐々に怒りの爆発など,気分調整障害へと 発展する。その背後には愛着形成の困難があ り,それによって自律的な情動調律困難がある

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― 14 ― (184) 表 発達障害基盤の精神科併存症への薬物療法 気分調整薬炭酸リチウム15 mg,カルバマゼピ ン 550 mg,ラモトリギン 225 mg セロトニン賦活目的の抗精神病薬アリピプラゾー ル0.20.5 mg,ピモジド0.1 mg0.3 mg 睡眠薬ラメルテオン0.8 mg 夕食後に 著しい興奮塩酸クロニジン0.0325 mg,レポメプ ロマジン 35 mg フラッシュバック桂枝加芍薬湯(小健中湯,桂枝 加竜骨牡蛎湯)2 包,四物湯(十全大補湯)2 包, 分2(クラシエから錠剤あり) ― 14 ― (184) からこそ,この激しい気分変動が生じるのであ る。 この親への治療的な対応を試行錯誤している うちに,筆者は気分調整薬や抗精神病薬の極端 な少量処方と漢方薬の組み合わせがむしろ有効 であることに気付いた7)。少量処方の具体例を 表 4 にまとめる。このような特殊な薬物療法と, EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing)を用いたトラウマ処理を組み合 わせることで,気分変動の軽減も,親の側の暴 力的な噴出もはじめて軽快を得ることが可能で ある。成人の発達障害で,うつ病,あるいは統 合失調症の併存と言われている症例の一部は, このような一次的なのか二次的なのか判然とし ない発達障害の基盤を持つ複雑性トラウマの症 例であり,この視点からの症例の見直しが必要 である。 文 献 1) 鷲見 聡名古屋市における自閉症スペクトラ ム,精神遅滞,脳性麻痺の頻度について.小児の精 神と神経 2011; 51(4): 351358.

2) Pastor PN, Reuben CA: Diagnosed attention deˆc-it hyperactivdeˆc-ity disorder and learning disabildeˆc-ity: Undeˆc-it- Unit-ed States, 20042006. Vital Health Statistics 2008; 10 (237): 114.

3) Planczyk G, de Lima MS, Horta BL, Biederman J, Rohde LA: The worldwide prevalence of ADHD: a systematic review and metaregression analysis. American Journal of Psychiatry 2007; 164(6): 942 948.

4) Kim YS, Leventhal BL, Koh YJ, Fombonne E, Las-ka E, Lim EC, Cheon KA, Kim SJ, Kim YK, Lee H, Song DH, Grinker RR: Prevalence of autism spec-trum disorders in a total population sample. Ameri-can Journal of Psychiatry, 2011; 168(9): 904912. 5) Hallmayer J, Cleveland S, Torres A, Phillips J,

Co-hen B, Torigoe T, Miller J, Fedele A, Collins J, Smith K, Lotspeich L, Croen LA, OzonoŠ S, Lajonchere C, Grether JK, Risch N: Genetic heritability and shared environmental factors among twin pairs with autism. Archives of Genenral Psychiatry 2011; 68(11): 1095 102.

6) Idring S1, Magnusson C, Lundberg M, Ek M, Rai

D, Svensson AC, Dalman C, Karlsson H, Lee BK: Parental age and the risk of autism spectrum disord-ers: ˆndings from a Swedish population-based cohort. International Jourunal of Epidemiology 2014; 43(1): 107115.

7) 杉山登志郎発達障害への少量処方.そだちの科 学 2014; 22: 5462.

8) Hoopman K: All cats have Asperger syndrome. Jessica Kingsley Publication, London, 2006. 9) Kawakami C, Ohnishi M, Sugiyama T, Someki F,

Nakamura K, Tsujii M: The risk factors for criminal behaviour in high-functioning autism spectrum dis-orders. Research in Autism Spectrum Disorders 2012; 6: 949957.

10) Gillberg C, SteŠenburg S, B äorjesson B, Andersson L.: Infantile autism in children of immigrant parents. A population-based study from G äoteborg, Sweden. Britsh Journal of Psychiatry 1987; 150: 856858. 11) Fujiwara T, Kawachi I: Are maternal social

net-works and perceptions of trust associated with sus-pected autism spectrum disorder in oŠspring? A population-based study in Japan. PLoS One 2014; 9 (7): e101359.

別刷請求先

〒4313192 静岡県浜松市東区半田山 1201 浜松医科大学医学部医学科 児童青年期精神医 学講座 杉山登志郎

Developmental diŠerentiations and developmental disorders

Toshiro Sugiyama

Department of Child and Adolescent Psychiatry, Hamamatsu University School of Medicine Key words: DSM5, developmental disorder, ASD, ADHD, child abuse

参照

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